説明

真空ポンプ

【課題】特にヘッドが上にくる位置での運転においてその寿命が延長される真空ポンプを提供する。
【解決手段】本発明は、フランジ(28)、ロータ(2)および潤滑剤循環回路を備えた真空ポンプ(1)であって、前記潤滑剤循環回路は、潤滑剤貯蔵室(3)および潤滑剤ポンプ(4;4′)を含み、且つロータを回転可能に支持する転がり軸受(5)を潤滑するために使用される、前記真空ポンプ(1)に関するものである。転がり軸受の寿命を上昇させるために、本発明は、前記潤滑剤循環回路の構成部品として、フランジと転がり軸受との間の真空ポンプ内部に潤滑剤回収室(6)が配置されていることを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータおよび潤滑剤循環回路を備えた真空ポンプであって、前記潤滑剤循環回路は、潤滑剤貯蔵室および潤滑剤ポンプを含み、且つロータを回転可能に支持する転がり軸受を潤滑するために使用される、前記真空ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速回転ロータを有する真空ポンプ特にターボ分子ポンプは、しばしば、ロータを支持するために転がり軸受を有している。毎分数万回転の範囲内にある高速回転に基づき、軸受の寿命のために転がり軸受への潤滑剤の供給が重要である。潤滑剤循環回路を設けることが既知であり、潤滑剤循環回路において、潤滑剤は潤滑剤貯蔵室から受け取られ且つ転がり軸受に供給される。次に潤滑剤は転がり軸受から潤滑剤貯蔵室に戻る。潤滑剤循環回路は循環ポンプにより運転される。潤滑剤循環回路に対する要求は、重力方向に対して種々の方向で真空ポンプを真空にされる装置に固定することが可能であるべきであることによって高められる。
【0003】
成功可能な装置例を欧州特許公開第1477721号が与えている。この文献は2つの供給本体を有するスピンドルを備えた潤滑剤ポンプを提供し、2つの供給本体のうちの1つが潤滑剤室内に存在する潤滑剤内に浸漬されている。このようにして、いずれの方向においても潤滑剤の供給が達成される。
【0004】
しかしながら、重力方向に対して真空ポンプのフランジが転がり軸受の下側に配置されているヘッドが上にくる位置での運転における寿命は真空ポンプのそれとは逆方向の位置においてよりも小さいことがわかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、特にヘッドが上にくる位置での運転においてその寿命が延長される真空ポンプを提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は請求項1の特徴を有する真空ポンプにより解決される。請求項2−6は本発明の有利な変更態様を与える。
潤滑剤貯蔵室に追加して設けられ且つ転がり軸受とフランジとの間の真空ポンプの内部に配置されている潤滑剤回収室は、ロータが停止するまで潤滑剤を転がり軸受内に供給することを可能にする。この潤滑剤は潤滑剤回収室内に集められ且つ真空ポンプの真空領域内に到達可能ではない。これは一方で真空領域の潤滑剤による汚染を阻止し、他方で潤滑剤損失が著しく低下される。したがって、潤滑剤損失による寿命の低下はもはや発生することはない。いつでも潤滑が保証されているので、潤滑剤の使用量が不足する運転状態は回避される。これにより、摩耗が低減されるので、寿命は上昇される。
【0007】
有利な変更態様において、潤滑剤貯蔵室は潤滑剤ポンプの一部であり、これにより、部品が少なく且つほとんど場所をとらない構造が達成される。
一変更態様において、潤滑剤回収室の容積が、循環中に存在する潤滑剤の全量を受入可能なように決定されることにより、真空領域の汚染が阻止される。
【0008】
他の変更態様において、潤滑剤ポンプが、駆動手段の形態により、潤滑剤ポンプの供給動力が真空ポンプ・ロータの回転速度とは無関係である駆動手段を有している。したがって、停止しようとしているロータにおいて潤滑剤が継続して転がり軸受に供給され、これにより、潤滑の中断が阻止される。このようにして、転がり軸受の寿命はさらに上昇される。
【0009】
本発明は、潤滑剤貯蔵室が、潤滑剤の完全な流出を阻止する制限手段を有することにより、有利に改良可能である。これにより、潤滑剤の最低量が常に潤滑剤貯蔵室内に残存し、潤滑剤貯蔵室において潤滑剤は冷却可能である。循環によって潤滑剤内に入り込んだ多少の固体はこの最低量内において沈降可能である。さらに、潤滑剤の単位量当たりの使用時間が小さくなる。
【0010】
制限手段の簡単な形態は、潤滑剤貯蔵室の出口の周りに配置されているカラーである。
一実施例により本発明が詳細に説明され且つ他の利点が明示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1はヘッドが上にくる位置で運転される真空ポンプ1を示す。これは、フランジ28が真空ポンプの下端部に存在することを意味する。この場合、下端部とは、矢印9の矢印先端の方向によって示されている重力方向に関して下端部と理解される。フランジ28は真空にされる装置と結合可能である。ガス入口23を包囲するフランジから真空ポンプの真空領域22が始まる。真空領域内にポンプ能動要素が設けられている。その作用により、真空ポンプと結合されている装置内および真空領域の内部に大気圧よりはるかに低いガス圧力が形成される。例えば、ポンプ能動要素は羽根を支持するロータ・ディスク25を含み、ロータ・ディスクは真空ポンプ・ロータ2に配置されている。ロータ・ディスクに、同様に羽根を支持するステータ・ディスク26が向かい合い、この場合、ロータ・ディスクおよびステータ・ディスクは真空ポンプ・ロータに沿って交互に配置されている。ステータ・ディスクはスペーサ・リング27により軸方向に間隔をなして保持される。ポンプ能動要素により圧縮されたガスはガス出口24を通ってポンプから排出される。真空ポンプ・ロータ2の真空側端部は、摩耗がなく且つ潤滑剤を必要としない永久磁気軸受21により回転可能に支持されている。モータ20は真空ポンプ・ロータを高速で回転させ、この高速回転においてポンプ能動要素がポンプ作用を発生する。
【0012】
真空ポンプ・ロータ2は、永久磁気軸受とは反対側端部において、転がり軸受5により回転可能に支持される。この転がり軸受には、潤滑剤循環回路を通って潤滑剤が供給される。潤滑剤循環回路は潤滑剤貯蔵室3を含み、潤滑剤貯蔵室から潤滑剤が潤滑剤ポンプ供給通路15を介して潤滑剤ポンプ4に到達し、潤滑剤ポンプはその供給動力により潤滑剤循環回路を運転させる。潤滑剤ポンプから外部供給通路10が真空ポンプのハウジングに連絡し且つそこで内部供給通路11と結合されている。内部供給通路は割りナット12の範囲内に流入する。割りナットは真空ポンプ・ロータの端部に固定され且つ円錐形状を有している。真空ポンプ・ロータの回転により割りナットが回転するので、円錐部に沿って遠心力作用により潤滑剤の供給が行われる。割りナットは転がり軸受内に潤滑剤を供給する。そこから潤滑剤は内部戻り通路13内に到達し、内部戻り通路は外部戻り通路14と結合されている。外部戻り通路を通って潤滑剤は最終的に潤滑剤貯蔵室内に戻る。潤滑剤の上記の流れが図1に矢印により表わされている。
【0013】
転がり軸受とフランジとの間で且つ転がり軸受の重力方向下側に潤滑剤回収室6が配置されている。転がり軸受から流出した潤滑剤は、それが内部戻り通路13内に到達する前に潤滑剤回収室内に集められる。真空ポンプが遮断されたときにこのことが特に重要であり、その理由は、予め空気で通気された真空ポンプにおいて潤滑剤ポンプが遮断されたとき、潤滑剤は潤滑剤ポンプ供給通路15を通って潤滑剤貯蔵室3内に戻るからである。これはそこに存在する空気を排除し、空気は次に外部戻り通路14を通って潤滑剤を真空ポンプ内に圧入する。この潤滑剤は潤滑剤回収室により集められる。これにより、循環中に存在する、全潤滑剤の一部の量が真空ポンプ・ロータに沿って真空領域内に流入することが阻止される。したがって、真空ポンプに接続されている室の汚染が阻止される。同時に、潤滑剤が真空領域内に流入することによって潤滑剤が潤滑剤循環回路から失われていくことが阻止される。潤滑剤は真空領域からはもはや潤滑剤循環回路内に戻ることができない。潤滑剤回収室の容積は、循環中に存在する潤滑剤量を受入可能なように決定されている。これにより、潤滑剤の真空領域内への流入がさらにより確実に抑制される。潤滑剤回収室により、ロータが停止するまで、潤滑剤が真空領域を汚染させることなく、潤滑剤を転がり軸受内に供給することが可能である。循環中に存在する潤滑剤の量を制限するために、潤滑剤貯蔵室は制限手段16を有している。
【0014】
図2は、そのハウジング40が潤滑剤貯蔵室を形成する潤滑剤ポンプ4′の断面図を示す。潤滑剤貯蔵室3′は中空軸32により貫通され、中空軸上にロータ33が滑り支持されている。ロータはねじ状通路34を有し、ねじ状通路はロータが回転したときに潤滑剤を中空軸内に供給する。そこから潤滑剤は出口31を通って潤滑剤ポンプから流出し且つ潤滑剤循環回路内に流入する。入口30を通って潤滑剤は潤滑剤循環回路から再び潤滑剤貯蔵室内に流入する。ロータは、コイル35およびロータ側磁石36を含む駆動手段により回転させられる。潤滑剤循環回路内を循環する潤滑剤の量を制限するために、スリーブ状部分16′が設けられ、スリーブ状部分は潤滑剤貯蔵室の出口の範囲内でロータを包囲している。このスリーブにより、潤滑剤貯蔵室内に高さH以下の非循環潤滑剤量37が残留している。転がり軸受の潤滑において加熱された循環潤滑剤量はこのより低温の潤滑剤量と交換されるので、潤滑剤の温度は、全体として、全量が循環する場合よりも低下される。これにより、転がり軸受の寿命はさらに上昇される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】潤滑剤循環回路を備えた真空ポンプの断面図である。
【図2】本発明の一変更態様による潤滑剤貯蔵室を含む潤滑剤ポンプの断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 真空ポンプ
2 真空ポンプ・ロータ
3、3′ 潤滑剤貯蔵室
4、4′ 潤滑剤ポンプ
5 転がり軸受
6 潤滑剤回収室
9 重力方向矢印
10 外部供給通路
11 内部供給通路
12 割りナット
13 内部戻り通路
14 外部戻り通路
15 潤滑剤ポンプ供給通路
16、16′ 制限手段(カラー、スリーブ状部分)
20 モータ
21 永久磁気軸受
22 真空領域
23 ガス入口
24 ガス出口
25 ロータ・ディスク
26 ステータ・ディスク
27 スペーサ・リング
28 フランジ
30 入口
31 出口
32 中空軸
33 潤滑剤ポンプ・ロータ
34 ねじ状通路
35 コイル(駆動手段)
36 磁石(駆動手段)
37 非循環潤滑剤量
40 潤滑剤ポンプ・ハウジング
H 高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ(28)、ロータ(2)および潤滑剤循環回路を備えた真空ポンプ(1)であって、前記潤滑剤循環回路は、潤滑剤貯蔵室(3)および潤滑剤ポンプ(4;4′)を含み、且つロータを回転可能に支持する転がり軸受(5)を潤滑するために使用される、前記真空ポンプ(1)において、
前記潤滑剤循環回路の構成部分として、フランジと転がり軸受との間の真空ポンプ内部に潤滑剤回収室(6)が配置されていることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
前記潤滑剤貯蔵室(3)が潤滑剤ポンプ(4;4′)の一部であることを特徴とする請求項1の真空ポンプ。
【請求項3】
前記潤滑剤回収室(6)の容積が、循環中に存在する、潤滑剤循環回路内の潤滑剤量を受け入れるように決定されていることを特徴とする請求項1または2の真空ポンプ。
【請求項4】
前記潤滑剤ポンプ(4;4′)が、駆動手段(35、36)の形態により、潤滑剤ポンプの供給動力が真空ポンプ・ロータの回転速度とは無関係である前記駆動手段を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの真空ポンプ。
【請求項5】
前記潤滑剤貯蔵室(3)が、潤滑剤の完全な流出を阻止する制限手段(16;16′)を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの真空ポンプ。
【請求項6】
前記制限手段が、潤滑剤貯蔵室(3)の出口の周りに配置されたカラー(16′)を含むことを特徴とする請求項5の真空ポンプ。

【図1】
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【図2】
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