説明

相間絶縁紙ホルダー

【課題】 複数枚積層した状態で相間絶縁紙を保持しても、相間部が必要とされる屈曲角度よりも広がって固定される虞の少ない相間絶縁紙ホルダーを提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明に係る相間絶縁紙ホルダーは、ステータの両側のコイルエンド部にそれぞれ配されて異相のコイル間に介装される一対の相間部が備えられ該相間部がコイルを収容しうる収容空間を形成するように屈曲されてなる相間絶縁紙を、複数枚積層した積層状態で保持する相間絶縁紙ホルダーであって、
前記一対の相間部の一方づつを積層状態にてそれぞれ収容する収容部が形成された一対の収容部材を備えてなり、
前記収容部の幅は、収容される積層状態の相間部の幅を収縮させるような長さに設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータのコイルエンド部で異相のコイル間の絶縁に用いる相間絶縁紙を、積層した状態で収容するための相間絶縁紙ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モーターのステータに於いては、コイルエンド部101での異相のコイル102a、102b間の絶縁に、相間絶縁紙が用いられている(下記特許文献1参照)。
斯かる相間絶縁紙は、例えば、図6(イ)に示すように、コイルエンド部101にて異相のコイル102a、102b間に介装される上下一対の相間部105と、該相間部105間を接続する左右一対の接続部106とで構成されてなる。このような相間絶縁紙100は、図6(イ)、(ロ)に示すように、1の相のコイル102aをステータコア107のスロット108内に挿入した後、2の相のコイル102bをスロット108内に挿入する前に、前記接続部106をステータコア107のスリット108内に挿入することにより、コイルエンド部101にて相間部105が異相のコイル102a、102b間に介装されて、異相コイル102a、102b間の絶縁を図るものである。
【0003】
この種の相間絶縁紙は、通常、複数枚積層された状態で、例えば紐で縛られて保存され、また、その状態でモーターの製作現場等へ輸送される。
【特許文献1】特開2003−319594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の相間絶縁紙に関し、例えば、図7に示すように、相間部105が適宜必要とされる角度に屈曲されてコイル102を包み込むように収容空間108が形成されたものが提案されている。
このような相間絶縁紙100を用いれば、コイルエンド部101にて、ステータコア107に装着された1の相のコイル102a表面に沿わせて該コイル102aを相間部105にて包み込むようにした後、2の相のコイル102bをステータコア107に装着することができることから、異相のコイル102a、102b同士の接触が発生しないようにしつつステータに装備するという作業が容易になる。また、装備後に於いても、振動等による不用意な相間絶縁紙100の位置ズレ等によって、異相のコイル102a、102b同士がコイルエンド部101にて接触するような虞も低減される。
【0005】
しかしながら、このように相間部105が屈曲された相間絶縁紙100を、保存、運搬等の際に複数枚積層すると、相間絶縁紙にはある程度の厚さがあることから、上段側の相間絶縁紙100の相間部105に於いて、屈曲角度が広がることとなる(即ち、相間部105が幅方向に伸びることとなる)。従って、相間絶縁紙100は、その状態で長時間維持されると、必要とされる角度よりも広がった形態で相間部105が固定されてしまうこととなる。このような相間絶縁紙では、コイル102a表面に沿うようにしてコイル102aを包み込みにくく、上述の如き利点が損なわれることとなる。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、複数枚積層した状態で相間絶縁紙を保持しても、相間部が必要とされる屈曲角度よりも広がって固定される虞の少ない相間絶縁紙ホルダーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明に係る相間絶縁紙ホルダーは、ステータの両側のコイルエンド部にそれぞれ配されて異相のコイル間に介装される一対の相間部が備えられ該相間部がコイルを収容しうる収容空間を形成するように屈曲されてなる相間絶縁紙を、複数枚積層した積層状態で保持する相間絶縁紙ホルダーであって、
前記一対の相間部の一方づつを積層状態にてそれぞれ収容する収容部が形成された一対の収容部材を備えてなり、
前記収容部の幅は、収容される積層状態の相間部の幅を収縮させるような長さに設定されていることを特徴とする。
斯かる構成からなる相間絶縁紙ホルダーによれば、積層状態の相間部を収容部に収容して長時間保持しても、収容部の収容幅が積層状態の相間部の幅を収縮させるような長さに設定されてなるので、相間部が収容部内で幅方向に広がることが少なく、相間部に於いて必要とされる屈曲角度が広がる虞も少ない。
【0008】
本発明の相間絶縁紙ホルダーに於いて、好ましくは、前記収容部の幅が、非積層状態に於ける相間部の最長幅の90〜98%の範囲に設定されているものが好ましい。
斯かる範囲に設定されてなれば、相間部の屈曲量が大きくなりすぎず(即ち、屈曲角度が小さくなりすぎず)、また、積層状態で相間部を収容部に収容し易いものとなる。
【0009】
更に、前記収容部材には、前記収容部に収容される積層状態の前記相間部の幅方向両端部を狭持する一対の狭持部が備えられてなるものが好ましい。
斯かる構成によれば、収容された際に、積層された相間絶縁紙が収容部内でばらけることもなく、積層状態で維持されやすい。
【0010】
また、前記収容部材の収容部は、上方が開放されてなるものが好ましい。
斯かる構成によれば、屈曲により形成された収容空間の裏面側に於いて、屈曲により相間部に形成されることとなる凸出部を上向きにして収容することで、凸出部が邪魔になること無く、相間部を容易に収容することができる。
更に、上方が開放されてなる収容部を備えた収容部材に於いては、別の収容部材を載置しうるように構成された載置部が備えられ、該載置部は、積層状態で相間部が収容された際に、前記収容空間を形成する屈曲によって前記相間部に形成された凸出部よりも、上方に凸出するように構成されているものが好ましい。
斯かる構成によれば、両側の相間部をそれぞれ収容部材に収容させて、順次段積みしても、上段に段積みされた収容部材によって、下段の収容部材に収容された相間部の凸出部が押しつぶされる虞がない。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の相間絶縁紙ホルダーは、複数枚積層した状態で相間絶縁紙を保持しても、相間部が必要とされる屈曲角度よりも広がって固定される虞が少ないという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、好ましい実施形態の相間絶縁紙ホルダーについて、図面を参照しつつ説明する。
先ず、本実施形態の相間絶縁紙ホルダーに保持される相間絶縁紙について説明する。
図1は、相間絶縁紙を平面状に延ばした状態を示す平面図である。
図1に示すように、相間絶縁紙1は、絶縁紙から構成され、ステータのステータコアの両側に配されるコイルエンド部にそれぞれ配されて異相のコイル間に介装される上下に一対の相間部2と、該相間部2を連結しステータコアの内周側のスロット内にそれぞれ配される左右一対の接続部3とを有している。
前記絶縁紙としては、珪素樹脂、ナイロン(66ナイロン等)、ポリイミド樹脂等の樹脂シート、又は、これらの樹脂を紙、繊維シート等に含浸させたもの等が採用されうる。
【0013】
前記相間部2は、それぞれ略帯状の形態をなし、幅方向に延在している。
前記接続部3は、細長形状で上下に延在し、上下に配された相間部2の幅方向端部同士を連結している。
【0014】
この相間絶縁紙1は、上下の相間部2が、それぞれコイルを収容しうる収容空間4が幅方向中間部に形成されるように、例えば、プレス成形等により屈曲されている。具体的には、図1の波線部分が屈曲されている。そして、図2に示すように、形成された収容空間4の裏側に於いて外方に凸出する凸出部5が形成されている。尚、図2に於いては、紙面の裏側に収容空間4が形成された状態が示されている。
【0015】
次に、本実施形態の相間絶縁紙ホルダーについて説明する。
図3は、本実施形態の相間絶縁紙ホルダーによって、積層された相間絶縁紙1が保持された状態を示す斜視図である。
図3に示すように、本実施形態の相間絶縁紙ホルダーは、合成樹脂で成形されてなる一対の収容部材11を備えている。
この相間絶縁紙ホルダーは、一対の収容部材11が対向するように配されて、積層された相間絶縁紙1を保持するように構成されている。
【0016】
図4(イ)は、この収容部材11の正面図(相間絶縁紙1を挿入する側から見た図)であり、(ロ)は背面側から見た斜視図である。
図4に示すように、前記収容部材11は、積層された相間絶縁紙1の相間部2を挿入することにより収容しうる収容部12を備えている。前記収容部材11は、長方形状の底板部13と該底板部13の長手方向両端部から上方に延出した一対の側壁部14、14とを備え、前記収容部12は、この底板部13と一対の側壁部14、14とにより区画形成されている。尚、この収容部12は、上方が閉塞されずに開放されてなる。
また、収容部12の収容幅は、一対の側壁部14、14の内側縁間の長さとなっており、非積層状態に於ける前記相間部2の最長幅の90〜98%の範囲に設定されている。
尚、本明細書に於いて、非積層状態に於ける相間部2の最長幅とは、積層されていない状態の1枚の相間絶縁紙1を対象として、自然状態(何も力を加えていない状態)での相間部2に於ける最も幅方向(挿入方向に直交する方向)に広い部分の長さLを意味する(図2参照)。
【0017】
前記収容部材11は、前記底板部13及び一対の側壁部14、14の背面側端縁部から内方に凸出したストッパーフランジ部15が備えられている。
このストッパーフランジ部15により、収容した相間絶縁紙1が背面側から突出する虞が防止されている。
また、前記収容部材11には、各側壁14、14の上部から内方に延出し且つ先端部が下方に向いた狭持片16が備えられ、該狭持片16と底板部13とで収容した積層状態の相間部2の幅方向端部を狭持する狭持部が構成されている。
【0018】
更に、前記収容部材11には、別の収容部材11を上に載置しうるように、各側壁14、14から連続するように上方に突出した一対の載置部18が備えられ、該載置部18は、図3に示すように、積層状態の相間部2が収容された状態に於いて、相間部2の凸出部5よりも上方に凸出するように構成されている。
【0019】
本実施形態の相間絶縁紙ホルダーは、上記の如く構成されてなるが、次に、該相間絶縁紙ホルダーを用いて相間絶縁紙1を保持させる方法(使用方法)について説明する。
図5に示すように、同一形状の相間絶縁紙1を複数枚位置ズレがないように積み重ねた積層状態に於いて、一方の積層状態の相間部2を、一方の収容部材11の収容部12に挿入して収容させる。次いで、他方の相間部2を矢印X方向にスライドさせることにより、他方の収容部材11の収容部12内に収容させ、図3に示すように、積層状態の相間絶縁紙1を保持させることができる。
【0020】
本実施形態の相間絶縁紙ホルダーは、上記の如く構成され、上記の如く使用されることから、相間絶縁紙1を容易に保持させることができると共に、相間絶縁紙1を使用する際には、各収容部材11を互いに離反する方向に引っ張ることにより、相間絶縁紙1を容易に取り出すことができる。
【0021】
一方、前記収容部材11には、前記収容部12に収容された際に、積層状態の前記相間部2の幅方向両端部を狭持する一対の狭持部が備えられてなることから、収容された際に、積層状態の相間絶縁紙1がばらけることもなく、積層状態で維持され易い。更に、相間絶縁紙1が収容部12から脱抜する虞も低減する。
【0022】
尚、本実施形態の相間絶縁紙ホルダーは、上記の如く構成され、上述の如き利点を有したが、本発明の相間絶縁紙ホルダーは、上記構成に限定されず、本発明の意図する範囲内に於いて、適宜設計変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一実施形態の相間絶縁紙を平面状に延ばした状態を示す平面図。
【図2】同実施形態の相間絶縁紙を上方から見た斜視図。
【図3】一実施形態の相間絶縁紙ホルダーが積層された相間絶縁紙を保持した状態を示す斜視図。
【図4】同実施形態の収容部材を示し、 (イ)は、正面図。 (ロ)は、背面側斜視図。
【図5】同実施形態の相間絶縁紙ホルダーを用いて、相間絶縁紙を保持させる一過程を示す上面図。
【図6】相間絶縁紙の一使用形態を示し、 (イ)は、概略斜視図。 (ロ)は、概略側面図。
【図7】相間絶縁紙の一使用形態を示し、 (イ)は、概略斜視図。 (ロ)は、概略側面図。
【符号の説明】
【0024】
1・・・相間絶縁紙、 2・・・相間部、 3・・・接続部、 4・・・収容空間、 5・・・凸出部
11・・・収容部材、 12・・・収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータの両側のコイルエンド部にそれぞれ配されて異相のコイル間に介装される一対の相間部(2)が備えられ該相間部(2)がコイルを収容しうる収容空間(4)を形成するように屈曲されてなる相間絶縁紙(1)を、複数枚積層した積層状態で保持する相間絶縁紙ホルダーであって、
前記一対の相間部の一方づつを積層状態にてそれぞれ収容する収容部(12)が形成された一対の収容部材(11)を備えてなり、
前記収容部(12)の幅は、収容される積層状態の相間部(2)の幅を収縮させるような長さに設定されていることを特徴とする相間絶縁紙ホルダー。
【請求項2】
前記収容部(12)の幅は、非積層状態に於ける相間部(2)の最長幅の90〜98%の範囲に設定されている請求項1記載の相間絶縁紙ホルダー。
【請求項3】
前記収容部材(11)には、前記収容部(12)に収容される積層状態の前記相間部(2)の幅方向両端部を狭持する一対の狭持部が備えられてなる請求項1又は2記載の相間絶縁紙ホルダー。
【請求項4】
前記収容部(12)は、上方が開放されてなる請求項1乃至3の何れかに記載の相間絶縁紙ホルダー。
【請求項5】
前記収容部材(11)には、別の収容部材(11)を載置しうるように構成された載置部(18)が備えられ、該載置部(18)は、積層状態で相間部(2)が収容された際に、前記収容空間(4)を形成する屈曲によって前記相間部(2)に形成された凸出部(5)よりも、上方に凸出するように構成されている請求項4記載の相間絶縁紙ホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−6031(P2006−6031A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179557(P2004−179557)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000190611)日東シンコー株式会社 (104)
【Fターム(参考)】