説明

真空積層装置および積層方法

【課題】基板の両面に薄い樹脂フィルムを積層する際、樹脂フィルムにしわを発生させることなく良好に積層することが可能な真空積層装置および積層方法を提供すること。
【解決手段】真空チャンバ内に設けた台座5の上面に、上下面に樹脂フィルムFが仮付けされた基板Sを載置するとともに該基板Sの上にダイアフラム6を膨らませて押し付けることにより基板Sの両面に樹脂フィルムFを積層するようになした真空積層装置において、台座5上面は、中央部が高く外周部が低い凸面となっている真空積層装置である。また、真空チャンバ内に設けた台座5の上面に、上下面に樹脂フィルムFが仮付けされた基板Sを載置するとともに該基板Sの上にダイアフラム6を膨らませて押し付けることにより基板Sの両面に樹脂フィルムFを積層する積層方法において、台座5上面は、中央部が高く外周部が低い凸面となっている積層方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビルドアップ配線基板の製造において、製造途中の基板の表面に絶縁層用の樹脂フィルムやレジスト用の樹脂フィルムを積層する真空積層装置およびこの装置を用いた積層方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビルドアップ配線基板の製造においては、製造途中の基板の表面に絶縁層用の樹脂フィルムやレジスト用の樹脂フィルムを積層する工程がある。このような工程において基板の表面に樹脂フィルムを積層するには、真空積層装置が用いられている。この真空積層装置は、例えば図2(a)に示すように、真空チャンバを構成する下プレート21と上プレート22とを備えており、これらの間に密閉空間23が形成される。
【0003】
下プレート21には、密閉空間23と外部とを接続する通気孔24が形成されており、この通気孔24を介して密閉空間23内の空気を外部に吸引することにより密閉空間23内を減圧することができる。
【0004】
上プレート22には、その下面にゴム製のダイアフラム25が取り付けられているとともに、ダイアフラム25との間に通じる通気孔26が形成されており、この通気孔26を介して上プレート22とダイアフラム25との間に空気を注入することにより、ダイアフラム25を下方に膨らますことができる。
【0005】
下プレート21の上面には、断熱材27を挟んでヒータボックス28が配置されており、さらに、その上にはゴム製の平坦な台座29が載置されている。そして、この台座29の上に基板Sが載置される。なお、基板Sの上下両面には積層される樹脂フィルムFが予め仮付けされている。
【0006】
この真空積層装置を用いて基板Sの上下面に樹脂フィルムFを積層するには、まず台座29の上面に、樹脂フィルムFが仮付けされた基板Sを載置した後、図2(b)、(c)に示すように、密閉空間23内を排気して減圧状態とするとともにダイアフラム25を下方に膨らますことによりダイアフラム25を基板S上の樹脂フィルムF上面に押し当て基板Sと樹脂フィルムFとを積層する。このとき、ダイアフラム25は、基板Sの中央部から外周部に向けて順次樹脂フィルムFを押し付けていくことになり、それにより樹脂フィルムFのしわを伸ばしながら積層する作用を及ぼす。
【0007】
しかしながら近時、基板Sが大型化するとともに樹脂フィルムFが薄型化してきており、そのため樹脂フィルムFにしわが発生しやすい状態となってきている。そのため、特に基板Sの下面側に仮付けした樹脂フィルムFにおいては、ダイアフラム25が樹脂フィルムFを基板Sに押し付ける力が剛性を有する基板Sを介して働くので、基板Sの中央部から外周部に向けてしわを伸ばすように働く作用が弱く、樹脂フィルムFにしわを発生させることなく良好に積層することが困難となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−249639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、基板の両面に薄い樹脂フィルムを積層する際、樹脂フィルムにしわを発生させることなく良好に積層することが可能な真空積層装置および積層方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の真空積層装置は、真空チャンバ内に設けた台座の上面に、上下面に樹脂フィルムが仮付けされた基板を載置するとともに該基板の上にダイアフラムを膨らませて押し付けることにより前記基板の両面に前記樹脂フィルムを積層するようになした真空積層装置において、前記台座上面は、中央部が高く外周部が低い凸面となっていることを特徴とするものである。
【0011】
また本発明の積層方法は、真空チャンバ内に設けた台座の上面に、上下面に樹脂フィルムが仮付けされた基板を載置するとともに該基板の上にダイアフラムを膨らませて押し付けることにより前記基板の両面に前記樹脂フィルムを積層する積層方法において、前記台座上面は、中央部が高く外周部が低い凸面となっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の真空積層装置によれば、上下面に樹脂フィルムが仮付けされた基板が載置される台座上面は、中央部が高く外周部が低い凸面となっていることから、この凸面となった台座上面に、上下面に樹脂フィルムが仮付けされた基板を載置するとともに該基板の上にダイアフラムを膨らませて押し付けることにより基板の上下両面に樹脂フィルムを積層すると、基板の上面側では、ダイアフラムの膨らみの増大に応じて樹脂フィルムを基板の中央部から外周部に向けてしわを伸ばしながら積層していくとともに、基板の下面側では、基板を台座に押し付ける力が台座上面の勾配にしたがって基板の中央部から外周部に向けて樹脂フィルムのしわを伸ばすように順次加わっていくので、基板の上下両面に樹脂フィルムをしわを発生させることなく良好に積層することができる。
【0013】
また本発明の積層方法によれば、中央部が高く外周部が低い凸面となった台座上面に、上下面に樹脂フィルムが仮付けされた基板を載置するとともに該基板の上にダイアフラムを膨らませて押し付けることにより基板の両面に樹脂フィルムを積層することから、基板の上面側では、ダイアフラムの膨らみの増大に応じて樹脂フィルムが基板の中央部から外周部に向けてしわが伸ばされながら積層されていくとともに、基板の下面側では、基板を台座に押し付ける力が台座上面の勾配にしたがって基板の中央部から外周部に向けて樹脂フィルムのしわが伸ばされるように順次加わっていくので、基板の上下両面に樹脂フィルムをしわを発生させることなく良好に積層することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1(a)〜(c)は、本発明の真空積層装置およびこれを用いた積層方法を説明するための概略断面図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、従来の真空積層装置およびこれを用いた積層方法を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の真空積層装置およびこれを用いた積層方法の実施形態例について、添付の図面を基に説明する。本例の真空積層装置は、図1(a)に示すように、真空チャンバを構成する下プレート1と上プレート2とを備えている。
【0016】
下プレート1は、例えばステンレス等の金属材料から成り、その上面中央部に基板Sを載置するための載置部1aを有しており、その外周部に搭載部1aを取り囲むようにして上側に突出する側壁部1bが立設されている。下プレート1の搭載部1aには、断熱材3を挟んでヒータボックス4が配置されている。ヒータボックス4の内部には、図示しないヒータが備えられている。ヒータボックス4は、基板Sを加熱するためのものあり、断熱材3は、ヒータボックス4からの熱が下プレート1に不要に伝わるのを防止するためのものである。ヒータボックス4の上には、ゴム製の台座5が載置されており、この台座5の上に基板Sが載置される。
【0017】
上プレート2は、下プレート1に対応する大きさの平板であり、その下面にゴム製のダイアフラム6が取り付けられている。このダイアフラム6は、その外周部が上プレート2の下面に枠状の固定枠7により封着されている。
【0018】
下プレート1と上プレート2との間には枠状のパッキン8が配設されており、下プレート1と上プレート2とをパッキン8を介して重ね合わせることにより、下プレート1と上プレート2との間に密閉空間9が形成される。
【0019】
なお、下プレート1には、密閉空間9と外部とを接続する通気孔10が形成されており、この通気孔10を介して密閉空間9内の空気を外部に吸引することにより密閉空間9内を減圧することができる。また、上プレート2には、ダイアフラム6との間に通じる通気孔11が形成されており、この通気孔11を介して上プレート2とダイアフラム6との間に空気を注入することにより、ダイアフラム6を下方に膨らますことができる。
【0020】
そして、台座5の上面に、樹脂フィルムFが仮付けされた基板Sを載置するとともに、下プレート1と上プレート2とをパッキン8を介して重ね合わせた後、図1(b)に示すように、密閉空間9内を排気して減圧状態とするとともに上プレート2とダイアフラム6との間に空気を注入してダイアフラム6を下方に膨らますことによりダイアフラム6の下面中央部を基板S上の樹脂フィルムFの中央部に押し当て、さらに引き続きダイアフラム6を膨らますことにより、図1(c)に示すように、ダイアフラム6下面全体で樹脂フィルムFを基板Sに押し付けて基板Sと樹脂フィルムFとを積層する。このとき、ダイアフラム6は、上面側の樹脂フィルムFを基板Sの中央部から外周部に向けて順次押し付けていくことになり、それにより上面側の樹脂フィルムFのしわを伸ばしながら積層する作用を及ぼす。
【0021】
ところで本発明の真空積層装置および積層方法においては、台座5の上面は、中央部が高く外周部が低い凸面となっている。そしてこのことが重要である。本発明の真空積層装置においては、台座5の上面の中央部が高く外周部が低い凸面となっていることから、この凸面となった台座5の上面に、上下面に樹脂フィルムFが仮付けされた基板Sを載置するとともに該基板Sの上にダイアフラム6を膨らませて押し付けることにより基板Sの上下両面に樹脂フィルムFを積層すると、基板Sの上面側では、上述したように、ダイアフラム6の膨らみの増大に応じて樹脂フィルムFを基板Sの中央部から外周部に向けてしわを伸ばしながら積層していくとともに、基板Sの下面側では、基板Sを台座に押し付ける力が台座5上面の勾配にしたがって基板Sの中央部から外周部に向けて樹脂フィルムFのしわを伸ばすように順次加わっていくので、基板Sの上下両面に樹脂フィルムFをしわを発生させることなく良好に積層することができる。
【0022】
また本発明の積層方法によれば、中央部が高く外周部が低い凸面となった台座5の上面に、上下面に樹脂フィルムFが仮付けされた基板Sを載置するとともに該基板Sの上にダイアフラム6を膨らませて押し付けることにより基板Sの両面に樹脂フィルムFを積層することから、基板Sの上面側では、ダイアフラムFの膨らみの増大に応じて樹脂フィルムFを基板Sの中央部から外周部に向けてしわを伸ばしながら積層していくとともに、基板Sの下面側では、基板Sを台座5に押し付ける力が台座5の上面の勾配にしたがって基板Sの中央部から外周部に向けて樹脂フィルムFのしわを伸ばするように順次加わっていくので、基板Sの上下両面に樹脂フィルムFをしわを発生させることなく良好に積層することができる。
【0023】
なお、台座5の上面は、中央部が高く外周部が低いものであれば、球面または非球面を含む曲面であっても四角錐状に平面を組み合わせたものであってもよく、さらには円筒面や三角屋根のように相対向する2辺のみの外周部が低くなっているものであってもよい。また、台座5の上面の中央部と外周部との高低差は、フィルムFが良好に積層できるとともにフィルムFが積層された基板Sに反り等の変形を与えない範囲に適宜設定すればよいが、例えば基板Sの各辺のサイズが300〜600mmの範囲であれば、0.2〜2mm程度の範囲が好ましい。また、台座5そのものの上面を凸面とする代わりに、一定厚みのゴム板を、凸状の下敷き部材の上に置くことにより台座を形成してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 真空チャンバの下プレート
2 真空チャンバの上プレート
5 台座
6 ダイアフラム
F 樹脂フィルム
S 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内に設けた台座の上面に、上下面に樹脂フィルムが仮付けされた基板を載置するとともに該基板の上にダイアフラムを膨らませて押し付けることにより前記基板の両面に前記樹脂フィルムを積層するようになした真空積層装置において、前記台座上面は、中央部が高く外周部が低い凸面となっていることを特徴とする真空積層装置。
【請求項2】
真空チャンバ内に設けた台座の上面に、上下面に樹脂フィルムが仮付けされた基板を載置するとともに該基板の上にダイアフラムを膨らませて押し付けることにより前記基板の両面に前記樹脂フィルムを積層する積層方法において、前記台座上面は、中央部が高く外周部が低い凸面となっていることを特徴とする積層方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−77210(P2011−77210A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225722(P2009−225722)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】