説明

真空蒸気解凍装置

【課題】 過加熱状態となった被解凍物を、冷却水の気化による気化冷却ですみやかに冷却することのできる真空蒸気解凍装置を得ること。
【解決手段】
被解凍物1を載置した解凍室2に蒸気供給管3と冷却水供給管4を接続する。解凍室2底部の冷却水溜めスペース13に蒸気発生用電熱ヒータ14,15を取り付ける。真空ポンプ5を冷却水タンク22と循環ポンプ23とエゼクタ24,25とで構成する。冷却水タンク22を低温チラー31と接続する。
解凍室2へ蒸気を供給して被解凍物1が部分的に過加熱状態となった場合に、冷却水供給管16から被解凍物1へ冷却水を供給することによって、被解凍物1を気化冷却することができ、気化潜熱による大きな熱量で過加熱状態をすみやかに解消することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷凍された食肉や魚などの被解凍物を、大気圧以下の真空蒸気の熱量で解凍することのできる真空蒸気解凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の真空蒸気解凍装置は、解凍空間を大気圧以下の真空状態に維持する真空ポンプと接続し、解凍空間に一定温度の飽和蒸気を供給する蒸気送給回路を接続したもので、大気圧以下の真空蒸気によって被解凍物を均一に加熱して解凍することができるものである。
【0003】
上記従来の真空蒸気解凍装置では、未だなお、被解凍物の全体を均一に解凍することができない問題があった。これは、被解凍物の種類や表面形状により、被解凍物の表面温度が部分的に高くなる過加熱状態となってしまい、被解凍物の全体を均一に解凍することができなくなるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−179019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、部分的に過加熱状態となった被解凍物を、冷却水の気化による気化冷却ですみやかに冷却することにより、被解凍物の全体を均一に解凍できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被解凍物を収容する密閉状の解凍室と、当該解凍室を大気圧以下の真空へ減圧する真空ポンプに接続すると共に、解凍室へ所定温度の蒸気を供給する蒸気供給管を接続したものにおいて、解凍室へ所定温度の冷却水を供給する冷却水供給管を接続して、被解凍物が冷却水の気化による気化冷却を行うものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、解凍室へ蒸気供給管と冷却水供給管を接続したことにより、解凍室へ蒸気を供給して被解凍物が部分的に過加熱状態となった場合に、冷却水供給管から被解凍物へ冷却水を供給することによって、被解凍物を気化冷却することができ、気化潜熱による大きな熱量で過加熱状態をすみやかに解消して、被解凍物の全体を均一に解凍することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る真空蒸気解凍装置の実施例を示す構成図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、解凍室へ所定温度の冷却水を供給する冷却水供給管を接続するものであるが、冷却水供給管の解凍室側には複数のスプレーノズルを取り付けて、このスプレーノズルから被解凍物へ冷却水を噴射することが望ましい。
【実施例】
【0010】
図1において、被解凍物1を収容した解凍室2と、解凍室2へ解凍用の蒸気を供給する蒸気供給管3と、解凍室2へ気化冷却用の冷却水を供給する冷却水供給管4、及び、真空ポンプ5とで真空蒸気解凍装置を構成する。
【0011】
蒸気供給管3は図示しないボイラー等の蒸気源と接続すると共に、蒸気圧力調節弁6,7を取り付け、蒸気分岐管8,9,10,11を介して解凍室2と接続する。
【0012】
解凍室2は密閉状として、その大きさは被解凍物1の大きさに合わせた適宜の大きさとする。解凍室2の下部に被解凍物1を載置する載置台12を取り付ける。載置台12の上下空間は、蒸気や液体が自由に通過することができるようにする。また、載置台12の下部空間に冷却水溜めスペース13を設ける。
【0013】
冷却水溜めスペース13の左右側に、蒸気発生用電熱ヒータ14,15を取り付ける。この蒸気発生用電熱ヒータ14,15へ通電することによって、冷却水溜めスペース13の冷却水を昇温させて気化した蒸気で解凍室2内の被解凍物1を真空蒸気解凍することができるものである。真空蒸気解凍をすることで熱を奪われた蒸気は凝縮して復水となり、冷却水溜めスペース13へ滴下して、再度、蒸気発生用電熱ヒータ14,15で加熱されて蒸気となる。
【0014】
本実施例においては、蒸気発生用電熱ヒータ14,15で蒸気を発生させる方法と、蒸気供給管3から供給する方法の2通りの例を示したが、いずれか一方で解凍に必要な蒸気を供給できるのであれば、必ずしも2通りの供給方法を採用する必要はない。
【0015】
冷却水供給管4を上下に分岐して分岐管16,17と接続する。上方の分岐管16を解凍室2への冷却水供給管とする。分岐管16を解凍室2内部まで延設して延設管18と接続し、この延設管18の端部に冷却水を噴射するスプレーノズル19,20を取り付ける。また、延設管18の右側端部を、載置台12の下部まで延長した管路21を取り付ける。この管路21によって冷却水の一部を直接、冷却水溜めスペース13へ供給することができるものである。分岐管16,17の下方の分岐管17は、後述する真空ポンプ5を構成する冷却水タンク22と接続する。
【0016】
真空ポンプ5を、冷却水タンク22と循環ポンプ23と第一のエゼクタ24、及び、第二のエゼクタ25で構成する。冷却水タンク22に所定量の冷却水26を溜め置き、この冷却水26を循環ポンプ23でエゼクタ24,25へ供給することによって、エゼクタ24,25の吸込室27,28で吸引力を発生するものである。なお、第一エゼクタ24の吸込室27は、管路29により解凍室2の上部スペースと接続し、第二エゼクタ25の吸込室28は管路30により載置台12の下部スペースと接続する。従って、第二エゼクタ25は、冷却水溜めスペース13の一部の冷却水をも吸引して冷却水タンク22へと流下させるものである。冷却水タンク22と循環ポンプ23とエゼクタ24,25を連通する循環路34を分岐して余剰水排出管35を接続する。
【0017】
冷却水タンク22に管路32,33を介して低温チラー31と接続する。この低温チラー31は、冷却水タンク22内の冷却水26を低温チラー31内へ循環させて、冷却水26の温度を所定の低温度、例えば、5〜20℃程度の温度に維持することができるものである。
【0018】
解凍室2内に載置した被解凍物1を解凍するは、ます、循環ポンプ23を駆動してエゼクタ24,25の吸引力で解凍室2内の残存空気を吸引して系外へ排出する。解凍室2内が所定の真空状態となった時点で、蒸気供給管3から所定の圧力すなわち温度、例えば5〜20℃程度の低温蒸気を解凍室2内へ供給することで被解凍物1は解凍される。
【0019】
蒸気発生用電熱ヒータ14,15へ通電することで、冷却水溜めスペース13内の冷却水を加熱して蒸気を発生し、被解凍物1を解凍することもできる。被解凍物1に熱を奪われた蒸気は凝縮して復水となり、冷却水溜めスペース13へと滴下する。冷却水溜めスペース13の冷却水の一部は、第二エゼクタ25に吸引され冷却水タンク22へと至る。
【0020】
解凍室2へ蒸気を供給して被解凍物1が部分的に過加熱状態となった場合に、冷却水供給管16から被解凍物1へ冷却水を供給することによって、被解凍物1を気化冷却することができ、気化潜熱による大きな熱量で過加熱状態をすみやかに解消して、被解凍物1の全体を均一に解凍することができる。
【0021】
被解凍物1の温度状態は、図示はしていないが、複数の温度センサを被解凍物1に取り付けておくことによって検出することができる。
【0022】
被解凍物1が部分的に過加熱状態となった場合に、解凍室2へ蒸気を供給しながら冷却水も供給して気化冷却することも、あるいは、一旦蒸気の供給は停止して気化冷却することもできる。
【符号の説明】
【0023】
1 被解凍物
2 解凍室
3 蒸気供給管
4 冷却水供給管
5 真空ポンプ
12 載置台
13 冷却水溜めスペース
14,15 蒸気発生用電熱ヒータ
16 分岐管
17 分岐管
18 延設管
19,20 スプレーノズル
22 冷却水タンク
23 循環ポンプ
24 第一のエゼクタ
25 第二のエゼクタ
31 低温チラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被解凍物を収容する密閉状の解凍室と、当該解凍室を大気圧以下の真空へ減圧する真空ポンプに接続すると共に、解凍室へ所定温度の蒸気を供給する蒸気供給管を接続したものにおいて、解凍室へ所定温度の冷却水を供給する冷却水供給管を接続して、被解凍物が冷却水の気化による気化冷却を行うことを特徴とする真空蒸気解凍装置。

【図1】
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