説明

相関性評価方法、相関性評価装置、動作再現装置

【課題】力に関する複数の収集データの相関性を適切に評価することが可能な相関性評価方法、及び装置等を提供すること。
【解決手段】人が特定の物体に対して所定の動作をする際に加えられる力を複数回計測するステップと、前記計測された力の時系列データを複数個、記憶手段に格納するステップと、前記記憶手段に格納された力の時系列データを標本とし、該時系列データ間の相関性を示す値で重み付けした隣接行列を求めるステップと、前記隣接行列を正規化した正規化隣接行列を求めるステップと、前記正規化隣接行列の固有値が1となる場合の固有ベクトルの要素の大きさに基づいて、該要素に対応する時系列データの他のデータとの相関性を評価するステップと、を備えることを特徴とする相関性評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力を計測した時系列データの他のデータとの相関性を評価する相関性評価方法、及びこの方法を実現するための装置、更には、人が特定の物体に対して操作による当該物体の動作を再現する動作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットや電機統合システムを用いて人間を支援するシステムの開発が行われており、係るシステムにおいては、人間の特徴的な動作を抽出することが重要なテーマとなっている。
【0003】
人間の動作に関する情報のうち位置の変化情報については、モーションキャプチャと称される技術が存在し、動作における空間位置情報の抽出が可能となっている。例えば、踊りの動作等を抽出し、その空間情報を再現可能なロボットシステムの開発等が行われている。
【0004】
ところが、人間の動作は位置情報のみならず、各位置において作用した力の情報も含まれるべきものである。特に、熟練技能者のスキルや技術の特徴を抽出するためには、力加減に関する情報が抽出されることが望ましい。
【0005】
このような観点から、時系列な位置情報と力の接触情報を取得し、これを解析して再現する位置、力再現方法等についての発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−279699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の方法等では、複数のデータを収集し、それらの相関性について評価することについては考慮されていない。従って、力に関する複数の収集データの相関性を適切に評価することができない。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、力に関する複数の収集データの相関性を適切に評価することが可能な相関性評価方法、及び装置等を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、
人が特定の物体に対して所定の動作をする際に加えられる力を複数回計測するステップと、
前記計測された力の時系列データを複数個、記憶手段に格納するステップと、
前記記憶手段に格納された力の時系列データを標本とし、該時系列データ間の相関性を示す値で重み付けした隣接行列を求めるステップと、
前記隣接行列を正規化した正規化隣接行列を求めるステップと、
前記正規化隣接行列の固有値が1となる場合の固有ベクトルの要素の大きさに基づいて、該要素に対応する時系列データの他のデータとの相関性を評価するステップと、
を備えることを特徴とする相関性評価方法である。
【0010】
この本発明の第1の態様によれば、力に関する複数の収集データの相関性を適切に評価することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、
人が特定の物体に対して所定の動作をする際に加えられる力と、前記特定の物体の変位を複数回計測するステップと、
前記計測された力が前記計測された変位を構成する第1の要素と対応づけられた第1のデータと、前記計測された変位を構成する第2の要素が前記計測された変位を構成する第1の要素と対応づけられた第2のデータとを、前記複数回の計測に係る人の動作に対応づけて複数個、記憶手段に格納するステップと、
前記第1のデータ間の相関性と、前記第2のデータ間の相関性に基づいて、前記複数回の計測に係る人の動作間の相関性を評価するステップと、
を備えることを特徴とする相関性評価方法である。
【0012】
この本発明の第2の態様によれば、力に関する複数の収集データの相関性を適切に評価することができる。
【0013】
この場合、
前記複数回の計測に係る人の動作間の相関性を示す値で重み付けした隣接行列を求めるステップと、
前記隣接行列を正規化した正規化隣接行列を求めるステップと、
前記正規化隣接行列の固有値が1となる場合の固有ベクトルの要素の大きさに基づいて、該要素に対応する人の動作の、他の動作との相関性を評価するステップと、
を備えることを特徴とするものとしてもよい。
【0014】
本発明の第1又は第2の態様において、
前記特定の物体は筆記具又は筆記具に擬した物体であり、
前記人がする所定の動作は、筆記動作であり、
前記計測される力は、筆圧に相当する力であるものとしてもよい。
【0015】
筆記具又は筆記具に擬した物体を特定の物体とする本発明の第2の態様において、
前記所定の動作は、円を描く筆記動作であり、
前記第1の要素は、角度変化であり、
前記第2の要素は、前記円の想定中心からの距離であるものとしてもよい。
【0016】
本発明の第3の態様は、
人が特定の物体に対して所定の動作をする際に加えられる力を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測された力の時系列データが複数個、格納される記憶手段と、
前記記憶手段に格納された力の時系列データを標本とし、該時系列データ間の相関性を示す値で重み付けした隣接行列を算出し、該隣接行列を正規化した正規化隣接行列を算出する正規化隣接行列算出手段と、
前記正規化隣接行列算出手段により算出された正規化隣接行列の固有値が1となる場合の固有ベクトルを算出する固有ベクトル算出手段と、
を備えることを特徴とする相関性評価装置である。
【0017】
この本発明の第3の態様によれば、力に関する複数の収集データの相関性を適切に評価することができる。
【0018】
本発明の第4の態様は、
人が特定の物体に対して所定の動作をする際に加えられる力と、前記特定の物体の変位を計測する計測手段と、
前記計測された力が前記計測された変位を構成する第1の要素と対応づけられた第1のデータと、前記計測された変位を構成する第2の要素が前記計測された変位を構成する第1の要素と対応づけられた第2のデータとが、前記計測された人の動作に対応づけられて記憶される記憶手段と、
前記第1のデータ間の相関性と、前記第2のデータ間の相関性に基づいて、人の動作間の相関性を評価する評価手段と、
を備えることを特徴とする相関性評価装置である。
【0019】
この本発明の第4の態様によれば、力に関する複数の収集データの相関性を適切に評価することができる。
【0020】
この場合、
前記人の動作間の相関性を示す値で重み付けした隣接行列を算出し、該隣接行列を正規化した正規化隣接行列を算出する正規化隣接行列算出手段と、
前記正規化隣接行列の固有値が1となる場合の固有ベクトルを算出する固有ベクトル算出手段と、
を備えることを特徴とするものとしてもよい。
【0021】
本発明の第3又は第4の態様において、
前記特定の物体は筆記具又は筆記具に擬した物体であり、
前記人がする所定の動作は、筆記動作であり、
前記計測される力は、筆圧に相当する力であるものとしてもよい。
筆記具又は筆記具に擬した物体を特定の物体とする本発明の第4の態様において、
前記所定の動作は、円を描画する筆記動作であり、
前記第1の要素は、角度変化であり、
前記第2の要素は、前記円の想定中心からの距離であるものとしてもよい。
【0022】
本発明の第5の態様は、
人が特定の物体に対して行った操作を検知し、該人が行った操作による当該物体の動作を、他の物体により再現させる動作再現装置であって、
前記他の物体における加速度に関する情報を記憶手段に記憶させ、
前記人が操作を行わない場合の動作再現においては、前記記憶手段に記憶された前記他の物体における加速度に関する情報に基づいて、前記他の物体を動作させることを特徴とする、
動作再現装置である。
【0023】
この本発明の第5の態様によれば、初期位置が異なる場合であっても、位置や力の変化を、より正確に再現することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、力に関する複数の収集データの相関性を適切に評価することが可能な相関性評価方法、及び装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施例に係る相関性評価装置1が有するハプティックペン10を人が把持した様子を示す図である。
【図2】リニアモータ16の制御系を周波数領域で表現したブロック線図である。
【図3】外乱オブザーバ20の構成を示すブロック線図である。
【図4】有向グラフによるシステム結合の例を示す図である。
【図5】第1実施例の相関性評価装置1が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】各回において計測された力(筆圧)の変化を示す図である。
【図7】導出された隣接行列AGの各要素を示す図である。
【図8】本発明の第2実施例に係る相関性評価装置2が有するハプティックペン50を人が把持した様子を示す図である。
【図9】第2実施例におけるバイラテラル制御を周波数領域で表現したブロック線図である。
【図10】外乱オブザーバ70、72の構成を示すブロック線図である。
【図11】力、半径、角度の関係を示す図である。
【図12】第2実施例の相関性評価装置2が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】第2実施例の実験に係る実験パラメータを示す図である。
【図14】被験者Aが円を描画した際の実験結果を、左から順に3次元グラフ、位置に関する結果、力に関する結果の形式で示したものである。
【図15】被験者Aが円を描画した際の実験結果を、左から順に3次元グラフ、位置に関する結果、力に関する結果の形式で示したものである。
【図16】被験者Bが円を描画した際の実験結果を、左から順に3次元グラフ、位置に関する結果、力に関する結果の形式で示したものである。
【図17】被験者Bが円を描画した際の実験結果を、左から順に3次元グラフ、位置に関する結果、力に関する結果の形式で示したものである。
【図18】位置に関する相関性(上記Rp)を要素間で求めた結果を示す行列である。
【図19】力に関する相関性(上記Rf)を要素間で求めた結果を示す行列である。
【図20】位置に関する相関性と力に関する相関性を総合した結果を示す行列である。
【図21】第2実施例に係る相関性評価装置の概念図である。
【図22】第3実施例に係る動作再現装置300の概念を示す図である。
【図23】第3実施例におけるバイラテラル制御を周波数領域で表現したブロック線図である。
【図24】外乱オブザーバ342と反力推定オブザーバ344の構成を周波数領域で表現したブロック線図である。
【図25】保存時のマスターシステム310における位置と力(応答値;以下同じ)の変化を示す図である。
【図26】第3実施例の構成による再現時のスレーブシステム320における位置と力の変化を示す図である。
【図27】従来の構成によって再現した場合の、スレーブシステム320における位置と力の変化を示す図である。
【図28】第3実施例の構成による再現時のスレーブシステム320における位置と力の変化を示す図である。
【図29】第3実施例の動作再現装置300を、他の態様で表現した機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0027】
<<第1実施例>>
以下、図面を参照し、本発明の第1実施例に係る相関性評価方法、及びこれを実現するための相関性評価装置について説明する。本実施例の相関性評価方法は、人の筆記動作における力加減を計測して記憶装置に記憶させ、記憶された複数のデータの中から定量的な動作の評価を行うことにより、最も標準的な動作を抽出することを最終的な目的としている。
【0028】
本実施例の相関性評価方法は、係る定量的な動作の評価において、グラフ理論における隣接行列(重み付けのあるもの)を用いている点が特徴的である。
【0029】
[構成]
図1は、本発明の第1実施例に係る相関性評価装置1が有するハプティックペン10を人が把持した様子を示す図である。図示するように、ハプティックペン10は、筆記具に擬した形状をしており、机に置かれた紙等の平面に当接するペン先に擬した先端部を有する長棒形状の軸体12と、軸体12に対してその長手方向(図中、X方向)に相対移動可能な把持部14と、を備える。なお、先端部には、現実に筆記可能な部材(筆、黒鉛、小型ボールペン等)が取り付けられてよい。
【0030】
把持部14は、リニアモータ16を内蔵しており、可動子が軸体12に連結されている。従って、把持部14は、軸体12に対して図1におけるX方向に、所望の力を出力可能となっている。これによって、人が筆記動作をする際に生じる筆圧に対して反力を出力することができる。
【0031】
図2は、リニアモータ16の制御系を周波数領域で表現したブロック線図である。図中、「s」はラプラス演算子である。また、「・」は1階の微分を表し、「^」は推定値を表している。以下の説明においてこれらを表現する場合、必要に応じて記号中に「・」、「・・」(2階の微分)、「^」等を挿入する。
【0032】
ここで、パラメータ「Kp」は位置に対するゲインであり、「Kv」は速度に対するゲインである。また、パラメータ「gpd」は擬似微分のカットオフ周波数であり、「g」は重力である。また、「Kt」はリニアモータ16の推力定数であり、添え字の「n」はノミナル値を示している。更に、「M」は軸体12の質量を示している。
【0033】
本実施例の相関性評価装置1では、軸体12と把持部14の相対位置が基準位置に固定されるように、リニアモータ16がフィードバック制御される。軸体12と把持部14の相対位置(位置応答値)はパラメータ「xres」で表現されており、「xres」が値ゼロとなるようにリニアモータ16の電流制御がなされる。「xres」及びその変化(速度)に基づいて決定される、リニアモータ16に供給される電流の仮電流参照値は、「Iref」で示されている。
【0034】
更に、本実施例の相関性評価装置1は、外乱に対する補償を行うと共に、環境反力(=筆圧)を推定するための外乱オブザーバ20を備えている。
【0035】
図3は、外乱オブザーバ20の構成を示すブロック線図である。ここで、パラメータ「gd」は外乱オブザーバ20のカットオフ周波数であり、「gr」は反力オブザーバのカットオフ周波数である。
【0036】
物体が環境に及ぼす推定外乱F^disは、次式(1)のように推定される。本実施例では、粘性による外乱が小さく、ハプティックペン10を垂直に立てた状態で筆記するものと仮定する。
【0037】
【数1】

【0038】
そして、grとgdが等しいものと仮定すると、環境反力F^envは、次式(2)のように推定される。このように推定された環境反力F^envが、人の及ぼす力(筆圧)に相当する。
【0039】
【数2】

【0040】
また、リニアモータ16に供給される電流の電流参照値「Irefa」は、仮電流参照値「Iref」に電流補償値「Icmp」を加算して求められる。
【0041】
係る構成によって、位置応答値「xres」から筆圧(力)情報を導出することが可能となり、圧力センサ等を備えることなく人の力を測定することができる。
【0042】
環境反力F^envは、ハプティックペン10にケーブル接続され、又はBluetooth(登録商標)等の無線通信によって接続された記憶装置32に時系列データ(一定期間、環境反力F^envが所定周期でサンプリングされたデータ)として格納される。そして、以下に説明するように、情報処理装置30によって相対性評価が行われる。
【0043】
[相対性評価]
情報処理装置30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を中心として、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、I/Oポート等がバスによって接続されたマイクロコンピュータであり、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリ等の記憶装置32を内蔵している。
【0044】
情報処理装置30は、グラフ理論における隣接行列を用いて時系列データの他のデータとの相関性を評価している。
【0045】
また、情報処理装置30は、係る相関性評価のために、図示しないプログラムメモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することにより実現される機能ブロックとして、正規化隣接行列算出部34と、固有ベクトル算出部36と、を備える。
【0046】
ここで、グラフ理論における隣接行列について説明する。図4は、有向グラフによるシステム結合の例を示す図である。図中、要素Aから要素Cに向かう矢印は、要素Aが要素Cにリンクしていることを示している。図4に示す関係を隣接行列AGで表すと、次式(3)のようになる。
【0047】
【数3】

【0048】
上記の隣接行列には、重み付けがなされておらず、全ての要素が1となっている。本実施例の情報処理装置30では、更に、データ間の相関性を示す値(以下、相関係数と称する)で重み付けした隣接行列を算出する。なお、以下ではリンクの向きは考慮しないものとする。従って、隣接行列AGは対角行列となる。
【0049】
本実施例の情報処理装置30で扱う隣接行列AGは、例えば次式(4)のようになる。ここでは、時系列データの個数が3個であるものとしている。
【0050】
【数4】

【0051】
上式(4)において、Cijは、要素iと要素jの間の相関係数を表している。それぞれのCijは、次式(5)〜(10)によって計算される。式中、「Fi(t+m)」は、時系列データの開始時刻から時間t経過した時刻を基準とし、m番目にサンプリングされたデータ(F^dis)を示している。また、「Fi(上側に横棒)(t)」は、時系列データの開始時刻から時間t経過した時刻を基準とし、その時刻以降にサンプリングされたデータ(F^dis)の平均値である。また、「k」は、時系列データの個数であり、Cij(t)は時系列データの開始時刻から時間t経過した時刻における要素iと要素jの間の相関係数である。
【0052】
本実施例では、変数tを色々と変化させ、最大値となったCij(t)をCijとする。
【0053】
このようにして隣接行列AGが生成されると、各列和を1として正規化を行い、推移確率行列(特許請求の範囲における「正規化隣接行列」に相当する)Mを、次式(11)によって算出する。
【0054】
【数5】

【0055】
推移確率行列Mは正規化されているため、最大固有値は1である。情報処理装置30では、固有値が1である場合の固有ベクトルを算出する。具体的には、固有値が1である場合の固有値と固有ベクトルの関係は次式(12)によって規定されているため、上式(11)を次式(12)に代入することにより、次式(13)を得る。
【0056】
【数6】

【0057】
上式(13)におけるx1は、1番目の時系列データの相対的な他のデータとの相関性を示す値である。同様に、x2は、2番目の時系列データの相対的な他のデータとの相関性を示す値であり、x3は、3番目の時系列データの相対的な他のデータとの相関性を示す値である。
【0058】
従って、x1〜x3のうち最も大きいものに対応する時系列データが、最も代表的なデータであるといえる。本実施例の情報処理装置30では、この最も代表的なデータを、最も標準的な動作を示すものとして出力する。
【0059】
なお、上記x1〜x3は、「相対的な他のデータとの相関性を示す値」であり、要素数等によって変動するため、これをより定量的な値とするために、下限値として全く筆記動作をしなかった場合の被比較データを1つ挿入してよい。そして、被比較データに相当するxとの差分を求めることによって、より定量的な値を取得し、これを出力してもよい。次式(14)は、係る場合の各時系列データと他のデータとの相関性を示す値を取得するためのものである。本式においては、x3が、全く筆記動作をしなかった場合の被比較データに相当する。
【0060】
【数7】

【0061】
[処理フロー]
以下、本実施例の相関性評価装置1が行う処理の流れについて説明する。図5は、本実施例の相関性評価装置1が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
【0062】
まず、ハプティックペン10を用いて人が筆記動作を行い、その際の力(筆圧)を計測し(S100)、計測値をサンプリングしたものを時系列データとして記憶装置32に格納する(S102)。係る処理は、複数回に亘って行われる。
【0063】
そして、全く筆記動作をしなかった場合の被比較データを1つ挿入する(S104)。
【0064】
次に、記憶装置32に格納された力の時系列データを標本とし、時系列データ間の相関性を示す値で重み付けした隣接行列を求める(S106)。
【0065】
次に、隣接行列を正規化した正規化隣接行列を求める(S108)。S106及びS108の処理は、正規化隣接行列算出部34によって行われる。
【0066】
なお、記憶装置32に格納された力の時系列データのうち一部は、予め格納された過去のデータであっても構わない。
【0067】
そして、正規化隣接行列の固有値が1となる場合の固有ベクトルを算出し(S110)、固有ベクトルの要素の大きさに基づいて、この要素に対応する時系列データの他のデータとの相関性を評価する(S112)。具体的には、要素が最も大きいものに対応する時系列データを最も代表的なデータであるとして出力する。同時に、要素の大きさを、その時系列データの得点として出力してもよい。なお、正規化隣接行列の固有値が1となる場合の固有ベクトルは、固有ベクトル算出部36によって行われる。
【0068】
[利用例]
なお、最も代表的なデータを手本データとし、他の任意の時系列データとの相関性を求めることもできる。この場合、予め図5で説明したようなフローによって出力された時系列データを1番目のデータとし、他の任意の時系列データを2番目のデータとする。そして、全く筆記動作をしなかった場合の被比較データを3番目のデータとする。
【0069】
こうして得られる上式(14)のような結果に対し、x1を値1とするような乗算を行う。その結果、手本データを1(100点)とした場合に、他の任意の時系列データがどれだけ似通っているかを示す指標値を得ることができる。次式(15)は、係る指標値(x2/x1)が得られる様子を示している。
【0070】
【数8】

【0071】
[実験]
本出願の発明者は、本発明の有用性を実証するための実験を行っている。以下にその結果を示す。本実験では、時系列データの数を6個としている。但し、前述のように、全く筆記動作をしなかった場合の被比較データを1つ挿入するため、筆記動作を行った場合の時系列データの数は5個である。
【0072】
人は、ハプティックペン10を用いて「あ」の文字を5回筆記した。一回の筆記に要する時間は15[秒]とし、データ量を15[秒]で固定した。
【0073】
図6の各図は、各回において計測された力(筆圧)の変化を示す図である。これらのデータに対して前述のように隣接行列AGを生成し、これを正規化した後に、固有値が1となる場合の固有ベクトルを導出した。次式(16)は、本実験において生成される隣接行列AGのモデルを示しており、図7は、導出された隣接行列AGの各要素を示す図である。
【0074】
【数9】

【0075】
そして、導出された固有ベクトルは次式(17)のようになり、6番目の要素を引き算したベクトルは次式(18)のようになる。
【0076】
【数10】

【0077】
上式(18)より、最も代表的な時系列データは、1番目に格納されたデータであることが判る。
【0078】
[効果]
以上説明した本発明の第1実施例に係る相関性評価方法、及びこれを実現するための相関性評価装置によれば、記憶装置32に格納された力の時系列データを標本とし、時系列データ間の相関性を示す値で重み付けした隣接行列、及びこれを正規化した正規化隣接行列を求め、正規化隣接行列の固有値が1となる場合の固有ベクトルの要素の大きさに基づいて、それぞれの要素に対応する時系列データの他のデータとの相関性を評価するため、力に関する複数の収集データの相関性を適切に評価することができる。
【0079】
<<第2実施例>>
以下、図面を参照し、本発明の第2実施例に係る相関性評価方法、及びこれを実現するための相関性評価装置について説明する。本実施例の相関性評価方法は、人の筆記動作における力加減、及び筆記具の位置変化を計測して記憶装置に記憶させ、記憶された複数のデータ間の相関性を評価することを主要な目的としている。
【0080】
[構成]
図8は、本発明の第2実施例に係る相関性評価装置2が有するハプティックペン50を人が把持した様子を示す図である。本実施例のハプティックペン50は、第1実施例とは異なり、バイラテラル制御が行われるマスター・スレーブシステムのうち一方を構成するマスターペンである。
【0081】
ハプティックペン50には、第1実施例と同様、図8におけるZ方向に反力を出力すると共に筆圧に相当する力を測定可能なリニアモータ52が取り付けられ、更に、Z方向に直交するX方向とY方向の変位を測定可能な位置エンコーダ54、56が取り付けられている。
【0082】
なお、ハプティックペン50の本体部58は剛体に固定されており、把持部60のみが本体部58に対してX,Y,Z方向に変位可能となっている。
【0083】
図9は、本実施例におけるバイラテラル制御を周波数領域で表現したブロック線図である。図中、「F」は力である。また、「M」はマスターシステムを示し、「S」はスレーブシステムを示している。また、「C」は和のモードを示し、「D」は差のモードを示している。また、「ref」、「res」、「ext」は、それぞれ、参照値、応答値、外力値を示している。その他、第1実施例と共通する符号等については説明を省略する。図9で示したような構成は、X,Y,Z方向のそれぞれについて設けられている。
【0084】
本実施例に係る相関性評価装置2は、マスター用及びスレーブ用の外乱オブザーバ70、72を備えることによりロバスト安定性を実現し、マスター用及びスレーブ用の反力オブザーバ80、82を備えることにより外乱中からリニアモータに受ける外力を観測可能としている。
【0085】
図10は、外乱オブザーバ70、72の構成を示すブロック線図である。ここでは、マスター用とスレーブ用を区別しない。図10より、推定外力F^extは、次式(19)により表される。
【0086】
【数11】

【0087】
バイラテラル制御においては、位置と力が同時に制御される。その目的は、次式(20)、(21)により表される。
【0088】
【数12】

【0089】
これらの目的は、モード空間にQuarry行列(クオリー行列)を用いて変換することによって達成される。和のモードでは、力が制御され、差のモードでは、加速度の次元で位置が制御される。次式(22)は、2次のQuarry行列Q2を示しており、次式(23)は、2次のQuarry逆行列Q2-1を示している。
【0090】
【数13】

【0091】
なお、和のモードと差のモードによる制御の詳細については、既に(特開2009−279699号公報)等で開示されているため、詳細な説明を省略する。
【0092】
このような構成によって、人の筆圧に相当する力(F^Mext)やハプティックペン50の位置(Z方向には変位しないため、X方向の位置XMres、及びY方向の位置YMres)が把握される。
【0093】
[相対性評価]
力F^Mextや位置XMres、YMresは、ハプティックペン50にケーブル接続され、又はBluetooth(登録商標)等の無線通信によって接続された記憶装置92に一定期間、所定周期でサンプリングされたデータとして格納される。そして、以下に説明するように、情報処理装置90によって相対性評価が行われる。
【0094】
なお、位置についてはX座標、Y座標として格納されてもよいが、以下の説明では想定中心からの距離(半径)、及び角度の組み合わせに変換され、すなわち極座標に変換されて格納されるものとする。従って、記憶装置92には、力、半径、角度が対応づけられたデータとして格納される。図11は、力、半径、角度の関係を示す図である。
【0095】
情報処理装置90は、例えば、第1実施例の情報処理装置30と同様の構成を有するマイクロコンピュータであり、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリ等の記憶装置92を内蔵している。
【0096】
情報処理装置90は、グラフ理論における隣接行列を用いて記憶装置に格納されたデータの他のデータとの相関性を評価している。
【0097】
本実施例の情報処理装置90では、記憶装置92に格納されたデータを、力と角度が対応づけられた第1のデータ、半径と角度が対応づけられた第2のデータに整理する。次式(24)、(25)は、第1のデータと第2のデータを、それぞれベクトル形式で示したものである。本式では、角度の分解能を2π/6280=0.001(rad)とした。
【0098】
【数14】

【0099】
相関性の評価は、第1のデータと、第2のデータのそれぞれについて行い、最終的にそれぞれの評価結果の平均値を求めることによって行う。
【0100】
次式(26)〜(28)は、要素aと要素bの間の、第1のデータに関する相関性を示す値Rfを算出するための式である。式中、rfa(i)は、要素a(要素とは、ある計測回に取得された人の動作であることを示す)におけるrfデータ(式(24)参照)のうち、i番目の値であることを意味する。
【0101】
【数15】

【0102】
次式(29)〜(31)は、要素aと要素bの間の第2のデータに関する相関性を示す値Rpを算出するための式である。式中、rpa(i)は、要素aにおけるrpデータ(式(25)参照)のうち、i番目の値であることを意味する。
【0103】
【数16】

【0104】
そして、RfとRpの平均を求めることにより、要素aと要素bの相関性を示す値が導出される。なお、係る処理において、重み付け等の処理を行ってもよい。
【0105】
ab=(Rf+Rp)/2
【0106】
[処理フロー]
以下、本実施例の相関性評価装置2が行う処理の流れについて説明する。図12は、本実施例の相関性評価装置2が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
【0107】
まず、ハプティックペン50を用いて人が円を描画し、その際の力(筆圧)及び位置を計測し(S200)、計測値をサンプリングしたものを記憶装置92に格納する(S202)。
【0108】
そして、力と角度に関する相関性評価と、半径と角度に関する相関性評価の双方に基づいて、要素間の相対性評価を行う(S204)。
【0109】
[利用例、応用例]
第2実施例で例示した発明は、円を描画する際の力と位置に関するものに限定されるものではない。例えば、複数回に亘って筆記された所望の文字を、直線又は曲線パーツに分解し、それぞれについて、例えば(力とX座標)、(Y座標とX座標)を対応づけたデータを作成し、上記のようにパーツ毎の相関性を評価することによって、パーツ毎の筆跡鑑定を行うことが可能となる。
【0110】
また、第1実施例のように、正規化隣接行列算出部や固有ベクトル算出部等の機能ブロックを備え、上記Rabを要素とする隣接行列、正規化隣接行列を求め、固有値が1となる場合の固有ベクトルを算出することにより、代表的なデータを選出する処理を行ってもよい。
【0111】
[実験]
本出願の発明者は、本発明の有用性を実証するための実験を行っている。以下にその結果を示す。本実験では、被験者Aと被験者Bがそれぞれ2回、円を描画した。図13は、本実験に係る実験パラメータを示す図である。
【0112】
図14及び図15は、被験者Aが円を描画した際の実験結果を、左から順に3次元グラフ、位置に関する結果、力に関する結果の形式で示したものである。図14で示した結果を要素aと称し、図15で示した結果を要素bと称する。
【0113】
図16及び図17は、被験者Bが円を描画した際の実験結果を、左から順に3次元グラフ、位置に関する結果、力に関する結果の形式で示したものである。図16で示した結果を要素cと称し、図17で示した結果を要素dと称する。
【0114】
なお、3次元グラフにおける縦軸は、力の大きさを表している。
【0115】
そして、図18は、位置に関する相関性(上記Rp)を要素間で求めた結果を示す行列であり、図19は、力に関する相関性(上記Rf)を要素間で求めた結果を示す行列である。更に、図20は、これらを総合した結果を示す行列である。図18〜20に示すように、同一人物が描画したデータである要素aと要素bの間の相関、及び要素cと要素dの間の相関が明確に高くなっており、筆跡鑑定の一助となりうる結果を示している。
【0116】
[効果]
以上説明した本発明の第2実施例に係る相関性評価方法、及びこれを実現するための相関性評価装置によれば、計測された力が変位を構成する第1の要素と対応づけられた第1のデータと、変位を構成する第2の要素が第1の要素と対応づけられた第2のデータとを、複数回の計測に係る人の動作に対応づけて複数個、記憶装置92に格納し、第1のデータ間の相関性と、第2のデータ間の相関性に基づいて、複数回の計測に係る人の動作間の相関性を評価するため、力及び位置に関する複数の収集データの相関性を適切に評価することができる。
【0117】
なお、図21は、本実施例に係る相関性評価装置の概念図である。
【0118】
<<第3実施例>>
ところで、(特開2009−279699号公報)では、人が特定の物体に対して行った動作を再現するために、位置と力の情報を保存している。この結果、初期位置が異なる場合に、位置や力の変化が再現されない場合があった。
【0119】
本実施例に係る動作再現装置は、係る課題を解決することを主要な目的とする。
【0120】
[構成]
図22は、本実施例に係る動作再現装置300の概念を示す図である。図示するように、動作再現装置300は、マスターシステム310とスレーブシステム320を有し、スレーブシステム320から入力されたデータを保存するモーションデータメモリ350を備える。そして、人がマスターシステムの被操作体312に対して行った動作による当該被操作体312の位置や力の変化を、スレーブシステム320の可動体322が再現するように制御される。また、所望のタイミングで、過去にモーションデータメモリ350に格納された可動体322の動作を再現するように、可動体322が駆動される。
【0121】
被操作体312、及び可動体322には、それぞれアクチュエータが取り付けられている。被操作体312に取り付けられたアクチュエータは、可動体322が環境から受ける反力を被操作体312に伝えるように制御される。なお、被操作体312は、その長手方向に移動可能となっている。一方、可動体322に取り付けられたアクチュエータは、被操作体312に対してなされた操作を再現するように可動体322を駆動する。
【0122】
また、被操作体312、及び可動体322には、それぞれ位置エンコーダが取り付けられており、それぞれの位置や加速度を測定可能となっている。
【0123】
被操作体312、及び可動体322は、バイラテラル制御部によって同じ動作をするように制御される。これによって、被操作体を操作する操作者は、スレーブ側の環境の感触を知覚できる。
【0124】
図23は、本実施例におけるバイラテラル制御を周波数領域で表現したブロック線図である。図中の符号や添え字は、第1実施例や第2実施例で用いたものと同様である。例えば、図中「Q2」は、第2実施例で説明したQuarry行列(クオリー行列)である。
【0125】
マスターシステム310とスレーブシステム320は、それぞれ外乱オブザーバ342と反力推定オブザーバ344を備えている。図24は、外乱オブザーバ342と反力推定オブザーバ344の構成を周波数領域で表現したブロック線図である。
【0126】
本実施例において、作業空間における加速度、力の等価加速度は、Quarry行列を用いて、次式(32)、(33)で示すように、差のモード空間、和のモード空間に座標変換される。
【0127】
【数17】

【0128】
そして、バイラテラル制御の加速度次元における目標式は、次式(34)、(35)で表される。
【0129】
【数18】

【0130】
上式(35)における矢印は、2階微分された位置が零になることを示している。従って、和のモードにおける加速度参照値x・・Crefと、差のモードにおける加速度参照値x・・Drefは、次式(36)、(37)によって求められる。式中の符号や添え字は、第1実施例や第2実施例で用いたものと同様である。
【0131】
【数19】

【0132】
マスター・スレーブシステムにおける加速度参照値は、Quarry逆行列Q2-1を和のモード空間、差のモード空間に適用して、次式(38)によって求められる。
【0133】
【数20】

【0134】
上記のようにして逆変換されたマスターの加速度参照値x・・Mrefとスレーブの加速度参照値x・・Srefにより、各アクチュエータが制御される。このようなシステムを用いることにより、マスター・スレーブ間で透明性の高いバイラテラル制御が可能となる。
【0135】
[動作の保存]
ここで、(特開2009−279699号公報)に記載の方法、装置では、マスターシステム310における被操作体312の位置xMresと、加えられた力F^Mextを保存していた。ところが、この場合、環境との相対位置等の初期条件が異なる場合に、動作を余り正確に再現することができない場合がある。環境からの反力が存在すべき位置に対象物がない場合に、力を出力することができない等の場面が想定されるからである。
【0136】
これに対し、本実施例では、スレーブシステム320における加速度参照値x・・Srefを、モーションデータメモリ350に保存することにしている。上式(36)〜(38)より、保存時のスレーブシステム320における加速度参照値x・・Srefは、保存時におけるマスターシステム310及びスレーブシステム320の状態を反映している。これによって、保存時と再現時の環境の位置が異なる場合でも、環境からの反力が等しくなった時点から動作の正確な再現が可能となる。次式(39)に示すように、保存時と再現時の環境からの反力の等価電流が等しくなったときに、アクチュエータにかかる電流値が等しくなり、その時点からの再現動作は、保存時の環境に対する動作と等しくなるからである。なお、式中、添え字svは保存時の値を、ldは再現時の値をそれぞれ示している。
【0137】
【数21】

【0138】
また、加速度参照値x・・Srefのみを保存することにより、データの保存量を削減することもできる。
【0139】
[実験]
本出願の発明者は、本発明の有用性を実証するための実験を行っている。以下にその結果を示す。まず、(A)保存時と再現時が同じ環境である場合について実験を行い、次に、保存時と再現時で異なる環境である場合において、(B)従来の構成によって再現した場合と、(C)本実施例の構成によって再現した場合について実験を行った。(B)、(C)においては、再現時における環境(障害物)の位置を、保存時に比して6[mm]遠くに配置した。
【0140】
図25は、保存時のマスターシステム310における位置と力(応答値;以下同じ)の変化を示しており、図26は、上記(A)の場合の本実施例の構成による再現時のスレーブシステム320における位置と力の変化を示している。図26により、同じ環境下での正確な動作再現が可能であることが判る。
【0141】
一方、図27は、図25で示したような保存時の位置と力の変化に対して、従来の構成によって再現した場合の、スレーブシステム320における位置と力の変化を示している(上記(B))。図示するように、従来の構成では、十分な力を再現することができず、また、環境に当接して押圧すべき場面で位置が戻ってしまうという現象も見られる。
【0142】
これに対し、図28は、図25で示したような保存時の位置と力の変化に対して、本実施例の構成によって再現した場合の、スレーブシステム320における位置と力の変化を示している(上記(C))。図示するように、本実施例の構成では、環境に可動体322が到達した後は、保存時とほぼ同様の力を再現することができている。
【0143】
なお、図27、28では、保存時のマスターシステム310における位置と力の変化を仮想マスターとして併記した。
【0144】
[効果]
以上説明した本実施例の動作再現装置300によれば、初期位置が異なる場合であっても、位置や力の変化を、より正確に再現することができる。
【0145】
[構成の他の表現、及び応用]
なお、図29は、本実施例の動作再現装置300を、他の態様で表現した機能ブロック図である。
【0146】
動作再現装置300は、前述のようにマスターシステム310とスレーブシステム320を有し、更に、アクチュエータ制御部330を備える。
【0147】
マスターシステム310は、被操作体312に取り付けられたアクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動部314と、位置エンコーダ316と、を備える。スレーブシステム320は、可動体322に取り付けられたアクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動部324と、位置エンコーダ326と、を備える。
【0148】
アクチュエータ制御部330は、前述のようなバイラテラル制御を行うバイラテラル制御部340を有し、バイラテラル制御部340は、外乱オブザーバ342、加速度制御部346その他の構成を有している。そして、アクチュエータ制御部330には、モーションデータメモリ350が接続されている。
【0149】
本実施例の動作再現装置300は、例えばドリルを用いた穴あけ技術の保存に用いられる。従来の装置による動作再現(位置、力を保存する場合)では、初期位置と環境位置までの距離が厳密に一致する場合のみ動作の再現が可能であったが、本実施例の動作再現装置300では、初期位置と環境位置までの距離が厳密に一致する場合でなくとも動作を概ね再現することができる。
【0150】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0151】
例えば、第3実施例において、加速度に関する情報の一例として、加速度参照値x・・Srefを保存するものとしたが、これに代えて、アクチュエータに印加される電流値等を保存してもよい、すなわち、加速度を示す如何なる情報を保存しても構わない。
【符号の説明】
【0152】
1、2 相関性評価装置
10 ハプティックペン
12 軸体
14、60 把持部
16 リニアモータ
20 外乱オブザーバ
30 情報処理装置
32 記憶装置
34 正規化隣接行列算出部
36 固有ベクトル算出部
50 ハプティックペン
52 リニアモータ
54、56 位置エンコーダ
58 本体部
60 把持部
70、72 外乱オブザーバ
80、82 反力オブザーバ
90 情報処理装置
92 記憶装置
300 動作再現装置
310 マスターシステム
312 被操作体
314 アクチュエータ駆動部
316 位置エンコーダ
320 スレーブシステム
322 可動体
324 アクチュエータ駆動部
326 位置エンコーダ
330 アクチュエータ制御部
340 バイラテラル制御部
342 外乱オブザーバ
344 反力推定オブザーバ
346 加速度制御部
350 モーションデータメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が特定の物体に対して所定の動作をする際に加えられる力を複数回計測するステップと、
前記計測された力の時系列データを複数個、記憶手段に格納するステップと、
前記記憶手段に格納された力の時系列データを標本とし、該時系列データ間の相関性を示す値で重み付けした隣接行列を求めるステップと、
前記隣接行列を正規化した正規化隣接行列を求めるステップと、
前記正規化隣接行列の固有値が1となる場合の固有ベクトルの要素の大きさに基づいて、該要素に対応する時系列データの他のデータとの相関性を評価するステップと、
を備えることを特徴とする相関性評価方法。
【請求項2】
人が特定の物体に対して所定の動作をする際に加えられる力と、前記特定の物体の変位を複数回計測するステップと、
前記計測された力が前記計測された変位を構成する第1の要素と対応づけられた第1のデータと、前記計測された変位を構成する第2の要素が前記計測された変位を構成する第1の要素と対応づけられた第2のデータとを、前記複数回の計測に係る人の動作に対応づけて複数個、記憶手段に格納するステップと、
前記第1のデータ間の相関性と、前記第2のデータ間の相関性に基づいて、前記複数回の計測に係る人の動作間の相関性を評価するステップと、
を備えることを特徴とする相関性評価方法。
【請求項3】
請求項2に記載の相関性評価方法であって、
前記複数回の計測に係る人の動作間の相関性を示す値で重み付けした隣接行列を求めるステップと、
前記隣接行列を正規化した正規化隣接行列を求めるステップと、
前記正規化隣接行列の固有値が1となる場合の固有ベクトルの要素の大きさに基づいて、該要素に対応する人の動作の、他の動作との相関性を評価するステップと、
を備えることを特徴とする相関性評価方法。
【請求項4】
前記特定の物体は筆記具又は筆記具に擬した物体であり、
前記人がする所定の動作は、筆記動作であり、
前記計測される力は、筆圧に相当する力である、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の相関性評価方法。
【請求項5】
請求項2又は3に係る請求項4に記載の相関性評価方法であって、
前記所定の動作は、円を描く筆記動作であり、
前記第1の要素は、角度変化であり、
前記第2の要素は、前記円の想定中心からの距離である、
相関性評価方法。
【請求項6】
人が特定の物体に対して所定の動作をする際に加えられる力を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測された力の時系列データが複数個、格納される記憶手段と、
前記記憶手段に格納された力の時系列データを標本とし、該時系列データ間の相関性を示す値で重み付けした隣接行列を算出し、該隣接行列を正規化した正規化隣接行列を算出する正規化隣接行列算出手段と、
前記正規化隣接行列算出手段により算出された正規化隣接行列の固有値が1となる場合の固有ベクトルを算出する固有ベクトル算出手段と、
を備えることを特徴とする相関性評価装置。
【請求項7】
人が特定の物体に対して所定の動作をする際に加えられる力と、前記特定の物体の変位を計測する計測手段と、
前記計測された力が前記計測された変位を構成する第1の要素と対応づけられた第1のデータと、前記計測された変位を構成する第2の要素が前記計測された変位を構成する第1の要素と対応づけられた第2のデータとが、前記計測された人の動作に対応づけられて記憶される記憶手段と、
前記第1のデータ間の相関性と、前記第2のデータ間の相関性に基づいて、人の動作間の相関性を評価する評価手段と、
を備えることを特徴とする相関性評価装置。
【請求項8】
請求項7に記載の相関性評価装置であって、
前記人の動作間の相関性を示す値で重み付けした隣接行列を算出し、該隣接行列を正規化した正規化隣接行列を算出する正規化隣接行列算出手段と、
前記正規化隣接行列の固有値が1となる場合の固有ベクトルを算出する固有ベクトル算出手段と、
を備えることを特徴とする相関性評価装置。
【請求項9】
前記特定の物体は筆記具又は筆記具に擬した物体であり、
前記人がする所定の動作は、筆記動作であり、
前記計測される力は、筆圧に相当する力である、
請求項6ないし7のいずれか1項に記載の相関性評価装置。
【請求項10】
請求項7又は8に係る請求項9に記載の相関性評価方法であって、
前記所定の動作は、円を描画する筆記動作であり、
前記第1の要素は、角度変化であり、
前記第2の要素は、前記円の想定中心からの距離である、
相関性評価装置。
【請求項11】
人が特定の物体に対して行った操作を検知し、該人が行った操作による当該物体の動作を、他の物体により再現させる動作再現装置であって、
前記他の物体における加速度に関する情報を記憶手段に記憶させ、
前記人が操作を行わない場合の動作再現においては、前記記憶手段に記憶された前記他の物体における加速度に関する情報に基づいて、前記他の物体を動作させることを特徴とする、
動作再現装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−174871(P2011−174871A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40421(P2010−40421)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年8月31日 社団法人 電気学会産業応用部門大会委員会発行の「平成21年電気学会 産業応用部門大会(CD)」に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)NEDO 産業技術研究助成事業(プロジェクトID:07C46047a)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】