説明

真空断熱材製造方法

【課題】優れた断熱性を有する真空断熱材を簡便に製造し得る真空断熱材の製造方法を提供すること。
【解決手段】搬送機構2が、粉末が流通される管体を有し該管体中を通って前記粉末をチャンバー1に搬送すべく構成され、且つ、前記粉末の通過を抑制しつつ気体を通過させ得る複数の通気孔によって前記管体の内外を連通させており、前記粉末を加熱して乾燥状態にさせた後、該乾燥状態の粉末を搬送機構2の前記管体を通じて前記チャンバー1に搬送し、且つ、前記通気孔を通じて前記管体内を流通する粉末中の気体を管体外部に排出させつつ前記搬送を実施することによって該搬送中に前記粉末を減圧状態にさせることを特徴とする真空断熱材の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス非透過性の包装材中に減圧状態で粉末が密封されている真空断熱材を製造するための真空断熱材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から省エネルギーが強く望まれており、家庭用電化製品についても省エネルギー化は緊急の課題となっている。
特に、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機等の保温保冷用機器では熱を効率的に利用するという観点から、優れた断熱性能を有する断熱材が求められており、従来の発泡ポリスチレンボードやガラスファイバーなどの断熱材に代えて、ガス非透過性の包装材を外装材とし、該包装材の内部に芯材を封入してある程度の空間を設けさせ且つ内部を減圧(真空)状態にさせた真空断熱材の利用が検討されている。
【0003】
このような真空断熱材は、その芯材として、繊維系、粉末系、発泡樹脂系などの種々のものが検討されているが、繊維系や発泡樹脂系の芯材を用いると芯材を通じての熱伝導が生じ易いことから芯材としては粉末を利用することが断熱性を向上させる上においては有利である。
一方で、粉末は、繊維や発泡樹脂に比べて飛散しやすいために取り扱い難く、粉末を芯材に用いて真空断熱材を製造するのに際しては、繊維系、発泡樹脂系の芯材を用いる場合に比べて慎重な作業が要求されるおそれを有する。
【0004】
特に、優れた断熱性を発揮させるためには、粉末中の気体を十分排除して高い真空度とすることが求められている上に粉末間の空間容積を小さくし、粒子間距離を気体分子の平均自由行程以下にして、真空断熱材の内部に残存する気体分子どうしの衝突を防止することが求められている。
即ち、断熱性能の向上のためには、より小さな粒径のものを採用することが有利であるためにより一層取り扱い難い粉末を芯材として採用することが求められている状況である。
【0005】
微細な粉末を芯材に用いた場合、該粉末をガス非透過性の包装材に収容させた後で該包装材の内部を真空ポンプなどで真空引きして減圧状態にさせようとすると、粉末が真空ポンプに吸引されて真空ポンプに障害を与えるおそれを有する。
【0006】
このような問題に対して、粉末の通過を抑制しつつ気体を通過させ得る通気性のシートなどで中袋を形成させ、該中袋に粉末を封入して芯材とし、該芯材を包装材に収容させた後で該包装材の内部を減圧状態にさせることも検討されている。
しかし、このような中袋を用いると、一旦、中袋に粉末を封入させるという手間が必要になるばかりでなく、中袋による熱伝導によって真空断熱材の断熱性能が損なわれるおそれを有する。
【0007】
このようなことから、下記特許文献1には、中袋を用いずに真空断熱材の芯材となる粉末を予め減圧状態にした後で包装材に収容させて密封することが記載されている。
具体的には、下記特許文献1に記載の真空断熱材製造装置は、減圧状態に保たれたチャンバー内に包装材を収容させ、該チャンバーに粉末を搬送するための搬送機構として複数段のホッパーを採用しており、該特許文献1には、前記ホッパーを通じてチャンバーに粉末を搬送する間に粉末を減圧状態にさせ、該粉末を前記包装材に収容させて密封する真空断熱材の製造方法について記載されている。
しかし、減圧されたホッパー内に粉末を導入しても、該粉末中の空気や水分などによってホッパー内の真空度が低下し(圧力が上がって)十分な減圧を行うことが難しい。
なお、粉末を導入させた後でさらにホッパーからの脱気を行って一旦上昇した圧力を再び低下させることも考え得るが、例えば、凝集力の高い粉末を芯材に利用する場合や収容量に余裕のないホッパーを用いてホッパー内に粉末を高く堆積させた場合においては、ホッパーに堆積した粉末の奥底まで減圧することが難しく底部の粉末から空気や水分を除去することが難しくなる。
従って、従来の真空断熱材の製造方法では、大容積なホッパーを多段に設けなければ十分な減圧を行うことが難しく、装置が大掛かりなものとなり易い。
しかも、先述のように芯材として用いる粉末に小さな粒径のものを採用するとホッパーへの粉末の導入に際して粉末を舞い上がらせてしまいやすく、仮に舞い上がった粉末を落ち着かせようとすると多大な時間を要するおそれが有る。
【0008】
即ち、従来の真空断熱材の製造方法では、優れた断熱性を有する真空断熱材を簡便に製造することが困難であるという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平7−98524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記のような問題点を解決することを課題としており、優れた断熱性を有する真空断熱材を簡便に製造し得る真空断熱材の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係る真空断熱材の製造方法は、真空断熱材の外装材となるガス非透過性の包装材に芯材となる粉末を収容させるためのチャンバーと、該チャンバーに前記粉末を搬送する搬送機構とを有する真空断熱材製造装置を用い、減圧状態にされた前記チャンバー内に前記搬送中に減圧状態にさせた前記粉末を導入させ、該チャンバー内において前記粉末を前記包装材に収容させて密封する真空断熱材の製造方法であって、前記搬送機構が、前記粉末が流通される管体を有し該管体中を通って前記粉末を前記チャンバーに搬送すべく構成され、且つ、前記粉末の通過を抑制しつつ気体を通過させ得る複数の通気孔によって前記管体の内外を連通させており、前記粉末を加熱して乾燥状態にさせた後、該乾燥状態の粉末を搬送機構の前記管体を通じて前記チャンバーに搬送し、且つ、前記通気孔を通じて前記管体内を流通する粉末中の気体を管体外部に排出させつつ前記搬送を実施することによって該搬送中に前記粉末を減圧状態にさせることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、予め減圧状態にした粉末を包装材に収容させて密封することから中袋の使用を省略しつつ粉末を芯材とした真空断熱材を作製し得る。
しかも、加熱乾燥させた粉末を、通気孔の設けられた管体に供給し、該管体内を流通させつつ減圧状態にさせることから、粉末中の空気や水分を効率よく除去させることができる。
従って、本発明によれば、優れた断熱性を有する真空断熱材を簡便に製造し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】真空断熱材の製造に利用する真空断熱材製造装置の一例を示した装置構成図((a):概略全体図、(b):チャンバー拡大断面図、(c):(a)図におけるX部拡大断面図)。
【図2】図1におけるZ−Z線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
本実施形態に係る製造方法によって製造される真空断熱材は、外装材となるガス非透過性の包装材に芯材となる粉末を中袋などを用いることなく直接収容させて密封させたもので、内部を減圧(真空)状態にさせたものである。
【0015】
本実施形態における真空断熱材の製造方法において用いられるガス非透過性の前記包装材は、芯材となる所定量の粉末を収容可能な内容積を有しており、ガスバリア性に優れ、しかも、ヒートシールによる接着が可能な2枚のラミネートシートによって袋状に形成されたものであり、該袋状の包装材(以下「包装袋」ともいう)は、2枚の矩形状のラミネートシートが3方シールされて前記矩形の1辺に相当する部分を開口させたものである。
【0016】
前記ラミネートシートとしては、前記芯材(粉末)の密封状態(真空状態)を長期にわたって保持させ得るように、少なくとも表面側から順に、表面保護層、ガスバリア層を有し、最も内側(芯材側)に熱融着層を有するものを採用することが好ましい。
例えば、前記ガスバリア層としては、アルミニウムなどの金属の圧延箔や蒸着膜で形成されたものが挙げられ、通常、ラミネートシートには、1μm〜100μmの厚みで備えさせることができる。
このガスバリア層を蒸着膜で形成させる場合には、表面保護層を形成する部材又は熱融着層を形成する部材のいずれに対して蒸着を行ってもよい。
なお、気体分子は、ポリマー内に拡散することができ、ポリマーのみによって形成されたフィルムでは十分なガスバリア性の確保が困難であるが、この金属によって形成されたガスバリア層を有するラミネートシートを採用することで、シート厚み方向に気体分子が通過することが防止され、包装袋内部の真空度が低下することが抑制される。
【0017】
また、表面保護層は、その一つの目的として、前記ガスバリア層を腐食や傷付きなどから保護する機能をラミネートシートに付与すべく設けられたものであり、通常、5μm〜200μmの厚みとなるように形成され、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムの延伸加工品などによって形成され得る。
さらに、表面保護層は、単層に限定されず、上記延伸加工がされたフィルムの外側にポリアミドフィルムなどを設けることでラミネートシートの耐折り曲げ性などの機械的特性の向上を図ることができる。
【0018】
前記熱融着層は、包装袋に減圧状態の粉末を収容させた後に、ヒートシールによるラミネートシートどうしの接着を行って、前記粉末を減圧状態で密封させ得るように設けられたものであり、例えば、低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、無延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどによって形成させ得る。
この熱融着層は、その厚みが薄過ぎる場合には、シール不良を発生させるおそれがある 一方で、熱融着層の厚みが厚過ぎる場合には、シール部において、ガスバリア層の間に外袋の内外にわたる厚いポリマー層が当該熱融着層によって形成され易くなり、このポリマー層を通じての気体分子の流入が生じやすくなる。
すなわち、熱融着層の厚みが厚過ぎる場合には、真空断熱材製造後に、その内部の真空度の低下を早めてしまうおそれを有する。
このような観点から熱融着層の厚みは、20μm〜100μmとされることが好ましい。
【0019】
なお、真空断熱材の芯材として使用される粉末については、珪酸カルシウム、パーライト、シリカ等の無機材料からなる微細な粒子(無機粉末)や、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等の有機樹脂からなる粒子といったものが使用されうる。
この粉末には、上記のような無機物粒子、有機物粒子をそれぞれ単独、あるいは、複数種類混合して用いることができ、より細かな粒子径を有する粒子を含有させることで真空断熱材の芯材内部に形成される粒子−粒子間の空隙の大きさを小さくすることができる。
したがって、例えば、体積平均粒子径が0.02〜40μmとなるような粉末を用いることで、真空断熱材の芯材を形成している粉末中に10Pa程度の分圧となる気体が残留している場合を想定した場合においても、気体分子の平均自由行程よりも小さな空隙を粒子−粒子間に形成させることができ気体分子どうしの衝突確率を低減することができる。
すなわち、粒径40μm以下の粉末を芯材として用いることで、優れた断熱性能を有する真空断熱材を作製させ得る。
【0020】
なお、前記粉末には、空隙の形成以外にも、ガス非透過性材料で作られた包装袋などから発生されるアウトガスなどの吸着に有効な成分を含有させることができ、水分吸着剤やガス吸着剤として、合成ゼオライト、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ドーソナイト、ハイドロタルサイトなどの物理吸着剤粒子、および、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物および水酸化物などの化学吸着剤粒子を含有させることができる。
【0021】
次いで、図1、2を参照しつつ本発明の真空断熱材の製造方法を実施するにあたって用いるのに好適な真空断熱材製造装置の一例を説明する。
図1は真空断熱材製造装置の装置構成を示す図であり、(a)は概略全体図であり、(b)は、チャンバー1の内部構造を示す図である。
また、図1(c)は(a)において破線Xで示した領域における内部構造を示す図であり、シリンダー21の一部を切欠いてその内部構造をも示している。
そして、図2は、図1のZ−Z線矢視断面図である。
これらの図に示しているように本実施形態において用いられる真空断熱材製造装置は、真空断熱材の外装材となるガス非透過性の包装材に芯材となる粉末を収容させるためのチャンバー1と、該チャンバー1に前記粉末を搬送する搬送機構2とを有している。
また、本実施形態において用いられる真空断熱材製造装置は、搬送機構2で搬送する粉末を予め加熱乾燥させるための加熱乾燥装置3がさらに備えられている。
【0022】
前記チャンバー1は、その内部に袋状の包装材4(包装袋4)を収容しており、しかも、この包装袋4を減圧条件下収容させ得るように構成され、該減圧条件下において予め減圧状態にさせた粉末を前記包装袋4に収容させて密封させるべく形成されている。
【0023】
より具体的には、本実施形態における前記チャンバー1は、該チャンバー内にガス非透過性材料からなる包装袋4を外部から導入させるための入庫室11と、前記包装袋4に減圧状態で前記粉末を収容させるための充填室12と、該充填室12で粉末が収容された包装袋4’を密封するためのシール室13とが横並びに設けられており、前記入庫室11と前記充填室12との間が開閉可能な仕切材14で仕切られているとともに前記充填室12と前記シール室13との間も開閉可能な仕切材15で仕切られている。
即ち、前記チャンバー1は、前記仕切材14,15を開けることによって前記入庫室11から前記シール室13までの間を包装袋4が往来可能な状態になり、且つ、前記仕切材14,15を閉じることによって各室を個別に減圧可能な状態になるように形成されている。
また、前記チャンバー1は、前記入庫室11に包装袋4を収容させるための扉17と、前記シール室13から真空断熱材を取り出すための扉18とを有している。
【0024】
本実施形態においては、前記の通りヒートシール可能なガス非透過性の矩形状のフィルムが2枚貼り合せられて前記矩形の1辺に相当する部分を開口させた袋体が前記包装袋4として用いられており、前記充填室12には、該包装袋4を上方に向けて大きく開口させた状態で保持するための保持具12aと、前記包装袋4が載置され該包装袋4に粉末を収容させる際にその収容量を計量するための質量計12bと、該質量計12bごと前記包装袋4を充填室内で上下に移動させることができる昇降機構(図示せず)とが備えられている。
【0025】
また、前記シール室13には、所定量の粉末を収容させた包装袋4の開口をヒートシールして当該包装袋4を密封するためのヒートシーラ13aが備えられている。
【0026】
なお、前記チャンバー1は、前記入庫室11から前記シール室13までの間を包装袋4が治具16に固定された状態で当該治具16ごと移動するように構成されており、該治具16には、真空断熱材を全体的に均一な厚みに仕上げるための2枚の成形板16aが備えられている。
該成形板16aは、治具16に包装袋4を固定した際に、該包装袋4を前後から挟む形となるように備えられており、しかも、互いの距離を調整し得るようにして備えられている。
即ち、例えば、包装袋の左右両端のそれぞれ一箇所を把持しただけで粉末を収容させたりすると、粉末の重みで包装袋の底部が大きく膨らんでしまい、底部に比べて上部の厚みが薄い真空断熱材が形成されることになる。
一方で、本実施形態のごとくチャンバー内を前記治具16に固定して包装袋4を移動させるようにした際には、粉末の収容時に成形板16aによって包装袋4の膨らみが規制されることから全体的に均一な厚みを有する真空断熱材を得られ易くなる。
【0027】
このチャンバー1に粉末を搬送するための前記搬送機構2は、いわゆるスクリュー式の搬送装置で構成されており、3台のスクリュー式搬送装置20a,20b,20cが配置されている。
本実施形態においては、前記粉末がこれら3台のスクリュー式搬送装置20a,20b,20cを順に通過して前記チャンバー1に供給されるように真空断熱材製造装置が構成されており、該3台のスクリュー式搬送装置20a,20b,20cの内の最も上流側のスクリュー式搬送装置20a(以下「第一搬送装置20a」ともいう)は、一端部において前記加熱乾燥装置3から粉末の供給を受けて、該加熱乾燥装置3で乾燥状態にされた粉末を他端部側に搬送し得るように供えられている。
この第一搬送装置20aに続けて設けられた第二番目のスクリュー式搬送装置20b(以下「第二搬送装置20b」ともいう)と前記第一搬送装置20aとの間には、ホッパー50が設けられており、粉末を一次貯留し得るようになっている。
一方で、この第二搬送装置20bと最も下流側のスクリュー式搬送装置20c(以下「第三搬送装置20c」ともいう)とはホッパー等を介さずに直接連結されており、いわゆるタンデム状態となって連結されている。
【0028】
この3台の搬送装置20a,20b,20cの内、第一搬送装置20aと第二搬送装置20bとは粉末を横方向に搬送し得るようにその長手方向を略水平に保った状態で配されており、具体的には、第一搬送装置20aの方が第二搬送装置20bよりも高い位置に配されている。
より詳しくは、第一搬送装置20aは、粉末搬送方向上流側となる長さ方向一端部を前記加熱乾燥装置3の直下に位置させ、他端部を前記ホッパー50の直上に位置させており、前記第二搬送装置20bは、粉末搬送方向上流側となる長さ方向一端部を前記ホッパー50の直下に位置させ、他端部を前記チャンバー1の上方に位置させている。
一方で第三搬送装置20cは、上から下に向けて粉末を搬送し得るようにその長手方向を略垂直方向に延在させた状態で配されており、粉末搬送方向上流側となる長さ方向一端部を前記第二搬送装置20bの他端部に接続させているとともに粉末搬送方向下流側となる他端部を前記チャンバー1の充填室12に真上から突入させる形で配されている。
【0029】
即ち、第一搬送装置20aの上流側において加熱乾燥装置から供給された粉末は、該第一搬送装置20aを通って水平に移動した後でホッパー50の内部を上方から下方に向けて通過し、さらに第二搬送装置20bを通って再び水平方向に移動し、最後に第三搬送装置20cを通って上方から下方に移動するという階段状の移動経路を辿って前記充填室12へと導入されることになる。
【0030】
なお、これら3つの搬送装置20a,20b,20cは、その構造を略共通させており、図2等に示す通り、内部空間が円柱状の管体からなるシリンダー21と、該シリンダー内に備えられたスクリュー22とを有し、該スクリュー22は、前記シリンダー21の内部空間の中心に沿って延びる回転軸周りに回転可能で、該回転軸22aの周りに螺旋状に配置されたフライト22bを有している。
【0031】
また、これらの搬送装置20a,20b,20cは、前記スクリュー22を回転軸周りに回転させるためのモーター23と、前記シリンダー21との間に空間を設けて前記シリンダーを外側から密封状態で覆う外筒24と、該外筒24と前記シリンダー21との間の空間Aの気体を真空引きして減圧状態にさせる真空ポンプ25が備えられている。
【0032】
なお、シリンダー21は、その内部が前記粉末の流路となるものであり、前記スクリュー22を回転させることによって前記粉末をフライト間のスペースに沿って当該シリンダー21の一端部側から他端部側に向けて搬送させるためのものである。
このスクリュー式搬送装置は、シリンダー21の長さ方向一端部において粉末を取り入れるための粉末供給部26が形成され、他端部にシリンダー21から粉末を排出させるための粉末排出部27が形成されている。
【0033】
これらの搬送装置20a,20b,20cの前記シリンダー21は、その管壁が多孔質材によって形成されており、該多孔質材に形成されている通気孔(図示せず)によって内外が連通された状態となっている。
このシリンダー21には、当該シリンダー内部を流通させる粉末に適した多孔質材が用いられていることが重要であり、粉末の通過を抑制しつつ気体を通過させ得る程度の大きさの通気孔を有する多孔質材が用いられることが重要な要件となる。
【0034】
後述するように、本実施形態においては、前記外筒24と前記シリンダー21との間の空間Aに対して前記真空ポンプ25で真空引きを実施することによって該空間Aを減圧し、シリンダー21の管壁21wを貫通する通気孔を通じてシリンダー内を流通する粉末中の気体をシリンダー21の外部側に排出させつつ粉末を搬送し、該搬送過程において粉末を減圧状態にさせるものである。
従って、シリンダー全体に占める通気孔の開口割合が高く、通気孔の開口面積(径)が大きい方が粉末の減圧には有利である一方で通気孔が粉末を容易に通過させてしまう大きさのものでは、シリンダー外に多量の粉末を漏洩させてしまうおそれを有する。
なお、“粉末の通過を抑制しつつ気体を通過させ得る”程度とは、必ずしも一粒たりとも粉末がシリンダー外部に漏洩しない場合のみを意図するものではなく、実用上問題が生じない程度に粉末の外部漏洩量を抑制させ得ることを意図するものである。
通常、搬送機構を通じて単位時間あたりにて搬送される粉末を質量で100%とした場合に、外部漏洩量が0.1%以下であれば、実用上問題が生じないと判定することができる。
【0035】
先に述べたような粉末を芯材として用いる場合においては、前記シリンダー21を構成する多孔質材として金属繊維の焼結体で金属繊維焼結体層を形成させたものや、該金属繊維焼結体層と他の多孔質材との積層材などを採用することができる。
例えば、線径15μm以下、好ましくは1〜10μmの微細な素線を素材としてウェブ状又は網状若しくは織物状としたものを真空焼結して圧縮し、その両面に金網を施すか、又は金網と一体的に焼結したもので前記金属繊維焼結体層の空隙率を65〜82%の範囲内とすることでこの繊維間に形成される通気孔から前記粉末がシリンダー外に漏洩するのを実用上問題が生じない程度に抑制させ得る。
【0036】
本実施形態においては、優れた強度を有し、且つ、長期使用に耐え得る点において金属繊維を円筒状に焼結した焼結体を前記シリンダー21として採用させている。
なお、他の多孔質材でシリンダーを形成させてもよく、内側に前記スクリュー22との接触などを勘案して保護プレートを設けるようにしてもよい。
前記焼結体は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、インコネル、カーペンター、ハステロイ等耐蝕、耐熱製の金属、合金等の繊維で形成させることができる。
また、両面に金網を施す場合であれば、例えば、20〜40メッシュの平織構造のものが採用されうる。
前記保護プレートとしては、板厚が2〜3mm、開孔率60〜70%のパンチングメタルなどが用いられ得る。
【0037】
また、本実施形態においては、スクリュー22で粉末が攪拌されながら搬送されることになり、しかも、シリンダー内壁面21iにフライト22bによるせん断力を作用させることができ該内壁面21iにおける粉末の吸着による減圧効果の低減を抑制させることができる。
なお、同じ材質でシリンダーを形成させた場合でも、シリンダーの内径が大きい場合には、シリンダーの内容積に対する表面積の割合が小さくなって粉末の減圧が十分に実施されなくなるおそれを有する。
このようなことからシリンダーの内径は10mmφ〜50mmφ程度されることが好ましい。なお、シリンダーの長さは、通常、30cm〜2m程度とされる。
【0038】
また、シリンダー21の内壁面21iに粉末が吸着して粉末から気体を除去する作用が低減された場合でも、この吸着した粉末をフライトが掻き落として前記作用が再び向上されるという効果をより顕著に発揮させ得る点においては、スクリュー22とシリンダー21との間のクリアランスはできるだけ小さくすることが好ましい。
【0039】
なお、前記スクリュー22としては、一般的なフルフライトタイプのものを採用することができ、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属や各種の樹脂材料で形成されたものを採用することができるが、耐久性を向上させ且つ当該スクリュー自体への粉末の付着を防止するため、バネ鋼などの弾性材料で形成されたものを採用することが好ましい。
【0040】
前記モーター23や真空ポンプ25としては特に限定されず、例えば、前記モーター23としてはブラシレス直流モーター、誘導モーター、シンクロナスモーター、或いは、これらに位置検出機構が備えられたサーボモーターなどを採用することができる。
また、前記真空ポンプ25としてはメカニカルブースターポンプや油回転ポンプなどを採用することができる。
【0041】
このような搬送機構2への供給前に粉末を加熱乾燥させるための前記加熱乾燥装置3は、本実施形態においては前記粉末を収容させるためのホッパー30と該ホッパー内の粉末を攪拌する攪拌機31と前記ホッパー内を減圧するための水封式真空ポンプ32とで構成されている。
【0042】
前記ホッパー30は粉末を収容するのに十分な内部空間を有し、上部を開口させた本体部30aと、該本体部30aの上部開口を閉塞させる蓋体30bとを有している。
また、前記本体部30aは底部にも開口を有しており、該底部開口には下方へと筒状に延びるスロート部30cが接続されている。
さらに、前記本体部30aは、その壁面にヒーターが埋設されており、該ヒーターに通電することによって内部の粉末を100℃以上300℃以下程度に加熱し得るようになっている。
【0043】
そして、該ホッパー30は、前記スロート部30cにバルブ30d(例えば、バタフライバルブ等)を有し、該スロート部30cを通じての粉末の落下を制御し得るように構成されており、しかも、該バルブ30dと前記蓋体30bとによって内部を密閉空間とし得るように構成されている。
また、前記スロート部30cには、前記バルブ30dよりも上側(本体部側)に外気取入口(図示せず)が設けられており、本実施形態においては、該外気取入口から窒素ガスをホッパー内に供給すべく窒素ボンベを当該外気取入口に接続させている。
なお、前記スロート部30cの先端は、図1(c)に示すように第一搬送装置20aの粉末供給部26に接続されており、前記バルブ30dを開放した際には、第一搬送装置20aのシリンダー内に粉末を落下させ得るように接続されている。
【0044】
前記攪拌機31は、ホッパー30の本体部30aを水平に貫通する回転軸を有し、その先端に設けた攪拌羽根を前記ホッパー30の底部付近において回転させうるように備えられている。
【0045】
前記水封式真空ポンプ32は、前記蓋体30bに開口した吸気管を通じてホッパー30の内部気体を排出し得るようにして設けられている。
【0046】
なお、前記第一搬送装置20aと前記第二搬送装置20bとの間に設けられたホッパー50(以下「中間ホッパー50」ともいう)も粉末を収容させるための本体部と蓋体とを有し、且つ、本体部の底部開口に接続されたスロート部50cを有する点も前記加熱乾燥装置3のホッパー30(以下「加熱ホッパー30」ともいう)と共通している。
該ホッパー50の蓋体には、前記第一搬送装置20aの粉末排出部27にその上端部を接続させた連結管50eが接続されており、該連結管50eはその下端部を前記蓋体内面において開口させている。
また、該ホッパー50のスロート部50cも前記加熱ホッパー30と同様に第二搬送装置20bの粉末供給部26に接続されており、該ホッパー50は、前記スロート部50c、並びに、連結管50eにバルブ50d,50fが設けられて内部を密閉空間とし得るように構成されている。
【0047】
このホッパー50の下流側においては、前記第二搬送装置20bの粉末排出部27と前記第三搬送装置20cの粉末供給部26とが接続されており、多孔質材からなるシリンダーから出ることなくチャンバー1の充填室12へと粉末が搬送され、該粉末が前記第三搬送装置20cの粉末排出部27に取り付けられた供給ノズル28を通じて前記包装袋4へ供給されるように構成されている。
【0048】
なお、本実施形態に係る真空断熱材製造装置は、前記中間ホッパー50の下流側において第二搬送装置20bと第三搬送装置20cとが前記のように略直角に連結されていることで粉末を搬送しつつ減圧することのできる区間を長距離にわたって確保しつつも搬送機構2の全体規模が大型化することを抑制させている。
【0049】
次いで、このような真空断熱材製造装置を用いた真空断熱材の製造方法について説明する。
まず、前記包装袋4を治具16に固定したものを用意するとともにバルブ30dを閉止した状態で芯材として使用する粉末を加熱ホッパー30に収容させる。
そして、前記本体部30aのヒーターを作動させるとともに前記攪拌機31の攪拌羽根を回転させて内部の粉末を加熱し、該粉末から吸着水などを蒸発、脱離させる。
さらに、前記外気取入口から窒素ガスを導入させるとともに水封式真空ポンプ32を動作させて加熱ホッパー30の内部を減圧させる。
このとき、窒素ガスが粉末に付着している水分等を奪いながら当該粉末中を通って加熱ホッパー内の上部空間に移動し、前記水封式真空ポンプ32を通じて系外に排出されることになり粉末の乾燥を進行させることができる。
【0050】
なお、このとき温風ブロア31から加熱ホッパー内に吹き込む加熱気体は、必ずしも窒素とする必要はなく、空気などであってもよい。
空気を用いる場合には、粉末の乾燥に要するコストを低減できる一方で含有する酸素によって粉末が変質するおそれを有する。
このような点を考慮すると不活性な気体を粉末の加熱に用いることが好ましく、中でも、安価な窒素ガスは好適な気体であるといえる。
なお、より乾燥効率を向上させる意味においては、含水率が20ppm以下の乾燥窒素を用いることが好ましい。
【0051】
なお、この時の加熱温度や加熱時間は、乾燥させる粉末の種類にもよるが、無機粉末であれば、100℃以上300℃以下程度の温度となるように加熱し、1分以上6時間以下程度の時間加熱すれば、十分な乾燥を行うことができる。
また、無機粉末の吸湿度合いは、当該無機粉末の保管状況などによっても大きく異なることから、加熱温度や加熱時間に一定の条件を設定せずに加熱ホッパー30から水封式真空ポンプ32によって排出される気体の温湿度をモニタリングしながら粉末の乾燥を実施しても良い。
【0052】
粉末が十分に乾燥された後は、そのまま搬送機構2による搬送を開始させることも可能であるが、一旦、粉末を100℃未満の温度にまで冷却してから搬送を行うことが好ましく、該冷却は、加熱ホッパー30による加熱を中止して、窒素ガスの吹き込みと水封式真空ポンプ32による減圧のみを継続させるか、或いは、これらも停止して自然放冷させて実施させることができる。
また、本実施形態においては、後段に中間ホッパー50が設けられていることから、前記粉末を100℃未満に冷却するのを前記中間ホッパー50で実施させることもできる。
例えば、この中間ホッパー50にも加熱ホッパー30と同様に窒素ガスを供給可能なようにし、該窒素ガスの流通によって粉末を冷却させることができる。
なお、粉末を100℃未満に冷却させることが好ましいのは、包装袋のヒートシール面が粉末の熱で溶融することを抑制させ得るためである。
【0053】
このようにして乾燥状態にされた粉末を搬送するのに当たっては、まず、前記第一搬送装置20aと前記中間ホッパー50のスロート部50cのバルブ50dを閉止し、前記第一搬送装置20aに接続されている真空ポンプ25を運転させ前記第一搬送装置20aの内部を減圧状態にさせる。
次いで、第一搬送装置20aのスクリューを回転させるとともに加熱ホッパー30のバルブ30dを開け、粉末を第一搬送装置20aの粉末供給部26に落下させ、該第一搬送装置20aのシリンダーを通じて下流側の中間ホッパー50へと搬送する。
【0054】
このとき第一搬送装置20aのシリンダー内に落下した粉末がスクリュー22のフライト22bによって下流側に搬送され、前記加熱ホッパー30から自然落下によって順次粉末が第一搬送装置20aのシリンダー内に供給される。
ここで、前記真空ポンプ25を継続して駆動させることによってシリンダー21を内外連通した状態にさせている通気孔を通じてシリンダー中を通って前記中間ホッパー50に搬送される粉末中の気体をシリンダー21の外部空間Aに排出させ粉末を減圧状態にさせる。
このことによって、粉末がさらに乾燥されるとともに蒸発熱によって冷却されて中間ホッパー50に収容されることになる。
【0055】
全ての粉末が加熱ホッパー30から第一搬送装置20aの下流側の中間ホッパー50に移送された後は、該中間ホッパー50と前記第一搬送装置20aの粉末排出部27とを連結している連結管50eのバルブ50fを閉止し、次いで、第二式搬送装置20b、及び、第三搬送装置20cの真空ポンプ25を運転させこれらの搬送装置20b,20cの内部を減圧状態にさせる。
なお、前記に示したように、必要であれば、中間ホッパー50に粉末を収容させている間に該粉末の冷却を実施しても良い。
【0056】
そして、入庫室11と充填室12との間を仕切材14で閉じるとともに前記充填室12とシール室13との間も仕切材15で閉じた状態にし、充填室12とシール室13との減圧を真空ポンプ19を用いて開始させる。
一方で入庫室11の扉17を開けて、治具16に固定した包装袋4を入庫室11に収容させ、この入庫室11の扉17を閉じて入庫室11の減圧を開始させる。
なお、治具16と包装袋4とは、1組のみならず複数組入庫室11に収容させても良い。
【0057】
その後、少なくとも、入庫室11と充填室12とが所望の真空度に到達した時点で仕切材14を開けて治具16に固定したままの状態で包装袋4を入庫室11から充填室12に移動させ、質量計12bの上に載せ、前記昇降機構によって治具16を載置した質量計12bを上方に移動させ、下流側のスクリュー式搬送装置20bの下端部に取り付けられた供給ノズル28の先端が包装袋4の上部開口から侵入した時点で昇降機構による移動を停止させる。
【0058】
この時点で、上流側のスクリュー式搬送装置20aのスクリュー22並びに下流側のスクリュー式搬送装置20bのスクリュー22を駆動させ、搬送機構2による粉末の搬送を開始させる。
【0059】
このときも加熱ホッパー30から第一搬送装置20aの下流側の中間ホッパー50に粉末を搬送させたのと同じように、該中間ホッパー50から第二搬送装置20bのシリンダー内に落下した粉末がスクリュー22のフライト22bによって下流側の第三搬送装置20cに向けて水平方向に搬送され、前記ホッパーから自然落下によって順次粉末が第二搬送装置20bのシリンダー内に供給される。
ここで、前記真空ポンプ25を継続して駆動させることによってシリンダー21を内外連通した状態にさせている通気孔を通じてシリンダー中を通って前記チャンバー1に搬送される粉末中の気体をシリンダー21の外部空間Aに排出させ粉末を減圧状態にさせる。
やがて、第二搬送装置20bのシリンダー21を通過しつつ減圧された粉末は、下流側の第三搬送装置20cの粉末供給部26に至り、該第三搬送装置20cのシリンダー内を下方に向けて搬送されることになるが、ここでも同様にシリンダー21と外筒24との間の空間Aを真空ポンプ25で減圧状態にさせることで該第三搬送装置20cのシリンダー中を通過する粉末がさらに減圧されることになる。
【0060】
その後、減圧状態(例えば、10Pa以下)の粉末を供給ノズル28を通じて包装袋4に収容させることになるが、前記質量計12bによって観測される包装袋4の質量増加、即ち、粉末の収容量が所望の値に到達した時点で第二、第三搬送装置20b,20cのスクリュー22を停止させ、それ以上粉末が包装袋内に収容させないようにする。
その後、昇降機構によって包装袋4を降下させ、シール室13との間の仕切材15を開けて粉末を収容した包装袋4’を充填室12からシール室13に移動させる。
【0061】
なお、この時点で、入庫室11に新たな包装袋4が減圧状態で待機されているようであれば、粉末を収容した包装袋4’のシール室13への移動に併せて、入庫室11との間の仕切材14を開けて入庫室11から充填室12に新たな包装袋4を導入させるようにしてもよい。
この新たな包装袋4を昇降機構によって上昇させ、供給ノズル28を上部開口から侵入させて粉末を所定量収容させる工程については、先の説明と同様に実施することができる。
【0062】
一方で、シール室13に移動させた包装袋4’は、上部開口をヒートシーラ13aでヒートシールして収容させた粉末を密封させ真空断熱材とすることができる。
なお、要すれば、充填室12との間の仕切材15を閉じてシール室13の減圧状態を解除し、隣の充填室12で包装袋4への粉末の収容を実施しつつ出来上がった真空断熱材をチャンバー1から取り出すこともできる。
【0063】
このシール室13におけるヒートシールにおいて、例えば、シール箇所に粉末が付着していたりするとシール性が損なわれ、良好にヒートシールされたものに比べて真空断熱材中に空気を侵入させやすくなる。
この点において、本実施形態に示した真空断熱材製造装置では、上部開口させた包装袋に上方から粉末を収容させるため、包装袋を横向きに寝かせ、側方から供給ノズルを差し入れるような態様で粉末を収容させる場合に比べて包装袋の開口付近に粉末が付着し難く良好なるシール性を得られ易い。
【0064】
また、上部開口させた包装袋に上方から粉末を収容させる場合であっても収容時に粉末を舞い上がらせてしまうと包装袋の開口付近に粉末を付着させるおそれを有する。
本実施形態において例示したようにスクリュー式搬送装置を用いて粉末を搬送させると、シリンダー内部において粉末を圧縮させやすく、前記供給ノズルから粉末を凝集させた状態で排出させやすいため、例えば、スクリューを取り除いてシリンダー中を自由落下させて粉末を包装袋に収容させるような場合に比べて粉末の舞い上がりが抑制されることになる。
【0065】
このような点において、本実施形態に示した真空断熱材の製造方法は、短時間に断熱性能が低下してしまうような不良品の発生を抑制することができ、真空断熱材の歩留り向上に有効な方法であるといえる。
【0066】
なお、本実施形態においては、シリンダー内壁面に粉末が吸着して減圧効果が低減したとしても、この付着した粉末を掻き落として減圧効果を再度向上させうるとともに粉末が凝集した凝集塊を解砕する効果に優れ粉末内部の気体をより効率よく排除させ得る点においてシリンダー内にスクリューを配した態様を示しているが、本発明の真空断熱材の製造方法は、スクリューによる搬送を必須の要件とするものではない。
例えば、ピストンのようなもので単に後押しさせて粉末を搬送させても良い。
また、スクリューによる掻き落とし効果と同様の効果を得るべく、要すれば、外筒とシリンダーとの間の空間Aに加圧気体を吹き込んでシリンダーの通気孔を閉塞させている粉末をシリンダー内に吹き込む逆洗工程を設けてもよい。
【0067】
また、本実施形態においては、減圧しつつ搬送する区間を長距離にわたって確保しつつも装置が大型化することを防止することができ、従来のホッパーを多段に配した方法に比べて簡便に真空断熱材を作製することができるという効果をより顕著に発揮させうる点において多孔質材で形成された管体からなる2つのシリンダーを角度を持たせて連結させ、粉末を一つのシリンダー中を通過させつつ減圧させた後で他のシリンダー中を通過させつつさらに減圧させるような態様を示しているが、本発明の真空断熱材の製造方法は、このような態様に限定されるものでもない。
【0068】
本実施形態においては、内部の減圧が容易である点においてシリンダー全体を多孔質材で形成させる場合を例示しているが、シリンダーの一部にのみ多孔質材を用いてもよく、粉末を流通させる管体に通気孔を形成させる方法を管体の形成部材として多孔質材を利用する場合に限定するものでもない。
【0069】
また、本実施形態においては、このような搬送機構を用いて粉末を搬送させるのに先立って該粉末を乾燥状態にさせるために前記のような加熱乾燥装置を用いているが、本発明において粉末を乾燥させる手段は上記のような加熱乾燥装置に限定されるものではない。
例えば、前記加熱ホッパー30において粉末を乾燥させる必要はなく、前記第一搬送装置20aに加熱機能を持たせて前記第二搬送装置20bでの搬送前に粉末を乾燥させるようにしてもよい。
例えば、第一搬送装置20aのスクリューを電気ヒーター等を内蔵させた態様としてシリンダー内を通過させつつ粉末をスクリューで加熱して乾燥させることも可能である。
また、金属繊維焼結体が用いられてなるシリンダーが採用されているのであれば、このシリンダーに通電してジュール熱を発生させ、該ジュール熱によって内部を通過する粉末を加熱するようにしてもよい。
さらに、この第一搬送装置20aに接続されている真空ポンプ25での減圧を同時に実施すれば、より一層粉末の乾燥を促進させることができる。
【0070】
また、水封式真空ポンプ32などを用いずに、単に、加熱ホッパー30の壁面を加熱して内部の粉末を加熱乾燥させたり、内部にヒーターを設置したホッパーを加熱ホッパー30に代えて用いることもできる。
【0071】
なお、本実施形態においては、真空断熱材を効率よく製造し得る点において、個別に減圧することができる3室(入庫室、充填室、及び、シール室)に内部が区分けされたチャンバーを利用する態様を例示しているが、本発明の真空断熱材の製造方法は、このような態様に限定されるものでもない。
【実施例】
【0072】
次に真空断熱材の製造例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
(実施例)
なお実施例においては、図1に例示のものと同様に構成されている真空断熱材製造装置を用いて以下に示す工程を順に実施し真空断熱材の製造を実施した。
1)加熱ホッパー30のバルブ30dを閉めた状態で該加熱ホッパー30に粉末(約5L程度、鈴木油脂社製、多孔質シリカ粒子、商品名「ゴッドボール」(平均粒子径5μm))を入れ、約280℃に加熱しつつ撹拌羽を回転させた。
2)窒素を外気取入口から導入させつつ水封式真空ポンプ32を運転し、減圧状態で3時間、粉末を加熱乾燥させた。
3)中間ホッパー50のバルブ50dは閉止させたまま、該中間ホッパー50に通じる連結管50eのバルブ50fと前記加熱ホッパー30のバルブ30dを手動で開き(下流側のホッパー50)、第一搬送装置20aに接続された真空ポンプ25(油回転式真空ポンプ)で該第一搬送装置20aを減圧しつつ温度が高い状態のままシリンダーを通じて粉末を中間ホッパー50まで搬送した。
4)全ての粉末を中間ホッパー50に収容させた後、連結管50eのバルブ50fを閉め、中間ホッパー内を窒素置換しつつ撹拌することにより1時間程度粉末を冷却し100℃未満にさせた。
5)次に、中間ホッパー50のバルブ50dを開き、第二搬送装置20b、並びに、第三搬送装置20cの真空ポンプ25を作動させるとともにチャンバー1の真空ポンプ19を作動させ充填室12を減圧させた。なお、充填室12が100Paの減圧状態に到達したとき、第二搬送装置20b、並びに、第三搬送装置20cの外筒24とシリンダー21との間の空間Aは20Paの減圧状態となった。
6)非透過性材料で作られた包装袋(外幅250mm、長さ370mm、シール幅10mm)を治具16に固定して入庫室11へ入れ、該入庫室11を真空引して圧力が100Paとなるまで減圧した。
なお、このときのガス非透過性材料としては、表面保護層が40μmのポリアミド樹脂フィルム、ガスバリア層が6μmのアルミニウム箔、ヒートシール層が50μmのポリエチレン樹脂フィルムからなるラミネートフィルム(昭和電工パッケージング製)を使用した。
7)入庫室11と充填室12との圧力を略同じにさせた後、仕切材14を開けて、包装袋4を固定させた治具16を入庫室11から充填室12に移動させ、当該充填室12において下向きに開口している供給ノズル28の真下で停止させ、昇降機構によって包装袋4を治具16ごと上昇させた。
8)次にスクリューを回転させて粉末を包装袋内へ充填し、所定量の粉末を包装袋に収容させた後、スクリューを停止させるとともに粉末を収容させた包装袋を昇降機構によって下降させた。
9)予め充填室12と同じ圧力に調整させたシール室13へ粉末を収容させた包装袋を移動させるべく充填室12とシール室13との間の仕切材15を開け、前記包装袋を治具ごとシール室へ移動させヒートシーラによって前記包装袋の開口部をヒートシールし、且つ、充填室との間の仕切材15を閉じた後、該シール室13を大気開放し、中袋等を用いていない真空断熱体を製造した。
10)同様の操作を繰り返し、真空断熱材を連続的に製造した。

この間の作業は簡便であり、また、製造された真空断熱材は断熱性能に優れ、且つ、時間が経過しても実質的な断熱性能の低下が見られない優れたものであった。
【0074】
(比較例)
加熱乾燥させずに中間ホッパー50に粉末を直接投入して順次実施例と同じ手順で作業し、包装袋を固定させた治具を入庫室から充填室へ移動させ、当該充填室において下向きに開口している供給ノズルの真下で停止させ、昇降機構によって包装袋を治具ごと上昇させた。
次にスクリューを回転させて粉末を包装袋内へ充填したところ、粉末が飛散し、良好な充填が行えなかった。
理由は明らかではないが、粉末(ゴッドボール)は吸湿性が約10%程度あることから、該粉末を加熱乾燥させなかったために、充填室に到達時点で粉末から水分が十分に抜けきっていなかったためであると考えられる。
すなわち、減圧状態のチャンバーに送り出された際に、粉末内部の水分が急膨張して粉末が飛散したものと考えられる。
【0075】
このことからも本発明によれば優れた断熱性を有する真空断熱材を簡便に製造し得ることがわかる。
【符号の説明】
【0076】
1:チャンバー、
2:搬送機構
3:加熱乾燥装置
4:包装材(包装袋)
11:入庫室
12:充填室
13:シール室
14,15:仕切材
20a,20b,20c:スクリュー式搬送装置
21:シリンダー(管体)
22:スクリュー
22a:回転軸
22b:フライト
25 真空ポンプ
30:ホッパー(加熱ホッパー)
50:ホッパー(中間ホッパー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空断熱材の外装材となるガス非透過性の包装材に芯材となる粉末を収容させるためのチャンバーと、該チャンバーに前記粉末を搬送する搬送機構とを有する真空断熱材製造装置を用い、減圧状態にされた前記チャンバー内に前記搬送中に減圧状態にさせた前記粉末を導入させ、該チャンバー内において前記粉末を前記包装材に収容させて密封する真空断熱材の製造方法であって、
前記搬送機構が、前記粉末が流通される管体を有し該管体中を通って前記粉末を前記チャンバーに搬送すべく構成され、且つ、前記粉末の通過を抑制しつつ気体を通過させ得る複数の通気孔によって前記管体の内外を連通させており、前記粉末を加熱して乾燥状態にさせた後、該乾燥状態の粉末を搬送機構の前記管体を通じて前記チャンバーに搬送し、且つ、前記通気孔を通じて前記管体内を流通する粉末中の気体を管体外部に排出させつつ前記搬送を実施することによって該搬送中に前記粉末を減圧状態にさせることを特徴とする真空断熱材の製造方法。
【請求項2】
前記管体は粉末の流路となる内部空間が円柱状であり、該内部空間の中心に沿って延びる回転軸周りに回転可能で、且つ、前記回転軸周りに螺旋状に配置されたフライトを有するスクリューが前記管体中に備えられており、該スクリューを回転させることによって粉末の前記搬送を実施する請求項1記載の真空断熱材の製造方法。
【請求項3】
内部にスクリューを備え、通気孔によって内外が連通されている前記管体が前記搬送機構には2以上備えられており、前記管体の内の一管体の一端部側から他端部側に向けて前記粉末を流通させつつ該粉末を減圧させた後で他管体の一端部側から他端部側に向けて前記粉末を流通させつつ該粉末をさらに減圧させ得るように前記一管体と前記他管体とが連結されて前記搬送機構に備えられており、前記一管体と前記他管体とが略直角に角度を持たせて連結されている請求項2に記載の真空断熱材の製造方法。
【請求項4】
前記粉末中に窒素ガスを流通させつつ粉末の前記加熱を実施する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の真空断熱材の製造方法。
【請求項5】
前記粉末を減圧しつつ前記加熱を実施する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の真空断熱材の製造方法。
【請求項6】
前記粉末が無機粉末であり、該粉末を100℃以上300℃以下の温度にさせる前記加熱を実施し、該粉末を100℃未満の温度に冷却した後、前記管体を通じた搬送を実施する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の真空断熱材の製造方法。
【請求項7】
前記チャンバーが、前記包装材を外部から導入させるための入庫室と、前記包装材に減圧状態で前記粉末を収容させるための充填室と、該充填室で粉末が収容された包装材を密封するためのシール室とを有し、前記入庫室と前記充填室との間、及び、前記充填室と前記シール室との間に開閉可能な仕切材が設けられて各室を個別に減圧し得るように形成されており、且つ、前記搬送機構によって前記充填室に減圧状態の粉末が搬送されるように構成されている真空断熱材製造装置を用いて、前記入庫室と前記充填室とを減圧状態にさせて入庫室と充填室との間の仕切材を開き、前記入庫室から包装材を充填室に供給した後で前記仕切材を閉じ、充填室を減圧状態に維持させたまま前記搬送機構により該充填室に前記粉末を減圧状態で導入させて前記包装材に収容させ、前記シール室が減圧されている状態において該シール室と前記充填室との間の仕切材を開いて前記シール室に粉末の収容された包装材を導入させて該シール室で前記包装材を密封する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の真空断熱材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−210958(P2012−210958A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77140(P2011−77140)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「マルチセラミックス膜新断熱材料」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】