説明

相対方向推定方法並びに探索側端末及び被探索側端末

【課題】インフラ設備や特殊ハードウェアを必要とせず、一般的な携帯端末を用いて、端末間の相対方向を推定する。
【解決手段】探索側(a)は予め送信間隔を被探索側(b)に無線通知した上で、端末に加えるスウィング動作と同時にパルス列状の音波を送信し、また各パルス送信時の端末向きを記録しておく(a1)。受信録音している被探索側(b)は通知された送信間隔に相関の強い箇所を録音から識別抽出して、受信間隔を求め、探索側(a)に無線通知する。探索側(a)は受信間隔と送信間隔とを比較して(a2)(a3)、ドップラー原理に基づいて間隔の大小関係が入れ替わる時点に対応する端末向きを被探索側(b)の存在する相対方向として推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対方向推定方法並びに探索側端末及び被探索側端末に係り、特に各端末に特殊ハードウェア等を必要としない一般的な携帯端末等を用いて端末間の相対方向を推定することのできる相対方向推定方法並びに探索側端末及び被探索側端末に関する。
【背景技術】
【0002】
端末間の相対方向の推定は様々な用途において有用となるが、これを実現する従来技術としては以下に示す特許文献1〜3に開示された技術が存在する。
【0003】
特許文献1(捜索システム)には、両方の端末がそれぞれGPS(全地球測位システム)を用いて位置情報を取得し、取得した位置情報を共有することで、相対方向を推定する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2(歩行者誘導支援システム)では、位置情報が既知である超音波送受信機のインフラ設備を実フィールドに設置し、超音波の送受信が可能な端末を用いる。先ず、インフラ設備と端末間で超音波を送受信することで、距離を測定する。同様にして、複数のインフラ設備と端末間の距離を測定する。次に、複数のインフラ設備との距離を用いて、3点測量の要領で端末の位置情報を高精度で取得する。最後に、取得した位置情報を端末間で共有することで、相対方向を推定する。
【0005】
特許文献3(到来方向推定装置、到来方向推定方法および到来方向推定プログラム)では、指向性アンテナを備えた端末を用い、相手端末と電波を送受信する際の電波の到来角を求め、相対方向を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-208414号公報
【特許文献2】特開2010-101711号公報
【特許文献3】特開2009-243947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の従来技術により端末間の相対方向を推定することが可能であるが、それぞれ次に示す課題がある。特許文献1に開示された技術では、GPSで用いた位置情報が5m程度の誤差を含むため、その位置情報から推定した相対方向の精度は不十分である。
【0008】
また、特許文献2に開示された技術では、実フィールドへのインフラ設置が必要であり、多大なインフラ設置コストを要する。また、特殊な端末あるいは、端末に特殊なハードウェアを追加する必要があるため、一般的に市販されている端末をそのまま用いることはできない。さらに、特許文献3に開示された技術では、特許文献2に開示された技術と同様に、端末に特殊なハードウェアを追加する必要がある。
【0009】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、インフラや特殊なハードウェアを必要とせず、携帯端末のような一般的な端末のみを用いて、端末間の相対方向を高精度に推定することのできる相対方向推定方法並びに探索側端末及び被探索側端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、探索側端末から被探索側端末の相対方向を推定する相対方向推定方法であって、当該推定を開始する旨の情報と当該推定に用いる音波に設定する第1の時間変化の情報とを無線通信を用いて前記探索側端末から前記被探索側端末に通知する通知段階と、該通知段階の後、前記被探索側端末が録音を開始する録音開始段階と、該通知段階の後、前記探索側端末に対して該端末の向きを変える所定の運動が加えられる運動段階と、該運動段階と同時に前記探索側端末が前記第1の時間変化を設定した音波を送信する音波送信段階と、該運動段階における前記探索側端末の向きの時間変化を取得する向き取得段階と、該運動段階の終了を前記探索側端末より前記被探索側端末に無線通信を用いて通知し、該被探索端末が前記開始した録音を終了する録音終了段階と、前記録音終了段階の後、前記被探索側端末が前記通知された第1の時間変化の情報を用いて前記録音より当該第1の時間変化との相関の強い箇所を抽出し、当該箇所の時間変化である第2の時間変化の情報を前記探索側端末に無線送信する段階と、前記第1の時間変化の情報と前記第2の時間変化の情報と前記向き取得段階において取得された向きの時間変化とに基づいて前記探索側端末が前記相対方向を推定する段階とを備えることを第1の特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記第1の時間変化が前記送信する音波を第1の時間間隔列を設けた複数のパルス状音波とする時間変化であり、前記第2の時間変化が前記録音より前記第1の時間間隔列との相関の強い間隔にてパルス状に音量増加が見られる箇所を抽出し、当該箇所における複数のパルス状の音量増加の時間間隔の列である第2の時間間隔列としての時間変化であることを第2の特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記第1の時間変化が前記送信する音波を所定周波数帯域とし第1の時間間隔列を設けた複数のパルス状音波とする時間変化であり、前記第2の時間変化が前記録音より前記第1の時間間隔列との相関の強い間隔にてパルス状に音量増加が見られ且つ前記所定周波数帯域と概ね一致する箇所を抽出し、当該箇所における複数のパルス状の音量増加の時間間隔の列である第2の時間間隔列としての時間変化であることを第3の特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記推定する段階が、前記第1の時間間隔列より前記第2の時間間隔列を引いた差よりなる時間間隔列において符号が反転する箇所に対応する時刻を用いて、前記向き取得段階において取得された向きの時間変化より当該時刻に対応する向きを求め、当該符号反転が負への反転ならば当該向きを前記相対方向として推定し、当該符号反転が正への反転であれば当該向きの逆向きを前記相対方向として推定することを第4の特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記第1の時間間隔列を乱数を用いて決定することを第5の特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記所定の運動が前記探索側端末を静止位置を中心とした概ね一定の半径よりなる略半円状で且つ概ね水平方向のスウィング運動であることを第6の特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記向き取得段階が地磁気センサを利用して前記探索側端末の向きの時間変化を取得することを第7の特徴とする。
【0017】
さらに、本発明は、当該相対方向推定方法が前記探索側端末のユーザと前記被探索側端末のユーザとの待ち合わせに利用されることを第8の特徴とする。
【0018】
また上記目的を達成するため、本発明は、被探索側端末の相対方向を推定する探索側端末であって、時間変化を設定した音波を送信する音波設定・送信部と、前記探索側端末の向きを取得する向き取得部と、前記被探索側端末と無線通信する無線通信部と、前記被探索側端末の存在する相対方向を推定する相対方向推定部とを備え、当該推定を開始する旨の情報及び当該推定に用いる第1の時間変化の情報を前記無線通信部を介して前記被探索側端末に通知した後、該被探索側端末が音波を受信開始すると共に、前記探索側端末の向きを変えるよう加えられる所定の運動と同時に前記音波設定・送信部が前記第1の時間変化を設定した音波を送信すると共に前記向き取得部が当該送信中における前記探索側端末の向きを取得し、前記通知における前記第1の時間変化の情報に基づいて前記被探索側端末が前記受信開始して受信した音波より前記第1の時間変化との相関が強い箇所として識別した箇所の時間変化である第2の時間変化の情報を前記無線通信部を介して返信し、前記相対方向推定部が前記第1の時間変化の情報と前記第2の時間変化の情報と前記送信中に取得された前記探索側端末の向きとに基づいて前記相対方向を推定することを第9の特徴とする。
【0019】
さらに上記目的を達成するため、本発明は、探索側端末より相対方向を推定される被探索側端末であって、音波を受信して該音波の時間変化を識別する音波受信・識別部と、前記探索側端末と無線通信する無線通信部とを備え、当該推定を開始する旨の情報及び当該推定に用いる音波に設定する第1の時間変化の情報を前記無線通信部を介して前記探索側端末より通知された後に前記音波受信・識別部が音波の受信を開始し、前記探索側端末が該探索側端末の向きを変えるよう加えられる所定の運動と同時に前記第1の時間変化を設定した音波を送信すると共に当該送信中における前記探索側端末の向きを取得し、前記音波受信・識別部が当該受信した音波を前記通知における前記第1の時間変化の情報に基づいて該第1の時間変化との相関が強い部分を識別して当該部分の時間変化である第2の時間変化を求め、該第2の時間変化の情報を前記無線通信部を介して前記探索側端末に返信し、該探索側端末に前記第1の時間変化の情報と前記第2の時間変化の情報と前記送信中に取得された前記探索側端末の向きとに基づいて前記相対方向を推定させることを第10の特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
前記第1の特徴によれば、一般的な携帯端末に容易に備えることのできる無線機能と音波送受信機能と向き取得機能を利用して、音源移動に伴うドップラー効果に対応する原理を用いて端末間の相対方向を推定することができる。
【0021】
前記第2の特徴によればさらに、送受信音波のパルス間隔の変化に対して音源移動に伴うドップラー効果に対応する原理を用いて端末間の相対方向を推定することができる。
【0022】
前記第3の特徴によればさらに、周波数情報によって録音から容易に送信音波に対応する音波を抽出した上で、送受信音波のパルス間隔の変化に対して音源移動に伴うドップラー効果に対応する原理を用いて端末間の相対方向を推定することができる。
【0023】
前記第4の特徴によればさらに、当該反転箇所に対応する向き又はその逆向きを端末間の相対方向として定めることができる。
【0024】
前記第5の特徴によればさらに、時間間隔を乱数で定めてその情報を被探索側端末に通知しておくことで、被探索側端末が録音より送信音波に対応する箇所を容易に抽出することができる。
【0025】
前記第6の特徴によればさらに、スウィングによる音源移動においてドップラー効果に対応する原理を用いて端末間の相対方向を推定することができる。
【0026】
前記第9の特徴によれば、一般的な携帯端末に容易に備えることのできる無線機能と音波送受信機能と向き取得機能を利用して、音源移動に伴うドップラー効果に対応する原理を用いて端末間の相対方向を推定することができる方法における探索側端末を提供することができる。
【0027】
前記第10の特徴によれば、一般的な携帯端末に容易に備えることのできる無線機能と音波送受信機能と向き取得機能を利用して、音源移動に伴うドップラー効果に対応する原理を用いて端末間の相対方向を推定することができる方法における被探索側端末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明における端末間の相対方向推定の概要を示す図である。
【図2】図1の例において相対方向を推定するための各音波発生時の端末向きと、各音波発生時の間の区間における送信間隔及び受信間隔との数値例を示す図である。
【図3】本発明における探索側端末及び被探索側端末を実現可能な一般的な携帯端末の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】本発明の探索側端末及び被探索側端末の、相対方向推定時における各端末間での応答関係を含んだ構成ブロック図である。
【図5】送信間隔の情報を利用した受信音波における複数音波の結び付けと、同様の方向推定を実施している他の複数ペア間での競合を回避する例を示す図である。
【図6】相対方向推定を行うための探索側端末と被探索側端末との間の手順シーケンスを示す図である。
【図7】図6の手順シーケンスにおける探索側端末での処理を示すフロー図である。
【図8】図6の手順シーケンスにおける被探索側端末での処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1は本発明による端末間の相対方向推定の概要を説明する図である。図1では屋外の待ち合わせ広場といったような、音波到達可能な例えば数十メートル程度の平面的な場所領域にて本発明に係る探索側(a)の端末から被探索側(b)の端末の方向を推定する。まず、探索側(a)と被探索側(b)は無線通信可能であり、且つ当該無線により今から(a)から(b)に対して相対方向推定を行うということを互いに認識している状態にあるとする。
【0030】
次に(a1)に示すように、例えば探索側端末の所持者が探索側端末を手に持って肘の回りに回転させる等して探索側端末をほぼ水平面上にスウィングさせる。このとき、図示しているように回転の時間経過と共に、例えば5回といったような複数回のパルス状の音波S(1)〜S(5)を探索側端末より送信する。そして探索側端末は各音波を発生した各時刻と各時刻における探索側端末の方向とを記録する。
【0031】
被探索側(b)の端末では当該方向推定の開始にあたって、(a1)にて探索側(a)の送信する音波の間隔といったような、送信音波を識別するための情報を探索側(a)より受け取り、適宜録音を開始し、さらに音波送信を終えた旨の通知を探索側(a)より受け取って録音を終了する。被探索側(b)は送信音波の識別情報を用いて録音より対応する受信音を識別し、各音波S(1)〜S(5)に対応する受信時刻よりそれらの受信間隔を求め、探索側(a)に当該間隔を無線送信する。
【0032】
なおまた当該識別の情報によって被探索側(b)は、別のペアとして方向推定を行う等している通行人(c)等の発生する音と当該相対方向推定を行うペア相手である探索側(a)の送信した音との区別も可能となる。
【0033】
探索側(a)は受信間隔を受け取り、自身での送信間隔と比較し、相対方向を推定する。図2に当該推定に用いる各音波送信時の端末向き、送信間隔及び受信間隔の一例を示す。図2では音波S(1)、S(2)を送信した間の区間では送信間隔(100ms)のほうが受信間隔(99ms)より長く、それ以降の区間では逆の関係となっている。この結果のメカニズムは図1に示すように、探索側(a)と被探索側(b)との相対方向および端末のスウィング領域の関係においてドップラー効果と同様の原理により、送信間隔より受信間隔が狭い区間(a2)[音波S(1)、S(2)送信区間]と送信間隔より受信間隔が広い区間(a3)[音波S(3)、S(4)、S(5)送信区間]との区別が生じるということによるものである。探索側(a)は送信間隔と受信間隔とのこのような原理による差異を抽出して、受信間隔と送信間隔との大小関係の逆転が生ずる方向である、音波S(2)とS(3)とを送信した間における端末の方向(45°と90°の間の方向)を被探索側(b)の存在する相対方向であると推定する。
【0034】
本発明の特徴として、このような相対方向推定を可能とする探索側端末、被探索側端末が図3に示すような一般的な構成の携帯端末100により実現可能であるという点がある。一般的な携帯端末100は例えば、制御部101、記憶部102、入力部103、表示部104、通信部105、マイク107及びスピーカ108を含む音声入出力部106、計時部109、付加機能部110並びにバス200を備えて構成される。
【0035】
制御部101は各部および各部間の制御を行い、記憶部102は当該制御部等の動作に必要な一時的又は固定的な情報を記憶する。入力部103はキーパッドなどを含みユーザ入力を受け取る。表示部104はディスプレイなどを含み、各種情報をユーザに向けて表示する。通信部105はアンテナ等を含み各種の通信形態における通信を担う。音声入出力部106はマイク107とスピーカ108とを含み、通話時並びに音声データの再生及び録音時などに用いられる。計時部109は時計の役割を果たす。付加機能部110はその他各種のユーザ用途に応じた機能を提供する。バス200は各部間のデータ転送を担う。
【0036】
以下に説明するように本発明の探索側端末及び被探索側端末はこのような一般的な携帯端末100を用いて部分的機能として、または追加的機能として実現できる。また以下の説明より明らかなように、本発明の探索側端末及び被探索側端末の両端末機能を一端末において同時に備え、探索側/被探索側の各立場となる場合毎に機能を使い分ける端末も一般的な携帯端末100にて実現できる。
【0037】
図4に本発明における相対方向推定時における関係を含んだ探索側端末及び被探索側端末の各部構成の機能ブロック図を示す。探索側端末10は相対方向推定部11、向き取得部12、入力部13、無線通信部14、音波設定・送信部15及びこれら各部間のデータ転送を担うバス16を備える。被探索側端末20は無線通信部21、音波受信・識別部22、入力部23及びこれら各部間のデータ転送を担うバス24を備える。
【0038】
相対方向推定部11は図2に例を示したような探索側端末10の各部より得た情報及び被探索側端末20より得た情報を用いて被探索側端末20の向きを推定する。相対方向推定部11は例えば付加機能部110に含めることができる。向き取得部12は探索側端末10の向きを時刻と共に取得し、例えば付加機能部110および計時部109に含めることができる。一実施形態では向き取得部12は地磁気センサを用いて向きを取得する。入力部13(探索側端末10側)はボタンなどからなり、ユーザが探索側端末10を起動して相対方向推定を開始させる旨や方向推定の各段階の完了等をボタン押下などにより探索側端末10に通知する。入力部13には携帯端末100の入力部103を利用することができる。
【0039】
探索側端末10の無線通信部14および被探索側端末20の無線通信部21はBluetooth(登録商標)、無線LAN、3G、Zigbee(登録商標)等により空間中やネットワーク等を介して互いに無線通信し、音波の送信間隔や受信間隔といったような相対方向推定に用いるデータや相対方向推定フローにおける各段階での端末間同期信号を端末間で送受信する。無線通信部14および無線通信部21は携帯端末100の通信部105を利用することができる。
【0040】
音波設定・送信部15は例えばパルス状音波の送信間隔及び周波数帯域を設定するなど、どのような音波を送信するか設定した上でスピーカなどにより当該音波を送信する。音波設定・送信部15にはスピーカ108、付加機能部110及び計時部109などを利用することができる。実際に送信する音波には、例えば、一般的な携帯端末100の備えるスピーカ108により送信可能である信号長が50ms、周波数帯が2-6kHzであるチャープ信号を用いることで、フェーディングの影響を低減できる。スピーカ/マイクが対応していれば、超音波を用いることもできる。
【0041】
音波受信・識別部22はマイクなどにより音波を受信、録音し、無線通信部21を介してあらかじめ受け取っている送信間隔などの情報を用いて当該録音の中から音波設定・送信部15より送信された音波を識別する。音波受信・識別部22にはマイク107、付加機能部110及び計時部109などを利用することができる。
【0042】
入力部23(被探索側端末20側)は、相対方向推定の各段階における探索側端末10からの同期確認への応答などからなる被探索側端末20のユーザの入力を受け付けるが、当該入力部23を用いず被探索側端末20が自動応答してもよい。入力部23にも携帯端末100の入力部103を利用することができる。
【0043】
次に、以上のような一般的な携帯端末100にて利用可能な各構成ブロックによって相対方向推定を行う詳細について、送信間隔の決定及び受信音波の識別、相対方向推定の順に説明する。
【0044】
音波・設定送信部15ではまず送信する音波パルス列の送信間隔を決定する。例えば、n個のパルス状音波S(i) (i=1、2、…、n)を送信する際の(n-1)個の送信間隔I_t(i)(i=1、2、…、n-1)を不定期間隔とし、非探索側端末20に送信間隔を事前に無線通信を介して通知することで、複数音波の結び付けと、同様の方向推定を実施している他の複数ペア間での競合を回避することが可能となる。送信間隔は次式(1)を用いて決定する。
【0045】
I_t(i)=rand(m)×50ms …(1)
【0046】
ここで、rand(m)はm以下の自然数をランダムに発生させる変数である。
【0047】
図5に、送信間隔の情報を利用して、複数音波の結び付けと、同様の方向推定を実施している他の複数ペア間での競合を回避する例を示す。図5(A)に複数音波の結び付け例を示す。式(1)にて例えばm=3とし、探索側端末10が3個の音波S(1)、S(2)、S(3)を送信間隔I_t(1)=100ms、I_t(2)=150msで送信し、非探索側端末20が2個の音波R(1)、R(2)を受信間隔I_r(1)=100msで受信し、残りの1個の音波を受信できなかった例が図5(A)である。この場合、予め無線通信により取得した送信間隔と音波受信・識別部22で受信した受信間隔を比較することで、R(1)=S(1)、R(2)=S(2)と結び付けが可能となる。
【0048】
続いて、図5(B)に複数ペア間の競合回避例を示す。探索側端末10と非探索側端末20のペアが複数存在し別個に相対方向推定を行う場合、同時に音波を送信した際、競合が発生し、必要以上の音波を受信する可能性がある。図5(A)は探索側端末が3個の音波S(1)、S(2)、S(3)を送信間隔I_t(1)=100ms、I_t(2)=150msで送信し、非探索側端末が4個の音波R(1)、R(2)、R(3)、R(4)を受信間隔I_r(1)=100ms、I_r(2)=100ms、I_r(3)=50msで受信した例を表す。この場合にも、予め取得した送信間隔と受信間隔を比較することで、 R(1)=S(1)、R(2)=S(2)、R(4)=S(3)と結び付けが可能となる。複数ペア間の競合を回避する他の方法として、ペア毎に異なる周波数帯域を用いる方法もある。
【0049】
なお、以上図5の例では音波パルスが受信できなかったり余分に受信したりする場合を説明したが、一般に受信したその他のノイズや受信エラー等との区別においても同様の手法が適用できる。また、図5の説明では受信音波から図示するような音波パルス列が得られるものとして説明したが、これは音波受信・識別部22によって次のように実施される。
【0050】
音波受信・識別部22は音波を受信して録音し、録音データから受信時刻を算出する。続いて、算出した受信時刻から音波の受信間隔を算出し、算出した受信間隔を無線通信を介して探索側端末10に返信する。ここで受信時刻の算出には、送信間隔の情報と共に事前に両端末間で共有した送信音波波形のサンプルすなわち送信音波の周波数帯域情報を用いて、時間軸上でサンプルと録音データ間の相関値を計算する。時間軸をずらしながら相関値を計算し、ピーク値となる箇所を受信時刻と算出する。1つの受信時刻を算出した後は、予め取得した送信間隔の情報を利用することで、残りの音波の受信時刻の目安をつけることで、計算処理の負荷を軽減できる。(以上、実施形態Aとする。)
【0051】
なおまた、相関の計算は最初の1パルスについてまず相関を計算して最初の1パルス目の受信時刻を求める上述の実施形態A以外にも、送信パルス列全体の情報(パルス間隔および各パルスの周波数帯域の情報)を用いて時間軸状で順次ずらしながら相関を計算して録音データ中のパルス状に音量増加が生ずる箇所を求めてもよい(実施形態B)。この場合、送信間隔と受信間隔とはドップラー効果に対応する原理から完全には一致しないので、相関を求める場合パルス間隔には所定の誤差を許容して求めるようにする。
【0052】
また当該実施形態Bは実施形態Aよりも計算量が多くなる代わりに、特にノイズの多い状況下では、最初の1パルスをまず検出する実施形態よりも正確にパルス列全体を検出できるという効果がある。なお最初の1パルスを検出する実施形態Aであってもその後の図5に説明したようなエラー検出を行っても送信間隔を再現できないような場合、ピーク値の2番目以降の箇所を順次受信時刻として送信間隔が再現できる箇所を探してもよい。
【0053】
以上のように、音波受信・識別部22は送信間隔の情報と、必要に応じてノイズ等との識別のため各パルスの周波数帯域の情報とを利用して、録音データより当該送信間隔(および周波数帯域)と時間軸方向に相関の強いパルス状のデータを図5(A)(B)の受信間隔の例に示すように抽出し(実施形態AおよびBで同様)、且つ当該抽出データが図5(A)(B)のようにエラーを含む場合はさらに当該送信間隔との相関及び周波数帯域を利用して図5で説明したようにエラーを含まないパルスのみを受信間隔を構成するパルスとして識別する。すなわち音波受信・識別部22は録音データからまずパルス状ピーク箇所の検出をするのと、さらに続けて当該各ピークより送信音波に対応する受信間隔を求めるのとの両方に送信間隔との相関を利用する。
【0054】
なお、以上では送信する音波は間隔を設けたパルス列として説明した。当該パルス列の実施形態は送信音波として好ましい実施形態ではあるが本発明は当該実施形態に限定されるわけではない。送信間隔、受信間隔と同等の情報すなわち各時刻における送信音波の状態識別と、当該各状態に対応する受信音波の識別ができるならばより一般に例えば連続的な時間変化を設けた音波を用いるようにしても構わない。
【0055】
例えば周波数、音量などが連続的/断続的/ステップ的に変化するような時間変化を設けた音波を用いて、探索側端末10から音波送信中の各時刻において送信音波の状態を記録しておいて、当該状態の情報を利用することによって受信音波に対して同様に識別処理を行って受信間隔に相当する情報を抽出してもよい。
【0056】
本発明においては説明を容易にするため、以降の説明でも主にパルス列音波を想定して送信間隔、受信間隔などの用語を主とした説明を行うが、上記のようなより一般的な送信音波である時間変化を設けた音波の場合にも適用できることは明らかである。
【0057】
次に相対方向推定部11が探索側端末10からみて被探索側端末20が存在する相対方向を推定する詳細につき説明する。図1で概略的に説明したように、音波設定・送信部15が設定した音波を送信している間、同時に探索側端末10はユーザが当該端末を手に持つなどして概ね水平に且つ当該ユーザの腕の長さなどに対応する概ね一定の半径の円状に、当該ユーザの位置する静止位置を中心にスウィング動作を受ける。そして当該スウィング動作中の各パルス音波送信時における探索側端末10の向きが向き取得部12により時刻と共に取得される。
【0058】
なお、当該スウィング動作が所定の半径を伴い端末の向き変化と共に位置移動があることは本発明が波源の移動によるドップラー効果に対応する原理を利用していることから必須である。たとえば端末を固定位置で回転させるだけでは位置移動が(ほとんど)ないので相対方向推定は困難となる。
【0059】
当該スウィング動作に伴う音波送信終了後、被探索側端末20において上述の音波受信・識別部22の処理によって受信間隔が算出され、無線通信を介して相対方向推定部11に渡される。相対方向推定部11は当該受信間隔、予め設定し音波受信・識別部22より送信した音波の送信間隔、および各パルス送信時刻に取得された向きを用いて、ドップラー原理に対応するメカニズムを利用して被探索側端末20の相対方向を推定する。すなわち、スウィング中に探索側が非探索側に近づいている区間に送信した音波の受信間隔は送信間隔より狭くなり、反対に遠ざかっている区間に送信した音波の受信間隔は送信間隔より広くなる。これより、両区間の境界となる音波を特定し、その音波を送信した際の端末向きを相対方向と推定できる。
【0060】
具体的には次のように推定する。n個の音波S(i)(i=1、2、…、n)を送信した際の送信間隔をI_t(i)(i=1、2、…、n-1)、受信間隔をI_r(i)(i=1、2、…、n-1)、端末向きをD(i)(i=1、2、…、n)とし、相対方向RDは次式(2)で求められる。
【0061】
RD=D(i+1) (iはI_t(i)>I_r(i)かつI_t(i+1)≦I_r(i+1)を満たす) …(2)
【0062】
ここで、被探索側端末20が探索側端末10をスウィングした方向の後ろ側に位置する場合、式(2)の条件を満たす端末向きは得られない。その場合は次式(3)により、受信間隔が送信間隔より広くなる区間と、受信間隔が送信間隔より広く区間の境界となる音波を特定し、その音波を送信した際の端末向きの真後ろを相対方向RDと推定する。
【0063】
RD=D(i+1) (iはI_t(i)<I_r(i)かつI_t(i+1)≧I_r(i+1)を満たす) …(3)
【0064】
前述の図2のデータを例に相対方向推定を示す。5個の音波S(1)〜S(5)を送信し、各音波S(i)送信時における端末向きD(i)、音波S(i)とS(i+1)との送信間隔I_t(i)、受信音波R(i)とR(i+1)との受信間隔I_r(i)がそれぞれ図中に示すようになったとする。この場合、式(2)より相対方向RD=D(2)=45°と推定する。
【0065】
なおまた上記の例であれば推定方向はD(2)=45°とその次のD(3)=90°の間の方向、としてもよいが、一般には送信間隔を細かく取ることで既に探索側端末10側に角度のデータが存在してユーザに即座に結果表示できるD(2)(またはD(3))と決定しても問題はない。
【0066】
なお、以上の数式、式(2)及び式(3)ではスウィング動作が手によるもので概ね180°の半円となることを想定して場合分けを行っている。逆に、当該式(2)又は式(3)を適用すれば推定方向が定まることよりスウィング動作の円は180°あればよい。式(2)及び式(3)の適用例として図1に示すような配置で図2のようなデータが得られた場合を示した。当該データにおいては図1に示すように時計回りでスウィングしている例だが、反時計回りにスウィングしても全く同様に式(2)及び式(3)は適用できる。
【0067】
なおまた、式(2)及び式(3)は同内容を次のように表現してもよい。すなわち送信間隔列I_t(i)(i=1、2、…、n-1)から受信間隔列I_r(i)(i=1、2、…、n-1)を引いた差による時間間隔列すなわちI_t(i)−I_r(i)(i=1、2、…、n-1)において始めて符号が反転する箇所がi番目であったとして、[1]当該符号反転により符号が正から負へ反転するならRD=D(i)、[2]逆に当該符号反転により符号が負から正へ反転するならRD=D(i)+180°、すなわちRDはD(i)の逆方向、として求めてもよい。当該手法では最初に符号が反転する箇所を検出することにより、180°以上スウィングした場合も自動的に最初の180°の結果を用いることとなる。
【0068】
なおまた、360°スウィングさせて上記の符号反転箇所が初回および2回目で概ね反対の方向になるか確認して当該方向推定のエラー検出に用いることもできる。
【0069】
図6に探索側端末10から被探索側端末20の相対方向推定を行う手順シーケンスを示す。また当該手順シーケンスにおける探索側端末10の各ステップのフローチャートを図7に、被探索側端末20の各ステップのフローチャートを図8に示す。図6に示す各端末自身および端末間の手順には手順(1)〜(14)と番号を付しているが、対応するステップの説明においては図7および図8においても同様に手順(i)[i=1〜14]として参照している。
【0070】
まず図6の手順シーケンスを説明する。手順(1)では探索側端末10でユーザが入力部13のボタンを押下することにより、端末上の対応アプリケーションが立ち上がるなどして相対方向推定が開始される。手順(2)にて、被探索側端末20に対して無線通信を介して相対方向推定開始を通知し、承認の返信(ACK)を受ける。手順(3)にて、音波設定・送信部15がパルス音波の送信間隔を決定する。なお前述のようにパルス音波およびその送信間隔は送信音波の好ましい実施形態であり、より一般には同等の情報を含む時間変化を設定した音波を送信音波として決定する。
【0071】
手順(4)にて、当該決定した送信間隔(又はより一般に時間変化)の情報を被探索側端末20に無線送信する。また当該送信においては音波受信・識別部22にて受信音波より探索側端末10からの送信音波を識別できるように各パルスの周波数帯域の情報(当該情報もより一般の時間変化の情報に含まれる)も共に送信される。被探索側端末20は受信確認メッセージ(ACK)を返信すると共に、手順(5)に進み音波受信・識別部22がマイクを起動して音波受信すなわち録音を開始する。
【0072】
探索側端末10は受信確認(ACK)を受けると手順(6)にてユーザが入力部13のボタンを押下して方向推定のスウィング動作を開始する旨を探索側端末10に伝え、押下と同時にスウィング動作を加える。当該スウィング動作と共に手順(7)にて音波設定・送信部15によって音波が発信されると共に、同時に手順(8)にて当該音波発生の各時点においてスウィング動作により変化している探索側端末10の向きを向き取得部12が取得する。
【0073】
当該手順(6)後のスウィング開始と同時に手順(6)のボタン押下により起動される手順(7)及び手順(8)を行うことにより、探索側端末10において各音波パルス送信時刻(一般には送信音波の時間変化における注目時刻)と当該各時刻における端末の向きとが得られる。スウィングを終えると手順(9)にてユーザが入力部13のボタンを押下して探索側端末10にスウィング動作の終了を伝える。当該手順(9)は送信音波を全て送信した時点又はその所定時間後に探索側端末10が自動で終了判断するようにしてもよい。
【0074】
手順(10)にて無線通信により探索側端末10より被探索側端末20に相対方向推定の終了を通知し、被探索側端末20は確認応答(ACK)した後、手順(11)にてマイクを停止して録音(音波受信)を終了する。さらに被探索側端末20は手順(12)にて、手順(4)にて受信した送信間隔及び周波数等の情報並びに自身での手順(5)~(11)における録音データから、音波受信・識別部22によって受信間隔を算出する。
【0075】
手順(13)にて当該算出された受信間隔は探索側端末10に無線送信され、確認応答メッセージ(ACK)を返信する。手順(14)にて探索側端末10は送信間隔、受信間隔、各時点における端末の向きとを用いて被探索側端末20の向きを推定する。
【0076】
なお、本発明においては上述のように探索側端末10と被探索側端末20とで同期処理を行うことによって、音波送信を行う時間区間を含みその他の余分な時間を極力含まない区間として手順(5)〜(11)間の録音が行われるため、被探索端末20側で音波受信・識別部22が録音から送信音波に対応する音を識別抽出するのが容易になるという効果がある。
【0077】
また以上図6のシーケンスにおける探索側端末10の各ステップのフローチャートである図7を説明する。ステップS0にて相対方向推定開始するとステップS1[手順(1)]にて入力部13のボタンをユーザが押下する。ステップS2[手順(2)]では被探索側端末20に対して相対方向推定の開始を無線通知し、処理の同期を促す。ステップS3[手順(3)]では送信間隔および使用周波数(一般には送信音波に設定する時間変化)を音波設定・送信部15が決定し、ステップS4[手順(4)]では当該決定情報(送信間隔など)を被探索側端末20に無線通知する。
【0078】
ステップS5[手順(6)]に進みユーザによるスウィング動作開始の合図であるボタン押下を入力部13が検知する。ステップS5と同時にユーザが探索側端末10にスウィング動作を加えると共に、ステップS6[手順(6),(7)]において音波送信および端末向き取得を行う。スウィング動作を終えたユーザはステップS7[手順(9)]にて入力部13のボタンを押下することによりスウィング動作終了を探索側端末10に伝える。前述のように当該ステップS7はユーザによるボタン押下ではなく音波送信終了後自動で行うようにしてもよい。
【0079】
ステップS8[手順(10)]では無線通信により相対方向推定のスウィング動作の終了を被探索側端末20に伝える。ステップ[手順(13)]では被探索側端末20が算出した受信間隔を無線にて送信し、探索側端末10が受信する。ステップS10[手順(14)]にて送信間隔、受信間隔、取得向きに基づいて被探索側端末20の相対方向を推定し、ステップS11にてフローは終了する。またステップS5、S7及びS9にてボタン押下が検出されなかった場合や、被探索側端末20から必要な情報が送信されてこなかった場合はフロー中にてエラーが発生したと判定し、再度ステップS1よりやり直す。
【0080】
なお、図6および図7で探索側端末10に対するユーザのボタン押下として説明した部分は、入力部13が例えばタッチパネル等のその他のインタフェースであってもよく、同様に各種の開始合図などの入力検知として用いられる。インタフェースとしては手順(6)のユーザ入力検知後に探索側端末10に余分な動作を加えることなく迅速且つスムーズにスウィング動作を開始でき、スウィング終了時も手順(9)にて探索側端末10に余分な動作を加えることなく迅速且つスムーズに端末にユーザ入力を伝えることのできるインタフェースが好ましく、ボタン押下はその一例である。
【0081】
さらに以上図6のシーケンスにおける被探索側端末20の各ステップのフローチャートである図8を説明する。ステップS20で相対方向推定を開始すると、まずステップS21[手順(2)]にて探索側端末10からの相対方向開始通知すなわち同期リクエストを受信し、相対方向推定に応じられるよう準備を行い応答返信する。ステップS22[手順(4)]では探索側端末10より送信間隔および使用周波数などの情報を無線にて受信し、当該情報は音波受信・識別部22に後の識別処理のために渡される。その後ステップS23[手順(5)]にて音波受信・識別部22がマイクを起動し音波受信すなわち録音を開始する。ステップS24[手順(10)]にて探索側端末10より相対方向推定におけるスウィング動作及び音波送信の終了通知を受信し、応答すると共に状態を同期させる。すなわちステップS25[手順(11)]に進んで音波受信・識別部22において起動したマイクを停止し、録音を終了する。
【0082】
ステップS26[手順(12)]に進み、音波受信・識別部22はステップS22にて受信した情報を用いて録音データより受信間隔を算出する。ステップS27[手順(13)]に進み、当該算出結果を探索側端末10に通知するとステップS28にてフローは終了する。また、当該フローにおいてステップS22、S24などにて探索側端末10より相対方向推定のフローが順調に進んでいる旨の情報を受信できない場合にはエラーが発生しているので、再度ステップS21に戻る。
【0083】
以上のように、本発明によれば新たなインフラ設備や特殊ハードウェアを必要とせず、一般的な携帯端末を用いて、端末間の相対方向を推定できる。次に本発明を用いて実現できる各種アプリケーション、サービスを紹介する。各紹介例は以下の前提に基づいている。
(前提A)非探索側端末上でアプリケーションが起動していること
(前提B)端末間で無線通信できること
以下の説明では、これらの前提を達成する手段の例についても説明する。
【0084】
(例1)
オフ会の待合わせにおける相手特定支援
SNS(Social Network Service)のオフ会等、ネットワーク上で仲良くなった人と実際に待合わせする場合に、面識がないため、待合わせ場所に無関係な人が複数いると、待合わせ相手を特定することが容易ではない。その際に、相手との相対方向を提供することで相手特定を支援する。
(前提Aの達成手段)SNSから携帯端末に待合わせ場所、待合わせ日時の情報を取り込む。携帯端末で取得したGPSの位置情報を監視し、待合わせ場所付近にいることを検知したらアプリを起動する。もしくは、待合わせ日時に近づいたら、アプリを起動する。
(前提Bの達成手段)SNSから待合わせIDを携帯端末に取り込む。アプリ起動時に同じIDを持つ端末と無線通信リンクを確立する。
【0085】
(例2)
インターネット登録アルバイトの待合わせにおける相手特定支援
ショットワークス(http://shotworks.yahoo.co.jp/guest)等、インターネットを通して登録するアルバイトは、毎回場所や勤務仲間が異なるケースが多い。そのようなアルバイトの待合わせ時は、(例1)と同様にして、相手特定を支援する。
(前提Aの達成手段)登録サイトから携帯端末に待合わせ場所、待合わせ日時の情報を取り込む。携帯端末で取得したGPSの位置情報を監視し、待合わせ場所付近にいることを検知したらアプリを起動する。もしくは、待合わせ日時に近づいたら、アプリを起動する。
(前提Bの達成手段)登録サイトから待合わせIDを携帯端末に取り込む。アプリ起動時に同じIDを持つ端末と無線通信リンクを確立する。
【0086】
(例3)
知人との待合わせにおける相手特定支援
家族や友人との待合わせ時において、相手の顔を知っていても、待合わせ場所が混雑していたり、見通しが悪かったりすると相手特定が難しいケースがある。その際に、(例1)と同様にして、相手特定を支援する。
(前提Aの達成手段)手動で起動。
(前提Bの達成手段)電話やメールを通してIDを共有し、共有したIDを携帯端末に取り込む。アプリ起動時に同じIDを持つ端末と無線通信リンクを確立する。
【0087】
(例4)
レストランにおける配達サービス
マクドナルド(登録商標)やモスバーガ(登録商標)等、レジでの注文時に商品がない場合、客に番号札を渡して、商品が出来上がり次第、店員が対象の番号札を持つ客を目視で探し、配達するケースがある。客席が複数階にまたがる場合等、店員が対象の番号札を探すのに時間を要する場合がある。そのような場合に、提案方法を用いて対象の客発見を支援する。
(前提Aの達成手段)会計時に電子マネーを用い、電子マネーを用いた会計をトリガーとしてアプリを起動する。
(前提Bの達成手段)電子マネーの会計時にIDを取り込み、同じIDを持つ端末と無線通信リンクを確立する。
【0088】
(例5)
被災者発見
被災時に瓦礫の下に埋まっている被災者を発見する際に、提案方法を用いて発見を支援する。
(前提Aの達成手段)被災地付近の基地局から災害情報をブロードキャストし、アプリを起動させる。
(前提Bの達成手段)上記のブロードキャストを通してIDを共有する。
なお、当該(例5)においては被探索側端末20からの各種応答(図6に示すACK等)もユーザ入力を待たず自動に行うものとする。
【0089】
また、固定PC、機器、モノに非探索側端末の機能を追加することで、以下のアプリケーション、サービスが実現できる。
【0090】
(例6)
所有物発見
リモコンや音楽プレイヤ等の所有物が部屋で見つからない時や、屋外で落とした際に、提案方法を用いることで発見が容易となる。
(前提Aの達成手段)無線通信を用いてアプリを起動させる。
(前提Bの達成手段)(所有物であるため)事前設定する。
【0091】
(例7)
違法無線LAN AP(アクセスポイント)発見/特定
違法無線LAN APの存在を検知した場合、SSID(Service Set ID)の情報は取得できるが、電波は目に見えないため、違法無線LAN APを発見することが容易でない場合がある。また、例えば、目の前に2つの無線LAN APがあっても、どちらが違法無線LAN APであるかを特定するためには、機器設定を参照したり、どちらかの電源をオフにしたりする手間を要する。このような場合に、提案方法を用いる。
(前提Aの達成手段)無線通信を用いてアプリを起動させる。
(前提Bの達成手段)取得したSSIDから無線LAN APに接続する。
【0092】
(例8)
ロボット案内サービス
ロボット案内サービスが普及すると、人がロボットの位置まで移動し、サービスを受けるだけではなく、携帯電話のロボット案内サービスのweb画面上をクリックすると、ロボットが目の前に来てくれると便利である。その際に、提案方法を用いてロボットが対象の人を特定する。
(前提Aの達成手段)web上のクリック動作をトリガーに、webサーバからロボットへ信号が送信され、アプリを起動する。
(前提Bの達成手段)webからIDを携帯電話に取り込み、同じIDを持つ相手と無線通信リンクを確立する。
【符号の説明】
【0093】
10…探索側端末、11…相対方向推定部、12…向き取得部、14…無線通信部、15…音波設定・送信部、20…被探索側端末、21…無線通信部、22…音波受信・識別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
探索側端末から被探索側端末の相対方向を推定する相対方向推定方法であって、
当該推定を開始する旨の情報と当該推定に用いる音波に設定する第1の時間変化の情報とを無線通信を用いて前記探索側端末から前記被探索側端末に通知する通知段階と、
該通知段階の後、前記被探索側端末が録音を開始する録音開始段階と、
該通知段階の後、前記探索側端末に対して該端末の向きを変える所定の運動が加えられる運動段階と、
該運動段階と同時に前記探索側端末が前記第1の時間変化を設定した音波を送信する音波送信段階と、
該運動段階における前記探索側端末の向きの時間変化を取得する向き取得段階と、
該運動段階の終了を前記探索側端末より前記被探索側端末に無線通信を用いて通知し、該被探索端末が前記開始した録音を終了する録音終了段階と、
前記録音終了段階の後、前記被探索側端末が前記通知された第1の時間変化の情報を用いて前記録音より当該第1の時間変化との相関の強い箇所を抽出し、当該箇所の時間変化である第2の時間変化の情報を前記探索側端末に無線送信する段階と、
前記第1の時間変化の情報と前記第2の時間変化の情報と前記向き取得段階において取得された向きの時間変化とに基づいて前記探索側端末が前記相対方向を推定する段階とを備えることを特徴とする相対方向推定方法。
【請求項2】
前記第1の時間変化が前記送信する音波を第1の時間間隔列を設けた複数のパルス状音波とする時間変化であり、
前記第2の時間変化が前記録音より前記第1の時間間隔列との相関の強い間隔にてパルス状に音量増加が見られる箇所を抽出し、当該箇所における複数のパルス状の音量増加の時間間隔の列である第2の時間間隔列としての時間変化であることを特徴とする請求項1に記載の相対方向推定方法。
【請求項3】
前記第1の時間変化が前記送信する音波を所定周波数帯域とし第1の時間間隔列を設けた複数のパルス状音波とする時間変化であり、
前記第2の時間変化が前記録音より前記第1の時間間隔列との相関の強い間隔にてパルス状に音量増加が見られ且つ前記所定周波数帯域と概ね一致する箇所を抽出し、当該箇所における複数のパルス状の音量増加の時間間隔の列である第2の時間間隔列としての時間変化であることを特徴とする請求項1に記載の相対方向推定方法。
【請求項4】
前記推定する段階が、前記第1の時間間隔列より前記第2の時間間隔列を引いた差よりなる時間間隔列において符号が反転する箇所に対応する時刻を用いて、前記向き取得段階において取得された向きの時間変化より当該時刻に対応する向きを求め、当該符号反転が負への反転ならば当該向きを前記相対方向として推定し、当該符号反転が正への反転であれば当該向きの逆向きを前記相対方向として推定することを特徴とする請求項2または3に記載の相対方向推定方法。
【請求項5】
前記第1の時間間隔列を乱数を用いて決定することを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の相対方向推定方法。
【請求項6】
前記所定の運動が前記探索側端末を静止位置を中心とした概ね一定の半径よりなる略半円状で且つ概ね水平方向のスウィング運動であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の相対方向推定方法。
【請求項7】
前記向き取得段階が地磁気センサを利用して前記探索側端末の向きの時間変化を取得することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の相対方向推定方法。
【請求項8】
当該相対方向推定方法が前記探索側端末のユーザと前記被探索側端末のユーザとの待ち合わせに利用されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の相対方向推定方法。
【請求項9】
被探索側端末の相対方向を推定する探索側端末であって、
時間変化を設定した音波を送信する音波設定・送信部と、
前記探索側端末の向きを取得する向き取得部と、
前記被探索側端末と無線通信する無線通信部と、
前記被探索側端末の存在する相対方向を推定する相対方向推定部とを備え、
当該推定を開始する旨の情報及び当該推定に用いる第1の時間変化の情報を前記無線通信部を介して前記被探索側端末に通知した後、該被探索側端末が音波を受信開始すると共に、前記探索側端末の向きを変えるよう加えられる所定の運動と同時に前記音波設定・送信部が前記第1の時間変化を設定した音波を送信すると共に前記向き取得部が当該送信中における前記探索側端末の向きを取得し、前記通知における前記第1の時間変化の情報に基づいて前記被探索側端末が前記受信開始して受信した音波より前記第1の時間変化との相関が強い箇所として識別した箇所の時間変化である第2の時間変化の情報を前記無線通信部を介して返信し、前記相対方向推定部が前記第1の時間変化の情報と前記第2の時間変化の情報と前記送信中に取得された前記探索側端末の向きとに基づいて前記相対方向を推定することを特徴とする探索側端末。
【請求項10】
探索側端末より相対方向を推定される被探索側端末であって、
音波を受信して該音波の時間変化を識別する音波受信・識別部と、
前記探索側端末と無線通信する無線通信部とを備え、
当該推定を開始する旨の情報及び当該推定に用いる音波に設定する第1の時間変化の情報を前記無線通信部を介して前記探索側端末より通知された後に前記音波受信・識別部が音波の受信を開始し、前記探索側端末が該探索側端末の向きを変えるよう加えられる所定の運動と同時に前記第1の時間変化を設定した音波を送信すると共に当該送信中における前記探索側端末の向きを取得し、前記音波受信・識別部が当該受信した音波を前記通知における前記第1の時間変化の情報に基づいて該第1の時間変化との相関が強い部分を識別して当該部分の時間変化である第2の時間変化を求め、該第2の時間変化の情報を前記無線通信部を介して前記探索側端末に返信し、該探索側端末に前記第1の時間変化の情報と前記第2の時間変化の情報と前記送信中に取得された前記探索側端末の向きとに基づいて前記相対方向を推定させることを特徴とする被探索側端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−42244(P2012−42244A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181660(P2010−181660)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】