説明

真空調整器

【課題】 ダイヤフラム部の破損時に真空圧を低下させる機能を確保するとともに、清掃等の容易化及び効率化を実現する。
【解決手段】 ハウジング部2内に、第一ダイヤフラム部3で仕切った第一室C1と第二室C2を形成し、かつ弾性支持される第二ダイヤフラム部4で仕切った第三室C3と第四室C4を形成するとともに、第一室C1に臨む第一弁座部6sを開閉する主弁5を第一ダイヤフラム部3に固定し、かつ仕切部2sの第二弁座部8sを開閉するパイロット弁7を第二ダイヤフラム部4に固定し、第三室C3又は第四室C4の一方を大気Aに、他方を真空V側にそれぞれ連通可能にするとともに、第二室C2を細孔部9を介して真空V側に連通可能にし、他方、ハウジング部2に、第一室C1と真空V側を連通させる真空接続口部11を設け、さらに、内端口12iを第一弁座部6sとし、かつ外端口12eを大気Aに連通させる大気導入口部12を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプに接続した真空ライン等に付設して真空圧を一定に保持するための真空調整器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空ポンプに接続した真空ライン(真空側)に付設し、真空側の真空圧が上昇したなら当該真空側に大気を導入して真空圧を低下させるとともに、真空側の真空圧が低下したなら当該導入を解除することにより真空圧を一定に保持する機能を備える真空調整器の基本形態としては、既に本出願人が提案した特許文献1に開示される真空調整器が知られている。この真空調整器は、真空源への空気流入量を調整する弁体を備えたダイヤフラムにより該弁体側の第1室及び該弁体と反対側の第2室に画成され、第1室は大気に解放されると共に、第2室の真空度は真空源の真空を利用して制御されるように構成された真空調整器であって、第2室を、パイロット弁を介して大気に解放させると共に所定の寸法を有する開孔を介して真空源に連通させた構成を備えている。
【0003】
しかし、このような基本形態による真空調整器は、長期使用などによりダイヤフラムが破損して孔が空いた場合、ダイヤフラムに対して上方への真空吸引力が作用しなくなり、弁体は、自重及び真空吸引力により下方へ変位する。この結果、弁は閉状態に維持され、本来の弁機能が失われることにより、真空源の真空圧は最大(到達真空)の状態で放置される。したがって、搾乳システムに使用した場合には、乳牛の乳頭は過度の高圧真空に晒されることになり、乳牛における無用なストレスや乳房炎等の発生原因となる。
【0004】
そこで、このような不具合を解決した真空調整器(真空圧調整器)も、既に本出願人が特許文献2により提案した。この真空圧調整器は、互いに独立する2室の夫々を、弾性素材からなるダイヤフラムで気密に仕切ることによって、第一室と該第一室にダイヤフラムを介して隣接する第二室、第三室と該第三室にダイヤフラムを介して隣接する第四室とから構成されており、第一室は、大気に連通する開口部と調圧すべき真空源に連通する調圧孔と、第一室と第二室とを仕切るダイヤフラムの変位に応じて、真空源側から調圧孔に接近して該調圧孔を閉塞可能な弁体とを有し、第二室は第三室に連通する通気道を有し、第三室は、所定の小口径を有する大気導入孔を介して大気に連通するとともに、真空源に連通する真空導入口とを有し、該真空導入口には、第三室と第四室とを仕切るダイヤフラムの変位に応じて、該真空導入口の開度を調節するパイロット弁が臨ましめてあり、第三室とダイヤフラムを介して隣接する第四室は、大気に連通する開口部と、第三室と第四室とを隔てるダイヤフラムをパイロット弁が真空導入口を開く方向に所定の弾発力によって付勢する手段とを備えたものであり、これにより、ダイヤフラムが破損して孔が空いた場合であっても、弁体は、自重及び真空吸引力により下方へ変位するため、調圧孔は開状態となり、真空源の真空圧は低下した状態に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−175832号公報
【特許文献2】実公昭63−027569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した特許文献2で開示される従来の真空圧調整器は、次のような解決すべき課題も残されていた。
【0007】
第一に、弁体が自重及び真空吸引力により下方へ変位した際に、調圧孔を開状態に維持する必要があるため、弁体は調圧孔(弁座)の中を通して当該弁座の下方に位置させている。したがって、弁体及び弁座(調圧孔)を含む弁機構の清掃やメンテナンスを行う場合には、弁体とダイヤフラムの分離を含む各部の分解及び再組立作業が必要になるなど、清掃やメンテナンス時に無用な工数発生と時間消費が強いられるとともに、製造時においても組付作業が大変となる。
【0008】
第二に、調圧孔を設ける位置が第一室の底面部中央に限定されるため、水平方向の真空ラインへは直接取付けることができるものの垂直方向の真空ラインへはL形の接続管が必要になる。しかも、真空圧調整器に対する真空ラインからの吸引作用は、調圧孔に対してのみとなるため、取付時には、所定の取付強度を確保するネジ止め構造などが必要になり、真空ラインに対する取付性を高める観点からも更なる改善の余地があった。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した真空調整器の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る真空調整器1は、上述した課題を解決するため、ハウジング部2の内部空間を仕切部2sにより仕切って第一空間S1と第二空間S2を設けるとともに、第一空間S1を第一ダイヤフラム部3により仕切って第一室C1と第二室C2に形成し、かつ第二空間S2を弾性支持される第二ダイヤフラム部4により仕切って第三室C3と第四室C4に形成するとともに、第一室C1内に臨む第一弁座部6sを開閉する主弁5を第一ダイヤフラム部3に固定し、かつ仕切部2sの通孔8に設けた第二弁座部8sを開閉するパイロット弁7を第二ダイヤフラム部4に固定し、第三室C3又は第四室C4の一方を大気Aに、他方を真空V側にそれぞれ連通可能に構成するとともに、第二室C2を、細孔部9を介して真空V側に連通可能に構成し、少なくとも、真空V側の真空圧上昇により当該真空V側に大気Aを導入し、真空V側の真空圧低下により当該導入を解除する機能を備える真空調整器を構成するに際して、ハウジング部2に、第一室C1と真空V側を連通させる真空接続口部11を設けるとともに、内端口12iを第一弁座部6sとし、かつ外端口12eを大気Aに連通させる大気導入口部12とを設けて構成したことを特徴とする。
【0011】
この場合、発明の好適な態様により、ハウジング部2は、第二室C2,第三室C3及び第四室C4を形成し、かつ第一ダイヤフラム部3及び主弁5を支持するハウジング上部2mと、第一室C1を形成するハウジング下部2cとを、着脱可能に構成することができる。一方、真空接続口部11は、ハウジング部2の周面部2cfから横方へ突出形成し、又はハウジング部2の底面部2cdから下方へ突出形成することができる。また、大気導入口部12は、ハウジング部2の底面部2cd上面から第一ダイヤフラム部3側へ筒状に突出形成することができる。さらに、大気導入口部12には、外端口12eと大気A間に配するフィルタ部13を付設することができる。
【発明の効果】
【0012】
このような構成を有する本発明に係る真空調整器1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) ハウジング部2に、第一室C1と真空V側を連通させる真空接続口部11を設けるとともに、内端口12iを第一弁座部6sとし、かつ外端口12eを大気Aに連通させる大気導入口部12を設けて構成したため、ダイヤフラム部(第一ダイヤフラム部3)が破損して孔が空いた場合でも、主弁5は、真空吸引力により上方へ変位し、第一弁座部6sを開状態に維持して真空圧を低下させる機能を確保できる。しかも、清掃やメンテナンスを行う場合には、主弁5と第一ダイヤフラム部3の分離を含む各部の分解及び再組立作業が不要になるため、主弁5及び第一弁座部6sを含む弁機構の清掃やメンテナンスを容易かつ効率的(短時間)に行うことができるとともに、製造時においても組付作業を容易かつ能率的に行うことができる。
【0014】
(2) 第一室C1内を真空V側にするため、真空V側に接続する真空接続口部11の位置は、従来のように、第一室C1の底面部2cd中央に限定されない。したがって、真空接続口部11を設ける位置は、第一室C1に臨む底面部2cd及び周面部2cfにおける任意の位置を選定可能となり、位置選定の設計自由度を高めることができるとともに、真空ライン等への取付性をより高めることができる。
【0015】
(3) 第一室C1内を真空V側に設定することから、第一ダイヤフラム部3の全体を含む広面積部位に真空吸引力を作用させることができる。したがって、清掃やメンテナンスのために、第一室C1を開閉可能な構造(着脱構造)に構成する場合であっても、より単純な接触構造による着脱構造の採用が可能となり、取付強度を確保するネジ止め構造等は不要となる。また、第一室C1の開閉をきわめて容易に行うことができるため、清掃やメンテナンスの更なる容易化に寄与できる。
【0016】
(4) 好適な態様により、ハウジング部2を構成するに際し、第二室C2,第三室C3及び第四室C4を形成し、かつ第一ダイヤフラム部3及び主弁5を支持するハウジング上部2mと、第一室C1を形成するハウジング下部2cとを、着脱可能に構成すれば、第一室C1を開閉可能な構造(着脱構造)とする場合、清掃やメンテナンスの観点から最適な形態により具現化できる。また、ハウジング上部2mをハウジング下部2cに載置するのみでも十分な装着強度を確保でき、しかも、主弁5及び第一弁座部6sを含む弁機構の清掃やメンテナンスの更なる容易化にも寄与できる。
【0017】
(5) 好適な態様により、真空接続口部11は、ハウジング部2の周面部2cfから横方へ突出させてもよいし、或いはハウジング部2の底面部2cdから下方へ突出させてもよいため、付設する真空ラインが水平方向又は鉛直方向であっても、別途の接続管等を用いることなく直接取付可能になり、各種用途に適した形態を選択して実施できる。これにより、真空ラインに付設する際の取付部品の不要化,取付部位の省スペース性の向上、更には設置性の向上に寄与できる。
【0018】
(6) 好適な態様により、大気導入口部12を、ハウジング部2の底面部2cdから第一ダイヤフラム部3側へ筒状に突出形成すれば、外方への無用な突出を回避して形状性(外観性)の向上を図れるとともに、主弁5と第一ダイヤフラム部3間の距離を短くして弁動作の安定性向上を図ることができる。
【0019】
(7) 好適な態様により、大気導入口部12に、外端口12eと大気A間に配するフィルタ部13を付設すれば、ハウジング部2における底面部2cdの下方空間をフィルタ部13の配設スペースに利用できるため、様々な形態のフィルタ部13を容易かつ最適な形態により設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好適実施形態に係る真空調整器の断面側面図、
【図2】同真空調整器の外観側面図、
【図3】同真空調整器におけるハウジング下部からハウジング上部を離脱させた状態を示す一部を省略した断面側面図、
【図4】同真空調整器の正常時の作用説明図、
【図5】同真空調整器のダイヤフラム部破損時の作用説明図、
【図6】同真空調整器の変更例を示す一部を省略した断面側面図、
【図7】同真空調整器の他の変更例を示す一部を省略した断面側面図、
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
まず、本実施形態に係る真空調整器1の全体構成について、図1〜図3を参照して説明する。
【0023】
真空調整器1は、内部が中空となるハウジング部2を備える。ハウジング部2は、上側に配するハウジング上部2mと下側に配するハウジング下部2cからなり、ハウジング上部2mはハウジング下部2cに対して着脱する。
【0024】
ハウジング下部2cは、底面部2cd及び周面部2cfを一体に有するカップ状に形成する。したがって、ハウジング下部2cは上方に開放され、上端縁部には、全周に沿ったリング状の被装着部21を一体形成する。この被装着部21は、図3に示すように、上方に開口した凹溝により形成する。他方、ハウジング上部2mは、周面部2mfの上端に、別体の天面部2muを固定ネジ22…により固定して構成する。また、周面部2mfの下端開口付近の内周面には、仕切部2sを一体形成するとともに、下端開口付近の外周面には、図3に示すように、全周に沿ったリング状の装着部23を一体形成する。この装着部23は、被装着部21の凹溝内に挿入可能に形成する。これにより、装着部23は、被装着部21に対して着脱可能となり、装着した際には、ハウジング下部2cとハウジング上部2mの組合わせによるハウジング部2が構成されるとともに、このハウジング部2の内部空間には、仕切部2sにより仕切られる第一空間S1と第二空間S2が設けられる。なお、35は、被装着部21の凹溝内に収容したシールリング(Oリング)を示す。
【0025】
また、第一空間S1は、ゴム素材等により円形に形成したダイヤフラム本体を含む第一ダイヤフラム部3により仕切って第一室C1と第二室C2を形成する。この場合、別体のダイヤフラム固定盤24の周縁部とハウジング上部2m(周面部2mf)の下端部間に、第一ダイヤフラム部3の周縁部を挟み、固定ネジ25…により固定する。ダイヤフラム固定盤24は、中心側を下方に膨出させ、複数の通気孔24h…を設けることにより、第一ダイヤフラム部3のカバーとして機能させるとともに、中央には上方に起立したガイド筒部24sを形成し、このガイド筒部24sにより後述する弁軸5sをスライド自在に支持することにより、当該弁軸5sのガイドとして機能させる。一方、前述した仕切部2sは、中心側を上方に膨出させ、下面が凹部となる山形に形成する。これにより、第一ダイヤフラム部3の下方に第一室C1が形成され、上方に第二室C2が形成される。
【0026】
さらに、第二空間S2は、ゴム素材等により円形に形成したダイヤフラム本体を含む第二ダイヤフラム部4により仕切って第三室C3と第四室C4を形成する。この場合、ハウジング上部2mにおける周面部2mfに天面部2muを取付ける際に、周面部2mfの上端部と天面部2mu間に第二ダイヤフラム部4の周縁部を挟んで固定する。これにより、第二ダイヤフラム部4の下方に第三室C3が形成され、上方に第四室C4が形成される。また、天面部2muには、中央から上方へ膨出させたスプリング収容部2musを設け、このスプリング収容部2musにコイルスプリング26を収容する。コイルスプリング26は、下端を第二ダイヤフラム部4の上面に当接させるとともに、上端は調整ネジ27の下端に当接させる。調整ネジ27はスプリング収容部2musの上面に螺合し、下端をスプリング収容部2musの内部に臨ませる。これにより、第二ダイヤフラム部4の中央は、コイルスプリング26により弾性支持され、調整ネジ27を回すことにより、第二ダイヤフラム部4の位置を調整(変更)することができる。
【0027】
一方、逆円錐状に形成した弁本体5mとこの弁本体5mから上方に延設した弁軸5sからなる主弁5を備え、この弁軸5sの上端は第一ダイヤフラム部3の中央に固定する。なお、弁軸5sは前述したガイド筒部24sに挿通させる。また、ハウジング下部2cの底面部2cdの中央には、この底面部2cdの上面から第一ダイヤフラム部3側へ突出形成した筒状の大気導入口部12を設ける。このように、大気導入口部12を、ハウジング部2の底面部2cdから筒状に突出形成すれば、外方への無用な突出を回避して形状性(外観性)の向上を図れるとともに、主弁5と第一ダイヤフラム部3間の距離を短くして弁動作の安定性向上を図ることができる。大気導入口部12は、上端の内端口12iが第一弁座部6sとなり、かつ外端口12eが大気Aに連通する。したがって、主弁5は昇降することにより、第一弁座部6sを開閉することができる。
【0028】
また、ハウジング下部2cの周面部2cfには、筒状の真空接続口部11を横方へ突出形成する。この真空接続口部11は、真空V側に接続することにより、第一室C1と真空V側を連通させる機能を備える。本実施形態に係る真空調整器1は、ハウジング下部2cの周面部2cfに真空接続口部11を設けるため、第一室C1内を真空V側に設定することができる。したがって、第一ダイヤフラム部3の全体を含む広面積部位に真空吸引力を作用させることができ、清掃やメンテナンスのために、第一室C1を開閉可能な構造(着脱構造)に構成する場合であっても、より単純な接触構造による着脱構造の採用が可能となり、取付強度を確保するネジ止め構造等は不要となる。さらに、第一室C1の開閉をきわめて容易に行うことができるため、清掃やメンテナンスの更なる容易化に寄与できる。特に、前述した被装着部21と装着部23の着脱構造により、ハウジング下部2cの上にハウジング上部2mを載置するのみで容易に装着できるとともに、ハウジング上部2mを上方へ持ち上げるのみで容易に離脱することができる。そして、この場合であっても、装着時には、強大な吸引作用が付与されるため、容易に離脱することはない。
【0029】
さらに、大気導入口部12には、外端口12eと大気A間に配するフィルタ部13を付設する。フィルタ部13は通気性を有し、ゴミ等の侵入を阻止する機能を備える。例示のフィルタ部13は、底面部2cdの下面に形成した保持フレーム28によりドーナツ状のフィルタ本体13mを保持する構成を備える。
【0030】
一方、円錐状に形成した弁本体7mとこの弁本体7mから上方に延設した弁軸7sからなるパイロット弁7を備え、この弁軸7sの上端は第二ダイヤフラム部4の中央に固定する。この場合、仕切部2sの中央に通孔8を設け、この通孔8の下端縁を第二弁座部8sとする。したがって、弁軸7sは通孔8の中を通すことにより弁本体7mを通孔8の下方に位置させる。これにより、弁本体7mを昇降させれば、第二弁座部8sを開閉することができる。天面部2muの周面には、筒状のパイロット口29を横方へ突出形成し、このパイロット口29は第四室C4に連通する。また、周面部2mfには、パイロット口29と第二室C2間を連通接続する細孔部9を形成する。さらに、周面部2mfの他の位置には、大気導入孔30を形成し、この大気導入孔30をフィルタ部31により覆うとともに、キャップ32を付設することによりフィルタ部31を保持する。
【0031】
よって、このような構成を有する本実施形態に係る真空調整器1によれば、ハウジング部2に、第一室C1と真空V側を連通させる真空接続口部11を設けるとともに、内端口12iを第一弁座部6sとし、かつ外端口12eを大気Aに連通させる大気導入口部12を設けたため、清掃やメンテナンスを行う場合であっても、主弁5と第一ダイヤフラム部3の分離を含む各部の分解及び再組立作業が不要になるため、主弁5及び第一弁座部6sを含む弁機構の清掃やメンテナンスを容易かつ効率的(短時間)に行うことができるとともに、製造時においても組付作業を容易かつ能率的に行うことができる。特に、ハウジング部2を構成するに際しては、第二室C2,第三室C3及び第四室C4を形成し、かつ第一ダイヤフラム部3及び主弁5を支持するハウジング上部2mと、第一室C1を形成するハウジング下部2cとを、着脱可能に構成したため、第一室C1を開閉可能な構造(着脱構造)とする場合、清掃やメンテナンスの観点から最適な形態により具現化できる。また、ハウジング上部2mをハウジング下部2cに載置するのみでも十分な装着強度を確保でき、しかも、主弁5及び第一弁座部6sを含む弁機構の清掃やメンテナンスの更なる容易化にも寄与できる。
【0032】
次に、本実施形態に係る真空調整器1の使用方法及び機能(動作)について、図2〜図5を参照して説明する。
【0033】
最初に、真空調整器1の使用方法(設置方法)について説明する。真空調整器1を使用するに際しては、図2に示すように、真空圧を調整したい真空ラインLに付設して使用する。真空ラインLとしては、例えば、乳牛に対して搾乳を行う搾乳システムの真空ラインに適用できる。図2の真空ラインLは、鉛直方向に配した真空配管Lpを示す。この場合、真空調整器1を付設する真空配管Lpの所定部位には、周面から直角に分岐突出する第一接続口41及び第二接続口42を設ける。例示する第一接続口41は、真空配管Lpを直接加工して形成したものであり、また、例示する第二接続口42は、真空配管Lpに形成した貫通孔に別途の接続管を挿入して構成したものである。
【0034】
そして、真空調整器1を取付ける際には、真空接続口部11を第一接続口41に接続するとともに、真空調整器1のパイロット口29を第二接続口42に接続する。この場合、真空接続口部11は、外周面に雄ネジ部11sを形成し、第一接続口41の内周面に形成した雌ネジ部に螺着する。なお、真空接続口部11と第一接続口41間にはパッキン(シーリング材)43を介在させる。このように、真空接続口部11を鉛直方向に配した真空配管Lpに接続するに際しては、接続管等の別途の部品を用いることなく直接接続することができる。一方、真空調整器1のパイロット口29と第二接続口42は、接続チューブ44により接続する。これにより、真空調整器1の取付けは完了する。このように、真空調整器1は真空ラインLに対して容易に取付けることができる。
【0035】
次に、真空調整器1の機能(動作)について説明する。図4は、真空調整器1の正常時の状態を示している。図4中、Vは真空、Aは大気を示すとともに、矢印Fvは、真空Vの吸引方向、矢印Faは大気Aの流入方向を示す。なお、圧力の作用しない自然状態では、主弁5の弁本体5m及びパイロット弁7の弁本体7mは、それぞれ第一弁座部6s及び第二弁座部8sから離間し、ノーマルオープン状態となる。
【0036】
今、真空V側の真空圧が正常圧(設定圧)を維持している場合には、コイルスプリング26の弾力と第二ダイヤフラム部4の変位力はバランスがとれているため、第二ダイヤフラム部4は定位置に位置する。これにより、パイロット弁7はノーマルオープン状態となるため、第二弁座部8sから離間した下降位置にある。したがって、第二弁座部8sは開状態となり、第四室C4(真空接続口29)は、細孔部9,第二室C2,通孔8,第三室C3,大気導入孔30を通して大気Aに連通する。この結果、大気Aは、矢印Faで示すように、大気導入孔30から第三室C3に流入するとともに、さらに、通孔8,第二室C2,細孔部9,第四室C4(真空接続口29)を経由して真空V側(真空配管Lp)に流入する。また、第一室C1には、真空接続口部11を通して真空圧が作用し、第一室C1の真空圧は、第二室C2の真空圧よりも高くなる。これにより、第一ダイヤフラム部3は下方(矢印Dc方向)へ変位し、主弁4は第一弁座部6sに当接することにより第一弁座部6sを閉じる。
【0037】
一方、この状態において、真空V側の真空圧が上昇した場合を想定する。真空圧の上昇により第四室C4内の負圧(吸引力)が上昇し、コイルスプリング26の弾性に抗して第二ダイヤフラム部4が上方へ変位する。これにより、パイロット弁7が上昇し、弁本体7mが第二弁座部8sに当接して当該第二弁座部8sを閉じる。この結果、第二室C2への大気Aの流入がなくなり、真空圧が細孔部9を通して第二室C2に作用するため、第一ダイヤフラム部3及び主弁5が上方へ変位し、主弁5の弁本体5mが第一弁座部6sから離間して当該第一弁座部6sを開く。これにより、大気Aは、フィルタ部13,大気導入口部12を通して第一室C1に流入し、真空圧を低下させるように作用するため、真空圧は、正常圧(設定圧)に復帰する。そして、真空圧が正常圧に復帰すれば、主弁5が下降し、第一弁座部6sに当接して当該第一弁座部6sを閉じる。即ち、図4に示す正常時の状態に復帰する。
【0038】
他方、図5に示すように、真空調整器1の長期使用等により第一ダイヤフラム部3が破損し、第一ダイヤフラム部3に孔が空いた場合を想定する。図5中、3xが破損により空いた孔(破損孔)を示す。これにより、第二室C2内の大気Aは、破損孔3xを通して第一室C1内に流入し、第一室C1内の真空圧は低下する。この結果、第一ダイヤフラム部3は上方へ変位し、主弁5も矢印Do方向に上昇してノーマルオープン状態に復帰する。これにより、大気Aは、フィルタ部13,大気導入口部12を通して第一室C1内に流入し、真空圧を低下させるように作用する。
【0039】
よって、このような本実施形態に係る真空調整器1によれば、ハウジング部2に、第一室C1と真空V側を連通させる真空接続口部11を設けるとともに、内端口12iを第一弁座部6sとし、かつ外端口12eを大気Aに連通させる大気導入口部12を設けたため、ダイヤフラム部(第一ダイヤフラム部3)が破損して孔が空いた場合でも、主弁5は、真空吸引力により上方へ変位し、第一弁座部6sを開状態に維持することにより真空圧を低下させる基本的な機能(フェイルセーフ機能)を確保できる。これにより、真空調整器1を搾乳システムに使用した場合であっても、乳牛の乳頭が過度の高圧真空に晒されることはなくなり、乳牛における無用なストレス及び乳房炎等の発生原因を解消できる。
【0040】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0041】
例えば、図1に示した真空調整器1は、真空接続口部11を設ける形態として、ハウジング部2の周面部2cfから横方へ突出させた例を示したが、図6に示す真空調整器1のように、ハウジング部2の底面部2cdから下方へ突出させることもできる。図6のように構成すれば、水平方向の真空ラインに対しても真空接続口部11を直接接続することができる。このように、真空調整器1は、第一室C1内を真空V側にするため、真空V側に接続する真空接続口部11の位置は、従来のように、第一室C1の底面部2cd中央に限定されない。したがって、真空接続口部11を設ける位置は、第一室C1に臨む底面部2cd及び周面部2cfにおける任意の位置を選定可能となり、位置選定の設計自由度を高めることができるとともに、真空ラインへの取付性をより高めることができる。即ち、例示のように、真空調整器1を付設する真空ラインLが水平方向又は鉛直方向であっても、別途の接続管等を用いることなく直接取付可能となり、各種用途に適した形態を選択して実施できる。したがって、真空ラインLに取付ける際の取付部品の不要化,取付部位の省スペース性の向上、更には設置性の向上に寄与できる。また、図1に示した真空調整器1は、細孔部9をハウジング上部2mに直接形成した形態を示したが、図7に示す真空調整器1のように、第二室C2に臨む接続管45を設け、この接続管45により細孔部9を形成するとともに、接続管45と真空ラインL、又は接続管45と接続チューブ44を、接続チューブ46により接続してもよい。なお、図6及び図7において、図1と同一部分には同一符号を付してその構成を明確化した。
【0042】
その他、第一接続口41及び第二接続口42に、真空接続口部11及びパイロット口29を接続する形態は、接続目的を達成できるものであれば、各種接続形態により実施できる。一方、大気導入口部12は、ハウジング部2の底面部2cdの上面から第一ダイヤフラム部3側へ筒状に突出形成した例を示したが、底面部2cdの下面から下方へ突出形成してもよい。また、大気導入孔30を設ける代わりに、ハウジング部2の内部に前述した細孔部9と同様の通気路を設け、例えば、フィルタ部13の内側から大気Aを導入するようにしてもよい。さらに、図1に示した真空調整器1は、フィルタ部13の構成として横方から大気Aを導入するようにしたが、図6に示す真空調整器1のように、下方から大気Aを導入するようにしてもよい。このように、大気導入口部12に、外端口12eと大気A間に配するフィルタ部13を付設すれば、ハウジング部2における底面部2cdの下方空間をフィルタ部13の配設スペースに利用できるため、様々な形態のフィルタ部13を容易かつ最適な形態により設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る真空調整器は、搾乳システムにおける真空ラインをはじめ、真空圧を一定に保持する必要がある各種真空ライン等(真空側)に付設して利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1:真空調整器,2:ハウジング部,2s:仕切部,2m:ハウジング上部,2c:ハウジング下部,2cf:ハウジング部の周面部,2cd:ハウジング部の底面部,3:第一ダイヤフラム部,4:第二ダイヤフラム部,5:主弁,6s:第一弁座部,7:パイロット弁,8:通孔,8s:第二弁座部,9:細孔部,11:真空接続口部,12:大気導入口部,12i:内端口,12e:外端口,13:フィルタ部,S1:第一空間,S2:第二空間,C1:第一室,C2:第二室,C3:第三室,C4:第四室,A:大気,V:真空

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング部の内部空間を仕切部により仕切って第一空間と第二空間を設けるとともに、第一空間を第一ダイヤフラム部により仕切って第一室と第二室に形成し、かつ第二空間を弾性支持される第二ダイヤフラム部により仕切って第三室と第四室に形成するとともに、前記第一室内に臨む第一弁座部を開閉する主弁を前記第一ダイヤフラム部に固定し、かつ前記仕切部の通孔に設けた第二弁座部を開閉するパイロット弁を前記第二ダイヤフラム部に固定し、前記第三室又は前記第四室の一方を大気に、他方を真空側にそれぞれ連通可能に構成するとともに、前記第二室を、細孔部を介して真空側に連通可能に構成し、少なくとも、真空側の真空圧上昇により当該真空側に大気を導入し、真空側の真空圧低下により当該導入を解除する機能を備える真空調整器において、前記ハウジング部に、前記第一室と前記真空側を連通させる真空接続口部を設けるとともに、内端口を前記第一弁座部とし、かつ外端口を大気に連通させる大気導入口部とを設けて構成したことを特徴とする真空調整器。
【請求項2】
前記ハウジング部は、前記第二室,前記第三室及び前記第四室を形成し、かつ前記第一ダイヤフラム部及び前記主弁を支持するハウジング上部と、前記第一室を形成するハウジング下部とを、着脱可能に構成することを特徴とする請求項1記載の真空調整器。
【請求項3】
前記真空接続口部は、前記ハウジング部の周面部から横方へ突出形成し、又は前記ハウジング部の底面部から下方へ突出形成することを特徴とする請求項1又は2記載の真空調整器。
【請求項4】
前記大気導入口部は、前記ハウジング部の底面部上面から前記第一ダイヤフラム部側へ筒状に突出形成することを特徴とする請求項1,2又は3記載の真空調整器。
【請求項5】
前記大気導入口部には、前記外端口と大気間に配するフィルタ部を付設することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の真空調整器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−55214(P2012−55214A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200517(P2010−200517)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】