説明

眼の収差を低減する眼レンズを得る方法

【課題】眼の収差を低減することができる眼レンズを得るための方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの角膜表面を数学的モデルとして特徴付けるステップと、前記数学的なモデルを使用することにより、結果として生じる前記角膜表面の収差を計算するステップと、眼内レンズの光学倍率を選択するステップとを備える。この情報から、前記レンズおよび角膜モデルから成る光学系からの波面の眼内での収差が低減するように、眼レンズがモデル化される。また、眼の収差を低減できる方法によって得られる眼レンズが開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼の収差を低減する眼レンズ(ophthalmic lens)を設計する方法およびそのような視力の向上を与えることができるレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、同じ年齢の母集団において、埋め込まれた眼内レンズ(IOL、intraocular lens)を有する眼の視質(visual quality)が天然のレンズに匹敵し得ることが論じられている。その結果、そのようなレンズは客観的に天然の水晶体よりも光学的に優れていると見なされているが、70歳の年老いた白内障患者は、眼内レンズの外科的な埋め込み後に、同じ年齢の白内障を患っていない人の視質を得ることしか期待できない。この結果は、現在のIOLが人間の眼の光学系の不具合すなわち光学的な収差を補償するようになっていないという事実によっておそらく説明される。最近、年齢に関連する眼の不具合が調査されてきており、50歳を越える被検者においては、コントラスト感度が著しく衰えることが分かっている。これらの結果は、レンズの埋め込みを伴う白内障手術を受けた個人が、平均年齢が約60歳から70歳の白内障を患っていない人よりも良好なコントラスト感度を得ないことが、コントラスト感度測定により明らかになっているため、前述した議論にあてはまっているように思われる。
【0003】
たとえ、不具合のある白内障レンズ及び従来のコンタクトレンズ等の他の眼レンズを置きかえることを目的とした眼内レンズが単独要素として優れた視質を伴って開発されてきたとしても、それらが、年齢に伴う収差の不具合を含む多くの眼の収差現象を修正できないことは明らかである。
【0004】
米国特許第5,777,719号(Williamsら)は、波面解析を用いて、光学系としての眼の高次の収差を正確に測定するための方法および装置を開示している。ハートマン−シャック波面センサを使用することにより、眼の高次の収差を測定することができるとともに、そのようなデータを使用して、これらの収差を補償し、それによって、光学的性能を大きく向上させることができる光学レンズの設計のための十分な情報を得ることができる。ハートマン−シャックセンサは、被検者の眼の網膜の1つの点から反射した光を解析するための手段を与える。瞳孔の面内の波面は、ハートマン−シャックセンサの小型レンズ列の面内で再現される。列内の各小型レンズは、網膜の点光源の空中像を列の焦点面に配置されたCCDカメラ上に形成するために使用される。レーザビームによって網膜上に形成された点光源から生じた眼の波面収差は、各小型レンズで、波面の局所的な勾配に比例した量だけ、各点を変位させる。CCDカメラからの出力はコンピュータに送られ、コンピュータは、勾配データを66個のゼルニケ多項式の一次導関数にあてはめるための計算を行なう。これらの計算から、ゼルニケ多項式を重みづけるための係数が得られる。重みづけられたゼルニケ多項式の合計は、光学系としての眼の収差によって歪められた再構成された波面を表わしている。この場合、個々のゼルニケ多項式の項は、収差の様々なモデルを表わす。
【0005】
米国特許第5,050,981(Roffman)は、レンズ−眼系を通過する多数の光線をトレースして変調伝達関数を計算するとともに、結像位置で光線の分布密度を評価することによってレンズを設計するための他の方法を開示している。これは、レンズがはっきりした焦点および最大変調伝達関数を生じることが分かるまで、少なくとも1つのレンズ面を変化させることにより、繰り返し行なわれる。
【0006】
米国特許第6,224,211号(Gordon)は、複数の非球面レンズを角膜に連続的に嵌め込み、これによって、個人の眼全体の球面収差を低減するレンズを見出すことにより、人間の目の視力を向上させるための方法を開示している。
【0007】
設計に関して前述したこれらの方法は、コンタクトレンズや眼の全体の系の収差を完全に補償することができる有水晶体眼のための他の修正レンズの設計に適している。しかしながら、天然の水晶体を置き代えることを目的とする改良された眼内レンズを提供するためには、眼の個々の部分の収差を考慮することが必要である。
【0008】
米国特許第6,050,687号(Billeら)は、眼の屈折特性が測定され、全体の波面収差に対する眼の個々の面の寄与度を考慮する方法に関するものである。ここに開示された方法は、後側の角膜表面の形状を解析して、屈折修正技術を向上させることを特に目的としている。
【0009】
最近、眼の収差研究に焦点が絞られてきており、これらの研究には、年齢に応じたこれらの収差の進展に関する多くの研究が含まれる。2つの特定の研究では、眼の複数の要素の進展が個別に検査され、その結果、若い眼の個々の要素の光学的な収差が互いに相殺されることが分かった。これについては、1998年のOptical Letters第23(21)巻の1713頁から1715頁および2000年のIOVS第41(4)巻545を参照のこと。1993年のRefractive & Corneal Surgery第9巻の173頁から181頁のS. Patelらによる論文は、後側の角膜表面の非球性を開示している。ここには、眼内レンズの倍率および非球性を予測して、将来の偽水晶体眼の光学的性能を最大にする目的で、他の眼のパラメータと共に角膜データを使用できることが示唆されている。また、最近、1999年のIOVS第40(4)巻S535でのAntonio GuiraoおよびPablo Artalにより、角膜の形状が年齢とともに変化して球状に近づくことが分かった。これらの研究は、被検者の角膜がプラスの球面収差を与え、この球面収差が年齢とともにわずかに大きくなることを示唆している。一方、1999年のInvestigative Ophthalmology and Visual Science第40巻の1351頁から1355頁のT Oshikaらにより明らかとなった結果によると、前側の角膜表面の回転対称な収差は、若い眼と年老いた眼との間で異なっていないらしい。1998年のVision Research第38(2)巻の209頁から229頁で、A Glasserらは、角膜が除去された後、アイバンクから得た眼からの天然の水晶体の球面収差を調査した。ここで使用されたレーザスキャナ光学方法によれば、年老いた(66歳)レンズからの球面収差がプラスの球面収差を示したのに対し、10歳のレンズがマイナスの球面収差を示すことが分かった。また、2001年のVision Research、第41巻の235頁から243頁(G Smithら)は、リラックス状態で、天然の水晶体がマイナスの球面収差を有するらしいことを開示している。Smithらは、年老いた眼が大きい収差を有しているため、水晶体の球面収差のマイナス性が年齢とともに低下するらしいことを示唆している。
【0010】
1991年のOphthal. Physiol. Opt.第11巻の137頁から143頁(D A Atchison)では、レンズ表面を非球面化することにより眼内レンズの球面収差を低減する方法が論じられている。Atchisonに概説された方法は、回折効果および異質要素内の光路に沿う屈折率の任意の変化を考慮しない幾何学的な変換計算を基本としている。これらの計算は、回折限界に近いエラーをもたらす。また、WO98/31299(Technomed)では、レイトレーシング法が概説されている。これによれば、眼内レンズの設計のために、角膜の屈折を考慮しようとしている。以上を考慮すると、眼の個々の表面の収差によりよく適合しあるいは収差を補償するとともに、従来の眼レンズによってもたらされるピンぼけや非点収差以外の収差をよりよく修正することができる眼レンズが必要であることは明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、結果として、眼の収差を低減する眼レンズを得るための方法を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、眼内への埋め込み後に、眼の収差を低減することができる眼内レンズを得る方法を提供することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、角膜表面の光学的な不整によって生じる収差を補償することができる眼内レンズを得る方法を提供することである。
【0014】
本発明の更に他の目的は、球形から逸脱した波面を、実質的により球形の波面に回復させることができる眼内レンズを提供することである。
【0015】
また、本発明の目的は、特定の人の集団から入手した平均的な光学的不整および不完全部分を修正することができる眼内レンズを提供し、これにより、同じ集団に属する個人においてレンズの光学的性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一般に、本発明は、眼レンズと、眼の収差を低減できる前記眼レンズを得る方法とに関する。この場合の収差とは、波面収差のことである。これは、収束する波面が点像を形成する完全な球面でなければならない、すなわち、眼の網膜上に完全な像を形成する場合、角膜および自然レンズや人工レンズ等といった眼の光学面を通過する波面が完全に球面でなければならないという理解に基づいている。波面が球面から逸れると、収差を伴う異常な像が形成される。これに関連して、用語「非球状の表面」は、回転対称な表面、非対称な表面、および/または不規則な表面を指している。すなわち、球面ではない全ての表面を非球状の表面と称する。M.R.Freemanによる1990年のOptics第10版等の教科書的な文献で説明されているような様々な近似モデルにしたがって、波面収差を数学的な項で表わすことができる。
【0017】
第1の実施形態において、本発明は、その埋め込み後に眼の収差を低減することができる眼内レンズを設計する方法に関する。方法は、少なくとも1つの角膜表面を数学的なモデルとして特徴付け、この数学的なモデルを使用することにより、結果として生じた角膜表面の収差を計算する第1のステップを備えている。これにより、角膜の収差の表示、すなわち、そのような角膜表面を通過した球状波面の波面収差が得られる。選択された数学的なモデルにより、角膜の収差を計算するための様々なルートをとることができる。角膜表面は、回転のコノイドの形で、あるいは、多項式やその結合の形で、数学的なモデルとして特徴付けられることが好ましい。角膜表面は、多項式の一次結合の形で特徴付けられることが更に好ましい。方法の第2のステップは、眼内レンズの倍率を選択することである。これは、眼の光学的な修正の特定の必要性のための従来の方法、例えば、米国特許第5,968,095に記載された方法にしたがって行なわれる。ステップ1およびステップ2の情報から、眼内レンズがモデル化され、これにより、前記レンズおよび角膜モデルを備えた光学系からの波面の収差が低減される。レンズをモデル化する際に考慮される光学系は、一般に、角膜および前記レンズを有しているが、特定の場合、個々の状況に応じて、眼鏡のレンズや、コンタクトレンズ、角膜挿入インプラント、埋め込み可能な修正レンズ等の人工の修正レンズを含む他の光学要素を有していても良い。
【0018】
レンズのモデル化は、所定の予め選択された屈折力を有するレンズ形状を決定するのに役立つ系内の1または複数のレンズパラメータを含んでいる。一般に、これには、前側の半径および表面形状、後側の半径および表面形状、レンズ厚、レンズの屈折率の選択が含まれる。実際には、CeeOn(登録商標)Edge(モデル911)で例示されるようなPharmacia社からのCeeOn(登録商標)レンズ等の従来の球面レンズに基づくデータを用いて、レンズのモデル化を行なうことができる。そのような場合、既に臨床的に承認されたモデルからの逸脱をできる限り少なくすることが好ましい。このため、レンズの中心半径、レンズの厚さ、屈折率の値を所定の値に維持しつつ、異なる形状の前側表面および/または後側表面を選択することにより、これらの表面の一方または両方が非球面状を有するようにすることが好ましい。本発明の他の方法においては、適切な非球面要素を選択することによって、従来の出発点となるレンズの球状の前側表面がモデル化される。レンズは、非球面や他の回転コノイドのような形状を成す少なくとも1つの表面を有していることが好ましい。レンズを非球面状に形成することは、良く知られた技術であり、様々な原理にしたがって行なうことができる。また、そのような表面についての説明は、並行して出願された我々のスウェーデン特許出願0000611−4により詳細に記載されている。
【0019】
また、本発明の方法は、レンズと平均的な角膜のモデルとを備えた光学系の波面収差を平均的な角膜の波面収差と比較するとともに、波面収差が十分に低減されたかどうかを評価することによって、更に発展させることができる。球面レンズから十分に逸脱して角膜の収差を補償するレンズモデルを見出すように変化し得る適切な可変パラメータが、前述したレンズの物理的なパラメータ中で見出される。
【0020】
良く知られた解剖学的な測定方法にしたがう直接的な角膜表面測定により、少なくとも1つの角膜表面を数学的なモデルとして特徴付け、これにより、角膜の波面収差を表わす角膜モデルを形成することが好ましい。このような解剖学的な測定方法は、本発明の方法で使用できる定量化可能なモデルで角膜の表面の凹凸を表わすのに役立つ。この目的のための角膜測定は、Orbtechから市販されているORBSCAN(登録商標)ビデオケラトグラフによって行なうことができ、あるいは、Premier Laser Systemsから市販されているEyeSys(登録商標)等の角膜トポグラフィ法によって行なうことができる。少なくとも前側の角膜表面が測定されることが好ましく、また、前側および後側の角膜表面が測定されて特徴付けられ、これらが共に、角膜の全波面収差を表わす多項式の一次結合等の結果として生じる波面収差項で表わされることが更に好ましい。本発明の1つの重要な態様に従って、角膜の波面収差の平均を表わし且つそのような平均的な収差からレンズを設計する目的で、選択された母集団において角膜の特徴付けが行なわれる。その後、母集団の平均的な角膜の波面収差項は、例えば多項式の平均的な一次結合として計算することができ、また、レンズ設計方法で使用することができる。このような態様は、例えば年齢集団等の様々な関連する母集団を選択して、適切な平均的な角膜表面を形成することを含んでいる。これにより、IOLの埋め込みや角膜挿入を含む屈折修正手術または白内障手術を受けるために選択された個人に関連する母集団の平均的な角膜に適合するレンズを有利に提供することができる。これにより、患者は、従来の球面レンズに比べて眼の収差が実質的に低減するレンズを得る。
【0021】
また、前述した角膜測定は、角膜の屈折力の測定を含んでいることが好ましい。本発明の設計方法でレンズ倍率を選択する場合には、一般に、角膜の屈折力および軸方向の眼の長さが考慮される。
【0022】
また、ここで、波面収差が多項式の一次結合として表わされ、また、そのような多項式の1または複数の項によって表わされるように、角膜モデルおよびモデル化された眼内レンズを備える光学系が、実質的に収差が低減された波面を与えることが好ましい。光学技術の当業者であれば、複数のタイプの多項式を利用して収差を表わすことができる。多項式は、ザイデル多項式またはゼルニケ多項式が適当である。本発明においては、ゼルニケ多項式を使用することが好ましい。
【0023】
ゼルニケ項を使用して、完全な球面から逸れる光学面によって得られる波面収差を表わす技術は、従来技術であり、例えば1994年のJ. Opt. Soc. Amの第11(7)巻の1949頁から1957頁に概説されたHartmann−Shackセンサと共に使用することができる。また、異なるゼルニケ項が、ピンぼけ、非点収差、コマ収差、より高い収差に至る球面収差を含む異なる収差現象を示すことは、光学分野の専門家の間で十分に立証されている。本発明の方法の実施形態においては、角膜表面測定の結果、角膜表面が最初の15個のゼルニケ多項式の一次結合として表わされる。レイトレーシング法によって、ゼルニケ表示を、結果として生じる波面に変換することができる(方程式(1)に示されるように)。ここで、Zはi番目のゼルニケ項であり、aはこの項における重み係数である。ゼルニケ多項式は、単位円上に規定された完全直交多項式のセットである。以下の表1は、最初の15個のゼルニケ項および収差を示しており、各項は、以下の式で示される。
【数1】

【0024】
方程式(1)において、ρおよびθは、正規化された半径およびアジマス角をそれぞれ示している。
【表1】

【0025】
従来の眼内レンズを用いた光学的な修正は、埋め込みレンズを有する眼から成る光学系の4番目の項だけに従う。ガラス、コンタクトレンズ、非点収差の修正を伴う幾つかの特定の眼内レンズは、更に項5および項6に従うことができ、非点収差を示すゼルニケ多項式を実質的に減らす。
【0026】
また、本発明の方法は、前記モデル化された眼内レンズおよび角膜を備える光学系から生じる波面収差を計算して、それを多項式の一次結合で表わし、眼内レンズが波面収差を十分に低減したか否かを判断することを含んでいる。波面収差の低減が十分でない場合には、1または複数の多項式の項が十分に減るまで、レンズが再モデル化される。レンズの再モデル化は、少なくとも1つのレンズ設計パラメータが変更されることを意味する。これらの設計パラメータには、前側の表面形状および中心半径、後側の表面形状および中心半径、レンズの厚さ、レンズの屈折率が含まれる。一般に、そのような再モデル化は、球面から逸れるようにレンズ表面の形状を変化させることを含む。OSLOバージョン5など、設計方法と共に使用するのに有益なレンズ設計に利用できる複数の手段がある。OSLOバージョン5については、1996年のSinclair Opticsの第4章プログラムリファレンスを参照のこと。この適用に関連するゼルニケ多項式の形式が表1に示されている。
【0027】
第1の実施形態の好ましい態様において、本発明の方法は、少なくとも1つの角膜表面をゼルニケ多項式の一次結合として表わし、これによって、結果として生じる波面ゼルニケ係数、すなわち、考慮のために選択される個々のゼルニケ多項式の係数を決定することから成る。その後、前記モデルレンズおよび角膜を備える光学系が、選択されたゼルニケ係数が十分に減った波面を与えるように、レンズがモデル化される。モデル化された眼内レンズおよび角膜を備える光学系から生じた波面を示すゼルニケ多項式のゼルニケ係数を計算して、角膜およびレンズから成る光学系の波面ゼルニケ係数をレンズが十分に低減させたか否かを判断し、また、前記係数が十分に減るまで前記レンズを選択的に再モデル化する更なるステップを用いて方法を発展させることもできる。この態様において、方法は、ゼルニケ多項式を最大4次まで考慮して、球面収差を示すゼルニケ係数および/または非点収差項を十分に減らすようにすることが好ましい。角膜および前記モデル化された眼内レンズを備える光学系から波面の11番目のゼルニケ係数を減らして、球面収差が十分に無い眼を得ることが特に好ましい。また、設計方法は、高次の収差を減らし、これによって、4次よりも高い高次の収差項のゼルニケ係数を減らすようにすることができる。
【0028】
選択された母集団からの角膜特性に基づいてレンズを設計する場合、表面形状を描くゼルニケ多項式によって各個人の角膜表面が表わされ、そこから、波面収差のゼルニケ係数が決定されることが好ましい。これらの結果から、平均的なゼルニケ波面収差係数が計算され、この平均的なゼルニケ波面収差係数が設計方法で使用されて、そのような選択された係数の十分な低減が図られる。本発明に係る他の方法においては、代わりに、表面形状を描くゼルニケ多項式の平均値が計算され、この平均値が設計方法で使用される。大きな母集団からの平均値に基づいた設計方法から得られるレンズが、全てのユーザの視力の質を実質的に向上させる目的を有していることは言うまでもない。平均値に基づいて波面収差項が全て除去されたレンズは、結果的に、あまり望ましくない場合があり、従来のレンズを用いた場合よりも特定の個人の視力を低下させることがある。そのため、選択されたゼルニケ係数だけをある程度の平均値まで減らすことが好ましい。
【0029】
本発明の設計方法の他のアプローチに従って、選択された母集団の角膜特性と、結果として生じた多項式の一次結合、例えば個々の角膜収差を表わすゼルニケ多項式とが、係数値に関して比較される。この結果から、適した係数値が選択され、適したレンズのための本発明の設計方法において、前記選択された係数値が使用される。符号が同じ収差を有する選択された母集団において、そのような係数値は、一般に、選択された母集団の中で最も低い値となり得る。これにより、この値から設計されたレンズは、従来のレンズと比較して、集団中の全ての個人の視力の質を向上させる。方法の一実施形態は、代表的な患者の集団を選択して、集団中の各被検者における角膜の解剖学的なデータを収集することから成る。また、方法は、瞳孔の直径を示す予め設定された開口サイズにおいて、前記データを、各被検者の角膜表面を示す項に変換することから成る。その後、前記集団の少なくとも1つの角膜表面形状項の平均値が計算され、少なくとも1つの角膜表面形状項が得られる。このことに代え、あるいは、このことに加えて、角膜波面収差項に対応する角膜に対する少なくとも一つの平均値を計算することができる。角膜波面収差項は、レイトレース処理を使用して、対応する角膜表面形状項を変換することによって得られる。前記少なくとも1つの平均角膜表面形状項または前記少なくとも1つの平均角膜波面収差項から、角膜およびレンズを備える光学系の前記少なくとも1つの平均波面収差項を減らすことができる眼レンズが設計される。
【0030】
本発明の1つの好ましい実施例において、方法は、更に、計算された少なくとも1つの平均角膜表面形状項または少なくとも1つの平均角膜波面収差項から、人の集団のための平均的な角膜モデルを設計することから成る。また、方法は、設計された眼レンズが少なくとも1つの平均収差項を正確に補償していることをチェックすることから成る。これは、モデル平均角膜およびレンズを通じて移動した波面のこれらの特定の収差項を測定することによって行なわれる。測定された波面において前記少なくとも1つの収差項が十分に減っていない場合には、レンズが再設計される。
【0031】
平均角膜表面形状項または所定の半径における平均角膜波面収差項から設計されるレンズにおいては、1または複数の表面の記述的な(非球面を描く)定数が計算されることが好ましい。球面の半径は、レンズの屈折力によって決定される。
【0032】
角膜表面は、数学的なモデルとして特徴付けられることが好ましく、その結果得られる角膜表面の収差は、数学的なモデルおよびレイトレーシング技術を使用することによって計算される。これによって、角膜波面収差、すなわち、そのような角膜表面を通過した波面の波面収差の式が得られる。選択された数学的なモデルに応じて、角膜波面収差を計算するための様々なルートをとることができる。角膜表面は、回転のコノイドに関し、または、多項式に関し、または、これらの組み合わせに関し、数学的なモデルとして特徴付けられることが好ましい。角膜表面は、多項式の一次結合に関して特徴付けられることが更に好ましい。
【0033】
本発明の一実施形態においては、眼との関連で、レンズが、前記患者が分類される選択された人の集団の角膜測定から得られた同じ収差項の平均値と略同じ値を有するが符号が異なる少なくとも1つの波面収差項を、通過する波面に与えるように、レンズの少なくとも1つの非球状の表面が設計される。これにより、患者の眼の角膜からの波面は、前記レンズの通過後に、角膜によって与えられる前記少なくとも1つの収差項が減少する。ここで使用する「眼との関連で」という表現は、実際の眼および眼のモデルの両方を意味し得る。
【0034】
本発明の特定の実施形態において、波面は、回転対称なゼルニケ項で表わされた収差項が、最大で4次まで減る。このため、眼レンズの表面は、通過する波面のプラスの球面収差項を減少するように設計される。その結果、角膜が完全なレンズであり、したがって、波面収差項を全く生じない場合には、眼レンズは、角膜および眼レンズを備えた光学系に対し、マイナスの波面球面収差項を与える。この場合、プラスの球面収差は、プラスの倍率を有する球状の表面がプラスの球面収差を生じるように定義される。レンズは、球面収差を補償するようになっていることが好ましく、波面の収差、好ましくは少なくとも11番目のゼルニケ項(表1参照)に相当するゼルニケ多項式の少なくとも1つの項を補償するようになっていることが更に好ましい。
【0035】
選択された人の集団は、例えば、特定の年齢範囲に属する人の集団、白内障手術を受ける人の集団、LASIK(レーザ原位置角膜曲率形成術)、RK(放射状角膜切除術)、PRK(レーザー屈折矯正角膜切除術)を含むがこれらに限定されない角膜手術を受けた人の集団、であっても良い。また、人の集団は、特定の眼の疾患を有する人または特定の眼の不具合を有する人の集団であっても良い。
【0036】
また、レンズには光学倍率が設けられていることが好ましい。これは、眼の光学的な修正の特定の必要性のための従来の方法にしたがって行なわれる。レンズの屈折力は、30ジオプトリー以下であることが好ましい。レンズをモデル化して収差を補償する際に考慮される光学系は、一般に、平均的な角膜および前記レンズを有しているが、特定の場合、個々の状況に応じて、眼鏡のレンズや、コンタクトレンズ、角膜挿入インプラント、埋め込み可能な修正レンズ等の人工の修正レンズを含む他の光学要素を有していても良い。
【0037】
特に好ましい実施形態において、眼レンズは、白内障手術を受ける人のために設計される。この場合、そのような母集団からの平均的な角膜は、以下の式に従う長球の表面によって示されることが分かった。
【数2】

ここで、
(i)円錐定数ccは−1から0の範囲の値を有し、
(ii)Rは中心レンズ半径であり、
(iii)adおよびaeは、円錐定数に付け加えられた非球面多項式係数である。
【0038】
これらの研究において、長球の表面の円錐定数は、4mmの開口サイズ(瞳孔の直径)における約−0.05から、7mmの開口サイズにおける約−0.18までの範囲である。したがって、平均的な角膜の値に基づいて白内障患者における少なくとも球面収差を低減することにより視力を向上させるのに適した眼レンズは、前記式に従う長球の表面を有している。一般に、角膜は、プラスの球面収差を眼内の波面に生じさせるため、眼内に埋め込むための眼レンズは、前述した長球のカーブに従いつつ、マイナスの球面収差項を有している。本明細書の実施形態部分でより詳しく後述するように、平均球面収差の100%を修正することができる眼内レンズは、設計瞳孔直径および選択された屈折力に応じた正確な値をもって、0よりも小さい円錐定数(cc)を有している(修正されたコノイド面を描く)ことが分かった。例えば、開口の直径を6mmにすると、約−1.03の円錐定数値を有する22ジオプトリーのレンズが形成される。この実施形態において、眼レンズは、OSLO形式で表わされる多項式を使用して、波面収差の球面収差を示すゼルニケ多項式係数を有する角膜の球面収差を、3mmの開口半径における0.000156mmから0.001948mmの範囲の値、2mmの開口半径における0.000036mmから0.000448mmの範囲の値、2.5mmの開口半径における0.0001039mmから0.0009359mmの範囲の値、3.5mmの開口半径における0.000194mmから0.000365mmの範囲の値と釣り合わせるように設計される。角膜の屈折率が1.3375である1つの面を有するモデル角膜において、これらの値を計算した。本発明の範囲から逸脱することなく、角膜の光学的に等価なモデル形式を使用することができる。例えば、複数の表面角膜すなわち屈折率が異なる角膜を使用することができる。これらの範囲のうちのより低い値は、ここでは、特定の開口半径−1倍の標準偏差において測定された平均値と等しい。より高い値は、特定の開口半径+3倍の標準偏差毎に測定された平均値と等しい。使用される平均値および標準偏差が表8、9、10、11に示されている。わずか−1倍のSD(標準偏差)を選択する一方で+3倍のSDを選択する理由は、この実施形態では、プラスの角膜球面収差だけを補償することが便利であり、1倍を越えるマイナスのSDを平均値に加えると、角膜球面収差がマイナスになってしまうからである。
【0039】
本発明の一実施形態において、方法は、一人の特定の患者の角膜の少なくとも1つの波面収差項を測定するステップと、この患者に対応する選択された集団がこの特定の患者の代表(representative)であるか否かを判断するステップとを更に備えている。この患者に対応する選択された集団がこの特定の患者の代表である場合には、選択されたレンズが埋め込まれ、そうでない場合には、他の集団からのレンズが埋め込まれ、あるいは、この患者の角膜の性状を設計角膜として使用して、この患者のための個人的なレンズが設計される。これらの方法ステップは、角膜の収差が極端な値を有する患者に特別な処理を施すことができるため、好ましい。
【0040】
他の実施形態において、本発明は、同じ屈折力を有するが収差が異なる複数のレンズから、患者が必要とする所望の光学的修正に適した屈折力を有する眼内レンズを選択することに関する。この選択方法は、設計方法で説明したと同様の方法で行なわれ、少なくとも1つの角膜表面を数学的モデルを用いて特徴付け、これによって、角膜表面の収差を計算することを含む。前記選択されたレンズおよび角膜モデルから成る光学系が評価され、そのような光学系からの波面の収差を計算することによって、収差が十分に低減されているか否かが判断される。修正が不十分であることが分かると、同じ倍率を有するが収差が異なる新たなレンズが選択される。ここで使用される数学的なモデルは前述したものと同様であり、角膜表面の同じ特徴付け方法を使用することができる。
【0041】
選択で決定された収差がゼルニケ多項式の一次結合として表わされ、モデル角膜および選択されたレンズからなる結果として得られる光学系のゼルニケ係数が計算されることが好ましい。光学系の係数値から、眼内レンズが、光学系のゼルニケ係数によって表わされる角膜収差項と十分に釣り合っているか否かを判断することができる。所望の個々の係数の十分な低減が見出されない場合には、光学系の収差を十分に低減することができるレンズが見出されるまで、同じ倍率を有するが収差が異なる新たなレンズを選択することにより、これらのステップを繰り返すことができる。最大で4次までの少なくとも15個のゼルニケ多項式が決定されることが好ましい。球面収差の修正が十分であると見なされると、角膜および眼内レンズから成る光学系におけるゼルニケ多項式の球面収差項だけが修正される。レンズおよび角膜を備えた光学系においては、これらの項の選択が十分に僅かとなるように眼内レンズを選択しなければならないことは言うまでもない。本発明においては、11番目のゼルニケ係数a11を、実質的に除去することができ、あるいは、十分0に近くすることができる。これは、眼の球面収差を十分に低減する眼内レンズを得るための必須条件である。本発明の方法は、同一の方法で他のゼルニケ係数、例えば非点収差、コマ収差、より高次の収差を示すゼルニケ係数を考慮することにより、球面収差以外の他のタイプの収差を修正するために使用することができる。また、モデル化の一部となるように選択されるゼルニケ多項式の数に応じて、より高次の収差を修正することができる。この場合、4次よりも高い次数の収差を修正することができるレンズを選択することができる。
【0042】
1つの重要な態様において、選択方法は、倍率範囲を有するレンズと、各倍率範囲内に異なる収差を有する複数のレンズとを備える一式からレンズを選択することを含む。一実施形態において、各倍率範囲内のレンズは、様々な非球面要素を有する前面を備えている。適切なゼルニケ係数で表わされるように、最初のレンズが十分に収差を低減しない場合、同じ倍率を有するが表面(非球面要素)が異なる新たなレンズが選択される。必要に応じて、最良のレンズが見出されるまで、あるいは、考え抜かれた収差項が有意な境界値を下回るように減少するまで、選択方法を繰り返すことができる。実際に、角膜検査から得られるゼルニケ項は、眼科医によって直接に得られ、あるいは、これらのゼルニケ項を一式内のレンズの既知のゼルニケ項と比較するアルゴリズムによって直接に得られる。この比較により、一式内で最も適したレンズを見出して埋め込むことができる。また、白内障手術の前に方法を実施することができ、また、角膜評価から得られるデータは、個々に仕立てられるレンズを製造するために、レンズ製造メーカーに送られる。
【0043】
また、本発明は、眼の角膜を通過した波面を、眼の網膜にその中心を有する実質的に球状の波面に変換することができる少なくとも1つの非球状の表面を有する眼内レンズに関する。波面は、最大で4次まで、回転対称なゼルニケ項で表わされた収差項に対して、実質的に球状である。
【0044】
特に好ましい実施形態において、本発明は、正規化フォーマットを使用してゼルニケ多項式の項の一次結合として表わされた時に、埋め込み後に角膜のプラスの項と釣り合って眼の球面収差の十分な低減を得ることができるゼルニケ係数a11を伴う4次のマイナスの11番目の項を有する少なくとも1つの表面を備えた眼内レンズに関する。この実施形態の一態様において、レンズのゼルニケ係数a11は、複数の角膜での十分な数のゼルニケ係数a11の評価(estimations)から得られる平均値を補償するように決定される。他の態様において、ゼルニケ係数a11は、一人の患者の個人的な角膜係数を補償するように決定される。したがって、個人的なレンズを高い精度で仕立てることができる。
【0045】
また、本発明は、眼の収差を少なくとも部分的に補償する眼内レンズを患者に提供する他の方法に関する。この方法は、眼から天然レンズを除去することから成る。従来の水晶体乳化処理法を使用することによって、埋め込まれたレンズを外科的に除去することができる。また、方法は、波面センサを使用することにより、レンズを備えていない無水晶体眼の収差を測定することから成る。波面測定に適した方法は、Liang等による1994年のJ.Opt.Soc.Amの第11(7)巻の1949頁から1957頁に記載されている。また、方法は、測定された収差を少なくとも部分的に補償するレンズを一式のレンズ(a kit of lenses)から選択するとともに、前記レンズを眼内に埋め込むことから成る。一式のレンズは、倍率および収差が異なる複数のレンズから成り、前述したと同様の方法で最も適したレンズを見出すことができる。また、患者のために個別に設計されるレンズは、その後の埋め込みのため、無水晶体眼の波面解析に基づいて設計することができる。この方法は、自動的に、角膜の解剖学的な測定が全く考慮されず、前側表面および後側表面を含む角膜全体が考慮されるため、有利である。
【0046】
従来の方法を用いて、本発明に係るレンズを製造することができる。一実施形態において、そのようなレンズは、シリコーンやヒドロゲルらの柔軟で弾力がある材料によって形成される。折り曲げ可能な眼内レンズに適したそのような材料の例は、米国特許第5,444,106号や米国特許第5,236,970号に記載されている。米国特許第6,007,747号にしたがって、非球面状のシリコーンレンズや他の折り曲げ可能なレンズを製造することができる。また、本発明に係るレンズは、ポリメタクリル酸(メチル)等の、より硬質の材料によって形成することができる。当業者であれば、本発明の収差低減レンズを製造するために好適に使用できる他の材料および製造方法を容易に識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】CeeOn(登録商標)911レンズおよび本発明の平均(「Z11」)レンズが埋め込まれた場合における10人の被検者のa11(「Z11」)ゼルニケ係数値の比較を示している。
【図2】CeeOn(登録商標)911レンズおよび本発明の平均(「Z11」)レンズによる被検者のモデル化された視力を示している。
【図3】CeeOn(登録商標)911レンズと本発明の平均(「Z11」)レンズとの間の変調伝達関数比較を示している。
【図4】CeeOn(登録商標)911レンズと本発明の平均(「Z11」)レンズとの間の変調伝達関数比較を示している。
【図5】本発明に係るモデルレンズによるレンズの非点収差に応じてプロットされた視力を示している。
【図6】本発明のレンズを用いて最良に修正された視力を示している。
【図7】個人的に設計されたレンズを装着した個人の変調伝達関数を示している。
【図8】個人的に設計されたレンズを装着した個人の変調伝達関数を示している。
【図9】本発明に係る個人的に設計されたレンズを用いた最良の視力修正を示している。
【図10】実施形態部分で前述した研究で使用された71人の患者の年齢分布を示している。
【図11】Orbscan(登録商標)の標高データファイルによって与えられた高さマップを示している。
【図12】平均的な角膜の波面収差係数を示している。
【図13】6mm開口径における71人の被検者の球面収差の散乱図を示している。
【図14】4mm開口径における71人の被検者の球面収差の散乱図を示している。
【図15】5mm開口径における71人の被検者の球面収差の散乱図を示している。
【図16】7mm開口径における71人の被検者の球面収差の散乱図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(例1)
ゼルニケ多項式を使用して、個体から得た10個の角膜表面のサンプルのセットについて示した。ハンフリー・アトラス(Humphrey Atlas)角膜トポグラファを用いて測定された実質高さデータを使用して、角膜のサッグ(sag)データを決定した。角膜トポグラファは、多数の別個の点で高さ(Z)を測定する。それから、最初の15個のゼルニケ多項式(前述した方程式1に記載されるような)の一次結合として角膜表面を表わすことができる。この場合、Zはi番目のゼルニケ多項式であり、aはこの多項式における重み係数である。ゼルニケ多項式は、単位円上に規定された完全直交多項式のセットである。先の表1に記載されたこれらの多項式および重み係数(a)は、グラム・シュミット(Grahm−Schmidt)直交化処理を使用して、高さデータから計算される。表2には、10個のサンプル角膜におけるゼルニケ係数(a)がmm単位で示されている。
【表2】

表2:10個体の角膜表面におけるゼルニケ係数(mm)
【0049】
OSLO(シンクレア・オプティクス)等の光学設計ソフトウエアを使用して、これらの波面収差係数を計算することができる。表3は、被検者FCMにおける波面収差の計算結果を示している。(注:OSLOで使用される多項式における正規化因子は、図3に示されるそれと異なっている。この違いを係数値に組み入れた)
【表3】

表3:OSLOを用いて被検者FCMに関して計算された角膜収差係数(mm)(注:OSLO番号順)
【0050】
(例2)
スペインのムルシアのPablo Artalによって提供された平均的な「古い」角膜情報を使用して、本発明のレンズの平均的な設計の実施形態を計算した。このデータは、16個の古い角膜の母集団サンプルから得られた。この母集団において、全ての被検者は、20/30またはそれ以上の視力を有していた。半径(r)が2.0mmの開口に関し、ゼルニケ多項式を使用して角膜表面を示した。それから、方程式2、3を使用して半径および非球面値を決定するために、多項式係数を使用した。
【数3】

【数4】

【0051】
なお、非球面定数Kは、表面における球面からの変化を示している(K=1−e)(すなわち、球の場合にはK=1であり、放物線の場合にはK=0)(cc=K−1、この場合、ccは円錐定数)。
【0052】
角膜表面は4mmの中心直径に関してのみ示されているため、計算されたR、Kも中心径4mmにおいてのみ正確である。したがって、設計のためには、4.0mmの瞳孔サイズが選択される。この瞳孔サイズは、眼内レンズを設計するのに適している。
【0053】
平均的なレンズ設計のための出発点として、Pharmacia社のA 22D CeeOn(登録商標)911レンズを選択した。比較のため、22Dとなるように平均的なレンズも設計した(注:レンズの球面が同一であれば、他のジオプトリーであっても、類似のシミュレーション結果を与える)。表4には、出発点の眼のモデルにおける表面情報が概略的に示されている。表4に示された円錐および非球面データにおいては、例1の10個体の角膜に関して平均的な円錐定数CCが決定される。
【表4】

表4:平均的な(「Z11」)設計の出発点における表面データ
*「平均的な」角膜におけるこの円錐定数は、GuiraoおよびArtalの公表された研究から得られる。
【0054】
表5の第1欄には、平均的な角膜における波面収差係数(mm)が示されている。一方、平均的な角膜と911レンズとの組み合わせの係数(mm)が表5の第2欄に示されている。なお、平均的な古い角膜だけのZ11係数(a11)は0.000220mmであり、一方、911が埋め込まれたこの眼のZ11は0.000345mmとなる。
【表5】

表5:平均的な角膜および設計の出発点(平均的な角膜+911)のゼルニケ係数(mm)
【0055】
平均的なレンズを最適化して、22D焦点能力を維持しつつ、球面収差を最小限に抑えた。レンズ材料は、22D 911レンズ(HRIシリコーン、その屈折率は37℃で1.4577である)の場合と同一のままにした。その結果得られた等凸レンズの設計が平均的なレンズを最適化して、22D焦点能力を維持しつつ、球面収差を最小限に抑えた。レンズ材料は、22D 911レンズ(HRIシリコーン、その屈折率はその結果得られた等凸レンズの設計が表6に与えられている。このレンズに組み合わされた平均的な角膜の全眼Z11係数は、−2.42×10−7mmである(角膜+911レンズにおける0.000345mmに対して)。
【表6】

表6:平均的なレンズ設計の出発点における表面データ
【0056】
911レンズおよび平均的なレンズの両方を用いて、光学系内で10人の被検者の角膜を組み合わせた。その結果得られた全眼Z11係数が図1に示されている。図1に示されるように、それぞれの場合、Z11レンズが埋め込まれると、Z11係数の絶対値は小さかった。被検者CGRおよびFCZは比較的低いレベルの角膜球面収差から始まるが、これら2つのケースにおいては、全眼球面収差が過剰に修正される。その結果、これら2つのケースにおいては、全球面収差の符号が大きく逆転し、球面収差が依然としてかなりの大きさとなる。他の全てのケースでは、Z11レンズの埋め込み後、全眼の球面収差が基本的に0となる。22D 911レンズおよび22D平均「Z11」レンズの両方の埋め込みに関する、1995年のAmerican journal of ophthalmologyの第120(2)巻、227頁−240頁のGreivenkampらによる「概略的な眼の光学的レイトレーシングを使用した視力モデリング(Visual acuity modeling using optical raytracing of schimatic eyes)」に記載された標準的な方法にしたがって、10人の各被検者の視力を計算した。OSLO(登録商標)を使用して方形波応答を計算し、また、ソフトウエアモジュールをMatlab(登録商標)に書き込んで、前記方法の後に視力を計算した。その結果得られた視力が図2に示されている。本発明に係る平均的なレンズを埋め込んだ場合、図2に示される調査した10人のケースのうち、8つの被検者の視力は良好であった。視力が低下した場合、スネレン距離は1フィート未満だけ増大したが、この増大は視力検査では現われない。
【0057】
CeeOn(登録商標)911Aと本発明に係る平均的なレンズとの間の光学的特性の差を評価することができるように、平均的な角膜の物理的なモデルを設計して製造した。それは、ゼルニケ係数a11の値が0.000218である非球面状の前面を有するPMMAの凸平レンズである。この値は、計算された平均的な角膜の値すなわち0.000220にほぼ等しい。「平均的な」Z11レンズとCeeOn(登録商標)911Aレンズとを有するモデル眼に関し、PMMAモデルを用いて、オプティカルベンチ上で、角膜MTF測定を行なった。変調伝達関数(MTF)測定は、広く認められた画質定量化法である。20Dの光学倍率を有するレンズにおける50c/mmでのスルーフォーカスMTF測定結果および50c/mmで合焦された周波数MTF曲線が、共に3mmの瞳孔を持つケースにおいて、図3および図4にそれぞれ示されている。0.2MTF単位でのスルーフォーカスMTFの幅は、焦点深度の尺度であり、両方のレンズにおいて等しい。「平均的な」Z11レンズにおける50c/mmで合焦されたMTF曲線はほぼ回折限界であり、CeeOn911Aレンズにおけるそれよりも良好である。
【0058】
角膜モデルのゼルニケ係数および系の焦点位置を調整することによって、角膜の非点収差および系のピンぼけを修正することができる。これを行なって、視力を計算する処理を繰り返すと、図6に示される結果が得られる。これらは、モデルとなる最良の修正された視力を表わしている。ここで、全てのケースにおいて、非点収差およびピンぼけを修正した後(実際には、眼鏡を用いて行なうように)、本発明の平均的なレンズが、同じジオプトリーの911レンズよりも高い最良の修正された視力を生じることが分かる。
【0059】
(例3)
(個別に設計したレンズ)
平均的なレンズ(「Z11レンズ」)の可能な更なる改良として、例2に示された設計原理と同じ設計原理を使用して、4人の被検者の各角膜毎に、個別化されたレンズ(「I11レンズ」)を設計した。レンズのZ11が個々の角膜のZ11と釣り合うように、個々のレンズを設計した。I11レンズにおける全眼Z11係数が、911レンズおよび平均的なレンズにおける対応する係数と共に、表7に示されている。
【表7】

表7:911レンズ、Z11レンズ、I11レンズを有するモデル眼のZ11係数(mm)
【0060】
また、911レンズ、Z11(平均)レンズ、I11(個別)レンズのそれぞれにおいて、被検者JAEにおける最高で50c/mmで合焦されたMTF曲線および50c/mmでのスルーフォーカスMTFが図7および図8にプロットされている。図7および図8から分かるように、Z11およびI11レンズが埋め込まれた眼の50c/mmでのMTFは、911レンズが埋め込まれた同じ眼のMTFよりも高い。全てのレンズのスルーフォーカスMTFが十分であることも分かる。Z11は、911と同じ程度の焦点深度を有している。しかしながら、MTFまたはスルーフォーカスMTFに関して、I11レンズがZ11レンズにと比較すると著しい向上を与えない点は興味深い。
【0061】
個別化されたレンズを有する被検者の視力も計算した。図9は、これらの視力を、911レンズおよびZ11レンズにおいて計算した視力と比較したものである。
【0062】
図9から分かるように、4人の被検者の全てにおいて、Z11レンズおよびI11レンズにおける視力は、911レンズにおける視力よりも良好である。また、Z11レンズおよびI11レンズに関する結果が著しくは異ならないことが分かる。すなわち4人の被検者のそれぞれにおいて、平均的な角膜が比較的正確である。
【0063】
(例4)
以下、人々の集団から得られた平均的な角膜の球面収差を低減するようになっている眼レンズの設計について詳細に説明する。このレンズは、角膜の球面収差を示す正規化された11番目のゼルニケ項を補償するため、Z11レンズと称する。Z11レンズの移植予定者すなわち白内障の患者から成る母集団を使用することを決定した。
【0064】
(母集団の説明)
母集団は、スウェーデンのストックホルムにある聖エリック眼病院の71人の白内障患者を含んでいた。これらの患者の年齢層は、35歳から94歳(2000年4月12日の時点で)であった。我々の母集団の平均年齢は73.67歳であった。母集団の年齢のヒストグラムが図10に示されている。
【0065】
Orbscan(登録商標)(Orbtek、ソルトレイクシティ)装置を使用して、71人の被検者の角膜を測定した。Orbscan(登録商標)は、角膜の両方の表面、前レンズ面、虹彩の表面を測定する走査スリットを基本とした角膜および前部のトポグラファである。各表面は、高さ、勾配、曲率、倍率のマップとして表示できる。
【0066】
(フィッティング・アルゴリズム)
Orbscan(登録商標)を使用して、前面における角膜の高さデータ(角膜の表面上の点のデカルト位置)を得た。また、角膜の光学特性を決定するための生データとして前記データを使用した。Orbscan(登録商標)ファイルの一例からの高さデータが図11に示されている。
【0067】
高さデータを示すデカルト座標が極座標に変換される(x,y,z→r,θ,z)。その後、表面を描くため、このデータが方程式1bに示されるような一連の多項式に当てはめられる。各多項式における係数(a’s)すなわち重み係数は、表面を完全に描くフィッティング処理によって決定される。使用した多項式(Z)は、正規化されたゼルニケ多項式である。
【数5】

これらの多項式は、連続する単位円にわたって正規直交しているため、特別なものである。これらの多項式は、光学領域の波面収差を示すために一般に使用される。角膜トポグラファは、多数の別個の点で高さを測定する。ゼルニケ多項式は、別個の点のセットにわたって直交していない。しかしながら、グラム・シュミット(Grahm−Schmidt)直交化と呼ばれる直交化処理を高さデータに施すと、直交適合の利点を保持するゼルニケ多項式の項に高さデータを当てはめることができる。66個の係数(a’s)を使用して、Orbscan(登録商標)ソフトウエアによって与えられる高さデータを当てはめた。フィッティング処理においては、Matlab(登録商標)アルゴリズムを使用した。ゼルニケ係数から半径および非球面値を概算することができる(方程式2bおよび3b)。また、表面の円錐定数は単にK−1である(このことから、球の場合、K=1であると分かる)。このフィッティング処理は、多数の文献に明確に記載されている。4つの異なる論文、すなわち、1990年6月のOptical Engineeringの第29巻No.6のDaniel Malacaraによる「単位円での離散型直交多項式を用いた波面適合(Wavefront fitting with discrete orthogonal polynomials in a unit radius circle)」、1995年10月のJOSA Aの第12巻No.10のJ. Schwiegerling, J. Greivenkamp, J. Millerによる「ゼルニケ多項式を用いたビデオケラトスコープの高さデータの表示(Representation of videokeratoscopic height data with Zernike polynomials)」、1980年5月のApplied Opticsの第19巻No.9のJ.W.WangおよびD.E.Silvaによる「ゼルニケ多項式を用いた波面解釈(Wavefront interpretation with Zernike polynomials)」、2000年6月のJ Opt Soc Am A Opt Image Scivisの第17(6)巻955−965頁のAntonio GuiraoおよびPablo Artalによる「ビデオケラトグラフィからの角膜波収差:処理の精度および限界(Corneal wave aberration from videokeratography:accuracy and limitations of the procedure)」をここに示しておく。
【数6】

【数8】

【0068】
(波面収差の計算)
前側の角膜表面の形状(前述したa’sのようなゼルニケ係数)が分かっていれば、この面に起因する波面収差をレイトレーシング処理を使用して決定することができる。これについては、例えば、2000年6月のJ Opt Soc Am A Opt Image Scivisの第17(6)巻955−965頁のAntonio GuiraoおよびPablo Artalによる「ビデオケラトグラフィからの角膜波収差:処理の精度および限界(Corneal wave aberration from videokeratography:accuracy and limitations of the procedure)」に記載されている。
【0069】
(結果)
(平均的な角膜の球面収差および形状)
6mm開口における前述した基準を使用して、71人の被検者を評価した。表面高さをゼルニケ多項式に当てはめた後、各被検者の波面収差を測定した。図12は、各ゼルニケ項の平均および標準偏差を示している(正規化形式)。エラーバーは、±1の標準偏差を示している。我々の母集団には、平均して、ゼロとは著しく異なる3つの収差がある。これらは、非点収差(A5)、コマ収差(A9)、球面収差(A11)である。球面収差は、唯一の回転対称な収差であり、回転対称なIOLを用いて修正することができる唯一の収差となる。
【0070】
図13は、白内障手術前の71人の各被検者における球面収差を示すゼルニケ係数(OSLO形式)の値の散布図である。中央の実線は平均球面収差を示し、破線は+1および−1の標準偏差を示している。表8には、半径、非球面定数、球面収差、2乗平均平方根エラーにおける、平均および標準偏差が記載されているとともに、最大値および最小値が記載されている。
【表8】

表8:6mm開口における、半径、非球面定数、球面収差、2乗平均平方根エラーにおける平均、標準偏差、最大値および最小値
【0071】
以下の表9、10、11は、4mm、5mm、7mmの開口サイズにおける対応する結果をそれぞれ示している。図14、図15および図16は、対応する散布図である。
【表9】

表9:4mmの開口径を使用した半径、非球面定数、球面収差、2乗平均平方根エラーにおける、平均、標準偏差、最大値および最小値
【表10】

表10:5mmの開口径を使用した、半径、非球面定数、球面収差、2乗平均平方根エラーにおける平均、標準偏差、最大値および最小値
【表11】

表11:7mmの開口径を使用した、半径、非球面定数、球面収差、2乗平均平方根エラーにおける平均、標準偏差、最大値および最小値
【0072】
(角膜設計)
1つのモデル角膜を設計するとともに、この角膜を使用して各Z11レンズ倍率を設計した。角膜は、母集団において計算された平均値と同じ球面収差を有するように設計された。様々な開口サイズにおける設計角膜半径および非球面定数が表12に示されている。全てのケースにおいて、曲率半径は、ゼルニケ適合データから測定された平均半径となるように取られた。モデル角膜の球面収差値が母集団における平均球面収差値と等しくなるまで、非球面定数が変化した。
【表12】

表12:4mm、5mm、6mm、7mmの開口径における設計角膜半径および非球面定数
【0073】
前述したように、6mmの開口径の値を使用して、角膜を設計した。このような選択により、5.1mmレンズ径にわたって球面収差が無い(この角膜を有する系で測定した場合)Z11レンズを設計することができる。Z11設計角膜においてリストアップされるOSLO表面が表13に示されている。角膜の屈折率は、1.3375のケラトメトリ(角膜曲率測定)率である。
【0074】
角膜の屈折率が1.3375である1つの面を有するモデル角膜において、これらの値を計算した。本発明の範囲から逸脱することなく、角膜の光学的に等価なモデル形式を使用することができる。例えば、複数の表面角膜すなわち屈折率が異なる角膜を使用することができる。
【表13】

表13:Z11設計角膜においてリストアップされるOSLO表面
【0075】
(レンズの設計)
設計角膜の球面収差と釣り合うように各Z11レンズを設計した。設計の出発点は、エッジおよび中心厚さが修正されて成る米国特許第5,444,106号に記載された同じ倍率のCeeOn Edge(登録商標)911レンズであった。その後、このレンズは、前側の角膜表面から4.5mmの位置に配置された。前側の角膜表面からの距離は、重要ではなく、適度な範囲内で変えることができる。22Dレンズ設計プロセスにおける出発点となる眼のモデルの表面情報が表14に示されている。方程式4に示される式を使用して、レンズの前面が示されている。変数cc、ad、aeは、球面収差が最小となるように修正された。これらの変数は、5.1mmの開口サイズのために決定され、表面は、これらの値から6mmの光学的開口サイズまで外挿される。その結果得られた22D Z11眼モデルが表15に示されている。この22Dレンズの前面は、系(角膜+レンズ)の球面収差が0にほぼ等しくなるように修正された。CeeOn Edge 911 22Dレンズ眼モデルおよび22D Z11レンズ眼モデルに関してOSLOにより計算される波面収差係数が以下の表16に示されている。なお、出発点となる眼モデルにおける球面収差を示す係数は、角膜に配置された6mmの開口径においては0.001005であり、一方、設計されたZ11レンズを有する眼モデルにおける対応する係数は、−1.3399e−06mmである。22Dレンズに関する前述したプロセスと同じプロセスを、同様にして、任意の他のレンズ倍率において行なうことができる。
【数10】

【表14】

表14:出発点となる平均的な眼モデルおよび22Dレンズにおける表面データ
【0076】
【表15】

表15:平均的な眼モデルおよび最後の22D Z11レンズにおける表面データ
【0077】
【表16】

表16:平均的角膜・22D 911レンズおよび平均的角膜・22D Z11レンズにおけるゼルニケ係数(OSLO形式)
【0078】
新たなZ11設計のために選択された光学的な態様は、屈折率が1.458であるシリコーンによって形成される等凸レンズである。平均的な角膜の球面収差は、球面収差を有さない系を形成するZ11レンズによって釣り合わせられる。レンズの前面は、設計開口内の全ての軸上光線の光路長が同一の点収束を生じる光路長となるように修正される。このような特徴は、多くのレンズ態様を用いて達成することができる。したがって、Z11レンズは、凸平レンズ、平凸レンズ、不等凸レンズ、あるいは、収斂レンズを形成する他の任意のデザインに基づいて設計することができる。また、眼の屈折エラーを修正するために使用される発散レンズを包含するために、Z11の概念を広げることもできる。光路差を必要に応じて変えて球面収差を相殺するために、前面または後面を修正することもできる。したがって、Z11レンズ設計の目的を達成する多くの設計が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み後に眼の収差を低減することができる眼内レンズを設計するための方法であって、
(i)少なくとも1つの角膜表面を数学的モデルとして特徴付けるステップと、
(ii)結果として生じる前記角膜表面の収差を、前記数学的なモデルを使用することにより計算するステップと、
(iii)眼内レンズの光学倍率を選択するステップと、
(iv)眼内レンズをモデル化して、前記レンズおよび角膜モデルから成る光学系からの波面の収差を低減するステップとを備えている、方法。
【請求項2】
結果として生じる前記角膜表面の収差を、前記角膜を通過した波面において決定するステップを備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記角膜表面は、回転のコノイドの形で特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記角膜表面は、多項式の形で特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記角膜表面は、多項式の一次結合の形で特徴付けられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記光学系は、光学的な修正を行なう眼鏡や眼修正レンズ等の補助手段を更に備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
角膜屈折力および眼の軸方向長さの評価が、レンズの光学倍率の選択を表わす、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記角膜モデルとモデル化された眼内レンズとを備える光学系は、少なくとも1つの前記多項式によって表わされる収差から実質的に低減された波面を与える、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
眼内レンズのモデル化は、レンズの前側の半径および表面、レンズの後側の半径および表面、レンズの厚さ、レンズの屈折率の選択を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
モデルレンズが所定の中心半径、レンズ厚、屈折率を有している状態で、前側表面の非球面要素が選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
解剖学的な測定によって個人の前側の角膜表面を特徴付けて、角膜の収差を多項式の結合として表わすことを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
解剖学的な測定によって個人の前側および後側の角膜表面を特徴付けて、全ての角膜収差を多項式の結合として表わすことを含んでいる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
選択された母集団の角膜表面を特徴付けて、前記母集団の平均角膜収差を多項式の結合として表わすことを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
(v)前記モデル化された眼内レンズおよび角膜を備える光学系から生じる収差を計算するステップと、
(vi)モデル化された眼内レンズが十分に収差を低減したか否かを判断するとともに、選択的に、十分な低減が得られるまで眼内レンズを再モデル化するステップとを更に備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記収差は、多項式の一次結合として表わされる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
再モデル化は、前側の表面および曲率、後側の半径および表面、レンズ厚、レンズの屈折率のうちの1つ又は複数を修正することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記多項式がザイデル多項式またはゼルニケ多項式である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項18】
(i)ゼルニケ多項式の一次結合として角膜収差を表わすステップと、
(ii)角膜の波面のセルニケ係数を決定するステップと、
(iii)前記モデルレンズと角膜とを備える光学系が十分に低いゼルニケ係数を有する波面を与えるように、眼内レンズをモデル化するステップとを備えている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(iv)モデル化された眼内レンズおよび角膜を備える光学系から生じる波面のゼルニケ係数を計算するステップと、
(v)前記眼内レンズが十分にゼルニケ係数を低減したか否かを判断するとともに、選択的に、前記係数の十分な低減が得られるまで前記レンズを再モデル化するステップとを更に備えている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
球面収差を参照して、ゼルニケ係数を十分に低減する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
4次より上の収差を参照して、ゼルニケ係数を十分に低減する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
角膜および前記モデル化された眼内レンズを備える光学系からの波面の11番目のゼルニケ係数を十分に低減して、球面収差が十分に無くされた眼を得る、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
再モデル化は、前側の半径および表面、後側の半径および表面、レンズ厚、レンズの屈折率のうちの1つ又は複数を修正することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
収差が十分に低減されるまで、レンズの前側表面を修正する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
系を通過した波面において、眼内レンズの前記モデルおよび角膜を備える光学系がザイデル多項式またはゼルニケ多項式で表わされる球面収差項および円筒収差項を低減するように、レンズをモデル化する、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
より高い収差項を低減する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
(i)選択された母集団の角膜表面を特徴付けて、各角膜を多項式の一次結合として表わし、
(ii)個々の角膜間で多項式の係数を比較し、
(iii)個々の角膜から1つの公称係数値を選択し、
(iv)前記レンズおよび個々の角膜を備える光学系から生じる波面が前記公称係数値を十分に低減するように、レンズをモデル化する、請求項8に記載の方法。
【請求項28】
前記多項式の係数は、球面収差を表わすゼルニケ収差項を示している、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記公称係数値は、選択された母集団の中で最も低い、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
埋め込み後に眼の収差を低減することができる眼内レンズを選択するための方法であって、
(i)少なくとも1つの角膜表面を数学的モデルとして特徴付けるステップと、
(ii)結果として生じる前記角膜表面の収差を、前記数学的なモデルを使用することにより計算するステップと、
(iii)光学倍率が同じであるが収差が異なる複数のレンズから、適切な光学倍率を有する眼内レンズを選択するステップと、
(iv)前記選択されたレンズおよび角膜モデルから成る光学系が収差を十分に低減するか否かを判断するステップと、
を備えている方法。
【請求項31】
結果として生じる前記角膜表面の収差を、前記角膜を通過した波面において決定する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
(v)前記選択されたレンズおよび角膜モデルから成る光学系からの波面の収差を計算するステップと、
(vi)前記光学系からの波面の収差を前記選択された眼内レンズが十分に低減したか否かを判断するとともに、収差を十分に低減することができるレンズを見出すまで、同じ光学倍率を有する少なくとも1つの新たなレンズを選択することにより、ステップ(iii)およびステップ(iv)を選択的に繰り返すステップとを更に備えている、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記角膜表面は、回転のコノイドの形で特徴付けられる、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記角膜表面は、多項式の形で特徴付けられる、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記角膜表面は、多項式の一次結合の形で特徴付けられる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記光学系は、眼鏡や眼修正レンズ等の、光学的な修正を行なう補助手段を更に備えている、請求項30または32に記載の方法。
【請求項37】
角膜屈折力および眼の軸方向長さの評価は、レンズの光学倍率の選択を表わす、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記角膜モデルと選択された眼内レンズとを備える光学系は、少なくとも1つの前記多項式によって表わされる収差から実質的に低減された波面を与える、請求項34または35に記載の方法。
【請求項39】
解剖学的な測定によって個人の前側の角膜表面を特徴付けて、角膜の収差を多項式の結合として表わすことを含んでいる、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
解剖学的な測定によって個人の前側および後側の角膜表面を特徴付けて、全ての角膜収差を多項式の結合として表わすことを含んでいる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
選択された母集団の角膜表面を特徴付けて、前記母集団の平均角膜収差を多項式の結合として表わすことを含んでいる、請求項30に記載の方法。
【請求項42】
前記多項式がザイデル多項式またはゼルニケ多項式である、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
(i)ゼルニケ多項式の一次結合として角膜収差を表わすステップと、
(ii)角膜のゼルニケ係数を決定するステップと、
(iii)前記レンズと角膜とを備える光学系が十分に低いゼルニケ係数を有する波面を与えるように、眼内レンズを選択するステップと、
を備えている、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
(iv)モデル化された眼内レンズおよび角膜を備える光学系から生じる波面のゼルニケ係数を計算するステップと、
(v)前記眼内レンズが十分にゼルニケ係数を低減したか否かを判断するとともに、選択的に、前記係数の十分な低減が得られるまで新たなレンズを選択するステップとを更に備えている、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
ゼルニケ多項式を4次まで決定する、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
球面収差を参照して、ゼルニケ係数を十分に低減する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
4次より上のゼルニケ係数を十分に低減する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
モデル角膜および前記選択された眼内レンズを備える光学系からの波面の11番目のゼルニケ係数を十分に低減して、球面収差が十分に無くされた眼を得る、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
系を通過した波面において、前記眼内レンズおよび角膜を備える光学系がザイデル多項式またはゼルニケ多項式で表わされる球面収差項を低減するように、眼内レンズを選択する、請求項39に記載の方法。
【請求項50】
より高い収差項が低減される、請求項39に記載の方法。
【請求項51】
適した倍率範囲を有するレンズと、各倍率範囲内に異なる収差を有する複数のレンズとを備える一式から眼内レンズを選択することによって特徴付けられる、請求項30に記載の方法。
【請求項52】
前記収差が球面収差である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
各倍率範囲内の前記レンズは、様々な非球面要素を有する表面を備えている、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記表面が前側の表面である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
眼に埋め込むのに適した眼レンズを設計する方法であって、
代表的な患者集団を選択するステップと、
患者集団内の各被検者に関する角膜の解剖学的なデータを収集するステップと、
前記データを、所定の開口サイズにおける各被検者の角膜表面形状を示す項に移すステップと、
少なくとも1つの平均角膜表面形状項を取得するように、前記患者集団の少なくとも1つの角膜表面形状項の平均値を計算し、および/または、それぞれが角膜表面形状項を介した変換によって得られる、少なくとも1つの対応する角膜波面収差項の平均値を計算するステップと、
前記少なくとも1つの平均角膜表面形状項または前記少なくとも1つの平均角膜波面収差項から、角膜およびレンズを備える光学系の前記少なくとも1つの平均波面収差項を減少させることができる眼レンズを設計するステップと、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項56】
計算された少なくとも1つの平均角膜表面形状項または少なくとも1つの平均角膜波面収差項から、患者集団における平均角膜モデルを設計するステップと、
モデル平均角膜およびレンズを通じて移動する波面のこれらの特定の収差項を測定するとともに、測定された波面において前記少なくとも1つの収差項が十分に減少されていない場合にレンズを再設計することにより、設計された眼レンズが少なくとも1つの平均収差項を正確に補償していることをチェックするステップとを更に備えていることを特徴とする、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
所定の半径における平均角膜表面形状項または平均角膜波面収差項から、設計されるレンズにおける表面の記述的な定数を計算することを特徴とする、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
特定の年齢範囲の人を選択することによって患者集団を構成することを特徴とする、請求項55から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
白内障の手術を受ける人を選択することによって患者集団を構成することを特徴とする、請求項55から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
角膜手術を受けた患者用のレンズを特に設計し、したがって、角膜手術を受けた人を選択することによって患者集団を構成することを特徴とする、請求項55から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
特定の眼疾患を有する人を選択することによって患者集団を構成することを特徴とする、請求項55から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
眼の特定の視覚欠陥を有する人を選択することによって患者集団を構成することを特徴とする、請求項55から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
1人の特定の患者の角膜の少なくとも1つの波面収差を測定するステップと、
この患者に対応する選択された集団がこの特定の患者の代表であるか否か、また、これが、これらの平均値から設計されたレンズを埋め込む場合であるか否か、また、これが、他の集団からの平均値から設計されたレンズを埋め込む、または、この患者のために個人的なレンズを設計する場合であるか否かを判断するステップとを更に備えることを特徴とする、請求項55から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
入ってくる非球状波面の少なくとも1つの収差項を減少する少なくとも1つの非球状面を有するレンズを提供することを特徴とする、請求項55から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記収差項がプラスの球面収差項である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
入ってくる非球状波面の収差を示すゼルニケ多項式の少なくとも1つの項を減少する少なくとも1つの非球状面を有するレンズを提供することを特徴とする、請求項55から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
入ってくる非球状波面の球面収差を示す11番目の正規化されたゼルニケ項を減少する少なくとも1つの非球状面を有するレンズを提供することを特徴とする、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
以下の式を有する平均角膜表面からの波面の球面収差を低減するようにレンズを設計し、
【数1】

ここで、円錐定数ccは−1から0の範囲の値を有し、Rは中心レンズ半径であり、adおよびaeは非球面定数であることを特徴とする、請求項55から67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
円錐定数(cc)は、4mmの開口サイズ(瞳孔の直径)における約−0.05から、7mmの開口サイズにおける約−0.18までの範囲である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
0よりも小さい円錐定数(cc)を有する修正されたコノイドによって表わされる表面を有するレンズを提供することを特徴とする、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
患者のために、レンズの半径を決定する適切な屈折力をレンズに与えることを特徴とする、請求項55から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
OSLO形式で表わされる多項式を使用して、波面収差の球面収差を示すゼルニケ多項式係数を有する角膜の球面収差を、3mmの開口半径における0.000156mmから0.001948mmの範囲の値と釣り合わせるようにレンズを設計することを特徴とする、請求項55から71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
OSLO形式で表わされる多項式を使用して、波面収差の球面収差を示すゼルニケ多項式係数を有する角膜の球面収差を、2mmの開口半径における0.000036mmから0.000448mmの範囲の値と釣り合わせるようにレンズを設計することを特徴とする、請求項55から71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
OSLO形式で表わされる多項式を使用して、波面収差の球面収差を示すゼルニケ多項式係数を有する角膜の球面収差を、2.5mmの開口半径における0.0001039mmから0.0009359mmの範囲の値と釣り合わせるようにレンズを設計することを特徴とする、請求項55から71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
OSLO形式で表わされる多項式を使用して、波面収差の球面収差を示すゼルニケ多項式係数を有する角膜の球面収差を、3.5mmの開口半径における0.000194mmから0.00365mmの範囲の値と釣り合わせるようにレンズを設計することを特徴とする、請求項55から71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
請求項1から75のいずれか一項にしたがって得られた眼レンズであって、眼の角膜を通過した波面を、中心が眼の網膜内にある実質的に球状の波面にすることができる眼レンズ。
【請求項77】
適切な母集団から設計された角膜モデルの収差を補償して、前記モデル角膜および前記レンズを備えた光学系からの波面の収差が実質的に低減されるようにすることができる眼レンズ。
【請求項78】
前記角膜モデルは、個々の角膜を特徴付け且つこれらを数学的な項で表わして個々の収差項を得ることによって計算される平均収差項を含んでいる、請求項77に記載の眼レンズ。
【請求項79】
前記収差項は、ゼルニケ多項式の一次結合である、請求項77に記載の眼レンズ。
【請求項80】
前記モデル角膜および前記レンズを備えた光学系からの波面の球面収差が実質的に低減するように、前記角膜モデルのゼルニケ多項式で表わされた収差項を減少することができる、請求項79に記載の眼レンズ。
【請求項81】
4次の11番目のゼルニケ項を減少することができる、請求項80に記載の眼レンズ。
【請求項82】
眼内レンズである、請求項77に記載の眼レンズ。
【請求項83】
患者の眼の天然のレンズと交換できるようになっている、請求項77に記載の眼レンズであって、前記眼レンズは、少なくとも1つの非球面を有し、この少なくとも1つの非球面は、眼との関連で、前記患者が分類される選択された人の集団の角膜測定から得られた同じ収差項の平均値と実質的に同じ値を有するが符号が異なる少なくとも1つの波面収差項を、レンズが通過する波面に与えるように設計され、これによって、患者の眼の角膜からの波面は、前記レンズの通過後に、角膜によって与えられる前記少なくとも1つの収差項が減少する、眼レンズ。
【請求項84】
レンズの表面は、通過する波面の少なくとも1つのプラスの収差項を減少するように設計されることを特徴とする、請求項83に記載の眼レンズ。
【請求項85】
通過する波面に対してレンズにより与えられる少なくとも1つの波面収差項が球面収差項であり、これにより、患者の眼の角膜からの波面は、前記レンズの通過後に、角膜によって与えられる前記球面収差項が減少することを特徴とする、請求項83または84に記載の眼レンズ。
【請求項86】
通過する波面に対しレンズにより与えられる少なくとも1つの波面収差項は、角膜の波面収差を示すゼルニケ多項式の少なくとも1つの項であることを特徴とする、請求項83から85のいずれか一項に記載の眼レンズ。
【請求項87】
通過する波面に対しレンズにより与えられる少なくとも1つの波面収差項は、角膜の波面収差の11番目の正規化されたゼルニケ項であることを特徴とする、請求項86に記載の眼レンズ。
【請求項88】
前記選択された人の集団は、特定の年齢範囲に属する人の集団であることを特徴とする、請求項83から87のいずれか一項に記載の眼レンズ。
【請求項89】
レンズは、角膜手術を受けた患者によって使用されるようになっており、前記選択された人の集団は、角膜手術を受けた人の集団であることを特徴とする、請求項83から88のいずれか一項に記載の眼レンズ。
【請求項90】
前記選択された人の集団は、白内障手術を受ける人の集団であることを特徴とする、請求項83から88のいずれか一項に記載の眼レンズ。
【請求項91】
非球面は、0よりも小さい円錐定数(cc)を有する修正されたコノイド面であることを特徴とする、請求項90に記載の眼レンズ。
【請求項92】
以下の式を有する長球の表面からの眼の、もしくは眼モデルの波面の球面収差を除去しあるいは実質的に低減することができ、
【数2】

ここで、円錐定数ccは−1から0の範囲の値を有し、Rは中心レンズ半径であり、adおよびaeは非球面定数であることを特徴とする、請求項91に記載の眼レンズ。
【請求項93】
患者のため、レンズには、30ジオプトリー以下の適切な屈折力が与えられることを特徴とする、請求項83から92のいずれか一項に記載の眼レンズ。
【請求項94】
レンズの少なくとも1つの非球面のうちの1つは、前側の表面であることを特徴とする、請求項83から93のいずれか一項に記載の眼レンズ。
【請求項95】
レンズの少なくとも1つの非球面のうちの1つは、後側の表面であることを特徴とする、請求項83から94のいずれか一項に記載の眼レンズ。
【請求項96】
レンズは、柔軟な生体適合性の材料によって形成されていることを特徴とする、請求項83から95のいずれか一項に記載の眼レンズ。
【請求項97】
レンズがシリコーン材料によって形成されていることを特徴とする、請求項83から96のいずれか一項に記載の眼レンズ。
【請求項98】
シリコーン材料は、546nmの波長で屈折率が1.43以上であり、伸びが少なくとも350%であり、引張強さが少なくとも300psiであり、ショアタイプAのデュロメーターによって測定されたショア硬さが約30であることを特徴とする、請求項97に記載の眼レンズ。
【請求項99】
レンズがヒドロゲルによって形成されていることを特徴とする、請求項83から98のいずれか一項に記載の眼レンズ。
【請求項100】
レンズが硬い生体適合性材料によって形成されていることを特徴とする、請求項83から95のいずれか一項に記載の眼レンズ。
【請求項101】
OSLO形式で表わされる多項式を使用して、波面収差の球面収差を示すゼルニケ多項式係数を有する角膜の球面収差を、3mmの開口半径における0.000156mmから0.001948mmの範囲の値と釣り合わせるように設計されることを特徴とする、請求項83から100のいずれか一項に記載の眼レンズ。
【請求項102】
OSLO形式で表わされる多項式を使用して、波面収差の球面収差を示すゼルニケ多項式係数を有する角膜の球面収差を、2mmの開口半径における0.000036mmから0.000448mmの範囲の値と釣り合わせるように設計されることを特徴とする、請求項83から100のいずれか一項に記載の眼レンズ。
【請求項103】
OSLO形式で表わされる多項式を使用して、波面収差の球面収差を示すゼルニケ多項式係数を有する角膜の球面収差を2.5mmの開口半径における0.0001039mmから0.0009359mmの範囲の値と釣り合わせるように設計されることを特徴とする、請求項83から100のいずれか一項に記載の眼レンズ。
【請求項104】
OSLO形式で表わされる多項式を使用して、波面収差の球面収差を示すゼルニケ多項式係数を有する角膜の球面収差を3.5mmの開口半径における0.000194mmから0.00365mmの範囲の値と釣り合わせるように設計されることを特徴とする、請求項83から100のいずれか一項に記載の眼レンズ。
【請求項105】
その収差を示す多項式の項の1次結合として表わされる時に、角膜を通過した波面で得られると同様の収差項を減少することができ、これによって、十分に収差の無くされた眼を得ることができる少なくとも1つの非球面を有する眼レンズ。
【請求項106】
前記非球面がレンズの前側の表面である、請求項105に記載のレンズ。
【請求項107】
前記非球面がレンズの後側の表面である、請求項106に記載のレンズ。
【請求項108】
眼内レンズである、請求項105に記載のレンズ。
【請求項109】
前記多項式の項がゼルニケ多項式である、請求項105に記載のレンズ。
【請求項110】
球面収差および非点収差を示す多項式の項を減らすことができる、請求項109に記載のレンズ。
【請求項111】
4次の11番目のゼルニケ多項式の項を減らすことができる、請求項110に記載のレンズ。
【請求項112】
柔軟な生体適合性材料によって形成されている、請求項105に記載のレンズ。
【請求項113】
シリコーンによって形成されている、請求項105に記載のレンズ。
【請求項114】
ヒドロゲルによって形成されている、請求項105に記載のレンズ。
【請求項115】
硬質の生体適合性材料によって形成されている、請求項105に記載のレンズ。
【請求項116】
眼の収差を少なくとも部分的に補償する眼内レンズを埋め込むことによって患者の視力を修正する方法であって、
眼から天然のレンズを除去するステップと、
波面センサを使用することにより、レンズを備えていない眼の収差を測定するステップと、
波面の検出によって見出される少なくとも1つの収差項を減少することができるレンズを用意するステップと、
患者の眼内に前記レンズを埋め込むステップとを備えている方法。
【請求項117】
前記レンズは、各ジオプトリー内で前記少なくとも1つの収差項を修正する能力が異なる複数のレンズを含む一式のレンズから選択することによって用意される、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記レンズは、無水晶体眼の波面検出から生じる少なくとも1つの収差項を減少することができるレンズを設計することによって用意される、請求項116に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−29694(P2010−29694A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−249913(P2009−249913)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【分割の表示】特願2001−585670(P2001−585670)の分割
【原出願日】平成13年5月23日(2001.5.23)
【出願人】(501149673)
【Fターム(参考)】