説明

真空バルブ

【課題】振り子式圧力コントロールバルブにおいて摺動するOリング等から発生する微粒子の拡散を防止する。
【解決手段】シールリング8を作動するためのシャフト14のシャフト摺動面及び流路壁面とシールリング8との間の摺動面にそれぞれ付設されたO−リング10、11から発生する微粒子及び各摺動面に使用される真空グリースから、真空プロセスチャンバ雰囲気を遮断するために枠体壁面とシールリングとの外壁面に上記O−リングを挟む位置に2本の耐食性材料からなる環状保護バンド12、13を配置する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる振り子式圧力コントロールバルブ(Pendulum type pressure control valve)における欠点を改良した新規な高耐久性高性能の真空バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造に際しては、化学蒸着(CVD)、プラズマエッチング、スパッタリングなど真空プロセスチャンバ内での加工工程を必要とするプロセスが多い。このプロセスにおいては、それぞれの加工目的に応じ、異なったガスの雰囲気を形成しなければならないが、この際設定した真空プロセスチャンバ内の圧力を一定に保つように制御するための真空バルブを用いることが必要になる。
【0003】
ところで、この真空バルブの1つの形式として、円形スライドプレートを中心部を円形状流体通過路に形成した厚肉状環状態からなる枠体の一部に軸支し、この円形スライドプレートを左右に振子運動させて、開放状態から閉塞状態を生じさせる、いわゆる振り子式圧力コントロールバルブが知られているが、その振り子式圧力コントロールバルブにおいては、円形スライドプレートの動きによりバルブのコンダクタンスを微量調整することによりプロセスチャンバの圧力を、事前に設定した一定の圧力に保つ機構が必要となる。このときのプロセスチャンバに流入する反応ガスの流量は一定である。そして、真空プロセスチャンバと真空ポンプを完全遮断する場合、上記の円形スライドプレートが閉塞状態時に円形スライドプレートに近接又は離間するシールリングを配置し、枠体のシールリングに近接する環状表面には流路軸に平行な軸を有する複数の孔部を穿設し、かつシールリングにはスライドプレートとは反対側に所定の間隔で円周方向に長さを有する複数の凹部を設け、その凹部の開口部を鍵孔状開口端部に形成し、枠体の環状表面に穿設した複数の孔部に対応させ、その孔部に上部の凹部の中で拡大させた頭部を有するシャフトで円形スライドプレートとシールリングとの間に付設されたO−リングを押圧し、完全遮断する構造の圧力コントロールバルブ(特許文献1参照)、流体流路とバルブシートを備えた壁体と、閉塞状態において上記バルブシートに押し付けられる弁プレートで構成され、上記の弁プレート又はバルブシートに閉塞時において押し付けられて流体流路をシールする弾性シールリングと、真空バルブの閉塞時にシールリングよりも開口部に近接して配置され、シールリングに作用する押圧力を緩和するプラスチックリングとを備えた真空バルブ(特許文献2参照)、流体流路、閉塞位置と開放位置との間を移動しうるスライドプレート及び流体流路の周囲を取り囲み、閉塞位置においてスライドプレートに作用するシールリングから構成され、シールリングには複数の孔を、また枠体の隣接面にその孔と対応させて凹部を配置し、シールリングの孔と枠体の凹部とを連結するファスナーを備え、それを回転することによって両者を係合させるようにした真空バルブ(特許文献3参照)、流路を有するバルブ本体と、第一及び第二の面を備え、流路の開放状態と閉塞状態との間を移動するバルブプレートを有し、移動経路がバルブの制御領域を形成する制御スライドバルブであって、バルブプレートが第一の面にこの面より突出させてバルブプレートにスプリングで支持した接触リングを有し、この接触リングは閉塞状態ではスプリングの付勢力に抗してバルブプレート方向に押し付けられ、周囲の面を越えてバルブ本体の接触面に接触するようになっているもの(特許文献4参照)などが提案されている。
【0004】
ところで、流体流路を有する枠体と、この流体流路の流れを阻止する閉塞位置と流れを許容する開放位置との間を流路軸に対し垂直方向に回動するスライドプレートと、上記閉塞位置とした際に、スライドプレートと接触して完全閉止状態を形成し、あるいは離間して部分閉止状態を形成するシールリングから構成された振り子式圧力コントロールバルブにおいては、真空プロセスチャンバと真空ポンプの間を完全な閉止状態にすることを目的としてシールリングのスライドプレートとの対向面とは反対側に形成された流路壁面とシールリングとの間及びシールリングを作動するためのシャフト外周壁と枠体に穿設された該シャフトの嵌入孔の内壁面との間に弾性材料からなるO−リングが付設されている(例えば特許文献5参照)。
【0005】
しかしながら、これらのO−リングは、プロセスガスにさらされる状態で挿入されているためプロセスガスとの接触により発生する微粒子がプロセスチャンバ内に混合し、製品を汚染したり、またO−リングに損傷を与えるという不具合を生じる。この不具合に関して高価な特殊O−リングを使用して寿命を延ばすという方法はあるが、それでも発生する微粒子は減少するが無くなるわけではなく、製品の汚染は発生する。また、これらのO−リングは摺動部に使用されているため、O−リング表面と摺動面に微量の真空グリースを塗布する必要がある。実際の現状では、生産コストを抑えるために高価な特殊O−リングを使用せず、安価なO−リングの表面に必要以上の多量の真空グリースを塗布し、プロセスガスとの接触を少なくすることにより寿命を延ばすということが行われている。しかしながら、この真空グリースもまたプロセスガスとの接触により微粒子が発生し、プロセスチャンバ内の製品を汚染する大きな要因になっている。これらの不具合を完全に防ぐ方法はまだ見出されていない。
【0006】
【特許文献1】特開平9−178000号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献2】特開2002−228043号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献3】米国特許第6,863,256号明細書(特許請求の範囲その他)
【特許文献4】特開2005−9678号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献5】米国特許第5,577,707号明細書(特許請求の範囲その他)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、振り子式圧力コントロールバルブにおいて、プロセスガスを使用する際、シールリングを作動させるためのシャフトに使用されるO−リングと、流路壁面とシールリングの間に付設されたO−リング及びそれぞれのO−リング表面及び摺動面に使用される真空グリースとを真空プロセスチャンバ雰囲気と遮断することによりプロセスガスとの接触を防ぎ、それらのO−リングを保護すると共にO−リング及び真空グリースから発生する微粒子による真空プロセスチャンバ内の汚染を防ぎそれらに起因する製品への悪影響を抑制することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、振り子式圧力コントロールバルブにおけるO−リング及び真空グリースに起因する真空プロセスチャンバ内でのトラブルを防止するために鋭意研究を重ねた結果、摺動部のO−リング及び真空グリースが塗布されたO−リング表面及び摺動面と真空プロセスチャンバとの間に、流体の出入を防ぐ耐食性材料からなる、環状保護バンドを配置することにより、その目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、真空プロセスチャンバと真空ポンプとを連通させるための円形状流路を中央部に有する枠体1と、流路軸に対し垂直方向に回動して流路を閉じるとともに、後記シールリングに接近することにより上記流路を通過する流体の流れを阻止する閉塞状態と、回動して流路を開けるとともにシールリング8から離間することにより流体の流れを許容する開放状態を形成するスライドプレート7と、該流路周壁面とシールリング8外周面との間で摺動しながら、上記スライドプレート7を押圧し又は除圧してスライドプレート7面との間に間隙を生じさせ、あるいは密着させるシールリング8から構成された振り子式圧力コントロールバルブにおいて、プロセスガスを使用する際、シールリング8を作動するためのシャフト14のシャフト摺動面及び流路壁面とシールリング8との間の摺動面にそれぞれ付設されたO−リング10、11から発生する微粒子及び各摺動面に使用される真空グリースから、真空プロセスチャンバ雰囲気を遮断するために枠体壁面とシールリングとの外壁面に上記O−リングを挟む位置に2本の耐食性材料からなる環状保護バンド12、13を配置したことを特徴とする真空バルブを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、これまでの真空バルブが、シールリング摺動部分に塗布されたグリースが真空プロセスチャンバに侵入し、加工中の製品を汚染するという欠点を有していたのを、摺動部O−リング部分と真空プロセスチャンバとを遮断することにより、改善することができる。
また、それらの摺動部O−リングは、真空プロセスチャンバ内のプロセスガスと接触しないため、O−リングがプロセスガスにより損傷を受けることもなく、そのときO−リングから発生するパーティクルが真空プロセスチャンバに侵入し、加工中の製品を汚染することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に添付図面に従って、本発明を詳細に説明する。
図3は、従来のO−リングを備えた振り子式圧力コントロールバルブの1例の下方からみた斜面図であり、図4はその一部を切欠断面とした部分断面図である。
【0012】
これらの図において、枠体1は真空プロセスチャンバに接続する入口3と真空ポンプに接続する出口4とにわたる流体流路2を有している。そして、真空プロセスチャンバ側接続フランジ5及び真空ポンプ側接続フランジ6すなわち環状表面が枠体1の流路の入口3及び出口4の縁の周囲に備えられている。このバルブには、枠体1の内部にスライドプレート7が流体流路2の開放位置と閉塞位置の間で回転可能に配置されている。
【0013】
このスライドプレート7は、開放位置より閉塞位置に移動する際に、流体流路2を通過する流体の流量を減少させ、かつ補助的に出口4の真空ポンプ側接続フランジ6に向って微小調節可能な位置に移動し、出口4を通過する流体の流れを阻止する役割を果している。この振り子型バルブの入口3は、真空プロセスチャンバに連結し、また出口4は真空ポンプに連結して真空プロセスチャンバに接続された供給部から導入された高純度ガスを排気する。このときスライドプレート7の動きによってコンダクタンスを制御することにより真空プロセスチャンバ内の圧力を設定した一定の圧力に制御し、半導体デバイスの製造や被覆加工を行う。
【0014】
図3において、バルブは、さらにシールリング8を有し、このシールリング8は流体流路2を共軸的に取り囲むように枠体1の入口3のフランジ面5とスライドプレート7の間に配置されている。
【0015】
このシールリング8には、弾性材料からなる2本のO−リング9、11が嵌入溝に埋め込まれた状態で配置されている。一方のO−リング9はシールリング8とスライドプレート7との間に配置され、もう一方のO−リング11はシールリング8と入口3の内壁面との間に配置されている。
【0016】
次に図1は、本発明の真空バルブの1例を示す縦断面図であり、図2はその要部を示す部分断面図である。
これらの図において、本発明の真空バルブは、上部を真空プロセスチャンバに連結する入口3、下部を真空ポンプに連結する出口4に形成した円形状流路2を中央部に有する枠体1と、スライドプレート7とシールリング8とから構成されている。そして、上記のスライドプレート7は流路軸に対し、垂直方向に回動し、上記流路の流れを阻止する閉塞位置と流れを許容する開放位置とを形成するように作用する。
【0017】
また、シールリング8は、スライドプレート7が閉塞位置にもたらされ完全な閉止状態にするとき、シールリング8はそれを作動するためのシャフト14により押圧され、シールリング8の嵌入溝に埋め込まれた状態で配置されているO−リング9により流体流路2の入口3から出口4に向って流体の流れを完全に止めた状態となる。
【0018】
このシールリング8には、流路側面の摺動面O−リング11が、かつシールリング8を作動するためのシャフト14の摺動部をシールするO−リング10が備えられ、これらのO−リング10、11及びそれぞれの摺動面に塗布されているグリースを、入口3に連結する真空プロセスチャンバの雰囲気から完全に遮断するための、耐食性材料からなる、成形ベローズ状に加工することにより弾力性を持たせた環状保護バンド12、13が配置されている。
この環状保護バンドは、シールリング表面に固定してもよいし、流路壁面に固定してもよい。すなわち、この環状保護バンド12、13は、シールリング8の表面に嵌合溝を設けてこれに嵌合してもよいし、また流路壁面に嵌合溝を設け、これに嵌合してもよい。
【0019】
この環状保護バンド12、13は、耐食性材料により形成されていることが必要であり、このような材料としては、例えばプラスチックが用いられ、特に好ましいのはPTFE、PFA、PFEP、ETFE、PCTFE、ECTFE、PVDF、PVFなどのフッ素樹脂である。
【0020】
本発明の真空バルブにおいては、摺動部分に配置されているO−リング10、11と、真空プロセスチャンバとが環状保護バンド12、13により遮断されているので、プロセスガスと接触することによるO−リングの損傷を防ぐとともに、そのときO−リングから発生するパーティクルが真空プロセスチャンバ内に侵入して、加工品の表面に付着し、ディフェクトを生じることはないし、また摺動部に塗布されたグリースが真空プロセスチャンバ内の製品に悪影響を与えることもない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
半導体デバイスの製造の際、化学蒸着(CVD)、プラズマエッチング、スパッタリングなどの真空プロセスチャンバ内の圧力制御用真空バルブとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の1例を示す真空バルブの縦断面図。
【図2】図1の要部を示す部分断面図。
【図3】従来例の斜面図。
【図4】図3の一部を切欠断面とした部分断面図。
【符号の説明】
【0023】
1 枠体
2 流体流路
3 入口(真空プロセスチャンバ接続口)
4 出口(真空ポンプ接続口)
5 真空プロセスチャンバ側接続フランジ
6 真空ポンプ側接続フランジ
7 スライドプレート
8 シールリング
9、10、11 O−リング
12、13 環状保護バンド
14 シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空プロセスチャンバと真空ポンプとを連通させるための円形状流路を中央部に有する枠体と、流路軸に対し垂直方向に回動して流路を閉じるとともに、後記シールリングに接近することにより上記流路を通過する流体の流れを阻止する閉塞状態と、回動して流路を開けるとともにシールリングから離間することにより流体の流れを許容する開放状態を形成するスライドプレートと、該流路周壁面とシールリング外周面との間で摺動しながら、上記スライドプレートを押圧し又は除圧してスライドプレート面との間に間隙を生じさせ、あるいは密着させるシールリングから構成された振り子式圧力コントロールバルブにおいて、プロセスガスを使用する際、シールリングを作動するためのシャフトの摺動面及び流路壁面とシールリングとの間の摺動面にそれぞれ付設されたO−リングから発生する微粒子及び各摺動面に使用される真空グリースから、真空プロセスチャンバ雰囲気を遮断するために枠体壁面とシールリングとの外壁面に上記O−リングを挟む位置に2本の耐食性材料からなる環状保護バンドを配置したことを特徴とする真空バルブ。
【請求項2】
環状保護バンドをシールリング表面に固定し配置する請求項1記載の真空バルブ。
【請求項3】
環状保護バンドを流路壁面に固定し配置する請求項1記載の真空バルブ。
【請求項4】
環状保護バンドがプラスチックからなる請求項1、2又は3記載の真空バルブ。
【請求項5】
プラスチックがフッ素樹脂である請求項4記載の真空バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−51171(P2008−51171A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226300(P2006−226300)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(506286722)エス・バック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】