説明

真空チャンバの真空度制御機構、これを備えた接合装置、真空チャンバの真空度制御方法、及び接合装置の真空度制御方法

【課題】簡易な構成で、真空圧制御の精度を高めることができる真空チャンバの真空度制御機構、これを備えた接合装置、真空チャンバの真空度制御方法、及び接合装置の真空度制御方法を提供する。
【解決手段】真空チャンバDの真空圧力値を制御するための真空チャンバの真空度制御機構であって、真空チャンバDを真空引きするための真空経路と、真空チャンバDに気体を導入する流量調整弁30と、流量調整弁30の開閉率を制御する制御部32と、を備え、制御部32は、真空チャンバDの真空圧力値に基づいて流量調整弁30の開閉率を制御して、真空チャンバDの真空圧力値を目標真空圧力値に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、板状または箔状の貼り合せ用基材を熱圧着により接合させることに用いる真空チャンバの真空度制御機構、これを備えた接合装置、真空チャンバの真空度制御方法、及び接合装置の真空度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、簡易で低コストであっても、真空ポンプを保護しつつ省電力で真空チャンバ内の真空度を制御することができる制御機構と制御方法に関する技術が提案されている。
【0003】
この制御機構は、積層成形を実施する真空チャンバ内の真空度を制御する制御機構であって、真空チャンバ内の真空度を計測する真空センサの検出値に設定した所定幅値のヒステリシスに基づいて真空チャンバに接続された真空ポンプを起動・停止することにより、真空チャンバ内の真空度を制御する制御装置を備えている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−298007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記制御機構は、真空ポンプ、ガス供給手段を制御するバルブが開/閉、2者択一的に動作するタイプであるため、バルブ開/閉時に真空圧が大きく変動するため、真空圧制御の精度が悪いという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な構成で、真空圧制御の精度を高めることができる真空チャンバの真空度制御機構、これを備えた接合装置、真空チャンバの真空度制御方法、及び接合装置の真空度制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、真空チャンバの真空圧力値を制御するための真空チャンバの真空度制御機構であって、前記真空チャンバを真空引きするための真空経路と、前記真空チャンバに気体を導入する流量調整弁と、前記流量調整弁の開閉率を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記真空チャンバの真空圧力値に基づいて前記流量調整弁の開閉率を制御して、前記真空チャンバの真空圧力値を目標真空圧力値に調整することを特徴とする。
【0008】
この場合、前記流量調整弁は、前記真空チャンバに不活性ガスを導入することが好ましい。
【0009】
この場合、前記流量調整弁は、マスフローコントローラであり、前記制御部は、PIDコントローラであることが好ましい。
【0010】
第2の発明は、加圧機構と、前記加圧機構から加圧力が付与される熱盤部と、を有し、前記熱盤部は、前記加圧力の作用方向に複数配置され、前記加圧力の作用方向に隣接する前記熱盤部同士が相互に積み重なることにより当該熱盤部間に真空チャンバが形成され、前記真空チャンバ内で貼り合せ用基材同士を熱圧着させて接合する接合装置であって、前記真空チャンバを真空引きするための真空経路と、前記真空チャンバに気体を導入する流量調整弁と、前記流量調整弁の開閉率を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記真空チャンバの真空圧力値に基づいて前記流量調整弁の開閉率を制御して、前記真空チャンバの真空圧力値を目標真空圧力値に調整することを特徴とする。
【0011】
この場合、前記流量調整弁は、前記真空チャンバに不活性ガスを導入することが好ましい。
【0012】
この場合、前記真空チャンバは、複数形成され、前記真空チャンバ同士を連通する連通路が形成され、複数の前記真空チャンバは、同時に真空引きされることが好ましい。
【0013】
この場合、前記流量調整弁は、マスフローコントローラであり、前記制御部は、PIDコントローラであることが好ましい。
【0014】
第3の発明は、真空チャンバの真空圧力値を制御するための真空チャンバの真空度制御方法であって、前記真空チャンバを真空引きするための真空経路と、前記真空チャンバに気体を導入する流量調整弁と、を用い、前記真空チャンバを真空引きした状態で、前記流量調整弁の開閉率を大きくすることにより前記真空チャンバに導入する気体の流量を増加させ、または、前記流量調整弁の開閉率を小さくすることにより前記真空チャンバに導入する気体の流量を減少させ、前記流量調整弁の開閉率を変えることにより真空チャンバの真空圧力値を制御する。
【0015】
この場合、前記流量調整弁は、前記真空チャンバに不活性ガスを導入することが好ましい。
【0016】
第4の発明は、加圧機構と、前記加圧機構から加圧力が付与される熱盤部と、を有し、前記熱盤部は、前記加圧力の作用方向に複数配置され、前記加圧力の作用方向に隣接する前記熱盤部同士が相互に積み重なることにより当該熱盤部間に真空チャンバが形成され、前記真空チャンバ内で貼り合せ用基材同士を熱圧着させて接合する接合装置の真空度制御方法であって、前記真空チャンバを真空引きするための真空経路と、前記真空チャンバに気体を導入する流量調整弁と、前記流量調整弁の開閉率を制御する制御部と、を用い、前記制御部は、前記真空チャンバの真空圧力値に基づいて前記流量調整弁の開閉率を制御して、前記真空チャンバの真空圧力値を目標真空圧力値に調整することを特徴とする。
【0017】
この場合、前記流量調整弁は、前記真空チャンバに不活性ガスを導入することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な構成で、真空チャンバの真空圧制御の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る真空チャンバの真空度制御機構を備えた接合装置であって熱盤部が重ね合わされた状態の構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る真空チャンバの真空度制御機構を備えた接合装置であって熱盤部が重ね合わされていない状態の構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る真空チャンバの周辺部の構成を示した説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る真空チャンバの真空度制御機構を備えた接合装置の真空度制御を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態に係る真空チャンバの真空度制御機構を備えた接合装置の真空度制御範囲を示すグラフである。
【図6】比較対象の真空チャンバの真空度制御機構の構成図である。
【図7】比較対象の真空チャンバの真空度制御機構による真空度の制御結果を制御機器の作動状況とともに示すグラフである。
【図8】比較対象の真空チャンバの真空度制御機構を備えた多段積層貼合装置のON/OFF制御を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る真空チャンバの真空度制御機構、これを備えた接合装置、真空チャンバの真空度制御方法、及び接合装置の真空度制御方法について、図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態では、真空チャンバの真空度制御機構が接合装置に適用された構成を一例として説明する。なお、真空チャンバの真空度制御機構は、接合装置に適用される構成に限られるものではなく、真空チャンバの真空度制御が必要となる装置に対して広く適用することができる。
【0022】
(接合装置)
先ず、接合装置について説明する。接合装置は、貼り合せ用基材同士を熱圧着により接合させる装置である。なお、貼り合せ用基材は、貼り合せ前の基板であり、ウエハや集合基板の他に、個片化された子基板も含まれる。本実施形態の接合装置にて複数の貼り合せ用基板を貼り合せ、複合基板を作製する。複合基板を作製するための貼り合せ用基材は、異種でも同種でもよい。作製された複合基板は電子機器の部品として用いられる。
【0023】
図1は、真空チャンバの真空度制御機構が接合装置に適用された状態を示す構成図である。図1の実線は、真空経路である配管の接続状態を示し、太字破線は、電気的な接続状態を示す。
【0024】
図1に示すように、接合装置10は、筐体12を備えている。筐体12の底部には、加圧機構14が配置されている。加圧機構14は、一例として、上下方向に伸縮可能な油圧式のピストンロッド16が適用される。なお、加圧機構14は、図示しない制御部により駆動制御される。
【0025】
加圧機構14のピストンロッド16の先端部には、下側台座部18が接続されている。このため、加圧機構14の一部であるピストンロッド16が上下方向に伸縮すると、下側台座部18が上下方向に移動する。
【0026】
また、筐体12の上部には、上側台座部20が固定されている。なお、下側台座部18と上側台座部20との間で、上下方向に積まれた複数の熱盤部24が所定の加圧力で挟持される構造になっている。
【0027】
筐体12の内部には、上下方向に沿って複数の熱盤部24が並んで配置されている。本実施形態の接合装置10は、複数の熱盤部24が筐体12の内部に設けられており、多段積層貼合装置として機能する。
【0028】
上下方向に沿って隣接する熱盤部24同士が所定の加圧力で貼り合せ用基材Cを圧接する際、上の熱盤部と下の熱盤部とで囲まれた領域が、枠体22により密閉されるため、真空チャンバDが形成される。このように、複数の熱盤部24を備えた接合装置10では、複数の真空チャンバDが形成され、複数の熱盤部24が貼り合せ用基材Cを全て圧接した状態になることにより、各真空チャンバD内において貼り合せ用基材Cの接合処理が実行される。
【0029】
図3に示すように、熱盤部本体24Aの下面には筒状空間が形成されている。各熱盤部24が重なり合って加圧されたとき、熱盤部本体24Aの筒状空間と熱盤部本体24Aの上面との間に入れられた貼り合せ用基材C(図1参照)を圧接することができる。この筒状空間は、真空チャンバDの一部を構成する。熱盤部本体24Aの側方には、枠体22が摺動可能に配設されている。枠体22と熱盤部本体24Aの間には圧縮バネ29が配置されている。枠体22は、この圧縮バネ29により下側に付勢され、下の熱盤部24にあるOリング31を押圧し、熱盤部本体24Aの側方にあるOリング33とともに密閉状態を形成する。
【0030】
また、各熱盤部24には、貫通孔による連通路25が形成されている。このため、各熱盤部24でそれぞれ区画形成される複数の真空チャンバDが連通路25を介して連通した構成になる。これにより、全ての真空チャンバDは、全体として一つの真空空間を構成することになる。
【0031】
連通路25には、真空経路39を通じて切換弁27および真空ポンプ26が接続されており、切換弁27の作動により各真空チャンバDが真空引きされる。後述する真空度制御時おいては、真空チャンバD内が常に真空引きされた状態となる。なお、切換弁27は、図示しない制御部により駆動される。
【0032】
(真空チャンバの真空度制御機構)
ここで、真空チャンバの真空度制御機構について説明する。
【0033】
図1に示すように、真空チャンバの真空度制御機構は、真空チャンバDの内部の真空度を計測する真空計28と、真空チャンバDに気体を導入する流量調整弁30と、流量調整弁30の開閉率を制御する制御部32と、で構成されている。
【0034】
流量調整弁30は、真空チャンバDの内部に、空気、その他ガス類(例えば、窒素を含んだ不活性ガス)を導入する。例えば、真空チャンバDが真空ポンプ26により常に真空引きされた状態で、流量調整弁30が大きく開き、真空チャンバDの内部に多量の空気・ガスが導入されると、真空チャンバDの内部の真空度が下がる。一方、真空チャンバDが真空ポンプ26により常に真空引きされた状態で、流量調整弁30が絞られて、真空チャンバDの内部に少量の空気・ガスしか導入されなかったり、あるいは空気・ガスが全く導入されないと、真空チャンバDの内部の真空度が上がる。
【0035】
真空計28は、真空チャンバDの真空圧力値を計測する。ここで計測される真空圧力値は、全ての真空チャンバが連通路25により連通した状態の真空圧力値である。真空計28は、計測結果である真空圧力値をデータ信号として制御部32に出力する。
【0036】
制御部32は、真空チャンバDの真空圧力値を示す真空計28の計測結果に基づいて流量調整弁30の開閉率を制御することで流量調整弁30からの気体導入量を調整する。そして、真空チャンバDの真空圧力値を目標真空圧力値に調整する。
【0037】
具体的には、制御部32は、真空計28から得た真空チャンバDの真空圧力値を、換算された電圧値として受け取る。制御部32は、ROMなどの記憶手段を有している。そして、ROMに、真空圧力値と電圧値との関係を示すデータテーブルが記憶されている。また、ROMには、真空チャンバDの目標真空圧力値を実現するための電圧値が記憶されている。また、ROMには、流量調整弁30の開閉率と電圧値との関係を示すデータテーブルが記憶されている。
【0038】
制御部32は、CPUを有している。CPUは、真空計28から得た真空圧力値による電圧値と、目標真空圧力値の電圧値とを比較し、電圧値の差(電圧差)を算出する。さらに、CPUは、量調整弁30の開閉率と電圧値との関係を示すデータテーブルと、及び前記電圧差と、に基づいて、流量調整弁30を操作するための電圧値を示す信号(弁制御信号)を生成する。そして、制御部32は、弁制御信号を流量調整弁30に出力する。これにより、制御部32からの弁制御信号に基づいて流量調整弁30の開閉率を制御する。
【0039】
制御部32の一例としては、PIDコントローラ(比例積分微分操作装置)が用いられる。
【0040】
流量調整弁30の開閉率は、制御部32からの弁制御信号に基づいて制御される。この結果、真空チャンバDの真空圧力値が目標真空圧力値となるように、流量調整弁30の開閉率が調整される。
【0041】
導入する流体としては、窒素やアルゴンを含む不活性ガスのみを真空チャンバDの内部に導入するのが好ましい。これにより、貼り合せ用基材の熱圧着により作製された複合基板の酸化を防ぐことができる。
【0042】
流量調整弁30の一例として、マスフローコントローラが用いられる。マスフローコントローラは、流体の質量流量を計測することにより流量制御を行うものであり、環境温度や使用圧力等の変化による補正を行う必要がなく、高精度で安定した流体計測・制御が可能な機器である。
【0043】
なお、変形例として、流量調整弁30の開閉率と電圧値との関係を示すデータテーブルが記憶されているROMは、制御部32ではなく、流量調整弁30に装備してもよい。これにより、制御部32は、前記電圧差を示す信号を流量調整弁30に出力するだけで、流量調整弁30側で開閉率を制御・調整することができる。
【0044】
(加熱・加圧処理)
次に、各熱盤部24により加熱処理が実行される。各熱盤部24には、ヒータが内蔵されているため、制御部でヒータを駆動することにより、加熱処理が可能になる。
【0045】
また同時に、上下方向に隣接する熱盤部24同士が相互に積み重ねられる。これにより、貼り合せ用基材同士が所定の加圧力で圧接される。また、貼り合せ用基材の圧接処理は、真空チャンバDの内部で実行されるため、ゴミや粉塵が浸入しないクリーンな環境で実行できる。この結果、貼り合せ用基材により作製された複合基板の電気的特性を高品質に維持することができる。
【0046】
なお、貼り合せ用基材同士の圧接処理は、各真空チャンバD内において行われる。単一の真空ポンプ26によって各真空チャンバD内が連通して真空引きされるため、各真空チャンバDおける真空度が一定(均一)になる。この結果、各真空チャンバDにおける圧接処理が安定するため、複合基板の電気的特性のばらつきを低減することができる。
【0047】
(真空解除)
次に、真空チャンバDの真空状態を解除するために大気を導入し、全ての真空チャンバDが同時に大気開放される。
【0048】
(下側台座部の下降)
上記各工程が終了すると下側台座部18が一定速度で下降し、図2のように熱盤部24が積み重ねられていない状態になる。
【0049】
次に、本発明の真空チャンバの真空度制御機構が適用された接合装置の作用について説明する。
【0050】
(本実施形態の効果のねらい)
従来技術のように、隣接する熱盤部間に真空チャンバを形成し、真空チャンバ内で貼り合せ用基材同士を熱圧着させて接合する接合装置においては、最終的に到達する真空チャンバの真空度は、真空ポンプの能力や真空チャンバの大きさ、真空経路である配管部のリーク量等の要因に依存して決まるため、狙った真空度に制御することが困難であった。
【0051】
その場合、真空ポンプ自体の真空到達能力などによるが、真空チャンバDの真空度は、数10〜100Paの間で安定することが想定される。
【0052】
そこで、本実施形態では、上述したように、真空チャンバの真空度制御機構を、高精度な真空度制御が必要となる接合装置に適用した。
【0053】
本発明の真空チャンバの真空度制御機構を適用した接合装置10によれば、制御部によって開閉率が制御された流量調整弁30により、真空チャンバDに導入される気体(空気、その他不活性ガスなど)の流量を調整することにより、高精度な真空度制御を実現することができる。真空チャンバDの真空圧力値を目標真空圧力値に調整することができる。
【0054】
図4は、本発明の一実施形態に係る真空チャンバの真空度制御機構を備えた接合装置の真空度制御を示すグラフであり、縦軸に真空度(Pa)をとり、横軸に時間(sec)をとっている。図4に示すように、平均値±2%以下の精度で真空チャンバDの真空度を制御することが可能である。また、PIDコントローラを用いることにより、オーバーシュート及びアンダーシュートがなく、真空チャンバDの真空度が一定になるまでの整定時間も40秒以下と短くなっている。
【0055】
また、図5は、本発明の一実施形態に係る真空チャンバの真空度制御機構を備えた接合装置の真空度制御範囲を示すグラフであり、縦軸に測定真空度(Pa)をとり、横軸に設定真空度(Pa)をとっている。図5に示すように、真空制御可能な真空度の範囲として、数10Pa〜2000Paの広範囲で制御可能である。また、設定真空度に対する測定値の関係おいても、直進性が確保されており、本発明は安定したかつ信頼度の高い制御方法であるといえる。
【0056】
また、バルブを頻繁にON/OFFする必要がなく、配管部品の寿命を長くすることができる。また、従来のように、バルブ開閉時の騒音が発生しない。
【0057】
さらに、従来に比べ配管構成が簡易であるため、装置価格を下げることができる。
(比較例)
次に、特許文献1に記載されている真空チャンバの真空度制御機構を接合装置に適用した場合と比較検討する。
【0058】
図6は、特許文献1に記載されている真空チャンバの真空度制御機構である。100はチャンバ大気開放(パージ)用のバルブ、102は真空度制御用のバルブ、104は真空ポンプのオイルバック防止用のバルブである。図6の各バルブのうち、真空度制御に関わっているバルブは、102のみである。102のバルブを開閉することにより、真空チャンバ106の真空度を制御する。制御方式としては、ON/OFF制御である。
【0059】
図7は、特許文献1に記載されている真空チャンバの真空度制御機構による真空度の制御結果を制御機器の作動状況とともに示すグラフである。特許文献1に記載されている真空チャンバの真空度制御機構によれば、図7のHとHの間に真空度を調整することができる。
【0060】
図8は、特許文献1に記載されている真空チャンバの真空度制御機構を多段積層貼合装置に適用した結果である。図8に示すように、真空チャンバの真空度を600〜700Paに制御する場合、真空チャンバの真空度が振動的になってしまう問題があった。また、400Pa程度までランダムにオーバーシュートしており、良好な制御が実現できない問題がある。さらに、HとHの幅を狭くしようとすると、バルブ開閉速度が上がり、騒音が発生したり、バルブの寿命が低下するなどの問題が生じる。
【0061】
これに対して、本発明の真空チャンバの真空度制御機構を多段積層貼合装置に適用した場合は、図4に示すようになる。本発明の場合には、真空チャンバの真空度が振動的にならず、安定している。この結果、本発明の真空チャンバの真空度制御機構を多段積層貼合装置に適用した場合は、真空チャンバの真空度を目標真空圧力値に調整することができ、かつ目標真空圧力値を安定して維持することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 接合装置
14 加圧機構
22 枠体
24 熱盤部
26 真空ポンプ(真空源)
28 真空計
30 流量調整弁
32 制御部
39 真空経路
C 貼り合せ用基材
D 真空チャンバ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバの真空圧力値を制御するための真空チャンバの真空度制御機構であって、
前記真空チャンバを真空引きするための真空経路と、
前記真空チャンバに気体を導入する流量調整弁と、
前記流量調整弁の開閉率を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記真空チャンバの真空圧力値に基づいて前記流量調整弁の開閉率を制御して、前記真空チャンバの真空圧力値を目標真空圧力値に調整することを特徴とする真空チャンバの真空度制御機構。
【請求項2】
前記流量調整弁は、前記真空チャンバに不活性ガスを導入することを特徴とする請求項1に記載の真空チャンバの真空度制御機構。
【請求項3】
前記流量調整弁は、マスフローコントローラであり、
前記制御部は、PIDコントローラであることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空チャンバの真空度制御機構。
【請求項4】
加圧機構と、
前記加圧機構から加圧力が付与される熱盤部と、
を有し、
前記熱盤部は、前記加圧力の作用方向に複数配置され、
前記加圧力の作用方向に隣接する前記熱盤部同士が相互に積み重なることにより当該熱盤部間に真空チャンバが形成され、前記真空チャンバ内で貼り合せ用基材同士を熱圧着させて接合する接合装置であって、
前記真空チャンバを真空引きするための真空経路と、
前記真空チャンバに気体を導入する流量調整弁と、
前記流量調整弁の開閉率を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記真空チャンバの真空圧力値に基づいて前記流量調整弁の開閉率を制御して、前記真空チャンバの真空圧力値を目標真空圧力値に調整することを特徴とする接合装置。
【請求項5】
前記流量調整弁は、前記真空チャンバに不活性ガスを導入することを特徴とする請求項4に記載の接合装置。
【請求項6】
前記真空チャンバは、複数形成され、
前記真空チャンバ同士を連通する連通路が形成され、
複数の前記真空チャンバは、同時に真空引きされることを特徴とする請求項4又は5に記載の接合装置。
【請求項7】
前記流量調整弁は、マスフローコントローラであり、
前記制御部は、PIDコントローラであることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の接合装置。
【請求項8】
真空チャンバの真空圧力値を制御するための真空チャンバの真空度制御方法であって、
前記真空チャンバを真空引きするための真空経路と、
前記真空チャンバに気体を導入する流量調整弁と、
を用い、
前記真空チャンバを真空引きした状態で、前記流量調整弁の開閉率を大きくすることにより前記真空チャンバに導入する気体の流量を増加させ、または、前記流量調整弁の開閉率を小さくすることにより前記真空チャンバに導入する気体の流量を減少させ、前記流量調整弁の開閉率を変えることにより真空チャンバの真空圧力値を制御する真空チャンバの真空度制御方法。
【請求項9】
前記流量調整弁は、前記真空チャンバに不活性ガスを導入することを特徴とする請求項8に記載の真空チャンバの真空度制御方法。
【請求項10】
加圧機構と、
前記加圧機構から加圧力が付与される熱盤部と、
を有し、
前記熱盤部は、前記加圧力の作用方向に複数配置され、
前記加圧力の作用方向に隣接する前記熱盤部同士が相互に積み重なることにより当該熱盤部間に真空チャンバが形成され、前記真空チャンバ内で貼り合せ用基材同士を熱圧着させて接合する接合装置の真空度制御方法であって、
前記真空チャンバを真空引きするための真空経路と、
前記真空チャンバに気体を導入する流量調整弁と、
前記流量調整弁の開閉率を制御する制御部と、
を用い、
前記制御部は、前記真空チャンバの真空圧力値に基づいて前記流量調整弁の開閉率を制御して、前記真空チャンバの真空圧力値を目標真空圧力値に調整することを特徴とする接合装置の真空度制御方法。
【請求項11】
前記流量調整弁は、前記真空チャンバに不活性ガスを導入することを特徴とする請求項10に記載の接合装置の真空度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−939(P2013−939A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132374(P2011−132374)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】