説明

真空封止装置

【課題】 真空封止によって気密封止空間を形成する部品に変形が生じてもレンズ系とデバイスの相対距離、もしくは相対角度を正確に所望の値に配置することにより、光学信号の劣化を抑え、歩留まりを向上させ安価な真空封止装置を提供する。
【解決手段】 光学素子11を有するリッド10と、デバイス3が実装されるダイアタッチ面4を有するパッケージと、を接合することによって形成される中空部2を、真空状態で気密封止する真空封止装置において中空部2内にリッド10が変形することを抑制する変形抑制部材を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子を有するリッドとパッケージによって、その内部に実装された電子デバイス部品を真空封止する真空封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信装置や顕微鏡などの光学製品に搭載されるチップもしくは基板に、例えばレンズやミラー等の光学的機能を付加することにより、使用する部品点数の削減や製品の小型化、もしくは高機能化を目論んだ開発が盛んに行われている。これらのデバイスには、その機能を有効に発揮するために、また信頼性を確保するために、不活性ガスを封入した気密封止、もしくは真空気密封止が要求されることが多い。気密封止、もしくは真空気密封止されるデバイスに光学的機能が付されているため、気密空間を形成するためのリッド部品にも光学信号の入出力が可能な、光学窓や集光レンズなどの光学素子が必要になる。
【0003】
このような気密封止装置において、真空空間を形成するためにリッドに光学素子が設けられている技術が、特許文献1に開示されている。図9を参照して、特許文献1の技術について簡単に説明する。
レンズ系105を保持する気密容器の上部構造106と、デバイスである赤外線撮像素子101が実装された気密構造の下部構造119と、を気密容器の上部構造と下部構造の突合せ部121で組み合わせ、気密容器の上部構造106と気密構造の下部構造119をレーザ溶接、もしくははんだを含むロウ材で真空気密封止接合する。気密容器の上部構造106と気密構造の下部構造119により形成される空間内に、必要な部品を実装することにより赤外線撮像部品(赤外線撮像素子101)を小型化可能にする。気密容器の上部構造106の寸法でレンズ系105の高さを調整することなく位置決め可能になるため、赤外線撮像素子101とレンズ系105の距離を調整する工程を省略することが可能になり、コストを低減させることが可能になる。
【0004】
このように、集光用のレンズを保持する部品(レンズ系105を保持する気密容器の上部構造106)と、赤外線撮像素子が実装される部品(赤外線撮像素子101が実装された気密構造の下部構造119)を組み合わせ、その内部空間を真空気密封止する構造において、小型化および調整の簡易化をはかり、安価に製品を提供する。
【特許文献1】特開2000−162036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気密容器の上部構造106と気密構造の下部構造119により形成される空間は、気密容器の上部構造と下部構造の突合せ部121によってのみ接合されている。これらの部品は、その内部空間が真空雰囲気に気密封止されているため、例えば部品の肉厚が薄いなど気密容器の上部構造106、もしくは気密構造の下部構造119の剛性が十分確保されていない場合、大気圧によって押圧されることにより、内側に凹形状に変形してしまう可能性が生じる。
【0006】
気密容器の上部構造106、もしくは気密構造の下部構造119の部品が、大気圧によって変形すると、それぞれに保持されているレンズ系105と赤外線撮像素子101の相対距離、もしくは相対角度が変化するため、レンズ系105と赤外線撮像素子101の距離もしくは角度を正確に設計どおりに配置することが困難になる。そのため、所望の光学像を赤外線撮像素子101に結ぶことが困難になり、画質が劣化してしまう虞が生じる
本発明は、この点に着目してなされたものであり、真空封止によって気密封止空間を形成する部品に変形が生じてもレンズ系とデバイスの相対距離、もしくは相対角度を正確に所望の値に配置することにより、光学信号の劣化を抑え、歩留まりを向上させ安価な真空封止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は目的を達成するために、光を透過させる光学素子と前記光学素子を保持する枠体を有するリッドと、デバイスが実装され前記光学素子と前記枠体に対向するダイアタッチ面を有するパッケージと、を接合することによって前記リッドと前記パッケージに形成される中空部を、真空状態で気密封止する真空封止装置において、前記リッドと前記パッケージが接合した際に、前記リッドまたは前記パッケージにおける前記中空部内に配設され、前記リッドが変形することを抑制する変形抑制部材と、を具備することを特徴とする真空封止装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、真空封止によって気密封止空間を形成する部品に変形が生じてもレンズ系とデバイスの相対距離、もしくは相対角度を正確に所望の値に配置することにより、光学信号の劣化を抑え、歩留まりを向上させ安価な真空封止装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1乃至図4を参照して第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る真空封止装置の構成を示す図である。図2は、図1をA−A線断面から見た図である。図3は、真空封止装置を有する真空チャンバの構成を示す図である。図4は、封止後の真空封止装置の構成を示す図である。なお図2において接合材9は図示を省略している。
【0010】
図1に示すように真空封止装置は、パッケージ1とリッド10から構成される。パッケージ1とリッド10とは互いに対向する位置に位置決めされ、接合材9を介して封止接合される。ここで、パッケージ1とリッド10とには接合材9を溶融させ合金を形成せしめるためにそれぞれ金属膜8,12が成膜されている。パッケージ1とリッド10との接合時には、金属膜8,12によって接合材9が溶融して合金が形成されることにより、パッケージ1とリッド10とが接合される。金属膜8はパッケージ1の上面1aにのみ成膜され、金属膜12は上面1aに対向する当接面22のみに成膜される。
【0011】
接合材9は、例えば金錫はんだ、SnAgCu、SnZn、SnBi、SnInはんだ等の軟ロウ材を用いることができる。また金属膜8,12は、同じ材料からなり、接合材9を加熱溶融させて合金を形成することが可能な材料であり、例えばNiメッキ膜の上に設けられた金メッキ膜などである。また金属膜8,12は、はんだによって合金を形成することが可能な組成であれば良く、例えばメッキ若しくはスパッタによって成膜されるNi/Au(接合材8に接触する側がAu、パッケージ1若しくはリッド10に接触する側がNi)膜を用いることができる。
【0012】
図1乃至図2に示すようにパッケージ1の内側には、デバイス3を実装(内蔵)可能な中空部(キャビティ)2が設けられている。デバイス3は、キャビティ2に設けられ、後述する光学素子11と枠体10aに対向するダイアタッチ面4の略中央部に図示しない接合材によって実装されている。デバイス3の中心部3aは、光軸11a上に位置することが好適である。
【0013】
またキャビティ2内には、パッケージ1の外側(封止されない側)との電気的接続を行うためのパッド6が設けられており、さらにパッケージ1の外側には、パッド6と電気的に接続されるリード5が設けられている。これによりパッケージ1の外側と内側は、電気的なI/Oが可能となる。また、デバイス3は、ワイヤボンド7によってパッド6に電気的に接続され、更に、リード5を介して真空封止装置の外部に設けられた図示しない電気回路に接続されている。このような構成により、パッケージ1内のデバイス3に電力を供給してデバイス3を駆動可能である。
【0014】
またキャビティ2において、ダイアタッチ面4には、リッド10がパッケージ1と接合した際に、リッド10が後述する圧力によって変形することを抑制する変形抑制部材13が配設されている。変形抑制部材13は、リッド10が変形した際に、光軸11a方向において対向する面である当接面22と当接する長さを有している。また変形抑制部材13は、リッド10が変形した際に、ダイアタッチ面4を基準として光学素子11が光軸11aに沿ってダイアタッチ面4から所望する高さに設置される長さを有している。このように変形抑制部材13は、デバイス3と光学素子11の相対距離が所望する値になるようにリッド10の高さを位置決めする長さを有する。
【0015】
変形抑制部材13の外形は、リッド10(枠体10a)の外形、または光学素子11の外形と相似形(外形は同じで倍率が異なる)であることが好適である。そのため本実施形態の変形抑制部材13は、例えば円柱形状を有している。変形抑制部材13の先端部位14における当接面(第1の当接面)15は、ダイアタッチ面4と平行であり、上述した当接面22と当接する。このようにダイアタッチ面4に配設される変形抑制部材13は、先端部位14において当接面22に対向し、当接面22に当接する当接面15を有している。
【0016】
本実施形態において変形抑制部材13は、複数配設されており、光軸11a(デバイス3の中心部3a)を中心に円周(同心円)上に均等な間隔にて配設されている。変形抑制部材13は、例えば図2に示すように略120°間隔で3本配置されていることが好適である。
【0017】
図1に示すようにキャビティ2の開口部2a側において、リッド10はパッケージ1と対向する位置に配設される。リッド10は、所望する波長を有する光をデバイス3上に透過、集光するために透明部材で構成された光学素子11を有している。より詳細には、リッド10には、光をデバイスに透過させる開口部10bを有する枠体10aが配設されている。光学素子11は、開口部10bの上方おいて枠体10aに保持されている。枠体10aには、当接面15が当接する当接面22が設けられている。このようにリッド10(枠体10a)には、変形抑制部材13(当接面15)が当接する。
【0018】
光学素子11と開口部10bの下方、且つダイアタッチ面4には、上述したデバイス3が実装されている。なおリッド10がパッケージ1に当接する際に、光学素子11の光軸11aが当接面22に対して垂直になるように、リッド10は光学素子11を有する。またリッド10がパッケージ1と対向する位置に配設された際、光学素子11がデバイス3と対向する位置に配設される。
【0019】
図3に示すように真空封止装置(接合材9によって接合されるパッケージ1とリッド10)は、真空チャンバ16に収容される。この真空チャンバ16は、図示しないクランパーによって保持されるパッケージ1を載置するステージ17と、リッド10の上方に昇降可能に配置されているヒータツール18と、ヒータツール18を昇降可能に保持するヒータツール駆動機構19から構成される。
【0020】
パッケージ1の上方に配置されるリッド10は、図示しない位置決め機構によってパッケージ1と対向する所望な位置に昇降可能に保持されている。またヒータツール18は、リッド10とパッケージ1とが接合する際、リッド10の上部(光学素子11が設けられる側)に接合材9を溶融可能な所望の温度に昇温可能であり、更にリッド10に所望の荷重を与えるように当接可能である。
【0021】
また真空チャンバ16は、排気機構20と、圧力調整機構21を有している。排気機構20は、真空チャンバ16の内部圧力を所望する減圧雰囲気(例えば大気圧よりも低い圧力である真空状態)に調整する。また圧力調整機構21は、真空チャンバ16に不活性ガス(例えばN)を流入させ、不活性ガスを充填した状態において、真空チャンバ16の内部圧力を調整する。
【0022】
なお、デバイス3と図示しない電気回路との電気的な接続は、ワイヤボンド7やリード5を用いることに限定されるものではなく、フィリップチップ実装やPGA(ピングリッドアレイ)によって接続しても良い。
【0023】
パッケージ1とリッド10の接合方法は、軟ロウ材を用いる接合材9に限定されるものではなく、シーム溶接やレーザ溶接等でもかまわない。
【0024】
変形抑制部材13の本数は、3本に限定するものではなく、1本以上あればよい。
【0025】
光学素子11は、集光機能を持たないガラス窓等であってもかまわない。
【0026】
キャビティ2は、パッケージ1に設けられているが、リッド10に設けられていても良いし、パッケージ1とリッド10の両方に設けられていても良い。このようにキャビティ2は、パッケージ1とリッド10が接合材9によって接合した際に、パッケージ1とリッド10によって形成(内部封止)される空間であればよい。その際、変形抑制部材13は、パッケージ1またはリッド10の少なくとも一方におけるキャビティ2内に配設されていればよい。
【0027】
変形抑制部材13は、パッケージ1に配設されているが、リッド10(例えば枠体10b)に配設さていても良いし、パッケージ1とリッド10の両方に配設されていても良い。リッド10に配設さている変形抑制部材13は、光軸11a方向において対向する面であるダイアタッチ面4と当接する長さを有している。また変形抑制部材13の先端部位14における当接面(第2の当接面)15は、ダイアタッチ面4と平行であり、ダイアタッチ面4と当接する。このようにリッド10に配設される変形抑制部材13は、先端部位14においてダイアタッチ面4に対向し、ダイアタッチ面4に当接する当接面15を有している。
【0028】
接合材9は、必ずしも予め金属膜8上に設けられている必要はなく、個別に金属膜8上に載置されても良く、また、リッド10に成膜されている金属膜12上に予め設けられていてもよい。
【0029】
次に本実施形態の動作方法について説明する。
(Step1)
接合材9を有するパッケージ1は、図示しない取り出し口から真空チャンバの16内に搬入され、ステージ17上に載置される。その際、パッケージ1は、図示しないクランパーによって保持される。
【0030】
(Step2)
同様に、リッド10は、真空チャンバ16内に搬入され、図示しない位置決め機構によってパッケージ1と対向する所望な位置に保持される。
【0031】
(Step3)
真空チャンバ16の図示しない取り出し口が閉められた後、排気機構20は真空チャンバ16内の大気を排気する。さらに圧力調整機構21は不活性ガスを真空チャンバ16に流入させ、真空チャンバ16内の内部圧力を所望する減圧雰囲気になるように調整する。
【0032】
(Step4)
真空チャンバ16の内部圧力が所望する減圧雰囲気になった後、リッド10は図示しない位置決め機構によってパッケージ1に対して所望の位置に位置決めされる。これにより金属膜12は、接合材9と接触し、パッケージ1とリッド10によって形成されるキャビティ2の内部圧力は、真空チャンバ16の内部圧力と等しくなる。
【0033】
(Step5)
ヒータツール駆動機構19は、ヒータツール18を降下させ、ヒータツール18をリッド10に当接させる。またヒータツール駆動機構19は、ヒータツール18を押圧することにより、所望の荷重をリッド10に加える。
【0034】
(Step6)
ヒータツール18は、リッド10に向けて熱を発生させる。ヒータツール18によって発生した熱は、伝導および輻射によりリッド10を加熱する。さらにこの熱は、リッド10(金属膜12)と当接する接合材9を加熱溶融する。
【0035】
(Step7)
接合材9が所望の温度によって加熱して溶融した後、接合材9は、金属膜8及び金属膜12と合金を形成する。これによりパッケージ1とリッド10は接合し、ヒータツール18は加熱動作を終了する。この後、溶融している接合材9は、所望する温度まで所望する時間冷却され、固化される。
接合材9は金属膜8及び金属膜12と合金を形成し、パッケージ1とリッド10は接合することにより、パッケージ1とリッド10によって形成されるキャビティ2は、所望する減圧雰囲気(例えば真空状態)にて、気密封止される。
【0036】
(Step8)
接合材9が冷却、固化した後、ヒータツール駆動機構19は、ヒータツール18を上昇させる。
【0037】
(Step9)
圧力調整機構21は、真空チャンバ16内部の圧力を大気圧に調整する。パッケージ1とリッド10によって形成されるキャビティ2の内部圧力は、Step3やStep7における所望する減圧雰囲気であるが、外部圧力は大気圧になる。そのためパッケージ1及びリッド10は、外部圧力と内部圧力の差圧分、大気圧によって押圧される。
【0038】
(Step10)
その際リッド10は、図4に示すように大気圧によって押圧され、内側(パッケージ1側)に変形する。変形したリッド10は当接面15に当接し、変形量(歪み)は変形抑制部材13によって抑制される。すなわちリッド10の変形量は変形抑制部材13の長さによって調整され、リッド10は変形抑制部材13の長さによって所望の位置に位置決めされる。これにより光学素子11は、変形抑制部材13によってダイアタッチ面4を基準として光軸11aに沿ってダイアタッチ面4から所望する高さに設置され、ダイアタッチ面4と所望の距離で配置される。
また光軸11aと当接面22は垂直であるため、光軸11aは、ダイアタッチ面4に対して垂直に設置される。
【0039】
(Step11)
デバイス3は、ダイアタッチ面4に実装されているため、真空封止装置は、デバイス3と光学素子11との相対距離と、デバイス3に対する光軸11aの角度を、所望の値に調整配置する。
【0040】
(Step12)
なお3本の変形抑制部材13は、略120°の均等間隔でダイアタッチ面4に配設されおり、リッド10が大気圧によって押圧され、内側(パッケージ1側)に変形した際、各変形抑制部材13は、均等な応力でリッド10を支持し、リッド10の変形を抑制する。
【0041】
(Step13)
パッケージ1は、クランパーから外され、真空チャンバ16の図示しない取り出し口が開き、真空封止装置が取り出される。これにより本実施形態の動作が終了する。
【0042】
このように本実施形態の真空封止装置において、キャビティ2を所望する減圧雰囲気(例えば大気圧よりも低い真空状態)で気密封止する際に、キャビティ2の内部圧力と外部圧力である大気圧との差圧によって、リッド10が押圧され変形する。本実施形態の真空封止装置は、変形するリッド10を変形抑制部材13に当接させることにより、パッケージ1のダイアタッチ面4を基準として、相対距離と角度が所望する値を有するようにリッド10パッケージ1に配設することができる。
【0043】
従って本実施形態は、ダイアタッチ面4に実装されているデバイス3と光学素子11の相対距離および角度を、所望の範囲内に調整配置する事が可能になり、光学信号の劣化を抑え、歩留まりを向上させた安価な真空封止装置を提供することが可能になる。
【0044】
また本実施形態の真空封止装置は、3本の変形抑制部材13によって当接面15において均等な応力でリッド10を支持するため、リッド10の変形を抑制することができる。
【0045】
なお変形抑制部材13は、均等な応力でリッド10を支持することができるのであれば、必ずしも円周上に均等な間隔に配設される必要はない。
【0046】
次に図5乃至図6を参照して第1の実施形態の変形例について説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る真空封止装置の構成を示す図である。図6は、封止後の真空封止装置の構成を示す図である。なお図2において接合材9は図示を省略している。なお、図5及び図6において、第1の実施形態と同様の構成については同じ参照符号を付し説明を省略する。
【0047】
本実施形態のリッド30の枠体30aは、リッド30の厚み方向においてリッド30を貫通している光学素子31を保持している。この光学素子31の投影面積は、3本の変形抑制部材13によって形成され、中心部3aを中心とする投影面積よりも大きい。そのためパッケージ1とリッド30が接合し、第1の実施形態のように差圧によってリッド30が変形した際、本実施形態の当接面15は、光学素子31に当接する。このようにダイアタッチ面4に配設される本実施形態の変形抑制部材13は、先端部位14において光学素子31に対向し、光学素子31に当接する当接面15を有している。また本実施形態の変形抑制部材13は、光学素子31が傾いて配置されることを抑制し、デバイス3と光学素子31の相対距離が傾きを含めて所望する値になるように光学素子31の高さを位置決めする長さを有する。
【0048】
次に本変形例の動作方法について説明する。
パッケージ1が真空チャンバの16内に搬入される動作からパッケージ1及びリッド30が大気圧によって押圧される動作は、前述した第1の実施形態のStep1からStep9までの動作と略同様であるため説明を省略する。
【0049】
図6に示すように、リッド30は、大気圧によって押圧され、内側(パッケージ1側)に変形する。変形したリッド30の枠体30aに保持されている光学素子31は当接面15に当接し、光学素子31の変形量は変形抑制部材13によって抑制される。すなわち光学素子31の変形量は変形抑制部材13の長さによって調整され、光学素子31は変形抑制部材13の長さによって所望の位置に位置決めされる。これにより光学素子31は、変形抑制部材13によってダイアタッチ面4を基準として光軸11aに沿ってダイアタッチ面4から所望する高さに設置され、ダイアタッチ面4と所望の距離で配置される。
【0050】
デバイス3は、ダイアタッチ面4に実装されているため、真空封止装置は、デバイス3と光学素子31との相対距離と、デバイス3に対する光軸11aの角度を、所望の値に調整配置する。このように光学素子31は、変形抑制部材13によって抑制されるため、所望する高さ位置及び所望する角度で配置される。
【0051】
本実施形態におけるこの後の動作は、前述した第1の実施形態のStep12からStep13までの動作と略同様であるため説明を省略する。
【0052】
従って、剛性が弱いリッド30が大気圧によって押圧された場合、本変形例の真空封止装置は、変形抑制部材13によって、光学素子31と、光学素子31を保持するリッド30の変形量をより低減させ、光学特性の劣化を抑えることが可能になる。また本実施形態は、光学素子31と、光学素子31を保持するリッド30の変形量を低減させることにより、より光学特性の劣化を抑え、歩留まりを向上させた安価な真空封止装置を提供する事が可能になる。
【0053】
また本変形例は、光学素子31の変形量を変形抑制部材13によって直接抑制させるため、第1の実施形態で示すように当接面22に対して光軸11aを垂直になる様に真空封止装置を製造する必要は無くなる。従って本変形例は、第1の実施形態におけるリッド10と比較してリッド30の歩留まりを向上させることが可能な真空封止装置をより安価に提供する事が可能になる。
【0054】
次に図7乃至図8を参照して第2の実施形態について説明する。
図7は、本発明の第2の実施形態の真空封止装置におけるパッケージの上面図である。図8は、図7をB−B線断面から見た図である。なお図7において接合材9は図示を省略している。なお、図7及び図8において、第1の実施形態と同様の構成については同じ参照符号を付し説明を省略する。なお本実施形態のリッドは、第1の実施形態と略同様であるため、図示及び詳細な説明を省略する。
【0055】
図7に示すように本実施形態の変形抑制部材43の外形は、寸法(尺度)は異なるがリッド10(枠体10a)の外形、または光学素子11の外形と相似形(外形は同じで倍率が異なる)である。また変形抑制部材43は、例えば中空の円柱形状を有し、中空リング部品である。変形抑制部材43は、デバイス3と光学素子11の相対距離が所望する値になるようにリッド10の高さを位置決めする長さを有する。
【0056】
本実施形態の変形抑制部材43の先端部位44に形成される当接面45は、ダイアタッチ面4と平行であり、当接面22と当接する。このように変形抑制部材43は、リッド10がパッケージ1と接合した際に、リッド10が変形することを抑制する。
【0057】
なお本実施形態のリッド10が、上述した変形例におけるリッド30である場合、変形抑制部材43は、上述した変形例のようにデバイス3と光学素子31の相対距離が所望する値になるように光学素子31の高さを位置決めする長さを有している。その際、当接面45は、光学素子31と当接し、これにより変形抑制部材43はリッド10がパッケージ1と接合した際に、光学素子31と、光学素子31を保持するリッド30の変形を抑制する。
【0058】
なお変形抑制部材43は、ワイヤボンド7との干渉を防止するために切欠43aを有している。よってワイヤボンド7は、変形抑制部材43に干渉せずにデバイス3と接続する。
【0059】
本実施形態の動作方法は、前述した第1の実施形態の動作方法と略同様であるために詳細な説明は省略する。
前述した第1の実施形態において、変形抑制部材13は、当接面15において当接面22と点当接するため、当接面15に応力が集中する。しかし本実施形態において、変形抑制部材43は、連続している面(当接面45)において当接面22と面当接する。このように本実施形態の変形抑制部材43は、第1の実施形態よりも大きな面積で当接するために、応力を分散することができる。また当接面45は、光学素子11の外形と相似形であるため、本実施形態の変形抑制部材43は、応力を均等に分散することができる。
【0060】
従って、剛性が弱いリッド10が大気圧によって押圧された場合、本実施形態の真空封止装置は、変形抑制部材43によってリッド10の変形量をより低減させ、光学特性の劣化を抑えることが可能になる。また本実施形態は、リッド10の変形量を低減させることにより、より光学特性の劣化を抑え、歩留まりを向上させた安価な真空封止装置を提供する事が可能になる。
【0061】
なお、デバイス3がフリップチップ実装され、ワイヤボンド7が存在しない場合は、切欠43aは必要ない。
【0062】
また当接面45が、当接面22、または光学素子11と当接した際、本実施形態の変形抑制部材43は応力を均等に分散することができるのであれば、変形抑制部材43は中空の円柱形状を有する必要はなく、例えば中空の角柱形状であっても良い。
【0063】
また本実施形態の真空封止装置は、上述したように第1の実施形態の変形例を組み込むことができる。
【0064】
また本発明は、上記実施形態及び変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【0065】
(付記1)
光を透過させる光学素子を有するリッドと、デバイスが実装されているダイアタッチ面を有するパッケージと、を接合することによって形成される中空部内を真空状態で気密封止する真空封止装置において、
前記中空部内における前記リッド、または前記パッケージの少なくとも一方に配設され、前記リッドが変形することを抑制する変形抑制部材と、
を具備することを特徴とする真空封止装置。
【0066】
(付記2)
前記パッケージに配設されている前変形抑制部材は、先端部位において前記リッド、または前記光学素子に対向し、前記リッド、または前記光学素子に当接する第1の当接面を有し、
前記リッドに配設されている前記変形抑制部材は、先端部位において前記ダイアタッチ面に対向し、前記ダイアタッチ面に当接する第2の当接面を有し、
前記変形抑制部材は、前記リッドが変形した際に、前記第1の面が前記リッド、または前記光学素子に当接する長さと、前記第2の当接面が前記ダイアタッチ面に当接する長さと、前記ダイアタッチ面を基準として前記光学素子が前記光軸に沿って前記ダイアタッチ面から所望する高さに設置される長さを有することを特徴とする付記1に記載の真空封止装置。
【0067】
(付記3)
前記変形抑制部材は、柱状形状を有すること特徴とする付記2に記載の真空封止装置。
【0068】
(付記4)
前記変形抑制部材は複数配設され、前記第1の当接面と前記第2の当接面は、前記ダイアタッチ面と平行であることを特徴とする付記3に記載の真空封止装置。
【0069】
(付記5)
複数の前記変形抑制部材は、前記光軸を中心に円周上に均等な間隔に配設されていることを特徴とする付記4に記載の真空封止装置。
【0070】
(付記6)
前記変形抑制部材は、3本配設されており、3本の前記変形抑制部材は、前記光軸を中心に円周上に略120度間隔で均等に配設されていることを特徴とする付記5に記載の真空封止装置。
【0071】
(付記7)
前記変形抑制部材は、円柱状形状を有すること特徴とする付記3に記載の真空封止装置。
【0072】
(付記8)
前記変形抑制部材の外形は、前記リッド、または前記光学素子の外形と相似形であることを特徴とする付記7に記載の真空封止装置。
【0073】
(付記9)
前記変形抑制部材の外形は、前記リッド、または前記光学素子の外形と相似形であることを特徴とする付記2に記載の真空封止装置。
【0074】
(付記10)
前記変形抑制部材は、中空の柱形状を有していることを特徴とする付記9に記載の真空封止装置。
【0075】
(付記11)
前記変形抑制部材は、中空の円柱形状を有していることを特徴とする付記10に記載の真空封止装置。
【0076】
(付記12)
前記変形抑制部材は、中空リングを有していることを特徴とする付記11に記載の真空封止装置。
【0077】
(付記13)
前記第1の当接面と前記第2の当接面は、前記ダイアタッチ面と平行であることを特徴とする付記12に記載の真空封止装置。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る真空封止装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、図1をA−A線断面から見た図である。
【図3】図3は、真空封止装置を有する真空チャンバの構成を示す図である
【図4】図4は、封止後の真空封止装置の構成を示す図である。
【図5】図5は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る真空封止装置の構成を示す図である。
【図6】図6は、封止後の真空封止装置の構成を示す図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施形態の真空封止装置におけるパッケージの上面図である。
【図8】図8は、図7をB−B線断面から見た図である。
【図9】図9は、従来の気密封止装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1…パッケージ、1a…上面、2…中空部(キャビティ)、2a…開口部、3…デバイス、3a…中心部、4…ダイアタッチ面、5…リード、6…パッド、7…ワイヤボンド、8…金属膜、9…接合材、10…リッド、10a…枠体、10b…開口部、11…光学素子、11a…光軸、12…金属膜、13…変形抑制部材、14…先端部位、15…当接面、16…真空チャンバ、17…ステージ、18…ヒータツール、19…ヒータツール駆動機構、20…排気機構、21…圧力調整機構、22…当接面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過させる光学素子と前記光学素子を保持する枠体を有するリッドと、デバイスが実装され前記光学素子と前記枠体に対向するダイアタッチ面を有するパッケージと、を接合することによって前記リッドと前記パッケージに形成される中空部を、真空状態で気密封止する真空封止装置において、
前記リッドと前記パッケージが接合した際に、前記リッドまたは前記パッケージにおける前記中空部内に配設され、前記リッドが変形することを抑制する変形抑制部材と、
を具備することを特徴とする真空封止装置。
【請求項2】
前記変形抑制部材は、前記リッドが変形した際に、光軸方向において前記変形抑制部材に対向する面に当接する長さと、前記ダイアタッチ面を基準として前記光学素子が前記光軸に沿って前記ダイアタッチ面から所望する高さに設置される長さを有することを特徴とする請求項1に記載の真空封止装置。
【請求項3】
前記変形抑制部材は、前記リッド、または前記パッケージの少なくとも一方に配設され、柱状形状を有すること特徴とする請求項1乃至2に記載の真空封止装置。
【請求項4】
前記変形抑制部材は複数配設され、前記変形抑制部材の先端部位における当接面は、光軸方向において前記変形抑制部材に対向する面と当接し、前記ダイアタッチ面と平行であることを特徴とする請求項2乃至3に記載の真空封止装置。
【請求項5】
複数の前記変形抑制部材は、前記光軸を中心に円周上に均等な間隔に配設されていることを特徴とする請求項4に記載の真空封止装置。
【請求項6】
複数の前記変形抑制部材は、3本配設されており、3本の前記変形抑制部材は、前記光軸を中心に円周上に略120度間隔で均等に配設されていることを特徴とする請求項4乃至5に記載の真空封止装置。
【請求項7】
前記変形抑制部材の外形は、前記リッド、または前記光学素子の外形と相似形であることを特徴とする請求項1乃至2に記載の真空封止装置。
【請求項8】
前記変形抑制部材は、前記リッド、または前記パッケージの少なくとも一方に配設され、中空リングを有していることを特徴とする請求項7に記載の真空封止装置。
【請求項9】
前記変形抑制部材の先端部位における当接面は、光軸方向において前記変形抑制部材に対向する面と当接し、前記ダイアタッチ面と平行であることを特徴とする請求項7乃至8に記載の真空封止装置。
【請求項10】
前記パッケージの前記ダイアタッチ面に配設される前記変形抑制部材は、先端部位において前記枠体に当接する当接面を有することを特徴とする請求項1乃至9に記載の真空封止装置。
【請求項11】
前記パッケージの前記ダイアタッチ面に配設される前記変形抑制部材は、先端部位において前記光学素子に当接する当接面を有することを特徴とする請求項1乃至9に記載の真空封止装置。
【請求項12】
前記リッドに配設される前記変形抑制部材は、先端部位において前記ダイアタッチ面に当接する当接面を有することを特徴とする請求項1乃至9に記載の真空封止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−298205(P2008−298205A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145631(P2007−145631)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】