説明

直流給電システム

【課題】直流給電部を所定電圧範囲に制御する直流給電システムを提供する。
【解決手段】商用配電系統より電力変換器を介して、負荷へ直流電力を供給する直流給電部に蓄電設備を接続する。直流給電部の電圧を監視し、前記直流給電部の電圧が所定電圧範囲以下になるとき、前記商用配電系統から前記直流給電部への電力を供給させ、前記直流給電部の電圧が前記所定電圧範囲以上になるとき、前記直流給電部から前記商用配電系統へ電力を供給させるように前記電力変換器を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流給電システムに関し、特に、直流給電電圧を所定電圧範囲に制御する直流給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池、風力発電装置及び燃料電池のような分散電源装置が普及し始めている。しかし、現状では分散電源装置で発電した直流電力は交流に変換され、電力を消費する機器において再度直流に変換されて使用される。このように、直流−交流変換及び交流−直流変換が行われるので、そのたびに、変換損失を生じる。そこで、分散電源が発電する直流を交流に変換することなく、直流のまま送電して機器で使用することにより、変換損失を低減させる直流給電システムが提案されている。
また、現在日本において、低圧配電系統を介して一般需要家に供給される電圧は、標準電圧が200Vまたは100Vであり、発電設備等により、202V±20Vまたは101V±6Vの範囲内に維持されている(停電等の異常時を除く。非特許文献1参照)。そして、家電製品を含め、多くの電気機器は、交流電圧が上記所定範囲内で供給されることを前提に設計されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン(平成16年10月1日資源エネルギー庁)第2章第2節2.電圧変動
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
直流給電システムが一般需要家に普及するにあたり、現在の配電系統により供給される交流電圧と同様に、直流供給電圧も所定範囲を逸脱しないよう維持することが求められる。
本発明は、このような要望に対応するために、直流給電電圧を所定電圧範囲に制御する直流給電システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の直流給電システムは、上記課題を解決するため、配電系統より双方向電力変換器を介して、負荷へ直流電力を供給する直流給電部に蓄電設備を接続し、直流給電部の電圧を監視し、前記直流給電部の電圧が所定電圧範囲以下になるとき、前記配電系統から前記直流給電部へ電力を供給し、前記直流給電部の電圧が前記所定電圧範囲以上になるとき、前記直流給電部から前記配電系統へ電力を供給するように前記双方向電力変換器を制御する制御部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、直流給電部の電圧変化を監視し、その電圧変化よって双方向電力変換器の配電系統に対する電力に授受を制御するので、蓄電設備の出力電圧が変動しても、直流給電部の電圧を所定電圧範囲に維持することができ、負荷への供給電圧が安定になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の直流給電システムによる実施形態のブロック図を示す。
【図2】本発明の直流給電システムによる実施形態に使用されるリチウムイオン二次電池の容量―電圧特性を示す。
【図3】本発明の直流給電システムによる実施形態に使用されるDC/AC変換器の回路図を示す。
【図4】本発明の直流給電システムによる実施形態に使用されるDC/AC変換器の制御部のブロック図を示す。
【図5】本発明の直流給電システムによる実施形態に使用されるAC/DC変換器の回路図を示す。
【図6】本発明の直流給電システムによる実施形態に使用されるAC/DC変換器の制御部のブロック図を示す。
【図7】本発明の直流給電システムによる別の実施形態に使用されるリチウムイオン二次電池の容量―電圧特性を示す。
【図8】本発明の直流給電システムに使用されるDC/AC変換器およびAC/DC変換器の電流目標値設定表1を示す。
【図9】本発明の直流給電システムに使用されるDC/AC変換器およびAC/DC変換器の電流目標値設定表2を示す。
【図10】本発明の直流給電システムに使用されるDC/AC変換器およびAC/DC変換器の電流目標値設定表3を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の直流給電システムは、配電系統より双方向電力変換器を介して、負荷へ直流電力を供給する直流給電部に蓄電設備を接続し、直流給電部の電圧を監視し、前記直流給電部の電圧が所定電圧範囲以下になるとき、前記配電系統から前記直流給電部へ電力を供給し、前記直流給電部の電圧が前記所定電圧範囲以上になるとき、前記直流給電部から前記配電系統へ電力を供給するように前記双方向電力変換器を制御する制御部を備えるものである。
また、本発明の直流給電システムにおいて、所定電圧範囲の下限値を蓄電設備の電圧安定範囲の下限値に設定し、所定電圧範囲の上限値を蓄電設備の上限値に設定することが好ましい。このように、所定電圧範囲の下限値を蓄電設備の電圧安定範囲の下限値に設定し、所定電圧範囲の上限値を蓄電設備の上限値に設定すると、蓄電設備を電圧安定範囲の広い電圧範囲で使用することが可能になり、蓄電設備の利用効率が向上する。
【0009】
本発明の直流給電システムが接続される交流配電系統は、例えば、単相2線式、単相3線式、三相3線式または三相4線式などであり、交流電圧は例えば90V〜440Vである。また、本発明では、交流配電系統から買電したり、分散電源の発電電力を交流配電系統へ売電したりすることができる。
また、上記双方向電力変換器は、AC/DC変換器およびDC/AC変換器を含む。
また、上記負荷は、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、照明装置、パソコン、コンピュータ、複写機、ファクシミリ、ショーケースなどの電気機器を含む。
また、上記直流給電部は、双方向電力変換部、蓄電設備および/または分散電源より直流電力が供給される部分であり、屋内配線では、この直流給電部が負荷へ配線される。
【0010】
また、上記蓄電設備には、代表的には、リチウムイオン二次電池を用いることができ、特にリン酸鉄リチウムを正極に用いたリチウムイオン二次電池が好適であるが、正極にコバルト系リチウムを使用したリチウムイオン二次電池、及び他の材料を使用したリチウムイオン二次電池、およびその他の電池、例えば鉛電池またはニッケル電池のような二次電池も使用可能である。ここで、蓄電設備は、負荷の消費電力に対応する電池容量を有することが好ましい。また、本発明では、蓄電設備は、直流給電部に直結される。即ち、蓄電設備と直流給電部の間に、DC/DC変換器のような電力変換器を介在させることがない。従って、負荷変動などの外乱に対して、蓄電設備により直流給電部の電圧を蓄電池電圧に維持することが可能になる。
また、蓄電設備は、所定の電圧安定範囲を有し、この電圧安定範囲に直流給電部の電圧範囲を維持する。そのため、蓄電設備の所定の電圧安定範囲は、直流給電部が供給する直流電源として規格、または標準化された電圧範囲と一致するよう設定することが好ましい。
また、上記電圧安定範囲は、直流給電部の直流電圧が所定範囲を維持するように制御するために設定された電圧範囲である。
【0011】
また、本発明の直流給電システムにおいて、所定電圧範囲の下限値を蓄電設備の電圧安定範囲の下限値に設定し、所定電圧範囲の上限値を蓄電設備の上限値に設定することが好ましい。また、分散電源は、太陽光発電装置、風力発電装置または燃料電池のような発電装置を指す。分散電源が接続される場合、直流給電部の電圧が所定の電圧安定範囲以上になるとき、直流給電部から配電系統へ供給する電力、即ち、売電を増加するように制御する。
【0012】
また、本発明において、更に、双方向電力変換器の電流を検出する自経路検出部を備え、前記制御部は、前記直流給電部の電圧情報と、前記自経路検出部の自経路電流情報に基づいて、前記電力変換器を制御することが望ましい。これにより、直流給電電圧が所定電圧範囲内であれば、直流給電電圧を目標値として制御することなく、売電量もしくは買電量を目標値に制御することが可能となる。
また、本発明において、更に、前記直流給電部に接続される分散電源を備えことが望ましい。これにより、分散電源の発電出力も含めて双方向電力変換器を制御するので、分散電源の発電出力を有効に利用することが可能になる。
また、本発明において、前記制御部は、前記所定の電圧範囲内の上限部または下限部に直流給電部の電圧変化を緩やかに変化させる電流制御目標値を設定し、直流給電部の電圧が所定の電圧範囲内の上限部または下限部に達したとき、制御部は、電流制御目標値に基づいて双方向電力変換器の電流を制御することが望ましい。これにより、よりきめ細かく直流給電部の電圧を安定に維持することが可能になる。
【0013】
以下には、本発明の直流給電システムの実施形態を図面とともに説明する。
図1は、本発明の実施形態のブロック図を示す。図1に示すように、本発明の直流電力供給システムは、直流給電部1に、太陽光発電システム2と、蓄電池3と、配電系統システム4と、直流負荷5が接続されて構成される。このように、直流給電部1は、太陽光発電システム2と、蓄電池3と、配電系統システム4に接続され、太陽光発電システム2、蓄電池3または配電系統システム4より、直流負荷5に電力を供給する。図1は、直流給電部1、太陽光発電システム2、蓄電池3、配電系統システム4及び直流負荷5をそれぞれ1つ示すが、これらの個数は制限がなく、1つでも複数でもかまわない。また、本発明の最小構成では、直流給電部1と、蓄電池3と、配電系統システム4と、負荷5を備えて、構成される。
ここで、直流給電部1の電圧をV、太陽光発電システム2の出力電流をIpv、蓄電池3の放電電流をIdc、蓄電池3の充電電流をIch、配電系統システム4のDC/AC変換器42に流れる電流をIsell、AC/DC変換器43を流れる電流をIbuy、直流負荷5に供給される電流をIloadとし、以下説明する。
【0014】
太陽光発電システム2は、太陽電池21と、DC/DC変換器22とを備えて構成される。この実施形態は、太陽光発電システムを分散電源装置の代表として説明するが、風力発電装置、燃料電池およびその他の分散電源装置であってもよい。
太陽電池21は、結晶型太陽電池、多結晶型太陽電池または薄膜型太陽電池を使用することができ、例えば、最大日照時に例えば、5kWを発電することができるものが使用される。
【0015】
DC/DC変換器22は、太陽電池21の出力電圧を、直流給電部1への直流電圧に変換するものであり、直流給電部1の電圧Vと電流Ipvの両方を検出して、直流給電部の電圧Vが、蓄電池3の満充電(残量100%)の時の電圧(420V)以下においては、太陽電池21を最大電力点追従(MPPT)制御する。しかし、直流給電部の電圧Vが蓄電池3の満充電(残量100%)の時の電圧(420V)に達した場合は、直流給電部の電圧Vが蓄電池3の満充電(残量100%)の時の電圧(420V)に維持する制御に切り替える。この場合、太陽電池21を最大電力点追従(MPPT)制御することができないため、太陽電池の発電量をいくらか無駄にしてしまうことになる。しかし、本発明の実施形態では、直流給電部の電圧を360V〜400Vの電圧安定範囲となるように、DC/DC変換器が制御を行なうので、異常時でなければ、420Vに達することはない。また、DC/DC変換器の出力電流は、太陽電池21が最大5kW発電するため、直流給電電圧400Vの場合に5kW/400V=12.5Aとなる。
【0016】
蓄電池3は、リチウムイオン二次電池であり、定格電圧380V、10Ah(例えば、100直列、1並列)で構成され、直流給電部1に直結されている。ここで、直結とは、直流給電部1と蓄電池3の間に、DC/DC変換器のような電力変換器が介在されないという意味である。従って、直流給電部1と蓄電池3の電圧はほぼ等しくなる(実際には配線の電圧降下が存在する)。このリチウムイオン二次電池は、図2に示す容量―電圧特性を持っている。即ち、このリチウムイオン二次電池は、電池容量が空の時(0%)は、例えば300V、20%の時は、例えば360V、50%の時は、例えば380V(定格電圧)、80%の時は、例えば400V、100%(満充電)の時は、例えば420Vである。ここで示した電圧は、一例であり、電圧は直流電源の規格、または標準化に対応して設定するとよい。即ち、定格電圧を直流供給電圧の基準電圧、空の時の電圧を直流供給電圧の電圧安定範囲以下の電圧、満充電の時の電圧を直流供給電圧の電圧安定範囲以上の電圧に設定するとよい。
【0017】
リチウムイオン二次電池は、1セルあたり電池電圧は3Vであり、満充電のとき4.2Vである。3V以下に放電すると、電池の劣化が急激に進行するので、3V以下にならないように使用する。また、リチウムイオン二次電池は、3V以下、0Vになるまで放電しても、ごく僅かな放電しか行なわれないので、3V以下ではリチウムイオン二次電池は使用されない。ここでは、リチウムイオン二次電池を代表的に示したが、鉛電池またはニッケル電池などその他の電池でも使用可能である。
【0018】
このように、蓄電池3は、電池容量が50%のときの電圧380Vを中心にして、±20Vの範囲、即ち、電池容量が20%〜80%で、360V〜400Vの範囲に電圧安定範囲を有する。従って、蓄電池3には、例えば、電池容量が20%〜80%の間で、電圧変動が380Vを中心にして±20Vのように変動の少ない蓄電池が選択される。言い換えれば、直流電源の規格、または標準化の設定に対応して、直流電源の中心電圧と電池容量が50%のときの電圧とが一致し、直流電源の上限値電圧が電池の電圧安定範囲以上の電圧に一致し、直流電源の下限値電圧が電池の電圧安定範囲以下の電圧に一致するような蓄電池を選択する。従って、電圧変動の少ない蓄電池を使用することにより、蓄電池容量を広範囲で使用することが可能になり、蓄電池の利用率が向上する。
【0019】
負荷5は、例えば、家庭で使用されるエアコン、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、照明装置またはパソコンのような電気機器、オフィスで使用されるコンピュータ、複写機またはファクシミリのような電気機器、また店舗で使用されるショーケース及び照明装置を含む。勿論、これら以外の電力を消費するどのような電気機器も含む。本発明において、負荷5の消費電流は、全く使用しない場合、0Aであり、全ての機器を使用した場合に、例えば最大15Aであると設定した。従って、負荷の消費電流は、0A〜15Aまで変化する。
【0020】
配電系統システム4は、配電系統41に接続され、交流を直流給電部1の直流に、または直流給電部1の直流を配電系統41の交流に変換する双方向変換器よりなる。具体的には、配電系統41の交流を直流に変換するDC/AC変換器42と、配電系統41の交流を直流に変換するAC/DC変換器43とで構成される。
上記配電系統41に電力会社より送電される商用電力の電圧は、単相二線式交流100V(101V±6V)、三相3線式交流200V(202V±20V)、または三相4線式交流100V/200Vである。また、本発明では、配電系統から買電したり、分散電源で発電した電力を配電系統へ売電したりする。
【0021】
図3は、DC/AC変換器42の回路図を示す。DC/AC変換器42は、4つのスイッチング素子421a〜421dをブリッジに接続して構成されるDC/AC変換部421と、2つの連系リアクトル422と、直流給電部1の直流電圧を検出する電圧検出部423と、直流給電部1の電流を検出する電流検出部424と、制御部425とを備えて構成され、直流給電部1の直流電圧を配電系統41のAC200Vに変換する。
本発明の直流給電システムは、直流給電部1に蓄電池3を直結しているので、上記電圧検出部423が直流給電部1の直流電圧を検出することにより、蓄電池3の電圧を検出することできる。従って、電圧検出部423の検出電圧によって、図2に示す蓄電池の容量―電圧特性に基づいて蓄電池残量を推測することが可能である。電圧検出部423の検出電圧は差動増幅器426を経て、制御部425に入力される。
【0022】
図4は、制御部425のブロック図を示す。制御部425は、制御目標値選択部425aと、PWM制御部425bと、比較部427とを備えて構成される。制御目標値選択部425aは、図3に示すように、電圧検出部423で検出された直流給電部1の直流電圧を、差動検出部426を介して直流電圧情報426sとして受け、図8または図9の電流目標値設定表1または2に基づき、電流目標値Isell値を決定し、比較部427へ出力する。図8および図9の電流目標値設定表1または2に関しては後述する。また、比較部427は、電流検出部424(図3)で検出された直流給電部1の自経路電流を自経路電流情報424sとして受ける。比較部427は、電流値Isell値と自経路電流情報424sを比較し、その差分量を出力する。この差分量に基づいて、PWM制御部425bはDC/AC変換部421の4つのスイッチング素子421a〜421dをデューティ駆動する駆動信号425sを生成する。
【0023】
図5は、AC/DC変換器43の回路図を示す。AC/DC変換器43は、整流部431と、昇圧回路432と、電圧検出部433と、電流検出部434と、制御部435とで構成され、交流200Vを直流給電部1への直流電圧に変換する。
整流部431は、4つのダイオード431a〜431dをブリッジに接続して構成される。昇圧回路432は、昇圧用インダクタンス432a、スイッチング素子432b、ダイオード432cおよび平滑コンデンサ432dにより構成される。電圧検出部433は、直流給電部1の電圧Vを検出し、差動増幅器436を経て制御部435に直流電圧情報436sを提供する。電流検出部434は、直流給電部1に流れる自経路電流を検出し、制御部435に自経路電流情報434sを提供する。
【0024】
図6は、制御部435のブロック図を示す。制御部435は、図4に示したDC/AC変換器42の制御部425と類似し、制御目標値選択部435a、スイッチング素子駆動信号生成部435bおよび比較器437よりなる。
制御目標値選択部435aは、電圧検出部433(図5)で検出された直流給電部1の直流電圧を、差動検出部436を介して、直流電圧情報436sとして受けられる。制御目標値選択部435aは、図8または図9の電流目標値設定表1または2に基づき、電流値Ibuy値を決定する。図8および図9の電流目標値設定表1または2に関しては後述する。電流検出部434(図5)で検出された直流給電部1の自経路電流は自経路電流情報434sとして比較部437に与えられ、比較部437は電流値Ibuy値と、自経路電流情報434sを比較し、その差分量を出力する。この差分量に基づいて、スイッチング素子駆動信号生成部435bはスイッチング素子432bをデューティ駆動するため、三角波比較によるPI制御によりスイッチング駆動信号435sとして生成する。
【0025】
図8は、分散電源2として太陽光発電システムが用いられた場合の電流目標値設定表1を示す。図8の電流目標値設定表1に基づいて、図4の制御目標値選択部425aが制御され、また図6の制御目標値選択部435aが制御される。
即ち、制御目標値選択部425aは、直流給電部1の電圧Vを電圧検出部423より差動増幅器426を介して直流電圧情報426sを取得する。直流供給部1の直流電圧が360〜400Vの間の場合、7〜17時の間は、制御目標値選択部425aは、DC/AC変換器42の電流値Isellを10Aに制御する。電流値Isellを10Aとするため、DC/AC変換部421は、Isellが10Aになるようにデューティ制御される。これは、直流給電部1の直流電圧が直流電源として規格、または標準化された電圧範囲内にあり、かつ太陽光発電システムが所定の発電量を出力するので、10Aの売電を行っていることを示す。
【0026】
そして、それ以外の時間帯(17時〜23時、および23時〜7時)では太陽光発電システムの発電出力はなくなるので、DC/AC変換器42の電流値Isellを0Aに制御する。電流値Isellを0Aとするため、比較部427の出力は0になり、そのため、PWM制御部425bはデューティ比0の駆動信号を出力し、DC/AC変換部421の動作を停止させる。従って、直流給電部1から配電系統41への売電はなくなり、蓄電池3からの電力は、負荷5に供給される。このように、電流値Isellを0Aにするのに代えて、DC/AC変換部421を停止させる信号を出力してもよい。
【0027】
一方、制御目標値選択部435aは、図5に示す電圧検出部433より差動増幅器436を介して直流電圧情報436sを取得する。直流給電部1の直流電圧が360〜400Vの間の場合、7〜17時の間は、制御目標値選択部435aは、AC/DC変換器43の電流値Ibuyを0Aになるように制御する。電流値Ibuyを0Aとするため、スイッチング素子432bは、Ibuyを0Aに制御する。電流値Ibuyを0Aとするため、比較部437の出力は0になり、そのため、スイッチング素子駆動信号生成部435bはデューティ比0の駆動信号を出力し、昇圧回路432の動作を停止させる。従って、配電系統41から直流給電部1の買電はなくなる。また、電流値Ibuyを0Aにするのに代えて、AC/DC変換器43の動作を停止させる信号を出力してもよい。このように、直流給電部1の直流電圧が360〜400Vであり、7〜17時の間は、直流給電部1の直流電圧が直流電源として規格、または標準化された電圧範囲内にあり、配電系統41より買電が不要であることを示す。
【0028】
しかし、それ以外の時間帯では、例えば、17時〜23時は、直流給電部1の直流電圧Vが360〜400Vの間の場合、制御目標値選択部435aは、AC/DC変換器43の電流値Ibuyを、3Aになるように制御する。電流値Ibuyを3Aとするため、スイッチング素子432bは、Ibuyが3Aになるようにデュ−ティ制御される。これは、直流給電部1の直流電圧Vが直流電源として規格、または標準化された電圧範囲内にあり、かつ太陽光発電システム2の発電出力がないので、不足分を配電系統41より買電していることを示す。
【0029】
更に、例えば、23時〜7時は、直流給電部1の直流電圧が360〜400Vの間の場合、制御目標値選択部435aは、AC/DC変換器43の電流値Ibuyを、10Aになるように制御する。電流値Ibuyを10Aとするため、スイッチング素子432bは、電流値Ibuyが10Aになるようにデュ−ティ制御される。これは、直流給電部1の直流電圧が直流電源として規格、または標準化された電圧範囲内にあり、かつ太陽光発電システムの発電出力がないので、深夜電力によって、需要電力の不足分及び蓄電池の充電電力を配電系統41より買電していることを示す。
【0030】
以上は、直流給電部1の直流電圧Vが直流電源として規格、または標準化された電圧範囲内(360V〜400V)にある場合を説明したが、次は、図9の電流目標値設定表2を使用して直流電源の規格、または標準化された電圧範囲から逸脱した場合を説明する。
即ち、直流給電部1の直流電圧Vが直流電源として規格、または標準化された電圧範囲以上になった場合、例えば、太陽光発電システムの発電出力が増加し、または負荷がなくなり、V≧400Vになった場合である。この場合、制御目標値選択部425aは、図9に示すように、DC/AC変換器42の電流値Isellを、20Aになるように制御する。電流値Isellを20Aとするため、DC/AC変換部421は、Isellが20Aになるようにデューティ制御される。これは、直流給電部1の直流電圧Vが直流電源の規格、または標準化された電圧範囲以上になったので、20Aの売電を行っていることを示す。この実施形態の太陽光発電システムは、最大400V、12.5Aを出力すると設定しているので、電流値Isell=20Aの場合、蓄電池は必ず放電することになる。このとき、AC/DC変換器43は動作停止するよう制御される。
【0031】
逆に、直流給電部1の直流電圧Vが直流電源として規格、または標準化された電圧範囲以下になった場合、例えば、太陽光発電システムの発電出力が低下し、または大きい負荷が接続され、V≦360Vになった場合である。この場合、制御目標値選択部435aは、AC/DC変換器43の電流値Ibuyを、20Aになるように制御する。スイッチング素子432bは、電流値Ibuyが20Aになるようにデューティ制御される。これは、直流給電部1の直流電圧が直流電源の規格、または標準化された電圧範囲以下になったので、20Aの買電を行っていることを示す。また、直流負荷量の最大値は15Aであるため、電流値Ibuy=20Aの場合、蓄電池は必ず充電することになる。このとき、DC/AC変換器42は動作停止するよう制御される。
なお、図8に示した電流目標値設定表1と、図9に示した電流目標値設定表2は、図9に示した電流目標値設定表2が優先的に使用される。
【0032】
以上は、本発明の直流給電システムに分散電源2として太陽光発電システムが接続された場合に、太陽光発電システムの発電時間(7時から17時)により制御する場合であるが、発電時間は季節変動するので、季節に対応して変動させることが望ましい。また、風力発電システムの場合は、時間に寄らず発電出力が得られるので、発電出力に基づいて制御するとよい。また、燃料電池が用いられる場合は、燃料電池の活用時間または発電出力に基づいて制御するとよい。
【0033】
図8及び図9では、電流値Isell,Ibuyは、0A、3A、10Aまたは20Aのように段階的に変化した。しかし、このように段階的に電流値が変化すると、直流給電部1の電圧変動が段階的に生じる場合があるので、このような不都合を軽減するため、段階をさらに増やして複数の段階にしてもよい。
または、図10に示す電流目標値設定表3を使用するとよい。即ち、図10は、電圧安定範囲内の上限部または下限部に、直流給電部の電圧変化を緩やかに変化させる電流目標値を設定し、この電流目標値に基づいて、制御目標値選択部425aを制御し、また制御目標値選択部435aを制御する。
【0034】
例えば、電流目標値設定表3では、直流給電部1の直流電圧Vが365V〜395Vの範囲では、図8に示した電流目標値設定表1に従って制御される。また、400V以上、360V以下では、図9に示した電流目標値設定表2に従って制御される。しかし、直流給電部1の直流電圧が395V〜400V(上限部)および360V〜365V(下限部)の範囲では、次のように制御される。
直流給電部1の直流電圧Vが395V〜400Vの場合、制御目標値選択部425aは、DC/AC変換器42の電流値Isellを、次式(1)のように制御する。
Isell=(直流電圧―395)×2+10 ・・・(1)
(ただし、395、2および10は定数)
電流値Isellを式(1)のように制御するため、DC/AC変換部421は、デューティ制御される。これは、直流給電部1の直流電圧が直流電源として規格、または標準化された電圧範囲の上限部にあるので、直流電圧の変化分の半分のように緩やかに変化するように制御していることを示す。このとき、電流値Ibuyは、0に制御され、AC/DC変換器43は動作停止するよう制御される。
【0035】
また、直流給電部1の直流電圧が360V〜365Vの範囲では、制御目標値選択部435aは、AC/DC変換器43の電流値Ibuyを、次式(2)のように制御する。
Ibuy=(365−直流電圧)×2+10 ・・・(2)
(ただし、365、2および10は定数)
電流値Ibuyを式(2)のように制御するため、スイッチング素子432bは、デューティ制御される。これは、直流給電部1の直流電圧が直流電源として規格、または標準化された電圧範囲の下限部にあるので、直流電圧の変化分の半分のように緩やかに変化するように制御していることを示す。このとき、電流値Isellは0に制御され、DC/AC変換器42は動作停止するよう制御される。
【0036】
以上のような構成をとることにより、蓄電池と直流給電部との間に電力変換器を介することなく直流給電電圧を360〜400Vの範囲内で動作させることができ、高効率、低コストなシステムが実現可能となる。
本実施形態ではDC/DC変換器22を使用したが、本変換器はなくても構わない。その場合、蓄電池の電圧を太陽電池の最大電力点電圧に極力近くなるように設計しておく必要がある。
【0037】
上記実施形態では、図2の容量―電圧特性を有する一般的なリチウムイオン二次電池を、蓄電池3に使用したが、正極にリン酸鉄リチウムを使用したリチウムイオン二次電池を使用することもできる。この電池の容量―電圧特性を図7に示す。この蓄電池は、電圧安定範囲を360V〜400Vに設定した場合、蓄電池の容量は5%〜95%まで使用可能となり、図2の容量―電圧特性を有する蓄電池と比較して、蓄電池の稼働率を上げることが可能となる。
【0038】
上記実施形態では、IbuyもしくはIsellの電流目標値を図8のように時刻によって設定をしたが、特にどのような方法で設定しても構わない。例えば、時刻ではなく例えば外部からの信号によりIbuyもしくはIsellの目標電流値を設定してもよい。図8はあくまで一例であり、上記実施形態にしばられるものではない。ただし、図9の電圧設定による目標電流制御は必ず必要であり、図8がどのようにIbuyもしくはIsellの目標電流値を設定しても、図9の制御が優先される。
【符号の説明】
【0039】
1 直流給電部
2 太陽光発電システム
3 蓄電池
4 配電系統システム
5 直流負荷
21 太陽電池
41 配電系統
42 DC/AC変換器
43 AC/DC変換器
421 DC/AC変換部
423 直流電圧検出部
424 自経路電流検出部
425 制御部
425a 制御目標値選択部
425b PWM制御部
431 整流部
432 昇圧回路
432b スイッチング素子
433 直流電圧検出部
434 自経路電流検出部
435 制御部
435a 制御目標値選択部
435b スイッチング素子駆動信号生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統より双方向電力変換器を介して、負荷へ直流電力を供給する直流給電部に蓄電設備を接続し、直流給電部の電圧を監視し、前記直流給電部の電圧が所定電圧範囲以下になるとき、前記配電系統から前記直流給電部へ電力を供給し、前記直流給電部の電圧が前記所定電圧範囲以上になるとき、前記直流給電部から前記配電系統へ電力を供給するように前記双方向電力変換器を制御する制御部を備えることを特徴とする直流給電システム。
【請求項2】
前記所定電圧範囲は、蓄電設備の電圧変動可能範囲に対応するよう設定される請求項1に記載の直流給電システム。
【請求項3】
更に、前記双方向電力変換器の電流を検出する自経路検出部を備え、前記制御部は、前記直流給電部の電圧情報と、前記自経路検出部の自経路電流情報に基づいて、前記双方向電力変換器を制御する請求項1または2に記載の直流給電システム。
【請求項4】
更に、前記直流給電部に接続される分散電源を備える請求項1から3までのいずれか1項に記載の直流給電システム。
【請求項5】
前記制御部は、直流給電部の電圧変化を緩やかに変化させる電流制御目標値を設定し、直流給電部の電圧が所定の電圧範囲内の上限部または下限部に達したとき、制御部は、電流制御目標値に基づいて双方向電力変換器の電流を制御する請求項1から4までのいずれか1項に記載の直流給電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−147508(P2012−147508A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1399(P2011−1399)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】