説明

真空式施錠扉

【課題】 錠前の代わりとすることを可能とすることで、機械的に施錠する必要を無くし、不審者の侵入を防止することが可能な扉真空式閉鎖装置を提供する。
【解決手段】 玄関枠W1、W2、W3、W4の開口部に開閉自在に取り付けられた玄関扉D1を、閉鎖状態に維持する扉真空式閉鎖装置である。この扉真空式閉鎖装置は、玄関枠W1、W2、W3、W4側に設けられ、玄関扉D1が閉鎖位置であるときに、開口戸当り部の縁部に設けられた気密ゴム(弾性)部K1及びK2と玄関扉D1との間の空間を閉塞空間Q1とする連続吸盤と、閉塞空間Q1内の空気を吸引する吸引部(継ぎ手T1、ホースT2および分岐管T3を経由し吸引ポンプSC1へ接続)X1とを備え、連続吸盤Q1は、弾性部材K1,K2により、基部から扉吸着面に当接する先部に向かって拡がるように形成されている。ホースT2には、吸引ポンプSC1側からの逆流を防止するバルブT7が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉を閉鎖状態に維持することが可能な真空式扉閉鎖装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の扉閉鎖装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載の自動車ドアの気密閉鎖構造は、キヤビンのドア開口に沿って周設されたウエザーストリツプと、このウエザーストリツプの一端に接続され、他端がエアクリーナに接続された負圧ホースとを備えたものである。
【0003】
このウエザーストリツプは、閉鎖断面を有すると共に、ドアパネルに当接する面に適宜間隔で複数の小径孔が配設されている。ドアを閉めると、ドアパネルの外周部内面がウエザーストリツプに当接するが、ウエザーストリツプは負圧ホースを介してエアクリーナに接続されているので、ウエザーストリツプの内圧が負圧となり、小径孔を介してドアパネルを吸着するので、ウエザーストリツプとドアパネルの間の気密性を保つことができる(特許文献1参照)。
【0004】
錠前筐体内部に、モータと直結した空気ポンプを設置し、それから供給される高圧の空気圧をエアタンクに常時貯蔵し、このエアタンクに連結して、施開錠を制御するバルブ部材と複動エアピストンシリンダでデッドボルトを駆動する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
ドアーの施錠・解錠するデッドボルトと、その一部に形成された係止片収納用凹溝と、凹溝内のバネで突出方向に付勢された係止片と、施錠状態においてバネ力に抗して押し下げる方向に配設されたピストン片と、ピストン片が空気圧で摺動可能に配設された空気圧管路と、該空気圧管路から分岐し、前記デッドボルトを係止片を介して後退させる方向に駆動する空気圧管路とを備えて、迅速に解錠する事ができることものを提案されている(特許文献4参照)。
【0006】
上記の文献においては、空気圧を使用して、扉の閉塞をもたらしているが、真空系の吸引力を使用して扉の開閉については少ない。
【0007】
真空扉に関しては、本発明者らは、不審者の侵入を防止することが可能な扉閉鎖装置を提供した。とくに玄関枠の開口部に開閉自在に取り付けられた玄関扉を、閉鎖状態に維持する扉閉鎖装置であって、玄関扉が閉鎖位置であるときに、開口部の縁部と玄関扉との間の空間を閉塞空間とする吸盤と、閉塞空間内の空気を吸引するホースおよび吸引ポンプとを備え、吸盤は、弾性部材により、基部から吸着面に当接する先部に向かって拡がるように形成して、吸引ポンプ側からの逆流を防止するバルブが設けられている方法を提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
上記の特許文献に対して、本発明においては、真空扉の開閉を迅速に、しかも安全性を高めることに注力して改良を加えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録2516108号公報
【特許文献2】特開2009−52290号公報
【特許文献3】特開2007−70927号公報
【特許文献4】特開平9−88393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の自動車ドアの気密閉鎖構造は、雨水侵入防止を目的としている。ドアパネルの外周部内面をウエザーストリツプの当接面に設けられた小径孔から吸引しているが、吸引力が小さい為、吸着の度合いが低いものと思われる。又、ウエザーストリツプがドアパネルの外周部内面により押圧されることで、ウエザーストリツプが変形して小径孔からの吸引に対する吸着面となるが、ウエザーストリツプの弾性復元力はドアを開放するように作用する。以上により、小径孔からの吸引力だけでドアパネルを密着して固定させるには、相当な大きな吸引力が必要になる。
【0011】
従って、特許文献1に記載の自動車ドアの気密閉鎖構造では、ドアパネルをウエザーストリツプに押し付け、閉鎖状態に維持するロック機構が必要であると思われる。ドアパネルが閉鎖状態に維持された上で、ウエザーストリツプがドアパネルの外周部内面に吸着することで、気密性だけを確保しているものと思われる。これでは、不審者の侵入を防止する錠前の代わりとして、家屋の玄関や、施設の出入り口に設けられるものではない。
【0012】
そこで本発明は、錠前の代わりとすることを可能とすることで、不審者の侵入を防止することが可能な真空式扉閉鎖装置を提供することを目的とする。
また特許文献2において、真空扉に関しては、本発明者らは、不審者の侵入を防止することが可能な扉閉鎖装置を提供した。とくに玄関枠の開口部に開閉自在に取り付けられた玄関扉を、閉鎖状態に維持する扉閉鎖装置あり、玄関扉が閉鎖位置であるときには、開口部の縁部と玄関扉との間の空間を閉塞空間とする吸盤と、閉塞空間内の空気を吸引するホースおよび吸引ポンプとを備えた。さらに吸盤は、弾性部材により、基部から吸着面に当接する先部に向かって拡がるように形成して、吸引ポンプ側からの逆流を防止するバルブが設けたものを先に提案したが、開閉の迅速、及び安全性からは改良が求められていた。
【0013】
本発明においては、真空扉の開閉を迅速に、しかも安全性を高めることに注力して改良を加えた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
開口部に開閉自在に取り付けられた扉を、閉鎖状態に維持する扉閉鎖装置であって、前記扉が閉鎖位置であるときに、前記枠体の戸当たり部の縁部に設けられた気密ゴム(弾性)部と、扉の接触面との間に真空式閉塞空間部を形成できる閉塞部と、前記閉塞空間部内の空気を吸引する吸引部と、空気の吸引及び注入を制御する制御部とを備えている扉真空式閉鎖装置である。
【0015】
前記枠体の戸当たり部は、前記枠体開口戸当たり部の縁部の三部分、あるいは四部分であって、枠体の戸当たり部面に連続的に気密ゴム部を取り付け可能にした凹凸形状を設置されている。
【0016】
気密ゴム部は、V字形状をして、先端部を弾力性にして、扉面に接触できて、扉面との空間部の容積を100ml〜1000mlにして、材料としてEPDM(エチレンプロピレン)ゴム、SR(シリコ−ン)ゴム、CR(クロロプレン)ゴムで、吸引の度合いに比例して、扉との接触面積及び体積に極端に大きな変動を起こさない程度の硬さを有している。
【0017】
V字形状の気密ゴムの形状は、扉接触部と扉枠体の接合部とからなり、扉接触部のV字形状で、高さを5〜10mm、両先端部の幅5〜20mm、両先端部の弾力性を持つ部分を5〜10mm、凸状先端部の厚さを0.5〜2mmであり、接合部のゴム部として枠体の接合穴に嵌め込み可能かつ抜け難い括れ部を持っている。
【0018】
前記V字形状の気密ゴムの形状は、ひれの形状・長さ及び扉接触部との接着面積、気密状態を確認し最適なものを決定した。気密ゴム材質に関しても、接触面積及び体積に極端に大きな変動を起こさせない程度の硬度を選択した。現段階での最適な形状及び硬の気密ゴムを決定するようにした。
【0019】
扉は、金属製で、ステンレススチール(SUS)、スチール(SGHC)、アルミニウム(A1100P−H14)であって、表面の平滑度を1/1000mm以下、穴開け防止部材を施した扉真空式閉鎖装置である。
前記吸引部は、前記連続吸盤基部継ぎ手の数箇所に連通するホースとホースを束ねる分岐管と、前記分岐管の他端に接続された吸引ポンプとを備えている。
【0020】
前記扉が閉鎖位置に到達した時に、センサーの働きにより吸引ポンプが自動的に作動し、前記真空閉塞空間の空気を連通するホースより吸引して、吸引ポンプ側からの逆流を防止するバルブが設け、吸引の度合いと比例して扉の閉塞をできるようにしている。
【0021】
閉塞空間部の空気の吸引及び注入を制御する制御部は、センサー及びリモコンによって作動するようにして、吸引ポンプ、コンプレッサーに連動している真空式扉真閉鎖装置である。
本発明の扉閉鎖装置は、開口部に開閉自在に取り付けられた扉を、閉鎖状態に維持する扉閉鎖装置であって、前記扉が閉鎖位置であるときに、前記枠体の戸当り部の縁部に設けられた気密ゴム(弾性)部と、扉の接触面との間に真空閉塞空間部を形成する閉塞部と、前記閉塞空間内の空気を吸引する吸引部とを備え、前記閉塞部は、弾性部材により、基部から吸着面に当接する先部に向かって拡がるように形成されている。
【0022】
本発明の扉閉鎖装置は、扉が閉鎖位置にあるときに、閉塞部が開口部戸当たり部の縁部と扉との間の空間に閉塞空間を形成する。この閉塞部は、閉塞空間内の空気を吸引することで、閉塞空間内が真空状態、あるいは真空状態に近くなる。閉塞部は、周設された弾性部材と扉対向面により形成され、気密ゴムは開口戸当たり部の縁部に取り付けられた基部から対向する扉の吸着面に当接する先部に向かって拡がるように形成されているので、閉塞空間が真空状態、あるいは真空状態に近くなることで、気密ゴム部が弾性変形して先部の内側面が吸着面に押し付けられるように密着する。従って、気密ゴム部の先部の内側面を幅広く吸着面に密着させることができるので、扉を開けようとしても、扉の閉鎖状態を維持させることができる。
【0023】
引き戸の場合、開口部の縁部に連続吸盤が設けられていると、扉が閉鎖状態となったときに、連続吸盤の先部が扉に当接することで、閉塞空間となる。吸引ポンプが吸引を開始すると、ホースを介して連続吸盤の基部から閉塞空間内の空気が吸引されるので、連続吸盤は扉に密着する。従って、扉を閉鎖状態に維持することができる。
【0024】
前記閉塞部は、前記開口部戸当たりの縁部に設けられた連続吸盤であり、前記吸引部は、前記連続吸盤の基部に一端が接続されることで前記閉塞空間に連通する継ぎ手と継ぎ手に接続するホースと、ホースを束ねる分岐管を備え、前記ホースの他端に接続された吸引部備えたものとすることができる。吸引部は真空ポンプ及びコンプレッサーを備え、ホースで接続されている。又、ホースの中間部には逆流防止弁、フィルター、流量計、レギュレータ、圧力センサーを備えている。制御部は真空ポンプ及びコンプレッサーのスイッチと連動したセンサー及びリモコンを備えている。前記センサー及びリモコンは電気信号を送り、吸引部を稼動することができる。
【0025】
前記吸引部は前記枠体の扉が閉鎖位置に来た時にマグネットセンサーが働き、自動的に吸引のスイッチが入り、吸引を開始する。従って、機械的に施錠する必要が無くなる。又、リモコンによる操作で、閉塞空間内の空気を吸引又は注入することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の扉真空式閉鎖装置は、閉塞部の先部の内側面を幅広く吸着面に密着させることができるので、種々の大きさの扉でも開閉を容易にすることができて、扉の閉鎖状態を維持させることができる。
本発明は、通常の錠前にある鍵穴がなくて、ピッキングによる侵入者の防止ができて、外部からリモコンによって、施錠、解錠が簡単に可能になることである。そのために不審者の侵入を防止することが可能である。
【0027】
本発明の扉閉鎖装置は、機械的に施錠する必要が無くなることを可能とすることで、不審者の侵入を防止することが可能なので、玄関だけでなく勝手口などに適用することが可能である。また、本発明の扉真空式閉鎖装置は、住居だけでなく商業施設、文化施設や企業の建物にも採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1に係る扉真空式閉鎖装置を示す系統図であり、閉塞部(A)、吸引部(B)、制御部(C)を示す。
【図2】本発明の実施の形態1に係る扉真空式閉鎖装置を示す図であり、扉を開放した状態のイメージ図
【図3】本発明の実施の形態1に係る扉真空式閉鎖装置を示す図であり、玄関内側の正面イメージ図
【図4】本発明の実施の形態に係る扉真空式閉鎖装置を示す図であり、Aは枠体の閉塞部及び吸引ホースの系統を示す正面図、Bは扉の閉塞部(吸着面)を示す正面図。
【図5】本発明の実施の形態1に係る扉真空式閉鎖装置を示す図であり、玄関廊下側の正面イメージ図
【図6】枠体及び扉の要部拡大図である。Aは上枠と扉の閉塞部(気密ゴムと扉面の接触部及び閉塞空間、吸引継ぎ手)の配置位置図とマグネットセンサーの位置図である。Bは、枠体の一部に気密ゴムを差し込むイメージ図、C図は気密ゴムの形状を示す図面である。
【図7】玄関扉および玄関枠の垂直断面図(図3のアーア断面図)である。
【図8】玄関扉および玄関枠の水平断面図(図3のイーイ断面図)である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る扉真空式閉鎖装置(閉塞部、吸引部、制御部)を示す図であり、引き戸部屋内側の扉開放時の正面イメージ図を示す。
【図10】本発明の実施の形態2に係る扉真空式閉鎖装置を示す図であり、引き戸部屋内側の正面図を示す。
【図11】引き戸の扉および枠の垂直断面図(図10のアーア断面図)である。
【図12】引き戸の扉および枠の水平断面図(図10のイーイ断面図)である。
【図13】使用を検討した気密ゴムの形状の一覧図である。A列は2本ひれゴムの検討形状、B列は2本ひれゴム(曲がり無し)の検討形状を示す。図中の2〜3列はひれ部形状の検討、1列は基部ゴムの圧縮変形防止の検討した形状を示す。現段階では、A1の気密ゴムを最適とした。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態に係る扉真空式閉鎖装置を、図1から図12に基づいて説明する。
図1〜図8迄は、開き戸の扉真空式閉鎖装置を示し、図9〜図12は上吊引き戸の扉真空式閉鎖装置を示している。図1に本発明の実施の形態に係る扉真空式閉鎖装置の系統図を示す。大きく分けて閉塞部(気密ゴム部)、吸引部、制御部の3つの部門で構成されている。
【0030】
本発明の実施の形態に係る扉真空式閉鎖装置は開き戸である建物の玄関扉D1を、封鎖状態に維持して錠前の代わりとし、侵入者の侵入を防止するものである。玄関扉D1は、玄関枠W3に丁番MT1(図8参照)により開閉自在に取り付けられている。玄関枠W1〜W4は、矩形状に形成され、上枠部W1と、縦枠部W2、W3と、下枠部W4とに、長尺状の気密ゴムK1,K2が設けられている。玄関枠W1〜W4は、アンカーにより壁部に固定されている(図8および図9参照)。
【0031】
本発明の実施の形態に係る扉真空式閉鎖装置は上吊引き戸である建物の出入口扉D1を、封鎖状態に維持して錠前の代わりとし、侵入者の侵入を防止するものである。出入口扉D1は、装置BOX内のレール及び吊車(図11参照)により開閉自在に取り付けられている。開口枠W1〜W4は、矩形状に形成され、上枠部W1と、縦枠部W2、W3とに長尺状の気密ゴムK1,K2が設けられている。開口枠W1〜W3は、アンカーにより壁部に固定されている(図11および図12参照)。
【0032】
図1、図2、図3及び図9に示すように、扉真空式閉鎖装置は、気密ゴムWK1、WK2と扉接触面DK1、DK2とで構成される空間を閉鎖空間Q1とする閉塞部(図1のA)と、継ぎ手T1、ホースT2と分岐管T3と、真空ポンプSC1を備えた吸引部(図1のB)と、マグネットセンサーX3、感知センサーX2、リモコン装置R1と、装置BOX1とを備えた制御部(図1のC)で構成されている。
【0033】
図4(A:枠体、B扉)及び図9に示すように扉枠体の3部分又は4部分閉鎖空間には数箇所の継ぎ手T1が設置され、この継ぎ手T1は閉鎖空間側に小孔、反対側にホースを備えている。数箇所の継ぎ手より延びているホースを分岐管T2で1本に束ねられ、装置BOXへ接続される。ホースと真空ポンプまでの間には、分岐管T3、流量計T6、弁T7、圧力タンクT8、フィルターT4、レギュレータT9及びT10が接続されている。真空ポンプSC1はスイッチの切り替えでコンプレッサーになる切替え式の装置である。
【0034】
図2、図3及び図9に示すように、扉D1が開放状態D2から閉鎖状態D1になった時、枠体W1及び扉D1に設置されたマグネットセンサーWX3、DX3により、吸引の電気信号が制御BOX(X1)を経て、吸引BOX迄届き、吸引が始まる。その為、機械的施錠をしなくても扉を閉鎖状態にできる。
【0035】
又、扉D1を開放するには、リモコンR1を操作すれば、受信装置X2が感知し、電気信号が制御BOX(X1)を経て、吸引BOX迄届き、コンプレッサーが作動して扉D1が開放される。扉の閉鎖状態に維持する施錠と、解放可能にする解錠とを指示するシステムは全て無線送信装置で行い、制御BOX(X1)には、タイマを内蔵しており、定期的に吸引制御を行う機能を備えている。又、扉の吸着力は閉塞空間の空気の吸引の割合と比例して強くなる。したがって開口部の大きさや部屋の用途により吸引の速度を決める必要がある。
【0036】
図6、図7、図8、図11及び図12に示すように、閉塞空間Q1は、上枠W1、縦枠W2、W3に直線状に設けられ、玄関扉D1に密着して玄関扉D1を閉鎖状態とするものである。閉塞空間Q1は、気密ゴム(弾性部材)であるEPDM(エチレンプロピレン)ゴム、SR(シリコ−ン)ゴム、CR(クロロプレン)ゴムで長尺状に形成され、玄関枠W1〜W4の開口戸当り部の縁部に設けられている。玄関枠のW1〜W4に形成された閉鎖空間には吸引用の継ぎ手T1が開口部の大きさに比例した数量分設けられている。
【0037】
以上のように構成された本実施の形態に係る扉真空式閉鎖装置の使用状態について、図1〜図12に基づいて説明する。まず、居住者が外出するため、玄関へ来て、リモコンキーR1で解錠を指示、玄関の外へ出て玄関扉D1を閉じる。玄関扉D1が閉じるときには、気密ゴムと接触する扉面とで閉塞空間Q1を作ると同時にマグネットセンサーWX3、DX3が感知し、閉塞空間Q1の空気を吸引する指令です。これにより居住者は施錠しなくも自動的に施錠状態となる。
【0038】
居住者がリモコンキーR1のボタンを押下することで、リモコンキーから無線信号がセンサー部X2を経て、制御BOX(X1)へ送信される。制御BOX(X1)がリモコンキーR1からの信号を吸引装置BOX(B1)へ伝えることで、吸引装置BOX(B1が作動する。
【0039】
吸引装置BOX(B1)は、吸引ポンプSC1を作動させる。そうすることで、閉塞空間Q1内の空気は、ホースT2を通過すると共に、バルブT7を通過して吸引される。従って、閉塞空間Q1内が真空状態、または真空状態に近くなる。気密ゴム(弾性部材)は、基部から玄関扉D1の吸着面に当接する先部に向かって拡がるように形成されているので、閉塞空間Q1が真空状態、あるいは真空状態に近くなることで、気密ゴムが弾性変形して先部の内側面が扉吸着面に押し付けられるように密着する。
【0040】
従って、気密ゴム先部の内側面を幅広く吸着面に密着させることができるので、玄関扉D1を開けようとしても、玄関扉D1の閉鎖状態を維持させることができる。よって、扉真空式閉鎖装置は、錠前の代わりとすることを可能とすることで、不審者の侵入を防止することが可能である。
【0041】
吸引装置BOX(B1)は、吸引ポンプSC1を所定時間ほど作動させ、圧力タンクの気圧が指定の値に達することで吸引が終了すると、バルブT7への通電を遮断することでバルブT7を閉塞とすると共に、吸引ポンプSC1への通電を遮断して吸引ポンプSCを停止する。バルブT7を閉塞とすることで、閉塞空間Q1へ空気が、吸引ポンプSC1側から戻らないので、吸引ポンプSC1を作動させなくても、玄関扉D1の閉鎖状態を維持することができる。
【0042】
居住者が外出している時間が長いときには、気密ゴムの先部から閉塞空間Q1内に、徐々に空気が侵入することで、玄関扉D1と閉塞空間との吸着状態が解除されるおそれがある。
吸引装置BOX内の圧力タンクにはセンサーが設置されおり、圧力の低下が起こると自動的の真空ポンプが作動する。これにより、玄関扉D1が解錠状態となることを防止する。
【0043】
閉塞空間Q1は、枠W1〜W4の気密ゴムWK1、WK2と玄関扉D1の室内側吸着面DK1、DK2とで形成されている。この空間に面する扉内部には防犯対策補強が施されている。このため、悪意のある侵入者がこの閉塞空間にドリル等で孔を空けようしても不可能である。又玄関扉D1は、閉塞空間Q1の吸着により閉鎖状態となるため、鍵穴が必要ない。従って、扉真空式閉鎖装は高い防犯性を確保することができる。
【実施例1】
【0044】
図9から図12に示すように、本発明の実施の形態に係る扉真空式閉鎖装置は上吊引き戸である建物の出入口扉D1を、封鎖状態に維持して錠前の代わりとし、侵入者の侵入を防止するものである。
【0045】
出入口扉D1は、装置BOX(BW)内のレール及び吊車(図11参照)により開閉自在に取り付ける。開口枠部は、矩形状(三方)に巾1200mm、高さ2000mm形成され、その扉側見付け面には、気密ゴムを挿入できる2列のポケットを持ったベースボックス(柄杓型曲げ物+板状曲げ物)を取付けた。
【0046】
ベースボックスの2ヶ所のコーナー部は45度の留め加工とし、完全溶接した。ベースボックスは全体を50x15mmの大きさに加工し、縦枠床面側下端は塞ぎ材が溶接付した。ゴムポケットは4.5mmの巾で2列に加工した。2列のゴムポケットの間に縦方向3箇所、横方向2箇所、合計8箇所のエアー抜き用継ぎ手T1を施した。
【0047】
この2列の気密ゴムと対向する扉面とで形成される閉塞空間Q1は容積690mlとなった。又、気密ゴムは頭6.6mm、首寸法4.5mm、高さ8mm、足の付け根11mm、先端17mmの材質はEPDM(エチレンプロピレン)ゴムで、図13−A1の形状のものを使用した。
【0048】
継ぎ手の閉塞空間と反対側にはナイロン製のホースを接続し、継ぎ手から出た8本のホースを分岐管で1本に束ね、吸引装置BOX(B1)へ接続した。
【0049】
扉の戸先上部とそれに面する上枠に施工したマグネットセンサー(WX3,DX3)の枠側WX3と制御BOX(X1)とを配線で接続し、扉の閉鎖状態を感知できるようにした。またリモコンキーからの信号を受信する受信装置・信号発信BOX(X2)からも配線を出し、制御BOX(X1)と配線で接続した。さらには制御BOX(X1)と吸引装置BOX(B1)を配線で接続し、信号が流れるようにした。
【0050】
又、開口枠及び装置BOXの取り付け精度を±1mm以下とし、扉の表面板の許容平滑度を1/1000mm以下とした。閉塞部の吸着面積は約1000cm2となり、使用真空ポンプの真空度Pが33.3%となっているので、約333Kgの吸着力が得られた。扉の閉鎖時のマグネットセンサーによる閉塞空間の空気の吸引、及びリモコン操作による閉塞空間の空気の吸引・注入は迅速かつ安全に行えた。施・解錠(吸引・注入)時間は施錠が3秒から6秒、解錠が1秒から2秒で迅速かつ安全に行えた。
【実施例2】
【0051】
本発明の実施の形態に係る扉真空式閉鎖装置は開き戸である建物の玄関扉D1を、封鎖状態に維持して錠前の代わりとし、侵入者の侵入を防止するものである。玄関扉D1は、玄関枠W3に丁番MT1(図8参照)により開閉自在に取り付けられている。
【0052】
玄関枠W1〜W4は、巾900mm、高さ2000mmの矩形状(四方)に形成され、上枠部W1と、縦枠部W2、W3と、下枠部W4とに、長尺状の気密ゴムK1,K2が設けられている。玄関枠W1〜W4は、アンカーにより壁部に固定されている(図8および図9参照)。
玄関枠は、扉側見付け面には、気密ゴムを挿入できる2列のポケットを持ったベースボックス(柄杓型曲げ物+板状曲げ物)を取付けた。ベースボックスの4ヶ所のコーナー部は45度の留め加工とし、留め加工部を完全溶接した。ベースボックスは全体を50x15mmの大きさに加工し、ゴムポケットは4.5mmの巾で2列に加工した。
【0053】
2列のゴムポケットの間に縦方向2箇所、横方向1箇所、合計6箇所のエアー抜き用継ぎ手T1を施した。この2列の気密ゴムと対向する扉面とで形成される閉塞空間Q1は容積650mlとなった。
【0054】
又、気密ゴムは頭6.6mm、首寸法4.5mm、高さ8mm、足の付け根11mm、先端17mmの材質はEPDM(エチレンプロピレン)ゴムの物を使用した。継ぎ手の閉塞空間と反対側にはナイロン製のホースを接続し、継ぎ手から出た6本のホースを分岐管で1本に束ね、吸引装置BOX(B1)へ接続した。
【0055】
扉の戸先上部とそれに面する上枠に施工したマグネットセンサー(WX3,DX3)の枠側WX3と制御BOX(X1)とを配線で接続し、扉の閉鎖状態を感知できるようにした。
またリモコンキーからの信号を受信する受信装置・信号発信BOX(X2)からも配線を出し、制御BOX(X1)と配線で接続した。さらには制御BOX(X1)と吸引装置BOX(B1)を配線で接続し、信号が流れるようにした。
【0056】
又、開口枠及び装置BOXの取り付け精度を±1mm以下とし、扉の表面板の許容平滑度を1/1000mm以下とした。閉塞部の吸着面積は約1113cm2となり、使用真空ポンプの真空度Pが33.3%となっているので、約370Kgの吸着力が得られた。扉の閉鎖時のマグネットセンサーによる閉塞空間の空気の吸引、及びリモコン操作による閉塞空間の空気の吸引・注入は迅速かつ安全に行えた。施・解錠(吸引・注入)時間は施錠が3秒から6秒、解錠が1秒から2秒で迅速かつ安全に行えた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の扉真空式閉鎖装置は、錠前の代わりとすることを可能とすることで、不審者の侵入を防止することが可能なので、玄関だけでなく勝手口などに適用することが可能である。また、本発明の真空式閉鎖装置は、住居だけでなく商業施設、文化施設や企業の建物にも採用することができる。
【符号の説明】
【0058】
W1〜W4 枠体(上枠、縦枠、下枠)
WB 引き戸装置BOX
D1 扉
D2 開放時の扉
MT1 丁番
H1 押し、引き棒(押し板、引き板)
アーア 扉枠体の垂直断面詳細(図7、図11)
イーイ 扉枠体の水平断面詳細(図8、図12)
WK1、WK2 気密ゴム
DK1、DK2 気密ゴムと対面する扉面
K3 縦枠下部閉塞空間フサギ
WQ1 閉塞空間枠側面
DQ1 閉塞空間扉側面
Q1 閉塞空間
T1 継ぎ手
T2 ホース(チューブ)
T3 分岐管1
T4 フィルター
T5 分岐管2
T6 流量計
T7 弁(逆流防止弁等)
T8 圧力タンク
T9 レギュレータ1
T10 レギュレータ2
SC1 真空ポンプ・コンプレッサー
X1 制御BOX
X2 受信装置・信号発信BOX
WX3 枠側マグネットセンサー
DX3 扉側マグネットセンサー
R1 リモコンセンサー
B1 吸引装置BOX

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部に開閉自在に取り付けられた扉を、閉鎖状態に維持する扉閉鎖装置であって、前記扉が閉鎖位置であるときに、前記枠体の戸当たり部の縁部に設けられた気密ゴム(弾性)部と、扉の接触面との間に真空式閉塞空間部を形成できる閉塞部と、前記閉塞空間部内の空気を吸引する吸引部と、空気の吸引及び注入を制御する制御部とを備えていることを特徴とする扉真空式閉鎖装置。
【請求項2】
前記枠体の戸当たり部は、前記枠体開口戸当たり部の縁部の三部分、あるいは四部分であって、枠体の戸当たり部面に連続的に気密ゴム部を取り付け可能にした凹凸形状を設置されていることを特徴とする請求項1に記載の扉真空式閉鎖装置。
【請求項3】
気密ゴム部は、V字形状をして、先端部を弾力性にして、扉面に接触できて、扉面との空間部の容積を100ml〜1000mlにして、材料としてEPDM(エチレンプロピレン)ゴム、SR(シリコ−ン)ゴム、CR(クロロプレン)ゴムで、吸引の度合いに比例して、扉との接触面積及び体積に極端に大きな変動を起こさない程度の硬さを有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の扉真空式閉鎖装置。
【請求項4】
V字形状の気密ゴムの形状は、扉接触部と扉枠体の接合部とからなり、扉接触部のV字形状で、高さを5〜10mm、両先端部の幅5〜20mm、両先端部の弾力性を持つ部分を5〜10mm、凸状先端部の厚さを0.5〜2mmであり、接合部のゴム部として枠体の接合穴に嵌め込み可能かつ抜け難い括れ部を持っていることを特徴とする請求項1から請求項3に記載の扉真空式閉鎖装置。
【請求項5】
扉は、金属製で、ステンレススチール(SUS)、スチール(SGHC)、アルミニウム(A1100P−H14)であって、表面の平滑度を1/1000mm以下、穴開け防止部材を施していることを特徴とする請求項1、及び請求項2に記載の扉真空式閉鎖装置。
【請求項6】
前記吸引部は、前記連続吸盤基部継ぎ手の数箇所に連通するホースとホースを束ねる分岐管と、前記分岐管の他端に接続された吸引ポンプとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の扉真空式閉鎖装置。
【請求項7】
前記扉が閉鎖位置に到達した時に、センサーの働きにより吸引ポンプが自動的に作動し、前記真空閉塞空間の空気を連通するホースより吸引して、吸引ポンプ側からの逆流を防止するバルブが設け、吸引の度合いと比例して扉の閉塞をできるようにしていることを特徴とする請求項6に記載の扉真空式閉鎖装置。
【請求項8】
閉塞空間部の空気の吸引及び注入を制御する制御部は、センサー及びリモコンによって作動するようにして、吸引ポンプ、コンプレッサーに連動していることを特徴とする請求項1又は請求項7に記載の真空式扉真閉鎖装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−202203(P2012−202203A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88639(P2011−88639)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(597087099)日章工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】