説明

真空度切替方法

【課題】真空度付与装置において高い真空度から低い真空度への切替を速やかに行うことを可能とする真空度切替方法を提供する。
【解決手段】ワークWを吸着または離脱させる吸引チャック7に接続されている流路部分8を高い真空度の第1の負圧にある状態から相対的に低い真空度に低圧化するに際し、第2の負圧制御装置4に流路部分8を接続した直後に、オン・オフをわずかな期間オフ状態として、流路部分8に外気を導入し、次に、オン・オフバルブ6をオン状態として、第2の負圧制御装置4から吸引チャック7に至る流路部分の低圧化を果し、しかる後、オン・オフバルブ6をオフ状態としてワークWを離脱させる、真空度切替方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空度付与装置における真空度切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品チップなどの様々なワークを搬送するのに、真空度付与装置による真空吸引を利用した吸脱着装置が広く用いられている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、図4に示す吸脱着装置が開示されている。
【0004】
図4は、特許文献1に記載のワーク吸脱着装置を示す概略構成図である。
【0005】
ワーク吸脱着装置101は、真空源102を有する。真空源102に、操作用電磁弁103が接続されている。より具体例には、操作用電磁弁103は、第1の流路104と、第2の流路105とを有する。
【0006】
操作用電磁弁103は、図4の横方向に移動されるように構成されている。図4では、第1の流路104が、通気管106により真空源102に接続されている。また、真空源102と、操作用電磁弁103とは、通気管107によっても接続されている。通気管107中には、負圧調整弁108が設けられている。負圧調整弁108により、通気管107の操作用電磁弁103側における負圧は、通気管106の負圧よりも真空度が低くされている。
【0007】
また、通気管109により、操作用電磁弁103が、パッド制御弁110に接続されている。パッド制御弁110が、吸着パッド111に接続されている。パッド制御弁110は、通気管109と、吸着パッド111を接続した状態、すなわち吸着パッド111に負圧を与えてワーク112を吸着する状態と、外気に連通され、ワーク112を吸着パッド111から離脱される状態との間で切り替えられるように構成されている。
【0008】
操作用電磁弁103は、図4に示す状態では、通気管106と通気管109とを接続し、高い真空度を通気管109に与えている。それによって、上記パッド制御弁110が吸着パッド111に負圧を与える状態とされており、ワーク112が吸着パッド111により吸着されている。
【0009】
ワーク112を離脱させる場合には、図4に示す状態から操作用電磁弁103を切り替える。その結果、通気管107と通気管109とが第2の流路105により連通される。この場合には、通気管109内の圧力は、相対的に低い真空度となる。この状態において、パッド制御弁110を外気に連通させ、ワーク112をワーク吸着パッド111から離脱させる。
【0010】
従来は、第2の流路105のポートを大気に連通させ、通気管109内を大気圧とし、ワーク112を脱離させていた。しかしながら、第2の流路105から導入される外気の導入速度が比較的低いので、通気管109が長い場合には、ワーク112を速やかに離脱させることができなかった。これに対して、特許文献1に記載のワーク吸脱着装置101では、ワーク吸着パッド111に該部分に設けられたパッド制御弁110を外気と連通させることにより、ワーク112を速やかに脱離させることが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平2−250787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ワーク吸脱着装置101は、ワーク112を吸着している高真空状態の流路を低真空度に切り替えるのに、上記操作用電磁弁103と、負圧調整弁108とを用いている。さらにワーク112を速やかに離脱させるために、通気管路109を低真空度とした後に、パッド制御弁110を外気と連通させている。なお、負圧調整弁108を設け、通気管109からワーク吸着パッド111に至る流路部分を予め低真空度に切り替える操作が必要であるのは以下の理由による。
【0013】
すなわち、パッド制御弁110を外気と連通させたとしても、パッド制御弁110に設けられる外気導入口が比較的小さく、真空源102からの吸引力により、ワーク吸着パッド111における負圧を速やかになくすことができないからである。
【0014】
ワーク吸脱着装置101では、上記構成により、ワークの吸脱着が速やかに行われる。しかしながら、通気管109内をワーク吸着状態である高真空状態から低真空状態に切り替え、さらにパッド制御弁110を外気に連通させる工程に、依然としてかなりの時間を必要としていた。
【0015】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、高真空状態から低真空度に流路を切り替えた後に、例えば吸引チャックのような吸引部材における真空度を低真空度に速やかに移行させることを可能とする真空度切替方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る真空度切替方法は、以下のワーク吸脱着装置を用いて行われる。すなわち、ワーク吸脱着装置は、真空源と、前記真空源に接続されており、相対的に高真空の第1の負圧を与える第1の負圧制御装置と、前記真空源に接続されており、前記第1の負圧制御装置よりも低真空の第2の負圧を与え、かつ外気導入口を有する第2の負圧制御装置と、前記第1の負圧制御装置または前記第2の負圧制御装置に接続される第1及び第2のポートと、第3のポートとを有し、前記第1のポートと前記第3のポートとを接続している第1の接続状態と、前記第2のポートと前記第3のポートとを接続している第2の接続状態との間で切り替えられる流路切替バルブと、吸引部材と、前記流路切替バルブの前記第3のポートに接続されているオンポートと、外気導入口であるオフポートと、前記吸引部材に接続されている第4のポートとを有し、前記オンポートと前記第4のポートとが接続されているオン状態と、前記オフポートと前記第4のポートとが接続されるオフ状態との間で切り替えられるオン・オフバルブと、前記第4のポートと前記吸引部材とを接続している流路を構成する流路構成部材とを備える。
【0017】
本発明の真空度切替方法は、前記流路切替バルブを前記第1の接続状態とし、前記オン・オフバルブをオン状態として、前記第1の負圧を前記吸引部材に与える工程と、前記流路切替バルブを第2の接続状態にして、前記吸引部材を前記第2の負圧制御装置に接続して前記第2の負圧制御装置から前記吸引部材までの流路部分の負圧の絶対値を低くする低圧化工程と、前記低圧化工程の後に、前記オン・オフバルブをオン状態として前記オフポートから前記吸引部材までの流路部分を外気圧以上にする工程とを有する真空度切替方法において、前記低圧化工程において、前記吸引部材を前記第2の負圧制御装置に接続した後に、前記オン・オフバルブをオフ状態として、前記オフポートと前記吸引部材とを結ぶ流路に前記オフポートから外気を導入した後に、前記オン・オフバルブをオン状態とし、前記オンポートを前記切替バルブの第3のポートを介して前記第2の負圧制御装置に再度接続することを特徴とする。
【0018】
なお、本明細書において、上記低圧化とは、高い真空度から低い真空度に圧力を変化させることをいうものとする。言い換えれば、負圧の絶対値が大きい状態から負圧の絶対値が小さい状態に圧力を変化させることを、低圧化という。
【0019】
本発明に係る真空度切替方法のある特定の局面では、前記第1の負圧と前記第2の負圧との差が、前記第2の負圧と外気圧との差よりも大きい。
【0020】
本発明に係る真空度切替方法のさらに他の特定の局面では、前記低圧化工程において、前記オン・オフバルブをオフ状態として、前記オン・オフバルブと前記吸引部材との間の流路部分を低圧化するに際し、前記オン・オフバルブのオフポートから外気を導入し、該流路部分内の圧力を前記第1の負圧よりも低真空の負圧とする。
【0021】
本発明に係る真空度切替方法のさらに別の特定の局面では、前記低圧化工程において、前記オン・オフバルブをオフ状態として、前記オン・オフバルブを前記吸引部材との間の流路を低圧化するに際し、該流路部分の圧力を前記第2の真空度または該第2の真空度よりも高真空の負圧とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る真空度切替方法では、オン・オフバルブをオフ状態としてオン・オフバルブと吸引部材との間の流路部分を低圧化した後に、オン・オフバルブのオンポートを第2の負圧制御装置に接続するオン状態とする工程がさらに備えられているので、第2の負圧制御装置から吸引部材までの流路部分を速やかに低真空度状態とすることができる。従って、オン・オフバルブを再度オフ状態とすることにより、ワークを速やかに離脱させることができる。
【0023】
よって、本発明によれば、電子部品などのワークの吸脱着動作速度を高めることができ、工程の短縮を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の真空度切替方法に用いられるワーク吸脱着装置の概略構成図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明の一実施形態の真空度切替方法を説明するための各概略構成図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の一実施形態の真空度切替方法の各工程を説明するための概略構成図である。
【図4】従来のワーク吸脱着装置の一例を説明するための概略構成図である。
【図5】(a)〜(d)は、従来のワーク吸脱着装置における真空度切替方法を説明するための概略構成図である。
【図6】(a)〜(c)は、従来のワーク吸脱着装置における真空度切替方法を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体例な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0026】
以下の実施形態では、電子部品などのワークを吸脱着する装置に適用した例を説明することとする。もっとも、本発明は、ワークの吸脱着に限らず、様々な吸引部材に真空度を付与する真空度付与装置における真空度切替方法に一般的に適用することができるものである。従って、真空度が与えられる吸引部材は、以下の実施形態の吸引チャックに限定されるものではない。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態で用いられるワーク吸脱着装置の概略構成図である。ワーク吸脱着装置1は、真空源2を有する。真空源2としては、真空ポンプなどの公知の減圧装置を用いることができる。
【0028】
真空源2に、第1の負圧制御装置3及び第2の負圧制御装置4が接続されている。第1の負圧制御装置3は、第1の負圧制御装置3よりも後段の流路部分の真空度を相対的に高い真空度である第1の負圧に設定する。本実施例では、第1の負圧として−50kPaの真空度を後段の流路部分に与える。
【0029】
他方、第2の負圧制御装置4は、第1の負圧制御装置3よりも低い真空度である第2の負圧を実現する。本実施形態では、第2の負圧制御装置4は、−10kPaの真空度を第2の負圧制御装置4よりも後段の流路部分に与える。
【0030】
第1,第2の負圧制御装置3,4は、周知の圧力制御弁等によって構成することができる。この場合、第2の負圧制御装置4には、負圧を調整するために外気を導入するための外気導入口が設けられている。
【0031】
第1,第2の負圧制御装置3,4の後段には、切替バルブ5が接続されている。切替バルブ5は、第1のポート5a、第2のポート5b及び第3のポート5cを有する。第1のポート5a及び第2のポート5bが、それぞれ、第1,第2の負圧制御装置3,4に接続されている。第3のポート5cは、次段のオン・オフバルブ6の後述のオンポート6aに接続されている。
【0032】
切替バルブ5は、吸引流路を切り替えるために設けられている。図1では、第1のポート5aと第3のポート5cとが接続されている状態が略図的に示されている。この接続状態を第1の接続状態とする。
【0033】
切替バルブ5では、切替により、第2のポート5bと、第3のポート5cとが接続されている第2の接続状態とすることができる。
【0034】
このような切替バルブは、特許文献1に記載の電磁弁等を用いた周知の流路切替装置により構成することができる。
【0035】
切替バルブ5の後段には、前述したオン・オフバルブが配置されている。オン・オフバルブは、オンポート6aと、オフポートと6bと、第4のポート6cとを有する。オン・オフバルブ6のオンポート6aが、切替バルブ5の第3のポート5cに接続されている。オフポート6bは、外気に連通されている。
【0036】
オン・オフバルブ6は、切替バルブ5と同様に、流路を切り替えるように動作される。すなわち、図1では、実線で示すように、オンポート6aと第4のポート6cとが接続されている状態とされている。この状態をオン状態とする。また、オン・オフバルブにおいては、流路を切り替えることにより、図1の破線で示す接続状態とすることができる。この接続状態では、オフポート6bと、第4のポート6cとが接続される。この接続状態をオフ状態とする。
【0037】
オン・オフバルブ6は、切替バルブ5と同様に、電磁弁を用いた周知の流路切替装置により構成することができる。
【0038】
オン・オフバルブ6は、特許文献1に記載のパッド制御弁110と同様に、吸引チャック7の近傍に設けられることが望ましい。吸引チャック7は、周知の吸着パッド等により構成される。吸引チャック7は、第4のポート6cに接続されている。第4のポート6cから負圧が与えられると、吸引チャック7は、ワークを吸着し、保持する。第4のポート6cが常圧にされると、あるいは加圧されると、吸引チャック7は、ワークを離脱させる。
【0039】
ワーク吸脱着装置1では、上記のように、吸引チャック7に負圧を与えてワークを吸着保持し、吸引チャック7に外気圧を与え、あるいは加圧することにより、ワークを離脱させることができる。この場合、ワークを吸着保持する状態では、吸引チャック7に第1の負圧制御装置3から与えられる高真空度の負圧が与えられる。他方、ワークを離脱させる場合には、吸引チャック7に外気圧または外気圧よりも高い圧力を与えねばならない。この真空度切替方法が本発明の実施形態であり、図2(a)〜(d)及び図3(a)〜(d)を参照して、詳述する。
【0040】
本実施形態の真空度切替方法の説明に先立ち、ワーク吸脱着装置を用いた従来の真空度切替方法の問題点を図5(a)〜(d)及び図6(a)〜(c)を参照して明らかにする。
【0041】
ここでは、説明のために、ワーク吸脱着装置1を用いて従来の真空度切替方法の問題点を説明することとする。
【0042】
図5(a)に示すように、初期状態では、切替バルブ5を第1の接続状態とし、オン・オフバルブ6をオフ状態とする。この状態では、第1の負圧制御装置3からオン・オフバルブ6のオンポートに至る部分が上記第1の負圧に維持される。
【0043】
次に、図5(b)に示すように、オン・オフバルブ6をオン状態とする。その結果、オンポート6aが第4のポート6cに接続され、吸引チャック7に第1の負圧が与えられる。その結果、図5(b)の一点鎖線Aで囲む流路部分が第1の負圧に維持される。すなわち、第1の負圧制御装置3から、吸引チャック7に至る流路部分が第1の負圧に維持される。以下、第1の負圧で維持される流路部分を一点鎖線Aで囲んで示すこととする。従って、図5(c)に示すように、ワークWが吸引チャック7に吸着され、保持される。
【0044】
次に、ワークWの離脱工程を示す。まず、図5(d)に示すように、切替バルブ5を第2の接続状態とする。その結果、第2のポート5bと、第3のポート5cとが接続される。第2の負圧制御装置4では、前述したように、空気導入口から空気を導入することにより、第2の負圧である−10kPaを後段の流路部分に与える。従って、図5(d)の一点鎖線A1で示す部分が、前述した第1の負圧とされているが、数秒すると、第2の負圧制御装置4から吸引チャック7に至る流路部分が第2の負圧に維持されことになる。この第2の負圧に維持される部分を、図6(a)において破線Bで示す。破線Bで囲まれている部分が、第2の負圧に維持されている部分である。このようにして、オン・オフバルブ6と吸引チャック7との間の流路部分を第2の負圧状態にし、低圧化を図る。
【0045】
上記低圧化を図った後に、図6(b)に示すように、オン・オフバルブ6をオフ状態とする。その結果、オフポート6bと、第4のポート6cが接続され、オフポート6bから矢印Yで示すように外気が流入する。そのため、図6(c)に示すように、吸引チャック7に外気圧が与えられ、ワークWを離脱させることができる。
【0046】
図5及び図6は、特許文献1に記載の真空度切替方法を模式的に示した図である。上記説明から明らかなように、ワークWを吸着保持するに際しては、吸引チャック7に第1の負圧を与えねばならない。他方、ワークWを離脱させる場合には、吸引チャック7に外気圧を与えねばならない。
【0047】
図5(c)に示した吸着保持状態から、オン・オフバルブ6をオフ状態にすれば、オフポート6bから外気を導入し、吸引チャック7に外気圧を与えることができるとも考えられる。
【0048】
しかしながら、オフポート6bの開口径は小さく、吸引チャック7を常圧に戻すのに長時間を要する。オフポート6bの開口径を大きくすれば、この時間を短縮することができるが、吸引チャック7の近くにそのような大きな開口径及び外気導入路を有するオン・オフバルブを設けることはできない。従って、上記のように、図5(d)及び図6(a)に示した低圧化工程を実施し、先ず、オン・オフバルブ6と吸引チャック7との間の流路部分を第2の負圧状態としている。しかる後、第2の負圧状態から、オン・オフバルブをオフ状態として、吸引チャック7に常圧を与えている。
【0049】
しかしながら、上記真空度切替方法では、図5(a)の状態から、図6(a)に示すように、吸引チャック7に第2の負圧を与える低圧化工程に2秒〜5秒といった比較的長い時間を必要としていた。
【0050】
すなわち、第1の負圧制御装置3及び第2の負圧制御装置4では、外気導入口が設けられており、外気導入口から外気の導入速度がそれぞれ特定の値とされることにより、第1及び第2の負圧を発生させる。もっとも、このような負圧の値を制御するために設けられているものであるため、外気導入口の径は比較的小さい。従って、上記図5(d)に示した低圧化工程においては、かなりの時間を必要とする。よって、第2の負圧制御装置4から離れた流路部分8内の圧力や吸引チャック7への圧力を低めるには、比較的長い状態を必要とする。
【0051】
本実施形態は、このような低圧化工程の時間を短縮することを特徴とする。これを、以下において説明する。
【0052】
本実施形態の真空度切替方法では、先ず、図2(a)に示す初期状態では、従来法と同様に、切替バルブ5を第1の接続状態とし、オン・オフバルブ6をオフ状態とする。そのため、第1の負圧制御装置3に、オン・オフバルブ6のオンポート6aが接続され、破線Aで示す流路部分が第1の負圧に維持される。
【0053】
次に、図2(b)に示すように、オン・オフバルブ6をオン状態とする。その結果、オン・オフバルブ6から吸引チャック7に至る流路部分を第1の負圧に維持される。すなわち、−50kPaの減圧下に維持される。従って、図2(c)に示すように、吸引チャック7により、ワークWを吸着し、保持することができる。
【0054】
次に、ワークWを離脱させるために、先ず、低圧化工程を実施する。本実施形態においても、図5(d)と同様に、図2(d)において、切替バルブを第2の接続状態とする。その結果、第2の負圧制御装置4から外気が流入し、切替バルブ5側に至る。しかしながら、吸引チャック7までを第2の負圧にするには、前述したように、2秒〜5秒といった長い時間を要する。
【0055】
そこで、本実施形態では、図3(a)に示すように、切替バルブ5を第2の接続状態とした直後に、オン・オフバルブ6をわずかな期間オフ状態とする。このオン・オフバルブ6をオフ状態とするタイミングは、上記切替バルブ5を第2の接続状態とすると同時であってもよく、あるいはその直後であればよい。この直後とは、0.5秒以内の期間であればよい。もっとも、この0.5秒の数値は、用意するワーク吸脱着装置の寸法や第1及び第2の負圧によって異なる。
【0056】
図3(a)に示すように、オン・オフバルブ6がオフ状態とされると、オフポート6bから外気が流入する。そのため、オフポート6bから吸引チャック7に至る流路部分に外気が導入することとなる。従って、第2の負圧制御装置4から、オン・オフバルブ6までの流路部分が低圧化されていく工程において、オン・オフバルブ6から吸引チャック7に至る流路部分も同時に低圧化されていく。よって、オン・オフバルブ6をわずかの間オフ状態とするだけで、第2の負圧制御装置4から離れた流路部分8すなわち、オン・オフバルブ6と吸引チャック7との間の流路部分8を速やかに低圧化することができる。また、オン・オフバルブ6は、前述したように、吸引チャック7の近くに設けられているため、上記流路部分8の長さが比較的短いため、それによっても、上記流路部分8の低圧化はわずかな期間で完了させることができる。このオン・オフバルブをオフ状態とする時間はわずかの期間でよく、本実施形態では、0.1秒以下である。
【0057】
その結果、第2の負圧制御装置4から吸引チャック7に至る流路部分が速やかに低圧化される。
【0058】
上記のように、本実施形態では、吸引チャック7に接続されている流路部分8の低圧化を0.5秒以内の非常に短い時間で終了することができる。しかる後、図3(b)に示すように、オン・オフバルブ6を再度オン状態とする。このようにして、第2の負圧制御装置4から吸引チャック7に至る流路部分を速やかに低圧化することができる。
【0059】
次に、図3(c)に示すように、オン・オフバルブ6をオフ状態とし、オフポート6bから外気を導入する。その結果、流路部分8内の圧力が速やかに外気圧となる。よって、図3(d)に示すように、ワークWを吸引チャック7から離脱させることができる。
【0060】
上記のように、本実施形態の真空度切替方法では、低圧化工程の時間を従来の真空度切替方法に比べて著しく短縮することが可能となる。よって、ワークWの吸脱着動作の高速化を図ることが可能となる。
【0061】
なお、上記オン・オフバルブ6のオフポート6bは外気に連通されている。従って、オフポート6bを流路部分8に接続すれば、流路部分8及び吸引チャック7を外気圧にすることができる。しかしながら、このオフポート6bの開口径は小さく、外気導入速度はそれほど速くはない。従って、上記のような低圧化工程を先ず実施する必要がある。すなわち、第2の負圧とした後に、オフポート6bを吸引チャック7に接続することにより、ワークWを速やかに離脱させることができる。
【0062】
なお、上記ワークWとしては、例えば、電子部品チップなどを挙げることができるが、本発明により吸脱着されるワークWは、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0063】
1…ワーク吸脱着装置
2…真空源
3…第1の負圧制御装置
4…第2の負圧制御装置
5…切替バルブ
5a…第1のポート
5b…第2のポート
5c…第3のポート
6…オン・オフバルブ
6a…オンポート
6b…オフポート
6c…第4のポート
7…吸引チャック
8…流路部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空源と、
前記真空源に接続されており、相対的に高真空の第1の負圧を与える第1の負圧制御装置と、
前記真空源に接続されており、前記第1の負圧制御装置よりも低真空の第2の負圧を与え、かつ外気導入口を有する第2の負圧制御装置と、
前記第1の負圧制御装置または前記第2の負圧制御装置に接続される第1及び第2のポートと、第3のポートとを有し、前記第1のポートと前記第3のポートとを接続している第1の接続状態と、前記第2のポートと前記第3のポートとを接続している第2の接続状態との間で切り替えられる流路切替バルブと、
吸引部材と、
前記流路切替バルブの前記第3のポートに接続されているオンポートと、外気導入口であるオフポートと、前記吸引部材に接続されている第4のポートとを有し、前記オンポートと前記第4のポートとが接続されているオン状態と、前記オフポートと前記第4のポートとが接続されるオフ状態との間で切り替えられるオン・オフバルブと、
前記第4のポートと前記吸引部材とを接続している流路を構成する流路構成部材とを備える真空度付与装置を用い、
前記流路切替バルブを前記第1の接続状態とし、前記オン・オフバルブをオン状態として、前記第1の負圧を前記吸引部材に与える工程と、
前記流路切替バルブを第2の接続状態にして、前記吸引部材を前記第2の負圧制御装置に接続して前記第2の負圧制御装置から前記吸引部材までの流路部分の負圧の絶対値を低くする低圧化工程と、
前記低圧化工程の後に、前記オン・オフバルブをオン状態として前記オフポートから前記吸引部材までの流路部分を外気圧以上にする工程とを有するワーク吸脱着装置の真空度切替方法において、
前記低圧化工程において、前記吸引部材を前記第2の負圧制御装置に接続した後に、前記オン・オフバルブをオフ状態として、前記オフポートと前記吸引部材とを結ぶ流路に前記オフポートから外気を導入した後に、前記オン・オフバルブをオン状態とし、前記オンポートを前記切替バルブの第3のポートを介して前記第2の負圧制御装置に再度接続することを特徴とする真空度切替方法。
【請求項2】
前記第1の負圧と前記第2の負圧との差が、前記第2の負圧と外気圧との差よりも大きい、請求項1に記載の真空度切替方法。
【請求項3】
前記低圧化工程において、前記オン・オフバルブをオフ状態として、前記オン・オフバルブと前記吸引部材との間の流路部分を低圧化するに際し、前記オン・オフバルブのオフポートから外気を導入し、該流路部分内の圧力を前記第1の負圧よりも低真空の負圧とする、請求項1または2に記載の真空度切替方法。
【請求項4】
前記低圧化工程において、前記オン・オフバルブをオフ状態として、前記オン・オフバルブを前記吸引部材との間の流路を低圧化するに際し、該流路部分の圧力を前記第2の真空度または該第2の真空度よりも高真空の負圧とする、請求項3に記載の真空度切替方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−163451(P2011−163451A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27104(P2010−27104)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】