説明

相転移重合体マイクロニードル

本発明は、一種の新型相転移マイクロニードルシステムに関し、従来マイクロニードルの不足を克服することができる。本発明のマイクロニードルパッチは、針体部分とホールディングプレートからなる一体化マイクロニードルシステムである。本発明中のマイクロニードルが乾燥でガラス状態を表し、表皮を穿刺できる十分な硬さを有し、真皮に進入した後、体液を吸収して相転移が発生し、ハイドロゲル状態になり、ゲル状態のマイクロニードルパッチが物理的又は化学的架橋を経てから網状構造を有し、網孔が体液を吸収した後自動的に開き、担持された薬物が網孔から拡散して体内に進入する。マイクロニードルパッチを製造するための重合体が薬剤分野では数年間利用され、良好な皮膚相溶性及びタンパク質に優しい材料であり、構造の弱いタンパク質に安定な保存環境を提供することになる。マイクロニードルパッチ骨格全体は、薬物貯蔵庫になることができるため、当該マイクロニードルシステムが大きい薬物担持能力を有する。また、当該マイクロニードルパッチの製造工法が簡単で、微細加工の必要なく、製造中の全プロセスに有機溶剤と接触しない。プログラムキャスト法は、多層、濃度勾配のマイクロニードルパッチを製造することができ、それぞれパルス投与及びゼロ次放出等の投与要求を達成する。当該マイクロニードルパッチは使用前に、乾燥な親水ガラス状態であって、最適なタンパク質を貯蔵する環境である。最後、投与した後、マイクロニードル背部の台が吸水膨潤してため、圧力をゆっくりと針体部分に付与することより、マイクロニードル全体を皮膚に緊密に貼り付けらせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2008年10月7日に提出した米国シリーズ番号60/103,560の優先権を要求し、その内容が引用により本出願に結合される。
本出願においては、参考文献は、各種類の出版物を意味する。これらの出版物の開示内容は全文の形で引用により本出願中に結合され、本発明の技術分野の状況をより十分に述べるためである。
本発明は、重合体マイクロニードルパッチ(polymeric microneedle patch)に関し、従来マイクロニードルシステムの不足を克服し、薬物の経皮送達以及びその他の用途に利用される。このような重合体マイクロニードルアレイが乾燥状態で十分な硬さを有して表皮を刺し通し、体液を吸収した後ハイドロゲル状態に変化することができる。このような投与システムは十分な表皮浸透性を提供することができ、親水性大分子例えばタンパク質、ポリペプチド、DNA、RNA及びその他の薬物の経皮放出制御を実現することができる。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、ポリペプチド類薬物の非注射投与は、薬剤学研究のずっと以来の願望である。糖尿病を例として、長期間の頻繁注射を避けるために、1921年以来、科学者はインシュリンの非注射投与経路を研究しはじめる。その時から、多くの非注射投与方式が出る、例えば、輝瑞社が研究された吸入剤は上場して間もなく退出を宣告され、またグラクソ・スミスクラインの最近研究された経口インシュリンも失敗で結束した。これもタンパク質、ポリペプチド類親水性物質が生物膜パリアを通して体内に送達された任務はとても困難であると説明する。
【0003】
微細加工技術の出現は、ミクロンレベルの針アレイの製造及び発展を促進した。マイクロニードルアレイは、大分子物質の経皮送達という難題を解決する見込みがあり、皮膚角質層だけを穿刺し、神経を傷つけないため、痛みや皮膚の損傷を起こさない。理論的には、このような空心マイクロニードルアレイは薬物貯蔵庫を形成することができ、角質層を刺し通した後、生物大分子の経皮送達を完了させることができる。しかしながら、実際の製造において、微細加工技術はコストが高価しすぎて;徐放性放出制御に対しては、金属マイクロニードルが長時間で皮膚中に埋められ、皮膚のエレルギーを起こしやすく、また、金属マイクロニードルは皮膚中に壊れて残されれば、更に酷い皮膚の弊害を引き起こす;薬物に対しては、マイクロニードル中のタンパク質類薬物が体温との温度でと体液に溶解される状態で、非常に変性及び失活しやすくなる。
【0004】
コストを下げる及びマイクロニードルの製造プロセスを簡便させるために、金属、単結晶シリコン、重合体、糖類はマイクロニードルの製作に用いられ、薬物の送達に用いられる。ある金属マイクロニードルの投与方式は、先に皮膚を穿刺し、その後、穿刺した部位に薬液を塗布するが、この方法の欠点は、投与量を制御し難しく、且つ、皮膚が穿刺された後早くにふさがるので、薬物を体内に拡散して進入させにくくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
文献に報告された重合体マイクロニードルの材料は、PLA、PGA、PLGA、セルロース、デンプン、マルトース、架橋PVP等の生物相容性重合体を含む。これらの材料により製造されたマイクロニードルシステムの一つ共通欠点は、放出制御を実現することができない。PLA、PGA、PLGAマイクロニードルの一部も、先に皮膚を穿刺し、その後薬液を塗布する投与方式であるが、依然として皮膚の孔が早く塞がり、薬物が体内に入りにくい問題を存在する;また、一部はマイクロニードルにおけるマトリックス薬物を製作して、マイクロニードル針体の皮下の生物分解により薬物を放出するが、PLA、PGA、PLGAの分解速度が遅すぎるため、治療の要求を達することができない。また、薬物を疏水性重合体材料中に担持しれば、大分子薬物を変性させやすいから、且つ、マイクロニードルの針体部分が分解された後、背部の骨格中の薬物が放出できなくなる。
【0006】
セルロース、デンプン、マルトース、架橋PVPにより製造されたマイクロニードルは、針体が水溶性であり、体液を接触した後、薬物が針体の溶解に従って体内に入ることができる。剤量を確定された薬物に対する良い。しかしながら、徐放性放出制御に対しては、針体部分が溶解した後皮膚孔が塞がるため、ホールディング層の薬物が継続的に放出することができなく、このようなマイクロニードルシステムが要求に満足することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のマイクロニードルシステムは、親水性の重合体材料から製造してなり、乾燥状態でガラス状態を表し、十分な硬さを有して、表皮を穿刺した後、体液を吸収して相転移が発生し、ハイドロゲル状態が表わされる。このような経皮パッチはマイクロニードルアレイ針体及びアレイを支持するホールディング層(パッチ全体が骨格型全体である)を含み、針体とホールディング層が薬物貯蔵庫になることができ、又は針体部分に選択的に搭載されることができる。
【0008】
図1.は相転移マイクロニードルシステムの作用メカニズムを解明した。ガラス状態のマイクロニードルが表皮を穿刺し後体液を吸収してゲル状態に転移してなり、拡散チャンネルが開く(形成)ことにしたがって、中のタンパク質、ポリペプチド、遺伝子、又はその他の水溶性薬物が拡散し出る。本発明のマイクロニードルシステムと多糖のマイクロニードルの相違点は、マイクロニードルが皮膚に入った後溶解して消失することができなく、皮膚中に残され拡散チャンネルを支持するに対して、多糖マイクロニードルが溶解して消失することにある。このようなマイクロニードルシステムが、以下の3つの因子により放出制御を実現し:重合体の相転移、薬物拡散、製造プロセス。
【0009】
相転移以外に、本発明のもう一つ利点は、簡単且つ機能の多い製造プロセスである。簡単、直接な方法により薬物が担持されたゲル溶液を鋳型にキャストし、乾燥した後、鋳型から剥がしてマイクロニードルパッチを製成してなる;プログラムキャスト法(相違する薬物濃度のゲル溶液で分層してキャストする)により製造されたマイクロニードルパッチが生理特徴、治療要求に合わせる放出曲線を作成することができる。図2で描いたのはプログラムキャスト法での製造プロセスである。
【0010】
例えば、薬物が担持された重合体溶液をマイクロホールアレイ付の鋳型にキャストしてマイクロニードル層を形成する。その後、ブランク重合体溶液(又は低濃度薬物を含有する重合体溶液)を第一層にキャストし、このように何回を繰り返し、パルス投与するマイクロニードルパッチが得られる。その中、薬物ピークの高さが薬物溶液中の薬物濃度により決められ、薬物ピークの広さが薬物担持層の厚さにより決められ、二つ薬物ピーク間の距離がブランク層の厚さにより決められる。ゼロ次放出法に対しては、処方調整によって逐次キャストすることにより決定される。
【0011】
プログラムキャスト技術も軟膜硬針の製造を実現させる。異なる重合体をプログラムキャストにより製造された軟膜硬針マイクロニードルパッチは人の顔輪郭に密着することができ、顔のケアに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】相転移マイクロニードルシステムの作用メカニズム
【図2】プログラムキャスト法によりマイクロニードルパッチを製造する
【図3】石膏鋳型を使用して製造したPVAとデキストラン混合溶液のマイクロニードルパッチ
【図4】マイクロニードルに穿刺された後染色した豚皮
【図5】繰り返した凍結融解処理されたインシュリンマイクロニードルパッチ(PVA/デキストラン=80/20)の累積放出曲線
【図6】四回凍結融解処理された異なるPVA/デキストラン配合比により製造されたインシュリンマイクロニードルの体外累積放出曲線
【図7】プログラムキャスト法により製造された三層パルス式(薬物担持層-ブランク層-薬物担持層)インシュリンマイクロニードルの累積放出曲線
【図8】プログラムキャスト法により製造された三層パルス式(薬物担持層-ブランク層-薬物担持層)インシュリンマイクロニードルの瞬間放出曲線
【発明を実施するための形態】
【0013】
重合体材料の選択
重合体の選択は、マイクロニードル製造の第一歩であり、選択された重合体が製造する前に必ず水溶性のものであるから、薬物をその中に溶解して鋳型にキャストすることができる。同時に、選択された材料がマイクロニードルを製造した後溶解できなく、マイクロニードルが表皮を穿刺した後、針状の状態を保持して薬物の拡散チャンネルを支持しなければならない。もちろん、これらの材料により製造されたマイクロニードルは、乾燥状態で表皮を穿刺できるように十分な硬さと強さを有することと、且つ体液を吸収した後膨潤して拡散チャンネルを開かせることを必要である。
【0014】
以上の条件を満足する材料は、親水性および水溶性のものであるが、網状ゲルを形成した後、水に溶けることができなくなる。網状架橋ゲルを形成するためには二つ方法がある:物理的架橋法と化学的架橋法。化学的架橋に対して、一つ有効的な方法は、多糖溶液を鋳型にキャストした後、架橋剤を添加し、化学反応を起こして互いに架橋して変性多糖を形成する。物理架橋に対して2つメカニズムがある:イオン架橋及びマイクロ結晶の構築。イオン架橋は、多糖を荷電させた後、多価対イオン溶液と作用させる。マイクロ結晶の構築は、水溶性重合体をマイクロ結晶に形成させる。
【0015】
マイクロニードルパッチを製造するための重合体材料は、薬剤分野ですでに数年間利用され、良好な皮膚相溶性を有することが証明された。本発明中に使用したものは、良い例である。PVAが熱水で溶解され、凍結-解凍された後、水溶液中にゲルを形成する。凍結-解凍のサイクル数が多ければ、形成されたマイクロ結晶も多い。
【0016】
相転移マイクロニードルのもう一つ要求は、硬さである。PVAは一定の硬さを有するが、純粋なPVAは十分な硬さを有しなく、表皮を穿刺することができず、環境温度が25℃を超えた条件で、PVAが可塑性に転化した。この問題は、多糖を添加することにより解決できる。例えばデキストラン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、キトサン又はセルロースが挙げられる。しかしながら、多糖例えばデキストランは、水溶性であるため、それが処方中の割合(質量比が25%以下)を制御し、そうでなければ 、ハイドロゲルの網状構造が破壊される可能性がある。
【0017】
マイクロニードルパッチの設計
本発明において、いくつのマイクロニードルパッチの図面が開示された。十分剤量を担持する経皮放出制御型薬物送達システムに対して、マイクロニードルパッチが鋳型から剥離された後、マイクロニードル針体アレイと薬物貯蔵のホールディングプレート(両方のマトリックスは、一体になっている)を含みべき、マイクロニードルアレイも、薬物貯蔵庫の一部である。マイクロニードルが角質層を穿刺して皮膚内に入ると、マイクロニードルパッチ全体が下から上まで体液を次第に吸収して膨潤され、その後、緩やかに薬物を放出する。膨潤プロセスも、タンパク質ポリペプチド類薬物の放出制御メカニズムの一部である。
【0018】
マイクロニードル薬物放出の速度が、マトリックスのネットワーク架橋度及び拡散チャンネルの大さを調整することにより制御する。この二つプロセスは、製造プロセス工法と処方配合比を好適化させることにより実現する。本発明中のPVA-デキストランマイクロニードルパッチが、凍結-解凍のサイクル回数の増加に従ってネットワーク架橋度を向上させ、骨格中のデキストランの含量の増加が拡散チャンネルの孔径を増大させることができる。
【0019】
プログラムキャスト法によりマイクロニードルを製造することは、パルス式放出を実現することができる。重合体溶液中の薬物の濃度及びキャストプログラムを変えることにより、精確的に薬物放出挙動を制御することができる。
【0020】
ゼロ次放出の場合については、重合体溶液中の薬物濃度の低から高までの順番で、勾配キャストを行うことにより実現することができる。
【0021】
分子量が10Kより大きい生物大分子薬物に対しては、マイクロニードルの薬物拡散チャンネルが十分に大きくなく、このような場合では、薬物が主にマイクロニードルの針体部分(マイクロニードルは、主な薬物貯蔵庫である)に搭載される。
【0022】
本発明のマイクロニードル技術は、化粧品膜にも利用することができる。設計する時に、軟膜硬針をして顔の輪郭を合わせることができ、硬針針体がキャストされた後、ホールディング層にPEG又はグリセリンとを混合したPVA溶液をキャストすれば良い。
【0023】
キャストプログラムと鋳型設計
本発明中の相転移マイクロニードルパッチのキャスト製造プログラムは、二つ要求をかならず満足させる:1)重合体溶液が鋳型のマイクロホール中に潅流して入ることができる;2)乾燥した後、マイクロニードルの針形が損壊されない。本発明には、この二つの目標は、合理的に鋳型設計及びキャストプログラムにより実現された。重合体溶液を順調にマイクロホールに入らせるために、溶液に一定の力を施さなければならなく、通常使用されたのは遠心力と液体静圧(真空抽出)である。製造プロセルを考えると、後者はより適切である。一方、針形を完璧に保持するために、乾燥プロセスにおいて水分を背部ではなく針体部分から揮発させなければならなく、そうでなければ 、針体を収縮して変形させることができる。
【0024】
以上の製造要求を満足するために、鋳型も工夫して設計した。重合体溶液をマイクロホールに流し込むために、鋳型の材料が、一定のガス透過性を有さなければならなく、このように、鋳型の反対面に真空を抽出する場合には、重合体溶液を鋳型に十分な圧力差を有させ、マイクロホールに流し込ませることができるが、通気孔が大きすぎることができなく、そうでなければ 、溶液が流失しやすくなる。また、鋳型材料の表面には親水性を有すべき、このように、重合体溶液と鋳型とを密着させることができる、ところですが、剥離できないほど密着してはいけない。本発明において、セラミックス類と石膏を使用してマイクロニードル鋳型材料とする。
【0025】
マイクロニードルパッチのパッケージング
本発明中の相転移マイクロニードルパッチの作用メカニズムは水分を吸収して相転移が発生(ガラス状態からハイドロゲル状態に転移)することであるから、マイクロニードルパッチの使用前に軟化することを避けるように、パッケージング材料が吸湿性を有しないことは必要である。パッケージング材料のもう一つ要求は、針体を保護できることである。ホールディング層が防水性を有し、マイクロニードルパッチの背部と緊密的に結合し、周りに、使用する時にマイクロニードルパッチの固定するための皮膚粘性のゲルを有し、使用前には、一層の薄いポリテトラフルオロエチレン膜により保護され;マイクロニードルパッチの針体部分が一層の海綿により保護され、海綿の外側にも、一層の防水テープを有して吸湿を防止する。
【0026】
相転移マイクロニードルパッチの利用
本発明中の相転移マイクロニードルパッチがタンパク質、ポリペプチド類薬物、遺伝子及びRNA、サブユニットワクチンと化粧品物質を含む多種類の治療薬物の経皮送達に用いられることができる。分子量が200000未満のタンパク質、ポリペプチドも当該マイクロニードルシステムを使用して経皮送達することができ、例えばインシュリン、カルシトニン 、エリスロポエチン、エクセナチド、GLP-1、GM-CSF、インターフェロン、VIII因子、インターロイキン、HSF、PEG-IFNα2b、IFN、PTH1-84、CD154、BMP、IL-15、LIF、IL-2、rHGH、EGF、FGF、TGF-β1、VEGF、PDGF、ECGF、NGF、BDGF、BDGF-A、TPA、抗体、凝固因子VIII、遺伝因子IX、免疫グロブリン、SDFs、活性化タンパク質Cである。本発明のマイクロニードルパッチの送達に用いられるサブユニットワクチンの分子量が5000000未満であり、送達に用いられる遺伝子とRNAは、分子状態又はナノ粒子であることができる。
【0027】
化粧品面の利用において、以下の形態により実現させる:軟膜硬針を作成する。針体部分は、通常の薬物送達時に採用された重合体材料を使用し、マイクロニードルパッチの骨格台部分には、PEG又はグリセリンを加え、軟化させて人の皮膚に貼り付けらせる。分子が特に大きい物質(例えば、分子量が100000を超える)を送達することに対して、この物質を主にマイクロニードル針体部分に搭載させる。
【0028】
以下に、分かり易い形態で、具体的に例を挙げ、当業者に本発明をよりよく理解させる。挙げられた実施例が、本発明のすべての利用範囲を代表しない。
【実施例1】
【0029】
PVAとデキストラン(dextran)を材料とする相転移マイクロニードルパッチの製造
PVAとデキストランの混合水溶液(総質量比が15%、平均分子量が10000〜250000)を製造し、この中に薬物(例えば、インシュリン)を入れて均一に混合させ、溶液をマイクロニードルアレイの凹孔を含有する石膏鋳型にキャストし、鋳型の他の一層において真空を抽出して、重合体溶液をマイクロニードルホール中に抽出させる。PVAの架橋程度を調節するように、重合体溶液を被覆する鋳型を凍結-解凍することを繰り返して数回行う。その後、マイクロニードルホールディング面を被覆して水分蒸発を降下させ、引き続き鋳型の他の面から真空を抽出し、マイクロニードルの針体部分を先に乾燥させる。パッチ全体が窪んでいれば、窪む方向が針尖に向けることを保証できる。最後に、乾燥したマイクロニードルを鋳型から取り外し、防水材料で密封する。図3に示されたのは、鋳型から取り外したマイクロニードルパッチである。
【0030】
マイクロニードルの皮膚を穿刺する能力を測定するために、製造されたマイクロニードルパッチを脱毛された豚皮に押圧して、予めマイクロニードルをトリパンブルーで染色された。染色されたマイクロニードルで押圧された豚皮の状態が図4に示される。色付いた孔はマイクロニードルが成功に皮膚に差し込まれたことを示す。
【0031】
重合体溶液の濃度は、処方を最適化する重要なパラメータであり、脱水乾燥プロセスに起こされた巻き縮めは、マイクロニードルパッチの窪むことが引き起こされた主な要因である。高濃度溶液がマイクロニードルの変形を避ける又は減少させることができるが、溶液濃度が高すぎると、粘性増大が引き起こされることができ、鋳型のホールに充填し難い;低濃度溶液が鋳型に充填することをさらに易くさせることができるが、乾燥により引き起こされた窪み変形はより酷くなる。適切な濃度数値を把握するために、濃度比が5〜30%である数種PVA溶液をそれぞれ調製して調べた結果が以下に示される。
【0032】
表1. 重合体溶液濃度がマイクロニードル成型性に及ぼす影響

【実施例2】
【0033】
インシュリンマイクロニードル放出動力学
インシュリンの放出状況を調べるために、前記製造されたマイクロニードルをFranz拡散セル装置に置いて、pH 7.4のPBSを受容液として、37℃で100rpm回転数で攪拌する。水分蒸発を防止するために、マイクロニードルのトップ部をプラスチック薄膜で被覆する。一定期間ずつ受容セルからサンプルを採取し、HPLC法でインシュリン濃度を検出した。繰り返す凍結解凍(freeze-thaw)処理されたマイクロニードルと異なるPVA/デキストランの総濃度比のマイクロニードル放出インシュリンの累積放出曲線がそれぞれ図5、図6に示される。
【0034】
図5 それぞれ2,4,6個凍結-解凍のサイクルを行って製造されたマイクロニードル(PVA/デキストラン質量比80/20)の累積放出量曲線である。40時間の放出実験において、2回と4回サイクリングしたマイクロニードルパッチが、それぞれ70%と60%のインシュリンを放出した。
【0035】
図6 PVA/デキストラン質量比がそれぞれ100/0、90/10と80/20で製造したマイクロニードル(4回凍結-解凍のサイクル)の累積放出曲線である。デキストラン含量の増加につれて、インシュリン放出速度が向上した。
【実施例3】
【0036】
プログラムキャスト法により製造された多層相転移マイクロニードル
多層相転移マイクロニードルパッチを製造するのは、二つ方法があり、一つ、直接繰り返すキャスト、もう一つは、予め製造されたシートを単層マイクロニードルパッチに貼り付けた。どんな方法にしても、マイクロニードルアレイのホールディング層が、マイクロニードルが製造された鋳型に一体的形成された。繰り返すキャスト法において、マイクロニードルを凍結-解凍法処理した後、ブランク又は低濃度薬物担持された重合体溶液を直接的にホールディング層に塗布し、再凍結-解凍のサイクルを行い、このように繰り返して行った。図2にはこの製造方法のプロセスを示した。層ごとの薬物濃度と層厚さが放出特徴によって調整されることができる。
【0037】
組み込む法は、低濃度のPVA/デキストラン溶液を結合剤とし、予め製造されたブランク層又は減量薬物担持層を順番でマイクロニードルのホールディング層に貼り付ける。二つ方法は薬物の放出に対して顕著な差が見られなかった。
【実施例4】
【0038】
プログラムキャスト法で製造されたインシュリン相転移ハイドロゲルマイクロニードル中のインシュリン放出状況
プログラムキャスト法で製造されたマイクロニードルパッチの方法が実施例2に示される。図7と図8にそれぞれ示されたのは、製造された三層(薬物担持+無薬物+薬物担持)マイクロニードルパッチにおけるインシュリンの累計放出量と1時間ずつの放出量である。当該マイクロニードルパッチのPVA/デキストラン重量比が85/15であり、且つ薬物担持層中のインシュリン含量が1重量%である。明らかに見られた通り、プログラムキャスト法により設計された曲線(二つインシュリンの放出ピーク、5時間間隔)を実現させた。
【実施例5】
【0039】
硬針とソフトホールディングプレートにより構成された相転移マイクロニードルパッチ
人の顔の輪郭を合わせるために、PEG(100-1000の重量平均分子量)又はグリセリンが混合されたPVA溶液を使用してホールディングプレートをキャストした。まず、PVAとデキストランの混合液を鋳型にキャストした。サンプルを凍結処理した後、PVAとPEG-600(又はグリセリン) を含有するもう一つ重合体溶液を当該第一層の上面にキャストし、次に、実施例1の乾燥プロセスを行った。鋳型から剥離されたマイクロニードルパッチが硬針(手で当該マイクロニードルパッチを触る)とソフトホールディングプレートを有することを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートと、前記プレートの上に立ち配列された長さが100-1000μmであるマイクロニードルから形成されたマイクロニードルアレイとを含み、水分を吸収した後、固形状の硬針がゲル状態に転移する能力を有することを特徴とする重合体材料のマイクロニードルパッチ。
【請求項2】
マイクロニードルが乾燥状態で皮膚に刺入できる十分な硬さを有し、水合態で軟化されることにより、親水性物質をその中を貫通させる、請求項1に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項3】
少なくとも一種の生物活性物質が重合体材料のマトリックスに担持される、請求項1に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項4】
前記生物活性物質が、タンパク質、ペプチド類、サブユニットワクチン、DNA、RNA、他の非脂溶性治療物質、薬物が担持されたリポソームおよび薬物が担持されたナノ粒子からなる群から選択される少なくとも1種あるいは2種以上の混合物である、請求項3に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項5】
前記タンパク質とペプチド類が、インシュリン、カルシトニン、エクセナチド、GLP-1、GM-CSF、エリスロポエチン(EPO)、インターフェロン、血液凝固第VIII因子、各類インターロイキン、HSF、PEG-インターフェロンα2b、組換え人インターフェロン、パラトルモン(PTH1-84)、CD154、骨形成タンパク質(BMP)、インターロイキン15(IL-15)、組換え人白血病阻止因子(LIF)、インターロイキン2(IL-2)、組換え人成長ホルモン(rHGH)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、形質転換成長因子(TGF-β1)、血管内皮成長因子(VEGF)、PDGF、内皮細胞成長因子(ECGF)、神経成長因子(NGF)、BDGF、BDGF-A、TPA、抗体、凝固因子VIII、遺伝因子IX、免疫グロブリン、SDFs及び活性タンパク質Cからなる群から選ばれるものである、請求項4に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項6】
前記マイクロニードルアレイとプレートの形成に用いられる重合体材料が同じでも異なってもよく、これらの重合体が一定の条件で親水性又は水溶性であり、物理又は化学的架橋処理を経た後、水不溶性網状ハイドロゲルに形成される、請求項1に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項7】
前記重合体材料は、PVAとデキストランの混合物、PVAとキトサンの混合物、PVAとアルギン酸塩の混合物、PVAとヒアルロン酸の混合物、又は、PVAとPEGの混合物である、請求項6に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項8】
重量比で、PVA/デキストランが100/0 〜 70/30であり、PVA/キトサンが100/0〜85/15であり、PVA/アルギン酸塩が100/0〜85/15であり、PVA/ヒアルロン酸が100/0〜85/15であり、PVA/PEGが100/0〜90/10である、請求項7に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項9】
PVAの重量平均分子量が10,000〜250,000であり、デキストランの重量平均分子量が6,000〜5,000,000であり、キトサンの重量平均分子量が20,000〜4,000,000であり、アルギン酸塩の重量平均分子量が10,000〜3,000,000であり、ヒアルロン酸の重量平均分子量が100,000〜5,000,000であり、PEGの重量平均分子量が100〜1,000である、請求項7に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項10】
A) 治療物質を含有又は含有しない重合体材料水溶液を製造する工程と、
B) 工程A)で製造された溶液を、マイクロホールアレイを含有する鋳型にキャストする工程と、
C) 工程A)で製造された溶液をマイクロホールに充填する工程と、
D)キャストしたマイクロニードルパッチを乾燥する工程と
を含む、請求項1に記載のマイクロニードルパッチの製造方法。
【請求項11】
前記鋳型は親水性材料で製造してなるプレートであり、その表面にマイクロホールアレイを有する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記工程C)が遠心力又は真空静圧により実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記鋳型は透気性材料により製造されてなり、
真空静圧により重合体溶液をマイクロホールへ吸入する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
工程D)の後、前記鋳型から乾燥したマイクロニードルパッチを剥離する工程をさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項15】
重合体溶液のキャスト層が繰り返して凍結-解凍処理されうるものであり、
前記処理を-100℃〜室温の間に行い、又は室温〜160℃の間に行う、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記凍結-解凍処理の繰り返す回数が1〜20回である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記重合体溶液を、キャストされた重合体溶液層にキャストする、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
次回キャストする前に、キャストされた重合体溶液層を凍結する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
再キャスト作業が5回未満に繰り返す、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
繰り返す再キャストされた重合体溶液の材料と針体の材料との間、各層キャストの材料の間は同一であっても、異なってもよい、治療物質を含有しても、含有しなくてもよい請求項19に記載の方法。
【請求項21】
一部の繰り返す溶液再キャストプロセスに替えて、キャストされた重合体溶液層上の溶液と相同する重合体と治療物質が含有された予め製造された重合体シートを組み込む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記重合体シートは、重合体溶液をホール無しプレートにキャストしてから乾燥し得る、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
鋳型から剥離されたマイクロニードルパッチを被覆又はパッケージングすることにより、マイクロニードルパッチの保存期間において吸湿できないこと及び皮膚に粘着する間に水蒸気を保持することを確保する工程を、さらに含む、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−505164(P2012−505164A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530349(P2011−530349)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000510
【国際公開番号】WO2010/040271
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511088324)
【氏名又は名称原語表記】JIN Tuo
【Fターム(参考)】