説明

眼の後部の処置のための組成物および方法

【課題】ヒトまたは動物の眼の後部へ注射するのに有用な組成物またはそのような組成物を使用する方法を提供する。
【解決手段】治療上有効な量で存在する粒子を含有するコルチコステロイド成分、粘性誘導成分および水性担体成分を含み、剪断速度0.1/秒で、少なくとも10cps、あるいは約100cpsの粘度を有し、好ましい態様では、この粘度が約140,000cps〜約300,000cpsの範囲の組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトまたは動物の眼の後部を処置するための組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、そのような眼の後部に効果的に注入することができるコルチコステロイド成分を含有する組成物、およびそのような組成物を用いて所望の治療効果もたらす方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブドウ膜炎、黄斑変性、黄斑浮腫等の眼の後部の疾患を処置するために現在実施されている治療法の1つは、トリアムシノロンアセトニド(TA)などのコルチコステロイドの硝子体内投与である。例えば、本明細書の一部を構成する、Billsonら,米国特許第5,770,589号参照。
【0003】
この眼治療に一般に用いられている1つの医薬は、ケナログ(登録商標)40である。例えば、ケナログ(登録商標)40の組成物には、1mLあたり、TA40mg、張力剤として塩化ナトリウム、保存料としてベンジルアルコール10mg、および再懸濁の補助剤としてカルボキシメチルセルロース7.5mgとポリソルベート80を0.4mg含有する。この商業的に入手可能な製剤は眼科医によって広く使用されているが、いくつかの重要な制限を受ける。
【0004】
例えば、ベンジルアルコール保存料およびポリソルベート80界面活性剤の存在によって、感受性である眼組織において不必要なおよび/または必要以上の細胞損傷またはその他の毒性につながり易い。臨床医が、生理食塩水で定期的にTAの沈殿を洗い流し、これら望ましくない物質の濃度を減少させるにしても、そのような洗浄は不便で、時間がかかり、そして最も重要なことには、眼内の感染または炎症につながり得る微生物または内毒素汚染の可能性が増大する。
【0005】
さらに、ケナログ(登録商標)においてTAは、すぐに分離して組成物から沈殿しやすい。例えば、この組成物は、1〜2時間放置すると、実質的にTAの沈殿が組成物から分離する。従って、組成物が眼に注射するものであれば、その組成物を激しく振盪し、そのように振盪したらすぐに用いて実質的に均一な懸濁液を眼に入れなければならない。さらには、再懸濁処理には上記のような再懸濁補助剤(その少なくとも1つは感受性の眼組織に全般的に望ましいとは言えない)の使用を要する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒトまたは動物の眼の後部に注入するための新規な組成物、およびヒトまたは動物の眼の後部において所望の治療効果をもたらすための方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
ヒトまたは動物の眼の後部を処置するための新規な組成物および方法を開発した。本組成物は、「洗浄ステップ」を要することなく、眼内に用いる場合に眼の損傷(例えば、網膜の損傷)を減少する一方、眼の後部への硝子体内投与に非常に適している。有利なことに、本組成物は、保存料成分は実質的に添加されていない。例えば、ベンジルアルコール保存料を含有しない。さらに、有利には、本組成物は再懸濁補助剤を必要としない。概して、本組成物は、ヒトまたは動物の眼の後部に容易に且つ効果的に注射可能であり、長期間、例えば約1週間以上、再懸濁処理なしに、例えば、実質的に均一な懸濁を得るため組成物を振盪またはその他の攪拌を要することなく、実質的に均一な懸濁液として維持することができる。要するに、本組成物および方法は、ヒトまたは動物の眼の後部において、例えば従来のケナログ(登録商標)およびそのような従来の組成物を用いる方法と比較して、実質的な増大および利点を提供する。
【0008】
本発明の1つの広汎な態様では、ヒトまたは動物の眼の後部への注射に有用な組成物を提供する。そのような組成物にはコルチコステロイド成分、粘性誘発成分および水性担体成分を含有する。コルチコステロイド成分は治療上有効な量で存在する。コルチコステロイド成分は複数の粒子として組成物中に存在する。
【0009】
本組成物は、組成物の約25%(w/v)またはそれ以上までの量でコルチコステロイド成分を含有することができる。非常に有用な態様では、このコルチコステロイド成分は、組成物1mL当たり少なくとも80mgの量で存在する。好ましくは、コルチコステロイド成分は、組成物の約1%〜約10%の範囲ないし約20%(W/V)の量で存在する。
【0010】
非常に有用な態様では、コルチコステロイド成分はトリアムシノロンアセトニドを含有する。
【0011】
粘性誘発成分は、組成物の粘度を増大させるのに有効な量で存在する。
【0012】
任意の適切な、好ましくは眼科的に許容し得る粘性誘発成分を本発明にしたがって用いることができる。そのような粘性誘発成分の多くは、眼にまたは眼内で用いられる眼科組成物用に提案されており、および/または使用されている。有利には、粘性誘導成分は、組成物の約0.5%〜約20%の範囲の量で存在する。特に有用な態様では、粘性誘導成分はヒアルロン酸ナトリウム等のヒアルロン酸ポリマー成分である。
【0013】
一態様では、本発明の組成物は、剪断速度0.1/秒で、少なくとも10cps、あるいは少なくとも100cps、好ましくは少なくとも1,000cps、より好ましくは少なくとも10,000cps、さらにより好ましくは少なくとも70,000cps、例えば約250,000cpsまで、あるいは約300,000cpsまでの粘度を有する。本発明の組成物は、好ましくは27ゲージの注射針、より好ましくは29または30ゲージの注射針で、ヒトまたは動物の眼の後部へ、例えば手動で注入されるように構成または仕上げがなされている。
【0014】
特定の操作理論に本発明を限定することは望まないが、本明細書に記載されているような比較的高い粘度の組成物の使用によって、効果的なそして好ましくは実質的に均一で有ると同時に、従来用いられている注射針あるいはさらには従来用いられている注射針よりも小さな注射針で眼の後部へ注射可能な、ステロイド成分の粒子の懸濁液が提供されると考えられる。
【0015】
本発明の一態様では、コルチコステロイド成分は、組成物に実質的に均一に懸濁した複数の粒子として存在し、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも2週間あるいは少なくとも約1ヶ月、およびさらにより好ましくは少なくとも約6ヶ月あるいは少なくとも約1年間あるいは少なくとも約2年間、再懸濁処理を要することなく実質的に均一な懸濁状態が持続し、コルチコステロイド成分の粒子を組成物中で実質的に均一な懸濁状態を維持するために振盪あるいは攪拌する必要がない。
【0016】
そのようなコルチコステロイド成分の粒子の実質的に均一な懸濁液を有する組成物は、従来技術と比較して実質的な利点を提供する。特に、本発明の組成物は、長期間コルチコステロイド成分の粒子が組成物から沈殿することなく、製造し、運搬し、保存することができる。組成物においてコルチコステロイド成分粒子の実質的に均一な懸濁状態が持続すれば、そのような粒子を再懸濁させなければならないという懸念なしに、その組成物を迅速且つ有効に使用して、ヒトまたは動物の眼の後部への処置を行うことができる。
【0017】
水性担体成分は、眼科的に許容し得るものが有効であり、1またはそれ以上の眼科組成物に有用な慣用的な賦形剤を含有し得る。
【0018】
例えば、担体成分は、有効量の少なくとも1つの保存料成分、張力成分および緩衝成分を含有する。
【0019】
一態様では、本発明の組成物は、保存料成分が添加されていない。この特徴は、保存料成分の存在によって引き起こされ得るまたはそれに関連し得る、眼の有害な応答を減少するか、最小限にするか、さらには実質的に排除する。
【0020】
再懸濁成分を本発明にしたがって用いることができるが、多くの場合、再懸濁処理を要することなく長期間実質的に均一な懸濁液を維持するという本発明の組成物の能力のために、本組成物は有利には再懸濁成分が添加されていない。
【0021】
ヒトまたは動物の眼の後部を処置する方法もまた本明細書に開示され、本発明の範囲内に含まれる。一般に、そのような方法は、投与、例えばコルチコステロイド成分を含有する組成物、例えば本発明に従う組成物、をヒトまたは動物の眼の後部へ注射すること、を含んでなる。そのような投与は、所望の治療効果をもたらすのに有効である。投与ステップは、硝子体内注射、結膜下注射、テノン嚢下注射、球後注射、脈絡膜上注射等の少なくとも1つを含んでなることが有用である。
【0022】
本明細書に記載した、あらゆる特徴、およびそのような特徴の2つまたはそれ以上のあらゆる組合せは、本発明の範囲内に含まれるが、そのような組合せに含まれる特徴は相互に矛盾しない。
【0023】
本発明のこれらのおよびその他の態様および有用性は、以下の詳細な記載、実施例および請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(詳細な記載)
本発明は、好ましくは注射による、ヒトまたは動物の眼の後部への配置に有用な組成物に関する。眼の後部(例えばガラス体)における、このような組成物は、眼の後部の1またはそれ以上の状態および/または疾患、および/または眼の後部のそのような状態および/または疾患の1またはそれ以上の症状に対して治療上有効である。
【0025】
一般に、本発明の組成物は、コルチコステロイド成分、粘性誘発成分および水性担体成分を含有する。本組成物は有利に眼科的に許容し得る。
【0026】
本組成物の重要な利点の1つは、眼の後部の硝子体内注射のために従来提案された組成物(例えば、ケナログ(登録商標)40として販売されている組成物)と比較して、眼の後部における組織(例えば網膜)に対してより適合しているあるいは親和的であるということである。特に、本組成物は、有利に実質的に保存料成分が添加されていないか、あるいは保存料としてケナログ(登録商標)40に含まれているベンジルアルコールと比較して眼の後部における組織(例えば網膜)に対してより適合性のあるまたは親和性のある有効な保存料成分を含有する。
【0027】
さらに、本発明組成物は、好ましくは再懸濁成分が添加されていないか、ケナログ(登録商標)40組成物に含まれているポリソルベート80と比較して眼の後部(例えば網膜)に対してより適合性のあるまたは親和性のある再懸濁成分を含有する。本明細書中のどこかに記載されている本組成物の他の特徴の多くによって、ケナログ(登録商標)等の従来技術の組成物と比較して、本組成物はその組成物が投与される眼の後部に対してより適合性があるまたは親和性がある。
【0028】
上記のとおり、本組成物はコルチコステロイド成分を含有する。そのようなコルチコステロイド成分は、組成物が投与される眼内において所望の治療効果をもたらすのに有効な量である治療上有効な量で組成物中に存在する。コルチコステロイド成分は複数の粒子として組成物中に存在する。
【0029】
任意の適当なコルチコステロイド成分を本発明にしたがって用いることができる。そのようなコルチコステロイド成分は、有利には、例えば25℃の水における溶解度が10mg/mLである。当然、コルチコステロイド成分は眼科的に許容し得るもの、即ち眼の構造または組織に対して実質的に有意のまたは相当の有害な影響を有しないものである。この有用なコルチコステロイド成分の1つの特に有用な特徴は、そのような成分が、組成物が投与される眼の後部において、眼の後部における1またはそれ以上の疾患および/または状態の結果により引き起こされる炎症を減少する能力を有するということである。
【0030】
有用なコルチコステロイド成分の例としては、コルチソン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオロメトロン、デキサメタソン、メドリソン、ロテプレドノール、それらの誘導体およびそれらの混合物が挙げられるがこれに限定されない。本明細書に記載の「誘導体」なる用語は、その誘導体であるとされるところの物質に対して、それと実質的に類似の官能基またはその物質の代わりに用いた場合に同様の活性(例えば治療効果)を有するように、十分に構造が類似する任意の物質を意味する。
【0031】
一つの非常に有用な態様では、コルチコステロイド成分はトリアムシノロンアセトニドを包含する。
【0032】
コルチコステロイド成分は、有利には組成物1mLあたり少なくとも約10mgの量で存在する。本発明の1つの重要な利点は、比較的大量のまたは高濃度のコルチコステロイド成分を含有するという本組成物の有効な能力である。従って、コルチコステロイド成分は、組成物の約1%以下〜約5%または約10%または約20%または約30%以上(W/V)の範囲の量で本組成物中に存在し得る。本組成物において比較的高濃度または大量のコルチコステロイド成分を提供することは、コルチコステロイド成分の含有量が4%(W/V)未満であるケナログ(登録商標)−40のような組成物と比較して、同じ量のまたはより多くのコルチコステロイド成分を眼の後部に提供するために必要な組成物の量が少なくて済むという点で有用である。このように、1つの非常に有用な態様では、本発明の組成物は、約4%(W/V)超える、例えば少なくとも約5%(W/V)〜約10%(W/V)または約20%(W/V)または約30%(W/V)のコルチコステロイド成分を含有する。
【0033】
粘性誘発成分は、組成物の粘度を増大させる、有利には実質的に増大させるのに有効な量で存在する。本発明を特定の動作理論に限定するつもりはないが、水の粘度を十分超える値まで(例えば、剪断速度0.1/秒で少なくとも100cps)組成物の粘度を増大させることにより、ヒトまたは動物の眼の後部内への配置(例えば注射)に非常に有効である組成物が得られると考えられる。眼の後部内への本組成物の有利な配置または注射能力に加え、本組成物の粘度が比較的高ければ、再懸濁処理を要することなく、コルチコステロイド成分粒子が長期間(例えば少なくとも約1週間)組成物中で実質的に均一な懸濁状態を維持するという、本組成物の能力は増大すると考えられる。この比較的高い粘度の本組成物はまた、本明細書中に記載したように、例えば、そのようなコルチコステロイド成分を実質的に均一な懸濁液中で長期間維持と同時に、コルチコステロイド成分の量または濃度を増大させるという能力を組成物が有することを少なくとも助けるというさらなる利点を有し得る。
【0034】
有利には、本組成物は、剪断速度0.1/秒で、少なくとも10cps、または少なくとも100cps、または少なくとも1,000cps、より好ましくは少なくとも10,000cps、およびさらに好ましくは少なくとも70,000cps以上、例えば約200,000cps〜約250,000cps、または約300,000cps以上の粘度を有する。本組成物は比較的高粘度を有するだけでなく、好ましくは27ゲージの注射針またはさらには30ゲージの注射針で、ヒトまたは動物の眼の後部へ効果的に配置可能に(例えば注射可能に)なるように、能力を有するか、構築されているまたは処理が施されている。
【0035】
本発明において有用な粘性誘発成分は、好ましくはずり流動化(shear thinning)成分であり、そのようなずり流動化粘性誘発成分を含有する本組成物は、例えば27ゲージの注射針などの狭い空間を通じて眼の後部を通過するかまたは注入されると、高剪断状態では、組成物の粘度は実質的にこのような通過の間に減少する。そのような通過の後、本組成物は、実質的にその注入前に粘度を回復し、コルチコステロイド成分粒子は眼内で懸濁状態を維持する。
【0036】
任意に適当な粘性誘発成分は、例えば、眼科的に許容し得る粘性誘発成分を本発明にしたがって用いることができる。そのような粘性誘発成分の多くは、開発されおよび/または眼に用いられる眼科組成物に使用されてきた。粘性誘発成分は組成物に所望の粘度を与えるのに有効な量で存在する。有利には、粘性誘発成分は、組成物の約0.5%または約1.0%から約5%、または約10%または約20%(W/V)の範囲の量で存在する。具体的な量の粘性誘発成分は、例えば用いる具体的な粘性誘発成分、用いられる粘性誘発成分の分子量、製造されおよび/または用いられる本組成物に所望の粘度などが挙げられるがこれに限定されない数多くの要因に依存して用いられる。粘性誘発成分は、例えば、眼の後部への注射能力、粘度、再懸濁操作なしでの懸濁液(例えば、実質的に均一な懸濁液)中のコルチコステロイド成分粒子の長期間の持続性、組成物が配置される眼の後部の組織との適合性および同様の利点のそれぞれに関して、本発明の組成物に少なくとも1つの利点、好ましくは複数の利点、が得られるように選択される。より好ましくは、選択された粘性誘発成分は上記の利点の2またはそれ以上、さらにより好ましくは上記の利点の全てを与えるのに有効である。
【0037】
粘性誘発成分は好ましくは、ポリマー成分および/または眼科外科手術に有用な材料など、少なくとも1つの粘弾性剤を含有する。
【0038】
有用な粘性誘発成分としては、ヒアルロン酸、カルボマー、ポリアクリル酸、セルロース誘導体、ポリカルボフィル、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デキストリン、ポリサッカライド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニル酢酸、それらの誘導体およびそれらの混合物が挙げられるがこれに限定されない。
【0039】
本発明に有用な粘性誘発成分の分子量は、約10,000ダルトンまたはそれ未満から約2,000,000ダルトンまたはそれ以上の範囲である。1つの特に有用な態様では、粘性誘発成分の分子量は、約100,000ダルトンまたは約200,000ダルトンから約1,000,000ダルトンまたは約1,500,000ダルトンの範囲である。さらに、本発明に有用な粘性誘発成分の分子量は、用いる粘性誘発成分の種類や、問題の本組成物の所望の最終の粘度、並びに1又はそれ以上のさらなる要因に基づいて実質的な範囲にわたり変更することができる。
【0040】
非常に有用な態様では、粘性誘発成分は、重合ヒアルロン酸成分、例えばヒアルロン酸金属塩成分、好ましくはヒアルロン酸アルカリ金属塩、ヒアルロン酸アルカリ土類金属塩およびその混合物、およびさらに好ましくはヒアルロン酸ナトリウムおよびその混合物から選択される。そのようなヒアルロン酸塩成分の分子量は、好ましくは約50,000ダルトンまたは約100,000ダルトンから約1,300,000ダルトンまたは約2,000,000ダルトンの範囲である。1態様では、本発明の組成物は、約0.05%から約0.5%(W/V)の範囲の量の重合ヒアルロン酸塩成分を含有する。さらに有用な態様では、ヒアルロン酸塩成分は、組成物の約1%から約4%(W/V)の範囲の量で存在する。後者の場合には、非常に高いポリマーの粘性によってゲルが形成され、想定される組成物の保存期間(例えば少なくとも約2年間)、多くは再懸濁処理を必要としない程度まで、粒子の沈降速度を遅くする。注射針と注射筒によってゲルをバルクコンテナから移すことは容易ではないので、そのような組成物を予め充填した注射器として販売してもよい。
【0041】
水性担体成分は、有利には外科的に許容し得るものであり、眼科組成物に有用な1またはそれ以上の慣用の賦形剤が挙げられる。
【0042】
本発明の製剤は好ましくは多量の液体の水を含有する。本発明の組成物は、例えば眼に用いる前に滅菌することができ、滅菌するのが好ましい。
【0043】
本発明の組成物は好ましくは、組成物のpHを制御するのに有効な量の少なくとも1つの緩衝成分および/または組成物の張力または浸透圧を制御するのに有効な量の少なくとも1つの張力成分を含有する。
【0044】
緩衝成分および張力成分は眼科の分野において慣用で周知のものから選択することができる。
【0045】
そのような緩衝成分の例としては、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液などおよびそれらの混合物が挙げられるがこれに限定されない。リン酸緩衝液は特に有用である。有用な張力成分としては、塩類、具体的には塩化ナトリウム、塩化カリウム、他の適当な眼科的に許容し得る張力成分およびその混合物が挙げられるがこれに限定されない。
【0046】
好ましく用いられる緩衝成分の量は、組成物のpHを約6から約8、より好ましくは約7から約7.5に維持するのに十分な量である。好ましく用いられる張力成分の量はそれぞれ、約200〜約400,より好ましくは約250〜約350mosmol/kgの範囲の重量オスモル濃度を本組成物に与えるのに十分な量である。有利には、本発明の組成物は実質的に等張である。
【0047】
本発明の組成物は、1またはそれ以上の有用な特性および/または利点を与えるのに有効な量の1またはそれ以上の他の成分を含有し得る。例えば、本発明の組成物は実質的に保存料成分を含有していなくてもよいが、他の態様では、本発明の組成物は、有効量の保存料成分を含有し、好ましくはそのような成分は、ベンジルアルコールよりも、その組成物が配置される眼の後部における組織に対してより適合性があるかまたは親和性がある。そのような保存料成分の例としては、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、PHMB(ポリヘキサメチレンビグアニド)、メチルおよびエチルパラベン、ヘキセチジン、亜塩素酸成分(安定化二酸化塩素、亜塩素酸塩等)、他の眼科的に適合しうる保存料など、およびそれらの混合物が挙げられるがこれに限定されない。本発明の保存料成分が存在する場合、本組成物における濃度は、その組成物を保存するのに有効な濃度であり、多くの場合、組成物の約0.00001%〜約0.05%または約0.1%(w/v)である。
【0048】
さらに、本発明の組成物は、本発明の組成物においてコルチコステロイド成分粒子の懸濁または再懸濁を促進するのに有効な量の再懸濁成分を含有し得る。本発明組成物の他の態様では、例えば、所望ならばコルチコステロイド成分粒子が懸濁状態を維持する、および/またはそのような再懸濁が所望であれば本発明の組成物において比較的簡単に再懸濁できるという、高められた程度の保険を与えるために有効量の再懸濁成分を用いる。有利には、再懸濁成分が存在する場合、本発明にしたがって用いられる再懸濁成分は、ポリソルベート80よりも、その組成物が配置される眼の後部の組織に対してより適合性の高いまたは親和性のあるものが選択される。
【0049】
任意の適当な再懸濁成分は、本発明にしたがって用いることができる。そのような再懸濁成分の例としては、例えばプルロニック(登録商標)として販売されているポロキサン、チロキサポル、サルコシネート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、その他の表面活性剤等の表面活性剤およびそれらの混合物が挙げられるがこれに限定されない。
【0050】
1つの非常に有用なクラスの再懸濁成分はビタミン誘導体から選択されるものである。そのような物質はこれまで外科組成物における表面活性剤としての用途は示唆されてきたが、本発明の組成物において再懸濁成分として有効であることが分かった。有用ナビタミン誘導体の例としては、ビタミンE、トコフェノールポリエチレングリコールサクシネート(ビタミンEトコフェニルポリエチレングリコール1000サクシネート(ビタミンETPGS))、が挙げられるがこれに限定されない。他の有用なビタミン誘導体としては、ポリエチレングリコールとコハク酸との間のエステル結合がアミド基に置き換わっているビタミンEトコフェニルポリエチレングリコールスクシンアミド(ビタミンEトコフェニルポリエチレングリコール1000スクシンアミド(ビタミンE TPGSA))が挙げられるがこれに限定されない。
【0051】
本発明に有用な再懸濁成分は、存在するならば、例えば、組成物の製造中又はそれ以降、本発明の組成物における粒子の懸濁を促進するのに有効な量で存在する。用いられる再懸濁成分の具体的な量は、例えば用いられる具体的な再懸濁成分、その再懸濁成分が用いられる組成物等の因子に依存して、広い範囲に渡って変更することができる。再懸濁成分が存在する場合、適当な濃度は、組成物の約0.01%〜約5%、例えば約0.02%または約0.05%〜約1.0%(W/V)の範囲である。
【0052】
トリアムシノロンアセトニド等のコルチコステロイド成分の眼球内組織に対して最低限度に溶解するという有効性は、これら物質の溶解速度によって制限され得る。ゆっくりとした溶解は、患者にとって良い点と悪い点がある。一方、本組成物の1回の硝子体内注射の後、トリアムシノロンアセトニドの平均の排出半減期は有利にも非常に長く、非硝子体切除(nonvitrectonized)患者において約19日であり、約3ヶ月間は測定可能な薬物レベルが検出された。一方、眼の硝子体コンパートメントにおける治療薬のレベルは、コルチコステロイド成分粒子のゆっくりとした溶解速度のために、約1日〜約3日間は達成されることはない。
【0053】
本発明の1態様では、微量の、即ちコルチコステロイド成分の50%未満、例えば1%または約5%〜約10%または約20%の範囲の物質を溶解させるために有効量の可溶化剤を組成物に含有させる。例えば、約0.5〜約5.0%(W/V)の、β−シクロデキストリン、スルホ−ブチルエーテルβ−シクロデキストリン(SBE)、その他のシクロデキストリン等およびそれらの混合物のようなシクロデキストリン成分の含有により、トリアムシノロンアセトニドの初期用量の約1〜10%を溶解する。この予め溶解した画分は、容易に生体内で利用される初期投与量を与え、それにより治療効果のタイムラグを回避することができる。
【0054】
そのような可溶化剤成分の使用は、治療の有効性に関して、コルチコステロイド成分の眼内への比較的迅速な放出をもたらすのに有用である。そのような可溶化剤は、当然、眼の後部の組織に対する有害なダメージを回避するため、眼科的に許容し得るものであるか、または少なくとも組成物が配置されるそのような眼の後部に十分に適合するものである。
【0055】
硝子体内投与後のコルチコステロイド成分、例えばトリアムシノロンアセトニド、の薬動力学には、薬物溶解の速度と前部経路を経る薬物流出の速度の両方が関与する。例えば、4%(W/V)のトリアムシノロンアセトニドを含有する組成物の単一の硝子体内投与の後、TA濃度は、数日後、数千ナノグラム/mLのピークに達する(水性体液中でモニター)。このピーク(Cmax)は、急速な減少が約200時間続き、約19日の半減期でのゆっくりとした排出相で終わる。患者は、典型的には、例えば約3ヶ月毎の繰り返し投与が必要である。
【0056】
本発明の一態様では、組成物は、さらに、徐放性の成分(例えばポリ(DL−ラクチド)またはポリ(DL−ラクチド コ−グリコリド))を局所的拡散速度および/またはコルチコステロイド粒子拡散速度を減少させるのに有効な量で含有する。結果、低いCmaxでの一定した排出速度のプロファイルおよびより持続的な治療濃度域をもたらし、それにより、多くの患者にとって注射を要する時間間隔が延長される。
【0057】
任意の適当な、好ましくは条件的に許容可能な、放出成分を用いることができる。有用な例は、上記のとおりである。徐放性の成分は、好ましくは、長期間残留物が残らないよう、眼において生物分解性または生物吸収性のものである。含有される遅延性の放出成分の量は、例えば、用いられる具体的な徐放性成分、所望の具体的な放出プロファイル、および同様の因子に依存して比較的広い範囲にわたって変更することができる。遅延性の放出性成分が存在する場合、本発明の組成物に含有される典型的な量は、組成物の約0.05%〜0.1%から約0.5%または約1%(W/V)またはそれ以上の範囲である。
【0058】
本発明の組成物は、適当な混合/加工技術、例えば、1またはそれ以上の慣用的な混合技術を用いて製造することができる。調製物の加工は、ヒトまたは動物の眼の後部への配置または注射に有用な形態で本発明の組成物を提供するために選択される。1つの有用な態様では、濃縮コルチコステロイド成分分散液は、最終の組成物に含有される水および賦形剤(粘性誘発成分以外の)混合することによって得られる。成分を混合してコルチコステロイド成分を分散させた後、オートクレーブに付する。あるいは、ステロイド粉末にガンマ線を照射した後、滅菌した担体に添加する。粘性誘発成分は、滅菌状態で購入するかまたは慣用的な処理(例えば、希釈液を濾過した後凍結乾燥して滅菌粉末を得る)によって滅菌することができる。滅菌した粘性誘発成分は、水と混合して水性の濃縮液を調製する。無菌条件下で、コルチコステロイド成分分散液を混合し、スラリーとして粘性誘発成分濃縮液に添加する。水を適量(q.s.)加えて所望の組成物を得、均一になるまで組成物を混合する。
【0059】
本組成物を用いる方法が提供され、本発明の範囲に含まれる。一般に、そのような方法には、それによって所望の治療効果が得られるような、ヒトまたは動物の眼の後部への本発明の組成物の投与が含まれる。投与ステップは有利には、硝子体内注射、結膜下注射、テノン嚢下注射、球後注射、脈絡膜上注射等のうち少なくとも1つを包含する。適当なサイズの注射針(例えば27ゲージ注射針ないし30ゲージ注射針)を備えた注射装置は、組成物をヒトまたは動物の眼の後部へ注射するために効果的に用いることができる。
【0060】
本発明にしたがって処置または対応することができる疾患/状態には、以下のものが含まれるがこれに限定されない。
【0061】
黄斑症/網膜変性:非滲出性加齢黄斑変性症(ARMD)、滲出性加齢黄斑変性症(ARMD)、脈絡膜血管新生、糖尿病性網膜症、急性斑状視神経網膜症、中心性漿液性網脈絡膜症、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫。
【0062】
ブドウ膜炎/網膜炎/脈絡膜炎:急性多発性小板状色素上皮症、ベーチェット病、バードショット網膜脈絡膜炎、感染症(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、中間部ブドウ膜炎(扁平部炎)、多発性脈絡膜炎、多発性一過性網膜白点症候群(MEWDS)、眼サルコイドーシス、後部強膜炎、蛇行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、原田病(Vogt-Koyanagi-Harada Syndrome)。
【0063】
血管病/滲出性疾患:網膜動脈閉塞疾患、網膜中心静脈閉塞症、播種性血管内凝固障害、網膜静脈分枝閉塞症、高血圧性眼底変化、眼虚血症候群、網膜微細動脈瘤、コーツ病、傍中心窩毛細血管拡張症、半側網膜静脈閉塞症(Hemi- Retinal Vein Occlusion)、Papillo静脈炎、網膜中心動脈閉塞、網膜動脈分枝閉塞症、頸動脈疾患(CAD)、糖衣状分岐血管炎(Frosted Branch Arterial)、鎌状赤血球網膜症およびその他の異常血色素症、網膜色素線条、家族性滲出性硝子体網膜症、イ−ルズ病。
【0064】
外傷/外科手術:交感性眼炎、ブドウ膜炎性網膜疾患、網膜剥離、外傷、網膜レーザー光治療、光凝固、外科手術中の血流低下、放射線網膜症、骨髄移植網膜症。
【0065】
増殖障害:増殖性Vitreal網膜症および網膜上膜、増殖性糖尿病性網膜症。
【0066】
感染性障害(眼ヒストプラスマ症、眼トクソカリアシス、推定眼ヒストプラスマ症症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染に関連する網膜疾患、HIV感染に関連する脈絡膜疾患、HIV感染に関連するブドウ膜炎性疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性網膜外層壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、片側性瀰漫性亜急性視神経網膜炎、ハエウジ病)。
【0067】
遺伝病:網膜色素変性、網膜ジストロフィーに関連する全身性障害、先天性静止性夜盲症、錐体ジストロフィー、スタルガルト病および黄色斑眼底、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー、X線に関連する網膜分離、Sorsby's基底ジストロフィー、良性求心性黄斑、Bietti's crystallineジストロフィー、弾性線維性仮性黄色腫。
【0068】
網膜裂傷/円孔:網膜剥離、黄斑円孔、大きな網膜裂傷。
【0069】
腫瘍:腫瘍に関連する網膜疾患、前部および後部ぶどう膜メラノーマの先天性肥大、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の複合性過誤腫、網膜芽腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞腫、および眼内リンパ球腫瘍。
【0070】
その他:Punctate Inner Choroidopathy、急性後部多発性小板状色素上皮症、近視性網膜変性、急性網膜色素上皮炎等。
【0071】
本方法には、眼の後部への単回の注射または例えば、約1週間または約1ヶ月または約3ヶ月から約6ヶ月または約1年またはそれ以上の期間にわたる複数回の注射が包まれる。
【0072】
以下の実施例は本発明の特定の態様を説明するものであり、限定ではない。
【実施例】
【0073】
実施例1〜4
4種類の組成物は以下のとおり:
【表1】

これら成分はそれぞれ以下のように調製する。
濃縮トリアムシノロンアセトニド分散液は、トリアムシノロンアセトニド、水、ビタミンE−TPGSおよび8−シクロデキストリン(存在する場合)を混合することにより調製する。これらの成分を混合してトリアムシノロンアセトニド中に分散させた後、オートクレーブに付する。ヒアルロン酸ナトリウムは、滅菌粉末として購入するかまたは希釈液を濾過した後凍結乾燥して滅菌粉末を得ることができる。この滅菌ヒアルロン酸ナトリウムを水に溶解して水性の濃縮液を得る。濃縮トリアムシノロンアセトニド分散液を混合しスラリーとしてヒアルロン酸ナトリウム濃縮液に加える。水を適量加え、混合物を均一になるまで混合する。
【0074】
これら成分のそれぞれは、穏やかに転回させることにより容易に再懸濁するトリアムシノロンアセトニドの自由な揺らぎをもたらす。これらの成分は少量の医薬品グレードのガラス瓶にて販売することができ、ヒトの眼に硝子体内注射すると黄斑浮腫に対して治療上有効であることがわかる。
【0075】
実施例5〜7
これらの組成物は以下のとおり:
【表2】



これら組成物は、実施例1に記載の方法と実質的に同様にして製造する。
【0076】
この組成物の高い粘度は、再懸濁処理が必要無くなるかまたは組成物の保存期間(例えば約2年間)の間は必要ない程度に、実質的に粒子の沈降速度を遅くする。これらの組成物は、注射針と注射筒によって容器から容易に移すことができないので、予め充填された注射器として販売することができる。但し、好ましい注射器内の組成物については、27ゲージまたは30ゲージの注射針を用い、ヒトの眼の後部にその組成物を効果的に注射して、そのヒトの眼において所望の治療効果をもたらすことができる。
【0077】
実施例5〜7の組成物は、ヒトの眼に硝子体内注射するとゼラチン質の栓または薬滴を形成するように、十分な濃度の高分子量のヒアルロン酸ナトリウムを用いるかまたは含有する。トリアムシノロンアセトニド粒子は、事実上、この粘稠な栓の内部に補足または抱き込まれ、望ましくない「プルミング(pluming)」が起きず、例えば、ケナログ(登録商標)40のような親水性の粘性を有する組成物を用いる場合と比較して、薬物粒子が網膜組織に直接定着する危険性が実質的に減少する。ヒアルロン酸ナトリウム溶液は
劇的にずり流動化(shear thinning)するため、これらの組成物は、27ゲージまたは30ゲージの注射針にて容易に注射される。
【0078】
実施例8および9
2種類の組成物は以下のとおり:
【表3】

この組成物の高い粘度は、再懸濁処理が必要無くなるかまたは組成物の保管期間(例えば約2年間)の間は必要ない程度に、実質的に粒子の沈降速度を遅くする。これらの組成物は、注射針と注射筒によって容器から容易に移すことができないので、予め充填された注射器として販売することができる。但し、好ましい注射器内の組成物は、27ゲージまたは30ゲージの注射針を用い、ヒトの眼の後部にその組成物を効果的に注射して、そのヒトの眼において所望の治療効果をもたらすことができる。
【0079】
ヒアルロン酸ナトリウム粉末(実施例に記載のその他の組成物と同様に)は重量にして約4%〜約20%、好ましくは約4%〜約8%の範囲の水分を有する。この粉末の水分量、特に粉末毎の水分量のバラツキは、同じ「名目上の」化学的処理を有する本発明の2またはそれ以上の組成物において粘度のバラツキを生じ得る。従って、本明細書に示された粘度は、目標の粘度と理解されるべきであり、実際の組成物の粘度が目標の粘度のプラスマイナス約25%ないし約30%または約35%以内に分布する場合は、使用可能である。
【0080】
実施例に記載した組成物はそれぞれ、約1g/mLの密度を有するので、重量/用量で記載した本明細書記載のパーセントは、重量/重量(W/W)を基準に考えてもよい。
【0081】
実施例8および9の組成物は、ヒトの眼に硝子体内注射するとゼラチン質の栓または薬滴を形成するように、十分な濃度の高分子量のヒアルロン酸ナトリウムを用いるかまたは含有する。トリアムシノロンアセトニド粒子は、事実上、この粘稠な栓の内部に補足または抱き込まれ、望ましくない「プルミング(pluming)」が起きず、例えば、ケナログ(登録商標)40のような親水性の粘性を有する組成物を用いる場合と比較して、薬物粒子が網膜組織に直接定着する危険性が実質的に減少する。ヒアルロン酸ナトリウム溶液は
劇的にずり流動化(shear thinning)するため、これらの組成物は、27ゲージまたは30ゲージの注射針にて容易に注射される。
【0082】
種々の具体的な実施例および態様に関して本発明を記載したが、本発明はそれらに限定されるものと理解すべきではなく、請求の範囲の範囲内で様々に実施することができると解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の眼の後部へ注入するのに有用な組成物であって、
複数の粒子として存在する治療上有効な量で存在するコルチコステロイド成分;
該組成物の粘度増大に有効な量の粘性誘発成分;および
水性担体成分
を含有し、剪断速度0.1/秒で少なくとも10cpsの粘度を有し、ヒトまたは動物の眼の後部へ注入可能である、組成物。
【請求項2】
剪断速度0.1/秒で少なくとも100cpsの粘度を有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
剪断速度0.1/秒で少なくとも10,000cpsの粘度を有する請求項1記載の組成物。
【請求項4】
剪断速度0.1/秒で約140,000cps〜約300,000cpsの粘度を有する請求項1記載の組成物。
【請求項5】
27ゲージの注射針でヒトまたは動物の眼の後部へ注入可能な請求項1記載の組成物。
【請求項6】
30ゲージの注射針でヒトまたは動物の眼の後部へ注入可能な請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物において前記粒子が実質的に均一に懸濁している請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物において、前記粒子が再懸濁処理を要することなく実質的に均一な懸濁が少なくとも約1週間持続する請求項7記載の組成物。
【請求項9】
組成物において、再懸濁処理を要することなく前記粒子の実質的に均一な懸濁が少なくとも約1ヶ月持続する請求項7記載の組成物。
【請求項10】
組成物において、再懸濁処理を要することなく前記粒子の実質的に均一な懸濁が少なくとも約6ヶ月持続する請求項7記載の組成物。
【請求項11】
組成物において、再懸濁処理を要することなく前記粒子の実質的に均一な懸濁が少なくとも約1年間持続する請求項7記載の組成物。
【請求項12】
組成物において、再懸濁処理を要することなく前記粒子の実質的に均一な懸濁が少なくとも約2年間持続する請求項7記載の組成物。
【請求項13】
コルチコステロイド成分が、組成物の約25%(w/v)までの量で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項14】
コルチコステロイド成分が、組成物1mL当たり少なくとも約10mgの量で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項15】
コルチコステロイド成分が、組成物の約1%〜約20%(w/v)の範囲の量で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項16】
コルチコステロイド成分が、組成物の約1%〜約10%(w/v)の範囲の量で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項17】
コルチコステロイド成分の25℃の水における溶解度が10mg/mL未満である請求項1記載の組成物。
【請求項18】
コルチコステロイド成分が、コルチソン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、フルオロメトロン、デキサメタソン、メドリソン、ロテプレドノール、それらの誘導体およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項19】
コルチコステロイド成分が、トリアムシノロンアセトニドである請求項1記載の組成物。
【請求項20】
担体成分が、少なくとも1つの保存料成分、張力成分および緩衝成分の有効量を含有する請求項1記載の組成物。
【請求項21】
保存料成分が添加されていない請求項1記載の組成物。
【請求項22】
再懸濁成分が添加されていない請求項1記載の組成物。
【請求項23】
粘性誘発成分が組成物の約0.05%〜約20%(W/V)の範囲の量で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項24】
粘性誘発成分がポリマー成分を含んでなる請求項1記載の組成物。
【請求項25】
粘性誘発成分が少なくとも1つの粘弾性剤を含んでなる請求項1記載の組成物。
【請求項26】
粘性誘発成分が、重合ヒアルロン酸、カルボマー、ポリアクリル酸、セルロース誘導体、ポリカルボフィル、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デキストリン、ポリサッカライド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニル酢酸、それらの誘導体およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項27】
粘性誘発成分がヒアルロン酸塩成分を含んでなる請求項1記載の組成物。
【請求項28】
ヒアルロン酸塩成分がヒアルロン酸ナトリウムを含んでなる請求項27記載の組成物。
【請求項29】
請求項1記載の組成物をヒトまたは動物の眼の後部へ投与することを含んでなり、それによって所望の治療効果が得られる治療方法。
【請求項30】
投与ステップに硝子体内注射を含んでなる請求項29記載の方法。
【請求項31】
投与ステップに結膜下注射を含んでなる請求項29記載の方法。
【請求項32】
投与ステップにテノン嚢下注射を含んでなる請求項29記載の方法。
【請求項33】
投与ステップに球後注射を含んでなる請求項29記載の方法。
【請求項34】
投与ステップに脈絡膜上注射を含んでなる請求項29記載の方法。
【請求項35】
ヒトまたは動物の眼の後部へ注入するのに有用な組成物であって、
複数の粒子として存在する治療上有効な量で存在するコルチコステロイド成分;
該組成物の粘度増大に有効な量の粘性誘発成分;および
水性担体成分
を含有し、
該粒子が組成物において実質的に均一に懸濁しており、再懸濁処理を要することなく組成物において実質的に均一な懸濁が少なくとも約1週間持続する組成物。
【請求項36】
組成物において、再懸濁処理を要することなく前記粒子の実質的に均一な懸濁が少なくとも約2週間持続する請求項35記載の組成物。
【請求項37】
組成物において、再懸濁処理を要することなく前記粒子の実質的に均一な懸濁が少なくとも約1ヶ月持続する請求項35記載の組成物。
【請求項38】
組成物において、再懸濁処理を要することなく前記粒子の実質的に均一な懸濁が少なくとも約6ヶ月持続する請求項35記載の組成物。
【請求項39】
組成物において、再懸濁処理を要することなく前記粒子の実質的に均一な懸濁が少なくとも約1年間持続する請求項35記載の組成物。
【請求項40】
組成物において、再懸濁処理を要することなく前記粒子の実質的に均一な懸濁が少なくとも約2年間持続する請求項35記載の組成物。
【請求項41】
コルチコステロイド成分が組成物の約25%(w/v)までの量で存在する請求項35記載の組成物。
【請求項42】
コルチコステロイド成分が組成物1mL当たり少なくとも約10mgの量で存在する請求項35記載の組成物。
【請求項43】
コルチコステロイド成分が組成物の約1%〜約20%(w/v)の範囲の量で存在する請求項35記載の組成物。
【請求項44】
コルチコステロイド成分が組成物の約1%〜約10%(w/v)の範囲の量で存在する請求項35記載の組成物。
【請求項45】
コルチコステロイド成分の25℃の水における溶解度が10mg/mL未満である請求項35記載の組成物。
【請求項46】
コルチコステロイド成分が、コルチソン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、フルオロメトロン、デキサメタソン、メドリソン、ロテプレドノール、それらの誘導体およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項35記載の組成物。
【請求項47】
コルチコステロイド成分がトリアムシノロンアセトニドである請求項35記載の組成物。
【請求項48】
担体成分が、少なくとも1つの保存料成分、張力成分および緩衝成分の有効量を含有する請求項35記載の組成物。
【請求項49】
保存料成分が添加されていない請求項35記載の組成物。
【請求項50】
再懸濁成分が添加されていない請求項35記載の組成物。
【請求項51】
粘性誘発成分が、組成物の約0.05%〜約20%(W/V)の範囲の量で存在する請求項35記載の組成物。
【請求項52】
粘性誘発成分がポリマー成分を含んでなる請求項35記載の組成物。
【請求項53】
粘性誘発成分が少なくとも1つの粘弾性剤を含んでなる請求項35記載の組成物。
【請求項54】
粘性誘発成分が、重合ヒアルロン酸、カルボマー、ポリアクリル酸、セルロース誘導体、ポリカルボフィル、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デキストリン、ポリサッカライド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニル酢酸、それらの誘導体およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項35記載の組成物。
【請求項55】
粘性誘発成分がヒアルロン酸塩成分を含んでなる請求項35記載の組成物。
【請求項56】
ヒアルロン酸塩成分がヒアルロン酸ナトリウムを含んでなる請求項55記載の組成物。
【請求項57】
請求項35記載の組成物をヒトまたは動物の眼の後部へ投与することを含んでなり、それによって所望の治療効果が得られる治療方法。
【請求項58】
投与ステップに硝子体内注射を含んでなる請求項57記載の方法。
【請求項59】
投与ステップに結膜下注射を含んでなる請求項57記載の方法。
【請求項60】
投与ステップにテノン嚢下注射を含んでなる請求項57記載の方法。
【請求項61】
投与ステップに球後注射を含んでなる請求項57記載の方法。
【請求項62】
投与ステップに脈絡膜上注射を含んでなる請求項57記載の方法。

【公開番号】特開2012−21011(P2012−21011A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−183912(P2011−183912)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【分割の表示】特願2006−539780(P2006−539780)の分割
【原出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】