説明

眼に投与するためのメマンチンおよびポリアニオン性ポリマーを含む組成物

アダマンタンに関連する神経保護アミン、およびポリアニオン性ポリマーを含む、忍容性が高く、無毒であり、および/または副作用を軽減もしくは減少させる組成物を提供する。ヒトまたは動物の眼を処置するために、該組成物を使用する方法、例えば該組成物をヒトまたは動物の眼に局所投与する方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼を処置するための組成物および方法を対象とする。より具体的には、本発明は、神経保護成分を含むそのような組成物、および神経保護成分の投与を伴うそのような方法に関する。
【0002】
緑内障は、眼内圧の上昇により特徴付けられる眼疾患である。緑内障は、その病因により、原発性または続発性として分類されている。例えば、成人の原発性緑内障(先天性緑内障)は、開放隅角緑内障であるか、または急性もしくは慢性の閉塞隅角緑内障であり得る。続発性緑内障は、ブドウ膜炎、眼内腫瘍または拡大した白内障のような既存の眼疾患から生じる。
【0003】
原発性緑内障の原因は、未だ解明されていない。その眼内圧上昇は、房水流出遮断による。慢性開放隅角緑内障においては、前房およびその解剖学的構造は正常に見えるが、房水の排出は妨げられる。急性または慢性の閉塞隅角緑内障においては、前房が浅く、透過角が狭く、虹彩がシュレンム管の入口の小柱網を閉塞し得る。瞳孔の拡張により、虹彩根部が隅角に対して前方に押され、および瞳孔ブロックを起こして、病状を急進し得る。前房隅角の狭い眼は、種々の重篤度の急性閉塞隅角緑内障に患る素因を有する。
【0004】
続発性緑内障は、後房から前房、次いでシュレンム管への房水の流れのいかなる妨害によっても起こる。前房の炎症性疾患は、膨隆虹彩における完全な虹彩後癒着を起こすことにより房水排出を妨げ得、排液路を滲出物で閉塞し得る。他の通常の原因は、眼内腫瘍、拡大した白内障、網膜中心静脈閉塞、眼の外傷、手術操作および眼内出血である。
【0005】
すべての種類を考慮すると、緑内障は、40歳を超えるすべての人の約2%に起こり、視力が急速に損われるまで何年間も無症候性であり得る。眼内圧を低下するために、現在いくつかの眼用局所治療剤が患者に投与されており、それにはプロスタグランジンおよびプロスタミド、α2アドレナリンアゴニスト、α2アドレナリンアンタゴニストなどが含まれる。
【0006】
眼内圧の低下に加えて、緑内障の続発症の処置への補完的アプローチは、神経保護剤の投与である。緑内障は、失明をもたらす網膜神経節細胞喪失の速度の増加に関連する。米国特許第6,482,854号およびSugrue(Journal of Medicinal Chemistry, 1997, Vol. 40, No.18, 2793-2809)は緑内障を処置するための神経保護剤の使用を教示している。これらの神経保護剤の正確な機序は疑いの余地なく確立されているとは言えないかもしれないが、これらの化合物はグルタミン酸アンタゴニストとして働くと考えられる。網膜神経節細胞は、他の神経節細胞と同様に、神経興奮の引き金を引くグルタミン酸および他のアミノ酸に対する表面受容体を持っている。しかし過剰なアミノ酸関連神経興奮は、神経変性および細胞死を引き起こす。緑内障の場合は、グルタミン酸の硝子体濃度が健常個体の2倍であるので、過剰なグルタミン酸が加速された神経節細胞喪失とそれに伴う失明とを引き起こすと考えられる。グルタミン酸受容体にはその機能および作用機序に基づいて分類されるタイプがいくつかある。あるグルタミン酸受容体クラス(イオンチャネル型受容体)はCa2+特異的イオンチャネルを介して働く。このクラスは、その選択的アゴニストに基づいて、サブクラスに分割することができる。メマンチンおよび他のアダマンタン系アミンは、その選択的アゴニストの名前に従ってN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体と呼ばれているこれらの受容体サブクラスの1つに対して、アンタゴニストして作用すると考えられる。したがってメマンチンおよび他のアダマンタン系アミンは、グルタミン酸神経興奮毒性に対抗し、緑内障罹患者における失明を遅延させる。
【0007】
メマンチンおよび他のアダマンタン系グルタミン酸アンタゴニストは、緑内障の処置だけでなく、他の疾患の処置にも有用であると考えられる。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,573,280号および米国特許第5,922,773号は、グルタミン酸が網膜色素上皮および/または膠細胞の移動および増殖を引き起こすこと、そしてそれゆえに増殖性硝子体網膜症の処置に有用であることを教示している。
【0008】
神経保護剤の局所投与は、刺激などの不都合な作用を眼にもたらしうる。したがって神経保護剤の局所投与用組成物では、多くの場合、そのような作用を緩和するために、そのような薬剤の濃度が下げられている。しかし神経保護剤の濃度を下げると、不都合なことに、眼における治療効力の低下が起こりうる。
【0009】
神経保護剤の経口投薬は、そのような薬剤を眼(特に網膜などの後眼部)および視神経に与えるための有用なアプローチである。そのような経口投薬にはいくつかの問題がある。例えば、神経保護剤の経口投薬によって治療有効量の薬剤を後眼部に与えるには、そのような投薬を長期間(例えば何日も、さらには何週間も)続けることが必要になりうる。したがって経口投薬は、網膜剥離、網膜血管閉塞などの急性状態の処置、およびレーザー誘発損傷の予防にとって、理想的であるとは決して言えない。さらに、神経保護剤の経口投薬には、例えばめまい、フラフラ感、不明瞭言語などの副作用が付随しうる。場合によっては、これらの副作用を避けるために経口用量が減らされ、その結果、後眼部において薬剤が治療的に有効になるまでの期間が長くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
安全かつ有効であり、上記の課題または問題の1つ以上を緩和する組成物および方法を提供することは、有益であるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
<発明の概要>
神経保護成分を眼に与えるための新しい組成物および方法を発見した。眼に局所投与した場合、本組成物は、眼によって忍容され、かつ/または眼に対して無毒である。したがって本組成物は、甚だしい害を引き起こすことなく(例えば眼に対して実質的に非刺激性であり)、望ましい治療作用を眼に与える。さらにまた、眼への局所投与に有用な本組成物は、例えば軽減された副作用または副作用の少ない点、および眼(特に後眼部)に治療有効量の神経保護剤を、より迅速に与えることができるなどの点で、経口投薬組成物より実質的に有利であることがわかった。本方法は、神経保護成分を含む組成物(例えば本発明の組成物)を眼に局所投与することに関する。本組成物および本方法は比較的単純であり、製造、使用および実施が容易である。要するに、本組成物および本方法は、眼科的状態の処置にとっての神経保護剤の有用性を、実質的に増加させる。
【0012】
本発明の大きな一態様として、水性担体とその担体に可溶化された0.1%(w/v)超のアダマンタン系神経保護成分とを含む組成物が提供される。本組成物は、眼に局所投与された場合に、その組成物が、眼によって忍容されるか、眼に対して無毒であるか、神経保護成分を経口投与した場合と比較して少ない副作用および/または副作用の軽減をもたらすのに有効であるかの少なくとも1つであるような組成物である。好ましくは、局所投与された本組成物は、眼によって忍容され、かつ眼に対して無毒である。
【0013】
有用な一実施形態では、本組成物は、眼に局所投与した場合に、眼に対して実質的に非刺激性であり、かつ/または不快を実質的に引き起こさず、かつ/または疼痛を実質的に引き起こさない。本組成物は、眼に局所投与した場合に、眼に対して有害性を上回る有益性を持ち、好適には、眼の外観および眼の機能の少なくとも一方、より好ましくは両方を実質的に損なわない。
【0014】
本発明のもう1つの大きな態様として、ヒトまたは動物の眼を処置する方法が提供される。これらの方法は、眼の網膜における神経保護成分の濃度が少なくとも約0.3μMまたは約0.4μMになり、かつ、眼の網膜における神経保護成分の濃度が同じになるようにアダマンタン系神経保護成分をヒトまたは動物に経口投与した場合と比較して少ない副作用および副作用の軽減の少なくとも一方が得られるように、水性担体とその担体に可溶化されたアダマンタン系神経保護成分とを含む組成物を、ヒトまたは動物の眼に局所投与することを含む。
【0015】
有用な一実施形態では、投与ステップが、眼の網膜における神経保護成分の濃度を少なくとも約0.5μMにする。投与ステップは、好適には、眼の網膜における神経保護成分の濃度が同じになるようにアダマンタン系神経保護成分をヒトまたは動物に経口投与した場合と比較して、少ない副作用および副作用の軽減をもたらす。
本組成物は、本明細書で説明するとおり、本方法で使用することができ、好ましくは本方法で使用される。
【0016】
本発明のさらにもう1つの大きい態様として、ヒトまたは動物の眼を処置するための方法であって、ヒトまたは動物の眼に第1組成物を局所投与すること、およびヒトまたは動物に第2組成物を経口投与することを含む方法が提供される。第1組成物は、水性担体と、その担体に可溶化された第1アダマンタン系神経保護成分とを含む。第2組成物は第2アダマンタン系神経保護成分を含む。好適には、経口投与ステップは、局所投与ステップ中および/または局所投与ステップ後(より好ましくは局所投与ステップ後)に行なわれる。有用な一実施形態では、局所投与ステップが、局所投与ステップを含まない同一の方法よりも迅速に、治療有効量のアダマンタン系神経保護成分を眼の網膜に与える。
【0017】
局所投与ステップは、眼の網膜におけるアダマンタン系神経保護成分の濃度を少なくとも約0.3μMまたは少なくとも約0.4μM、より好ましくは少なくとも約0.5μMにする。
本方法は、急性適応症(例えば急性網膜傷害)、慢性適応症の処置に使用するか、眼のための予防法として使用することができる。
【0018】
局所投与ステップは、好適には、経口投与ステップよりも高いアダマンタン系神経保護成分の網膜濃度をもたらす。
第1および第2アダマンタン系神経保護成分は同じであっても相異なってもよい。
【0019】
本発明において有用なアダマンタン系神経保護成分は、好ましくは、アダマンチル部分とアミン部分とを含み、例えばアダマンチル部分がアミン部分の窒素に直接的または間接的に結合している。アダマンチル部分とアミン部分の両方に結合される連結基を設けてもよい。
【0020】
アダマンチル部分は、置換基を含まなくてもよいし、1つの置換基または複数の置換基を含んでもよい。アミン部分は1級アミン部分、2級アミン部分および3級アミン部分から選択することができる。
【0021】
ある実施形態では、アダマンタン系神経保護成分が、本組成物を眼に局所投与した場合に、眼における神経変性疾患の結果として起こる神経節細胞喪失の速度を低下させるのに有効である。
【0022】
アダマンタン系神経保護成分は、好適には、アマンタジン、リマンタジン、メマンチン、それらの塩およびそれらの混合物から、より好ましくはメマンチン、その塩およびその混合物から選択される。
【0023】
アダマンタン系神経保護成分は、本組成物中に広い濃度範囲で存在することができる。そのような有用な濃度の例は、約0.01%(w/v)または約0.1%(w/v)または0.1%(w/v)超〜約0.5%(w/v)または約1.0%(w/v)または約1.5%(w/v)または約3%(w/v)または約5%(w/v)またはそれ以上の範囲に及ぶ。
【0024】
特に有用な一実施形態では、本組成物が、適合性成分を含まない同一の組成物と比較してアダマンタン系神経保護成分の眼適合性を高めるのに有効な量で存在する水溶性ポリマー適合性成分を、さらに含む。好適には、適合性成分はポリアニオン性ポリマー成分である。
【0025】
現時点で有用な組成物には、適合性成分が、広範囲にわたるさまざまな濃度で存在しうる。ただし、そのような成分は適合性成分として機能し、かつ組成物の残りの部分に対して、または組成物の機能に対して、または眼もしくは眼の機能に対して、甚だしい有害作用を持たないものとする。例えば、適合性成分は約0.01%(w/v)または約0.1%(w/v)〜約5%(w/v)または8%(w/v)または約10%(w/v)の範囲内の量で存在しうる。
【0026】
適合性成分として機能し、組成物に対して、または処置される眼に対して、甚だしい有害作用または重大な有害作用を持たないのであれば、任意の適切な適合性成分を使用することができる。ある実施形態では、適合性成分がアニオン性セルロース誘導体、ヒアルロン酸、アニオン性デンプン誘導体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸誘導体、ポリホスパゼン(polyphospazene)誘導体、ポリアスパラギン酸、ゼラチン、アルギン酸、アルギン酸誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸誘導体など、およびそれらの混合物から選択される。極めて有用な適合性成分として、アニオン性セルロース誘導体およびその混合物、特にカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0027】
本明細書に記載する特徴はどれも皆、そして2つ以上のそのような特徴の組合せはどれも皆、そのような組合せに含まれる特徴が互いに矛盾しないのであれば、本発明の範囲に包含される。
本発明のこれらのおよび他の態様および利点は、以下の詳細な説明、図面、実施例および特許請求の範囲からみて、特に添付の図面と一緒に考慮すれば、明白である。
【0028】
<発明の詳細な説明>
アダマンタン系神経保護成分が関わる組成物および方法を提供する。そのような組成物は、眼に局所投与した場合に、眼によって忍容され、かつ/または眼に対して無毒であり、かつ/またはその神経保護成分の経口投与と比較して副作用の軽減および/または少ない副作用をもたらす。
【0029】
一実施形態として、例えば溶液の形態をとる本組成物は、水性担体と、アダマンタン系神経保護成分、例えば0.1%(w/v)超のアダマンタン系神経保護成分とを含む。極めて有用な一実施形態では、組成物が、適合性成分を含まない同一の組成物と比較してアダマンタン系神経保護成分またはアダマンタン系神経保護組成物の眼適合性を高めるのに有効な量で存在する水溶性適合性成分、例えばポリアニオン性ポリマー適合性成分を、さらに含む。
【0030】
アダマンタン系神経保護成分はアダマンタン系アミンを含む。そのような化合物は、以下の構造を持つアダマンタンに直接的または間接的に結合またはカップリングしたアミンまたはアミノ基を含む。
【化1】

言い換えると、アダマンタンはアミンの窒素に直接結合していてもよいし、1つ以上の原子からなる連結基がアダマンタンをアミンに結びつけていてもよい。アダマンタンは1つ以上の追加置換基、例えばメチル基または他の小さいアルキル基もしくは低級(例えば約4個以下の炭素原子を含有する)アルキル基を持っていてもよい。1つ以上の置換基を持つまたは1つ以上の置換基を持たないアダマンタンの基本かご構造を含む反応可能な基または部分を、ここでは「アダマンチル」部分という。「アミン」という用語は、当技術分野で一般に理解されているとおり、分子にも部分または官能基にも広く適用されると理解すべきであり、1級アミン、2級アミン、または3級アミンであってよい。
【0031】
神経保護成分は、例えばアルツハイマー病、緑内障などの神経変性疾患または神経変性状態における、またはその結果として起こる、神経節細胞喪失の速度を低下させると当技術分野で一般に理解されている物質、例えば化合物、化合物の混合物、他の組成物、他の材料などである。
【0032】
決して発明の範囲を限定するつもりはないが、アダマンタン系アミンであり、かつアダマンチル部分およびアミン部分を含む神経保護成分または神経保護化合物でもある化合物として、以下の構造を持つアマンタジン、リマンタジン、およびメマンチンの3つが挙げられる。
【化2】

【0033】
本明細書で使用する用語「メマンチン」、「アマンタジン」および「リマンタジン」は、遊離塩基型のアミン、および遊離塩基に酸を加えることによって調製することができるさまざまな薬学的に許容できるその塩、例えばメマンチン塩酸塩などのいずれか1つ以上を指す。
【0034】
本明細書に開示する組成物中に使用されるアダマンタン系神経保護成分(例えばメマンチン)の量は当業者の能力の範囲内で十分に決定することができる。組成物中のアダマンタン系神経保護成分(例えばメマンチン)の「有効」量とは、その組成物をヒトまたは動物に投与した場合に、アダマンタン系神経保護成分を含まない同一の組成物と比較して、検出可能な作用(例えば検出可能な神経保護作用)を持つような量である。
【0035】
本明細書においてアダマンタン系神経保護成分(例えばメマンチン)の濃度に言及する場合、濃度に関する数値は、そのアダマンタン系神経保護成分の使用時の形態とは無関係に、遊離塩基の濃度であると理解される。アダマンタン系神経保護成分が有効である濃度または量は広範囲に及ぶので、現時点で有用な組成物におけるアダマンタン系神経保護成分の濃度または量は、比較的広い範囲にわたって変動しうる。
【0036】
ある実施形態では、本組成物が、担体に可溶化された0.1%(w/v)超のアダマンタン系神経保護成分を含む。有用な一実施形態では、本組成物が、約0.05%(w/v)〜約2%(w/v)、または約2.5%(w/v)または約5%(w/v)のアダマンタン系神経保護成分(例えばメマンチンであるが、これに限定されるわけではない)を含む。別の有用な組成物は約0.2%(w/v)〜3%(w/v)、または約0.1%(w/v)〜約2%(w/v)、または約0.5%(w/v)〜約2%(w/v)のアダマンタン系神経保護成分を含む。さらに別の有用な組成物は、約0.5%(w/v)〜約3.5%(w/v)、または約0.3%(w/v)〜約1.5%(w/v)、または約0.5%(w/v)〜約1.3%(w/v)、または約0.1%(w/v)〜約1%(w/v)、または約0.5%(w/v)〜約1%(w/v)、または約0.5%(w/v)〜約1%(w/v)のアダマンタン系神経保護成分を含む。
【0037】
本発明の一態様では、組成物が、水性担体と、その担体に可溶化された0.1%(w/v)超のアダマンタン系神経保護成分とを含む。そのような組成物は、眼に局所投与した場合に、眼によって忍容され、かつ/または眼に対して無毒である。
【0038】
上述のように、本組成物は適合性成分を含みうる。
本発明では任意の適切かつ有用な適合性成分を使用しうるが、極めて有用な一実施形態では、適合性成分が水溶液ポリマー成分、好適には水溶性ポリアニオン性ポリマー成分である。
【0039】
「ポリアニオン性ポリマー成分」または「ポリアニオン性ポリマー」という用語は、当技術分野で理解されている最も広い意味で、1分子につき複数の(例えば数個の)アニオン性部分を含むポリマー材料またはポリマーを指す。決して発明の範囲を限定するつもりはないが、ポリアニオン性ポリマーの典型例として、アニオン性セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースなど)、ヒアルロン酸、アニオン性デンプン誘導体(例えばカルボキシメチルアミロースなど)、アクリル酸から誘導されるアニオン性ポリマー(アクリル酸、アクリレートなどから得られるポリマー、およびその混合物を包含するものとする)、メタクリル酸から誘導されるアニオン性ポリマー(メタクリル酸、メタクリレートなどから得られるポリマー、およびその混合物を包含するものとする)、ポリ(メタクリル酸)誘導体、ポリホスパゼン誘導体、ポリ(アスパラギン酸)、アミノ酸のアニオン性ポリマー(アミノ酸、アミノ酸塩などのポリマー、およびその混合物を包含するものとする)、酸性ゼラチン、およびアルギン酸から誘導されるアニオン性ポリマー(アルギン酸、アルギネートなど、およびその混合物を包含するものとする)が挙げられる。ある実施形態では、ポリアニオン性ポリマー成分がカルボキシメチルセルロースを含む。カルボキシメチルセルロースはポリアニオン性化学種であるので、1つ以上の対カチオンまたは反対カチオンを持つことができ、それを使って言及される場合もある。例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムは、対イオンとしてナトリウムを持っているカルボキシメチルセルロースを指す。
【0040】
ポリマー適合性成分またはポリアニオン性ポリマー成分に関して「可溶性」という用語は、その成分またはポリマーが水溶液(例えば水性担体)に有効濃度で溶解することを意味する。
【0041】
ポリマー適合性成分またはポリアニオン性ポリマー成分の「有効」量または「有効」濃度とは、そのポリマー適合性成分またはポリアニオン性ポリマー成分を含まない同一の組成物と比較して検出可能な適合性作用を組成物に与えるような量である。ポリマー適合性成分またはポリアニオン性ポリマー成分が有効である濃度または量は比較的広い範囲に及ぶので、本明細書に開示する組成物および方法において、そのような成分の濃度または量は、比較的広い範囲にわたって変動しうる。
【0042】
ある実施形態では、本組成物が、適合性成分を、組成物全体の約0.1%(w/v)〜約5%(w/v)または約8%(w/v)または約10%(w/v)の範囲内の量で含む。有用な組成物の例は、約0.1%(w/v)または約0.3%(w/v)または約0.4%(w/v)または約0.5%(w/v)〜約0.8%(w/v)または約1%(w/v)または約1.5%(w/v)または約2%(w/v)または約4%(w/v)または約4.5%(w/v)または約5%の範囲内の量のポリアニオン性ポリマー成分(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのカルボキシメチルセルロース)を含む。例えば本組成物は約0.5%(w/v)のカルボキシメチルセルロースナトリウムを含みうる。
【0043】
複数回用眼科調製物には微生物汚染を防ぐために保存剤成分を使用してもよい。カチオン性、アニオン性およびノニオン性保存剤を使用することができる。有用な保存剤成分の例として、塩化ベンザルコニウム、安定化オキシクロロ錯体または安定化二酸化塩素(例えばAllergan, Inc.が所有する商標Purite(登録商標)によって製品として識別されるもの)、酢酸フェニル水銀、クロロブタノール、ベンジルアルコール、パラベン類、チメロサールなど、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0044】
本明細書に開示する一定の組成物はカチオン性保存剤を含みうる。発明の範囲を限定するつもりはなく、理論に拘泥するつもりも決してないが、一般的には、カチオン性保存剤はポリアニオン性ポリマー成分と不溶性複合体を形成し、その複合体は溶液から沈殿するだろうと予想される。しかし、後述の実施例1で製造される組成物は、カチオン性保存剤を含有し、組成物の形成中または形成後に不溶物は形成されない。したがって、発明の範囲を限定するつもりはないが、本明細書に開示する組成物は、保存剤の使用に関して自由度があるという付加的な利点を持ちうる。塩化ベンザルコニウムなどの4級アンモニウム塩は、使用することができる一般的カチオン性保存剤である。
【0045】
保存剤の「有効」量または「有効」濃度とは、保存剤成分を含まない同一または同様の組成物と比較して、組成物における微生物の成長を有意に阻害するのに必要な濃度である。保存剤成分が有効である濃度または量は比較的広い範囲に及ぶので、本明細書に開示する組成物および方法において、そのような成分の濃度または量は、比較的広い範囲にわたって変動しうる。有効量または有効濃度は広範囲の値を包含し、ここで使用されるカチオン性保存剤の濃度または量は著しく変動しうる。ある実施形態では、約10ppm〜約200ppmの保存剤成分(例えば塩化ベンザルコニウム)が使用される。別の組成物は約20ppmの保存剤成分(例えば塩化ベンザルコニウム)を含む。もう1つの実施形態として、本組成物は、保存剤成分として有効な成分を含まなくてもよい。
【0046】
本組成物は、緑内障の処置に有用であるだけでなく、網膜色素上皮および/または膠細胞の移動ならびにそれに関係する疾患または状態を軽減または管理するためにも使用することができる。したがって、本明細書に開示する組成物は、網膜色素上皮または膠細胞の移動または増殖がその疾患または状態の原因であるか原因の一因であるような疾患または状態を処置するために使用することができる。その関係は直接的であっても間接的であってもよく、網膜色素上皮または膠細胞の移動または増殖は、その疾患または状態の根本的原因であってもよいし、根底にある別の疾患または状態の一症状であってもよい。
【0047】
決して発明の範囲を限定するつもりはないが、本組成物および/または方法を使って処置することができる疾患または状態のタイプの例を以下に挙げる:非滲出型加齢黄斑変性症、滲出型加齢黄斑変性症、脈絡膜血管新生、急性黄斑視神経網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、ベーチェット病、糖尿病性網膜症、網膜動脈閉塞疾患、網膜中心静脈閉塞症、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー処置によって引き起こされる状態、光線力学的治療によって引き起こされる状態、光凝固、放射線網膜症、網膜上膜、増殖性糖尿病性網膜症、網膜静脈分枝閉塞症、前部虚血性視神経症、非網膜症糖尿病性網膜機能障害、色素性網膜炎などの疾患および状態。
【0048】
本明細書では上述した実施形態の組合せである他の具体的な実施形態も考えられる。上述の実施形態を組み合わせることによってさらなる実施形態を作ることができ、それらもまた本発明の範囲および趣旨に包含されるとみなされるであろうことは、当業者には理解されるだろう。
【0049】
決して発明の範囲を限定するつもりはないが、眼科組成物には、本組成物のpHを生理学的に許容できる望ましい範囲内(例えば約6〜約8の範囲内)に維持するのに有効な量の緩衝剤成分を含めることが、多くの場合、有用である。そのようなpHを持つ組成物には、患者の快適性を含む(ただしこれに限定されるわけではない)実質的な利点がある。
【0050】
本発明において有用な緩衝剤成分としては、医薬(例えば眼科組成物)に有用であることが当業者に知られているものが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。そのような緩衝剤成分の例の一部として、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、リン酸塩などの緩衝剤、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0051】
本組成物には、その組成物に望ましい浸透圧を与えるのに有効な量の、例えば実質的に等張性の組成物を得るのに有効な量の(ただしこれに限定されるわけではない)、浸透圧調節成分を含めることができる。有用な浸透圧調節成分の例として、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、塩化カリウムなど、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0052】
本組成物には有効濃度または有効量の界面活性剤成分を使用することができる。有用な界面活性剤成分の例として、ポリソルベート、ポロキサマー、アルコールエトキシレート、エチレングリコール-プロピレングリコールブロックコポリマー、脂肪酸アミド、アルキルフェノールエトキシレート、リン脂質など、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0053】
本組成物には有効濃度または有効量のキレート化成分を使用することができる。有用なキレート化成分の例として、エデト酸塩、例えばエデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、およびエデト酸二カリウムなど、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。キレート化成分は保存剤の有効性を高めるのに有効な量で存在することができる。
【0054】
眼科組成物に典型的に使用される成分に関する上述の議論は、純粋に例示を目的として、当業者が本明細書に開示する方法をより容易に実行できるようにするために記載したものであり、決して本発明の範囲を限定するつもりではない。
【0055】
本発明の一実施形態として、ヒトまたは動物の眼を処置する方法が提供される。そのような方法は、水性担体とその担体に可溶化されたアダマンタン系神経保護成分とを含む組成物を、ヒトまたは動物の眼に局所投与することを含む。
【0056】
そのような投与は、好適には、眼の網膜における神経保護成分の濃度を、少なくとも約0.3μMまたは少なくとも約0.4μMまたは少なくとも約0.5μMにするのに有効である。そのような方法では、本発明の組成物を使用することができ、好ましくは本発明の組成物が使用される。
【0057】
この局所投与ステップは、眼によって忍容され、かつ/または眼に対して無毒であり、かつ/または神経保護成分の網膜濃度が同じになるようにアダマンタン系神経保護成分をヒトまたは動物に経口投与した場合と比較して少ない副作用および副作用の軽減の少なくとも一方をもたらすのに有効である。
【0058】
本発明によるアダマンタン系神経保護成分(例えばメマンチン)の局所投薬は、処置される眼の視神経に、治療濃度または治療量を与えることがわかった。そのようなメマンチンの局所投与は、そのような神経保護成分について、経口送達と比較して等しいかそれ以上の網膜レベルを、迅速に達成することができる。さらにまた、経口投薬の副作用制限ゆえに、局所投薬は実際には、経口的に達成される網膜濃度より高い網膜濃度を、例えば少ない副作用および/または軽減された副作用で達成することができる。
【0059】
メマンチンなどのアダマンタン系神経保護成分の経口送達は、めまい、フラフラ感および不明瞭言語を含むいくつかの用量制限副作用に関連づけられる。CNS興奮に関連する他の有害事象には不安、解離、口内乾燥、頭痛、神経質、不明瞭言語、疲労感および脱力感などがあり、これらは5〜30mg/日のメマンチン経口投薬量で生じる。本発明によればこれらの成分の局所投与により、アダマンタン系神経保護成分(例えばメマンチン)のはるかに高い眼レベルを達成することができると同時に、そのような成分への全身曝露量を著しく減少させることができる。さらにまた、この低い全身曝露量は、経口送達に必要な5mgから20mgまでの用量ランプ(dose ramp)が、局所投与には必要ないであろうことを意味する。これは、網膜剥離、損傷または傷害予防(例えばレーザー誘発損傷予防)、網膜血管閉塞などの急性適応症には、特に関係がある。
【0060】
本発明によれば、アダマンタン系神経保護成分を局所的に、例えば負荷用量(loading dose)として、急性網膜傷害に使用することにより、経口的に用量を増量(ramp up)する必要を回避することができる。増量期間後ではなく実質上直ちに、許容できない全身性有害事象を伴うことなく治療濃度を得ることができるので、実質的な医学上の利益が実現される。
【0061】
したがって、ある実施形態では、第1アダマンタン系神経保護成分をヒトまたは動物の眼に局所投与すること、およびそのヒトまたは動物に第2アダマンタン系神経保護成分を経口投与することを、両方とも含む組合せ処置が、本発明の範囲に包含される。第1および第2アダマンタン系神経保護成分は同じであっても相異なってもよい。好適には、局所投与ステップを、経口投与ステップの前に行なう。例えば、局所投与ステップは、網膜または他の後眼部に、例えばレーザー誘発損傷予防として、または他の急性適応症を理由として、治療有効濃度のアダマンタン系神経保護成分を迅速に与えるために使用することができる。いったん治療濃度が達成されたら、望ましい治療濃度を維持するために、アダマンタン系神経保護成分の経口投与を、単独で、または継続的局所投与と組み合わせて使用することができる。
【0062】
アダマンタン系神経保護成分の経口剤形は従来技術であり、当技術分野では周知である。
以下に限定ではない実施例を挙げて、本発明の一定の態様および特徴を例示する。
【実施例1】
【0063】
標準的水性賦形剤中、ならびに0.5%カルボキシメチセルロース(CMC)ナトリウム(Aqualon Type 7LFH、分子量90kDa)および20ppm塩化ベンザルコニウム(BAK)を含有する賦形剤中に、メマンチン(すなわち1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン)塩酸塩(メマンチンHCl)を製剤化した(表1および2)。
【0064】
表1の組成物は当業者によく用いられている方法によって調製した。
【表1】

【0065】
表2の組成物は以下の手順に従って調製した。それぞれ構成要素Iおよび構成要素IIと呼ぶ2つの水相を別々に調製した。
【0066】
構成要素I
精製水(2000mL)を容器に投入して混合を開始し、次にカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム(20g)を加えて、分散するまで混合した。
【0067】
構成要素II
精製水(1700mL)を容器に投入して撹拌を開始した。塩化ナトリウム(20.0g)、塩化カリウム(5.6g)、乳酸ナトリウム(20ml、60%溶液)、塩化カルシウム(0.80g)、塩化マグネシウム(0.24g)、および塩化ベンザルコニウム(20mL)を順次加えた(この際、それぞれを溶解させてから、次の成分を加えるようにした)。次に、メマンチンHCl(0.1%(w/v)製剤の場合、4.0g)を加え、溶解するまで混合した。
【0068】
上記2つの水相を調製した後、(構成要素II)を主要バッチ容器中のバルク相(構成要素I)に混合しながら移し、その混合物を15分間、十分に混合した。水酸化ナトリウムまたは塩酸を使って、pHを6.4〜6.6に調節した。次にバッチ体積が4000mlになるように水を加え、必要なら1N NaOHまたは1N HClでpHを6.4〜6.6に調節した。次に、その溶液を20〜30分間、十分に混合し、Suporlife DCF CHS92DSPPK 0.2μmフィルターで滅菌濾過した。フィルターフラッシュ液としてメマンチンHCl局所溶液500mlが必要だった。
【0069】
【表2】

【0070】
モデルポリアニオン性ポリマーとしてのカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウムと、モデル神経保護アダマンタン系アミンとしてのメマンチン塩酸塩(pKa10.27)とを使って、アダマンタン系神経保護アミンの忍容性に対するCMCの作用を評価した。
【0071】
発明の範囲を限定するつもりはなく、決して理論に拘泥するつもりもないが、カチオン性薬物とポリアニオン性化学種との間には弱い静電結合が形成されると考えられる。したがって、その弱い結合が、薬物の生物学的利用能には基本的に影響を及ぼさずに、薬物の眼忍容性を改善すると考えられる。決して理論に拘泥するつもりはないが、本明細書でこの実施例および後述する他の実施例に記載する実験結果は、この仮説を裏付けている。
【0072】
CMCが神経保護アミンの生物学的利用能を有意に減少させないことを実証するために、メマンチンHCl/CMCモデル系で重量オスモル濃度(osmolality)および透析試験を行なった。溶液の浸透圧は束一的性質であり、したがって遊離薬物の相対的尺度になりうる。この関係は等式1によって得られる:
OPTC = ΔCmemRT (1)
[式中、OPTCは、個々のメマンチン分子が遊離であり未結合であるとした場合の、所与のメマンチン濃度の変化ΔCmemに対する浸透圧の理論的変化である。Rは普遍気体定数であり、Tはケルビンで表した温度である]。メマンチン製剤、CMC含有メマンチン製剤およびそれぞれのプラセボの重量オスモル濃度を比較することにより、メマンチンの活量を推測することができる。
【0073】
重量オスモル濃度測定は、凝固点降下浸透圧測定法によって行なった。結果を表3に示す。
【表3】

【0074】
プラセボによって、試験対象溶液の重量オスモル濃度(溶媒の質量あたりの粒子の総数)に関するベースラインが確定され、CMCプラセボは溶液の重量オスモル濃度に対するCMCの寄与を確定するために用いられる。したがって、これら2つの溶液の間にある13 Osm/kgという差は、CMCに起因すると考えられる。
【0075】
0.1%メマンチン溶液の重量オスモル濃度をプラセボと比較すると、このメマンチンは溶液の重量オスモル濃度を10 Osm/kg増加させることがわかる。これは、添加したCMCの量とその分子量に基づく9.3という理論値にかなり近い。したがって、CMCの寄与(13 Osm/kg)とメマンチンの寄与(10 Osm/kg)の和から、プラセボ溶液よりも約23 Osm/kg高い予想重量オスモル濃度が予測されるだろう。0.1%メマンチン/CMC溶液の実際の重量オスモル濃度はプラセボより21 Osm/kg高く、これは理論的予想値と著しく相違しない。この結果は、0.1%メマンチン/CMC溶液においてはメマンチンHClとCMCとが基本的に個別の粒子として作用し、複合体化した単一の物体としては作用しないことを示唆している。1%メマンチン溶液とプラセボとを同じように比較することにより、同様の結果を得ることができる。したがって、理論に拘泥するつもりも、理論によって発明の範囲を限定するつもりも決してないが、メマンチンとCMCの間の弱い相互作用がメマンチンの生物学的利用能を減少させるとは思われない。
【0076】
メマンチンの生物学的利用能に関するモデルとして、透析膜に対するメマンチンの透過性を調べた。もし透析膜に対するメマンチンの透過性がCMC製剤と非CMC製剤とで同等であるなら、これら2タイプの製剤ではメマンチンの生物学的利用能が有意に相違しないだろうと考えられる。これらの透析試験は、透析膜を介するCMC製剤からのメマンチンの透過性が、その膜を介するホウ酸緩衝非CMC製剤からのメマンチンの透過性と同等であることを示した(図1)。これらの試験では、メマンチンのCMC含有製剤または非CMC含有製剤を、透析バッグの内側に入れた。次に、そのバッグをホウ酸緩衝製剤プラセボの槽に沈め、槽におけるメマンチンの出現を時間の関数として測定した。槽における出現(すなわち薬物透過)の速度は等式2によって得られる:
【数1】

[式中、dM/dtは時間の関数としての槽におけるメマンチン出現の速度、hは透析バッグの厚さ、Pは透析膜におけるメマンチンの透過性、roは透析バッグの外径、riは内径、そしてamemはメマンチン活量である]。
【0077】
この実験ではdM/dtおよびamemだけが一定でない。したがって、メマンチン透過速度に相違があれば、それは活量の相違に直接的かつ直線的に関係する。逆に、2つの組成物が同様のまたは同一のメマンチン透過速度を与えるのであれば、それらの組成物の(メマンチン)活量は基本的に同じである。図3は、非CMC製剤およびCMC製剤からのメマンチンの透過が同等であり、したがってメマンチンの活量が同等であることを、明瞭に示している。決して理論に拘泥するつもりはなく、限定するつもりも決してないが、これは、膜透過性の観点から見ると、ポリアニオン性ポリマーが存在しても存在しなくても、メマンチン活量は基本的に同じであることを示唆している。このように、ポリアニオン性ポリマー存在下のメマンチンに関して、重量オスモル濃度および膜透過性の観点から見た活量がどちらも基本的に変化しないとすれば、生物学的利用能に対するポリアニオン性ポリマーの作用は無視できるほど小さいと考えるのが合理的である。決して発明の範囲を限定するつもりはないが、以下に記載する生物学的利用能データはこの結論を裏付けている。
【実施例2】
【0078】
初期毒性スクリーニングに、20ppm BAKで保存処理したホウ酸緩衝等張性メマンチンHCl(0.05%〜1.0%(w/v))溶液(表1)を用いた。また、0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム水性賦形剤中に0.5%および1.0%(w/v)のメマンチンHClを含有する製剤(表2)も試験した。1日間の用量増加試験を行なって、最高許容用量まで上向きにタイトレーション(up-titrate)した。
【0079】
ウサギの結膜嚢内に製剤35μLを投与し、刺激を、なし、軽微、軽度、中等度または重度に分類した。刺激スコアは、流涙、結膜浮腫、充血および忍容性(全て、なし〜重度のスコアを付けたもの)の和とした。
【0080】
ホウ酸緩衝プラセボは刺激を示さなかった。しかし、ホウ酸緩衝メマンチン製剤は0.1%(w/v)で軽微な刺激性、0.5%(w/v)で軽度の刺激性、1.0%(w/v)では中等度の刺激性を示した。CMCプラセボは刺激を示さず、同製剤は1.0%(w/v)メマンチンで軽微な刺激性を示すに過ぎなかった。このように、CMC製剤は1対数単位(log unit)高いメマンチン濃度で非CMC製剤と同じ刺激性を持つ。決して理論による束縛または制限を受けるつもりはないが、CMCが刺激を制限するであろうが、透析試験により評価されるように、予測される生物学的利用能に、無視できるほど小さな作用しか持たないことは、予想外である。
【0081】
この試験を5日間の毒性試験で追試した。この追試には、0.1〜0.75%(w/v)メマンチンのホウ酸緩衝製剤、0.1〜1.0%(w/v)メマンチンのCMC系製剤、および関連プラセボを用いた。全ての製剤を20ppm BAKで保存処理した。
【0082】
毎日2回、1週間にわたって、35μLの液滴により、ウサギの結膜嚢内に製剤を投薬した。刺激の肉眼的臨床観察によってウサギを評価し、なし、軽微、軽度、中等度または重度に分類した。刺激スコアは、流涙、結膜浮腫、充血および忍容性(全て、なし〜重度のスコアを付けたもの)の和とした。
【0083】
ホウ酸緩衝メマンチン製剤は、眼の不快の重症度および頻度に、0.1%(w/v)メマンチンでの軽微から0.75%(w/v)メマンチンでの中等度に及ぶ、用量依存的な増加を示した。CMC系製剤は、0.5%(w/v)および0.75%(w/v)メマンチンでは軽微な不快しか示さず、1.0%メマンチンでは軽度の不快を示した。このように、メマンチンの忍容性は約5〜8倍(factor)改善される。結膜充血は、ホウ酸溶液の場合、0.5%(w/v)以上のメマンチンで軽微〜軽度だった。これに対してCMC系製剤の場合は、0.5%および1.0%(w/v)メマンチンで軽微な充血が低い頻度で観察されたが、他のメマンチン濃度では観察されなかった。理論に拘泥するつもりはないが、ここでも、ポリアニオン性ポリマーを含有する製剤では、充血が有意に減少する。
【0084】
眼球生物学的利用能に対するCMCの影響を評価することも重要だった。0.05%非CMC製剤および0.05%CMC製剤を投与した後の眼球濃度を比較するため、ならびに2つのCMC製剤(0.05%対0.25%)の用量直線性を評価するために、薬物動態試験を行なった。1日2回、7日間にわたって、雌アルビノ種ウサギの両眼に、製剤を局所投薬した。非放射標識製剤を製造し、33.7mCi/mmolの比活性を持つ14C-メマンチンHClをスパイクした。製剤の最終活性は66.3〜72.5μCi/mLの範囲になった。ウサギへの投薬後、1時点につき6眼を、投薬前と、投薬後30、60、120および240分の時点でサンプリングした。結膜、眼房水、角膜、虹彩-毛様体、水晶体および強膜をアッセイした。硝子体液、網膜および脈絡膜は、投薬前と、投薬後30、120および240分の時点でのみアッセイした。組織燃焼とシンチレーション計数器による活性測定とを併用して、組織メマンチン濃度を決定した。硝子体液および眼房水は燃焼を行なわずにカウントした。次に、1分あたりの崩壊数を組織濃度に相関させた。
【0085】
0.05%(w/v)メマンチンの場合、CMC製剤および非CMC製剤は、同等な網膜濃度を示した。0.25%メマンチン/CMC系製剤の網膜濃度は0.05%製剤の網膜濃度よりも約4倍高く、したがってほぼ直線的な用量応答を示した。
【0086】
0.05%(w/v)メマンチンホウ酸緩衝製剤、0.05%(w/v)メマンチン/CMC製剤および0.25%(w/v)メマンチン/CMC製剤に関して、網膜濃度(Cmax)はそれぞれ64.6ng/mL、63.9ng/mLおよび289ng/mLだった。高い方の用量は1.4μMに相当する。
どの局所投与についても、網膜におけるtmaxは30分であり、急性適応症に有用/有効なメマンチンの迅速かつ即時的な投薬形態を示した。
【0087】
したがって、発明の範囲を限定するつもりも、理論に拘泥するつもりも決してないが、これらの結果は、メマンチンに対するCMCの刺激性緩和作用が生物学的利用能を有意に低下させないことを示している。決して理論による制限または束縛を受けるつもりはないが、これらの結果は、刺激を低い濃度で先に観察されたものと同じかそれより低く保ちつつ、より高濃度のメマンチンを製剤中に使用しうることを示している。決して理論による制限を受けるつもりはないが、もう1つの選択肢として、ポリアニオン性ポリマーの添加によって刺激性のより低いメマンチン組成物を製剤化することもできる。
【実施例3】
【0088】
実施例1の手法に従い、表4に記載の処方を使って、組成物を製造する。
【表4】

【実施例4】
【0089】
実施例1の手法に従い、表5に記載の処方を使って、組成物を調製する。
【表5】

【実施例5】
【0090】
実施例1の手法に従い、表6に記載の処方を使って、組成物を調製する。
【表6】

【実施例6】
【0091】
実施例1の手法に従い、表7に記載の処方を使って、組成物を調製する。
【表7】

【実施例7】
【0092】
実施例1〜6の1つによるポリアニオン性ポリマー含有組成物を、緑内障を患っている人に、長期間にわたって毎日2回投与する。刺激は処置中常に忍容可能レベル未満であり、視力喪失の割合が有意に低下する。
【実施例8】
【0093】
局所1-アミノ- 3,5-ジメチルアダマンタン塩酸塩(メマンチン)点眼薬の全体的配置をオートラジオグラフィーによって評価した。簡単に述べると、アルビノ種および有色種のウサギに、局所点眼により、pH7.4の0.74%(w/v)水性等張性メマンチン溶液を投薬した。投薬後、眼のオートラジオグラフィー切片を、投薬の0.25、0.5、1、および2ならびに24時間後に取得した。
【0094】
オートラジオグラフィーデータは、局所投薬後にメマンチンが後部強膜、脈絡膜および/または網膜に存在することを明確に示した。さらに、このデータから、滞留時間の定性的評価を行なった。アルビノ種のウサギでも有色種のウサギでも、眼球後部におけるメマンチンの半減期は比較的長いようである。有色組織におけるオートラジオグラフィーの強度は、メマンチンが眼のメラニンに結合することを示している。
【実施例9】
【0095】
アルビノ種ウサギで7日間にわたって、0.37%メマンチンHCl(w/v)ホウ酸緩衝溶液の1日1回の局所投薬(0.242mg/kg/日)を、メマンチンHClの連日経口投薬(1.76mg/kg/日)と比較した。局所投与後に得られる網膜におけるメマンチンレベルは、全身投薬によって得られるレベルよりはるかに高く、それぞれ、局所投薬の場合は2,430ng/mL、経口投薬の場合は100ng/mLだった。局所投薬によって得られるピークレベルは、経口投薬によって可能であると考えられるレベルをはるかに上回った。残念ながら、この製剤の局所投薬は、充血、結膜浮腫、および不快につながりうる。したがってこの製剤の局所投薬は著しく制限される。
【実施例10】
【0096】
メマンチンの組織濃度を経口投薬後および局所投薬後に決定した。ウサギに、放射標識メマンチンの0.1%(w/v)水溶液35μlを、1日2回、7日間にわたって、両眼に局所投薬した(約0.07mg/kg/日に相当)。この組成物は表1に組成物2として詳しく記載されている。もう1つのウサギ群には2mg/kgの放射標識メマンチンを7日間経口投薬した。投薬期間の終了時に、眼組織濃度を定量した。局所投薬および経口投薬による網膜メマンチン濃度は、基本的に同等(それぞれ108ng/mlおよび107ng/ml)だった。これらのデータは、局所適用されるメマンチンが28分の1の用量で経口投薬に匹敵する網膜濃度を達成できることを示している。
【実施例11】
【0097】
ダッチベルテッド(Dutch Belted)種のウサギTX99065に1.5%(w/v)メマンチンHCl製剤を毎日6回局所投薬して毒性試験を行なった。この試験は、CMC系製剤中の1.5%メマンチンHClが局所的に忍容性が高いことを示した。
【実施例12】
【0098】
ヒト経口臨床薬物動態試験は、1日量20mgの経口用量を投薬した後のメマンチンの平均血漿濃度が95ng/mLであることを示した。31%のタンパク質結合、および遊離非結合型血漿メマンチン濃度に等しい網膜-脈絡膜濃度を仮定すると、メマンチンのピーク網膜レベルは0.30μMになるだろう。
【0099】
CMC系製剤中の0.05%(w/v)および0.25%(w/v)メマンチン溶液を1日2回局所投薬すると、毒性の徴候を何も伴わずに、0.30μMおよび1.4μMのピーク網膜レベルが得られた。CMC系製剤中の局所メマンチンは1.5%(w/v)メマンチンまで忍容される。経口的に得ることができるレベルよりもはるかに高い網膜レベルを、局所メマンチンが達成できることは、明らかである。実際、約1〜約6μMという有効網膜濃度を達成するには、局所メマンチンが唯一の機序であるかもしれない。
【実施例13】
【0100】
実施例1〜6の1つによるポリアニオン性ポリマー含有組成物を、急性網膜傷害を患っている人に、毎日2回、4日間にわたって局所投与する。これにより、患者には、その傷害の迅速な処置(例えばその傷害の1つ以上の症状の迅速な軽減)が与えられる。その後、その患者には、副作用を軽減しつつ治療有効量のメマンチンを与えるのに十分な用量のメマンチンを経口投与する。
【0101】
このようにして、患者は、その急性網膜傷害の迅速な処置と、副作用の軽減したその傷害の継続的処置とを受ける。これに対して、局所投与を行なわない場合、経口投与は、メマンチンの治療作用が明白になるまでに、もっと長期間(例えば約1週間または約2週間程度)を必要とするだろう。
【0102】
本発明をさまざまな具体的実施例および実施形態に関して説明したが、本発明はそれらに限定されず、本発明は特許請求の範囲内でさまざまに実施することができると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】透析膜に対するメマンチンのカルボキシメチルセルロース(CMC)製剤およびメマンチンの非CMC製剤の透過性をグラフ化したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性担体と、前記担体に可溶化された0.1%(w/v)超のアダマンタン系神経保護成分とを含む組成物であって、眼に局所投与した場合に、前記眼によって忍容されるか、前記眼に対して無毒であるか、前記眼の網膜における神経保護成分の濃度が同じになるように前記アダマンタン系神経保護成分をヒトまたは動物に経口投与した場合と比較して少ない副作用および副作用の軽減の少なくとも一方をもたらすのに有効である組成物。
【請求項2】
眼に局所投与した場合に、前記眼によって忍容されかつ眼に対して無毒である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
眼に局所投与した場合に、前記眼に対する刺激を実質的に引き起こさないか、不快を実質的に引き起こさないか、疼痛を実質的に引き起こさないかの少なくとも1つである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
眼に局所投与した場合に、前記眼の網膜における神経保護成分の濃度が同じになるように前記アダマンタン系神経保護成分をヒトまたは動物に経口投与した場合と比較して少ない副作用および副作用の軽減の少なくとも一方をもたらす、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記アダマンタン系神経保護成分がアダマンチル部分およびアミン部分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記アダマンチル部分が前記アミン部分の窒素に直接結合している、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記アダマンタン系神経保護成分が前記アダマンチル部分と前記アミン部分とに結合した連結基をさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記アダマンチル部分が置換基を含まないか、少なくとも1つの置換基を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
眼に局所投与した場合に、前記アダマンタン系神経保護成分が、眼における神経変性疾患の結果として起こる神経節細胞喪失の速度を低下させるのに有効である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記アダマンタン系神経保護成分がアマンタジン、リマンタジン、メマンチンおよびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記アダマンタン系神経保護成分がメマンチンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記アダマンタン系神経保護成分が0.1%(w/v)超〜約5%(w/v)の範囲内の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記アダマンタン系神経保護成分が0.1%(w/v)超〜約1.5%(w/v)の範囲内の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
適合性成分を含まない同一の組成物と比較して前記アダマンタン系神経保護成分の眼適合性を高めるのに有効な量で存在する水溶性ポリマー適合性成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記適合性成分がポリアニオン性ポリマー成分である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記適合性成分が約0.1(w/v)〜約10%(w/v)の範囲内の量で存在する、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記適合性成分がアニオン性セルロース誘導体、ヒアルロン酸、アニオン性デンプン誘導体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸誘導体、ポリホスパゼン誘導体、ポリアスパラギン酸、ゼラチン、アルギン酸、アルギン酸誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸誘導体およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記適合性成分がカルボキシメチルセルロースである、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
ヒトまたは動物の眼を処置するための方法であって、
水性担体と、前記担体に可溶化されたアダマンタン系神経保護成分とを含む組成物を、ヒトまたは動物の眼に、前記眼の網膜における前記神経保護成分の濃度が少なくとも約0.4μMになるように局所投与することを含み、前記局所投与ステップが、前記眼によって忍容されるか、前記眼に対して無毒であるか、前記眼の網膜における前記神経保護成分の濃度が同じになるように前記アダマンタン系神経保護成分を前記ヒトまたは動物に経口投与した場合と比較して少ない副作用および副作用の軽減の少なくとも一方をもたらすのに有効である方法。
【請求項20】
前記投与ステップが前記眼の網膜における前記神経保護成分の濃度を少なくとも約0.5μMにする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記局所投与ステップが、前記眼の網膜における前記神経保護成分の濃度が同じになるように前記アダマンタン系神経保護成分を前記ヒトまたは動物に経口投与した場合と比較して少ない副作用および副作用の軽減の少なくとも一方をもたらす、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記アダマンタン系神経保護成分がアダマンチル部分およびアミン部分を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記アダマンタン系神経保護成分がアマンタジン、リマンタジン、メマンチンおよびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記アダマンタン系神経保護成分がメマンチンである、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、適合性成分を含まない同一の組成物と比較して前記アダマンタン系神経保護成分の眼適合性を高めるのに有効な量で存在する水溶性ポリマー適合性成分をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記適合性成分がポリアニオン性ポリマー成分である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記適合性成分が約0.1(w/v)〜約10%(w/v)の範囲内の量で存在する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記適合性成分がアニオン性セルロース誘導体、ヒアルロン酸、アニオン性デンプン誘導体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸誘導体、ポリホスパゼン誘導体、ポリアスパラギン酸、ゼラチン、アルギン酸、アルギン酸誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸誘導体およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記適合性成分がカルボキシメチルセルロースである、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
ヒトまたは動物の眼を処置する方法であって、
水性担体と、前記担体に可溶化された第1アダマンタン系神経保護成分とを含む第1組成物を、ヒトまたは動物の眼に局所投与すること、および
前記ヒトまたは動物に、第2アダマンタン系神経保護成分を含む第2組成物を経口投与すること
を含む方法。
【請求項31】
前記経口投与ステップが前記局所投与ステップ後に行なわれる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記局所投与ステップが、前記局所投与ステップを含まない同一の方法よりも迅速に、治療有効量のアダマンタン系神経保護成分を前記眼の網膜に与える、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記局所投与ステップが眼の網膜におけるアダマンタン系神経保護成分の濃度を少なくとも約0.3μMにする、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
急性適応症を処置するために使用される、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記眼のための予防法として使用される、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記第1アダマンタン系神経保護成分および第2アダマンタン神経保護成分が同じであるか、相異なる、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記第1および第2アダマンタン系神経保護成分のそれぞれがアマンタジン、リマンタジン、メマンチンおよびそれらの混合物からなる群より独立して選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記第1組成物が、適合性成分を含まない同一の組成物と比較して前記第1アダマンタン系神経保護成分の眼適合性を高めるのに有効な量で存在する水溶性ポリマー適合性成分をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項39】
前記適合性成分がポリアニオン性ポリマー成分である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記適合性成分がアニオン性セルロース誘導体、ヒアルロン酸、アニオン性デンプン誘導体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸誘導体、ポリホスパゼン誘導体、ポリアスパラギン酸、ゼラチン、アルギン酸、アルギン酸誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸誘導体およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項38に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−517885(P2007−517885A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549374(P2006−549374)
【出願日】平成17年1月4日(2005.1.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/000249
【国際公開番号】WO2005/067891
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】