真空リザーバを有する創傷手当て
創傷床からの流体の除去を促進する創傷手当て装置が提供される。装置は、内部の真空リザーバと、創傷床に隣接して配置可能な下側吸収材部材および少なくとも部分的には内部の真空リザーバを画定する上側部材を含む創傷手当て部材と、リザーバに大気圧よりも低い圧力を供給するポートとを含む。創傷手当て部材は、視覚的インジケータを含み、該視覚的インジケータは、リザーバ内の圧力の状況を示す色のしるしと、回路手段と、可視の警告手段と、好適には電子的位置センサと含む。回路手段は、位置センサが創傷手当ての上部部材の相対的位置を検出したときには、可視の警告手段を作動し、真空リザーバの中の大気圧よりも低い圧力の状況の視覚的表示を提供するように適合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本特許出願は、2006年9月7日に米国特許商標局に出願された米国仮特許出願第60/714,805号の優先権と利益とを主張する。
【0002】
(技術分野)
本開示は、開放創を処置する装置に関し、さらに詳細には、創傷手当てに関しており、該創傷手当ては、真空リザーバの中に創傷の流体を吸い出し、創傷の治癒の進行を促進する。
【背景技術】
【0003】
創傷が閉鎖するまで創傷の中心に向かう、創傷に隣接した上皮および皮下の組織の移動を、創傷閉鎖は含む。残念ながら、大きな創傷または感染した創傷では、閉鎖は困難である。そのような創傷において、鬱血の領域(すなわち、組織の局所的な腫れが組織に対する血流を制限する範囲)が、創傷の表面の近くに形成される。充分な血流がなければ、創傷を囲んでいる上皮および皮下の組織は、減少した酸素と栄養としか受け取れないだけでなく、細菌感染と成功裏に戦うことがあまりできなくもなり、従って、自然に創傷を閉鎖することがあまりできなくなる。そのような創傷は、長年、医療従事者に対して課題を提示してきた。
【0004】
創傷手当てが、開放創の治癒を保護および/または促進するために、医療業界において使用されてきた。1つのポピュラーな技術は、陰圧療法の使用であり、吸引または真空療法としても公知である。過度の創傷流体、すなわち、滲出物が除去されることを可能にしながら、同時に、創傷を孤立させて創傷を保護し、結果として、回復時間に影響するように、様々な陰圧デバイスが開発されてきた。様々な創傷手当てが、開放創の治癒を高めるように改変されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
創傷手当てを使用するときに、継続的に対処される必要のある課題は、使用の容易さ、創傷を治癒する効率、および一定のまたは可変の陰圧源を含む。従って、開放創に対する陰圧創傷手当てを常に改善する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの好適な実施形態において、創傷手当て装置は、創傷床に対して配置するような大きさにされた創傷手当て部材を含む。創傷手当て部材は、内部の真空リザーバを含み、かつ、大気圧よりも低い圧力を真空リザーバに加えて、創傷床からの流体の除去を促進するように、真空リザーバと連通しているポートを有する。創傷手当て部材は、関連するアクセスドアを含み、かつ、真空リザーバを実質的に囲む閉じた位置と真空リザーバへのアクセスを可能にする開いた位置との間で選択的に動くことができる。
【0007】
創傷手当て部材は、好適には、創傷床に隣接して配置可能な下側吸収材部材と、上側部材とを含む。上側部材は、少なくとも部分的には、真空リザーバを画定する。アクセスドアは、上側部材に取り付けられている。下側部材は、フォーム、不織布の複合織物、セルロース織物、高吸収性ポリマ、ヒドロゲルおよびそれらの組み合わせから成る群から選択された材料を含み得る。下側部材はまた、薬物、抗感染薬、ポリヘキサメチレンビグアニド(以下では「PHMB」)のような殺菌剤、抗生物質、鎮痛剤、治癒因子、ビタミン、成長因子、創面切除剤および栄養剤のうちの少なくとも1つを含む。創傷手当て部材は、粘着性の部材を含み得、該粘着性の部材は、創傷床付近に固定されるように適合され、創傷手当て部材と創傷床を囲む組織との間に封鎖を提供する。
【0008】
創傷手当て装置はさらに、ポートと流体連通している真空源をさらに含み得る。真空源は、約20mmHgと約500mmHgとの間の範囲にある、大気圧よりも低い圧力を真空リザーバに供給する。ポートは、弁手段を含み得る。
【0009】
創傷手当て部材は、真空リザーバの中の圧力のレベルを示す視覚的圧力インジケータを含み得る。好適な視覚的圧力インジケータは、色のしるしを含み、該色のしるしは、真空リザーバの中の大気圧よりも低い圧力の状態に対応する。好適な視覚的圧力インジケータは、位置センサを含む。視覚的インジケータは、回路手段と可視の警告手段とを含む。回路手段は、位置センサが創傷手当て部材の上部部材の相対的位置を検出したときには、可視の警告手段を作動するように適合されていることにより、真空リザーバの中の大気圧よりも低い圧力の状態の視覚的表示を提供する。
【0010】
別の実施形態において、創傷手当て装置は、創傷床に対して配置するような大きさにされた創傷手当て部材を含む。創傷手当て部材は、内部の真空リザーバを含み、かつ、大気圧よりも低い圧力を真空リザーバに加えて、創傷床からの流体の除去を促進し、創傷の治癒を刺激するように、真空リザーバと連通しているポートを有する。創傷手当て部材は、真空リザーバの中の圧力のレベルを示すために関連付けられた視覚的圧力インジケータを含む。視覚的圧力インジケータは、真空リザーバの中の圧力の状態に対応する複数の色を有する色のしるしを含み得る。創傷手当て部材は、創傷床に隣接して配置可能な下側吸収材部材と、少なくとも部分的には前記真空リザーバを画定する上側部材とを含む。上部部材と下側吸収材部材とのうちの少なくとも1つは、視覚的圧力インジケータを取り付けられている。視覚的圧力インジケータは、電子的位置センサを含み得る。視覚的インジケータは、回路手段と可視の警告手段とをさらに含み得る。回路手段は、位置センサが創傷手当て部材の上部部材の相対的位置を検出したときには、可視の警告手段を作動するように適合されていることにより、真空リザーバの中の大気圧よりも低い圧力の状態の視覚的表示を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
対象の創傷手当ての様々な実施形態が図面を参照して本明細書に記述される。
【0012】
本開示の複合創傷手当て装置は、真空リザーバの使用を介して、創傷の治癒を促進する。真空リザーバは、真空源またはポンプを継続的に使用することなく、真空圧または大気圧よりも低い圧力を創傷にかけて、液体の滲出物を含む創傷流体を創傷床から効果的に吸い出す。従って、複合創傷手当てが滲出物で浸されるかまたは創傷が治癒されるまで、真空圧が創傷の性質および酷さに従って一度または様々な間隔で加えられ得る。創傷手当てが滲出物で浸されかつ創傷が治癒されていない場合には、複合創傷手当ての一定および/または全ての層が取り替えられ得、大気圧よりも低い圧力を加える工程が繰り返され得る。
【0013】
ここで図1〜図3を参照すると、本開示の好適な実施形態に従った複合創傷手当て100は、並列されたまたは重ねられた関係で配置された複数の層を有するものの形式で例示されている。複数の層は、限定するものではないが、下側または基部層102と、吸収材/パッキング層104と、粘着性の層106と、内部の真空リザーバ110を含むおよび/または画定する上部層108とを含む。
【0014】
基部層102は創傷床「w」と直接的に接触する。基部層102は、一般的に、多孔性であり、創傷床への大気圧よりも低い圧力の通過を可能にする。1つの好適な実施形態において、基部層は「非粘着性」の材料を含む。本明細書において使用される場合、「非粘着性」は創傷床において、またはその周囲において組織に粘着しない材料を指す。本明細書において使用される場合、「多孔性」は多数の小さい穿孔または細孔を含む材料を指し、該多数の小さい穿孔または細孔は、あらゆる種類の創傷流体が上の手当て層まで材料を通過することを可能にする。創傷の滲出物が創傷床に戻るように流れないために、多孔性の材料を通る創傷流体の通過は一方向性であり得る。この方向性の流れの特徴は、材料層の中に付与された方向性のアパーチャ、基部層102に対する異なる吸収作用の材料の積層、または方向性の流れを助長する特定の材料の選択の形式であり得る。基部層102として使用される例示的な材料は、TycoHealthcareの一部門であるKendall Corp.によって商標XEROFLO(登録商標)の下で販売されている接触層を含む。代替案においては、基部層102は粘着性の材料を含み得る。
【0015】
さらに、ヒドロゲルおよび薬物のような薬剤が、基部層102に結合またはコーティングされ、創傷における生物汚染度を減少させ、治癒を促進し、手当ての交換または除去と関連する痛みを減少させる。薬物は、例えば、抗菌剤、成長因子、抗生物質、鎮痛剤、創面切除剤などを含む。さらに、鎮痛剤が使用されるときには、鎮痛剤は、手当ての除去または交換に先立ち、その薬剤の放出を可能にするメカニズムを含み得る。放出メカニズムの例示的な引き金は、温度変化であり得る。
【0016】
基部層102に近い層または基部層102を作る複合構造は、吸収材/パッキング層104である。創傷手当て100の吸収材/パッキング層104は、創傷流体を吸収および捕獲して排出することを意図されている。例示的な吸収材料は、フォーム、不織布の複合織物、ヒドロゲル、セルロース織物、高吸収性ポリマ、およびそれらの組み合わせを含む。一般的に、吸収材/パッキング層104は、最大で約100立法センチメートル(cc)以上の創傷流体を吸収し得る。好適には、吸収材料は、TycoHealthcareの一部門であるKendall Corp.によって商標KERLIX(登録商標)の下で販売されている抗菌性の手当てを含む。1つの好適な実施形態において、吸収材/パッキング層104は、様々な形状の創傷床に適合するように事前形成され得るかまたは形作られ得る。吸収材/パッキング層104は任意の適切な形状に形成され得るということを、当業者は認識する。吸収材/パッキング層104は複数の層を含み得る。形状に関して唯一必要なことは、吸収材/パッキング層104が特定の形状の創傷を処置することに適していることである。
【0017】
さらに、パッキング/吸収材層104は薬物を用いて処理される。薬物は、例えば、殺菌剤または他の適切な抗菌剤もしくは抗菌剤の組み合わせのような抗感染剤、ポリヘキサメチレンビグアニド(以下では「PHMB」)、抗生物質、鎮痛剤、ビタミンのような治癒因子、成長因子、栄養剤など、および等浸透圧の塩水を用いた単純な流水洗浄を含む。
【0018】
図1〜図3を続けて参照すると、粘着性の層106は、創傷床を囲む創傷手当て100の周囲を少なくとも含み、創傷床「w」の周囲に封鎖を提供する。例えば、封鎖メカニズムは、創傷床「w」を囲む層に結合される任意の粘着剤、または皮膚に直接的に塗布された粘着剤であり得る。粘着剤は、創傷床「w」の皮膚を囲んでいる組織「t」、例えば、創傷周囲の範囲に合った接着を提供し、接触悪化を伴うことなく、皮膚での使用に耐えることができなければならない(例えば、粘着剤は、好適には、刺激することなくかつ感作しないものであるべきである)。粘着剤は半透過性であり、接触された皮膚が水分を透過することが可能であり得るか、または不透過性であり得る。さらに、粘着剤は、加熱または所与の流体溶液もしくは化学反応のような外部刺激によって活性化または不活性化され得る。粘着剤は、例えば、TycoHealthcareの一部門であるKendall Corp.によって商標ULTEC(登録商標) Hidrocollid dressingの下で販売されている手当てを含む。
【0019】
粘着性の層106はまた、吸収材/パッキング層104の近位の完全な層の形式であり得るか、または、好適には、示されているように環状または「ドーナツ形」であり得る。好適には、粘着性の層106は、吸収材/パッキング層104の容易な取替えを可能にするために、吸収材/パッキング層104に結合されない。好適な実施形態において、粘着性の層106は、少なくとも基部層102の周辺に結合される。次に、上部層108の周辺部分108aは、粘着性の層106に結合されて、創傷の周辺付近に封鎖を提供し得る。あるいは、粘着性の層106は、上部層108の周辺部分108aに配置され、創傷床「w」付近で組織「t」に固定され得るが、基部層102には固定されないことがあり得る。追加の代替案において、上部層108の周辺部分108aは、粘着面を含み得る。リムーバブル接触ライナーがまた、使用に先立ち、粘着性の層106の粘着面を保護するために使用され得ることが見込まれている。
【0020】
上部または上側層108は、一般的には、創傷手当て100の上部を封鎖し、創傷手当て100の中の適切な真空レベルを維持することを助ける。1つの好適な実施形態において、上部層108は、TycoHealthcareの一部門であるKendall Corp.による商標POLYSKIN(登録商標) IIの下で製造されている透明な可撓性の手当てを含む。POLYSKIN(登録商標) IIは透明な半透過性の材料であり、それが創傷部位での水分と酸素との交換を可能にし、細菌および流体の汚染に対するバリアを提供する。代替案において、上部層110は不透過性であり得る。さらなる代替案において、上部層108は、例えば、ドームの形状の弾力的な、例えば、エラストマーの材料を含み得る。
【0021】
上部層108は、封鎖されたまたは包み込まれた真空リザーバ110を画定する。真空リザーバ110は、好適には、創傷床「w」の治癒を開始または完了すること、すなわち、大気圧よりも低い圧力を創傷にかけながら、創傷床「w」から離れるように創傷流体および滲出物を吸い出すことに充分な所定の期間の間、適切な真空レベルで維持される。治療効果を維持するために、必要に応じて真空が再び適用される。真空は所望に応じて継続または中断され得る。
【0022】
図1に最良に示されているように、真空リザーバ110は上部層108のドームの中に画定される。図2に示されているように、真空が適用されると、上部層108のドームが、吸収材/パッキング層104に向けて下向きに引っ張られ、真空または大気圧よりも低い圧力のリザーバ110が上部層108の下に作成される。一般的に、上部層108は、真空リザーバ110と流体連通する真空ポートまたはコネクタ114を含む。好適には、真空ポート114は、(参照番号116で概略的に示されている)一方向弁を含み、該一方向弁は、一方向性の流れの吸引を提供し、かつ、真空源112に対する複合創傷手当て100の接続を可能にする手段を提供し得る。一方向弁116は真空ポート114の中に組み込まれ得るか、または、代替的に、真空源112と「並び」得る。可撓性の管118が真空ポート114と真空源112とに接続される。管118は真空源112から創傷に吸引を与え、創傷流体が創傷手当て100に伝えられることを可能にする。管118は、PVC、珪素を基にした材料、または他の可撓性の材料(ポリマ)から製作され得る。管118は、任意的に、創傷の排液および破片のための収集キャニスター120への接続を含み得る。従って、真空源112は、複合創傷手当て100と管118とを通してキャニスター120の中に創傷流体を吸い出し得る。本開示の好適な実施形態において、キャニスター120はポータブルであり、その結果、患者は、一定の位置に拘束されるよりも、むしろ動き回る自由を有する。キャニスター120はまた、吸収材料を収容し、創傷流体および滲出物を吸収し得る。
【0023】
Grossに対する同一人に譲渡された米国特許第5,549,584号に開示されたような手動ポンプのような手段によって、真空源112は真空を創傷に適用しており、該特許の全内容は、本明細書において参考として援用される。代替案において、真空源112は自動ポンプを含み得る。一般的に、真空レベルは、約20mmHg〜約500mmHgの間、さらに好適には、約40mmHgと約125mmHgとの間の範囲にある。自動ポンプは、急性病患者または亜急性病患者の治療施設において利用可能なもののような壁(wall)吸引装置であり得る。自動ポンプはポータブルポンプの形式であり得る。ポータブルポンプは小さいまたは小型のポンプを含み得、該小さいまたは小型のポンプは、適切な治療の真空レベルを維持するか、または適切な治療の真空レベルにまで吸い出す。好適な実施形態において、ポンプは、ポータブルで軽量なバッテリ動作の吸引ポンプであり、該ポンプは管の遠位端に取り付ける。一般的に、真空源112は創傷を治癒するための最適な真空圧を加える調整手段を有する。さらに、最適な真空圧が達成されない場合には、真空源112は、好適には、システム内の漏れを検出するメカニズムを含む。好適には、真空源112はまた、最適な真空圧が達成されないときを知らせるインジケータ(図示せず)を含む。代替案において、圧搾バルブの形式のハンドポンプまたはフットポンプが真空源112として作用し得る。
【0024】
好適には、ポンプは真空源112として使用される。一般的なポンプは、ダイアフラムまたはボイスコイル作動の方式を含み、最大で50cc/分の可変の真空を送達し得る。
【0025】
ここで図1〜図4を参照すると、上部層108はアクセスドア122を含み、創傷手当て100の内部および/または創傷床「w」へのアクセスを提供し得る。ドア122は上部層108と一体で形成されたフラップであり得るか、またはヒンジなどを介して上部層108に接続された別個のコンポーネントであり得る。ドア122は好適には再封鎖可能であり、真空リザーバ110の完全性を維持し、かつ、上部層108に対する封鎖を提供する。ドア122を解放可能に封鎖する1つの適切な手段は、スナップフィット配置、舌と溝との配置、「zip lock(登録商標)」配置、粘着剤、VELCRO(登録商標)などを含む。ドア122は好適には創傷床「w」へのアクセスを提供し、医師が、創傷の状態を監視すること、吸収材/パッキング層104を交換すること、または必要に応じて、抗菌剤、成長因子、創面切除剤、または他の創傷治癒剤のような追加の医療処置を創傷に適用することを可能にする。所望の手順が完了すると、ドア122は上部層108に再封鎖され、真空リザーバ110の完全性を維持する。図4は、ドア122が開いた位置にあるときの、ドア122を通した吸収材/パッキング層104の除去を例示する。記述されたように、続けて、新たな吸収材/パッキング層104がドア122を通して導入され、創傷床「w」から滲出物を吸収し得る。
【0026】
ここで図1〜図2と共に図3および図5を参照すると、創傷手当て100は上部層108に取り付けられた視覚的インジケータデバイス124を含み、創傷手当て100の中の真空圧の視覚的な表示を提供し得る。視覚的インジケータデバイス124は、上部層108と創傷床との相対的な位置と、従って創傷手当て100の中の真空の状態とを検出する少なくとも1つの電子的位置インジケータを含み得る。本実施形態に従って、上部層108は、上部層108の構成材料、または上部層108に組み込まれた強化(例えば、エラストマー)部材のいずれかを介した弾力特性を有し得る。
【0027】
図6に描かれた一実施形態において、視覚的インジケータデバイス124は、少なくとも1つ、好適には3つの位置感知スイッチ126a〜126cと、自己動力の電子信号送信モジュール128とを含む。モジュール128は、電子信号送信モジュールの回路基板130と、バッテリ電源132と、回路基板130に電気的に接続138された3つの発光ダイオード(LED)134a〜cおよび/またはラウドスピーカ136を含む少なくとも1つのトランスデューサとを含む。LED134a〜cは、赤色、黄色および緑色にそれぞれ色分けされている。位置感知スイッチ126a〜126cはそれぞれ、圧力センサであり得、該圧力センサは、視覚的インジケータデバイス124の接触140a、140bを電気的に橋絡する。
【0028】
示された実施形態において、3つの位置スイッチ126a〜cは上部層108に取り付けられる。スイッチ126a〜cは、一連の直径が減少する環状の同軸要素として配置されるスイッチプレートまたは接触アームを含む。あるいは、スイッチは構成が線形であり、上部層108から下向きに垂れ下がり得る。スイッチ126a〜cのスイッチプレートまたは接触アームは所定の長さであり、真空リザーバ110の中で上部層108から下向きに伸びている(図4および図5)。圧力インジケータ124の外側スイッチ126aの接触アームは最長の長さを有する。中間スイッチ126bの接触アームは外側リング126aの接触アームの長さを下回る長さを有する。内側スイッチ126cの接触アームは最短の長さを有する。スイッチ126a〜cの接触140aは、接触アームの中に統合される。スイッチ126a〜cの接触140bは、それぞれの接触アームに対して概ね長手方向の配列で、吸収材/パッキング層104の上表面に配置され得るか、または吸収材/パッキング層104の中に統合され得る。あるいは、位置センサは磁気的近接センサであり得る。自己動力の電子信号送信モジュール130は、スイッチを閉じる際に光および/または可聴音などを発するように適合された任意の従来のモジュールであり得る。
【0029】
上部層108が、真空リザーバ110の中の真空圧によって、図2の真空状態に向けて引き下ろされたときに、内側スイッチ126cは、吸収材/パッキング層104の中に配置されたそれぞれの結合器または接触140bと接触し、それによって視覚的インジケータデバイス124に電圧を加え、上部層108に取り付けられた圧力インジケータデバイスの中の緑色LED134cを照明する。LED134cの緑色の光は、真空リザーバ110の完全な真空状態を表示する。理解されるように、スイッチ126a、126bはまた、上部層108のこの真空状態において、それぞれの結合器と接触し得る。しかしながら、スイッチ126cがそれぞれの結合器と接触しているときに、これら2つのスイッチの電気接触を停止する回路網を、回路基板130が組み込むことを想定される。
【0030】
真空圧が減少し、上部層108のドームが、例えば、上に記述された上部層108の弾力特性を介して、図1の通常の状態を取り始めると、内側スイッチ126cは吸収材/パッキング層104との接触を失うが、中間スイッチ126bが、関連する接触140bとの電気接触を維持/確立する。中間スイッチ126bの電気接触は、黄色LED134bの照明をもたらす。黄色LED134bは、真空リザーバ110の部分的な真空状態または不十分な真空状態を表す。真空圧がさらに減少し、上部層108が、図1の完全に膨張したまたは通常の状態に向けて動くと、外側スイッチ126aが、吸収材/パッキング層104の中で、関連する接触140bと接触している残りのスイッチとなる。この状況において、赤色LED134aが電圧を加えられて医師に見えるようになり、真空リザーバの中の真空が消散したまたはほとんど消散した(すなわち、大気圧よりも低い圧力がほとんど存在しないまたはもはや存在しない)という警告を必ず提供する。次に、真空源112は手動または自動のいずれかで作動され、真空リザーバ110の中に真空状態を再確立する。さらなる真空の喪失は、残りのスイッチ126cが接触を失うことをもたらし、光は患者に見えなくなる。
【0031】
回路基板130は、上記の制御停止回路網がないことがあり得るということがまた想定されている。結果として、手当て100の完全な真空状態においては、緑色、黄色および赤色のLED134a〜134cのそれぞれが照明されるが、部分的な真空状態においては、黄色および赤色のLED134a、134bが照明され、警告状態においては、赤色LED134aが照明される。上記の真空状態のうちの任意のものが実現されたときには、ラウドスピーカ136が聴覚アラームを発し得ることがさらに想定されている。
【0032】
図7は、視覚的圧力インジケータ124の代替の実施形態を例示している。この実施形態に従って、視覚的圧力インジケータ124は吸収材/パッキング層104に取り付けられるか、または吸収材/パッキング層104に並べられた関係で配置される。上部層108は好適には透明であり、上部層108を通して、圧力センサ124を見ることと真空リザーバ110の中を見ることとを可能にする。それぞれのスイッチ126a〜cが上部層108に向けて上側に伸びるように、視覚的圧力インジケータ124の配置は逆にされるかまたは仰向けに配置される。それぞれの結合器または接触140bは、上部層108の中に組み込まれる。完全な真空状態または図2の状態において、上部層108の接触140bは、スイッチ126cに接触し、それによりLED134cに電圧を加え、緑色を医師に表示する。治癒の間に、真空リザーバが真空を失い始めると、上部層108が図1の開いた状態に向けて動き、内側のスイッチ126cは上部層108のそれぞれの結合器140bとの接触を失い、黄色LED134bとの接触をもたらし、真空リザーバ110の部分的な真空状態を示す。真空リザーバ110の中の真空の継続した喪失は、外側のスイッチ126cと結合器140bの電気接触をもたらす。外側のスイッチ126cとLED134cのこの接触は、赤色の存在によって示され、真空リザーバ110の中の真空の喪失またはほぼ喪失に対応し得、従って、医師が真空源112を作動すること、または他の医療手段を遂行することを助長する。
【0033】
図8は別の実施形態を例示しており、LED134a〜134cは、追加の視覚的しるしで補われている。視覚的しるしは様々な記号を含み得、該様々な記号は真空リザーバ110の中の真空の状態に対応している。所望のレベルの真空に到達したときには、「スマイリー」記号152が照明して適切な真空状態を示す。部分的な真空状態は、「警告三角形」記号154の照明となる。真空の喪失またはほぼ喪失は、「八角形」記号(真空がない)156の照明となる。当業者はこれらの目的を達成する電子回路網の設計を容易に理解する。
【0034】
図9〜図11は、本開示の代替の実施形態を例示している。この実施形態に従って、視覚的インジケータデバイス124は、上部層108の下側に配置、例えば、上部層108にプリントされている一連のリング200、202、204を含み得、該一連のリング200、202、204は、示されているような同軸の関係に配置されている。リングは、外側リング200と中間リング202と内側リング204とを含み、赤色、黄色および緑色にそれぞれ色分けされている。各色分けされたリング200、202、204は、真空リザーバ110の中の真空の状態または状況に従って、吸収材/パッキング層104に接触するように配置されている。図10に描かれた完全な真空の下では、全てのリング200、202、204が吸収材/パッキング層104に接触して作動され、創傷手当ての上部を通して見ることができる。リザーバの中の真空が消散するかまたは減少されると、上部層110が吸収材/パッキング層104から離れるように引っ張られる。エラストマーのドームを有する実施形態において、真空が減少されると、内側リング204が最初に接触を失い、中間リング202そして外側リング200がそれぞれ続く。各色分けされたリング200、202、204が吸収材/パッキング層104との接触を失うと、それぞれのリングは創傷手当て100の上からあまり見えなくなるか、または見えなくなり、その結果、真空リザーバ内の真空の状況を医師に示す。リング200、202、204は、図1〜図6の実施形態と共に上で述べられたように作動される電子スイッチを組み込み得る。あるいは、各リング200、202、204は、分析テストストリップデバイスを組み込み得、該分析テストストリップデバイスは、例えば、吸収材/パッキング層104の中に含まれた滲出物における所定の検体の存在を検出し得る。所定の検体との接触の際に、各リング200、202、204のテストストリップデバイスは、赤色、黄色または緑色のような色になる。それぞれのリング200、202、204が所定の検体との接触を失った場合に、それぞれのリングの色は褪せ得るか、または無色になり得る。本開示との使用に適した色分けされたテストストリップデバイスの一例は、Carrollらに対して2006年5月23日に発行された米国特許第7,049,130号に開示されており、該特許の全内容は本明細書において参考として援用される。当業者は、テストストリップデバイスのパラメータおよび特性を決定して、上に述べられた目的を遂行し得る。
【0035】
さらに、図9〜図11の実施形態のドア122は、ヒンジ208に沿って旋回するように適合され、真空リザーバ110へのアクセスを提供する。ドア122の開口部が、創傷手当て102の周縁に隣接して配置され、ヒンジ208に沿ってドア122を旋回するまたは開く際に、比較的大きなアクセス開口部を提供する。これが吸収材/パッキング層104の除去および置換を容易にする。
【0036】
創傷手当て装置は外部の手段または塗布を組み込み、組織の成長および/または治癒を刺激し得るということがさらに想定されている。例えば、補助的な処置装置が創傷手当て装置に組み込まれ、例えば、治癒を刺激するために創傷範囲に熱または振動エネルギーを導く、および/または真空による滲出物の除去をさらに助長する、および/または皮膚を通して人間の体に様々な薬剤を導入するなどの、組織の処置のための機械的エネルギーを伝え得る。酸素、化学物質、細菌および/または温度のセンサを含む他のタイプのセンサがまた、創傷手当て装置への組み込みを想定されている。創傷範囲付近での酸素の検出は、医師が創傷の治癒の状態を決定することを助ける。上昇された温度の存在が感染を示し得る。
【0037】
本開示が例示されかつ記述されてきたが、本開示の精神を全く逸脱することなく、様々な改変および置換が行われ得るので、示された詳細に限定されることは意図されていない。例えば、2006年9月6日に出願された仮特許出願第60/714,812号に対する優先権を主張する、Express Mail Certificate No.EL985194525 USの下で本明細書と共に同時に出願された同一出願人に譲渡された特許出願の主題と、2006年9月7日に出願された仮特許出願第60/714,912号に対する優先権を主張する、Express Mail Certificate No.EV879103054 USの下で本明細書と共に同時に出願された同一出願人に譲渡された特許出願の主題とが、本開示に援用される(各出願の全内容は本明細書において援用されている)ことが想定されている。従って、本明細書において開示された本発明のさらなる改変および均等物が、単に普通の実験を行って、当業者に見出され得、そのような全ての改変および均等物は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本開示の精神および範囲を逸脱することはないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、創傷床の上の、本開示の原理に従った創傷手当て装置の側面断面図である。
【図2】図2は、図1の図と類似の図であり、大気圧よりも低い圧力を受けた創傷手当てを例示している。
【図3】図3は、創傷手当ての上面図である。
【図4】図4は、図2の図と類似の図であり、内部の真空リザーバへのアクセスを可能にする開いた状態のアクセスドアを例示している。
【図5】図5は、図3の5−5線に沿って取られた断面図であり、視覚的圧力インジケータを例示している。
【図6】図6は、電子的視覚インジケータデバイスのコンポーネントを例示している構成図である。
【図7】図7は、図1の図と類似の図であり、本開示の代替の実施形態を例示している。
【図8】図8は、視覚的インジケータデバイスの代替の視覚的しるしの配置を例示している図である。
【図9】図9は、創傷床の上のかつ真空の存在しない代替の創傷手当ての側面断面図である。
【図10】図10は、図9の図と類似の図であり、大気圧よりも低い圧力を受けたときの収縮した状態における創傷手当てを例示している。
【図11】図11は、図9の創傷手当ての上面図である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本特許出願は、2006年9月7日に米国特許商標局に出願された米国仮特許出願第60/714,805号の優先権と利益とを主張する。
【0002】
(技術分野)
本開示は、開放創を処置する装置に関し、さらに詳細には、創傷手当てに関しており、該創傷手当ては、真空リザーバの中に創傷の流体を吸い出し、創傷の治癒の進行を促進する。
【背景技術】
【0003】
創傷が閉鎖するまで創傷の中心に向かう、創傷に隣接した上皮および皮下の組織の移動を、創傷閉鎖は含む。残念ながら、大きな創傷または感染した創傷では、閉鎖は困難である。そのような創傷において、鬱血の領域(すなわち、組織の局所的な腫れが組織に対する血流を制限する範囲)が、創傷の表面の近くに形成される。充分な血流がなければ、創傷を囲んでいる上皮および皮下の組織は、減少した酸素と栄養としか受け取れないだけでなく、細菌感染と成功裏に戦うことがあまりできなくもなり、従って、自然に創傷を閉鎖することがあまりできなくなる。そのような創傷は、長年、医療従事者に対して課題を提示してきた。
【0004】
創傷手当てが、開放創の治癒を保護および/または促進するために、医療業界において使用されてきた。1つのポピュラーな技術は、陰圧療法の使用であり、吸引または真空療法としても公知である。過度の創傷流体、すなわち、滲出物が除去されることを可能にしながら、同時に、創傷を孤立させて創傷を保護し、結果として、回復時間に影響するように、様々な陰圧デバイスが開発されてきた。様々な創傷手当てが、開放創の治癒を高めるように改変されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
創傷手当てを使用するときに、継続的に対処される必要のある課題は、使用の容易さ、創傷を治癒する効率、および一定のまたは可変の陰圧源を含む。従って、開放創に対する陰圧創傷手当てを常に改善する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの好適な実施形態において、創傷手当て装置は、創傷床に対して配置するような大きさにされた創傷手当て部材を含む。創傷手当て部材は、内部の真空リザーバを含み、かつ、大気圧よりも低い圧力を真空リザーバに加えて、創傷床からの流体の除去を促進するように、真空リザーバと連通しているポートを有する。創傷手当て部材は、関連するアクセスドアを含み、かつ、真空リザーバを実質的に囲む閉じた位置と真空リザーバへのアクセスを可能にする開いた位置との間で選択的に動くことができる。
【0007】
創傷手当て部材は、好適には、創傷床に隣接して配置可能な下側吸収材部材と、上側部材とを含む。上側部材は、少なくとも部分的には、真空リザーバを画定する。アクセスドアは、上側部材に取り付けられている。下側部材は、フォーム、不織布の複合織物、セルロース織物、高吸収性ポリマ、ヒドロゲルおよびそれらの組み合わせから成る群から選択された材料を含み得る。下側部材はまた、薬物、抗感染薬、ポリヘキサメチレンビグアニド(以下では「PHMB」)のような殺菌剤、抗生物質、鎮痛剤、治癒因子、ビタミン、成長因子、創面切除剤および栄養剤のうちの少なくとも1つを含む。創傷手当て部材は、粘着性の部材を含み得、該粘着性の部材は、創傷床付近に固定されるように適合され、創傷手当て部材と創傷床を囲む組織との間に封鎖を提供する。
【0008】
創傷手当て装置はさらに、ポートと流体連通している真空源をさらに含み得る。真空源は、約20mmHgと約500mmHgとの間の範囲にある、大気圧よりも低い圧力を真空リザーバに供給する。ポートは、弁手段を含み得る。
【0009】
創傷手当て部材は、真空リザーバの中の圧力のレベルを示す視覚的圧力インジケータを含み得る。好適な視覚的圧力インジケータは、色のしるしを含み、該色のしるしは、真空リザーバの中の大気圧よりも低い圧力の状態に対応する。好適な視覚的圧力インジケータは、位置センサを含む。視覚的インジケータは、回路手段と可視の警告手段とを含む。回路手段は、位置センサが創傷手当て部材の上部部材の相対的位置を検出したときには、可視の警告手段を作動するように適合されていることにより、真空リザーバの中の大気圧よりも低い圧力の状態の視覚的表示を提供する。
【0010】
別の実施形態において、創傷手当て装置は、創傷床に対して配置するような大きさにされた創傷手当て部材を含む。創傷手当て部材は、内部の真空リザーバを含み、かつ、大気圧よりも低い圧力を真空リザーバに加えて、創傷床からの流体の除去を促進し、創傷の治癒を刺激するように、真空リザーバと連通しているポートを有する。創傷手当て部材は、真空リザーバの中の圧力のレベルを示すために関連付けられた視覚的圧力インジケータを含む。視覚的圧力インジケータは、真空リザーバの中の圧力の状態に対応する複数の色を有する色のしるしを含み得る。創傷手当て部材は、創傷床に隣接して配置可能な下側吸収材部材と、少なくとも部分的には前記真空リザーバを画定する上側部材とを含む。上部部材と下側吸収材部材とのうちの少なくとも1つは、視覚的圧力インジケータを取り付けられている。視覚的圧力インジケータは、電子的位置センサを含み得る。視覚的インジケータは、回路手段と可視の警告手段とをさらに含み得る。回路手段は、位置センサが創傷手当て部材の上部部材の相対的位置を検出したときには、可視の警告手段を作動するように適合されていることにより、真空リザーバの中の大気圧よりも低い圧力の状態の視覚的表示を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
対象の創傷手当ての様々な実施形態が図面を参照して本明細書に記述される。
【0012】
本開示の複合創傷手当て装置は、真空リザーバの使用を介して、創傷の治癒を促進する。真空リザーバは、真空源またはポンプを継続的に使用することなく、真空圧または大気圧よりも低い圧力を創傷にかけて、液体の滲出物を含む創傷流体を創傷床から効果的に吸い出す。従って、複合創傷手当てが滲出物で浸されるかまたは創傷が治癒されるまで、真空圧が創傷の性質および酷さに従って一度または様々な間隔で加えられ得る。創傷手当てが滲出物で浸されかつ創傷が治癒されていない場合には、複合創傷手当ての一定および/または全ての層が取り替えられ得、大気圧よりも低い圧力を加える工程が繰り返され得る。
【0013】
ここで図1〜図3を参照すると、本開示の好適な実施形態に従った複合創傷手当て100は、並列されたまたは重ねられた関係で配置された複数の層を有するものの形式で例示されている。複数の層は、限定するものではないが、下側または基部層102と、吸収材/パッキング層104と、粘着性の層106と、内部の真空リザーバ110を含むおよび/または画定する上部層108とを含む。
【0014】
基部層102は創傷床「w」と直接的に接触する。基部層102は、一般的に、多孔性であり、創傷床への大気圧よりも低い圧力の通過を可能にする。1つの好適な実施形態において、基部層は「非粘着性」の材料を含む。本明細書において使用される場合、「非粘着性」は創傷床において、またはその周囲において組織に粘着しない材料を指す。本明細書において使用される場合、「多孔性」は多数の小さい穿孔または細孔を含む材料を指し、該多数の小さい穿孔または細孔は、あらゆる種類の創傷流体が上の手当て層まで材料を通過することを可能にする。創傷の滲出物が創傷床に戻るように流れないために、多孔性の材料を通る創傷流体の通過は一方向性であり得る。この方向性の流れの特徴は、材料層の中に付与された方向性のアパーチャ、基部層102に対する異なる吸収作用の材料の積層、または方向性の流れを助長する特定の材料の選択の形式であり得る。基部層102として使用される例示的な材料は、TycoHealthcareの一部門であるKendall Corp.によって商標XEROFLO(登録商標)の下で販売されている接触層を含む。代替案においては、基部層102は粘着性の材料を含み得る。
【0015】
さらに、ヒドロゲルおよび薬物のような薬剤が、基部層102に結合またはコーティングされ、創傷における生物汚染度を減少させ、治癒を促進し、手当ての交換または除去と関連する痛みを減少させる。薬物は、例えば、抗菌剤、成長因子、抗生物質、鎮痛剤、創面切除剤などを含む。さらに、鎮痛剤が使用されるときには、鎮痛剤は、手当ての除去または交換に先立ち、その薬剤の放出を可能にするメカニズムを含み得る。放出メカニズムの例示的な引き金は、温度変化であり得る。
【0016】
基部層102に近い層または基部層102を作る複合構造は、吸収材/パッキング層104である。創傷手当て100の吸収材/パッキング層104は、創傷流体を吸収および捕獲して排出することを意図されている。例示的な吸収材料は、フォーム、不織布の複合織物、ヒドロゲル、セルロース織物、高吸収性ポリマ、およびそれらの組み合わせを含む。一般的に、吸収材/パッキング層104は、最大で約100立法センチメートル(cc)以上の創傷流体を吸収し得る。好適には、吸収材料は、TycoHealthcareの一部門であるKendall Corp.によって商標KERLIX(登録商標)の下で販売されている抗菌性の手当てを含む。1つの好適な実施形態において、吸収材/パッキング層104は、様々な形状の創傷床に適合するように事前形成され得るかまたは形作られ得る。吸収材/パッキング層104は任意の適切な形状に形成され得るということを、当業者は認識する。吸収材/パッキング層104は複数の層を含み得る。形状に関して唯一必要なことは、吸収材/パッキング層104が特定の形状の創傷を処置することに適していることである。
【0017】
さらに、パッキング/吸収材層104は薬物を用いて処理される。薬物は、例えば、殺菌剤または他の適切な抗菌剤もしくは抗菌剤の組み合わせのような抗感染剤、ポリヘキサメチレンビグアニド(以下では「PHMB」)、抗生物質、鎮痛剤、ビタミンのような治癒因子、成長因子、栄養剤など、および等浸透圧の塩水を用いた単純な流水洗浄を含む。
【0018】
図1〜図3を続けて参照すると、粘着性の層106は、創傷床を囲む創傷手当て100の周囲を少なくとも含み、創傷床「w」の周囲に封鎖を提供する。例えば、封鎖メカニズムは、創傷床「w」を囲む層に結合される任意の粘着剤、または皮膚に直接的に塗布された粘着剤であり得る。粘着剤は、創傷床「w」の皮膚を囲んでいる組織「t」、例えば、創傷周囲の範囲に合った接着を提供し、接触悪化を伴うことなく、皮膚での使用に耐えることができなければならない(例えば、粘着剤は、好適には、刺激することなくかつ感作しないものであるべきである)。粘着剤は半透過性であり、接触された皮膚が水分を透過することが可能であり得るか、または不透過性であり得る。さらに、粘着剤は、加熱または所与の流体溶液もしくは化学反応のような外部刺激によって活性化または不活性化され得る。粘着剤は、例えば、TycoHealthcareの一部門であるKendall Corp.によって商標ULTEC(登録商標) Hidrocollid dressingの下で販売されている手当てを含む。
【0019】
粘着性の層106はまた、吸収材/パッキング層104の近位の完全な層の形式であり得るか、または、好適には、示されているように環状または「ドーナツ形」であり得る。好適には、粘着性の層106は、吸収材/パッキング層104の容易な取替えを可能にするために、吸収材/パッキング層104に結合されない。好適な実施形態において、粘着性の層106は、少なくとも基部層102の周辺に結合される。次に、上部層108の周辺部分108aは、粘着性の層106に結合されて、創傷の周辺付近に封鎖を提供し得る。あるいは、粘着性の層106は、上部層108の周辺部分108aに配置され、創傷床「w」付近で組織「t」に固定され得るが、基部層102には固定されないことがあり得る。追加の代替案において、上部層108の周辺部分108aは、粘着面を含み得る。リムーバブル接触ライナーがまた、使用に先立ち、粘着性の層106の粘着面を保護するために使用され得ることが見込まれている。
【0020】
上部または上側層108は、一般的には、創傷手当て100の上部を封鎖し、創傷手当て100の中の適切な真空レベルを維持することを助ける。1つの好適な実施形態において、上部層108は、TycoHealthcareの一部門であるKendall Corp.による商標POLYSKIN(登録商標) IIの下で製造されている透明な可撓性の手当てを含む。POLYSKIN(登録商標) IIは透明な半透過性の材料であり、それが創傷部位での水分と酸素との交換を可能にし、細菌および流体の汚染に対するバリアを提供する。代替案において、上部層110は不透過性であり得る。さらなる代替案において、上部層108は、例えば、ドームの形状の弾力的な、例えば、エラストマーの材料を含み得る。
【0021】
上部層108は、封鎖されたまたは包み込まれた真空リザーバ110を画定する。真空リザーバ110は、好適には、創傷床「w」の治癒を開始または完了すること、すなわち、大気圧よりも低い圧力を創傷にかけながら、創傷床「w」から離れるように創傷流体および滲出物を吸い出すことに充分な所定の期間の間、適切な真空レベルで維持される。治療効果を維持するために、必要に応じて真空が再び適用される。真空は所望に応じて継続または中断され得る。
【0022】
図1に最良に示されているように、真空リザーバ110は上部層108のドームの中に画定される。図2に示されているように、真空が適用されると、上部層108のドームが、吸収材/パッキング層104に向けて下向きに引っ張られ、真空または大気圧よりも低い圧力のリザーバ110が上部層108の下に作成される。一般的に、上部層108は、真空リザーバ110と流体連通する真空ポートまたはコネクタ114を含む。好適には、真空ポート114は、(参照番号116で概略的に示されている)一方向弁を含み、該一方向弁は、一方向性の流れの吸引を提供し、かつ、真空源112に対する複合創傷手当て100の接続を可能にする手段を提供し得る。一方向弁116は真空ポート114の中に組み込まれ得るか、または、代替的に、真空源112と「並び」得る。可撓性の管118が真空ポート114と真空源112とに接続される。管118は真空源112から創傷に吸引を与え、創傷流体が創傷手当て100に伝えられることを可能にする。管118は、PVC、珪素を基にした材料、または他の可撓性の材料(ポリマ)から製作され得る。管118は、任意的に、創傷の排液および破片のための収集キャニスター120への接続を含み得る。従って、真空源112は、複合創傷手当て100と管118とを通してキャニスター120の中に創傷流体を吸い出し得る。本開示の好適な実施形態において、キャニスター120はポータブルであり、その結果、患者は、一定の位置に拘束されるよりも、むしろ動き回る自由を有する。キャニスター120はまた、吸収材料を収容し、創傷流体および滲出物を吸収し得る。
【0023】
Grossに対する同一人に譲渡された米国特許第5,549,584号に開示されたような手動ポンプのような手段によって、真空源112は真空を創傷に適用しており、該特許の全内容は、本明細書において参考として援用される。代替案において、真空源112は自動ポンプを含み得る。一般的に、真空レベルは、約20mmHg〜約500mmHgの間、さらに好適には、約40mmHgと約125mmHgとの間の範囲にある。自動ポンプは、急性病患者または亜急性病患者の治療施設において利用可能なもののような壁(wall)吸引装置であり得る。自動ポンプはポータブルポンプの形式であり得る。ポータブルポンプは小さいまたは小型のポンプを含み得、該小さいまたは小型のポンプは、適切な治療の真空レベルを維持するか、または適切な治療の真空レベルにまで吸い出す。好適な実施形態において、ポンプは、ポータブルで軽量なバッテリ動作の吸引ポンプであり、該ポンプは管の遠位端に取り付ける。一般的に、真空源112は創傷を治癒するための最適な真空圧を加える調整手段を有する。さらに、最適な真空圧が達成されない場合には、真空源112は、好適には、システム内の漏れを検出するメカニズムを含む。好適には、真空源112はまた、最適な真空圧が達成されないときを知らせるインジケータ(図示せず)を含む。代替案において、圧搾バルブの形式のハンドポンプまたはフットポンプが真空源112として作用し得る。
【0024】
好適には、ポンプは真空源112として使用される。一般的なポンプは、ダイアフラムまたはボイスコイル作動の方式を含み、最大で50cc/分の可変の真空を送達し得る。
【0025】
ここで図1〜図4を参照すると、上部層108はアクセスドア122を含み、創傷手当て100の内部および/または創傷床「w」へのアクセスを提供し得る。ドア122は上部層108と一体で形成されたフラップであり得るか、またはヒンジなどを介して上部層108に接続された別個のコンポーネントであり得る。ドア122は好適には再封鎖可能であり、真空リザーバ110の完全性を維持し、かつ、上部層108に対する封鎖を提供する。ドア122を解放可能に封鎖する1つの適切な手段は、スナップフィット配置、舌と溝との配置、「zip lock(登録商標)」配置、粘着剤、VELCRO(登録商標)などを含む。ドア122は好適には創傷床「w」へのアクセスを提供し、医師が、創傷の状態を監視すること、吸収材/パッキング層104を交換すること、または必要に応じて、抗菌剤、成長因子、創面切除剤、または他の創傷治癒剤のような追加の医療処置を創傷に適用することを可能にする。所望の手順が完了すると、ドア122は上部層108に再封鎖され、真空リザーバ110の完全性を維持する。図4は、ドア122が開いた位置にあるときの、ドア122を通した吸収材/パッキング層104の除去を例示する。記述されたように、続けて、新たな吸収材/パッキング層104がドア122を通して導入され、創傷床「w」から滲出物を吸収し得る。
【0026】
ここで図1〜図2と共に図3および図5を参照すると、創傷手当て100は上部層108に取り付けられた視覚的インジケータデバイス124を含み、創傷手当て100の中の真空圧の視覚的な表示を提供し得る。視覚的インジケータデバイス124は、上部層108と創傷床との相対的な位置と、従って創傷手当て100の中の真空の状態とを検出する少なくとも1つの電子的位置インジケータを含み得る。本実施形態に従って、上部層108は、上部層108の構成材料、または上部層108に組み込まれた強化(例えば、エラストマー)部材のいずれかを介した弾力特性を有し得る。
【0027】
図6に描かれた一実施形態において、視覚的インジケータデバイス124は、少なくとも1つ、好適には3つの位置感知スイッチ126a〜126cと、自己動力の電子信号送信モジュール128とを含む。モジュール128は、電子信号送信モジュールの回路基板130と、バッテリ電源132と、回路基板130に電気的に接続138された3つの発光ダイオード(LED)134a〜cおよび/またはラウドスピーカ136を含む少なくとも1つのトランスデューサとを含む。LED134a〜cは、赤色、黄色および緑色にそれぞれ色分けされている。位置感知スイッチ126a〜126cはそれぞれ、圧力センサであり得、該圧力センサは、視覚的インジケータデバイス124の接触140a、140bを電気的に橋絡する。
【0028】
示された実施形態において、3つの位置スイッチ126a〜cは上部層108に取り付けられる。スイッチ126a〜cは、一連の直径が減少する環状の同軸要素として配置されるスイッチプレートまたは接触アームを含む。あるいは、スイッチは構成が線形であり、上部層108から下向きに垂れ下がり得る。スイッチ126a〜cのスイッチプレートまたは接触アームは所定の長さであり、真空リザーバ110の中で上部層108から下向きに伸びている(図4および図5)。圧力インジケータ124の外側スイッチ126aの接触アームは最長の長さを有する。中間スイッチ126bの接触アームは外側リング126aの接触アームの長さを下回る長さを有する。内側スイッチ126cの接触アームは最短の長さを有する。スイッチ126a〜cの接触140aは、接触アームの中に統合される。スイッチ126a〜cの接触140bは、それぞれの接触アームに対して概ね長手方向の配列で、吸収材/パッキング層104の上表面に配置され得るか、または吸収材/パッキング層104の中に統合され得る。あるいは、位置センサは磁気的近接センサであり得る。自己動力の電子信号送信モジュール130は、スイッチを閉じる際に光および/または可聴音などを発するように適合された任意の従来のモジュールであり得る。
【0029】
上部層108が、真空リザーバ110の中の真空圧によって、図2の真空状態に向けて引き下ろされたときに、内側スイッチ126cは、吸収材/パッキング層104の中に配置されたそれぞれの結合器または接触140bと接触し、それによって視覚的インジケータデバイス124に電圧を加え、上部層108に取り付けられた圧力インジケータデバイスの中の緑色LED134cを照明する。LED134cの緑色の光は、真空リザーバ110の完全な真空状態を表示する。理解されるように、スイッチ126a、126bはまた、上部層108のこの真空状態において、それぞれの結合器と接触し得る。しかしながら、スイッチ126cがそれぞれの結合器と接触しているときに、これら2つのスイッチの電気接触を停止する回路網を、回路基板130が組み込むことを想定される。
【0030】
真空圧が減少し、上部層108のドームが、例えば、上に記述された上部層108の弾力特性を介して、図1の通常の状態を取り始めると、内側スイッチ126cは吸収材/パッキング層104との接触を失うが、中間スイッチ126bが、関連する接触140bとの電気接触を維持/確立する。中間スイッチ126bの電気接触は、黄色LED134bの照明をもたらす。黄色LED134bは、真空リザーバ110の部分的な真空状態または不十分な真空状態を表す。真空圧がさらに減少し、上部層108が、図1の完全に膨張したまたは通常の状態に向けて動くと、外側スイッチ126aが、吸収材/パッキング層104の中で、関連する接触140bと接触している残りのスイッチとなる。この状況において、赤色LED134aが電圧を加えられて医師に見えるようになり、真空リザーバの中の真空が消散したまたはほとんど消散した(すなわち、大気圧よりも低い圧力がほとんど存在しないまたはもはや存在しない)という警告を必ず提供する。次に、真空源112は手動または自動のいずれかで作動され、真空リザーバ110の中に真空状態を再確立する。さらなる真空の喪失は、残りのスイッチ126cが接触を失うことをもたらし、光は患者に見えなくなる。
【0031】
回路基板130は、上記の制御停止回路網がないことがあり得るということがまた想定されている。結果として、手当て100の完全な真空状態においては、緑色、黄色および赤色のLED134a〜134cのそれぞれが照明されるが、部分的な真空状態においては、黄色および赤色のLED134a、134bが照明され、警告状態においては、赤色LED134aが照明される。上記の真空状態のうちの任意のものが実現されたときには、ラウドスピーカ136が聴覚アラームを発し得ることがさらに想定されている。
【0032】
図7は、視覚的圧力インジケータ124の代替の実施形態を例示している。この実施形態に従って、視覚的圧力インジケータ124は吸収材/パッキング層104に取り付けられるか、または吸収材/パッキング層104に並べられた関係で配置される。上部層108は好適には透明であり、上部層108を通して、圧力センサ124を見ることと真空リザーバ110の中を見ることとを可能にする。それぞれのスイッチ126a〜cが上部層108に向けて上側に伸びるように、視覚的圧力インジケータ124の配置は逆にされるかまたは仰向けに配置される。それぞれの結合器または接触140bは、上部層108の中に組み込まれる。完全な真空状態または図2の状態において、上部層108の接触140bは、スイッチ126cに接触し、それによりLED134cに電圧を加え、緑色を医師に表示する。治癒の間に、真空リザーバが真空を失い始めると、上部層108が図1の開いた状態に向けて動き、内側のスイッチ126cは上部層108のそれぞれの結合器140bとの接触を失い、黄色LED134bとの接触をもたらし、真空リザーバ110の部分的な真空状態を示す。真空リザーバ110の中の真空の継続した喪失は、外側のスイッチ126cと結合器140bの電気接触をもたらす。外側のスイッチ126cとLED134cのこの接触は、赤色の存在によって示され、真空リザーバ110の中の真空の喪失またはほぼ喪失に対応し得、従って、医師が真空源112を作動すること、または他の医療手段を遂行することを助長する。
【0033】
図8は別の実施形態を例示しており、LED134a〜134cは、追加の視覚的しるしで補われている。視覚的しるしは様々な記号を含み得、該様々な記号は真空リザーバ110の中の真空の状態に対応している。所望のレベルの真空に到達したときには、「スマイリー」記号152が照明して適切な真空状態を示す。部分的な真空状態は、「警告三角形」記号154の照明となる。真空の喪失またはほぼ喪失は、「八角形」記号(真空がない)156の照明となる。当業者はこれらの目的を達成する電子回路網の設計を容易に理解する。
【0034】
図9〜図11は、本開示の代替の実施形態を例示している。この実施形態に従って、視覚的インジケータデバイス124は、上部層108の下側に配置、例えば、上部層108にプリントされている一連のリング200、202、204を含み得、該一連のリング200、202、204は、示されているような同軸の関係に配置されている。リングは、外側リング200と中間リング202と内側リング204とを含み、赤色、黄色および緑色にそれぞれ色分けされている。各色分けされたリング200、202、204は、真空リザーバ110の中の真空の状態または状況に従って、吸収材/パッキング層104に接触するように配置されている。図10に描かれた完全な真空の下では、全てのリング200、202、204が吸収材/パッキング層104に接触して作動され、創傷手当ての上部を通して見ることができる。リザーバの中の真空が消散するかまたは減少されると、上部層110が吸収材/パッキング層104から離れるように引っ張られる。エラストマーのドームを有する実施形態において、真空が減少されると、内側リング204が最初に接触を失い、中間リング202そして外側リング200がそれぞれ続く。各色分けされたリング200、202、204が吸収材/パッキング層104との接触を失うと、それぞれのリングは創傷手当て100の上からあまり見えなくなるか、または見えなくなり、その結果、真空リザーバ内の真空の状況を医師に示す。リング200、202、204は、図1〜図6の実施形態と共に上で述べられたように作動される電子スイッチを組み込み得る。あるいは、各リング200、202、204は、分析テストストリップデバイスを組み込み得、該分析テストストリップデバイスは、例えば、吸収材/パッキング層104の中に含まれた滲出物における所定の検体の存在を検出し得る。所定の検体との接触の際に、各リング200、202、204のテストストリップデバイスは、赤色、黄色または緑色のような色になる。それぞれのリング200、202、204が所定の検体との接触を失った場合に、それぞれのリングの色は褪せ得るか、または無色になり得る。本開示との使用に適した色分けされたテストストリップデバイスの一例は、Carrollらに対して2006年5月23日に発行された米国特許第7,049,130号に開示されており、該特許の全内容は本明細書において参考として援用される。当業者は、テストストリップデバイスのパラメータおよび特性を決定して、上に述べられた目的を遂行し得る。
【0035】
さらに、図9〜図11の実施形態のドア122は、ヒンジ208に沿って旋回するように適合され、真空リザーバ110へのアクセスを提供する。ドア122の開口部が、創傷手当て102の周縁に隣接して配置され、ヒンジ208に沿ってドア122を旋回するまたは開く際に、比較的大きなアクセス開口部を提供する。これが吸収材/パッキング層104の除去および置換を容易にする。
【0036】
創傷手当て装置は外部の手段または塗布を組み込み、組織の成長および/または治癒を刺激し得るということがさらに想定されている。例えば、補助的な処置装置が創傷手当て装置に組み込まれ、例えば、治癒を刺激するために創傷範囲に熱または振動エネルギーを導く、および/または真空による滲出物の除去をさらに助長する、および/または皮膚を通して人間の体に様々な薬剤を導入するなどの、組織の処置のための機械的エネルギーを伝え得る。酸素、化学物質、細菌および/または温度のセンサを含む他のタイプのセンサがまた、創傷手当て装置への組み込みを想定されている。創傷範囲付近での酸素の検出は、医師が創傷の治癒の状態を決定することを助ける。上昇された温度の存在が感染を示し得る。
【0037】
本開示が例示されかつ記述されてきたが、本開示の精神を全く逸脱することなく、様々な改変および置換が行われ得るので、示された詳細に限定されることは意図されていない。例えば、2006年9月6日に出願された仮特許出願第60/714,812号に対する優先権を主張する、Express Mail Certificate No.EL985194525 USの下で本明細書と共に同時に出願された同一出願人に譲渡された特許出願の主題と、2006年9月7日に出願された仮特許出願第60/714,912号に対する優先権を主張する、Express Mail Certificate No.EV879103054 USの下で本明細書と共に同時に出願された同一出願人に譲渡された特許出願の主題とが、本開示に援用される(各出願の全内容は本明細書において援用されている)ことが想定されている。従って、本明細書において開示された本発明のさらなる改変および均等物が、単に普通の実験を行って、当業者に見出され得、そのような全ての改変および均等物は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本開示の精神および範囲を逸脱することはないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、創傷床の上の、本開示の原理に従った創傷手当て装置の側面断面図である。
【図2】図2は、図1の図と類似の図であり、大気圧よりも低い圧力を受けた創傷手当てを例示している。
【図3】図3は、創傷手当ての上面図である。
【図4】図4は、図2の図と類似の図であり、内部の真空リザーバへのアクセスを可能にする開いた状態のアクセスドアを例示している。
【図5】図5は、図3の5−5線に沿って取られた断面図であり、視覚的圧力インジケータを例示している。
【図6】図6は、電子的視覚インジケータデバイスのコンポーネントを例示している構成図である。
【図7】図7は、図1の図と類似の図であり、本開示の代替の実施形態を例示している。
【図8】図8は、視覚的インジケータデバイスの代替の視覚的しるしの配置を例示している図である。
【図9】図9は、創傷床の上のかつ真空の存在しない代替の創傷手当ての側面断面図である。
【図10】図10は、図9の図と類似の図であり、大気圧よりも低い圧力を受けたときの収縮した状態における創傷手当てを例示している。
【図11】図11は、図9の創傷手当ての上面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷手当て装置であって、該装置は、
創傷床に対して配置するような大きさにされた創傷手当て部材であって、該創傷手当て部材は、内部の真空リザーバを含み、かつ、大気圧よりも低い圧力を該真空リザーバに加えて、該創傷床の処置と該創傷床からの流体の除去とを促進するように、該真空リザーバと連通しているポートを有しており、該創傷手当て部材は、それと関連するアクセスドアを含み、かつ、該真空リザーバを実質的に囲む閉じた位置と該真空リザーバへのアクセスを可能にする開いた位置との間で選択的に動くことができる、創傷手当て部材
を備えている、創傷手当て装置。
【請求項2】
前記創傷手当て部材は、前記創傷床に隣接して配置可能な下側吸収材部材と、上側部材とを含み、該上側部材は、少なくとも部分的には、前記真空リザーバを画定する、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項3】
前記アクセスドアは、前記上側部材に取り付けられている、請求項2に記載の創傷手当て装置。
【請求項4】
前記下側部材は、フォーム、不織布の複合織物、ヒドロゲル、セルロース織物、高吸収性ポリマ、およびそれらの組み合わせから成る群から選択された材料を含む、請求項3に記載の創傷手当て装置。
【請求項5】
前記下側部材は、薬物、抗感染薬、殺菌剤、ポリヘキサメチレンビグアニド(以下では「PHMB」)、抗生物質、鎮痛剤、治癒因子、ビタミン、成長因子、創面切除剤および栄養剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の創傷手当て装置。
【請求項6】
前記創傷手当て部材は、粘着性の部材を含み、該粘着性の部材は、前記創傷床付近に固定されるように適合されることにより、該創傷手当て部材と該創傷床を囲む組織との間に封鎖を提供する、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項7】
前記上側部材は、弾力的な材料を含む、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項8】
前記ポートは、弁手段を含む、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項9】
前記ポートと流体連通している真空源をさらに含み、該真空源は、約20mmHgと約500mmHgとの間の範囲にある、大気圧よりも低い圧力を前記真空リザーバに供給する、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項10】
前記創傷手当て部材は、前記真空リザーバの中の圧力のレベルを示す視覚的圧力インジケータを含む、請求項2に記載の創傷手当て装置。
【請求項11】
前記視覚的圧力インジケータは、色のしるしを含み、該色のしるしは、前記真空リザーバの中の前記大気圧よりも低い圧力の状態に対応する、請求項10に記載の創傷手当て装置。
【請求項12】
前記視覚的圧力インジケータは、位置センサを含む、請求項10に記載の創傷手当て装置。
【請求項13】
前記視覚的インジケータは、回路手段と可視の警告手段とを含み、該回路手段は、前記位置センサが前記創傷手当て部材の前記上部部材の相対的位置を検出したときには、該可視の警告手段を作動するように適合されていることにより、前記真空リザーバの中の大気圧よりも低い圧力の状況の視覚的表示を提供する、請求項12に記載の創傷手当て装置。
【請求項14】
創傷手当て装置であって、該装置は、
創傷床に対して配置するような大きさにされた創傷手当て部材であって、該創傷手当て部材は、内部の真空リザーバを含み、かつ、大気圧よりも低い圧力を該真空リザーバに加えて、治癒と該創傷床からの流体の除去とを促進するために、該真空リザーバと連通しているポートを有しており、該創傷手当て部材は、該真空リザーバの中の圧力のレベルを示すために関連付けられた視覚的圧力インジケータを含む、創傷手当て部材
を備えている、創傷手当て装置。
【請求項15】
前記視覚的圧力インジケータは、色のしるしを含み、該色のしるしは、複数の色を有しており、各色は、前記真空リザーバの中の圧力の状態に対応する、請求項14に記載の創傷手当て装置。
【請求項16】
前記創傷手当て部材は、前記創傷床に隣接して配置可能な下側吸収材部材と、上側部材とを含み、該上側部材は、少なくとも部分的には、前記真空リザーバを画定する、請求項14に記載の創傷手当て装置。
【請求項17】
前記上部部材と前記下側吸収材部材とのうちの少なくとも1つは、前記視覚的圧力インジケータを取り付けられている、請求項16に記載の創傷手当て装置。
【請求項18】
前記視覚的圧力インジケータは、電子的位置センサを含む、請求項16に記載の創傷手当て装置。
【請求項19】
前記視覚的インジケータは、回路手段と可視の警告手段とを含み、該回路手段は、前記位置センサが前記創傷手当て部材の上部部材の相対的位置を検出したときには、該可視の警告手段を作動するように適合されていることにより、前記真空リザーバの中の大気圧よりも低い圧力の状態の視覚的表示を提供する、請求項18に記載の創傷手当て装置。
【請求項1】
創傷手当て装置であって、該装置は、
創傷床に対して配置するような大きさにされた創傷手当て部材であって、該創傷手当て部材は、内部の真空リザーバを含み、かつ、大気圧よりも低い圧力を該真空リザーバに加えて、該創傷床の処置と該創傷床からの流体の除去とを促進するように、該真空リザーバと連通しているポートを有しており、該創傷手当て部材は、それと関連するアクセスドアを含み、かつ、該真空リザーバを実質的に囲む閉じた位置と該真空リザーバへのアクセスを可能にする開いた位置との間で選択的に動くことができる、創傷手当て部材
を備えている、創傷手当て装置。
【請求項2】
前記創傷手当て部材は、前記創傷床に隣接して配置可能な下側吸収材部材と、上側部材とを含み、該上側部材は、少なくとも部分的には、前記真空リザーバを画定する、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項3】
前記アクセスドアは、前記上側部材に取り付けられている、請求項2に記載の創傷手当て装置。
【請求項4】
前記下側部材は、フォーム、不織布の複合織物、ヒドロゲル、セルロース織物、高吸収性ポリマ、およびそれらの組み合わせから成る群から選択された材料を含む、請求項3に記載の創傷手当て装置。
【請求項5】
前記下側部材は、薬物、抗感染薬、殺菌剤、ポリヘキサメチレンビグアニド(以下では「PHMB」)、抗生物質、鎮痛剤、治癒因子、ビタミン、成長因子、創面切除剤および栄養剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の創傷手当て装置。
【請求項6】
前記創傷手当て部材は、粘着性の部材を含み、該粘着性の部材は、前記創傷床付近に固定されるように適合されることにより、該創傷手当て部材と該創傷床を囲む組織との間に封鎖を提供する、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項7】
前記上側部材は、弾力的な材料を含む、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項8】
前記ポートは、弁手段を含む、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項9】
前記ポートと流体連通している真空源をさらに含み、該真空源は、約20mmHgと約500mmHgとの間の範囲にある、大気圧よりも低い圧力を前記真空リザーバに供給する、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項10】
前記創傷手当て部材は、前記真空リザーバの中の圧力のレベルを示す視覚的圧力インジケータを含む、請求項2に記載の創傷手当て装置。
【請求項11】
前記視覚的圧力インジケータは、色のしるしを含み、該色のしるしは、前記真空リザーバの中の前記大気圧よりも低い圧力の状態に対応する、請求項10に記載の創傷手当て装置。
【請求項12】
前記視覚的圧力インジケータは、位置センサを含む、請求項10に記載の創傷手当て装置。
【請求項13】
前記視覚的インジケータは、回路手段と可視の警告手段とを含み、該回路手段は、前記位置センサが前記創傷手当て部材の前記上部部材の相対的位置を検出したときには、該可視の警告手段を作動するように適合されていることにより、前記真空リザーバの中の大気圧よりも低い圧力の状況の視覚的表示を提供する、請求項12に記載の創傷手当て装置。
【請求項14】
創傷手当て装置であって、該装置は、
創傷床に対して配置するような大きさにされた創傷手当て部材であって、該創傷手当て部材は、内部の真空リザーバを含み、かつ、大気圧よりも低い圧力を該真空リザーバに加えて、治癒と該創傷床からの流体の除去とを促進するために、該真空リザーバと連通しているポートを有しており、該創傷手当て部材は、該真空リザーバの中の圧力のレベルを示すために関連付けられた視覚的圧力インジケータを含む、創傷手当て部材
を備えている、創傷手当て装置。
【請求項15】
前記視覚的圧力インジケータは、色のしるしを含み、該色のしるしは、複数の色を有しており、各色は、前記真空リザーバの中の圧力の状態に対応する、請求項14に記載の創傷手当て装置。
【請求項16】
前記創傷手当て部材は、前記創傷床に隣接して配置可能な下側吸収材部材と、上側部材とを含み、該上側部材は、少なくとも部分的には、前記真空リザーバを画定する、請求項14に記載の創傷手当て装置。
【請求項17】
前記上部部材と前記下側吸収材部材とのうちの少なくとも1つは、前記視覚的圧力インジケータを取り付けられている、請求項16に記載の創傷手当て装置。
【請求項18】
前記視覚的圧力インジケータは、電子的位置センサを含む、請求項16に記載の創傷手当て装置。
【請求項19】
前記視覚的インジケータは、回路手段と可視の警告手段とを含み、該回路手段は、前記位置センサが前記創傷手当て部材の上部部材の相対的位置を検出したときには、該可視の警告手段を作動するように適合されていることにより、前記真空リザーバの中の大気圧よりも低い圧力の状態の視覚的表示を提供する、請求項18に記載の創傷手当て装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−506877(P2009−506877A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530190(P2008−530190)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/034824
【国際公開番号】WO2007/030598
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/034824
【国際公開番号】WO2007/030598
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】
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