説明

真空解凍装置及び真空解凍方法

【課題】生産性の高い真空解凍装置を提供することを課題とする。
【解決手段】第1の開閉扉62によって開閉される投入口61が形成された第1の圧力調整室6と、第1の圧力調整室6と接続する第1の接続口71が形成されるとともに第1の接続口71を開閉する第2の開閉扉72を有する真空解凍室7と、真空解凍室7と接続する第2の接続口81及び排出口83が形成されるとともに、第2の接続口81を開閉する第3の開閉扉82及び排出口83を開閉する第4の開閉扉84を有する第2の圧力調整室8と、を備えている。第1の圧力調整室6内には第1の搬送部2cが、真空解凍室7内には第2の搬送部2dが、第2の圧力調整室8内には第3の搬送部2eが設置されており、各搬送部によって冷凍食品Fを搬送する。また、真空解凍室内に蒸気を供給する蒸気供給部9や、各室内を排気する真空ポンプ10も備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被解凍物を解凍する真空解凍装置及び真空解凍方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍された食品等の被解凍物を解凍する解凍装置として、水蒸気の潜熱を利用した真空解凍装置が提案されている。この真空解凍装置は、例えば特許文献1に開示されているように、被解凍物を収容するとともに内底部に水が貯留された解凍室を有しており、解凍室の内底部の水中にはヒータが設置されている。被解凍物を解凍する際は、解凍室内を真空ポンプによって排気して真空とし、ヒータで内底部に貯留された水を加熱して水蒸気とする。この水蒸気は冷凍された食品等の表面に集まって食品によって凝縮し、その際に被解凍物に対して水蒸気の潜熱が与えられることで被解凍物が解凍される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−15358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の真空解凍装置は、解凍したい被解凍物を真空解凍室に入れ、被解凍物の解凍が完了すると、真空解凍室から取り出し、その後、次の解凍したい被解凍物を再度真空解凍室に入れる、といったような解凍方法を採用している。しかしながら、このような解凍方法は、始めに入れた被解凍物の解凍が完了してからでないと次の被解凍物の解凍を始めることができないといったように生産性が低く、より生産性の高い真空解凍装置が要望されていた。
【0005】
そこで、本発明は、生産性の高い真空解凍装置及び真空解凍方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る真空解凍装置は、上記課題を解決するためになされたものであり、被解凍物を解凍する真空解凍装置であって、被解凍物を投入する投入口が形成されるとともに、前記投入口を開閉する第1の開閉扉を有する第1の圧力調整室と、前記第1の圧力調整室内において、前記投入口から投入された被解凍物を搬送する第1の搬送部と、前記第1の圧力調整室と接続する第1の接続口が形成されるとともに、前記第1の接続口を開閉する第2の開閉扉を有する真空解凍室と、前記真空解凍室内において、前記第1の接続口を介して前記第1の搬送部から送られてきた被解凍物を搬送する第2の搬送部と、前記真空解凍室内に蒸気を供給する蒸気供給部と、前記真空解凍室と接続する第2の接続口及び被解凍物を外部に排出する排出口が形成されるとともに、前記第2の接続口を開閉する第3の開閉扉及び前記排出口を開閉する第4の開閉扉を有する第2の圧力調整室と、前記第2の圧力調整室内において、前記第2の接続口を介して前記第2の搬送部から送られてきた被解凍物を搬送する第3の搬送部と、前記第1の圧力調整室、真空解凍室、及び第2の圧力調整室内を排気する真空ポンプと、前記第1及び第2の圧力調整室内を大気開放にする大気開放手段と、を備えている。
【0007】
本発明によれば、真空解凍室は、内部が真空ポンプによって減圧されつつ蒸気供給部によって蒸気が供給されており、また、被解凍物を搬送する第2の搬送部が内部に設置されている。このため、第2の開閉扉を開けて第1の接続口から被解凍物を真空解凍室内に投入して第2の搬送部によって被解凍物を搬送させれば、第2の搬送部によって搬送される被解凍物の表面に蒸気が集まって凝縮し、この凝縮時に発する潜熱によって被解凍物が解凍される。そして、第2の搬送部は、被解凍物を次から次へと搬送して解凍された被解凍物を第2の接続口から排出することができるため、連続的に被解凍物を解凍することができ、ひいては生産性を向上させることが可能となる。また、真空解凍室内へ被解凍物を投入するための第1の接続口には、第1の圧力調整室が接続されている。この第1の圧力調整室は真空ポンプによって内部を減圧することができるため、真空解凍室内に被解凍物を投入する際に第1の接続口を開閉する第2の開閉扉を開けても、第1の圧力調整室内を減圧しておくことで、真空解凍室内の圧力が急激に変化することを抑制することができる。また、同様に真空解凍室内から被解凍物を排出するための第2の接続口には第2の圧力調整室が接続されているため、被解凍物を真空解凍室内から排出する際に第3の開閉扉を開けても、第2の圧力調整室を減圧しておくことで、真空解凍室内の圧力が急激に変化することを抑制することができる。
【0008】
上記真空解凍装置は種々の構成をとることができるが、例えば、被解凍物を搬送する第4の搬送部と、第4の搬送部によって搬送される被解凍物を高周波又はマイクロ波によって誘電加熱する高周波又はマイクロ波加熱部と、高周波又はマイクロ波加熱部によって誘電加熱された被解凍物を投入口を介して第1の圧力調整室内へ搬送する第5の搬送部と、をさらに備えていることが好ましい。この構成によれば、例えば−25〜−15℃程度の被解凍物を高周波又はマイクロ波加熱部によって−5〜0℃付近まで誘電加熱し、この−5〜0℃まで解凍された被解凍物を適温まで真空解凍室内で解凍することができる。このように、−25〜−15℃程度から−5〜0℃付近までの解凍を高周波又はマイクロ波加熱部によって行うことで、解凍時間をより短縮することができ、また、−5〜0℃付近から適温までの解凍を真空解凍室内における上記の潜熱によって行うことで、被解凍物を均等に解凍することができる。なお、上記第4の搬送部と第5の搬送部とは一体に構成してもよいし別体として構成してもよい。
【0009】
また、上記各搬送部の少なくとも一つは、ベルトコンベアとしてもよい。
【0010】
また、上記大気開放手段は、各圧力調整室に接続された配管と、各配管に設けられた開閉弁とを有するように構成することができる。
【0011】
また、上記真空解凍室は、底部が第1及び第2の圧力調整室の少なくとも一方側に向かって低くなるよう傾斜しており、底部にたまった液体を第1及び第2の圧力調整室の少なくとも一方に排出するドレン管をさらに有するような構成とすることもできる。
【0012】
また、本発明に係る真空解凍方法は、上記いずれかの真空解凍装置を使用した真空解凍方法であって、前記第1から第4の開閉扉を閉じる工程と、前記真空ポンプにより前記真空解凍室内を排気する工程と、前記蒸気供給部により前記真空解凍室内に蒸気を供給する工程と、前記第1の開閉扉を開いて前記投入口から被解凍物を前記第1の圧力調整室内に投入し、前記第1の搬送部により被解凍物を搬送する工程と、前記第1の開閉扉を閉じ、前記真空ポンプにより前記第1の圧力調整室内を排気する工程と、前記第2の開閉扉を開けて被解凍物を前記真空解凍室内に送った後、前記第2の開閉扉を閉めて前記第2の搬送部で被解凍物を前記真空解凍室内において搬送する工程と、前記第2の開閉扉を閉めた後に前記大気開放手段により前記第1の圧力調整室内を大気開放する工程と、前記真空ポンプにより前記第2の圧力調整室内を排気する工程と、前記第3の開閉扉を開けて被解凍物を前記第2の圧力調整室内に送った後、前記第3の開閉扉を閉めて前記第3の搬送部で被解凍物を搬送する工程と、前記第3の開閉扉を閉めた後に大気開放手段により前記第2の圧力調整室内を大気開放する工程と、前記第4の開閉扉を開けて、被解凍物を前記排出口から取り出す工程と、を含んでいる。
【0013】
上記真空解凍方法によれば、真空ポンプによって真空解凍室内を減圧するとともに、蒸気供給部によって真空解凍室内に蒸気を供給している。そして、第2の開閉扉を開けて第1の接続口から被解凍物を真空解凍室内に投入し、第2の搬送部によって被解凍物を搬送して第2の接続口から排出している。このように、第2の搬送部によって被解凍物を搬送する間、蒸気が被解凍物の表面に集まって凝縮し、このときに発せられる凝縮潜熱によって被解凍物が解凍される。そして、第2の搬送部は、被解凍物を次から次へと搬送して解凍された被解凍物を第2の接続口から排出することができるため、連続的に被解凍物を解凍することができ、ひいては生産性を向上させることが可能となる。また、被解凍物を真空解凍室内に投入するために第2の開閉扉を開ける前、第1の接続口を介して真空解凍室と連通する第1の圧力調整室内を減圧しているため、第2の開閉扉を開けても真空解凍室内の圧力が急激に変化することを抑制することができる。また、同様に、被解凍物を真空解凍室内から排出するために第3の開閉扉を開ける前、第2の圧力調整室内を減圧しているため、第3の開閉扉を開けても真空解凍室内の圧力が急激に変化することを抑制することができる。
【0014】
上記真空解凍方法は、第1の圧力調整室内を排気する工程において、第1の圧力調整室内を真空解凍室よりも真空度が高くなるよう排気することが好ましい。また、同様に、第2の圧力調整室内を排気する工程においても、第2の圧力調整室内を真空解凍室内よりも真空度が高くなるよう排気することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、生産性の高い真空解凍装置及び真空解凍方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る真空解凍装置の実施形態を示す概略側面図である。
【図2】本発明に係る真空解凍方法の実施形態を示す概略側面図である。
【図3】本発明に係る真空解凍方法の実施形態を示す概略側面図である。
【図4】本発明に係る真空解凍方法の実施形態を示す概略側面図である。
【図5】本発明に係る真空解凍方法の実施形態を示す概略側面図である。
【図6】本発明に係る真空解凍方法の実施形態を示す概略側面図である。
【図7】本発明に係る真空解凍方法の実施形態を示す概略側面図である。
【図8】本発明に係る真空解凍方法の実施形態を示す概略側面図である。
【図9】本発明に係る真空解凍方法の実施形態を示す概略側面図である。
【図10】本発明に係る真空解凍装置の実施形態を示す概略平面図である。
【図11】本発明に係る真空解凍装置の他の実施形態を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る真空解凍装置及び真空解凍方法の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、真空解凍装置の実施形態を示す概略図である。なお、図1の左側を「上流」、右側を「下流」と称して説明する。
【0018】
図1に示すように、真空解凍装置1は、高周波による誘電加熱で冷凍食品(被解凍物)Fを解凍する高周波解凍ユニットAと、水蒸気の潜熱によって冷凍食品Fを解凍する真空解凍ユニットBとから主に構成されている。
【0019】
高周波解凍ユニットAは、冷凍食品Fを搬送する第4の搬送部2aと、第4の搬送部2a上を搬送される冷凍食品Fに対して誘電加熱を行う高周波加熱部3を備えている。第4の搬送部2aは、冷凍食品Fを下流へと搬送するものであれば特に限定されるものではないが、好ましくはベルトコンベアを使用することができる。なお、この第4の搬送部2aによる冷凍食品Fの搬送時間は、冷凍食品Fの温度、種類、及び質量や、高周波加熱部3の性能によっても変わってくるが、一般的には5分〜60分とすることが好ましい。
【0020】
高周波加熱部3は、第4の搬送部2aによって搬送される冷凍食品Fの上方に設置された複数の上部電極31aと、搬送される冷凍食品Fの下方において上部電極31aと対になるよう設置された複数の下部電極31bと、各電極31a、31bに接続された高周波発生部32とを備えている。この高周波発生部32によって上部電極31aと下部電極31bとの間に高周波電圧を供給し、両電極間に高周波電界を生じさせることによって、冷凍食品Fに対して誘電加熱を行う。なお、この上方に設置された上部電極31aと下方に設置された下部電極31bとの間の距離が各種冷凍食品Fの大きさに対応できるよう、各電極は上下に移動可能に設置されている。また、冷凍食品Fの条件別に高周波出力、電極間隔、搬送時間などを予め設定した運転パターンを選択し目標温度まで解凍するが、高周波加熱部3によって加熱された冷凍食品Fの温度を測定できるよう、温度センサ4を設置し、フィードバック制御することが好ましい。この温度センサ4は非接触型の温度センサを用いることが好ましい。また、高周波加熱部3にて解凍された冷凍食品Fを後述する真空解凍ユニットBへ供給するための第5の搬送部2bが設置されている。この第5の搬送部2bは、第4の搬送部2aと一体に構成されていてもよい。
【0021】
真空解凍ユニットBは、上流から順に、第1の圧力調整室6、真空解凍室7、及び第2の圧力調整室8を備えている。第1の圧力調整室6内には第1の搬送部2cが、真空解凍室7内には第2の搬送部2dが、また、第2の圧力調整室8内には第3の搬送部2eが設置されている。真空解凍室7には、真空解凍室7内に蒸気を供給するための蒸気供給部9が設置されている。また、各室6,7,8には配管を介して各室6,7,8内を排気するための真空ポンプ10が接続されている。
【0022】
第1の圧力調整室6は、冷凍食品Fを投入するための投入口61が形成されており、この投入口61は第1の開閉扉62によって開閉される。第1の開閉扉62が閉められた状態では、第1の圧力調整室6内は密閉状態を維持している。また、第1の圧力調整室6は、真空ポンプ10へと繋がる第1の配管11aが接続されており、この第1の配管11aには第1の開閉弁12aが設けられている。また、この第1の配管11aからは第1の分岐管13aが分岐しており、この第1の分岐管13aは第2の開閉弁12bが設けられるとともに、その先端は大気に開放されている。また、第1の圧力調整室6の下部には、第1の圧力調整室6の底部に溜まった水を外部へ排水するための、第3の開閉弁12cを有する第1のドレン管14aが設置されている。
【0023】
第1の搬送部2cは、投入口61から投入された冷凍食品Fを真空解凍室7内へと搬送するものであり、例えばベルトコンベアなどを使用することができる。この第1の搬送部2cの搬送時間は、特に限定されるものではないが、第1の開閉扉62を閉め第1の圧力調整室6内を減圧し第2の開閉扉72を開けるのに要する時間よりも長ければよく、例えば、5〜10分とすることが好ましい。
【0024】
真空解凍室7は、内部を密閉状態に維持可能に構成されている。真空解凍室7は、上述した第1の圧力調整室6と連通する第1の接続口71が形成されており、この第1の接続口71は第2の開閉扉72によって開閉される。真空解凍室7の底部は中央が一番高くなっており、上流及び下流へ行くにしたがって低くなるように傾斜している。そして、底面に溜まった水を第1の圧力調整室6や第2の圧力調整室8へ排出するための第2及び第3のドレン管14b、14cが設置されている。この第2及び第3のドレン管14b、14cは第4及び第5の開閉弁12d、12eを有している。また、真空解凍室7は、真空ポンプ10へと繋がる第2の配管11bが接続されており、この第2の配管11bには第6の開閉弁12fが設けられている。
【0025】
真空解凍室7内に設置された第2の搬送部2dは、第1の接続口71を介して第1の搬送部2cから送られてきた冷凍食品Fを受け取り真空解凍室7内で搬送する。この第2の搬送部2dは、上述した第1の搬送部2cと同様に例えばベルトコンベアなどを使用することができる。この第2の搬送部2dの搬送時間も特に限定されるものではないが、例えば60〜120分とすることが好ましい。
【0026】
真空解凍室7内に蒸気を供給するための蒸気供給部9は、真空解凍室7の外部に設置された蒸気発生装置91と、この蒸気発生装置91によって発生した蒸気を真空解凍室7内に散布するよう真空解凍室7内の上部に設置された蒸気散布管92と、蒸気発生装置91によって発生した蒸気を蒸気散布管92に送るための第3の配管11cとを有している。第3の配管11cには第7の開閉弁12gが設けられており、第7の開閉弁12gを閉めることによって真空解凍室7内への蒸気の供給を停止することができる。
【0027】
第2の圧力調整室8は、内部を密閉状態に維持可能であり、上述した真空解凍室7と連通する第2の接続口81が形成されている。この第2の接続口81は第3の開閉扉82によって開閉される。また、第2の圧力調整室8は、冷凍食品Fを外部に排出する排出口83が形成されている。この排出口83は、第4の開閉扉84によって開閉される。このように構成された第2の圧力調整室8は、第1の圧力調整室6と同様に、第8の開閉弁12hを有する第4の配管11dを介して真空ポンプ10に接続されている。第4の配管11dからは第2の分岐管13bが分岐しており、この第2の分岐管13bは第9の開閉弁12iが設けられるとともに、その先端は大気に開放されている。また、第2の圧力調整室8の下部にも、底部に溜まった水を外部へ排水するための第4のドレン管14dが設置されており、この第4のドレン管14dは第10の開閉弁12jを有している。
【0028】
第2の圧力調整室8内に設置された第3の搬送部2eは、第2の接続口81を介して真空解凍室7から送られてくる冷凍食品Fを排出口83から外部へと排出するよう搬送するものである。この第3の搬送部2eも、好ましくはベルトコンベアなどを用いることができる。また、この第3の搬送部2eの搬送時間は、特に限定されるものではないが、第3の開閉扉82を閉めて第2の圧力調整室8内を大気圧に戻し第4の開閉扉84を開けるのに要する時間よりも長ければよく、5〜10分とすることが好ましい。
【0029】
次に、上述した真空解凍装置を使用した解凍方法について図2〜図7を参照しつつ説明する。なお、白色の開閉弁は開状態を示し、黒色の開閉弁は閉状態を示す。
【0030】
まず、図2に示すように、第1〜4の開閉扉62,72,82,84を全て閉めるとともに、第6,7の開閉弁12f、12gを除く全ての開閉弁を閉める。そして、真空ポンプ10を作動させて、真空解凍室7内を減圧する。このときの真空解凍室7内の圧力は、0.9〜1.2kPa程度(飽和蒸気温度5〜10℃程度)とすることが好ましい。第1及び第2の圧力調整室6、8内は減圧されておらず、大気圧の状態となっている。また、蒸気発生装置91によって蒸気を発生させ、この蒸気を蒸気散布管92によって真空解凍室7内に散布する。このとき、蒸気を散布することによって真空解凍室7内の圧力が上昇するが、蒸気発生装置91からの蒸気供給量を調整することにより、真空解凍室7内の圧力を2.3〜4.2kPa程度(飽和蒸気温度20〜30℃程度)となるように調整する。
【0031】
次に、約−25〜−15℃の冷凍食品Fを第4の搬送部2a上に載せて下流へと搬送する。この第4の搬送部2aによって搬送される間に、高周波加熱部3を作動させて冷凍食品Fを誘電加熱し−5〜0℃程度まで解凍する。−5〜0℃程度まで解凍された冷凍食品Fは、第5の搬送部2bによって、真空解凍ユニットBへと送られる。冷凍食品Fが第1の圧力調整室6の投入口61まで搬送されると、第1の開閉扉62が開いて冷凍食品Fは投入口61から第1の圧力調整室6内に投入される。
【0032】
冷凍食品Fが第1の圧力調整室6内へと投入されると、図3に示すように、第1の開閉扉62が閉まり、第1の圧力調整室6内に投入された冷凍食品Fは第1の搬送部2cによって下流へと搬送される。このように第1の搬送部2cで第1の圧力調整室6内を搬送されている間、第1の開閉弁12aが開き、真空ポンプ10によって第1の圧力調整室6内が排気されて減圧される。このときの第1の圧力調整室6内は真空解凍室7内よりも減圧されており、好ましくは0.9〜1.2kPa程度(飽和蒸気温度5〜10℃程度)まで減圧させる。なお、第1の圧力調整室6内を減圧するとき、第6の開閉弁12fは閉められている。
【0033】
冷凍食品Fが第1の接続口71まで搬送されると、図4に示すように、第2の開閉扉72が開いて冷凍食品Fは真空解凍室7内へと搬送される。なお、このとき、第4の開閉弁12dを開いて第2のドレン管14bにより真空解凍室7の底部に溜められた水を第1の圧力調整室6へ排水する。
【0034】
図5に示すように、冷凍食品Fが真空解凍室7内に送られると、第2の開閉扉72が閉まり、また、第4の開閉弁12dも閉状態となる。また、第1の開閉弁12aが閉まるとともに、第6の開閉弁12fが開き、真空解凍室7内の排気が再開される。真空解凍室7内では、冷凍食品Fは第2の搬送部2dによって真空解凍室7内を下流に向かって搬送される。この真空解凍室7内を搬送される間、低温度である冷凍食品Fの表面に水蒸気が集まって凝縮する。この凝縮によって水蒸気は冷凍食品Fに対して凝縮潜熱を与え、冷凍食品Fは、水蒸気からの潜熱により表面から徐々に加熱され、その内部も熱伝導によって加熱されて徐々に解凍され、最終的には適温まで解凍される。このとき、空気分子が無く水蒸気のみの真空状態であるため、水蒸気の冷凍食品Fへの熱移動はスムーズに行われ、効率よく解凍することができる。また、冷凍食品Fに凝縮潜熱を与えた水蒸気は水となって真空解凍室7の底部へと滴下し、真空解凍室7の底部には水が滞留する。
【0035】
図6に示すように、冷凍食品Fが第2の接続口81に近づくと、第8の開閉弁12hが開き、真空ポンプ10によって第2の圧力調整室8内が排気されて減圧される。このときの第2の圧力調整室8内は真空解凍室7内よりも減圧されており、好ましくは0.9〜1.2kPa程度(飽和蒸気温度5〜10℃程度)まで減圧している。なお、第2の圧力調整室8を減圧するとき、第6の開閉弁12fは閉められている。
【0036】
冷凍食品Fが第2の接続口81まで搬送されると、図7に示すように、第3の開閉扉82が開いて冷凍食品Fは第2の圧力調整室8内へと搬送される。なお、このとき、第5の開閉弁12eが開き、第3のドレン管14cより真空解凍室7の底部に溜められた水が第2の圧力調整室8へと排水される。また、このとき、第2の開閉弁12bを開け、第1の圧力調整室6内を大気圧に戻す。なお、第1の圧力調整室6内を大気圧に戻すタイミングはこのときでなくてもよく、例えば、冷凍食品F1が真空解凍室7内へ送られて第2の開閉扉72が閉まり真空解凍室7内の排気が再開されたときに、第1の圧力調整室6内を大気圧に戻してもよい。
【0037】
冷凍食品Fが第2の圧力調整室8へと搬送されると、図8に示すように、第3の開閉扉82が閉じる。そして、第6の開閉弁12fが開いて真空解凍室7内の減圧が再開されるとともに、第8の開閉弁12hが閉じ且つ第9の開閉弁12iが開くことで第2の圧力調整室8内が大気圧に戻る。また、このとき、第10の開閉弁12jが開き、第4のドレン管14dによって第2の圧力調整室8の底部に溜められた水が外部へと排水される。そして、第4の搬送部2eによって搬送される冷凍食品Fが排出口83に近づくと、図9に示すように、第4の開閉扉84が開いて冷凍食品Fは外部へと排出される。
【0038】
以上、本実施形態によれば、冷凍食品Fを連続的に真空解凍室7内で流して真空解凍することができるため、生産性を向上させることができる。また、第2の開閉扉72を開けて冷凍食品Fを真空解凍室7内に送り込む前に第1の圧力調整室6内を減圧しているため、第2の開閉扉72を開けても真空解凍室7内の圧力が急激に変化することがなく、安定して真空解凍室7内で真空解凍を行うことができる。また、同様に、第3の開閉扉82を開けて冷凍食品Fを真空解凍室7内から排出する前に第2の圧力調整室8内を減圧しているため、第3の開閉扉82を開けても真空解凍室7内の圧力が急激に変化することがなく、安定して真空解凍室7内で真空解凍を行うことができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態では、搬送手段としてベルトコンベアを採用しているが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、冷凍食品Fを把持する搬送ロボットによって冷凍食品Fを搬送するなど、冷凍食品Fを搬送する種々の方法を採用することができる。
【0041】
また、上記実施形態においては、高周波解凍ユニットAが設置されているが、マイクロ波解凍ユニットであってもよい。このマイクロ波解凍ユニットは、高周波加熱部3の代わりに、マイクロ波発生部を有するマイクロ波加熱部を備えている。
【0042】
また、上記実施形態では、蒸気供給部9を真空解凍室7の外部に設置された蒸気発生装置91と蒸気散布管92によって構成していたが、蒸気供給部9は、真空解凍室7内に蒸気を供給できるものであれば特にこの構成に限定されるものではない。例えば、真空解凍室7内に水などを貯留する貯留容器を設置し、貯留容器内の水などを加熱する加熱手段(例えば、電気ヒータなど)を貯留容器内に設置したような構成とすることもできる。
【0043】
また、上記実施形態において、図10に示すように、高周波解凍ユニットAと真空解凍ユニットBとの両ユニットにおいて1本のラインで冷凍食品Fを搬送してもよいし、図11に示すように高周波解凍ユニットAにおいては1本のラインで搬送し、真空解凍ユニットBにおいては3本などの複数本のラインで搬送するなどしてもよい。なお、図11に示すように、真空解凍ユニットBにおいて複数本のラインで冷凍食品Fを搬送する場合は、高周波解凍ユニットAのラインと真空解凍ユニットBのラインとの間に、冷凍食品を各ラインに分配するための分配装置15を設けることが好ましい。また、真空解凍ユニットBにおける冷凍食品Fの搬送速度は、高周波解凍ユニットAにおける搬送速度の3分の1とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0044】
1 真空解凍装置
2 搬送部
3 高周波加熱部
6 第1の圧力調整室
7 真空解凍室
8 第2の圧力調整室
9 蒸気供給部
10 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被解凍物を解凍する真空解凍装置であって、
被解凍物を投入する投入口が形成されるとともに、前記投入口を開閉する第1の開閉扉を有する第1の圧力調整室と、
前記第1の圧力調整室内において、前記投入口から投入された被解凍物を搬送する第1の搬送部と、
前記第1の圧力調整室と接続する第1の接続口が形成されるとともに、前記第1の接続口を開閉する第2の開閉扉を有する真空解凍室と、
前記真空解凍室内において、前記第1の接続口を介して前記第1の搬送部から送られてきた被解凍物を搬送する第2の搬送部と、
前記真空解凍室内に蒸気を供給する蒸気供給部と、
前記真空解凍室と接続する第2の接続口及び被解凍物を外部に排出する排出口が形成されるとともに、前記第2の接続口を開閉する第3の開閉扉及び前記排出口を開閉する第4の開閉扉を有する第2の圧力調整室と、
前記第2の圧力調整室内において、前記第2の接続口を介して前記第2の搬送部から送られてきた被解凍物を搬送する第3の搬送部と、
前記第1の圧力調整室、真空解凍室、及び第2の圧力調整室内を排気する真空ポンプと、
前記第1及び第2の圧力調整室内を大気開放にする大気開放手段と、
を備えた、真空解凍装置。
【請求項2】
被解凍物を搬送する第4の搬送部と、
前記第4の搬送部によって搬送される被解凍物を高周波又はマイクロ波によって誘電加熱する高周波又はマイクロ波加熱部と、
前記高周波又はマイクロ波加熱部によって誘電加熱された被解凍物を前記投入口から前記第1の圧力調整室内へ搬送する第5の搬送部と、
をさらに備えた、請求項1に記載の真空解凍装置。
【請求項3】
前記第4の搬送部と第5の搬送部とは一体に構成されている、請求項2に記載の真空解凍装置。
【請求項4】
前記各搬送部の少なくとも一つは、ベルトコンベアである、請求項1〜3のいずれかに記載の真空解凍装置。
【請求項5】
前記大気開放手段は、各圧力調整室に接続された配管と、前記各配管に設けられた開閉弁とを有する、請求項1〜4のいずれかに記載の真空解凍装置。
【請求項6】
前記真空解凍室は、底部が前記第1及び第2の圧力調整室の少なくとも一方側に向かって低くなるよう傾斜しており、底部にたまった液体を前記第1及び第2の圧力調整室の少なくとも一方に排出するドレン管をさらに有する、請求項1〜5のいずれかに記載の真空解凍装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の真空解凍装置を使用した真空解凍方法であって、
前記第1から第4の開閉扉を閉じる工程と、
前記真空ポンプにより前記真空解凍室内を排気する工程と、
前記蒸気供給部により前記真空解凍室内に蒸気を供給する工程と、
前記第1の開閉扉を開いて前記投入口から被解凍物を前記第1の圧力調整室内に投入し、前記第1の搬送部により被解凍物を搬送する工程と、
前記第1の開閉扉を閉じ、前記真空ポンプにより前記第1の圧力調整室内を排気する工程と、
前記第2の開閉扉を開けて被解凍物を前記真空解凍室内に送った後、前記第2の開閉扉を閉めて前記第2の搬送部で被解凍物を前記真空解凍室内において搬送する工程と、
前記第2の開閉扉を閉めた後に前記大気開放手段により前記第1の圧力調整室内を大気開放する工程と、
前記真空ポンプにより前記第2の圧力調整室内を排気する工程と、
前記第3の開閉扉を開けて被解凍物を前記第2の圧力調整室内に送った後、前記第3の開閉扉を閉めて前記第3の搬送部で被解凍物を搬送する工程と、
前記第3の開閉扉を閉めた後に大気開放手段により前記第2の圧力調整室内を大気開放する工程と、
前記第4の開閉扉を開けて、被解凍物を前記排出口から取り出す工程と、
を含む真空解凍方法。
【請求項8】
前記第1の圧力調整室内を排気する工程において、前記第1の圧力調整室内を前記真空解凍室よりも真空度が高くなるよう排気する、請求項7に記載の真空解凍方法。
【請求項9】
前記第2の圧力調整室内を排気する工程において、前記第2の圧力調整室内を前記真空解凍室内よりも真空度が高くなるよう排気する、請求項7又は8に記載の真空解凍方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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