説明

直流地絡検出回路及び直流地絡検出方法

【課題】 本発明は、直流電路が長い場合に直流地絡の検出感度を向上させることができる直流地絡検出回路を提供することを課題とする。
【解決手段】 直流電路で発生する直流地絡を検出するために設けられる直流地絡検出回路1であって、直流地絡が発生するときに直流電路上の検出地点を流れる電流を検出する電流検出手段と、前記検出地点より上流側の対地静電容量の増加に対応すべく、上流側の対地静電容量を相殺するように設けられる共振回路3とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電路で発生する直流地絡を検出する直流地絡検出回路及び直流地絡検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、直流送電設備には、電路に地絡電流が流れているか否かを検出することにより直流地絡を検出する直流地絡継電器が設けられている。この直流地絡継電器が作動することにより、地絡がこの直流回路内で発生していることを検出することができる。さらに、この直流回路内で発生している地絡の発生箇所(発生電路)を特定するために、直流地絡検出装置が設けられている。この直流地絡検出装置は、各電路上に検出地点を設けて、その検出地点を流れる地絡電流の有無から、その地絡の発生箇所を特定する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭54−005040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、送電距離が長くなり、つまり、電路の長さが長くなるにつれて、電路の対地静電容量も増加する。特に、検出地点より上流側の電路の長さが長くなって、当該電路の対地静電容量が増加すると、検出地点で検出される地絡電流が抑制される。直流地絡検出装置は、検出地点を流れる地絡電流が動作値に達しなければ動作しないため、抑制された分、高い地絡電流が流れなければ、直流地絡を検出できなかった。つまり、電路の長さが短いときと比べて長いときは、直流地絡の検出感度が低かった。そこで、従来から、電路の長さが長い場合は、直流制限回路地絡継電器(64D)が動作しても直流電路地絡検出装置が動作しない現象が発生し、分岐電路ごとに配線用遮断器(以下,遮断器という)を手切りにより地絡回路を検出することにより対処していたが、その作業が伴うことにより、制御系全体の信頼度を低下させていた。
【0005】
よって、本発明は、かかる事情に鑑み、直流電路が長い場合に直流地絡の検出感度を向上させることができる直流地絡検出回路及び直流地絡検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る直流地絡検出回路は、直流地絡が発生したときに直流電路上の検出地点を流れる電流を検出する電流検出手段を備える直流地絡検出回路であって、前記検出地点より上流側の対地静電容量の増加に対応すべく、上流側の対地静電容量を相殺するように設けられる共振回路を備えることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、直流電路が長い場合に前記共振回路を設けることにより検出地点より上流側の対地静電容量が相殺されるため、検出地点を流れる地絡電流が抑制されず、直流地絡の検出感度を維持することができる。
【0008】
また、本発明によれば、前記共振回路は、直流電路の正極側電路の前記検出地点より上流側の地点を接地して設けられる正極側並列共振回路と、直流電路の負極側電路の前記検出地点より上流側の地点を接地して設けられる負極側並列共振回路とを備えることが好ましい。
【0009】
かかる構成によれば、直流電路の正極側電路に正極側並列共振回路を設け、負極側電路に負極側並列共振回路を設けることにより検出地点より上流側の対地静電容量が相殺されるため、検出地点を流れる地絡電流が抑制されず、直流地絡の検出感度を維持することができる。
【0010】
また、本発明によれば、前記共振回路は、中性点接地方式の直流電路の中性点を接地して設けられる直列共振回路であることが好ましい。
【0011】
かかる構成によれば、中性点接地方式の直流電路の中性点に直列共振回路を設けることにより検出地点より上流側の対地静電容量が相殺されるため、検出地点を流れる地絡電流が抑制されず、直流地絡の検出感度を維持することができる。
【0012】
本発明に係る直流地絡検出方法は、直流電路で発生する直流地絡を検出する直流地絡検出方法であって、直流地絡が発生するときに直流電路上の検出地点を流れる電流を検出する電流検出手段が設けられている直流回路に対して、上流側の対地静電容量を相殺するように設けられる共振回路を検出地点の上流側に設置することを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、直流電路が長い場合に前記共振回路を設けることにより検出地点より上流側の対地静電容量が相殺されるため、検出地点を流れる地絡電流が抑制されず、直流地絡の検出感度を維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上の如く、本発明に係る直流地絡検出回路及び直流地絡検出方法によれば、直流電路が長い場合に共振回路を設けることにより検出地点より上流側の対地静電容量が相殺されるため、検出地点を流れる地絡電流が抑制されず、直流地絡の検出感度を向上させることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る直流地絡検出回路が設けられた直流回路の全体回路図を示す。
【図2】同実施形態に係る直流地絡検出回路が設けられた一分岐回路の等価回路図を示す。
【図3】(a)は、同実施形態に係る一分岐回路の正極側電路の地絡時の等価回路図を示す。(b)は、同分岐回路の正極側電路の並列共振条件を表す説明図を示す。
【図4】(a)は、同実施形態に係る一分岐回路の負極側電路の地絡時の等価回路図を示す。(b)は、同分岐回路の負極側電路の並列共振条件を表す説明図を示す。
【図5】(a)及び(b)は、同実施形態に係る直流地絡検出回路の直流地絡動作特性を表すグラフを示す。
【図6】同実施形態に係る直流地絡検出回路の直流地絡検出感度特性を表すグラフを示す。
【図7】本発明の第2実施形態に係る直流地絡検出回路が設けられた一分岐回路の等価回路図を示す。
【図8】(a)は、同実施形態に係る一分岐回路の正極側電路の地絡時の等価回路図を示す。(b)は、同分岐回路の正極側電路の直列共振条件を表す説明図を示す。
【図9】同実施形態に係る直流地絡検出回路の直流地絡検出感度特性を表すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1実施形態に係る直流地絡検出回路について、図1〜図6を参酌しつつ説明する。同実施形態に係る直流地絡検出回路1は、図1に示すように、直流電流を流す直流回路2に設けられ、直流電路で発生する直流地絡を検出するために設けられる。直流回路2は、正極側電路Pと負極側電路Nとを備え、当該電路の中性点Qを接地する中性点接地方式の電路である。
【0017】
直流回路2には、正極側電路P及び負極側電路Nと中性点Qとの間に接続される接地用抵抗R0,R0と、該接地用抵抗R0,R0の電圧、つまり正極側電路P及び負極側電路Nの対地電圧V1,V2を計測する電圧計(又は、直流制限回路地絡継電器。以下同じ)64D1,64D2と、中性点Qと対地間に接続する交流電源Eac(周波数11Hz)とを備える。直流回路2に地絡が発生すると、地絡が発生している地絡電路(正極側電路P又は負極側電路N)の地絡箇所から大地を介して中性点Qを通り、地絡電路に戻る地絡回路が形成される。そして、地絡電流が接地用抵抗R0を流れることにより、正極側電路Pの対地電圧と、負極側電路Nの対地電圧が変化するため、その変化を電圧計64D1,64D2で検出して、直流地絡を検出する。
【0018】
直流回路2は、直流電源Edcを備えており、当該直流電源Edcが設けられている位置には、母線21と、該母線21から複数に分岐される分岐回路22とが設けられている。母線21と各分岐回路22,…との分岐点には、遮断器CBと、直流地絡が発生するときに直流電路上の検出地点を流れる電流を検出する零相変流器(本発明の「電流検出手段」に相当)ZCTと、各検出地点より電源側(以下,母線21(上流)側という)の対地静電容量の増加に対応すべく、母線21(上流)側の対地静電容量を相殺する共振回路3とが設けられている。
【0019】
遮断器CBは、母線21と各分岐回路22,…とを切り離すために設けられている。零相変流器ZCTは、各電路の直流地絡の有無を検出するために、分岐回路21,…ごとに設けられている。共振回路3は、図2に示すように、母線21(上流)側の対地静電容量を相殺するように静電容量補償用リアクタンスを発生させる回路である。共振回路3は、正極側電路Pの検出地点より母線21側の地点に接地して設けられる正極側並列共振回路31と、負極側電路Nの検出地点より母線21側の地点に接地して設けられる負極側並列共振回路32とを備える。
【0020】
正極側並列共振回路31及び負極側並列共振回路32は、図3及び図4に示すように、静電容量補償用リアクトルLe1,Le2と、直流カット用直列コンデンサCe1,Ce2とを直列に接続して構成されている。また、静電容量補償用リアクトルLe1,Le2と、直流カット用直列コンデンサCe1,Ce2とは、電路の対地静電容量C01,C02,C03,C04及び対地絶縁抵抗R01,R02,R03,R04と並列に接続される。直流カット用直列コンデンサCe1,Ce2は、静電容量補償用リアクトルLe1,Le2より電路側に接続され、通過する電流の直流成分をカットする。静電容量補償用リアクトルLe1,Le2は、母線21側の電路の対地静電容量を相殺すべく、共振可能な容量が選択される(ωLe1−(1/ωCe1)≒Σ(1/ωC01),ωLe2−(1/ωCe2)≒Σ(1/ωC02);ω=2πf,f=11Hz)。直流カット用直列コンデンサCe1,Ce2の容量は、直流回路の耐電圧を有する小さな容量が選択される。
【0021】
次に、同実施形態に係る直流地絡検出回路の直流地絡動作特性(対地静電容量補償前)について、図2及び図5を参酌しつつ説明する。なお、図2に示す、正極側電路P及び負極側電路Nの線路抵抗R1,R2,R3,R4及び線路リアクタンスL1,L2,L3,L4、線間抵抗R12,R34及び線間静電容量C12,C34、中性点接地抵抗Zeは、直流地絡に影響を与えないため、無視するものとする。また、直流地絡検出時において、直流電源Edc(及び内部抵抗r)は、正極側電路Pと負極側電路Nを短絡しているものとみなす。また、対地静電容量補償前の特性であるため、静電容量補償用リアクトルLe1,Le2と、直流カット用直列コンデンサCe1,Ce2も無視するものとする。このときの負極側電路Nの対地電圧V2、つまり、負極側の電圧計64D2の値は、下記の式により算出される。
【数1】

【0022】
図5(a)は、接地用抵抗R0が1kΩのときに、負極側の合成対地絶縁抵抗Z024を100kΩから1Ωまで変化させたときの負極側の電圧計64D2の電圧値V2を示す。なお、グラフaは、正極側電路Pの合成対地絶縁抵抗Z013の抵抗値を500kΩとしたときの値である。グラフbは、合成対地絶縁抵抗Z013の抵抗値を100kΩとしたときの値である。グラフcは、合成対地絶縁抵抗Z013の抵抗値を50kΩとしたときの値である。正極側電路Pと負極側電路Nとの間の線間電圧が100Vであり、中性点Qと各電路P,Qとの間の対地電圧が±50Vである。直流地絡検出回路1は、対地電圧に対して±80%のときに動作する動作値が設定されている。つまり、動作値は、±40Vで動作するように設定されている。図5(a)からわかるように、電圧計64D2で検出される電圧値V2は、正極側電路Pの合成対地絶縁抵抗Z013の値が500kΩから50kΩ間では同じ値が検出される。
【0023】
図5(b)は、正極側電路Pの合成対地絶縁抵抗Z013の抵抗値が100kΩのときに、合成対地絶縁抵抗Z024を100kΩから1Ωまで変化させたときの負極側の電圧計64D2の電圧値V2を示す。なお、グラフdは、接地用抵抗R0の抵抗値を10kΩとしたときの値である。グラフeは、接地用抵抗R0の抵抗値を5kΩとしたときの値である。グラフfは、接地用抵抗R0の抵抗値を1kΩとしたときの値である。図5(b)からわかるように、電圧計64D2で検出される電圧値V2は、接地用抵抗R0の値に依存しており、接地用抵抗R0の値が高くなるほど高い合成対地絶縁抵抗Z024を検出することができる。
【0024】
次に、同実施形態に係る直流地絡検出回路の直流地絡感度特性について、図2及び図6を参酌しつつ説明する。なお、図2に示す、正極側電路P及び負極側電路Nの線路抵抗R1,R2,R3,R4及び線路リアクタンスL1,L2,L3,L4、線間抵抗R12,R34及び線間静電容量C12,C34、中性点接地抵抗Zeは、直流地絡に影響を与えないため、無視するものとする。また、直流地絡検出時において、直流電源Edc(及び内部抵抗r)は、正極側電路Pと負極側電路Nを短絡しているものとみなす。このとき電圧計64D2の対地電圧V2は、正極側電路Pの合成対地絶縁抵抗Z013の値が500kΩから50kΩ間では同じ値が検出される。地絡検出電流Idは、下記の式により算出される。
【数2】

【0025】
図6は、接地用抵抗R0が1kΩのときに、対地絶縁抵抗R04を100kΩから1kΩまで変化させたときの、負極側の電圧計64D2の電圧値と、零相変流器ZCTで検出される地絡検出電流値とを示す。グラフg,jは、母線21側の静電容量を補償する前の値であって、分岐回路22側の電路が20km相当のときの値を示す。グラフh,kは、補償前の値であって、分岐回路22側の電路が100km相当のときの値を示す。グラフi,lは、補償後の値であって、分岐回路22側の電路が100km相当のときの値を示す。
【0026】
図6からわかるように、電圧計64D2で検出される電圧値V2は、正極側電路Pの合成対地絶縁抵抗Z013の値が500kΩから50kΩ間では同じ値が検出され、電路の対地静電容量の値に関らず同じ値が検出される。地絡検出電流Idは、電路長が長くなるにつれて感度が下がるが、補償することにより、感度が約60%改善される。
【0027】
このようにして、直流電路が長い場合に、直流電路の正極側電路Pに正極側並列共振回路31を設け、負極側電路Nに負極側並列共振回路32を設けることにより検出地点より母線21側の各電路の対地静電容量が相殺されるため、検出地点を流れる地絡電流Idが抑制されず、直流地絡の検出感度を維持することができる。
【0028】
また、電路が延長されるなどして検出地点から上流側の対地静電容量が増加した場合であっても、直流カット用直列コンデンサCe1及びCe2の容量を変更して、直流地絡検出回路1の検出感度を所望のレベルに戻すことができる。
【0029】
また、この直流地絡検出回路は、直流カット用直列コンデンサCe1及びCe2が静電容量補償用リアクトルに対して直列に接続されているため、(静電容量補償用リアクトルを直流回路に接続することにより地絡事故の恐れがあった)100Vから500kVまでの直流回路においても適用することができる。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態に係る直流地絡検出回路について、図7〜図9を参酌しつつ説明する。なお、本実施形態に係る直流地絡検出回路101は、第1実施形態に係る直流地絡検出回路の共振回路3の変形例であるため、以下、共振回路3を中心に説明し、第1実施形態に係る直流地絡検出回路1の構成と同一の構成については、同一の符号を付すとともに、説明を省略する。
【0031】
直流回路2は、図7に示すように、中性点接地方式の直流電路の中性点Qを接地する接地線23が設けられている。この接地線23は、交流電源Eac及び共振回路3が設けられる第1の接地線23aと、該第1の接地線23aと並列に設けられる第2の接地線23bとを備える。第1の接地線23aと第2の接地線23bとは、並列に接続されている。
【0032】
第1の接地線23aに設けられる共振回路3は、中性点接地方式の直流電路の中性点Qを接地して設けられる直列共振回路131である。
【0033】
直列共振回路131は、図8(a)及び図8(b)に示すように、静電容量補償用リアクトルLe3と、直流カット用直列コンデンサCe3とを直列に接続して構成されている。また、静電容量補償用リアクトルLe3と、直流カット用直列コンデンサCe3とは、各電路の対地静電容量C01,C02,C03,C04及び対地絶縁抵抗R01,R02,R03,R04と直列に接続される。静電容量補償用リアクトルLe3は、母線21側の電路の対地静電容量C01,C02を相殺すべく、共振可能な容量が選択される(ωLe3−(1/ωCe3)≒1/ωC;Cは、母線側の正極側電路Pの対地静電容量C01と負極側電路Nの対地静電容量C02との合成対地静電容量。)。直流カット用直列コンデンサCe3の容量は、直流回路の耐電圧に相当する小さな容量が選択され、共振可能なリアクトル容量は母線側の合成対地静電容量Z1と略同一となる容量が選択される。合成対地静電容量Cは、下記の式により算出される。
【数3】

【0034】
また、第2の接地線23bには、中性点Qを接地するためのスイッチSWが設けられている。このスイッチSWは、直流制限回路地絡継電器(64D)による直流地絡検出と直流地絡検出回路1による直流地絡検出とを選択するために設けられている。
【0035】
このスイッチSWは、常時、ON(接続)されているため、中性点Qは、第2の接地線23bを介して大地に接地されている。第2の接地線23bは、直流カット用直列コンデンサCe3により開放されている。つまり、直流制限回路地絡継電器(64D)が動作可能な状態となっている。
【0036】
交流電源Eacを起動させて、直流地絡検出回路1による直流地絡検出を実施するとき、スイッチSWは、OFF(切断)され、中性点Qは、第1の接地線23aを介して大地に接地される。つまり、直流地絡検出回路1が動作できるため、活線で絶縁抵抗を測定することができるようになっている。
【0037】
次に、同実施形態に係る直流地絡検出回路の直流地絡感度特性について、図7及び図9を参酌しつつ説明する。なお、図7に示す、正極側電路P及び負極側電路Nの線路抵抗R1,R2,R3,R4及び線路リアクタンスL1,L2,L3,L4、線間抵抗R12,R34及び線間静電容量C12,C34、中性点接地抵抗Zeは、直流地絡に影響を与えないため、無視するものとする。また、直流地絡検出時において、直流電源Edc(及び内部抵抗r)は、正極側電路Pと負極側電路Nを短絡しているものとみなす。この電圧計64D2の対地圧値V2は、正極側電路Pの合成対地絶縁抵抗Z013の値が500kΩから50kΩ間では同じ値が検出される。地絡検出電流Idは、下記の式により算出される。
【数4】

【0038】
図9は、接地用抵抗R0が1kΩのときに、対地絶縁抵抗R04を100kΩから1kΩまで変化させたときの、負極側の電圧計64D2の電圧値V2と、零相変流器ZCTで検出される地絡検出電流値Idとを示す。グラフo,rは、母線21側の静電容量を補償する前の値であって、電路が20km相当のときの値を示す。グラフp,sは、補償前の値であって、電路が100km相当のときの値を示す。グラフq,tは、補償後の値であって、電路が100km相当のときの値を示す。
【0039】
図9からわかるように、電圧計64D2で検出される電圧値V2は、電路の対地静電容量の値に関らず同じ値が検出される。地絡検出電流Idは、電路長が長くなるにつれて感度が下がるが、補償することにより、感度が約20%改善される。
【0040】
このようにして、中性点接地方式の直流電路の中性点Qに直列共振回路131を設けることにより検出地点より母線21側の各電路の対地静電容量が相殺されるため、検出地点を流れる地絡電流が抑制されず、直流地絡の検出感度を維持することができる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0042】
本発明の第1及び第2実施形態に係る直流地絡検出回路1は、中性点接地方式の直流回路2に設けられる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、直流地絡検出回路は、抵抗接地方式や直接接地方式などの直流回路に設けられてもよい。
【0043】
本発明の第1及び第2実施形態に係る直流地絡検出回路1は、電流検出手段が零相変流器ZCTである例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電流検出手段は、交流変流器であってもよい。交流変流器を用いる場合、地絡電流に交流信号を付加することにより、交流変流器が地絡電流を検出可能にされることが好ましい。
【0044】
本発明の第1及び第2実施形態に係る直流地絡検出回路1は、直流カット用直列コンデンサCe1,Ce2,Ce3のコンデンサ容量及び静電容量補償用リアクトル容量が固定値である例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、直流カット用直列コンデンサのコンデンサ容量及び静電容量補償用リアクトル容量は、可変値又は複数の固定値から選択された選択値であってもよい。よって、電路の増設・撤去等によりその電路の長さが変化した場合、その静電容量補償用リアクトル容量を調整することができる。
【0045】
本発明の第1及び第2実施形態に係る直流地絡検出回路1は、直流カット用直列コンデンサCe1,Ce2,Ce3を直流回路2の上流側にのみ設ける例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、直流カット用直列コンデンサは、分岐回路側の対地静電容量を補償するために、直流回路の下流側に局所的に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…直流地絡検出回路、2…直流回路、P…正極側電路、N…負極側電路、Q…中性点、R0…接地用抵抗、V1…正極側電路の対地電圧、V2…負極側電路の対地電圧、64D1…正極側電圧計、64D2…負極側電圧計、Eac…交流電源、Edc…直流電源、21…母線、22…分岐回路、CB…遮断器、ZCT…零相変流器、3…共振回路、23…接地線、23a…第1の接地線、23b…第2の接地線、31…正極側並列共振回路、32…負極側並列共振回路、Le1…正極側静電容量補償用リアクトル、Le2…負極側静電容量補償用リアクトル、Ce1…正極側直流カット用直列コンデンサ、Ce2…負極側直流カット用直列コンデンサ、R1…線路抵抗(母線側の正極側電路)、R2…線路抵抗(母線側の負極側電路)、R3…線路抵抗(分岐回路側の正極側電路)、R4…線路抵抗(分岐回路側の負極側電路)、L1…線路リアクタンス(母線側の正極側電路)、L2…線路リアクタンス(母線側の負極側電路)、L3…線路リアクタンス(分岐回路側の正極側電路)、L4…線路リアクタンス(分岐回路側の負極側電路)、R12…母線側線間抵抗、R34…分岐回路側線間抵抗、C12…母線側線間静電容量、C34…分岐回路側線間静電容量、R01…対地絶縁抵抗(母線側の正極側電路)、R02…対地絶縁抵抗(母線側の負極側電路)、R03…対地絶縁抵抗(分岐回路側の正極側電路)、R04…対地絶縁抵抗(分岐回路側の負極側電路)、C01…対地静電容量(母線側の正極側電路)、C02…対地静電容量(母線側の負極側電路)、C03…対地静電容量(分岐回路側の正極側電路)、C04…対地静電容量(分岐回路側の負極側電路)、Ze…交流電源Eac(周波数11Hz)の内部抵抗、r…直流電源Edcの内部抵抗、101…直流地絡検出回路、131…直列共振回路、Le3…静電容量補償用リアクトル、Ce3…直流カット用直列コンデンサ、SW…スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流地絡が発生したときに直流電路上の検出地点を流れる電流を検出する電流検出手段を備える直流地絡検出回路であって、
前記検出地点より上流側の対地静電容量の増加に対応すべく、上流側の対地静電容量を相殺するように設けられる共振回路を備えることを特徴とする直流地絡検出回路。
【請求項2】
前記共振回路は、直流電路の正極側電路の前記検出地点より上流側の地点を接地して設けられる正極側並列共振回路と、直流電路の負極側電路の前記検出地点より上流側の地点を接地して設けられる負極側並列共振回路とを備える請求項1に記載の直流地絡検出回路。
【請求項3】
前記共振回路は、中性点接地方式の直流電路の中性点を接地して設けられる直列共振回路である請求項1に記載の直流地絡検出回路。
【請求項4】
直流電路で発生する直流地絡を検出する直流地絡検出方法であって、
直流地絡が発生するときに直流電路上の検出地点を流れる電流を検出する電流検出手段が設けられている直流回路に対して、上流側の対地静電容量を相殺するように設けられる共振回路を検出地点の上流側に設置することを特徴とする直流地絡検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−85392(P2013−85392A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224064(P2011−224064)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】