説明

真空ポンプを備えた装置

【課題】ロータ・ステータ・クラッシュの場合においても真空気密性が保持されたままである、高速回転ロータを有する真空ポンプを備えた装置を提供する。
【解決手段】本発明は、高速回転ロータ(2)およびステータ(3)とを有する真空ポンプ(1)と、室フランジ(5)を備えた真空室(4)と、および真空ポンプおよび真空室間に設けられている中間構造部分(6)とを備え、この場合、真空室、真空ポンプおよび中間構造部分が着脱可能に相互に結合されている、装置に関するものである。大きなトルクを真空室に確実に伝達可能な結合を提供するために、真空ポンプが、クラッシュ・モーメントに対して抵抗可能に室フランジ(5)と結合されている結合手段(7)に配置されていることが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の上位概念に記載の真空ポンプを備えた装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速回転ロータを備えた真空ポンプ例えばターボ分子ポンプは、ロータの高い回転周波数に基づいて高いエネルギーを貯蔵する。回転周波数はしばしば毎分数万回転に存在する。いわゆるロータ・ステータ・クラッシュにおいては、ロータおよびステータの接触が発生する。この場合、この高いエネルギーは例えばポンプ・フランジのようなポンプ構造部分を介してトルクの形で放出される。このようなロータ・ステータ・クラッシュにおいては、このときに人体に対する傷害危険が発生し且つ装置の損傷が予想されるので、ポンプのねじれが回避されなければならない。ポンプのこのねじれの結果、さらにポンプの漏れまたは破損が発生することがある。プロセス技術においては、場合により毒性ガスがポンピングされることがあり、このときこれが周囲の汚染を発生させることになる。装置の漏れの場合、ユーザの運転中のプロセスもまた著しく影響を受けるので、プロセスは一般に停止されなければならない。これにより、多くのプロセスにおいて、例えば半導体工業において、きわめて高い額に達することがあるコストが発生する。
【0003】
真空ポンプは、高真空フランジにより、配管構造部分、滑り弁または直接容器に装着される。特に滑り弁への装着においては、急に遮断した場合、絞り弁のねじれまたは漏れの危険が存在する。容器のフランジおよび配管構造部分もまた、一般に、高いモーメントを吸収することはできない。
【0004】
場合により、真空ポンプは、フランジに追加して底部においても固定されることがあり、このことは、同一面にない固定点に基づいて、ポンプまたは滑り弁のねじれを発生することがあるので、故障のない運転は保証されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ロータ・ステータ・クラッシュの場合においても真空気密性が保持されたままである、高速回転ロータを有する真空ポンプを備えた装置を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴を有する装置によって解決される。請求項2−8は本発明の有利な変更態様を与える。
クラッシュ・モーメントに対して抵抗可能に室フランジと結合されている結合手段に真空ポンプを配置することにより、いわゆるロータ・ステータ・クラッシュにおいて放出された回転エネルギーは確実に真空室に伝達され、これにより、構造部分間の結合したがって装置全体が真空気密に保持される。ロータ・ステータ・クラッシュとは、この場合、ロータの高速回転運転中にロータとステータとが接触し、その結果として機械的変形を発生することを意味する。ロータの回転エネルギーは、あるときにはこの変形に変換され、あるときには真空ポンプのハウジングに伝達される。このときに大きなトルクが発生する。したがって、クラッシュ・モーメントに対して抵抗可能な結合とは、このトルクが結合された要素を相互にねじることなく、このトルクを伝達可能なように形成されている結合を意味する。中間構造部分は、真空気密性が保持されるのみならず、損傷からもまた保護される。
【0007】
一変更態様において、結合手段が、真空ポンプおよび中間構造部分間に配置されている支持台として形成されていることがコスト的に有利であり且つ技術的に簡単である。これは、真空ポンプおよび中間構造部分における変形を回避する。
【0008】
一方で、支持台および室フランジ間にスペーサが配置されていることにより、結合手段が改良可能である。スペーサは、中間構造部分が締め付けられることなく、確実なねじ込み、これによる支持台と室フランジとの確実な結合を可能にする。したがって、中間構造部分の締付に基づくエラー機能が回避される。
【0009】
簡単な解決方法において、スペーサがディスタンス・スリーブを含み、ディスタンス・スリーブは、支持台および室フランジを相互に結合するねじを少なくとも一部包囲している。ねじおよびディスタンス・スリーブは、ねじの締付によるプレストレスに基づき、室フランジ面に垂直な軸の周りの装置のねじれに対して十分に抵抗可能な剛構造を形成している。
【0010】
他の変更態様において、支持台および真空ポンプが一体に形成されている。これは、両方の部品の一体結合により、例えば摩擦溶接および同等な方法により達成可能である。これは、クラッシュ・モーメントに対して十分に抵抗可能な結合をコスト的に有利に達成する。
【0011】
他の変更態様は室フランジに関するものである。室フランジは真空室に配置されているウェブと結合されている。このことから、真空室および室フランジ間の結合は室フランジ中心においてより大きな間隔を設けて得られる。これは、クラッシュ・モーメントに対する抵抗性をさらに上昇させる。
【0012】
装置の上記の利点は、中間構造部分が真空滑り弁として形成されているときに特に有効であり、その理由は、真空滑り弁を中間に挟むとき特にエラー機能を導きやすく、且つ構造的に複雑にし且つ費用をかけないかぎりクラッシュ・モーメントに対する抵抗性が達成されないからである。
【0013】
他の変更態様において、室フランジが真空室の平らな壁の上に配置されている。これらの壁は一方でコスト的な理由からできるだけ薄い肉厚であり、他方で空気圧を受けている。空気圧は壁をたわませるように働く。底面積が小さい場合には装置はこのようなたわみを受けにくく、したがって装置内に応力が導かれることはない。壁の上に複数の装置を重ねて配置することもまた可能であり、これによって相互に影響しあうことはない。
【0014】
一実施例により、本発明が詳細に説明され且つ利点が考察されるものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は室フランジに垂直な装置の軸心に沿った装置の断面図を示す。この軸心に沿って、真空ポンプ1、支持台7、中間構造部分6、室フランジ5および真空室4がこの順序で配置され且つ相互に結合されている。
【0016】
真空ポンプは高速回転ロータ2を有している。ロータは、ガスを真空室4から排出するためにステータ3と協働する。真空ポンプのポンプ・フランジ25はポンプねじ12により支持台7に着脱可能に固定されている。この結合の寸法は、最大クラッシュ・モーメントが真空ポンプ室および支持台の相互間のねじれを形成しないように決定されている。
【0017】
真空滑り弁として形成されている中間構造部分6は滑り弁ねじ14により支持台と結合されている。一方、真空滑り弁は他の滑り弁ねじ14を介して室フランジ5に着脱可能に結合されている。ポンプねじおよび滑り弁ねじの代わりに、同じ作用をなす従来技術から既知のクランプのような手段が使用されてもよい。真空ポンプ、支持台、中間構造部分および真空室のフランジ結合の間に、図示されていない従来技術から既知の、例えばエラストマー丸ひもリングのようなシール材料が設けられている。
【0018】
室フランジ5は、クラッシュ・モーメントに対して抵抗可能に、円筒部分26に例えば一体結合により固定されている。真空室の壁16と室フランジとの間にウェブ13が設けられている。ウェブは、真空室および室フランジと力伝達可能に、一体に、または一体形状に結合されているので、ウェブはクラッシュ・モーメントを吸収可能である。
【0019】
支持台7および室フランジ5はねじ11により相互に結合され、ねじはディスタンス・スリーブ10内を貫通して挿入されている。支持台7内においてねじは貫通内孔内に通され且つ室フランジにおいてねじ山15内にねじ込まれている。ディスタンス・スリーブにより、ねじはプレストレスを保持可能であり、即ち、高いトルクが加えられた場合でも、支持台と室フランジとの間の間隔は低減されることはない。したがって、真空滑り弁の締付は回避される。同時に、ねじを包囲するディスタンス・スリーブはねじれ抵抗性を上昇させ、即ち、装置の軸心周りにトルクが加えられた場合、ディスタンス・スリーブに転倒モーメントが発生するが、転倒モーメントに対してねじのプレストレスが抵抗する。したがって、この装置は、真空ポンプからの大きなクラッシュ・モーメントを確実に吸収し且つ真空気密性を失うことなく、支持台、ねじおよび室フランジを介して真空室にクラッシュ・モーメントを伝達することが可能である。この場合、クラッシュ・モーメントは、中間構造部分、この場合、真空滑り弁に荷重を与えることはない。
【0020】
図2に、線I−I′による装置の断面図が示されている。真空室の室壁16は例えば短辺長さWをもつ矩形形状を有している。この壁の上に室フランジ5が配置され、室フランジは3つのウェブ13、13′、13′′と結合されている。室フランジはさらにねじ込み穴27、27′、27′′を有し、支持台と室フランジとの間でねじがこのねじ込み穴内にねじ込まれる。室フランジは空間直径Fを有し、空間直径は真空室へのガス結合を可能にする。本装置の利点は、辺長さWが本質的に空間直径Fより大きいような壁において有効となる。寸法比においてさらに肉厚が関係してくる。空気圧に基づく壁のたわみが、フランジ寸法の製作公差、即ち、ねじ込み穴27、27′、27′′の壁の上の位置、ねじ込み穴の直径、ねじ込み穴の配置の製作公差を超えているときには、本質的により大きな比が存在している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】真空ポンプを備えた装置の断面図である。
【図2】線I−I′により切断された装置の平面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 真空ポンプ
2 ロータ
3 ステータ
4 真空室
5 室フランジ
6 中間構造部分
7 結合手段(支持台)
10 スペーサ(ディスタンス・スリーブ)
11 ねじ
12 ポンプねじ
13、13′、13′′ ウェブ
14 滑り弁ねじ
15 ねじ山
16 壁
25 ポンプ・フランジ
26 円筒部分
27、27′、27′′ ねじ込み穴
F 空間直径
W 短辺長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速回転ロータ(2)およびステータ(3)とを有する真空ポンプ(1)と、室フランジ(5)を備えた真空室(4)と、および真空ポンプおよび真空室間に設けられている中間構造部分(6)とを備え、この場合、真空室、真空ポンプおよび中間構造部分が着脱可能に相互に結合されている、装置において、
真空ポンプが、クラッシュ・モーメントに対して抵抗可能に室フランジ(5)と結合されている結合手段(7)に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記結合手段(7)が、真空ポンプおよび中間構造部分間に配置されている支持台を含み、真空ポンプ(1)および中間構造部分(6)が前記支持台と着脱可能に結合されていることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項3】
前記結合手段(7)が、支持台および室フランジ(5)間に配置されているスペーサ(10)を含むことを特徴とする請求項2の装置。
【請求項4】
前記スペーサ(10)がディスタンス・スリーブを含み、前記ディスタンス・スリーブは、支持台および室フランジ(5)を相互に結合するねじ(11)を少なくとも一部包囲することを特徴とする請求項3の装置。
【請求項5】
支持台および真空ポンプ(1)が一体に形成されていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかの装置。
【請求項6】
前記室フランジ(5)と、および前記真空室に配置されているウェブ(13、13′、13′′)とが相互に結合されていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかの装置。
【請求項7】
前記中間構造部分(6)が真空滑り弁を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかの装置。
【請求項8】
前記室フランジ(5)が前記真空室(4)の平らな壁(16)の上に配置されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかの装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−138740(P2009−138740A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299180(P2008−299180)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(391043675)プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー (44)
【Fターム(参考)】