説明

直流電源回路

【課題】簡易な構成で、最適な出力電圧の昇圧、降圧を実現できる直流電源回路を提供する。
【解決手段】直流電源回路の正極側の入力端子間に配置され、自己インダク、コンデンサ、第1のインダクタ、整流用ダイオードを含む第1の直列回路と、自己インダクタを導通状態あるいは非導通状態に交互に切り換えるスイッチング素子と、一端が前記コンデンサの一端に接続されているとともに第1のインダクタと磁気結合され、他端が直流電源回路の負極側に接続された第2のインダクタと、を備え、第1のインダクタと第2のインダクタとの巻線比を例えば、1:1とすると、バッテリ電圧Eと出力電圧Voとの関係は、デューティ比をDとして、Vo=2DE/(1−D)となる。これにより、従来より、広い範囲で、出力電圧Voの昇圧および降圧を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源回路に関し、特に、自動車等の照明用LEDの駆動に好適な直流電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置や照明装置の光源として発光ダイオード(以下、LEDという)が使用されるケースが増えている。特に、LEDには、低電力、高輝度、高寿命という特徴があり、低消費電力、高品質がすべての製品において求められる中、注目の照明装置の一つといえる。こうしたことから、最近では、品質への要求が大変厳しい自動車のヘッドランプ等にも採用されている。
【0003】
従来から、LEDを光源として利用する場合、その発光量や輝度等を一定にするために、LEDへの供給電流を安定化することが要求される。また、自動車等の車両に用いる場合には、供給電源が車載用のバッテリとなるが、バッテリの電圧値は例えば、6Vから24Vと、その値の幅が大きく、また、用いられるLEDの個数も車種等や用途により異なる。
【0004】
そのため、従来は、例えば、特許文献1に示すような、昇圧型電源が用いられていた。ここでは、説明のために、同様の昇圧型電源を図3に例示して説明する。図3において、電源回路の入力端子には、バッテリの正極、負極(+B、-B)がそれぞれ接続されており、+Bには、直列にインダクタL10と、ダイオードD10が接続され、ダイオードD10のカソードとGND間にコンデンサC10とLED LAMPが接続されている。また、インダクタを導通状態あるいは非導通状態に交互に切り換えるスイッチング素子の一端がインダクタL10とダイオードD10のアノードの間に、他端がGNDに接続され、制御部によりコントロールされている。
【0005】
前述のように、自動車等の車両に用いる場合、バッテリの想定電圧範囲は、例えば、約6Vから24Vと広い一方で、例えば、出力電圧が100Vというような仕様の場合には、最低のバッテリ電圧6Vを想定し、これに対して、出力電圧を100Vまで昇圧する回路が必要となる。しかしながら、図3の回路では、バッテリ電圧をE、出力電圧をVo、スイッチング素子のデューティ比をD(D=TON/(TOFF+TON)、TON:ON時間、TOFF:OFF時間)とすると、バッテリ電圧Eと出力電圧Voの関係は、Vo=E/(1−D)となる。ここで、一般的に、デューティ比DのMAX値を0.9とすれば、Vo=10Eとなる。したがって、図3の回路、すなわち、従来のような昇圧型回路では、上記の仕様を満足できない。
【0006】
一方で、バッテリ電圧が24Vの場合に、出力電圧を、例えば、15Vにする仕様の場合、図3の回路では、上記の関係式からデューティ比DのMIN値は、0であるから、Vo=Eが最も小さな出力電圧となり、こうした要求を満足することができない。そのため、こうした要求に対して、従来は、図4のように、図3の回路に、スイッチング素子Q20とダイオードD20とを追加して、昇降圧回路を構成することで、出力電圧を入力電圧以下に絞り込むことを行っていた。
【特許文献1】特開2005−80353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図4の回路は、出力電圧を入力電圧以下に絞り込むことができたとしても、昇圧回路の構成は、図3と同様であるため、上記の昇圧要件、降圧要件の双方を同時に満足することができないといった問題があった。また、回路構成が複雑であるといった問題もあった。
【0008】
そこで、本発明は、上述の課題を鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、最適な出力電圧の昇圧、降圧を実現できる直流電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明は、以下の事項を提案している。
(1)本発明は、負荷へ給電する直流電源回路において、前記直流電源回路の正極側の入出力端子間に配置され、自己インダク((例えば、図1のインダクタL1に相当)、コンデンサ(例えば、図1のコンデンサC2に相当)、第1のインダクタ(例えば、図1のインダクタL3に相当)、整流用ダイオード(例えば、図1のダイオードD1に相当)を含む第1の直列回路と、前記自己インダクタを導通状態あるいは非導通状態に交互に切り換えるスイッチング素子(例えば、図1のスイッチング素子Q1に相当)と、一端が前記コンデンサの一端に接続されているとともに前記第一のインダクタと磁気結合され、他端が前記直流電源回路の負極側接続された第2のインダクタ(例えば、図1のインダクタL2に相当)と、を備えたことを特徴とする直流電源回路を提案している。
【0010】
この発明によれば、第1のインダクタと第2のインダクタとを備えたことから、これらの巻線比を例えば、1:1とすれば、バッテリ電圧Eと出力電圧Voとの関係は、デューティ比をDとして、Vo=2DE/(1−D)となる。したがって、D=0.9の場合には、出力電圧Voをバッテリ電圧Eの18倍まで昇圧でき、D=0.1の場合には、出力電圧Voをバッテリ電圧Eの0.22倍まで降圧できる。
【0011】
(2)本発明は、(1)の直流電源回路について、前記負荷が少なくとも1つのLEDで構成してあることを特徴とする直流電源回路を提案している。
【0012】
この発明によれば、負荷が少なくとも1つのLEDで構成されているため、仕様に応じて柔軟な電源を構成することができる。
【0013】
(3)本発明は、(1)の直流電源回路において、前記第2のインダクタと前記第1のインダクタとの巻線比が、1:nであることを特徴とする直流電源回路を提案している。
【0014】
この発明によれば、第2のインダクタと第1のインダクタとの巻線比が、1:nであることから、昇圧、降圧ともにさらに自由度を設けることが可能となる。
【0015】
(4)本発明は、(1)から(3)の直流電源回路において、前記出力端子側に抵抗(例えば、図1の制御部に相当)を設け、該抵抗に流れる電流値が一定になるよう前記スイッチング素子の切り替えタイミングを制御する制御部を備えたことを特徴とする直流電源回路を提案している。
【0016】
この発明によれば、出力端子側に抵抗を設け、抵抗に流れる電流値が一定になるようスイッチング素子の切り替えタイミングを制御することから、適切な電圧を負荷に供給しつつ、定電流駆動を行うことができる。
【0017】
(5)本発明は、(4)の直流電源回路において、前記負荷のショートモードを検出し、前記負荷への電圧の供給を降圧するショートモード検出手段(例えば、図1の制御部に相当)を設けたことを特徴とする直流電源回路を提案している。
【0018】
この発明によれば、負荷のショートモードを検出し、負荷への電流の供給を停止することから、通常時は、適切な電流を供給しつつ、負荷に不具合が発生し、ショートモードになった場合には、負荷への電流の供給を停止することにより、装置の発熱やバッテリの放電を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、昇圧率が従来よりも非常に高いため、例えば、負荷がLEDである場合に、LEDを高輝度に発光させることができる電源を供給することができるという効果がある。また、入力のバッテリ電圧よりも負荷への印加電圧である出力電圧を低く設定することができるため、例えば、負荷がLEDである場合に、必要に応じて明るさを調節することができるという効果がある。さらに、通常は、適切な電圧を供給しつつ、負荷がショートモードになったときには、負荷への電圧を降圧することから、装置の発熱やバッテリの放電を防止することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。 なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0021】
<回路構成>
図1は、本発明の実施形態の直流電源回路の回路構成を示すものである。
図1において、入力端子には、バッテリEが接続されている。また、バッテリEの正極ライン(+B)には、直列に自己インダクタL1、コンデンサC2、第一のインダクタL3、ダイオードD1が接続されている。
【0022】
さらに、バッテリEと並列にコンデンサC1が配置され、スイッチング素子Q1の一端が自己インダクタL1とコンデンサC2間に、その他端が負極側に接続されている。また、第二のインダクタL2の一端がコンデンサC2の一端に接続されているとともに第一のインダクタL3と磁気結合され、その他端が負極側に接続されている。
【0023】
ダイオードD1のカソードには、コンデンサC3が接続され、その他端は負極側に接続されている。コンデンサC3と並列に分圧抵抗R1、R2が接続され、負極側ラインに直列に抵抗R3が接続されている。
【0024】
また、スイッチング素子Q1は、制御部により、デューティコントロールされ、抵抗R1、R2の分圧点およびR3の一端も制御部に接続されている。そして、出力端子には、LED LAMPが接続されている。なお、本実施形態では、抵抗R3を負極側に設けてあるが、正極側に設けてあってもよい。
【0025】
ここで、バッテリEは車載用のバッテリであり、その電圧値は、約6Vから24Vを想定している。コンデンサC1は、バッテリEの高周波ノイズ除去用である。インダクタL1は、スイッチング素子Q1がONすると図2に示すように、電流I1が流れ、電圧V1を発生する。
【0026】
スイッチング素子Q1は、制御部により、デューティコントロールされ、これによって、所望の出力電圧を発生する。コンデンサC2は、自己インダクタL1が発生した電圧V1をチャージし、スイッチング素子Q1がOFFになると、電流I2が図中I2の向きにインダクタL2、L3を流れ、図2に示すような電圧V2、V3が発生する。
【0027】
したがって、いま、インダクタL2とインダクタL3との巻線比が1:1であるとした場合、バッテリ電圧Eと出力電圧Voとの関係は、デューティ比をDとすれば、Vo=2DE/(1−D)となる。これにより、D=0.9の場合には、出力電圧Voをバッテリ電圧Eの18倍まで昇圧でき、D=0.1の場合には、出力電圧Voをバッテリ電圧Eの0.22倍まで降圧できる。
【0028】
また、インダクタL2とインダクタL3との巻線比を1:nであるとした場合には、バッテリ電圧Eと出力電圧Voとの関係は、Vo=DE/(1−D)+nDE/(1−D)となる。したがって、インダクタL2とインダクタL3との巻線比を変えることにより、さらに柔軟に、昇圧値、降圧値を設定することができる。
【0029】
ダイオードD1とコンデンサC3は、LED LAMPに供給する電圧を平滑化する。抵抗R3は、LED LAMPを介して負極側に流れる電流を電圧に変換して制御部に供給するものであり、制御部に供給された電圧値が所定値になるように、制御部は、スイッチング素子Q1のデューティを微妙にコントロールして、LED LAMPを定電流駆動する。
【0030】
抵抗R1、R2は、LED LAMPへの供給電圧Voの分圧値を生成して制御部に供給する。制御部は、抵抗R3がスイッチング素子Q1の微妙なデューティコントロールによっても所定値よりも高く、また、抵抗R1、R2の分圧値が定常値よりも低い場合には、LED LAMPがショートモードであると判断して、スイッチング素子Q1のデューティを0にし、LED LAMPへの供給を遮断して、ショートしたLED LAMPへの電流の供給を停止する。
【0031】
以上、本実施形態によれば、昇圧率が従来よりも非常に高いため、例えば、負荷がLEDである場合に、LEDを高輝度に発光させることができる電源を供給することができる。また、入力のバッテリ電圧よりもLEDへの印加電圧である出力電圧を低く設定することができるため、必要に応じて明るさを調節することができる。さらに、通常は、適切な電圧を供給しつつ、負荷がショートモードになったときには、負荷への電流の供給を停止することから、装置の発熱やバッテリの放電を防止することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態に係る直流電源回路の一例を示す接続図である。
【図2】図1に示す回路における主要電圧および電流のタイミングチャートである。
【図3】従来例に係る昇圧型電源の一例を示す接続図である。
【図4】従来例に係る昇降圧型電源の一例を示す接続図である。
【符号の説明】
【0034】
E・・・バッテリ、C1、C2、C3、C10・・・コンデンサ、L1、L2、L3L10・・・インダクタ、Q1、Q10、Q20・・・スイッチング素子、D1、D10、D20・・・ダイオード、R1、R2、R3・・・抵抗、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷へ給電する直流回路において、
前記直流電源回路の正極側の入力端子間に配置され、自己インダク、コンデンサ、第1のインダクタ、整流用ダイオードを含む第1の直列回路と、
前記自己インダクタを導通状態あるいは非導通状態に交互に切り換えるスイッチング素子と、
一端が前記コンデンサの一端に接続されているとともに前記第一のインダクタと磁気結合され、他端が前記直流電源回路の負極側に接続された第2のインダクタと、
を備えたことを特徴とする直流電源回路。
【請求項2】
前記負荷が少なくとも1つのLEDで構成してあることを特徴とする請求項1に記載の直流電源回路。
【請求項3】
前記第2のインダクタと前記第1のインダクタとの巻線比が、1:nであることを特徴とする請求項1または2に記載の直流電源回路。
【請求項4】
前記出力端子側に抵抗を設け、該抵抗に流れる電流値が一定になるよう前記スイッチング素子の切り替えタイミングを制御する制御部を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の直流電源回路。
【請求項5】
前記負荷のショートモードを検出し、前記負荷への電圧の供給を降圧するショートモード検出手段を設けたことを特徴とする請求項4に記載の直流電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−50104(P2009−50104A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214630(P2007−214630)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】