説明

真空ポンプ用の振動減衰器

【課題】金属対金属の接触がないことで、高い減衰係数と、真空チャンバをポンプチャンバから電気的に絶縁することとが可能になる真空ポンプ、特にターボ分子真空ポンプ用の振動減衰器を提供する。
【解決手段】本発明に係る振動減衰器101;201;301;401;501において、真空気密機能および振動減衰機能はともに、同一の構成要素により、特に、弾性材料(好ましくはエラストマー)製の1つ以上の環状リング216、131;326;426;526、531、541により果たされる。弾性リングは、真空ポンプが作動しておらず減衰器が大気圧であるときの、静止した第1条件から、真空ポンプが作動し減衰器が真空状態にあるときの、圧縮された第2状態へと移行する。この圧縮された第2状態で、弾性リングは、さらされている圧縮力のために、真空ポンプと、本発明に係る減衰器を介して同ポンプが接続されている真空チャンバとの間の金属対金属の接触を回避するような仕方で変形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ用、特にターボ分子真空ポンプ用の振動減衰器に関する。
より詳しくは、本発明は、真空ポンプのロータの回転により発生する振動が、真空状態が確立されねばならないチャンバへと伝わるのを防ぐ振動減衰器に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のように、真空状態が確立されねばならず、ターボ分子真空ポンプがその端部に接続されるチャンバが、ポンプロータの回転により必然的に誘発される振動に、特に影響されやすい用途がいくつかある。このような用途のうち、電子顕微鏡の製造、または、集積電子回路を製造するためのマスクの試験および修理が例として挙げられるであろう。
真空ポンプから真空チャンバへの機械的振動の伝達を低減するために、真空ポンプには一般に、ポンプ自体と真空チャンバとの間に介在された振動減衰器が設けられている。
【0003】
先行技術によれば、上記振動減衰器は、真空チャンバへの接続用の第1フランジと、真空ポンプへの接続用の第2フランジと、真空気密性およびねじれに対する当該減衰器の構造的な抵抗を確保するための、鋼製で可撓性の蛇腹(ベローズ)と、真空ポンプにより発生する振動の減衰を保証するために上記蛇腹の周囲に配置された、1つ以上のゴム製の構成要素とを有している。
【0004】
上述した種類の減衰器により得られる減衰係数は、10〜100のオーダである。これは、特別な精度を必要とする用途には不十分な可能性がある。
減衰係数を改善し、いくつかの周波数で有効な振動減衰を得るために、上述した種類の2つの減衰器を、直列に配置し、例えば鋼製でかなりの重量の環状部材により接続して使用することができる。直列に配置された2つの減衰器の間にこのような重量を設けることで、二極伝達機能を設けることができ異なる周波数で有効な振動減衰を可能にする振動減衰システムが得られる。特に、ポンプロータの回転周波数、および、ポンプの回転軸が取り付けられるベアリングのケージの回転周波数の両方で、良好な振動減衰を得ることが可能である。ロータおよびケージは、システムが、より影響を受けやすい2つのポンプ振動源である。
【0005】
さらに、上記二重の減衰器は、減衰係数を最高で103のオーダの値に高めることにより、振動減衰をかなり改善することができる。
しかし、これらのいわゆる二重の減衰器にも欠点はある。
第一に、単独および二重の減衰器のいずれにおいても、異なる部材を使用して、真空気密(蛇腹)を確保し、振動減衰を実現し、構造に対する剛性を確保する(ゴム部材)には、多数の構成要素が必要であり、その結果、かなりの製造費が必要であり、かつ、故障または不具合の危険が大きくなる。
【0006】
第二に、単独の減衰器の減衰係数が不十分である一方で、二重の減衰器は大きな軸方向の寸法が必要であり、そのために、二重の減衰器は、小型の装置の使用が求められる用途に不向きである。さらに、大きな軸方向の寸法から生じる低いコンダクタンスは、ポンプ/減衰器システムの実際のポンピング速さを低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
満足な減衰係数を保証し、限られた数の構成要素を備えていて製造が容易であり、軸方向の寸法が小さくされていて全体のコンダクタンスが大きくされている、真空ポンプ用の振動減衰器を提供することにより、上記の欠点を克服することが、本発明の主な目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のおよび他の目的は、添付の特許請求の範囲に記載した、真空ポンプ用の振動減衰器により達成される。
上記目的は、本発明に係る振動減衰器により達成される。これは、真空気密機能および振動減衰機能がともに、単独の部材である弾性材料の環状リング、好ましくは、エラストマー製のOリングにより実現されているためである。
【0009】
この特徴により、減衰器の構成要素の数を制限することと、その全体的な軸方向の寸法を低下させることとの両方が可能になる。
本発明の実施形態によれば、振動減衰器は少なくとも、真空ポンプに接続可能な、または真空ポンプと一体化された第1構成要素と、真空チャンバに接続可能な、または真空ポンプと一体化された第2構成要素とを含んでいる。
【0010】
第1および第2構成要素には、その相互接続のための接続手段が設けられており、ともに、環状の半座部(セミシート)がそれぞれ設けられており、第1および第2構成要素の環状の半座部は、相互に協働して、これらの構成要素が互いに接続されたときに、環状の座部を形成する。弾性材料の環状リングは、環状の座部に配置されており、リングが圧縮力(対称軸に実質的に平行な方向への、ゼロであり、または最小の強度を有し、事前に設定された閾値よりも低い)にさらされた場合の静止した第1構成から、リングが圧縮力(対称軸に実質的に平行な方向への、より大きな強度を有し、上記閾値を超える)にさらされた場合の圧縮された第2の構成へと移行することができる。
【0011】
本発明によれば常に、弾性の環状リングが静止した第1構成で、第1および第2構成要素の接続手段が、構成要素が互いに対して保持されるように機能するときに、第1および第2構成要素が相互に接触した状態にあり、一方、弾性の環状リングが圧縮された第2構成のときに、構成要素は接触した状態になく、弾性の環状リングにより完全に分離されているように、振動減衰器は構成されている。
【0012】
特に、真空ポンプが作動しているときに、ポンプの吸引力自体は、上記閾値を超え弾性のリングを圧縮および変形させて2つの構成要素を接触状態ではないようにさせる圧縮力を発生させる。
本発明の好ましい実施形態では、接続手段は、好ましくは第1および第2構成要素の周に沿って等間隔に配置された歯を備えている。第1および第2構成要素は互いに係合し、互いに当接する歯が設けられていることにより、単純な回転により互いに係止することができ、差し込み連結を形成する。
【0013】
第1および第2構成要素が接続されると、接続解除を回避し、ねじりトルクに対する抵抗を確保するために、上記2つの構成要素の続く相対回転を防ぐための手段が、連続した歯の対の間に適用されることが好ましい。
特に、上記手段は、ポンプ自体の急速な停止トルクにより引き起こされる回転に抵抗することにより、構造的な一体性を確保し、およびその結果、ポンプが故障した場合のポンプ/減衰器システムの安全性を確保する。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの中間構成要素も、減衰器の第1および第2構成要素の間に配置されており、第1弾性環状リングが第1構成要素と中間構成要素との間に介在されており、第2弾性環状リングが中間構成要素と第2構成要素との間に介在されている。少なくとも1つの中間構成要素は、減衰器の第1および第2構成要素と比較して、かなりの質量を有しており、例えば鋼で形成されているのが好ましい。
【0015】
このようにして、二重の減衰器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】本発明の第1実施形態に係る振動減衰器の斜視図である。
【図1B】図1Aに示す振動減衰器の断面の分解斜視図である。
【図1C】図1Aに示す振動減衰器の断面図である。
【図1D】大気圧状態での振動減衰器を示す、図1Cの拡大詳細図である。
【図1E】真空状態での振動減衰器を示す、図1Cの拡大詳細図である。
【図1F】本発明の第1実施形態の代替的な変形例に係る振動減衰器の断面図の拡大詳細図であって、真空状態での振動減衰器を示している。
【図2】本発明の好ましい第2実施形態に係る振動減衰器の断面図である。
【図3】本発明の好ましい第3実施形態に係る振動減衰器の断面図である。
【図4】本発明の好ましい第4実施形態に係る振動減衰器の断面図である。
【図5】本発明の好ましい第5実施形態に係る振動減衰器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る振動減衰器のさらなる利点および特徴は、添付の図面を参照して、非限定的な例により示される、以下の説明から、より明らかになるであろう。
図1A〜図1Eを参照して、本発明の第1実施形態に係る振動減衰器101を示す。
減衰器101は、円筒形で中空の第1構成要素103(好ましくは金属製のもの)と、円筒形で中空の第2構成要素105(同様に好ましくは金属製のもの)とを備えており、これらは、対称軸Sに沿って軸方向に整列されている。
【0018】
第1構成要素103は、一方の端部に、真空ポンプの接続フランジと接続するためのフランジ107を有し、他方の端部に、接続手段111を有している。より詳しくは、接続手段111は、径方向歯111aを備えている。径方向歯111aは、第1構成要素103の外壁から径方向外側に向かって延びており、外壁の周に沿って等間隔に配置されている。
同様に、第2構成要素105は、一方の端部に、真空チャンバの接続フランジと接続するためのフランジ109を有し、他方の端部に、接続手段113を有している。より詳しくは、接続手段113は、径方向歯113aを備えている。径方向歯113aは、第2構成要素105の外壁から径方向外側に向かって延びており、外壁の周に沿って等間隔に配置されている。
【0019】
第1構成要素103は、接続手段111が形成された端部に、環状半座部(セミシート)115をさらに備えている。同様に、第2構成要素105は、接続手段113が形成された端部に、環状半座部117をさらに備えている。
図1A〜図1Eに示す好ましい実施形態によれば、振動減衰器101は、円筒中空中間構成要素119(同様に好ましくは金属で形成され対称軸Sに沿って整列されたもの)をさらに含んでいる。中間構成要素は、第1および第2構成要素と比較して、かなりの質量を有しており、鋼などで形成されているのが好ましい。
【0020】
中間構成要素119は、第1構成要素103を中間構成要素119に接続するために、第1構成要素103の接続手段111に連結されるよう配置された接続手段121を、第1端部に有している。より詳しくは、接続手段121は、径方向歯121aを備えている。径方向歯121aは、中間構成要素119の内壁から径方向内側に向かって延びており、内壁の周に沿って等間隔に配置されている。
【0021】
さらに、中間構成要素119を第1構成要素103に接続するため、接続手段121が設けられた第1端部に向かって湾曲した壁に、環状半座部123が設けられており、第1構成要素と中間構成要素とが接続されたときに、環状半座部115、123が環状座部を形成するように、第1構成要素および中間構成要素が構成されている。環状座部は、弾性材料、好ましくはエラストマー製の第1環状構成要素126を受け入れる。
【0022】
同様に、中間構成要素119は、第2構成要素105を中間構成要素119に接続するために、第2構成要素105の接続手段113と連結されるように配置された接続手段125を、他方の端部に有している。より詳しくは、接続手段125は、径方向歯125aを備えている。径方向歯125aは、中間構成要素119の内壁から径方向内側に向かって延びており、内壁の周に沿って等間隔に配置されている。
【0023】
さらに、中間構成要素119を第2構成要素105に接続するため、接続手段125が設けられた第2端部に向かって湾曲した壁に、環状半座部129が設けられており、第2構成要素と中間構成要素とが接続されたときに、環状半座部117、129が環状座部を形成するよう、第2構成要素および中間構成要素が構成されている。環状座部は、弾性材料製の第2環状構成要素131を受け入れる。
【0024】
特に図1Cを参照して、第1構成要素103の歯111aを中間構成要素119の歯121aに対してオフセットしながら差込みピン(銃剣)式に挿入すること、および、続いて上記構成要素が軸Sに対して回転することにより、第1構成要素103と中間構成要素119とが接続され、歯111a、121aが相互に整列される。その結果、それらは互いに当接し、第1構成要素および中間構成要素を互いに対して保持する。この時点で、第1弾性環状構成要素126が、環状半座部115、123が組み合わされた環状座部内に収容および規制され、所定の閾値より低く真空システムの排気を可能にする密性を与える最小の圧縮にさらされる。
【0025】
同様に、第2構成要素105の歯113aを中間構成要素119の歯125aに対してオフセットしながら差込みピン式に挿入すること、および、続いて上記構成要素が軸Sに対して回転することにより、第2構成要素105と中間構成要素119とが接続され、歯113a、125aが相互に整列される。その結果、それらは互いに当接し、第2構成要素および中間構成要素を互いに対して保持する。この時点で、第2弾性環状構成要素131が、環状半座部117、129が組み合わされた環状座部内に収容および規制され、構成要素126と同様に、所定の閾値より低い最小の圧縮にさらされる。
【0026】
有利なことに、中間構成要素119との第1および第2構成要素103、105の接続を弱め、それにより、システムの真空保全および機械的安全性を弱める可能性のある、続く意図せぬ望ましくない相対回転を防止するための手段が設けられている。
この目的のために、径方向の凹部133が、中間構成要素119の両端の端面119a、119bに形成されており、上記凹部に対応して、ピン135が第1および第2構成要素103、105に固定されている。これらのピンは、上記構成要素から突出して、上記凹部内へと延びている。例えば真空ポンプの急激な停止トルクのために、望ましくない回転が起きたとき、ピン135は凹部133の壁に当接して、さらなる回転を防止する。
【0027】
特に図1Dおよび図1Eを参照して、本発明によれば、大気圧条件下で、弾性環状リング126、131は、それぞれの環状座部115、123および117、129内に規制されて、第1静止状態にある。これらは、所定の閾値よりも低い圧縮力にさらされていることによる(図1D)。
このような条件では、第1構成要素103の歯111aは、中間構成要素119の歯121aと軸方向に当接し、第2構成要素105の歯113aは次いで、中間構成要素119の歯125aに当接し、このようにして、これらは、第1構成要素103、中間構成要素119および第2構成要素105を一緒に維持し、弾性構成要素126、131をわずかに予備圧縮する。
【0028】
真空が形成されると、弾性環状構成要素126、131は、所定の閾値よりも高い圧縮力にさらされて変形し、それにより、第1静止状態から第2圧縮状態へと移動する(図1E)。
このような条件では、弾性環状リング126、131の変形により、第1構成要素103の歯111aは、中間構成要素119の歯121aと、もはや接触しておらず、隙間137がそれらの間に形成される。同様に、隙間139が、第2構成要素105の歯113aと中間構成要素119の歯125aとの間に形成される。
【0029】
その結果、真空ポンプが作動して、それゆえに、ポンプのロータの回転により機械的振動が発生すると、第1構成要素103と中間構成要素119とは第1弾性環状リング126のみを介して接触し、第2構成要素105と中間構成要素119とは第2弾性環状リング131のみを介して接触する。弾性リング126、131は、真空気密性および振動減衰を保証する。
上記例では、環状半座部は実質的に半円の外形を有しているため、これらが連結されると、弾性環状リングのための実質的に円形の横断面を有する環状座部を形成する。弾性環状リングの適切な変形が保証されて上記結果が得られるのであれば、半座部用に異なる外形および形状を選択できることは、当業者にとって明らかであろう。例えば、図1Fを参照して、環状半座部を実質的にL字状の外形にし、それらを互いに対向する鏡像形状に配置することも可能である。
【0030】
金属対金属の接触がないため、103〜104の範囲の非常に高い減衰係数を実現することができ、ポンプのロータの回転により発生する振動を、このような係数で効果的に低減することができる。
有利なことに、金属対金属の接触がないことは、振動減衰器101の電気絶縁にもつながり、その結果、真空ポンプからの真空チャンバの電気絶縁につながる。これは、多くの用途(例えば電子顕微鏡)で有利な場合がある。従来の減衰器で、この効果は得られないことを理解されたい。従来の減衰器では、蛇腹が、構造的な理由で金属製である必要があり、真空ポンプから真空チャンバを電気絶縁する機能を果たすことができない。
【0031】
図2は、本発明に係る第2の実施形態の振動減衰器201を示している。
この特定の実施形態によれば、振動減衰器201の第1構成要素203は、真空ポンプへの接続用の手段が設けられる代わりに、ターボ分子真空ポンプ210に、その吸引ポート212に対応して、直接に統合されている。同様に、振動減衰器201の第2構成要素205は、真空チャンバへの接続用の手段が設けられる代わりに、真空チャンバ220に直接に統合されている。
【0032】
すなわち、吸引ポート212に対応する真空ポンプ210の接続フランジは、振動減衰器201の第1構成要素として働くように形成および構成されており、真空チャンバ220の接続フランジは、振動減衰器201の第2構成要素として働くように形成および構成されている。
このような第2実施形態に係る減衰器201は有利なことに、全体的な軸方向の寸法をさらに低減することができる。
【0033】
図3は、本発明に係る第3実施形態の振動減衰器301を示している。振動減衰器301は、単独の弾性リングを含んでいるため、特に単純である。
この実施形態によれば、減衰器301の第1構成要素303は、一方の端部に、真空ポンプのフランジと接続するためのフランジ307を有し、他方の端部に、弾性材料の環状リング326用の第1環状半座部315と、減衰器301の第2構成要素305への接続用の接続手段311とを有している。接続手段は、径方向歯311aを備えている。径方向歯311aは、第1構成要素303の内面から径方向内側に向かって延びている。同様に、減衰器301の第2構成要素305は、一方の端部に、真空チャンバのフランジと接続するためのフランジ309を有し、他方の端部に、弾性材料の環状リング326用の第2環状半座部317と、減衰器301の第1構成要素303への接続用の接続手段313とを有している。接続手段313は、径方向歯313aを備えている。径方向歯313aは、第2構成要素305の外面から径方向外側に向かって延びている。
【0034】
このように、本発明のこの第3実施形態によれば、減衰器301の第1および第2構成要素303、305は、中間構成要素を介在せずに、互いに直接接続されており、弾性材料の単独の環状リング326が設けられている。単独の環状リング326は、環状半座部315、317の組み合わせによる環状ハウジング内に収容および規制されている。
振動減衰器301の作動は、本発明の第1実施形態に関連して上述したものに非常に類似している。
【0035】
中間構成要素がなく、単独の弾性環状リングが設けられていることで、二極伝達機能を得ることはできない。しかし、本発明のこの第3実施形態に係る振動減衰器301により、従来の単独の減衰器と同等または従来の単独の減衰器よりも高い減衰係数を得ることができ、真空ポンプからの真空チャンバの電気的絶縁および軸方向の寸法の低減が可能になる。
図4は、本発明に係る第4実施形態の振動減衰器401を示している。
【0036】
この実施形態でも、単独の弾性環状リング426が設けられており、減衰器の第1構成要素403が、中間構成要素を介在せずに、減衰器の第2構成要素405に直接接続されている。しかし、この実施形態では、減衰器401の第1構成要素403は、真空ポンプへの接続用の手段が設けられる代わりに、ターボ分子真空ポンプ410に、その吸引ポート412に対応して、直接に統合されている。
【0037】
すなわち、吸引ポート412に対応する真空ポンプ410の接続フランジは、振動減衰器401の第1構成要素として働くように形成および構成されている。
この特徴により、有利なことに、全体的な軸方向の寸法をさらに低減することができる。
図5は、本発明に係る第5実施形態の振動減衰器501を示している。
【0038】
本実施形態は、減衰器501の第1および第2構成要素の間にさらなる中間構成要素を含んでおり、それに対応して、弾性材料のさらなる環状リングを含んでいる。
このため、減衰器501は、真空ポンプへの接続のためのフランジ507が設けられた第1構成要素503と、真空チャンバへの接続のためのフランジ509が設けられた第2構成要素505とを含んでいる。
【0039】
第1構成要素503は、上述したものと類似した接続手段により、第1弾性環状リング526を介在して、第1中間構成要素519に接続されている。単独の環状リング526は、第1構成要素および第1中間構成要素内に形成された環状半座部の組み合わせによる環状ハウジング内に収容および規制されている。
第1中間構成要素519は、上述したものと類似した接続手段により、第2弾性環状リング541を介在して、第2中間構成要素543に接続されている。第2弾性環状リング541は、第1および第2中間構成要素内に形成された環状半座部の組み合わせによる環状ハウジング内に収容および規制されている。
【0040】
第2中間構成要素543は、上述したものと類似した接続手段により、第3弾性環状リング531を介在して、第2構成要素505に接続されている。第3弾性環状リング531は、第2中間構成要素および第2構成要素内に形成された環状半座部の組み合わせによる環状ハウジング内に収容および規制されている。
無論、本発明に係る振動減衰器の第1および第2構成要素の間に配置する中間構成要素は、何個であってもよい。
【0041】
中間構成要素の数が増加すると、一方で、真空ポンプにより発生する振動の効果的な減衰を得ることのできる周波数の数も増加するが、他方で、全体的な軸方向の寸法も増加する。
上記説明から、本発明により上記目的が達成されることは明らかである。それは、単純で小型で、製造が容易かつ安価で、容易に103のオーダにすることができる減衰係数であって設計に特に注意することで最大104にすることができる減衰係数を確保することが可能な、真空ポンプ用の振動減衰器を、本発明が提供するからである。
【0042】
上述したいくつかの好ましい実施形態の詳細な説明が、限定を意図しておらず、添付の特許請求の範囲で規定するように、本発明の範囲から逸脱することなく、いくつかの変更および修正が可能であることも明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプと真空チャンバとの間に配置するための振動減衰器(101;201;301;401;501)であって、少なくとも
円筒状で中空の第1構成要素(103;203;303;403;503)であって、その第1端部で前記真空ポンプと関連付けられるように配置された第一構成要素と、
対称軸(S)に沿って軸方向に前記第1要素と整列された円筒状で中空の第2構成要素(105;205;305;405;505)であって、その第1端部で前記真空チャンバと関連付けられるように配置された第二構成要素とを備え、
前記第1構成要素は、前記第1端部の反対側の端部に、環状半座部(115;115';315)、および、直接に、または、考え得る中間構成要素(119;419,431)の介在により間接に、前記第1構成要素を前記第2構成要素と軸方向に結合するのに適切な接続手段(111;113)を備え、
前記第2構成要素は、前記第1端部の反対側の端部に、環状半座部(117;117';317)、および、直接に、または、考え得る中間構成要素(119;419,431)の介在により間接に、前記第2構成要素を前記第1構成要素と軸方向に結合するのに適切な接続手段(113;313)を備え、
当該減衰器の前記第1および第2構成要素の間に配置された、弾性材料製の少なくとも1つの環状リング(126;326;426;526)であって、前記対称軸に沿う方向に向けられ事前に設定された閾値よりも大きい圧縮力にさらされた場合の、静止した第1構成から、前記対称軸に沿う方向に向けられ前記事前に設定された閾値よりも低い圧縮力にさらされた場合の、圧縮された第2の構成へと、移行する環状リングをさらに備え、
前記弾性環状リングが前記静止した第1構成にあるときに、前記接続手段は、前記第1および第2構成要素の間の軸方向の接続を保証し、
前記弾性環状リングが前記圧縮された第2構成にあるときに、弾性材料製の前記環状リング(126;326;426;526)は変形されて、前記第1および第2構成要素の間の真空気密の軸方向の接続を保証するとともに、前記第1および第2構成要素の前記接続手段の間の接触を防止する、振動減衰器。
【請求項2】
前記弾性環状リング(326;426)のみが、前記第1および第2構成要素の間に配置されており、前記第1構成要素の前記環状半座部(315)および前記第2構成要素の前記環状半座部(317)は、弾性材料製の前記環状リング(326;426)を受け入れて規制する環状座部を区画するために協働する、請求項1に記載の振動減衰器(301;401)。
【請求項3】
前記第1構成要素は、前記第2構成要素との接続のための接続手段(311)を備え、前記接続手段は、前記第1構成要素の表面に沿って等間隔に配置された径方向歯(311a)を備え、前記第2構成要素は、前記第1構成要素との接続のための接続手段(313)を備え、前記接続手段は、前記第2構成要素の表面に沿って等間隔に配置され前記第1構成要素の前記径方向歯と係合するのに適した径方向歯(313a)を備えた、請求項2に記載の振動減衰器(301;401)。
【請求項4】
前記第2構成要素に対する前記第1構成要素の不慮の回転を防止するための手段をさらに備えた、請求項2または3に記載の振動減衰器(301;401)。
【請求項5】
1つ以上の中間構成要素(119;419,431)が、当該中間構成要素のそれぞれについて弾性材料製の追加の環状リング(131;531,541)とともに、前記第1および第2構成要素の間にさらに配置されている、請求項1に記載の振動減衰器(101;201;501)。
【請求項6】
前記中間構成要素のそれぞれが、前記中間要素の第1端部に向けられた第1環状半座部(123;123’)と、前記中間要素の第2端部に向けられた第2環状半座部(129;129’)とを備え、弾性材料製の前記環状リングの1つを受け入れて規制するために配置された環状座部を区画するために、前記第1および第2環状半座部はぞれぞれ、前記第1構成要素の前記環状半座部または前記第2構成要素の前記環状半座部または別の中間構成要素の環状半座部と協働するのに適している、請求項5に記載の振動減衰器(101;201;501)。
【請求項7】
前記第1構成要素は、前記中間構成要素の1つとの接続のための接続手段(111)を備え、前記接続手段は、前記第1構成要素の表面に沿って等間隔に配置された径方向歯(111a)を備え、前記第2構成要素は、前記中間構成要素の1つとの接続のための接続手段(113)を備え、前記接続手段は、前記第2構成要素の表面に沿って等間隔に配置された径方向歯(113a)を備え、
前記中間構成要素は、当該中間構成要素の表面に沿って等間隔に配置され前記第1構成要素または別の中間構成要素の前記径方向歯と係合するのに適した径方向歯(121a)を備えた第1接続手段(121)を、前記第1端部に備え、当該中間構成要素の表面に沿って等間隔に配置され前記第2構成要素または別の中間構成要素の前記径方向歯と係合するのに適した径方向歯(125a)を備えた第2接続手段(125)を、前記第2端部に備えた、請求項5に記載の振動減衰器(101;201;501)。
【請求項8】
前記第1構成要素、前記第2構成要素および前記1つ以上の中間構成要素の互いに対する不慮の相互の回転を防ぐための手段をさらに備えた、請求項5〜7のいずれか1項に記載の振動減衰器(101;201;501)。
【請求項9】
前記第1構成要素は、前記真空ポンプとの接続用のフランジ(107)を備えた、請求項1〜8のいずれか1項に記載の振動減衰器(101;301;501)。
【請求項10】
前記第1構成要素は、前記真空ポンプと一体にされている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の振動減衰器(201;401)。
【請求項11】
前記第2構成要素は、前記真空チャンバとの接続用のフランジ(107)を備えた、請求項1〜10のいずれか1項に記載の振動減衰器(101;301;401;501)。
【請求項12】
前記第2構成要素は、前記真空チャンバと一体にされている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の振動減衰器(201)。
【請求項13】
前記環状半座部(115;117;123;129)は、実質的に半円の外形を有している、請求項1〜12のいずれか1項に記載の振動減衰器(101;201;301;401;501)。
【請求項14】
前記環状半座部(115’;117’;123’;129’) は、実質的にL字状の外形を有している、請求項1〜12のいずれか1項に記載の振動減衰器(101;201;301;401;501)。
【請求項15】
当該減衰器が真空状態にあるときに、前記事前に設定された閾値が超えられ、前記弾性環状リングが前記第2圧縮構成にある、請求項1〜14のいずれか1項に記載の振動減衰器(101;201;301;401;501)。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−226466(P2011−226466A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−45140(P2011−45140)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【Fターム(参考)】