説明

直線型ダイナモメータを用いて角度方向での等運動性測定を得るためのシステムと方法

本発明は、身体の一部分が、任意の角速度で有効回転軸を有する回転或いは曲げ運動を実行している間における該身体の一部分によって行われる運動の等運動性のモーメントの測定を得るための方法である。該方法は、直線経路に沿った予め定められた運動範囲上の等運動性の測定を実行するための直線型ダイナモメータを使用する。まず、前記有効回転軸に対する任意の半径の円に対する略接線方向の直線経路に前記直線型ダイナモメータを配設し、前記直線型ダイナモメータを用いて、前記身体の一部分により加えられる力を測定する。そして、予め定められた直線速度での予め定められた運動範囲にわたって、前記身体の一部分により加えられる力の分布を、前記直線型ダイナモメータを用いて測定する。その後前記力の分布、直線速度及び半径を用いて、前記身体の一部分と対応する角速度により生じたモーメントに対するデータが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は等運動性の測定に関し、より詳しくは直線型ダイナモメータを用いて角度方向での等運動性測定を得るためのシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筋力は筋肉活動を判断する主なパラメータであり、また二つのタイプの収縮(静的・動的)により計測できる。静的な収縮の際、筋肉は関節を動かさない。これは、外部抵抗が筋肉によって発生したモーメントと一致するからである。抵抗を測定するためのロードセルにより、原理上、筋力値を平易に得ることができる。しかし、実際面において、この方法はほとんど使用されていない。なぜならば、結果として生じた値が可動域の単独の点のみにしか関連せず、他の重要なパラメータを測定することはできない。
【0003】
その代わりに、筋力測定における一般的な技術は等運動性角度ダイナモメータを用い、該ダイナモメータは一定の角速度で動く間、筋力が及ぼすモーメントを計測する。主に整形外科、リハビリテーション、理学療法の分野において、動的筋力の測定は、患者の機能評価を行うための重要な要素である。また、身体障害に関する訴訟事件での損害賠償および損害補償を評価する際、このような測定方法は非常に重要である。
【0004】
等運動性運動および等運動性治療の装置は長年使用されている。初期の例では、米国特許第3,465,592号(出願人:Perrine)があげられ、この装置は関節の屈曲と伸長作用における等運動性運動システムである。
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,465,592号公報
【特許文献2】米国特許第4,235,437号公報
【特許文献3】米国特許第4,235,437号公報
【特許文献4】米国特許第4,628,910号公報
【特許文献5】米国特許第4,890,495号公報
【特許文献6】米国特許第5,330,397号公報
【特許文献7】米国特許第5,186,695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
米国特許第4,235,437号(出願人: Ruis等)はロボットを利用した運動器具を開示したものである。この器具はコンピュータを利用する。このコンピュータは運動器具にプログラムされたソフトウェアおよび器具の使用者によって使用者の腕にかかる力に応じて、運動腕の動きを制御するもので、腕に加わる力は腕の末端部に設置したひずみ計で測定する。
油圧シリンダおよび電磁弁を用いて、腕の動きは正確に制御できるが、米国特許第4,235,437号においての装置は比較的複雑で、高額なコンピュータ装置および複雑な連結システムを必要とする。さらに、装置はコンピュータ制御であるので、使用者は使用前に所望する設定でコンピュータをプログラミングしなければならない。つまり、大変手間がかかり実行にすぐに移せない装置である。
【0007】
当然のことながら、筋肉運動装置およびリハビリ装置の全ての動作モードで、腕が滑らかに動かせられる必要性がある。コンピュータ制御装置の問題点は、コンピュータが様々なサンプリングや計算を行うが、後に補正を必要とする点である。コンピュータが作業する時間は一般的に速いと見なされているが、実際コンピュータがこのような作業を行い、器具の機械装置および油圧器を制御する時間を考慮すると、とりわけ腕に負荷をかけず滑らかな腕の動きを生み出せない可能性がある。
【0008】
さらに、上述の米国特許でも示したように、油圧装置を使用した際に発生する、漏出、サーボバルブ内での汚れ、ホースおよびパイプのコンプライアンス、そして放熱といった様々な問題点は、システムの精度を下げる。
【0009】
現在幅広く利用されているもっとも最新システムの代表は、米国特許第4,628,910号(出願人:Krukowski (Biodex Corp.))である。このシステムでは、異なる関節の一定範囲の同心円状の動き、またある場合においては偏心的な動きを精確に測定する。しかし、このシステムの複雑さは、システムをかさばらせ費用をかさませる。
【0010】
一般的に、幅広く使用されているシステムは、測定対象の関節のほぼ最大可動域全体にわたって測定する。近年の研究では、比較的小さな角度範囲にわたる測定は、事実上、大きな角度範囲にわたる測定と大変類似するという結果を出した。この発見に関する論文の例は、 Dvir, Z、Keating, Jによる等運動性の胴体の伸長の再現性および非常に短い範囲の運動を用いた研究(Clinical Biomechanics 16:627−630,2001)、 また、Dvir, Z、Steinfeld-Cohen, Y、Peretz, C による健常者に対する仮想的肩関節屈曲脆弱性の識別(American Journal of Physical Medicine and Rehabilitation 81:187−193,2002)で参照できる。しかし、現在使用されている測定システムを多少なりとも簡素化するために、これらの発見はこれまでに使用されていない。
【0011】
最後に、直線型ダイナモメータ(直線型等運動性ダイナモメータを含む)における多種多様な実施方法は開発されており、これらの直線型ダイナモメータは、高度で特別な運動の装置として一般的に用いられている。 例として、プッシュプル運動(例として米国特許第4,890,495号)、ペダリング運動(例として米国特許第5,330,397号)および持ち上げ運動(例として米国特許第5,186,695号)があげられる。しかし、これら全ての装置は角度方向での等運動性の測定を行うことが不可能であり、測定値は、上記で示したような筋力評価を得ることができない。
【0012】
したがって、角度方向での等運動性測定を得るシステムおよび方法を必要とし、この等運動性測定を、比較的小範囲の動作を用いることにより、より簡単で経済的に求めることができる。また、このことは、直線型ダイナモメータを使用して、角度方向での等運動性測定を得るシステムおよび方法を提供するにあたって有益となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、直線型ダイナモメータを用いて角度方向の等運動性の測定を行うためのシステム並びに方法である。
本発明の一実施形態は、身体の一部分が、任意の角速度で有効回転軸を有する回転或いは曲げ運動を実行している間における該身体の一部分によって行われる運動の等運動性のモーメントの測定を得るための方法であって、該方法は、(a)直線経路に沿った予め定められた運動範囲上の等運動性の測定を実行するための直線型ダイナモメータを準備する段階と、(b)前記有効回転軸に対する任意の半径の円に対する略接線方向の直線経路に前記直線型ダイナモメータを配設し、前記直線型ダイナモメータを用いて、前記身体の一部分により加えられる力を測定する段階と、(c)予め定められた直線速度での予め定められた運動範囲にわたって、前記身体の一部分により加えられる力の分布を、前記直線型ダイナモメータを用いて測定する段階と、(d)前記力の分布、直線速度及び半径を用いて、前記身体の一部分と対応する角速度により生じたモーメントに対するデータを得る段階からなることを特徴とする方法である。
本発明の更なる特徴は、前記測定が、同心円状に行われることである。尚、その代わりに或いは追加的に、前記測定が、偏心円状に行われるものであってもよい。
本発明の更なる特徴は、前記予め定められた直線速度での測定が、2つの異なる直線速度で実行され、該2つの異なる直線速度が、前記有効回転軸に対する前記身体の一部分の2つの異なる角速度に対応することである。
本発明の更なる特徴は、前記身体の一部分の角運動に対応する範囲が30°以下であるように、前記運動並びに半径に対する予め定められる範囲が選択されることである。より好ましくは、20°を超えないものである。
本発明の更なる特徴は、前記運動に対して予め定められる範囲が少なくとも約25mmであることを特徴とする請求項1記載の方法であり、より好ましくは、約5cmから約15cmである。
【0014】
本発明の一実施形態は、身体の一部分が、任意の角速度で有効回転軸を有する回転或いは曲げ運動を実行している間における該身体の一部分によって行われる運動の等運動性のモーメントの測定を得るためのシステムであって、該システムは、(a)ハウジングと変位部分を備えるとともに、前記変位部分が、前記ハウジングに対する動作線に沿う等運動性の運動を受けている間、前記変位部分に対して前記動作線に沿って加えられる力を計測する直線型ダイナモメータと、(b)予め定められた位置において被験者を支持する椅子と、(c)前記直線型ダイナモメータと前記椅子を支持する調製可能型支持システムからなり、前記調整可能型支持システムは、前記椅子に対する垂直方向変位の任意の範囲上の複数の任意の位置及び略水平の調整軸に対する角度位置の任意の範囲内の複数の任意の位置に、前記直線型ダイナモメータを選択的に固定することを可能とすることを特徴とするシステムを提供する。
本発明の更なる特徴は、前記調整可能型支持システムが、前記直線型ダイナモメータと前記椅子との相対的位置を選択的に固定することを可能とし、該固定が、水平方向の変位の2自由度内で予め定められた相対的変位の範囲内で行われることである。
本発明の更なる特徴は、前記予め定められた水平方向の変位の2自由度内での相対的変位が、前記椅子を支持するレール・システムにより定義されることである。
本発明の更なる特徴は、前記調整可能型支持システムが、前記椅子を通過する略垂直な軸を中心とする前記椅子の回転動作を可能とすることを特徴とする。
本発明の更なる特徴は、前記調整可能型支持システムが、略水平な軸に対して、前記椅子を傾斜させることを可能とすることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
本発明は、直線型ダイナモメータを用いて角運動についての等運動性測定を得るための、システム及び方法である。
【0016】
本発明によるシステム及び方法の原理及び操作は図面及び付随する説明を参照することでよりよく理解されうる。
【0017】
ここで図面を参照する。図1及び図3は、符号(10)で示された、本発明に従って構築され、操作されるシステムを示す。このシステムは、身体の一部分が、任意の角速度で有効回転軸を有する回転或いは曲げ運動を実行している間における該身体の一部分によって行われるモーメントの等運動性の計測を得るためのものである。
【0018】
一般的に言って、本発明は前記の、比較的小さい角度範囲での計測は、比較的大きな角度範囲での計測と非常に類似した結果を実際に出す、という観察に基づく。この観察に従って、本発明は直線運動をもって、要求の角度の短い円弧に近似させる。慣例的には、この種の適用では、直線運動が円運動の近似として許容可能とされるのは、20°までである。また30°とすることもある。このことは、ダイナモメータ自体及び全般的な装置の構造の格段の簡略化を可能にする。
【0019】
本発明の方法をより具体的に説明すると、上記のように、身体の一部分が、任意の角速度で有効回転軸を有する回転或いは曲げ運動を実行している間における該身体の一部分によって行われるモーメントの等運動性の計測を得るための方法が提供される。該方法には、直線型ダイナモメータを用いる。該ダイナモメータは所定の直線経路に沿った運動の範囲の等運動性を計測する。第一に、有効回転軸を中心とする所定の半径のほぼ接線上に、該直線型ダイナモメータが配される。該ダイナモメータは身体の一部分により加えられる力を計測する。直線的ダイナモメータはその後、所定の運動範囲内を所定の線速度で、身体の一部分が加える力の分布を測定するのに用いられる。この力の分布、線速度、および半径を用いて、身体の一部分によって加えられるモーメント及び対応する角速度のためのデータを得る。
【0020】
ここで説明する技術では、直線型ダイナモメータを用いて、各筋肉のグループの動作パラメータを提供する。これは前記の慣例的なリニア装置とは好対照である。慣例的な装置は、複数の筋肉グループに係る全般的な動作情報のみを提供する。この情報からは、この種の各筋肉のグループの動作パラメータ情報を容易に得ることは出来ない。
【0021】
直線運動を弧状経路の近似として許容される運動範囲内に留めるには、所定の運動及び半径の範囲は、好ましくは、対応する身体の一部分が行う角度運動の範囲を30°以内とする。より好ましくは20°以内となる範囲から選択する。
【0022】
ここに示す好ましい実施例では、システム(10)は直線型ダイナモメータ(12)を備える。該ダイナモメータはハウジング(14)および変位部分(16)を備える。ダイナモメータ(12)は、変位部分(16)がハウジング(14)に関連する動作線(18)方向の等運動性直線運動を受ける間、変位部分(16)に動作線(18)方向に加えられる力を測定するように作られている。システム(10)はまた椅子(20)および、調節可能支持システムを備える。該椅子(20)は所定の位置の被検者を支持する。該調節可能支持システムは、直線型ダイナモメータ及び椅子を支持する。調節可能支持システムは、図3の概略図においてボックス(21)として示される。該調節可能支持システムは様々な自由度を提供するように作られている。該自由度によりダイナモメータおよび動作被検者の相対的位置を調節して、ダイナモメータの動作線が検査対象である関節の角運動が描く円弧の接線にほぼ対応するようにする。システム(10)のその他の要素は通常、インターフェース(32)を備えるコンピュータ(30)を備える。該インターフェースはパラメータ及び/又はいくつかのその他のインプット(34)を手動で入力するためのものである。
【0023】
ここでシステム(10)のより詳細な特徴に移る。調節可能な支持システム(21)は、ダイナモメータ(12)および椅子(20)の両方を、単独で直接支持する構造である必要はない。よって、ここで示す支持システム(21)の例では、ダイナモメータ(12)は支柱(22)上に支持される。該支柱はブラケット(24)を通して、壁などの固定された外表面に固定される。一方で椅子(20)は床上に配されたレール・システム(28)上に支持される。該レール・システム(28)は支柱(22)に直接または間接的に接続される。さらに、該ダイナモメータと該椅子との間の調節方法は、特に限定されるものではない。よって、例えば、垂直方向の調節はダイナモメータ(12)を上下に調節すること、また椅子(20)を同様に調節することのいずれで実現されてもよい。但し、いずれの場合も、要求の、相対的な垂直方向の調節の範囲が提供されなければならない。
【0024】
好ましくは、支持システムは直線型ダイナモメータを、任意の複数の垂直位置及び複数の角度位置に固定するように作られる。その際は、該椅子に対する垂直位置に関する所定の範囲内で、かつおよそ水平な調節軸の周囲の角度位置に関する所定の範囲内に固定する。ここに示す例においては、これら2つの調節は、ダイナモメータ(12)および支柱(22)を調節可能となるよう適切に配することにより、実現される。要求の要素の高さ及び角度で、垂直サポート上に固定する機械的解決法は無数にあるので、ここでは詳しく示さない。調節機構は、所定の範囲内で、連続的に調節を行うものか、固定位置および/または角度の複数の位置に段階的に調節するものでもよい。ある場合には、複雑な要素を用いることなく、高い固定精度を実現するためには、不連続の固定位置および固定角度が典型的には好ましい。
【0025】
ダイナモメータ(12)と椅子(20)との相対的垂直運動の典型的な範囲は、好ましくは約100cmである。典型的な高さの、固定された高さの椅子のために、ダイナモメータのための高さの範囲は好ましくは、下方の表面から約20cm以上とする。水平軸の周囲での傾斜角度を考慮して、この調節では好ましくは最低約120°の角度の範囲を提供する。より好ましくは最低150°とする。ここで示す実施例は、ダイナモメータ(12)は垂直軸周囲に、角度方向の位置固定される。これにより、以下に説明される椅子の回転によって、より効果的に回転が提供される。
【0026】
支持システムは好ましくは加えて、直線型ダイナモメータおよび椅子の相対的位置を、水平移動の2自由度内での相対的移動の所定の範囲内で、選択的に固定することを可能とするように作られる。この調節は、ここでは上記のレール・システム(28)により提供される。該レール・システムにより提供される運動の範囲は、好ましくは最低1メートル、また好ましくは前後(すなわちダイナモメータ(12)に向かって、及びダイナモメータ(12)から離れる方向に)に1.2メートル、また横方向に約40cmとする。
【0027】
支持システムは好ましくは更に、椅子を通るほぼ垂直な軸の周囲で椅子が回転する事を可能とするように作られる。最も好ましくは、これは上記のレール・システム(28)の360°回転可能な接続部として実施される。その際には角度30°以下の間隔の所定の固定位置が提供される。
【0028】
以上で説明した様々な調節は、さらにダイナモメータ(12)が、ほぼ全ての身体部分をほぼ全ての角度で計測できるように位置を調節されることを容易にする。第一の例として、図4Aおよび図4Bに肩を持ち上げての計測を行うために調節されたシステムを示す。この場合、図4Aの平面図に示すごとく、椅子は反時計回りに回転され、左方向にやや移動される。これにより肩を持ち上げる動作中に、ダイナモメータ(12)の動作線を、腕が通過する平面内に移動する。その後、ダイナモメータ(12)と椅子(20)との距離が、ダイナモメータ(12)の傾斜角度に加えて、調節される。これにより、計測の前に、ダイナモメータ(12)を、所望の、被検者の腕に対する相対的な直角方向の位置に移動させる。
【0029】
図5A及び図5Bに示す別の例では、右腰関節の内転を計測するための、システムの配置を示す。この場合、椅子(20)はダイナモメータ(12)に対して移動、回転される。それにより、ダイナモメータは被検者の足の横に配置される。該ダイナモメータはその後、図示のごとく、被検者の足と直角に接する位置まで下げられ、水平にされる。
【0030】
別の選択肢によると、支持システムは更に、例えば図2に示すごとく、ほぼ水平な軸に対して椅子が傾斜する事を可能にする。ここに示す例においては、椅子は約45°まで後ろに傾斜する。これは、ダイナモメータの傾斜を補い、足首又は足首より下の筋肉の測定を容易にする点で、有用である。ここに示す実施例はまた、前方への15°の傾斜も提供する。
【0031】
図6は椅子(20)を、胴体の伸長テストを行うために、前方へ傾斜させて使用する様子を示す。この場合、被検者の顔はダイナモメータと反対を向き、被検者が後方に、ダイナモメータに対して押す動作をする間に、計測が行われる。椅子の前方傾斜は、該傾斜が効果的に大腿と骨盤との間の角度を広げる点で有益である。該角度を広げることは、背筋のテストに重要である。被検者の背中への接近を容易にするために、椅子(20)は、或いは背もたれを、該背もたれよりも低い腰支持部材に交換できるように作られてもよい。
【0032】
ここでは限られた数のテスト位置のみを示したが、当分野の普通の技術者であれば、これらの例を、ほぼ全ての、筋肉の1グループに関わる身体部分の動きに一般化できることは明白である。
【0033】
ここでダイナモメータ(12)の特徴を説明する。該ダイナモメータとしては、従来型の直線型ダイナモメータを適宜用いる。通常は、電子作動の直線型ダイナモメータを用いる。計測は通常、ロードセル(16a)により感知される。該セルは変位部分(16)の末端に配される。ダイナモメータは好ましくは同心円状計測および/又は偏心円状計測の両方を可能とするようにデザインされる。同心円状計測では、ダイナモメータの動作と被検者により加えられる力の向きが同じであり、偏心円状計測では、被検者により加えられる力と、ダイナモメータのアクチュエータの引き起こす動作の向きが反対である。
【0034】
ダイナモメータは典型的には独自のコントロール・ユニット(16b)(図3)を備える。該ユニットはアクチュエータ・ハウジング内に、或いは独立したコントロール・ボックスとして配される。コントロール・ユニット(16b)は好ましくは、速度、最小限必要な作動力および可能な場合は同心円状または偏心円状のモードなどの、パラメータの選択を可能にする。もしくは、ダイナモメータの制御はコンピュータ(30)の行う追加機能として組み込まれてもよい。
【0035】
多くの場合、有効回転軸に対する身体部位の2つ以上の異なる角速度に対応する、2つ以上の線速度を計測することが有用である。これは単純に、ダイナモメータの適切なデザイン及び設定により実施されうる。本発明のシステムを用いて、その他の多くのモードでの計測を行ってもよい。例えば、安定した、すなわち一定の力の計測などである。
【0036】
本発明のほとんどの実施例では、ダイナモメータ(12)のための動作の直線範囲は約15cmで十分である。各計測のための、実際の動作距離は、使用前に実施者により設定される。等運動性の状態を実現するためには、計測は好ましくは最低25cmの範囲に対して実行される。ほとんどの場合、計測のための運動の所定の範囲は、約5cmから約15cmである。
【0037】
ここでコンピュータ(30)を説明する。該コンピュータは、当分野で既知のごとく、適切なソフトウェア、特定用途のためのハードウェア・システム、或いはファームウェアを用いた標準的なPCオペレーションとしてよい。コンピュータ(30)は力に関する情報をロードセル(16a)から受信する。テストされている、関節と、運動の種類に関する情報、有効回転軸からダイナモメータとの接点までの距離に関する情報は、通常インターフェース(32)を通して手動でインプットされる。若しくはこの情報は、様々な取替え可能なセンサ及び/又は画像処理ビデオシステムを用いて、自動的に或いは準自動的に提供されてもよい。ほとんどの場合、単純な手動インプットを選択して充分と考えられる。
【0038】
一般的に前記の情報(すなわち、実施されたテストの種類、軸からロードセルまでの距離、ロードセルにかかる力の情報)を用いれば、コンピュータ(30)は充分に力−距離曲線を構成できる。つまり、適宜必要なパラメータを得ることが出来る。しかしながら、多くの場合結果を、他の様々な情報とともに保存することが好ましい。特に、テストの設定を定義する、ダイナモメータ制御データ(例えば速度、最低作動力)が、好ましくはコントロール・ボックスからコンピュータ(30)に提供される。さらに、テストの設定の再現性を確保するためには、位置情報データを保存することが好ましい。該位置情報データはダイナモメータ及び椅子の、テスト中の正確な位置を示す。もしくは、このデータは、調節可能支持システム(21)に関連した、エンコーダ(図示せず)から自動的にアウトプットされてもよい。最後に、テスト結果は、任意で患者のその他のデータ及び/又は他のテストから得られた診断情報と合わされてもよい。該診断情報は、インターフェース(32)或いはその他のシステムからインプット(34)を介して行われる。結果は、既知の形態で適宜、表示されるか、そうでなければアウトプットされる。該形態には例えば、これには限らないが、仮の視覚ディスプレイ、印刷物、或いは磁気媒体またはCDに記録されたコンピュータ・ファイルなどがある。アウトプット装置についてはここで説明しないが、当分野の普通の技術者であれば十分に理解できる。
【0039】
システム(10)の操作を、明瞭に理解できるように説明する。具体的には、実施者が椅子(20)に座った被検者の位置を決め、また椅子(20)およびダイナモメータ(12)を直線的または角度的に調節する。それにより、動作線(18)が、検査対象である関節付近の手足の弓状運動の接線とほぼ対応するようにする。そのとき動作線(18)は該関節から伸びる手足の一部分とほぼ直角である。被検者はその後、ロードセル(16a)を押すよう指示される。同時にダイナモメータ(12)は作動され、要求の同心円状および/または偏心円状計測をおこなう。コンピュータ(30)はその後、計測結果を処理し、対応する筋肉の角度方向の強度を示す値および/またはその他の任意の要求されるパラメータを得る。
【0040】
上記の説明は例示のみを意図したもので、他の多くの実施形態が、本発明の本質及び範囲内で可能であることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る直線型ダイナモメータを用いた角方向等運動性の測定のためのシステムの好適な実施例の概略側面図である。
【図2】図1のシステムの一部分として使用される椅子の概略側面図である。
【図3】請求項1に係るシステムの概略ブロック線図である。
【図4A】図1のシステムを使用し、肩部上昇テストの実行を示す概略平面図である。
【図4B】図1のシステムを使用し、肩部上昇テストの実行を示す概略斜視図である。
【図5A】図1のシステムを用いて、腰部回転テストの実行を示す概略正面図である。
【図5B】図1のシステムを用いて、腰部回転テストの実行を示す概略斜視図である。
【図6】図1のシステムを用いての胴体部伸長テストを示す概略側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の一部分が、任意の角速度で有効回転軸を有する回転或いは曲げ運動を実行している間における該身体の一部分によって行われる運動の等運動性のモーメントの測定を得るための方法であって、該方法は、
(a)直線経路に沿った予め定められた運動範囲上の等運動性の測定を実行するための直線型ダイナモメータを準備する段階と、
(b)前記有効回転軸に対する任意の半径の円に対する略接線方向の直線経路に前記直線型ダイナモメータを配設し、前記直線型ダイナモメータを用いて、前記身体の一部分により加えられる力を測定する段階と、
(c)予め定められた直線速度での予め定められた運動範囲にわたって、前記身体の一部分により加えられる力の分布を、前記直線型ダイナモメータを用いて測定する段階と、
(d)前記力の分布、直線速度及び半径を用いて、前記身体の一部分と対応する角速度により生じたモーメントに対するデータを得る段階からなることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記測定が、同心円状に行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記測定が、偏心円状に行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記予め定められた直線速度での測定が、2つの異なる直線速度で実行され、
該2つの異なる直線速度が、前記有効回転軸に対する前記身体の一部分の2つの異なる角速度に対応することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記身体の一部分の角運動に対応する範囲が30°以下であるように、前記運動並びに半径に対する予め定められる範囲が選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記身体の一部分の角運動に対応する範囲が20°を超えないように、前記運動並びに半径に対する予め定められる範囲が選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記運動に対して予め定められる範囲が少なくとも約25mmであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記運動に対して予め定められる範囲が約5cmから約15cmであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
身体の一部分が、任意の角速度で有効回転軸を有する回転或いは曲げ運動を実行している間における該身体の一部分によって行われる運動の等運動性のモーメントの測定を得るためのシステムであって、該システムは、
(a)ハウジングと変位部分を備えるとともに、該変位部分が、前記ハウジングに対する動作線に沿う等運動性の運動を受けている間、前記変位部分に対して前記動作線に沿って加えられる力を計測する直線型ダイナモメータと、
(b)予め定められた位置において被験者を支持する椅子と、
(c)前記直線型ダイナモメータと前記椅子を支持する調製可能型支持システムからなり、
前記調整可能型支持システムは、前記椅子に対する垂直方向変位の任意の範囲上の複数の任意の位置及び略水平の調整軸に対する角度位置の任意の範囲内の複数の任意の位置に、前記直線型ダイナモメータを選択的に固定することを可能とすることを特徴とするシステム。
【請求項10】
前記調整可能型支持システムが、前記直線型ダイナモメータと前記椅子との相対的位置を選択的に固定することを可能とし、
該固定が、水平方向の変位の2自由度内で予め定められた相対的変位の範囲内で行われることを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記予め定められた水平方向の変位の2自由度内での相対的変位が、前記椅子を支持するレール・システムにより定義されることを特徴とする請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記調整可能型支持システムが、前記椅子を通過する略垂直な軸を中心とする前記椅子の回転動作を可能とすることを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項13】
前記調整可能型支持システムが、略水平な軸に対して、前記椅子を傾斜させることを可能とすることを特徴とする請求項9記載のシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−503635(P2006−503635A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546333(P2004−546333)
【出願日】平成15年10月19日(2003.10.19)
【国際出願番号】PCT/IL2003/000847
【国際公開番号】WO2004/037351
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(505149310)ラモタット テル・アヴィヴ ユニヴァーシティ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】