説明

真空ポンプ用固定装置

【課題】高い真空を発生させるために、真空筐体またはパイプなどの構造体に固定され、かつ接続される高速回転速度真空ポンプの分野に関する。
【解決手段】真空ポンプを構造体に固定するために頭付きボルトと協働する穴を含む環状の固定フランジにある。このフランジは、上側リングと下側リングの間にポンプ本体の端部をクランプするように協働する上側リングおよび下側リングと、構造体の壁と接触するように意図された上側リングの面の平面に垂直な平面にある、上側リングの面内の少なくとも1つの第1の空洞とを備える。本発明は、ポンプ本体と同軸にポンプの入口オリフィスの回りに配設される環状フランジを備える固定システムにもある。上側リングの面と接触するポンプ本体の端部の面の少なくとも1つの第2の空洞がハウジングを形成するように第1の空洞と連結され、かつ少なくとも1つの柔軟なスタッドがこのハウジング内に挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年11月10日に出願の仏国特許出願第0553428号明細書に基づき、その開示の全体は参照により本明細書に援用し、本明細書で35.U.S.C.第119条の下でその優先権を主張する。
【0002】
本発明は、高い真空を発生させるために、真空筐体またはパイプなどの構造体に固定され、かつ接続される高速回転真空ポンプの分野に関する。より詳しくは、本発明はそのような真空ポンプを固定するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
電子およびマイクロ機械部品産業では、機械加工またはプラズマ処理方法は制御された真空が維持されなければならない筐体内で行われる。
【0004】
真空を発生させることには、機械加工またはプラズマ処理方法に適合する高い真空を迅速に発生させ、かつ維持することができるポンプの使用が必要である。ロータがその中で例えば1分間に3万回を越える高速で回転駆動されるポンプ本体からなる、ターボ分子式のポンプが一般に使用される。そのような高回転数の場合、ロータは極めて高い運動エネルギを取得する。
【0005】
このポンプ本体は、真空筐体またはパイプなどの構造体の出口オリフィスに接続される同軸の入口オリフィスを含む。ポンプは一般に構造体にのみ固定され、ポンプ入口オリフィスおよび構造体の対応するオリフィスを取り囲む領域によってのみ支持される。したがって、ポンプ本体は入口オリフィスの周りに同軸の環状フランジを含み、出口オリフィスの周りの構造体の壁にねじ切りされた穴が設けられ、ポンプ本体の同軸環状フランジを貫通する穴が設けられ、フランジを構造体の壁に押し付けて真空ポンプを構造体に固定するために、頭付きボルトが、それらの軸部がフランジの穴を通過し構造体の壁のねじ切りされた穴内にボルト留めされるように嵌合される。
【0006】
ボルトの軸部は従来、この軸部の直径よりわずかに大きな直径を有する穴を通過する滑らかな部分を有し、かつ関連するねじ切りされた穴内にねじ込まれるねじ切りされた端部部分を有する円形断面の円筒である。
【0007】
規格は、ポンプ直径の関数として、ボルトおよび穴の数と共にフランジ、ボルトおよび必要な穴のそれぞれの寸法を規定している。
【0008】
したがって、ALCATELからのATHM型式のターボ分子ポンプに対しては、このポンプは、10ミリメートルの直径に対しその軸部が約30ミリメートルの長さを有するM10タイプの12本のボルトと、フランジおよび構造体の穴が11ミリメートルの呼び径を有する「PNEUROP 66061」規格に適合するDN250iso−F型のフランジを設けることによって固定される。
【0009】
そのような固定構造は、通常の使用条件では完全に満足すべきものであり、したがって、通常使用での真空ポンプの動作によって発生する機械的力に耐えることができる。
【0010】
一方、全速回転数で回転しているとき、ポンプロータの突発的な破壊の場合には克服できない問題が生じる可能性があることが見出されてきている。この仮説では、全速回転速度で運転しているロータが次いで均衡をくずし、ポンプ本体の壁を激しく叩き、それに横方向または半径方向の変位力を付与し、ポンプ本体の壁を強く擦り、それに同軸の回転トルクを付与する可能性がある。高速で回転するロータに蓄えられる高いエネルギの故に、ロータによってポンプ本体に加えられる機械応力は非常に高く、これらの応力は真空ポンプを構造体に固定する装置に伝達される。これは結果として、固定ボルトの激しい剪断力となり、現行の構造ではこれらの力がボルトを破断させることが見出されてきた。次いでポンプは構造体から切り離され、使用場所の周りに飛ぶ可能性のある危険な飛翔物になる。
【0011】
1つの解決策が文献国際公開第2004/020839号パンフレットによって提案され、それは入口オリフィスの周りで真空ポンプ本体と同軸で、真空ポンプ本体に固定される環状フランジを備える、構造体の壁に真空ポンプを取り付けるための装置を記載している。構造体の壁にねじ切りされた穴が設けられ、環状フランジに貫通穴が設けられ、フランジを構造体の壁に押し付けることによって真空ポンプを構造体に固定するために、それらの軸部が貫通穴を通過し関連するねじ切りされた穴内にねじ込まれるように頭付きボルトが嵌合される。この貫通穴は、構造体の壁に隣接する円形断面の同軸の拡大された近位端が続く円形断面円柱の形状の遠位部分を備える。真空ポンプと構造体との間の連結領域で、任意の横方向での剪断力が発生する場合、この構造によってボルト軸部が屈曲し、貫通穴と関連するねじ切りされた穴との間の横方向オフセットが可能になる。
【0012】
この解決策は固定ボルトが曝される激しい剪断力を吸収する。しかしながら、ロータ回転速度は新世代のターボ分子ポンプではより高い。ポンプ崩壊の場合には、消散させ、構造体に伝達すべきではないエネルギはずっとより大きくなり、この構造ではボルト破断前の降伏強度は不十分になる。さらに、この解決策は、ボルト破断の場合にポンプが構造体から切り離されるようになることを防止しない。
【特許文献1】国際公開第2004/020839号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の1つの目的は、この従来技術の欠点をなくすことである。この目的のために本発明は、適用可能な規格に準拠したままで真空ポンプが構造体に保持される強度を増加させ、全速回転で作動中のロータの破裂の場合に固定ボルトが破断しポンプが分離することを防止するように真空ポンプ固定構造を改変することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のために、本発明は、
壁にフランジを押し付けて真空ポンプを構造体に固定するために、頭付きボルトと協働するようになされた穴を含む、真空ポンプを構造体の壁に固定するための環状フランジであって、
−上側リングと下側リングの間でポンプ本体の端部をクランプするように協働する上側リングおよび下側リングと、
−構造体の壁と接触するように意図された上側リングの面の平面に垂直な平面にある、上側リングの面に形成される少なくとも1つの空洞とを備えることを特徴とする環状フランジを提案する。
【0015】
本発明は、
ポンプ本体と同軸にポンプの入口オリフィスの回りに配設され、壁にフランジを押し付けて真空ポンプを構造体に固定するために頭付きボルトと協働するようになされた穴を含む環状フランジを備える、真空ポンプを構造体の壁に固定するためのシステムであって、
−環状フランジが、上側リングと下側リングの間でポンプ本体の端部をクランプするように協働する上側リングおよび下側リングと、
−ハウジングを形成するように第2の空洞と連結され、ポンプ本体の端部の面と接触する上側リングの面内の少なくとも1つの第1の空洞と、ポンプ本体端部の面内の少なくとも1つの第2の空洞と、
−ハウジング内に挿入される少なくとも1つの柔軟な材料のスタッドとを備えることを特徴とするシステムにもある。
【0016】
好ましい実施形態では、この第1の空洞は、構造体の壁と接触するように意図された上側リングの面の平面に垂直な平面にある上側リングの面内ある。
【0017】
変形形態では、このハウジングは、ポンプ本体の軸に垂直な平面内で円形断面を有する。
【0018】
円筒形スタッドを伴うハウジングのこの形状は、破壊の場合剪断力でスタッドに荷重が掛けられる構造になる。この型式の構造は、製造が簡単であること、およびスタッドが破断することなく対応できる最大角度5°までポンプがフランジ内で回転できる利点を有する。
【0019】
このハウジングおよびスタッドの最大寸法は、フランジの規格によって課される制約に準拠しなければならない。ハウジングは、材料の弾性によりわずかな半径方向の圧縮を有するスタッドの導入を可能にするように、スタッドの直径と同じ直径、または非常にわずかに小さい直径を有して製造される。したがって、スタッドは、それらのハウジングから抜出すことができない。例えば、本発明による固定システムは、10±0.1mmの直径を有するハウジングと、高さ14±0.5mmに対し10±0.5mmの直径のスタッドを含むことができ、これはスタッドの0.6mmの最大圧縮になる。
【0020】
別の変形形態では、ハウジングはポンプ本体の軸に垂直な平面内で長円形断面を有する。
【0021】
フランジの空洞とポンプ本体の端部のところの空洞の連結によって境界を定められるこのハウジングは、スタッドの減衰能力を改善することを目的で、同時に規格の幾何学的制約に従ってスタッドの体積を増加させるために長円形の形状であることは有利である。
【0022】
本発明の具体的な一実施形態では、連結されるときハウジングを形成する空洞は、空洞のおのおのに対して異なる曲率半径を有する丸くした形状であることができる。ハウジングを形成する空洞の1つは、スタッドの形状を支持する丸くした形状およびスタッドを悪化させる鋭い縁部と接触するのを防止するための丸くした角を有することが好ましい。もう1つの空洞は、圧縮で働き、スタッドの応力を減少させることができるずっとより大きな曲率半径を有する。この型式の構造では、ハウジング内のスタッドの圧縮は、スタッドの破断を防止しながらポンプ本体の30°の回転を可能にする。
【0023】
ポンプ本体の回転に繋がるロータの破壊はスタッドの全長にわたる圧縮応力を発生させ、それはスタッドを構成する材料の弾性変形特性により吸収される。
【0024】
本発明によれば、スタッドは、柔軟な材料、好ましくはエラストマー材料で製造される。スタッドを構成する材料の性質は、剛性および減衰特性の点から見て、スタッドの破断なしにポンプ本体の端部に対してフランジのわずかな変位を可能にする。このエラストマーは、ポリシロキサン、ポリクロロプレンおよびそれらの共重合体、イソプレンの単独重合体および共重合体、ならびにイソブチレンの単独重合体および共重合体から、特にイソブチレンおよびイソプレンの共重合体から選択されるのが好ましい。
【0025】
剪断で働く構造に対しては、ショア硬度70を有するポリクロロプレンが好ましいであろう。圧縮で働く構造に対しては、ショア硬度70を有するイソブチレンおよびイソプレンの共重合体が好ましいであろう。
【0026】
スタッドが破断する極端な状況では、上側リングと下側リングの間にサンドイッチされたポンプ本体が保持ボルト破断のリスクなしにその間で回転するので、設備の安全性はそれにも関わらず確保され続ける。
【0027】
本発明はさらに、ポンプ本体と同軸でポンプの入口オリフィスの周りに配設され、かつ壁にフランジを押し付けて真空ポンプを構造体に固定するために頭付きボルトと協働するようになされた穴を含む環状フランジを備える固定システムによって構造体の壁に真空ポンプを固定する方法にある。本発明によれば、この環状フランジは上側リングおよび2つの半リングから構成される下側リングを含む。この方法は、以下のステップを含む。
−その面にポンプ本体の端部面と接触する少なくとも1つの第1の空洞を含み、ポンプ本体の端部面内の第2の空洞と連結され、ハウジングを形成する上側リングが、上からポンプ本体の端部の周りに配置されるステップと、
−スタッドが下からハウジング内に挿入されるステップと、
−下側リングを構成するおのおのの半リングが上側リングの下でポンプ本体の端部の周りに配置されるステップと、
−上側リングおよび下側リングがボルトによって組み立てられるステップと、
−ポンプ本体の周りにフランジを備える組立て品が、頭付きボルトによって構造体の壁に固定されるステップ。
【0028】
本発明の他の特徴および利点は、勿論図説され例示に限定されることなく一実施形態の以下の説明を読むこと、および添付の図面から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
例えば真空筐体などの構造体3と関連する壁2に固定されるターボ分子式の真空ポンプ構造1を示す図1を、先ず最初に考慮する。
【0030】
この真空ポンプ1は、その中でロータ5がポンプ本体4の軸I−Iの周りを高速で回転するポンプ本体4を備える。このポンプ本体4は、それを通りポンプ輸送されるガス7が入るポンプ本体4と同軸の入口オリフィス6、およびそれを通り排出ガス9が排気される排出オリフィス8を含む。ロータ5は内部モータ10によってポンプ本体4内で回転駆動され、かつ磁気または機械的軸受11および12によって横方向に案内される。
【0031】
構造体3と関連する壁2は、真空ポンプ1の入口オリフィス6と対応する関係にあるポンプ輸送ガス出口オリフィス13を備える。この構造体3は、外側環境から隔離される閉じた筐体の境界を定め、その中で真空ポンプ1は制御された真空を作り出すことができる。この壁2は、構造体の、またはポンプの固定フランジを受けるようになされた真空筐体またはパイプなどの構造体と関連する例えばフランジなどの構造体に連結される固定手段の、外囲であることができる。
【0032】
本発明によれば、ショルダ16が設けられる上側リング15および下側リング17を含むステンレス鋼の環状フランジ14が、真空ポンプ1を構造体3の壁2に固定することができるように、ポンプ本体4の端部18の周りで入口オリフィス6と同軸に、真空ポンプ1の本体4上に嵌合される。このショルダ16は、上側リング15のポンプ本体4上の軸方向位置決めを可能にする。
【0033】
図2は、本発明による上側リング15の斜視図である。この上側リング15は、構造体3の壁2に対しその接触面20を有することを意図している。リング15は、環状形状であり、ポンプ本体4の端部18上にそれを配置するのを容易にするためのものであるショルダ16を含む。図2に示す実施形態ではリング15は、現行有効な「PNEUROP 66061」規格に基づく、12個の規則正しく間隔を開けた貫通穴21をその中に有している。具体的な一実施形態では、この貫通穴は、文献国際公開第2004/020839号パンフレットに記載された型式のものであり、構造体の壁に隣接する、円形断面の同軸の拡大した近位端に続き円形断面の円筒形状の遠位端を備える。実際には、この貫通孔の近位部分は、円形断面の円錐台遠位部分によって貫通孔の遠位部分と連結される円形断面の円筒形状の近位部分を有利に有することができる。
【0034】
この上側リング15も、ポンプ本体の端部18と接触するその環状の内壁23上に規則正しく分布され、それぞれの対の貫通穴21の間に配設される12個の空洞22を備える。
【0035】
図3は、上側リング15の貫通穴21に対応してその中にやはり12個の貫通穴30を有する下側リング17を斜視図で示す。下側リング17をポンプ本体4の端部18の周りで位置決めするのを可能にするために、それは2つの半リング17aおよび17bからなる。
【0036】
図4の分解斜視図は上側リング15、下側リング17およびポンプ本体4の端部18を示す。ポンプ本体4の端部18は、スタッド41を収容するようになされたハウジング40〜22を形成するように、上側リング15のそれぞれの空洞22と連結される空洞40を有する。
【0037】
これらの3つの構成部品は以下のように組み立てられる。
(a)上側リング15がターボ分子ポンプ1の本体4の上側端部18の周りに上から配置される。上側環状リング15上のショルダ16が、ポンプ本体4上のその軸方向位置を調整することを可能にする。
(b)スタッド41がそれらのハウジング40〜22内に下から挿入される。
(c)下側リング17が、上側リング15の下側で、ターボ分子ポンプの端部18の周りにおのおのの半リング17aおよび17bを配設することによって嵌合される。上側リング15および2つの下側半リング17aおよび17bが、環状フランジ14を構成するようにボルト42によって組み立てられる。切欠き部43がボルト42の通過を容易にするためにポンプ本体4に設けられる。このようにすると、上側リング15を手動で定位置に保持しなければならないことなく、ターボ分子ポンプを輸送し、かつそれを構造体またはシャーシ3に固定することが可能になる。
(d)ターボ分子ポンプ4および環状フランジ14を備える組立て品が、リング15および17それぞれを通過する平滑な穴21および30内で、頭付きボルト44によってシャーシ3に固定される。
【0038】
全速回転で作動しているときのロータ5の破壊の場合、ロータ5に蓄えられた運動エネルギはポンプ本体4に伝えられ、ポンプ本体が回転しようとする。本発明は、スタッド材料の弾性的変形特性によってこのエネルギを吸収することを目指す。明らかに、ポンプ本体4は、スタッド41が連結される空洞22および40によって形成される容積の横壁に当接するまで回転移動することができる。剛性および減衰特性の点で、エラストマースタッドの性質は、スタッド41を破壊することなく環状フランジ14のポンプ本体4の端部18に対する小さな変位を可能にするであろう。エネルギはスタッド41を押しつぶすことによって消散される。したがって、このシステムの構造体は、ボルトに加えられる剪断応力が大きく削減されるので、どんな場合もボルト44が定位置に残るであろうことを保証する。
【0039】
さらに、スタッド41のうちの1つがその破壊を防止するための十分なエネルギを吸収できない場合は、スタッド41からの破片が回転方向に環状フランジ14とポンプ本体4の端部18の間に浸透し、その効果はポンプ本体4の回転にブレーキを掛け続けることであり、それがフランジ14内で自由に回転すること防止するであろう。
【0040】
図5は、ポンプを構造体に固定するためのボルト44の平面における断面での、本発明による固定システムを示す。適用可能な規格に応じて、出口オリフィス13の周りに分布されるねじ切りされた穴50が構造体3の壁2に設けられている。関連する平滑な貫通穴21が上側リング15に設けられ、構造体3の壁2に押し付けられるフランジ14の力20によって真空ポンプ1を構造体3に固定するために、ボルトの軸部52が穴21を通過し関連するねじ切りされた穴50内にねじ込まれるように、頭51を有するボルト44が貫通穴中に嵌合される。
【0041】
図6は、スタッド41の平面の断面における、図5の断面と平行な本発明による固定システムの図である。本発明によれば、上側リング15の環状内面23は、空洞22を備える。ポンプ本体4の端部18も空洞40を備える。この空洞22および40が対で協働して、柔軟な材料によって製造されるスタッド41がその中に挿入されるハウジング40〜22を形成する。この材料は、ポリシロキサン、ポリクロロプレンまたはクロロプレンの共重合体、イソプレンまたはイソプレンの共重合体、あるいはイソブチレンまたはイソブチレンの共重合体などのエラストマー材料であることが好ましい。ここでは、使用される材料はイソプレンおよびイソブチレンの共重合体である。
【0042】
図7aは、本発明の異なる実施形態による円筒形スタッドの剪断面内での取付けを示す。上側リング71の空洞70およびポンプ本体の端部73の空洞72によって境界を定められるハウジングの容積は、ポンプ本体の軸に垂直な平面で円形断面を有する。このハウジングの容積は、そのハウジング内でのスタッド74の圧縮を可能にするようになされている。
【0043】
図7bは、別の実施形態による長円形スタッドの剪断面内での取付けを示す。上側リング76の空洞75、ポンプ本体の端部78の空洞77によって制限される容積およびスタッド79は、有利に長円形にすることができる、すなわちそれらの幅より大きな長さを有することができる。この実施形態は、スタッド79の減衰能力を改善することを目的として、同時に規格の幾何学的制約に従って、スタッド79の体積、したがってエラストマーの量を増加させる。
【0044】
図7cは、別の実施形態による円筒形スタッドの圧縮状態にある取付けを示す。ハウジングの上側部分80はスタッド81の寸法に非常に近い寸法およびスタッド81を剪断する鋭い縁部を防止するための丸くした角を有する。下側部分82は、圧縮でより緩やかに作用するためのずっとより大きな曲率半径を有する。この型式の取付けによって、破壊の場合にこの円筒形スタッド81は圧縮荷重がかかる。
【0045】
本発明は説明した実施形態で限定されず、当業者に容易に明らかであろう多くの変形形態にも適している。当然ながら、本発明は、「PNEUROP 66061」規格に従う12本のボルトを有するシステムによって固定される真空ポンプのみならず、それらの寸法に適合する異なる規格化されたシステムによって固定される異なる寸法の真空ポンプにも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明によるターボ分子ポンプ構造を長手方向断面で示し、かつ真空筐体などの構造体へのその固定を示す線図である。
【図2】本発明による上側リングの底面図である。
【図3】本発明による下側リングの上面図である。
【図4】本発明による固定装置の分解斜視図である。
【図5】ポンプを構造体に固定しているボルト面での、本発明による固定システムの断面図である。
【図6】スタッドの平面での本発明による固定システムの断面図である。
【図7a】ハウジングおよび関連するスタッドの変形形態の図である。
【図7b】ハウジングおよび関連するスタッドの変形形態の図である。
【図7c】ハウジングおよび関連するスタッドの変形形態の図である。
【符号の説明】
【0047】
1 真空ポンプ構造
2 壁
3 構造体
4 ポンプ本体
5 ロータ
6 入口オリフィス
7 ポンプ輸送ガス
8 排出オリフィス、出口オリフィス
9 排出ガス
10 モータ
11、12 軸受
13 出口オリフィス
14 環状フランジ
15、71、76 上側リング
16 ショルダ
17 下側リング
17a、17b 半リング
18、73、78 ポンプ本体端部
20 接触面
21、30 貫通穴
22、40、70、72、75、77 空洞
23 内壁
41、74、79、81 スタッド
42 ボルト
43 切欠き部
44 頭付きボルト
50 ねじ切りされた穴
51 頭
52 ボルトの軸部
80 ハウジングの上側部分
82 下側部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁にフランジを押し付けて真空ポンプを構造体に固定するために、頭付きボルトと協働するようになされた穴を含む、真空ポンプを構造体の壁に固定するための環状フランジであって、
上側リングと下側リングの間でポンプ本体(4)の端部をクランプするように協働する上側リングおよび下側リングと、
構造体の壁と接触するように意図された上側リングの面の平面に垂直な平面にある、上側リングの面に形成される少なくとも1つの空洞とを備えることを特徴とする、環状フランジ。
【請求項2】
ポンプ本体と同軸にポンプの入口オリフィスの回りに配設され、壁にフランジを押し付けて真空ポンプを構造体に固定するために、頭付きボルトと協働するようになされた穴を含む環状フランジを備える、真空ポンプを構造体の壁に固定するためのシステムであって、
環状フランジが、上側リングと下側リングの間でポンプ本体の端部をクランプするように協働する上側リングおよび下側リングと、
ハウジングを形成するように第2の空洞と連結され、ポンプ本体の端部の面と接触する上側リングの面内の少なくとも1つの第1の空洞と、ポンプ本体端部の面内の少なくとも1つの第2の空洞と、
ハウジング内に挿入される少なくとも1つの柔軟な材料のスタッドとを備えることを特徴とする、システム。
【請求項3】
第1の空洞が、構造体の壁と接触するように意図された上側リングの面の平面に垂直な平面にある上側リングの面内にある、請求項2に記載の固定システム。
【請求項4】
ハウジングがポンプ本体の軸に垂直な平面内で円形断面を有する、請求項2に記載の固定システム。
【請求項5】
ハウジングがポンプ本体の軸に垂直な平面内で長円形断面を有する、請求項2に記載の固定システム。
【請求項6】
連結されるときハウジングを形成する空洞が、空洞のおのおのに対して異なる曲率半径を有する丸くした形状である、請求項2に記載の固定システム。
【請求項7】
スタッドがエラストマーから製造される、請求項2に記載の固定システム。
【請求項8】
エラストマーが、ポリシロキサン、ポリクロロプレンおよびそれらの共重合体、イソプレンの単独重合体および共重合体ならびにイソブチレンの単独重合体および共重合体から選択される、請求項7に記載の固定システム。
【請求項9】
ポンプ本体と同軸にポンプの入口オリフィスの回りに配設され、壁にフランジを押し付けて真空ポンプを構造体に固定するために、頭付きボルトと協働するようになされた穴を含む環状フランジを備える固定システムによって真空ポンプを構造体の壁に固定する方法であって、
環状フランジが上側リングおよび2つの半リングから構成される下側リングを含み、
方法が、
ポンプ本体の端部面と接触する面内に少なくとも1つの第1の空洞を含み、ポンプ本体の端部面内の第2の空洞と連結され、ハウジングを形成する上側リングが、上からポンプ本体の端部の周りに配置されるステップと、
スタッドが下からハウジング内に挿入されるステップと、
下側リングを構成するおのおのの半リングが上側リングの下で、ポンプ本体の端部の周りに配置されるステップと、
上側リングおよび下側リングがボルトによって組み立てられるステップと、
ポンプ本体の周りにフランジを備える組立て品が頭付きボルトによって構造体の壁に固定されるステップとを含むことを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【公開番号】特開2007−132346(P2007−132346A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−299892(P2006−299892)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(391030332)アルカテル (1,149)
【Fターム(参考)】