説明

眼の繊維症の処置のための方法及び組成物

【課題】眼の繊維症(例えば、線維柱帯切除術による緑内障の処置の間に生じる繊維症)の処置のための方法及び組成物を提供すること。
【解決手段】組成物は、1つ以上のリシルオキシダーゼ型の酵素(例えば、LOX、LOXL2)の活性の調節因子を含み、方法は、該調節因子を調製する方法と、該調節因子の投与を必要とする被験体に当該調節因子を投与する方法とを含む。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互引用】
【0001】
本出願は、2009年9月29日に出願された米国仮特許出願シリアル番号61/277,918号及び、2010年6月11日に出願された米国仮特許出願シリアル61/397,456号の優先権の利益を請求する。これらの仮特許出願の開示は、それらの全体が全ての目的において引用によって各々組み込まれる。
【政府による支持に関する宣言】
【0002】
適用無し。
【技術分野】
【0003】
本出願は、例えば、緑内障の罹患期間に生じる眼の神経病の分野、及びその疾患の処置の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
緑内障は、増加した眼圧(increased intraocular pressure:IOP)と、視神経に対するダメージとによって特徴付けられる神経病性の眼病のグループである。緑内障は、視力(vision)の減少又は喪失を導き得るし、失明の第2番目の主要な病因である。緑内障に関する現在の処置は、化学的手段又はメカニカル的手段によって眼圧を減少させることを含む。
【0005】
例えば、緑内障を処置するための最も一般的で有効な方法は線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)であり、該線維柱帯切除術とは房水が結膜へ(眼の外へ)排出(ドレナージ)されるように眼の線維柱帯部分を切除して眼圧を減少させる外科手術的な手法である。しかしながら、線維柱帯切除術は、一般的には、手術後に炎症及び繊維症を伴う。線維柱帯切除術の1/3から1/2は、結膜下の繊維症に起因して、最終的に失敗に至る。
【発明の概要】
【0006】
本願発明者らは、いくつかのリシルオキシダーゼ型の酵素の発現の変化が、線維柱帯切除術の手術後に伴い得る繊維症性ダメージと並行して生じることを発見した。従って、1つ以上のリシルオキシダーゼ型の酵素の活性の調節(modulation)は、そのような繊維症性ダメージを減少させること、及び/又は、回復(reverse)させることに役立つ。例えば、緑内障の処置において、線維柱帯切除術の手術後に1つ以上のリシルオキシダーゼ型の酵素の活性を調節することによって、随伴性の繊維症性ダメージを減少させて、処置の結果(ないし予後)を改善することができる。
【0007】
1つ以上のリシルオキシダーゼ型の酵素の活性を調節するための組成物は、例えば、コンビナトリアルケミストリ(combinatorial chemistry)によって合成することが可能な、タンパク質(例えば、抗体又は小(small)ペプチド)、核酸(例えば、三重鎖形成性のオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、マイクロRNA、リボザイム)、又は、小有機分子(例えば、分子量が1kD未満の有機分子)を含むことができる。
【0008】
従って、本開示は以下の実施形態を含むが、それらに限定されない。
【0009】
(形態1)
生物における眼の繊維症を処置する方法であって、
前記生物の1つ以上の細胞における、1つ以上のリシルオキシダーゼ型の酵素の活性を調節すること(modulating)を含む方法。
【0010】
(形態2)
1つ以上のリシルオキシダーゼ型の酵素の活性を阻害することを特徴とする形態1に記載の方法。
【0011】
(形態3)
前記リシルオキシダーゼ型の酵素がリシルオキシダーゼ(LOX)であることを特徴とする形態2に記載の方法。
【0012】
(形態4)
前記リシルオキシダーゼ型の酵素がリシルオキシダーゼ関連性タンパク質2(LOXL2)であることを特徴とする形態2に記載の方法。
【0013】
(形態5)
LOXの活性を、前記生物に対して抗LOX抗体を投与することによって阻害することを特徴とする形態3に記載の方法。
【0014】
(形態6)
LOXL2の活性を、前記生物に対して抗LOXL2抗体を投与することによって阻害することを特徴とする形態4に記載の方法。
【0015】
(形態7)
眼の繊維症が、緑内障の処置において生じることを特徴とする形態1に記載の方法。
【0016】
(形態8)
緑内障の処置が、眼の外科手術、例えば、線維柱帯切除術を含むことを特徴とする形態7に記載の方法。
【0017】
(形態9)
抗LOX抗体を、前記生物の眼に抗LOX抗体を導入することを特徴とする形態5に記載の方法。
【0018】
(形態10)
抗LOXL2抗体を、前記生物の眼に導入することを特徴とする形態6に記載の方法。
【0019】
(形態11)
抗LOX抗体を、コードするポリヌクレオチドを、前記生物に投与することを特徴とする形態5に記載の方法。
【0020】
(形態12)
抗LOXL2抗体をコードするポリヌクレオチドを、前記生物に投与することを特徴とする形態6に記載の方法。
【0021】
(形態13)
前記ポリヌクレオチドを、前記生物の眼に導入することを特徴とする形態11又は12に記載の方法。
【0022】
(形態14)
ポリヌクレオチド(単数又は複数)が、アデノ随伴ウィルス(adeno-associated virus:AAV)、アデノウィルス及びレンチウィルスから成る群から選択されるウィルス性ベクターの中にキャプシド形成されることを特徴とする形態11〜13の何れか1つに記載の方法。
【0023】
(形態15)
前記ウィルス性ベクターがアデノ随伴ウィルス(AAV)であることを特徴とする形態14に記載の方法。
【0024】
(形態16)
前記ウィルス性ベクターがAAVタイプ2又はAAVタイプ4であることを特徴とする形態15に記載の方法。
【0025】
(形態17)
前記生物が哺乳類であることを特徴とする形態1に記載の方法。
【0026】
(形態18)
前記哺乳類がヒトであることを特徴とする形態17に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1(パネルA及びB)は、両眼に線維柱帯切除術が施されたウサギの左目の眼圧(IOP)(パネルA、上部のパネル)及び右目の眼圧(パネルB、下部のパネル)の測定を示す。IOPは、Tono‐Pen(登録商標)眼圧計を使用して測定した。データは、外科手術前のIOPの測定値と相対的な、各時点におけるIOPの変化(平均値±SEM)として表現される。アステリスクによって示されるポイントは、p<0.05である。
【0028】
【図2】図2(パネルA及びB)は、両眼に線維柱帯切除術が施されたウサギの左眼のブレブ領域(パネルA、上部のパネル)及び右眼のブレブ領域(パネルB、下部のパネル)の測定を示す。データは、各時点において、ブレブ領域(面積:mm)として表現される。アステリスクによって示されるポイントは、p<0.05である。
【0029】
【図3】図3(パネルA‐H)は、繊維性のブレブ(パネルA、B、C、D)、及び、非繊維性の結膜(パネルE、F、G、H)のCD45について免疫染色した切片を示す。ここで、各パネルは、線維柱帯切除術後の第3日目(パネルA、E)、第8日目(パネルB、F)、第14日目(パネルC、G)、第30日目(パネルD、H)に対応する。
【0030】
【図4】図4は、外科手術後の異なる時点(図示される)に取得した、ブレブのサンプル(ラベル「繊維性」)と、結膜のサンプル(ラベル「非繊維性」)とにおける白血球の密度を示す。白血球の密度(平均±SEM)は、切片におけるCD45ポジティブ細胞の細胞数を計測して、当該切片の領域(面積)で除算することによって算出した。非繊維性の結膜のサンプルにおいては、CD45の染色は観察されなかった。全ての繊維性のサンプルついてp<0.05であった。
【0031】
【図5】図5(パネルA‐H)は、トリクローム染色した、ブレブの薄い切片(繊維性、パネルA、B、C、D)、及び、結膜の薄い切片(非繊維性、パネルE、F、G、H)を示す。ここで、各パネルは、線維柱帯切除術後の第3日目(パネルA、E)、第8日目(パネルB、F)、第14日目(パネルC、G)、第30日目(パネルD、H)に対応する。
【0032】
【図6】図6(パネルA‐H)は、シリウスレッド染色した、ブレブの薄い切片(繊維性、パネルA、B、C、D)、及び、結膜の薄い切片(非繊維性、パネルE、F、G、H)を示す。ここで、各パネルは、線維柱帯切除術後の第3日目(パネルA、E)、第8日目(パネルB、F)、第14日目(パネルC、G)、第30日目(パネルD、H)に対応する。
【0033】
【図7】図7(パネルA‐H)は、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色した、ブレブの薄い切片(繊維性、パネルA、B、C、D)、及び、結膜の薄い切片(非繊維性、パネルE、F、G、H)を示す。ここで、各パネルは、線維柱帯切除術後の第3日目(パネルA、E)、第8日目(パネルB、F)、第14日目(パネルC、G)、第30日目(パネルD、H)に対応する。
【0034】
【図8】図8(パネルA‐C)は、線維柱帯切除術後の第3日目、第8日目、第14日目及び第30日目の、ブレブの切片(ラベル「繊維性」)及び非繊維性の結膜の切片(ラベル「非繊維性」)におけるコラーゲン沈着の定量的な解析(平均値±SEM)を示す。コラーゲン沈着は、コラーゲン繊維(トリクロームでは青色に染色され、シリウスレッドでは赤色に染色され、そして、H&Eでは紫色に染色される)によって占拠される領域を測定することによって、切片のトータルの領域に対するパーセントとして定量した。パネルAは、トリクローム染色した切片の解析を示す。パネルBは、シリウスレッド染色した切片の解析を示す。パネルCは、H&E染色した切片の解析を示す。アステリスクによって示されるポイントは、p<0.05である。
【0035】
【図9】図9は、リシルオキシダーゼ(LOX)について免疫染色した眼の繊維性の部分(ラベル「上部分」)及び非繊維性の部分(ラベル「下部分」)の組織の薄い切片の例を示す。図9に示すように、眼は、線維柱帯切除術後の第3日目、第8日目、第14日目及び第30日目に被検体から取得した。
【0036】
【図10】図10は、リシルオキシダーゼlike2(LOXL2)について免疫染色した眼の繊維性の部分(ラベル「上部分」)及び非繊維性の部分(ラベル「下部分」)の組織の薄い切片の例を示す。眼は、図10に示すように、線維柱帯切除術後の第3日目、第8日目、第14日目及び第30日目に被検体から取得した。
【0037】
【図11】図11(パネルA及びB)は、線維柱帯切除術後の第3日目、第8日目、第14日目及び第30日目の繊維性の眼の組織及び非繊維性の眼の組織における、リシルオキシダーゼ(LOX)タンパク質のレベル及びリシルオキシダーゼlike2(LOXL2)タンパク質のレベルの定量を示す。タンパク質のレベルは、トータルの領域に対するLOX免疫染色又はLOXL2免疫染色についてポジティブな切片のパーセンテージを測定することによって定量した。図11のパネルAはLOXについての結果を示し、図11のパネルBは、LOXL2についての結果を示す。
【0038】
【図12】図12(パネルA及びB)は、線維柱帯切除術後の、コントロール(PBS)の眼及び抗体処置した眼の眼圧(IOP)を示す。パネルAは抗LOX抗体の効果を示し、パネルBは抗LOXL2抗体の効果を示す。
【0039】
【図13】図13(パネルA及びB)は、線維柱帯切除術後の、コントロール(PBS)の眼及び抗体で処置した眼のブレブの領域を示す。図13のパネルAは抗LOX抗体の効果を示し、図13のパネルBは抗LOXL2抗体の効果を示す。
【0040】
【図14】図14(パネルA及びB)は、線維柱帯切除術後の、コントロール(PBS)の眼及び抗体で処置した眼のブレブの高さを示す。図14のパネルAは抗LOX抗体の効果を示し、図14のパネルBは抗LOXL2抗体の効果を示す。
【0041】
【図15】図15(パネルA及びB)は、カプラン・マイヤー生存曲線として示されたブレブの残存(survival)の測定値を示す。図15のパネルAは、抗LOX抗体の効果を示し、図15のパネルBは、抗LOXL2抗体の効果を表す。
【0042】
【図16】図16は、第30日目の眼のブレブの薄い切片におけるCD31、CD45及びコラーゲンの解析の結果の例を表す顕微鏡写真を示す。最も左側のカラム(列)はCD31についての免疫組織化学的な解析を示し、中央(center)のカラムはCD45についての免疫組織化学的な解析を示し、そして、最も右側のカラムはコラーゲンについてのシリウスレッド染色の解析を示す。最も上側の行(1行目)は抗LOX抗体で処置した動物の眼からのブレブの切片を示し、2行目は同一の動物に由来するコントロール(PBSで処置した)の眼からの切片を示す。3行目は抗LOXL2抗体で処置した動物の眼からのブレブの切片を示し、最も下側の行(4行目)は同一の動物由来するコントロール(PBSで処置した)の眼からの切片を示す。
【0043】
【図17】図17(パネルA及びB)は、線維柱帯切除術後の第30日目の、ブレブ組織及び非ブレブ組織におけるCD31の発現の定量的な解析を示す。図17のパネルAは、抗LOX抗体での処置の効果を示す。図17のパネルBは、抗LOXL2抗体での処置の効果を示す。両方のパネルにおいて、左側のバーのペアは非ブレブ組織についての結果を示し、右側のバーのペアはブレブについての結果を示す。各ペアに関して、左側のバーはコントロール(PBSで処置した)の眼についての結果を示し、右側のバーは抗体で処置した眼についての結果を示す。
【0044】
【図18】図18(パネルA及びB)は、線維柱帯切除術後の第30日目の、ブレブ及び非ブレブ組織におけるCD45発現の定量的な解析を示す。図18のパネルAは、抗LOX抗体での処置の効果を示す。図18のパネルBは、抗LOXL2抗体での処置の効果を示す。両方のパネルにおいて、左側のバーのペアは非ブレブ組織についての結果を示し、右側のバーのペアはブレブについての結果を表す。各ペアに関して、左側のバーはコントロール(PBS処置された)の眼について結果を示し、右側のバーは抗体で処置した眼についての結果を示す。
【0045】
【図19】図19(パネルA及びB)は、線維柱帯切除術後の第30日目の、ブレブ及び非ブレブ組織におけるコラーゲン沈着の定量的な解析を示す。図19のパネルAは、抗LOX抗体での処置の効果を示す。図19のパネルBは、抗LOXL2抗体での処置の効果を示す。両方のパネルにおいて、左側のバーのペアは非ブレブ組織についての結果を示し、右側のバーのペアはブレブについての結果を示す。各ペアに関して、左側のバーは、コントロール(PBSで処置した)の眼についての結果を示し、右側のバーは抗体で処置した眼についての結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の実施において、特段の指示のない限り、細胞生物学、毒性学、分子生物学、生化学、細胞培養、免疫学、腫瘍学、組み換えDNAの分野、及び、関連分野における標準的な方法及び慣習的な技術を、本発明の分野における通常の技術を有する者(ないし当業者)の技術的範疇内のものとして採用する。そのような技術は従来文献に記載されており、該従来文献を参照することによって当業者は利用可能である。例えば、Alberts, B. et al., "Molecular Biology of the Cell," 5th edition, Garland Science, New York, NY, 2008、Voet, D. et al., "Fundamentals of Biochemistry: Life at the Molecular Level," 3rd edition, John Wiley & Sons, Hoboken, NJ, 2008、Sambrook, J. et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual," 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001、Ausubel, F. et al., "Current Protocols in Molecular Biology," John Wiley & Sons, New York, 1987 and periodic updates、Freshney, R.I., "Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique," 4th edition, John Wiley & Sons, Somerset, NJ, 2000、及び、the series "Methods in Enzymology," Academic Press, San Diego, CAを参照。
【0047】
[眼の繊維症におけるリシルオキシダーゼ型の酵素の役割]
リシルオキシダーゼ(lysyl oxidase:LOX)タンパク質、及び、リシルオキシダーゼlike(lysyl oxidase-like:LOXL)タンパク質は、細胞外のスペースにおけるコラーゲン及びエラスチンのクロスリンキングに関与する。これらのタンパク質は、繊維症のプロセスにおいて主要な役割を果たす。
【0048】
従って、1つの視点において、本願に記載のリシルオキシダーゼ型の酵素の活性を調節(modulate)する組成物は、眼の繊維症によって特徴付けられる状態の処置に使用される。ある実施形態においては、リシルオキシダーゼ(LOX)の活性が調節される(例えば、 阻害される)。ある実施形態においては、リシルオキシダーゼLike2タンパク質(LOXL2)の活性が調節される(例えば、阻害される)。眼の繊維症によって特徴付けられる状態の非限定的な条件の例は、緑内障の処置において使用される線維柱帯切除術によるものである。
【0049】
ある実施形態において、リシルオキシダーゼ型の酵素の活性が阻害される。リシルオキシダーゼ型の酵素の阻害剤は、リシルオキシダーゼ型の酵素をコードする遺伝子の発現を阻害する抗体、小RNA分子、リボザイム、三重鎖を形成する核酸、小有機分子(例えば、分子量<1kD)、又は、転写因子であり得る。例えば、米国特許出願US2003/0114410号;US2006/0127402号;US2007/0021365号;US2007/0225242号、そして、同一出願人によるUS2009/0053224号及びUS2009/0104201号を参照。これらの特許出願は、全て、種々のタイプのリシルオキシダーゼ型の酵素の阻害剤に関する開示として、引用によって組み込まれる。米国特許6,534,261号も参照。該特許も、リシルオキシダーゼ型の酵素をコードする遺伝子の発現を阻害する転写因子を製造する方法の開示として、引用によって組み込まれる。
【0050】
ある実施形態において、リシルオキシダーゼ型の酵素の阻害剤は、リシルオキシダーゼ型の酵素に結合し、かつ、該酵素の活性を阻害する抗体である。更なる実施形態において、阻害は非競合的である。1つ以上のリシルオキシダーゼ型の酵素に結合し、かつ、該酵素の活性を阻害する抗体の例は、同一出願人による米国特許出願公開US2009/0053224号及びUS2009/0104201号において開示される。これらの特許出願公開の開示は、リシルオキシダーゼ型の酵素に結合する抗体の調製、組成、及び、使用を開示する目的のために本願に引用によって組み込まれる。
【0051】
ある実施形態において、抗リシルオキシダーゼ抗体、又は、機能的な抗体フラグメントをコードする核酸が、リシルオキシダーゼ型の酵素の阻害剤として使用される。そのような核酸は、本発明の分野において知られた何れかの方法によって投与することができる。例えば、ネイキッド核酸(バッファ又は医薬的なキャリア溶液の中であっても、これらの溶液の中でなくてもよい)を、眼に注射することもできるし、点眼剤として使用される溶液として製剤化することもできるし、又は、全身的に投与することもできる。
【0052】
[リシルオキシダーゼ型の酵素]
本願において使用される用語「リシルオキシダーゼ型の酵素(lysyl oxidase-type enzyme)」は、特に、リシン残基及びヒドロキシリシン残基のε−アミノ基の酸化的脱アミノ反応を触媒して、ペプチジルリシンのペプチジル−α−アミノアジピン酸−δ−セミアルデヒド(アリシン)への転換と、理論量のアンモニア及び過酸化水素の放出とをもたらすタンパク質ファミリーのメンバーを意味する。

【0053】
この反応は、細胞外で、コラーゲン及びエラスチンのリシン残基上において最も頻繁に生じる。アリシンのアルデヒド残基は反応性であり、他のアリシン及びリシン残基と自発的に縮合することができ、結果として、コラーゲン分子のクロスリンキングを生じてコラーゲン細繊維を形成する。
【0054】
リシルオキシダーゼ型の酵素は、鶏、ラット、マウス、ウシ及びヒトから精製されている。全てのリシルオキシダーゼ型の酵素は、共通の触媒ドメイン(およそ205アミノ酸の長さで、タンパク質のカルボキシ末端の部分に位置し、酵素の活性部位を含む)を含む。活性部位は、Cu(II)原子に配位する4つのヒスチジン残基を含む保存されたアミノ酸配列の銅結合部を含む。活性部位は、リシン残基とチロシン残基と(ラットリシルオキシダーゼのlys314とtyr349とに対応し、そして、ヒトリシルオキシダーゼのlys320とtyr355とに対応する)の間の分子内の共有結合性の連結(ないしリンケージ)によって形成される、リシルチロシルキノン(lysyltyrosyl quinone:LTQ)補因子も含む。LTQ補因子を形成するチロシン残基の周囲の配列は、リシルオキシダーゼ型の酵素にも保存される。触媒ドメインは、10個の保存されたシステイン残基も含み、5つのジスルフィド結合の形成に関与する。触媒ドメインは、フィブロネクチン結合ドメインも含む。つまり、成長因子及びサイトカインの受容体ドメイン(4つのシステイン残基を含む)に類似のアミノ酸配列が触媒ドメインに存在する。これらの保存領域が存在するにも関わらず、分岐状のヌクレオチド及びアミノ酸配列の領域のおかげで、異なるリシルオキシダーゼ型の酵素が(それらの触媒ドメインの内側と外側の両方ともが)互いに区別される。
【0055】
この酵素ファミリーにおいて、第1のメンバーとして単離され、特徴付けられたものは、リシルオキシダーゼ(EC1.4.3.13)であり、タンパク質−リシン6−オキシダーゼ、タンパク質−L−リシン:酸素6−オキシドレダクターゼ(脱アミノ化する)又はLOXとしても知られている。例えば、Harris et al., Biochim. Biophys. Acta 341:332-344 (1974)、Rayton et al., J. Biol. Chem. 254:621-626 (1979)、Stassen, Biophys. Acta 438:49-60 (1976)参照。
【0056】
更なるリシルオキシダーゼ型の酵素(複数)は、その後に発見された。これらのタンパク質は、「LOX−like」又は「LOXL」と称されている。それらは、全て、上記の共通の触媒ドメインを含み、類似の酵素活性を有する。現在、以下の5つの異なるリシルオキシダーゼ型の酵素が、ヒト及びマウスの両方に存在することが知られている:LOX、4つのLOX関連性タンパク質(ないしはLOX−likeタンパク質)であるLOXL1(「リシルオキシダーゼ−like」、「LOXL」又は「LOL」とも表記される)、LOXL2(「LOR−1」とも表記される)、LOXL3(「LOR−2」とも表記される)及びLOXL4。これらの5つの異なるリシルオキシダーゼ型の酵素をコードする遺伝子の各々は、異なる染色体に存在する。例えば、Molnar et al., Biochim Biophys Acta. 1647:220-24 (2003)、Csiszar, Prog. Nucl. Acid Res. 70:1-32 (2001)、国際公開WO01/83702号(2001年11月8日に公開)、及び、米国特許6,300,092号を参照(全ての文献は引用によって本願に組み込まれる)。LOXCと称されるLOX−likeタンパク質(LOXL4に対していくつかの類似性を有するが、異なる発現パターンを有する)が、ネズミEC細胞系統から単離されている(Ito et al., (2001) J. Biol. Chem. 276:24023-24029)。2つのリシルオキシダーゼ型の酵素(DmLOXL−1及びDmLOXL−2)が、ショウジョウバエから単離されている。
【0057】
全てのリシルオキシダーゼ型の酵素は共通の触媒ドメインをいずれも有するが、それらは、特にアミノ末端領域において、互いに異なる。4つのLOXLタンパク質は、LOXと比べて、アミノ末端の延長領域を有する。ヒトのプレプロLOX(preproLOX:すなわち、シグナル配列切断される前の一次翻訳産物、下記参照)は、417アミノ酸残基を含むが、LOXL1は574アミノ酸残基を含み、LOXL2は638アミノ酸残基を含み、LOXL3は753アミノ酸残基を含み、そして、LOXL4は756アミノ酸残基を含む。
【0058】
LOXL2、LOXL3及びLOXL4は、それらのアミノ末端領域の中に、スカベンジャー受容体システインリッチ(scavenger receptor cysteine-rich:SRCR)ドメインの4回の繰り返しを含む。これらのドメインは、LOX又はLOXL1には存在しない。SRCRドメインは、分泌型の、膜貫通型の、又は、細胞外のマトリックスタンパク質に見られ、いくつかの分泌型及び受容体タンパク質においてリガンド結合を媒介することが知られている。Hoheneste et al., (1999) Nat. Struct. Biol. 6:228-232、Sasaki et al. (1998) EMBO J. 17:1606-1613. SRCRドメインに加えて、LOXL3はアミノ末端領域に核内移行シグナルも含む。プロリンリッチドメインは、LOXL1に独特であると思われる。Molnar et al., (2003) Biochim. Biophys. Acta 1647:220-224. 種々のリシルオキシダーゼ型の酵素は、グリコシル化のパターンにおいても異なる。
【0059】
リシルオキシダーゼ型の酵素の間では、組織分布も異なる。ヒトLOXのmRNAは、心臓、胎盤、精巣、肺、腎臓及び子宮において高度に発現するが、脳及び肝臓においては、わずかばかりである。ヒトLOXL1のmRNAは、胎盤、腎臓、筋肉、心臓、肺及び膵臓において発現し、脳及び肝臓においてはLOXに類似して非常に低レベルで発現する。Kim et al., (1995) J. Biol. Chem. 270:7176-7182. 高いレベルのLOXL2mRNAは、子宮、胎盤、及び他の器官において発現するが、脳及び肝臓においては、LOX及びLOXL1と同様に、低いレベルで発現する。Jourdan Le-Saux et al., (1999) J. Biol. Chem. 274: 12939:12944. LOXL3のmRNAは、精巣、脾臓、及び、前立腺においては高度に発現し、胎盤においては中程度に発現し、肝臓においては発現しないが、その一方で、高いレベルのLOXL4mRNAが肝臓において観察される。Huang et al., (2001) Matrix Biol. 20:153-157、Maki and Kivirikko, (2001) Biochem. J. 355: 381-387、Jourdan Le-Saux et al., (2001) Genomics 74:211-218、Asuncion et al., (2001) Matrix Biol. 20:487-491.
【0060】
リシルオキシダーゼ型の酵素の発現、及び/又は、関与も疾患ごとに変化する。例えば、Kagen (1994) Pathol., Res. Pract. 190: 910-919、Murawaki et al., (1991) Hepatology 14:1167-1173、Siegel et al., (1978) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:2945-2949、Jourdan Le-Saux et al., (1994) Biochem. Biophys. Res. Comm. 199:587-592、及び、Kim et al. (1999) J. Cell Biochem. 72:181-188参照。リシルオキシダーゼ型の酵素は、頭部の癌、頚部の癌、頸部の癌、膀胱癌、大(結)腸癌、食道癌及び胸部の癌を含むいくつかの癌とも関連する。例えば、Wu et al., (2007) Cancer Res. 67:4123-4129、Gorough et al., (2007) J. Pathol. 212:74-82、Csiszar, (2001) Prog. Nucl. Acid Res. 70:1-32、及び、Kirschmann et al., (2002) Cancer Res. 62:4478-4483参照。
【0061】
リシルオキシダーゼ型の酵素は、構造及び機能においていくつかの重複を示すが、各々に、別個の構造及び機能も有する。構造に関しては、例えば、LOXの触媒ドメインに対して生じたある抗体は、LOXL2に対しては結合しない。機能に関しては、ターゲットとしたLOXの欠損は、マウスの出産時の死をもたらすことがわかっているが、その一方では、LOXL1欠損は、発生上の表現型に重篤な変化を生じさせない。Hornstra et al., (2003) J. Biol. Chem. 278:14387-14393、Bronson et al., (2005) Neurosci. Lett. 390:118-122.
【0062】
最も広範に報告されているリシルオキシダーゼ型の酵素の活性は、細胞外部のコラーゲン及びエラスチンにおける特定のリシン残基の酸化であるが、リシルオキシダーゼ型の酵素がいくつかの細胞内のプロセスにも関与するという証拠もある。例えば、いくつかのリシルオキシダーゼ型の酵素が遺伝子発現を制御するという報告がある。Li et al., (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:12817-12822、Giampuzzi et al., (2000) J. Biol. Chem. 275:36341-36349. 更に、LOXは、ヒストンH1のリシン残基を酸化することが報告されている。LOXの更なる細胞外の活性は、単球、繊維芽細胞及び平滑筋細胞の化学走性の誘導を含む。Lazarus et al., (1995) Matrix Biol. 14:727-731、Nelson et al., (1988) Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 188:346-352. LOXの発現自体は、TGF−β、TNF−α及びインターフェロンなどのいくつかの成長因子やステロイドによって誘導される。Csiszar (2001) Prog. Nucl. Acid Res. 70:1-32. 最近の研究は、発生上の制御、腫瘍抑制、細胞運動性、及び、細胞老化などの種々の生物学的な機能において、LOXが他の役割に関連することを報告する。
【0063】
種々のソースのリシルオキシダーゼ(LOX)タンパク質の例は、以下の配列の1つから発現した又は翻訳されたポリペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列を有する酵素を含む:EMBL/GenBankアクセッション: M94054; AAA59525.1 -- mRNA; S45875; AAB23549.1−mRNA; S78694; AAB21243.1−mRNA; AF039291; AAD02130.1−mRNA; BC074820; AAH74820.1−mRNA; BC074872; AAH74872.1 - mRNA; M84150; AAA59541.1--ゲノムDNA。LOXの一形態は、ヒトリシルオキシダーゼ(hLOX)プレプロタンパク質である。
【0064】
リシルオキシダーゼ−likeの酵素をコードする配列の開示の例は、以下のとおりである。LOXL1は、GenBank/EMBL BC015090;AAH15090.1で寄託されたmRNAによってコードされる。LOXL2は、GenBank/EMBL U89942で寄託されたmRNAによってコードされる。LOXL3は、GenBank/EMBL AF282619;AAK51671.1で寄託されたmRNAによってコードされる。LOXL4は、GenBank/EMBL AF338441;AAK71934.1で寄託されたmRNAによってコードされる。
【0065】
LOXタンパク質の一次翻訳産物(プレプロペプチドとして知られる)は、アミノ酸1-21に延在するシグナル配列を含む。このシグナル配列は、マウスLOX及びヒトLOXの両方において、Cys21及びAla22の間の切断によって細胞内に放出されて、46−48kDaのプロペプチド形態のLOX(本願において、全長形態とも称される)が生成される。プロペプチドはゴルジ体を通過する経路の間にN−グリコシル化されて、50kDaのタンパク質を生成し、続いて細胞外環境に分泌される。この段階において、該タンパク質は触媒作用的に不活性である。更なる切断(マウスLOXにおけるGly168及びAsp169の間、そして、ヒトLOXにおけるGly174及びAsp175の間)は、成熟して触媒作用的に活性化状態の30−32kDaの酵素を生成し、18kDaのプロペプチドを放出する。この最終的な切断イベントは、メタロエンドプロテアーゼプロコラーゲンC−プロテイナーゼ(骨形成タンパク質−1(bone morphogenetic protein:BMP−1)としても知られる)によって触媒される。興味深いことに、この酵素は、LOXの基質であるコラーゲンのプロセッシングにおいても機能する。N−グリコシルユニットは、その後に除去される。
【0066】
潜在的なシグナルペプチドの切断部位は、LOXL1、LOXL2、LOXL3、及び、LOXL4のアミノ末端であると予測されている。予測されるシグナル切断部位は、LOXL1についてGly25及びGln26の間、LOXL2についてAla25及びGln26の間、LOXL3についてGly25及びSer26の間、LOXL4についてArg23及びPro24の間である。
【0067】
LOXL1タンパク質におけるBMP−1の切断部位は、Ser354及びAsp355の間であることが同定されている。Borel et al., (2001) J. Biol. Chem. 276: 48944-48949. 他のリシルオキシダーゼ型の酵素における潜在的なBMP−1切断部位は、プロコラーゲン及びプロ−LOXにおけるBMP−1切断のコンセンサス配列であるAla/Gly−Asp配列(しばしば、酸性残基又は荷電残基がその後に続く)に基づいて予測される。LOXL3での予測されるBMP−1の切断部位は、Gly447及びAsp448の間に位置し、この部位におけるプロセッシングは、成熟LOXと類似サイズの成熟ペプチドを生成する。BMP−1の潜在的な切断部位は、LOXL4(残基Ala569及び残基Asp570の間)においても同定された。Kim et al., (2003) J. Biol. Chem. 278:52071-52074. LOXL2は、LOXLファミリーの他のメンバーと同様にタンパク分解的に切断され、分泌される。Akiri et al., (2003) Cancer Res. 63:1657-1666.
【0068】
リシルオキシダーゼの酵素における共通の触媒ドメインの存在から予想されるように、酵素前駆体のC−末端の30kDaの領域の配列(活性部位が位置する)は、高度に保存されている(およそ95%)。より緩慢な(moderate)保存の度合い(およそ60−70%)がプロペプチドドメインにおいて観察される。
【0069】
本願の用語「リシルオキシダーゼ型の酵素」は、上記の5つのリシン酸化酵素の全てを含み、そして、実質的に酵素活性(例えば、リシル残基の脱アミノ化反応を触媒する能力)を保持するLOX、LOXL1、LOXL2、LOXL3及びLOXL4の機能的フラグメント、及び/又は、LOX、LOXL1、LOXL2、LOXL3及びLOXL4の誘導体も含む。典型的には、機能的フラグメント又は誘導体は、そのリシン酸化活性の少なくとも50%を保持する。いくつかの実施形態において、機能的フラグメント又は誘導体は、そのリシン酸化活性の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は100%を保持する。
【0070】
リシルオキシダーゼ型の酵素の機能的フラグメントが実質的に触媒作用性の活性を変化させない保存的なアミノ酸置換(天然のポリペプチド配列に関する)を含み得ることも意図される。用語「保存的なアミノ酸置換」とは、ある共通の構造、及び/又は、特徴に基づくアミノ酸のグループ分けを意味する。共通の構造に関して、アミノ酸は、無極性の側鎖を有するもの(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン及びトリプトファン)と、無電荷で極性の側鎖を有するもの(セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン及びシステイン)と、そして、電荷を帯びて極性の側鎖を有するもの(リシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸及びヒスチジン)とにグループ分けすることができる。芳香族の側鎖を含むアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンを含む。複素環式の側鎖は、プロリン、トリプトファン及びヒスチジンに存在する。無極性の側鎖を含むアミノ酸のグループの中で、短い炭化水素の側鎖を有するもの(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン)は、より長く、非炭化水素の側鎖を有するもの(メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン)から区別され得る。電荷を帯びて極性の側鎖を有するアミノ酸のグループの中で、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)は、塩基性側鎖を有するもの(リシン、アルギニン及びヒスチジン)から区別され得る。
【0071】
個々のアミノ酸の共通の特徴を定義するための機能的な方法は、相同性の生命体の対応するタンパク質の間のアミノ酸変化の規格化された頻度を解析することである(Schulz, G. E. and R. H. Schirmer, Principles of Protein Structure, Springer-Verlag, 1979)。そのような解析に従って、アミノ酸のグループを定義することができる(一グループ内のアミノ酸は、相同性のタンパク質の間で互いに優先的に置換されており、全体的なタンパク質構造に対して類似の影響を有する)(Schulz, G. E. and R. H. Schirmer, Principles of Protein Structure, Springer-Verlag, 1979)。このタイプの解析に従って、互いに保存的に置換され得る以下のグループのアミノ酸を規定することができる。
(i)Glu、Asp、Lys、Arg及びHisから成る電荷を帯びた基を含むアミノ酸
(ii)Lys、Arg及びHisから成るポジティブに電荷を帯びた基を含むアミノ酸(iii)Glu及びAspから成るネガティブに電荷を帯びた基を含むアミノ酸
(iv)Phe、Tyr及びTrpから成る芳香族の基を含むアミノ酸
(v)His及びTrpから成る窒素環の基を含むアミノ酸
(vi)Val、Leu及びIleから成る大きい(large)脂肪族の非極性の基を含むアミノ酸
(vii)Met及びCysから成るわずかに(slightly)極性の基を含むアミノ酸
(viii)Ser、Thr、Asp、Asn、Gly、Ala、Glu、Gln及びProから成る小さい(small)残基の基を含むアミノ酸
(ix)Val、Leu、Ile、Met及びCysから成る脂肪族の基を含むアミノ酸(x)Ser及びThrから成るヒドロキシル基を含むアミノ酸
【0072】
従って、上記の例のように、アミノ酸の保存的な置換は、本発明の分野において通常の知識を有する者(当業者)に知られており、一般的には、結果として生じる分子の生物学的な活性を変化させずに生じさせることができる。当業者は、ポリペプチドの非本質的な(non-essential)領域の一般的な単一のアミノ酸置換が、生物学的な活性を実質的に変化させないことも認識する。例えば、Watson, et al., "Molecular Biology of the Gene," 4th Edition, 1987, The Benjamin/Cummings Pub. Co., Menlo Park, CA, p. 224参照。
【0073】
リシルオキシダーゼ型の酵素に関する更なる情報については、例えば、Rucker et al., (1998) Am. J. Clin. Nutr., 67:996S-1002S、及び、Kagan et al., (2003) J. Cell. Biochem 88:660-672を参照。同一出願人による米国特許出願公開2009/0053224号(2009年2月26日)及び同一出願人による米国特許出願公開2009/0104201号(2009年4月23日)も参照。これらの各出願の開示事項は、本願に引用によって組み込まれる。
【0074】
[リシルオキシダーゼ型の酵素の活性の調節因子]
リシルオキシダーゼ型の酵素の活性の調節因子は、活性化因子(アゴニスト)及び阻害因子(アンタゴニスト)の両方を含み、種々のスクリーニングアッセイを使用することによって選択することができる。1つの実施形態において、調節因子は、テスト化合物がリシルオキシダーゼ型の酵素に結合するか否かを決定することによって同定することができる。つまり、結合が生じる場合には、その化合物は候補調節因子である。任意的に、そのような候補調節因子に対して追加のテストを実行することができる。あるいは、候補化合物をリシルオキシダーゼ型の酵素と接触させて、リシルオキシダーゼ型の酵素の生物学的な活性を分析することもできる。すなわち、リシルオキシダーゼ型の酵素の調節因子を変化させる化合物は、リシルオキシダーゼ型の酵素の調節因子である。一般的には、リシルオキシダーゼ型の酵素の生物学的な活性を減少させる化合物は、該酵素の阻害因子である。
【0075】
リシルオキシダーゼ型の酵素の活性の調節因子を同定する他の方法は、1つ以上のリシルオキシダーゼ型の酵素を含む細胞培養液の中で候補化合物をインキュベートして、細胞の1つ以上の生物学的な活性又は特徴を分析することを含む。培養液中において細胞の生物学的な活性又は特徴を変化させる化合物は、リシルオキシダーゼ型の酵素の活性の潜在的な調節因子である。分析することが可能な生物学的な活性は、例えば、リシンの酸化、過酸化物(過酸化水素)の生成、アンモニアの生成、リシルオキシダーゼ型の酵素のレベル、リシルオキシダーゼ型の酵素をコードするmRNAのレベル、及び/又は、リシルオキシダーゼ型の酵素に特異的な1つ以上の機能を含む。前述の分析の更なる実施形態において、候補化合物との接触が無い場合には、1つ以上の生物学的な活性又は細胞の特徴が、1つ以上のリシルオキシダーゼ型の酵素のレベル又は活性と相関される。例えば、生物学的な活性は、移動、化学走性、上皮から間葉への移行、又は、間葉のから上皮への移行などの細胞の機能であり得るし、変化は、1つ以上のコントロールないしは対照サンプル(複数)との比較によって検出される。例えば、ネガティブコントロールのサンプルは、候補化合物が添加されているがリシルオキシダーゼ型の酵素のレベルが減少している培養液か、又は、リシルオキシダーゼ型の酵素の量がテスト培養液と同一(ただし、候補化合物は添加しない)の培養液を含み得る。いくつかの実施形態において、異なるレベルのリシルオキシダーゼ型の酵素を含む個別の培養液を、候補化合物と接触させる。生物学的な活性の変化が観察される場合や、培養液におけるリシルオキシダーゼ型の酵素のレベルが高くなるにつれて変化が大きくなる場合には、候補化合物は、リシルオキシダーゼ型の酵素の活性の調節因子として同定される。候補化合物がリシルオキシダーゼ型の酵素の活性化因子であるか、あるいは、阻害因子であるかの決定は、化合物によって誘導される表現型から明白であるかもしれないし、あるいは、1つ以上のリシルオキシダーゼ型の酵素の酵素活性に対する候補化合物の効果のテストなどの更なる分析を必要とするかもしれない。
【0076】
生化学的に又は組み換え的にリシルオキシダーゼ型の酵素を取得するための方法、及び、上述のようなリシルオキシダーゼ型の酵素の活性の調節因子を同定する細胞培養方法・酵素分析方法は、本発明の分野において知られている。
【0077】
リシルオキシダーゼ型の酵素の酵素活性は、いくつかの異なる方法によって分析することができる。例えば、リシルオキシダーゼの酵素活性は、過酸化水素、アンモニウムイオン、及び/又は、アルデヒドの生成を検出すること、及び/又は、定量すること、リシンの酸化、及び/又は、コラーゲンのクロスリンクを分析すること、あるいは、細胞の増殖能力、細胞接着、細胞の成長又は転移性の成長を測定することによって評価することができる。例えば、Trackman et al., (1981) Anal. Biochem. 113:336-342; Kagan et al., (1982) Meth. Enzymol. 82A:637-649; Palamakumbura et al., (2002) Anal. Biochem. 300:245-251; Albini et al., (1987) Cancer Res. 47:3239-3245; Kamath et al., (2001) Cancer Res. 61:5933-5940; 米国特許4,997,854号、及び、米国特許公開2004/0248871号参照。
【0078】
テスト化合物は、例えば、小有機化合物(small organic compounds:例えば、約50Da及び約2,500Daの間の分子量を有する有機分子)、核酸又はタンパク質を含むが、これらに限定されない。化合物又は多数の(ないし複数の)化合物は、化学的に合成することもできるし、微生物学的に生成することもできる、そして/又は、例えば、サンプル(例えば、植物、動物又は微生物からの細胞抽出液)に含まれている。更に、化合物(複数)は、本発明の分野において知られているかもしれないが、しかしながら、リシルオキシダーゼ型の酵素の活性を調節することが可能であることは未だに知られていない。リシルオキシダーゼ型の酵素の調節因子について分析するための反応混合溶液は、無細胞抽出液であり得るし、又は、細胞培養液や組織培養液を含み得る。複数ないし多数の化合物は、例えば、反応混合溶液に添加すること、細胞培養メディウムに添加すること、細胞に注射すること、又は、遺伝形質転換動物に投与することができる。分析に採用する細胞又は組織は、例えば、細菌細胞、真菌細胞、昆虫細胞、脊椎動物細胞、哺乳類細胞、霊長類細胞、ヒト細胞でありえるし、あるいは、ヒト以外の遺伝形質転換動物に含まれうるし、遺伝形質転換動物から取得することもできる。
【0079】
いくつかの方法は、本発明の分野における通常の知識を有する者に、大きなライブラリを生成及びスクリーニングして、リシルオキシダーゼ型の酵素などのターゲットに対して特異的親和性を有する化合物を同定する方法として知られている。これらの方法は、無作為的に(randomised)ペプチドをファージから発現(displayed)させ、固定化レセプターを使用するアフィニティクロマトグラフィによってスクリーニングする、ファージディスプレイ法を含む。例えば、WO91/17271号、WO92/01047号、及び米国特許5,223,409号参照。他のアプローチにおいて、固体支持器(例えば、「チップ」)に固定されるポリマーの組み合わせ的なライブラリは、フォトリソグラフィーを使用して合成される。例えば、米国特許5,143,854号、WO90/15070号及びWO92/10092号参照。固定化ポリマーを、ラベルしたレセプター(例えば、リシルオキシダーゼ型の酵素)と接触させ、支持器をスキャンして、ラベルの位置を決定し、レセプターに結合するポリマーを同定する。
【0080】
目的のポリペプチド(例えば、リシルオキシダーゼ型の酵素)のリガンドの結合を同定することに使用することが可能な連続的なセルロース膜支持器上でのペプチドライブラリの合成及びスクリーニングは、例えば、Kramer (1998) Methods Mol. Biol. 87: 25-39に記載されている。そのような分析によって同定されるリガンドは、目的のタンパク質の候補調節因子であり、更なるテストについて選択することができる。この方法は、例えば、目的のタンパク質の結合部位及び認識モチーフを決定することにも使用することができる。例えば、Rudiger (1997) EMBO J. 16:1501-1507及びWeiergraber (1996) FEBS Lett. 379:122-126参照。
【0081】
WO98/25146号は、複合体のライブラリを、所望の特徴(例えば、ポリペプチド又は細胞のレセプターにアゴニストとして作用する、結合する、拮抗阻害する能力)を有する化合物についてスクリーニングする更なる方法を開示する。そのようなライブラリにおける複合体は、テストする化合物、化合物の合成における少なくとも1つのステップを記録するタグ、レポーター分子による修飾に対して感受性のテザー(tether)を含む。テザーの修飾は、複合体が所望の特徴を有する化合物を含むことを示すことに使用される。タグは、そのような化合物の合成において少なくとも1つのステップを表すようにデコードされ得る。リシルオキシダーゼ型の酵素と相互作用する化合物を同定する他の方法は、例えば、インビトロにおけるファージディスプレイシステムを用いたスクリーニング、フィルタ結合アッセイ、及び、相互作用の「リアルタイム」測定(例えば、BIAcore装置(Pharmacia社)を使用する測定)である。
【0082】
これらの方法は全て、本願の記載に従って、リシルオキシダーゼ型の酵素又は関連するポリペプチドの活性化因子/アゴニスト及び阻害因子/アンタゴニストを同定することに使用することができる。
【0083】
リシルオキシダーゼ型の酵素の調節因子の合成に対する他のアプローチは、ペプチドの模倣(類似)体(mimetic analogs)を使用することである。模倣ペプチドの類似体は、例えば、天然に生じるアミノ酸を立体異性体(すなわち、D−アミノ酸)に置換することによって生成することができる。例えば、Tsukida (1997) J. Med. Chem. 40:3534-3541参照。更に、前駆模倣性構成物質(pro-mimetic components)をペプチドに取り込ませて、オリジナルのポリペプチドの一部を除去する際に喪失させることができる立体構造的(conformational)な特徴を再確立することができる。例えば、Nachman (1995) Regul. Pept. 57:359-370参照。
【0084】
ペプチド模倣物を構築する他の方法は、アキラル(achiral)のo−アミノ酸残基をペプチドに取り込み、脂肪族鎖のポリメチレンユニットによってアミド結合を置換することである。例えば、Banerjee (1996) Biopolymers 39:769-777参照。他のシステムにおける小(small)ペプチドホルモンのスーパーアクティブなペプチド模倣性の類似体は、Zhang (1996) Biochem. Biophys. Res. Commun. 224:327-331.に記載されている。
【0085】
リシルオキシダーゼ型の酵素の調節因子のペプチド模倣物は、連続的なアミドアルキル化に続いて、結果として生じる化合物をテストすること(例えば、結合の特徴及び免疫学的な特徴についてテストすること)を介して、ペプチド模倣物の組み合わせ的なライブラリの合成によっても同定することができる。ペプチド模倣性の組み合わせ的なライブラリの生成方法及び使用方法は記載されている。例えば、Ostresh, (1996) Methods in Enzymology 267:220-234 and Dorner (1996) Bioorg. Med. Chem. 4:709-715参照。更に、1つ以上のリシルオキシダーゼ型の酵素の3次元構造、及び/又は、結晶学的な構造を、1つ以上のリシルオキシダーゼ型の酵素の活性のペプチド模倣性阻害因子を設計することに使用することができる。Rose (1996) Biochemistry 35:12933-12944; Rutenber (1996) Bioorg. Med. Chem. 4:1545-1558。
【0086】
天然の生物学的なポリペプチドの活性を模倣する低分子量の合成分子の構造ベースのデザイン及び構造ベースの合成は、例えば、Dowd (1998) Nature Biotechnol. 16:190-195; Kieber-Emmons (1997) Current Opinion Biotechnol. 8:435-441; Moore (1997) Proc. West Pharmacol. Soc. 40:115-119; Mathews (1997) Proc. West Pharmacol. Soc. 40:121-125; 及び Mukhija (1998) European J. Biochem. 254:433-438に更に、記載されている。
【0087】
例えば、リシルオキシダーゼ型の酵素の基質又はリガンドとして作用することができる小(Small)有機化合物の模倣物を設計、合成、評価することが可能であることも、本発明の分野における通常の知識を有する者には、良く知られている。例えば、細胞毒性におけるタンパク質補助−関連性の多剤耐性を拮抗阻害することにおいて、ハパロシン(Hapalosin)のD−グルコースの模倣物が、ハパロシンと類似の効率を示したことが記載されている。Dinh (1998) J. Med. Chem. 41:981-987。
【0088】
リシルオキシダーゼ型の酵素の構造を検査して、例えば、小分子、ペプチド、ペプチド模倣物及び抗体などの調節因子の選択をガイドすることができる。リシルオキシダーゼ型の酵素の構造上の特徴は、リシルオキシダーゼ型の酵素のリガンド、基質、結合パートナー又はレセプターに結合するあるいは、それらとして機能する天然・合成分子を同定することに役立てることができる。例えば、Engleman (1997) J. Clin. Invest. 99:2284-2292参照。例えば、リシルオキシダーゼ型の酵素の構造上のモチーフの折り畳み構造シミュレーション及びコンピュータリデザインを、適切なコンピュータプログラムを使用して実行することができる。Olszewski (1996) Proteins 25:286-299; Hoffman (1995) Comput. Appl. Biosci. 11:675-679。タンパク質の折り畳み構造のコンピュータモデリングを、詳細なペプチド及びタンパク質構造の構造的解析及びエネルギー的解析に使用することができる。Monge (1995) J. Mol. Biol. 247:995-1012; Renouf (1995) Adv. Exp. Med. Biol. 376:37-45。適切なプログラムを、相補的なペプチド配列についてのコンピュータ補助的な検査を使用して、リガンド及び結合パートナーと相互作用する部位(リシルオキシダーゼ型の酵素上の部位)の同定に使用することができる。Fassina (1994) Immunomethods 5:114-120.タンパク質及びペプチドのデザインのための更なるシステムは、例えば、Berry (1994) Biochem. Soc. Trans. 22:1033-1036; Wodak (1987), Ann. N.Y. Acad. Sci. 501:1-13;及び Pabo (1986) Biochemistry 25:5987-5991に記載されている。上述の構造解析から得られる結果は、例えば、1つ以上のリシルオキシダーゼ型の酵素の活性の調節因子として機能する有機分子、ペプチド及びペプチド模倣物の調製に使用することができる。
【0089】
リシルオキシダーゼ型の酵素の阻害因子は、競合的な阻害因子、不競合的(uncompetitive)な阻害因子、混合型の阻害因子、又は、非競合的な阻害因子であり得る。競合的な阻害因子は、しばしば、基質に対する構造上の類似性を有しており、通常、活性部位に結合し、そして、基質濃度が低ければ低いほど有効である。競合的な阻害因子の存在下では、Kが明確に増加する。不競合的な阻害因子は、一般的には、酵素−基質複合体、あるいは、基質が活性部位に結合して活性部位を歪ませることができた後に利用可能になる部位に結合する。不競合的な阻害因子の存在下では、K及びVmaxは両方ともに明確に減少し、基質濃度は阻害に対して、ほとんど、又は、全く影響を有さない。混合型の阻害因子は、フリー状態の酵素と酵素−基質複合体との両方に結合することが可能であり、基質結合と触媒活性との両方に影響を及ぼす。非競合的な阻害は、阻害因子が、酵素と、酵素−基質複合体とに同等の親和性(avidity)で結合し、基質濃度によっては阻害が影響を受けない混合型の阻害の特別なケースである。非競合的な阻害因子は、一般的には、活性部位の外側の領域において酵素に結合する。酵素阻害についての更なる詳細な説明は、例えば、上述のVoet et al. (2008)を参照。天然の基質(例えば、コラーゲン、エラスチン)がインビボにおいて通常時に過剰に(インビボにおいて達成され得るいずれかの阻害因子の濃度と比較して)存在するリシルオキシダーゼ型の酵素などの酵素に関しては、阻害が基質濃度と独立しているので、非競合的な阻害因子が有利である。
【0090】
[抗体]
ある実施形態において、リシルオキシダーゼ型の酵素の調節因子は抗体である。更なる実施形態において、抗体は、リシルオキシダーゼ型の酵素の活性の阻害因子である。
【0091】
本願において使用される用語「抗体」とは、抗原決定部位に特異的に結合するペプチド配列(例えば、可変領域配列)を含む、単離された又は組み換えのポリペプチド結合剤を意味する。当該用語は、最も広義の意味で使用され、特に、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒトに適合化させた抗体(ヒト化抗体)、キメラ抗体、ナノボディ、ダイアボディ、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、そして、抗体フラグメント(Fv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)及びFabを含み、所望の生物学的な活性を示す限りそれらに限定されない)をカバーする。用語「ヒト抗体」とは、ヒトに由来する(origin)配列(ありうる非ヒトCDR領域を除く)を含む抗体を意味し、免疫グロブリン分子の全長構造が存在することを意味するのではなく、抗体がヒトに対して最小限の免疫原性の影響を有すること(すなわち、それ自体に対し、抗体の生成が誘導されないこと)のみを意味する。
【0092】
「抗体フラグメント」とは、全長抗体の部分(例えば、全長抗体の抗原結合領域又は可変領域)を含む。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFvフラグメント、ダイアボディ、直線状の抗体(Zapata et al. (1995) Protein Eng. 8(10):1057-1062)、単一鎖の抗体分子、及び抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体を含む。抗体のパパイン消化は、2つの同一抗原結合性フラグメント(「Fab」フラグメントと称され、各々、単一の抗原結合部位を有する)と、残りの「Fc」フラグメントとを生成し、該記号は容易に結晶化される能力を反映する指標である。ペプシン処理は、2つの抗原を組み合わせる部位(sites)を有して、なお抗原をクロスリンクすることが可能なF(ab’)フラグメントを生成する。
【0093】
「Fv」は、完全な抗原認識−かつ結合−部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、堅固で非共有結合的に会合した1つの重鎖及び1つの軽鎖の可変ドメインの二量体から成る。各可変ドメインの3つのCDRSが相互作用してV−V二量体の表面上の抗原結合部位を定義するのは、この構成においてである。要するに、6つのCDRsが、抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、一般的には、その親和性はFフラグメント全体の親和性よりも低いが、単一の可変ドメイン(あるいは、抗原に特異的な6つのCDRsの内の3つのみを含む単離されたVH又はVL領域)であっても、抗原を認識し、かつ、結合する能力を有する。
【0094】
「Fab」フラグメントは、重鎖及び軽鎖の可変領域に加えて、軽鎖の定常ドメインと、重鎖の第1の定常ドメイン(CH)とを更に含む。Fabフラグメントは、そもそもは、抗体のパパイン消化の後に観察された。Fab’フラグメントは、F(ab’)フラグメントが重鎖CHドメインのカルボキシ末端にいくつかの追加の残基(抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む)を含むという点で、Fabフラグメントと異なる。F(ab’)フラグメントは、ジスルフィド結合によってヒンジ領域の近隣にて結合した2つのFabフラグメントを含み、そもそもは、抗体のペプシン消化の後に観察された。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(又は複数)が自由なチオール基を有するFab’フラグメントに関における本願の記号である。抗体フラグメントの他の化学カップリングも知られている。
【0095】
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」には、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2つの明確な別個のタイプ(カッパ(κ)及びラムダ(λ)と称される)の内の一方を割り当てることができる。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンを5つの主要な区分クラス(IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM)に割り当てることができ、これらの内のいくつかは、更に、サブクラス(アイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)に区分することができる。
【0096】
「単一鎖のFv」、「sFv」ないし「scFv」抗体フラグメントは、抗体のV及びVドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。いくつかの実施形態において、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーを更に含み、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能とする。sFvについての総論(レビュー)に関しては、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113 (Rosenburg and Moore eds.) Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照。
【0097】
用語「ダイアボディ(diabodies)」とは、2つの抗原結合部位を有する小さい(small)抗体フラグメントを意味し、当該フラグメントは、同一のポリペプチド鎖(V−V)において軽鎖可変ドメイン(V)に結合した重鎖可変ドメイン(V)を含む。同一鎖上の2つのドメインをペアリングするには短すぎるリンカーを使用することによって、該ドメインは他の鎖の相補的なドメインとペアにさせられ、2つの抗原結合部位が作製される。ダイアボディについては、例えば、EP404,097、WO93/11161及びHollinger et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448に更に開示される。
【0098】
「単離された」抗体は、同定されており、そして、天然の環境の構成要素から分離された、及び/又は、回収されたものである。天然の環境の構成要素は、酵素、ホルモン、及び、他のタンパク質性の又は非タンパク質性の溶質を含むことができる。いくつかの実施形態において、単離された抗体は、(1)ローリー法によって決定される抗体の重量が95%を上回るまで精製される(例えば、99%重量を上回るまで精製される)か、(2)例えば、スピニングカップ配列決定装置(Spinning Cup Sequenator)の使用によって、N−末端の又は内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を取得するのに十分な度合いまで精製されるか、あるいは、(3)還元条件下又は非還元条件下でのゲル電気泳動(例えば、SDS−PAGE)によって均質化して、クーマシーブルー染色又は銀染色によって検出して精製される。用語「単離された抗体」とは、抗体の天然の環境における少なくとも1つの構成要素が存在しない、組み換え細胞内のインサイチュウの抗体を含む。ある実施形態において、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0099】
いくつかの実施形態において、抗体は、ヒトに適合化された抗体(ヒト化抗体)又はヒト抗体である。ヒトに適合化された抗体は、レシピエントの相補性決定領域(complementary determining region:CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性及びキャパシティを有するマウス、ラット又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。従って、ヒトに適合化された形状の非ヒト(例えば、ネズミ)抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含むキメラの免疫グロブリンである。非ヒトの配列は、主に、可変領域、特に、相補性決定領域(complementarity-determining regions:CDRs)における可変な領域に位置する。いくつかの実施形態において、ヒト免疫グロブリンのFv構造(フレームワーク)の残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒトに適合化させた抗体は、レシピエント抗体、導入したCDR又はフレームワーク配列のいずれにも発見されない残基を含むこともできる。ある実施形態において、ヒトに適合化された抗体は、全ての可変ドメインの内で、実質的に少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインを含み、全ての(又は実質的に全ての)CDRsは、非ヒト免疫グロブリンのCDRsに対応し、そして、全ての(又は実質的に全ての)フレームワーク領域は、ヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のものである。本願の開示の目的において、ヒトに適合化された抗体は、免疫グロブリンフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)又は抗体の他の抗原結合性サブシーケンスなど)も含むことができる。
【0100】
ヒトに適合化された抗体は、少なくとも免疫グロブリン定常領域(Fc)の部分(典型的には、ヒト免疫グロブリンの部分)も含み得る。例えば、Jones et al. (1986) Nature 321:522-525; Riechmann et al. (1988) Nature 332:323-329; and Presta (1992) Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596参照。
【0101】
非ヒト抗体をヒトに適合化させる方法は、本発明の分野において知られている。一般的には、ヒトに適合化された抗体は、ヒトでないソース由来の抗体に導入される1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトのアミノ酸残基は、しばしば、「インポート」又は「ドナー」残基と称され、典型的には「インポート」又は「ドナー」可変ドメインから取得される。例えば、ヒトへの適合化は、本質的には、Winterらの方法に従って、げっ歯類CDRs又はCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置き換えることによって実行することができる。例えば、上述のJones et al.、上述のRiechmann et al.、及びVerhoeyen et al. (1988) Science 239:1534-1536参照。従って、そのような「ヒトに適合化された」抗体はキメラ抗体(米国特許4,816,567号)を含み、実質的には、無処置のヒト可変ドメインよりも少ない部分が非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている。ある実施形態において、ヒトに適合化された抗体は、いくつかのCDR残基及び任意的にいくつかのフレームワーク領域の残基が、げっ歯類抗体(例えば、ネズミモノクローナル抗体)における類似の部位由来の残基によって置換されるヒト抗体である。
【0102】
ヒト抗体は、例えば、ファージディスプレイライブラリを使用することによって生成することもできる。Hoogenboom et al. (1991) J. Mol. Biol, 227:381; Marks et al. (1991) J. Mol. Biol. 222:581. ヒトモノクローナル抗体を調製する他の方法は、Cole et al. (1985) "Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy," Alan R. Liss, p. 77 及び Boerner et al. (1991) J. Immunol. 147:86-95に記載されている。
【0103】
ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座(loci)を、内来性の免疫グロブリン遺伝子が部分的に又は完全に失活している遺伝形質転換動物(例えば、マウス)に導入することによって作製することができる。免疫学的なチャレンジの際に、ヒト抗体の生成が観察され、全ての観点(遺伝子再構成、アッセンブリー、抗体レパートリーを含む)においてヒトで見られるものと非常に似ている。このアプローチは、例えば、米国特許5,545,807号;5,545,806号;5,569,825号;5,625,126号;5,633,425号;5,661,016号、及び、以下の科学的刊行物:Marks et al., (1992) Bio/Technology 10:779-783 (1992); Lonberg et al., (1994) Nature 368: 856-859; Morrison (1994) Nature 368:812-813; Fishwald et al., (1996) Nature Biotechnology 14:845-851; Neuberger (1996) Nature Biotechnology 14:826;及び Lonberg et al., (1995) Intern. Rev. Immunol. 13:65-93に記載されている。
【0104】
抗体は、公知のセレクション方法、及び/又は、上述のような突然変異誘発方法を使用して親和性を成熟させることができる。いくつかの実施形態において、親和性が成熟した抗体は、その成熟抗体を調製するソースである出発時の抗体(一般的には、ヒトに適合化させたネズミ、ウサギ、鶏、あるいはヒトの抗体)の5倍以上、10倍以上、20倍以上、又は、30倍以上の親和性を有する。
【0105】
抗体は、二重特異性の抗体でもあり得る。二重特異性の抗体はモノクローナルであり、少なくとも2つの異なる抗原への結合特異性を有するヒト抗体又はヒトに適合化させた抗体であり得る。本願のケースでは、2つの異なる結合特異性を、2つの異なるリシルオキシダーゼ型の酵素、又は、単一のリシルオキシダーゼ型の酵素上の2つの異なるエピトープに向けさせることができる。
【0106】
本願で開示した抗体は、免疫複合体(コンジュゲート)でもあり得る。そのような免疫複合体は、第2の分子(レポーターなど)にコンジュゲートした抗体(例えば、リシルオキシダーゼ型の酵素にコンジュゲートした抗体)を含む。免疫複合体は、化学療法的な薬剤、トキシン(例えば、細菌オリジン、真菌オリジン、植物オリジン又は動物オリジンの酵素的に活性のトキシン、あるいは、それらのフラグメント)、放射性同位体(即ち、放射性コンジュゲート抗体(radioconjugate))などの細胞毒性の薬剤にコンジュゲートした抗体を含むこともできる。
【0107】
「特異的に結合する」抗体、あるいは、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープに「特異的な」抗体は、他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープへ実質的に結合すること無く、特定のポリペプチド又はエピトープに結合するものである。いくつかの実施形態において、本願に開示の抗体は、100nM以下、任意的に10nM未満、任意的に1nM未満、任意的に0.5nM未満、任意的に0.1nM未満、任意的に0.01nM未満、又は、任意的に0.005nM未満の解離定数(Kd)で、モノクローナル抗体の形態、scFv、Fab又は他の抗体の形態において、約4℃、25℃、37℃又は42℃の温度で、そのターゲットへ特異的に結合する。
【0108】
ある実施形態において、本願に開示の抗体は、リシルオキシダーゼ型の酵素における1つ以上のプロセッシング部位(例えば、タンパク分解性の切断部位)へ結合し、それによって、触媒作用的に活性の酵素への酵素前駆体又はプレプロ酵素(preproenzyme)のプロセッシングを効果的にブロッキングして、リシルオキシダーゼ型の酵素の活性を減少させる。
【0109】
ある実施形態において、本願に開示の抗体は、他のリシルオキシダーゼ型の酵素、例えば、LOXL1、LOXL3、及び、LOXL4への結合親和性よりも、例えば、10倍の、少なくとも100倍の、少なくとも1000倍さえも上回る、より大きな結合親和性で、ヒトLOX、及び/又は、ヒトLOXL2へ結合する。
【0110】
ある実施形態において、本願に開示の抗体は、リシルオキシダーゼ型の酵素の触媒作用性の活性の非競合的な阻害剤である。ある実施形態において、本願に開示の抗体は、リシルオキシダーゼ型の酵素の触媒ドメインの外側に結合する。ある実施形態において、本願に開示の抗体は、LOXL2のSRCR4ドメインに結合する。ある実施形態において、LOXL2のSRCR4ドメインに結合し、非競合的な阻害剤として機能する抗LOXL2抗体は、同一出願人による米国特許出願US2009/0053224号及びUS2009/0104201号(特表2010−535219など)に記載のAB0023抗体である。ある実施形態において、LOXL2のSRCR4ドメインに結合し、非競合的な阻害剤として機能する抗LOXL2抗体は、同一出願人による米国特許出願US2009/0053224号及びUS2009/0104201号に記載のAB0024抗体(AB0023抗体のヒトバージョン)である。
【0111】
任意的に、本願に開示の抗体は、リシルオキシダーゼ型の酵素に結合するだけでなく、例えば、インテグリンβ1、あるいは、他の細胞受容体やタンパク質を介してリシルオキシダーゼ型の酵素の取り込み又は内部移行を減少させるか阻害する。そのような抗体は、例えば、細胞外マトリックスタンパク質、細胞受容体、及び/又は、インテグリンに結合することができる。
【0112】
リシルオキシダーゼ型の酵素を認識する抗体の例、及び、リシルオキシダーゼ型の酵素に関連する更なる開示は、同一出願人による米国特許出願US2009/0053224号及びUS2009/0104201号(特表2010−535219など)に提供される。当該出願の開示は、リシルオキシダーゼ型の酵素に対する抗体、それらの製造、及び、それらの使用を記載する目的のために引用によって本願に組み込まれる。
【0113】
[リシルオキシダーゼ型の酵素の発現を調節するポリヌクレオチド]
アンチセンス
リシルオキシダーゼ型の酵素の調節(例えば、阻害)には、リシルオキシダーゼ型の酵素の発現を転写レベル又は翻訳レベルで下方制御することによって影響を与えることができる。そのような調節方法は、リシルオキシダーゼ型の酵素をコードするmRNA転写産物と配列特異的に結合することが可能なアンチセンスオリゴヌクレオチド又はアンチセンスポリヌクレオチドの使用を含む。
【0114】
ターゲットmRNA分子へのアンチセンスオリゴヌクレオチド(又はアンチセンスオリゴヌクレオチド類似体)の結合は、細胞内のRNaseHによるハイブリッドの酵素的切断を導くことができる。あるケースにおいて、アンチセンスRNA−mRNAのハイブリッドの形成は、正確なスプライシングと干渉する。他のケースにおいて、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体のターゲットmRNAへの結合は、(例えば、立体障害によって)リボソーム結合を阻止して、mRNAの翻訳を阻止することができる。
【0115】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、任意のタイプのヌクレオチドサブユニット(例えば、DNA、RNA、ペプチド核酸(peptide nucleic acids:PNA)などの類似体、又は、これらの混合物)を含むことができる。RNAオリゴヌクレオチドは、ターゲットmRNA分子とより安定な二本鎖を形成するが、ハイブリダイズしていないオリゴヌクレオチドは、他のタイプのオリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド類似体よりも細胞内的に不安定である。このことは、この目的のために設計されたベクターを使用して、細胞内でRNAオリゴヌクレオチドを発現することによって対抗することができる。このアプローチは、例えば、豊富(abundant)で長命のタンパク質をコードするmRNAをターゲットとする場合に、使用することができる。
【0116】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを設計する際に、(i)ターゲット配列へ結合するのに十分な特異性;(ii)溶解度;(iii)細胞内ヌクレアーゼ及び細胞外ヌクレアーゼに対する安定性;(iv)細胞膜を透過する能力;(v)低毒性(生命体の処置に使用する場合)、を含む更なる考察を考慮することができる。
【0117】
ターゲットmRNAに関する最高の予測的結合親和性を有するオリゴヌクレオチド配列を同定するためのアルゴリズムは、熱力学的な周期をもたらすターゲットmRNAとオリゴヌクレオチドの両方のエネルギーの構造上の変化に基づいて、利用可能である。例えば、Walton et al., (1999) Biotechnol. Bioeng. 65:1-9は、ウサギβ−グロブリン(RBG)及びマウス腫瘍壊死因子−α(tumor necrosis factor-α:TNFα)転写産物に向けられたアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計するそのような方法を使用した。同じ研究グループは、細胞培養液中の3つのモデルターゲットmRNAs(ヒト乳酸脱水素酵素A及びB、そしてラットgp130)に対する合理的に選択されたオリゴヌクレオチドのアンチセンス活性がほとんど全てのケースにおいて有効であったことを証明した、ということ報告している。これには、3つの異なるターゲットに対する、2つの細胞種における、リン酸ジエステル化学及びホスホロチオエート化学の両方によって作製されたオリゴヌクレオチドを使用するテストが含まれていた。
【0118】
更に、インビトロシステムを使用して特定のオリゴヌクレオチドの効率を設計及び予測するいくつかのアプローチが利用可能である。例えば、Matveeva et al., (1998) Nature Biotechnology 16:1374-1375参照。
【0119】
本願に開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチド、例えば、10と15の間、15と20の間、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも22、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40ヌクレオチドのポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド類似体を含む。そのようなポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド類似体は、インビボにおいて、生理学的な条件の下で、リシルオキシダーゼ型の酵素(例えば、LOX又はLOXL2)をコードするmRNAを用いて、アニール又はハイブリダイズする(すなわち、塩基の相補性に基づいて二本鎖構造を形成する)ことができる。
【0120】
本願に開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞又は組織に投与された核酸構築物から発現させることができる。任意的に、アンチセンス配列の発現を、誘導性のプロモーターによってコントロールして、細胞又は組織におけるアンチセンス配列の発現のオンとオフをスイッチすることができる。あるいは、アンチセンスオリゴヌクレオチドを化学的に合成して、例えば、医薬組成物の一部として、細胞又は組織に直接的に投与することができる。
【0121】
アンチセンステクノロジーは、高度に正確なアンチセンスデザインアルゴリズムの生成、及び、広範囲にわたる種々のオリゴヌクレオチド輸送システムの生成を導く。それによって、本発明の分野において通常の知識を有する者は、公知の配列の発現の下方制御に適したアンチセンスアプローチをデザインして、実行することができる。アンチセンステクノロジーに関連する更なる情報は、例えば、Lichtenstein et al., "Antisense Technology: A Practical Approach," Oxford University Press, 1998を参照。
【0122】
小(Small)RNA及びRNAi
リシルオキシダーゼ型の酵素の活性の阻害に関する他の方法は、RNA干渉(RNA interference:RNAi)、すなわち、ターゲットmRNAに対して相同性であり、その分解に導く二本鎖の低分子干渉RNA(small interfering RNA:siRNA)分子を利用するアプローチである。Carthew (2001) Curr. Opin. Cell. Biol. 13:244-248.
【0123】
RNA干渉は、典型的には、2ステップのプロセスである。第1のステップ(開始ステップと称される)において、インプットdsRNAは、21−23ヌクレオチド(nt)の低分子干渉RNAs(siRNAs)に消化される(おそらく、二本鎖特異的リボヌクレアーゼのRNaseIIIファミリーのメンバーであり、ATP依存的な様式で二本鎖RNAを切断するダイサー(Dicer)の作用による)。インプットRNAは、例えば、直接的に、あるいは、導入遺伝子又はウィルスを介して送達することができる。連続的な切断イベントは、RNAを19−21bpの二本鎖(siRNA)(各々、2−ヌクレオチドの3’オーバーハングを有する)に分解する。Hutvagner et al., (2002) Curr. Opin. Genet. Dev. 12:225-232; Bernstein (2001) Nature 409:363-366.
【0124】
第2のステップ(エフェクターステップ)において、siRNA二本鎖をヌクレアーゼ複合体に結合させて、RNA誘導性サイレンシング複合体(RNA-induced silencing complex:RISC)を形成する。siRNA二本鎖のATP依存性アンワインディングは、RISCの活性化に必要である。次に、活性化RISC(単一のsiRNA及びRNaseを含む)は、塩基対形成性の相互作用によって相同性の転写産物をターゲットし、典型的にはmRNAをsiRNAの3’末端から開始するおよそ12ヌクレオチドのフラグメントに切断する。Hutvagner et al., supra; Hammond et al. (2001) Nat. Rev. Gen. 2:110-119; Sharp (2001) Genes. Dev. 15:485-490.
【0125】
RNAi及び関連する方法は、Tuschl (2001) Chem. Biochem. 2:239-245; Cullen (2002) Nat. Immunol. 3:597-599;及びBrantl (2002) Biochem. Biophys. Acta. 1575:15-25にも記載されている。
【0126】
本願の開示の使用に適するリシルオキシダーゼ型の酵素の活性の阻害剤としてのRNAi分子の合成に関する手法の例は、AAジヌクレオチド配列についての開始コドンの下流の適切なmRNA配列をスキャンすることである。各AA(プラス下流の(すなわち、3’に隣接する)19ヌクレオチド)は、潜在的なsiRNAターゲット部位として記録される。mRNAの非翻訳領域(untranslated regions:UTRs)、及び/又は、翻訳開始複合体に結合するタンパク質は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を干渉することができるので、コード領域におけるターゲット部位が好ましい。前記、Tuschl (2001)参照。しかしながら、GAPDH遺伝子の5’UTRに向けられたsiRNAが細胞のGAPDHmRNAの約90%減少を媒介し、完全にタンパク質レベルを消失させたケース(www.ambion.com/techlib/tn/91/912.html)において証明されているように、非翻訳領域に指向されたsiRNAsも有効であり得ることも分かるだろう。一度、上述のように、潜在的なターゲット部位のセットが取得されると、潜在的なターゲットの配列は、配列アライメントソフトウェア(NCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)において利用可能なBLASTソフトウェアなど)を使用して、適切なゲノムデータベース(例えば、ヒト、マウス、ラットなど)と比較される。他のコード配列に対して顕著なホモロジーを示す潜在的なターゲット部位は、拒絶される。
【0127】
ターゲットとして認定された配列は、siRNA合成の鋳型として選択される。選択された配列は、G/C含有量が55%より高いものと比較して、遺伝子サイレンシングを媒介することに、より有効であることが示されているので、G/C含有量が低いものを含むことができる。いくつかのターゲット部位は、ターゲット遺伝子の長さに関する評価に沿って選択することができる。選択したsiRNAsのより良い評価のために、ネガティブコントロールが組み合わせて使用される。ネガティブコントロールsiRNAは、テストsiRNAとしてのヌクレオチド組成物と同一の配列を含むことができるが、ゲノムに対する顕著なホモロジーが欠落する。従って、例えば、siRNAのスクランブル化したヌクレオチド配列を使用することができる(ただし、それは、他の遺伝子に対する顕著なホモロジーを示さないものとする)。
【0128】
本願に開示のsiRNA分子は、一度宿主細胞に導入されるとsiRNA転写産物の安定な発現を促進することが可能な発現ベクターから転写することができる。これらのベクターは遺伝子操作されて、インビボにおいて遺伝子特異的なサイレンシングを実行することが可能なsiRNA分子に変化する低分子ヘアピン型RNAs(small hairpin RNAs:shRNAs)を発現する。例えば、Brummelkamp et al., (2002) Science 296:550-553; Paddison et al., (2002) Genes Dev. 16:948-958; Paul et al., (2002) Nature Biotech. 20:505-508; Yu et al., (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:6047-6052参照。
【0129】
低分子ヘアピン型RNAs(shRNAs)は、二本鎖のヘアピンループ構造を形成する一本鎖のポリヌクレオチドである。二本鎖の領域は、リシルオキシダーゼ型の酵素(例えば、LOX又はLOXL2mRNA)をコードするポリヌクレオチドなどのターゲット配列にハイブリダイズすることが可能な第1の配列と、第1の配列に相補的な第2の配列とから形成される。第1及び第2の配列は二本鎖の領域を形成するが、第1及び第2の配列の間に存在する非塩基対状態のリンカーヌクレオチドは、ヘアピンループ構造を形成する。shRNAの二本鎖の領域(stem)は、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含むことができる。
【0130】
shRNA分子は、2〜bpオーバーハング(例えば、3’UU−オーバーハング)などの任意的なヌクレオチドオーバーハングを有することができる。種々のバリエーションがあり得るが、ステム(stem)の長さは、典型的には、およそ15〜49bp、およそ15〜35bp、およそ19〜35bp、およそ21〜31bp、又は、およそ21〜29bpにわたり、そして、ループのサイズは、およそ4〜30bp、例えば、約4〜23bpの範囲であり得る。
【0131】
細胞内のshRNAsの発現に関して、プラスミドベクターは、プロモーター(例えば、RNAポリメラーゼIIIH1−RNAプロモーター又はU6RNAプロモーター)と、shRNAをコードする配列の挿入のためのクローニング部位と、転写終結シグナル(例えば、4−5個のアデニン−チミジン塩基対の伸長)とを含むものを採用することができる。一般的には、ポリメラーゼIIIプロモーターは、良く定義された転写開始部位及び転写終結部位を有し、転写産物にはポリ(A)テイル(tails)が無い。これらのプロモーターの終結シグナルは、ポリチミジントラクトによって定義され、典型的には、転写産物は2番目にコードされるウリジンの後で切断される。この位置での切断は、発現したshRNAの中に、合成siRNAsの3’オーバーハングに類似する3’UUオーバーハングを生成する。哺乳類の細胞内でshRNAを発現する更なる方法は、上記文献に記載されている。
【0132】
適切なshRNA発現の例は、pSUPER(登録商標、Oligoengine, Inc., Seattle, WA)であり、良く定義された転写開始部位を有するポリメラーゼ−IIIH1−RNA遺伝子プロモーターと、5つの連続的なアデニン−チミジンペアから成る終了シグナルとを含む。上記のBrummelkamp et al.参照。転写産物は、2番目(終結配列をコードする5つの内の2番目)のウリジンの後の部位で切断され、合成siRNAsの終端に似ており、ヌクレオチドオーバーハングも含む転写産物を生成する。shRNAに転写されるべき配列は、mRNAターゲット(例えば、リシルオキシダーゼ型の酵素をコードするmRNA)の一部分に相補的な第1の配列(第1の配列とは逆向きで相補的な配列を含む第2の配列から短いスペーサーによって隔てられる)を含む転写産物を生成するようにベクターにクローン化される。結果として生じる転写産物は、自身に向かって折れ曲がり、ステム−ループ構造を形成して、RNA干渉(RNAi)を媒介する。
【0133】
他の適切なsiRNA発現ベクターは、別個のpolIIIプロモーターの制御下でセンスsiRNA及びアンチセンスsiRNAをコードする。Miyagishi et al., (2002) Nature Biotech. 20:497-500. このベクターによって生成したsiRNAは、5つのチミジン(T5)の終了シグナルも含む。
【0134】
siRNAs、shRNAs、及び/又は、それらをコードするベクターは、種々の方法(例えば、リポフェクション)によって細胞に導入することができる。ベクター媒介性の方法も、開発されている。例えば、siRNA分子を、レトロウィルスを使用して細胞に送達することができる。レトロウィルスを用いた運搬は、安定な「ノックダウン」細胞を、効率的に、均一に、そして、即座に選択するので、レトロウィルスを使用するsiRNAの運搬は、あるシチュエーションにおいて利点を提供する。Devroe et al., (2002) BMC Biotechnol. 2:15.
【0135】
最近の科学的刊行物によれば、そのような短い二本鎖RNA分子によるターゲットmRNAの発現を阻害する効果が確認されており、そのような分子の治療上の潜在的可能性が明確に示されている。例えば、RNAiは、C型肝炎ウイルスに感染した細胞(McCaffrey et al., (2002) Nature 418:38-39)、HIV−1に感染した細胞(Jacque et al., (2002) Nature 418:435-438)、頸部の癌細胞(Jiang et al., (2002) Oncogene 21:6041-6048)、及び、白血病性の細胞(Wilda et al., (2002) Oncogene 21:5716-5724)における阻害に利用されている。
【0136】
[リシルオキシダーゼ型の酵素の発現を調節する方法]
リシルオキシダーゼ型の酵素の活性を調節する他の方法は、それをコードする遺伝子の発現を調節することであり、遺伝子発現が抑制される場合にはより低いレベルの活性を導き、遺伝子発現が活性化される場合にはより高いレベルの活性を導く。細胞における遺伝子発現の調節は、いくつかの方法によって達成することができる。
【0137】
例えば、鎖置換(strand displacement)又は三重らせんの形成によってゲノムDNA(例えば、リシルオキシダーゼ型遺伝子の調節領域)に結合するオリゴヌクレオチドは、転写をブロックして、リシルオキシダーゼ型の酵素の発現を妨げることができる。この点において、オリゴヌクレオチドがターゲットの片方の鎖の上のポリプリン伸長と、他の鎖の上のホモプリン配列とを認識する、いわゆる「スイッチバック(switch back)」化学リンキングの使用が記載されている。三重らせんの形成は、人工的な塩基を含むオリゴヌクレオチドを使用して取得することもでき、イオン強度及びpHに関して結合条件を延長することができる。
【0138】
リシルオキシダーゼ型の酵素をコードする遺伝子の転写の調節は、例えば、機能ドメイン及びDNA結合ドメインを含む融合タンパク質、又は、そのような融合タンパク質をコードする核酸を細胞に導入することによって達成することもできる。機能ドメインは、例えば、転写活性化ドメイン又は転写抑制ドメインであり得る。転写活性化ドメインの例は、VP16、VP64及びNF−κBのp65サブユニットを含み、転写抑制ドメインの例は、KRAB、KOX及びv−erbAを含む。
【0139】
ある実施形態において、そのような融合タンパク質のDNA−結合ドメイン部分は、リシルオキシダーゼ型の酵素をコードする遺伝子の中に、又は、近傍に、あるいは、そのような遺伝子の調節領域に結合する配列特異的DNA−結合ドメインである。DNA−結合ドメインは、遺伝子又は調節領域に、あるいは、それらの近傍の配列に自然に結合することもできるし、そのように結合するように(遺伝子)操作することもできる。例えば、DNA−結合ドメインは、リシルオキシダーゼ型の酵素をコードする遺伝子の発現を制御する、天然に生じるタンパク質から取得することができる。あるいは、DNA−結合ドメインを、(遺伝子)操作して、リシルオキシダーゼ型の酵素をコードする遺伝子の中に又は近傍に、あるいは、そのような遺伝子の調節領域の中から選択した配列に結合させることができる。
【0140】
この点に関して、ジンクフィンガー(Zinc Finger)タンパク質を選択したDNA配列に結合するように遺伝子操作することが可能であるならば、ジンクフィンガーDNA−結合ドメインは有用である。ジンクフィンガー結合ドメインは、1つ以上のジンクフィンガー構造を含む。Miller et al., (1985) EMBO J 4:1609-1614; Rhodes (1993) Scientific American, February: 56-65; 米国特許6,453,242号。典型的には、単一のジンクフィンガーは、長さが約30個のアミノ酸であり、4つの亜鉛配位性アミノ酸残基を含む。構造の研究は、限界構造性の(Canonical、C2H2)ジンクフィンガーモチーフが、αへリックス(一般的には、2つの亜鉛調節ヒスチジン残基を含む)に対向して備えられる、2つのβシート(一般的に2つの亜鉛配位システイン残基を含むβターンに保持される)を含むことを示す。
【0141】
ジンクフィンガーは、限界構造性のCジンクフィンガー(すなわち、亜鉛イオンが2つのシステイン残基と2つのヒスチジン残基とによって配位(coordinated)するもの)と、例えば、CHジンクフィンガー(亜鉛イオンが3つのシステイン残基と1つのヒスチジン残基とによって配位するもの)やCジンクフィンガー(亜鉛イオンが4つのシステイン残基によって配位するもの)などの非限界構造性の(non-canonical)ジンクフィンガーとの両方を含む。非限界構造性のジンクフィンガーは、システイン又はヒスチジン以外の他のアミノ酸が亜鉛を配位させる残基の1つに置換されたものも含むことができる。例えば、WO02/057293号(2002年7月25日)及びUS2003/0108880号(2003年6月12日)参照。
【0142】
ジンクフィンガー結合ドメインは、天然に生じるジンクフィンガータンパク質と比較して、新規の結合特異性を有するように遺伝子操作することができ、それによって、選択された配列に結合するように遺伝子操作されたジンクフィンガー結合ドメインの構築がもたらされる。例えば、Beerli et al., (2002) Nature Biotechnol. 20:135-141; Pabo et al., (2001) Ann. Rev. Biochem. 70:313-340; Isalan et al., (2001) Nature Biotechnol. 19:656-660; Segal et al., (2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12:632-637; Choo et al. (2000) Curr. Opin. Struct. Biol. 10:411-416参照。遺伝子操作方法は、合理的なデザインや、種々のタイプの経験的な選択方法を含むがそれらに限定されない。
【0143】
合理的なデザインは、例えば、三重の(又は四重の)ヌクレオチド配列や、個々のジンクフィンガーアミノ酸配列(三重又は四重のヌクレオチド配列の各々が、特定の三重又は四重の配列を結合するジンクフィンガーの1つ以上のアミノ酸配列と会合するもの)を含むデータベースの使用を含む。例えば、米国特許6、140,081号;6,453,242号;6,534,261号;6,610,512号;6,746,838号;6,866,997号;7,030,215号;7,067,617号;米国特許出願公開2002/0165356号;2004/0197892号;2007/0154989号;2007/0213269号;や国際特許出願公開WO98/53059号及びWO2003/016496号参照。
【0144】
選択方法の例は、ファージディスプレイ、相互作用トラップシステム、ハイブリッド選択システム及びツーハイブリッドシステムを含み、米国特許出願5,789,538号;5,925,523号;6,007,988号;6,013,453号;6,140,466号;6,200,759号;6,242,568号;6,410,248号;6,733,970号;6,790,941号;7,029,847号及び7,297,491号;そして、米国特許出願公開2007/0009948号及び2007/0009962号;WO98/37186号;WO01/60970号及びGB2,338,237号に開示される。
【0145】
ジンクフィンガー結合ドメインの結合特異性の増強は、例えば、米国特許6,794,136号(2004年9月21日)に記載されている。フィンガー構造内の(inter-finger)リンカー配列に関するジンクフィンガーの遺伝子操作方法についての更なる視点は、米国特許6,479,626号及び米国特許出願公開2003/0119023号に開示されている。Moore et al., (2001a) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:1432-1436; Moore et al., (2001b) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:1437-1441、及びWO01/53480も参照。
【0146】
遺伝子操作されたジンクフィンガーDNA−結合ドメインを含む融合タンパク質の使用の更なる詳細については、例えば、米国特許6,534,261号;6,607,882号;6,824,978号;6,933,113号;6,979,539号;7,013,219号;7,070,934号;7,163,824号及び7,220,719号において見られる。
【0147】
リシルオキシダーゼ型の酵素の発現を調節する更なる方法は、遺伝子、又は遺伝子の発現を調節する調節領域の何れかをターゲットとした突然変異誘発を含む。ヌクレアーゼドメイン及び遺伝子操作されたDNA−結合ドメインを含む融合タンパク質を使用するターゲット突然変異誘発の方法の例は、例えば、米国特許出願公開2005/0064474号;2007/0134796号;及び2007/0218528号において提供されている。
【0148】
[製剤、キット及び投与の経路]
リシルオキシダーゼ型の酵素の活性の調節因子(例えば、リシルオキシダーゼ型の酵素の阻害剤又は活性化因子)として同定された化合物を含む治療組成物も提供される。そのような組成物は、典型的には、調節因子(modulator)及び薬学的に許容可能な担体を含む。添加する活性化合物は、組成物の中に組み込むこともできる。リシルオキシダーゼ型の酵素の活性の調節因子、特に阻害剤を、例えば、神経栄養性の薬剤(眼内圧の増加に起因する神経病を減少させる又は除去する薬剤)と組み合わせて使用することができる(なお、本願において、用語「神経栄養性の薬剤」及び用語「抗神経病性製剤」は互換可能なように使用される)。従って、本願で開示のように、治療組成物はリシルオキシダーゼ型の酵素の活性の調節因子と、神経栄養性の薬剤との両方を含むことができる。更なる実施形態において、治療組成物は、治療的に有効量のリシルオキシダーゼ型の酵素の活性の調節因子を含むが、神経栄養性の薬剤を含まない。そして、該組成物は、神経栄養性の薬剤とは別々に投与される。
【0149】
本願において使用される用語「治療的に有効量」又は「有効量」とは、細胞、組織又は被験者(例えば、ヒトなどの哺乳類や、霊長類、げっ歯類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジなどの非ヒト動物)に対して単独又は他の治療剤と組み合わせて投与される場合に、病状又は病気の進行を妨げる又は回復させることに有効な治療剤の量を意味する。治療的に有効量は、更に、症状の完全な又は部分的な回復(例えば、処置、治療、予防又は適切な医療状態の改善、あるいは、処置、治療、予防又はそのような状態の改善の速度の増加)をもたらすのに十分な化合物の量を意味する。例えば、リシルオキシダーゼ型の酵素の活性の阻害剤の治療的に有効量は、病気又は疾患のタイプ、病気又は疾患の延長性、そして、病気又は疾患を患う生命体のサイズに伴って変化する。
【0150】
本願に開示の治療組成物は、特に、線維柱帯切除術の結果として生じる繊維症性ダメージを減少させることに有用である。従って、リシルオキシダーゼ型の酵素の活性の調節因子(例えば、阻害剤)の「治療的に有効量」は、線維柱帯切除術の結果として生じる(例えば、緑内障の処置の間に生じる)繊維症性ダメージの予防又は減少をもたらす量である。リシルオキシダーゼ型の酵素の活性の調節因子(例えば、阻害剤)の治療上の有効量は、線維柱帯切除術の臨床上の利益を維持する量として記載され得る。この臨床上の利益とは、例えば、外科手術の介在の前の眼圧(IOP)と比較した場合の、外科手術的に処置された眼におけるIOPの減少の維持や、外科手術的に処置された眼のIOPが顕著に増加することの予防などであり、例えば、線維柱帯切除術で導入されたブレブの維持によってもたらされる。外科手術的な処置の後の減少したIOPの維持は、外科手術的な処置以降の少なくとも5日間の、少なくとも10日間の、 少なくとも15日間の、少なくとも30日間の、又は、30日間を上回る期間のIOPの減少をもたらすものとして記載され得る。線維柱帯切除術によって導入されるブレブの維持は、外科手術以降の少なくとも5日間、少なくとも10日間、少なくとも15日間、少なくとも30日間、又は、30日間を上回る期間のブレブの維持をもたらすものとして記載され得る。
【0151】
例えば、リシルオキシダーゼ型の酵素の阻害剤が抗体であり、当該抗体がインビボで投与される場合には、投与量は、例えば、体重、投与の経路、病気の重篤度などに依存して、約10ng/kgから100mg/kg(哺乳類体重又はそれ以上)まで変化する(日当り)(例えば、約1μg/kg/日から50mg/kg/日、任意的に約100μg/kg/日から20mg/kg/日、500μg/kg/日から10mg/kg/日、又は、1mg/kg/日から10mg/kg/日)。
【0152】
リシルオキシダーゼ型の酵素の活性の調節因子を抗神経病性製剤と組み合わせて使用する場合には、組み合わせて投与される、連続的に投与される、又は同時に投与されるのいずれであるかにかかわらず、組み合わせ物の治療的に有効量(調節因子と、繊維症性のダメージ及び神経病の減少をもたらす抗神経病性製剤とを組み合わせた量)を意味することもできる。1つを上回る濃度の組み合わせが治療的に有効であり得る。
【0153】
種々の医薬組成物及びそれらを調製・使用するための技術は、本発明の分野における通常の知識を有する者に知られている。適切な医薬組成物及びそれらの投与のための技術の詳細なリストについては、本願の詳細な記載を参照することができ、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed. 1985; Brunton et al., "Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics," McGraw-Hill, 2005; University of the Sciences in Philadelphia (eds.), "Remington: The Science and Practice of Pharmacy," Lippincott Williams & Wilkins, 2005;及びUniversity of the Sciences in Philadelphia (eds.), "Remington: The Principles of Pharmacy Practice," Lippincott Williams & Wilkins, 2008などの刊行物を更に参照することもできる。
【0154】
開示された治療組成物は、更に、液体又は固体状の充填剤、希釈液、賦形剤、溶媒あるいはカプセル化材料(すなわち、担体)などの薬学的に許容可能な材料、組成物又はビヒクルを含む。これらの担体は、体内のある器官又は領域から、体内の他の器官又は領域へ、目的の調節因子を送達することに含まれる。各担体は、製剤の他の成分であることと、患者にとって無害であることとが両立可能な意味合いにおいて「許容可能」であるべきである。薬学的に許容可能な担体としての役割を果たすことが可能な材料のいくつかの例は、糖(ラクトース、グルコース及びスクロースなど);デンプン(コーンスターチ及びジャガイモデンプンなど);セルロース及びその誘導体(ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及びセルロースアセタートなど);粉末状のトラガント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤(ココアバター及び座薬ワックスなど);油(ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油など);グリコール(プロピレングリコールなど);ポリオール(グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなど);エステル(エチルオレイン酸エステル及びエチルラウリン酸エステル);寒天;バッファ化剤(水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなど);アルギン酸;パイロジェンフリーの水;等張生理食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸バッファ;そして、他の無毒な医薬の製剤で採用される他の無毒で両立可能な物質を含む。湿潤剤、乳化剤、潤滑剤(ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなど)、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味料、芳香剤、保存料及び抗酸化剤も組成物に存在することが可能である。
【0155】
他の視点に係る本願の開示は、リシルオキシダーゼ型の酵素の活性の調節因子の投与を実行するキットに関連する。他の視点に係る本願の開示は、リシルオキシダーゼ型の酵素の活性の調節因子と、抗神経病性製剤とを組み合わせた投与を実行するキットに関連する。1つの実施形態において、キットは、医薬的な担体に製剤化される(適切に1つ以上の個別の医薬調製物に調製される)リシルオキシダーゼ型の酵素の活性の阻害剤(例えば、LOX又はLOXL2の阻害剤)を含む(少なくとも1つの抗神経病性製剤を含んでもよいし、含まなくても良い)。
【0156】
製剤化方法及び運搬(投与)方法は、繊維症性ダメージの部位及び度合いに従って適用することができる。製剤の例は、非経口投与に適したもの(例えば、静脈内の投与、動脈内の投与、眼球内の投与、又は、皮下の投与、ミセル、リポソーム又は薬剤放出性カプセルにカプセル化した製剤(スローに放出するように設計された生体適合性のコーティングに組み込まれた活性化薬剤)を含む);経口投与可能な製剤;局所的に使用する製剤(点眼剤、クリーム、軟膏及びゲルなど);そして、他の製剤(吸入剤、エアロゾル及びスプレーなど)を含むがそれらに限定されない。開示の化合物の投与量は、処置が必要な程度及び重篤度、投与される組成物の活性、被験者の普段の健康状態、そして、当業者にとって公知の他の考慮に従って変化するだろう。
【0157】
更なる実施形態において、本願に記載の組成物は、局部的に投与される。そのような局部的な投与(delivery)は、 例えば、眼球内の注射、又は、点眼剤の適用によって達成することができる。被験体における眼球内の投与は、例えば、結膜下の投与によって達成することができる。線維柱帯切除術によって処置された被験体における眼球内の投与は、手術した部位(site)又はその周辺へのリシルオキシダーゼ型の酵素の活性の調節因子(例えば、阻害剤)の適用によって達成することができる。
【0158】
[投与]
リシルオキシダーゼ型の酵素の調節因子を用いた眼の繊維症の処置ために、眼への物質の投与に関して本発明の分野において知られたいずれかの方法を利用することができる。例えば、眼への直接的な注射を、例えば、抗LOX抗体又は抗LOXL2抗体(あるいはそれらの抗体をコードするポリヌクレオチド)などのリシルオキシダーゼ型の酵素の調節因子の投与のために使用することができる。更なる実施形態において、リシルオキシダーゼ型の酵素の調節因子の局所的な投与が使用される。例えば、調節因子を含む溶液に眼を浸けるようにしても良いし、又は、点眼剤として使用されるように溶液状に調節因子を製剤化することもできる。リシルオキシダーゼ型の酵素の調節因子は全身に投与することもできる。ただし、有効な濃度が眼に到達することと、眼に対する更なる(extra-)副作用が無いこと(又は許容可能な範囲内であること)を条件とする。
【0159】
リシルオキシダーゼ型の酵素に対する抗体をコードする核酸(又は他のタイプの調節因子のいずれか、例えば、リシルオキシダーゼ型の酵素の活性の阻害剤;例えば、リボザイム、siRNA、shRNA又はマイクロRNA)は、ウィルス性ベクター状態にキャプシド形成することもできるし、しなくても良い。いくつかのウィルス性ベクターは、本発明の分野において知られており、パルボウイルス、パポバウイルス、アデノウィルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レトロウィルス、及び、レンチウィルスを含む。
【0160】
組み換えウィルス性ベクターの1つのクラスは、欠損性ないし非病原性のパルボウイルス アデノ随伴ウィルスセロタイプ2(adeno-associated virus serotype 2:AAV−2)に基づく。ベクターは、導入遺伝子発現カセットの横側に位置するAAVの145bpの逆位の末端の繰り返し配列を含むプラスミドに由来する。感染細胞のゲノムに組み込むことによって生じる効率的な遺伝子の移入(トランスファー)及び安定な導入遺伝子の送達(デリバリー)は、このベクターシステムを使用して取得される。Wagner et al. (1998) Lancet 351:1702-1703; Kearns et al. (1996) Gene Ther. 9:748-755.
【0161】
更なるアデノ随伴ウィルスのビヒクルは、AAVのセロタイプ1、5、6、7、8及び9や、キメラのAAVセロタイプ(例えば、AAV2/1及びAAV2/5)を含む。一本鎖のAAVベクター、及び、二本鎖の(例えば、自己相補的な)AAVベクターの両方を使用することができる。
【実施例】
【0162】
[実施例1:ウサギ線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)モデル]
4羽のメスのニュージーランドウサギ(12−14週齢、各個体の体重は2−3kgの間)を研究に使用した。55.5mgのケタラール(登録商標、50mg/ml)、及び、39.5mgのRompun(登録商標、2%)の筋肉内注射によって一般的な麻酔を施した。以下に示すように、線維柱帯切除術を各動物の両眼に施した。顕微鏡視下で、角膜輪部ベース(limbus-based)の結膜フラップを持ち上げ、そして、結膜下のスペースを鈍的切開した。強膜フラップ(およそ2.5mm×4mm)の形成の後に、線維柱帯の断片を切除し、そして、虹彩切除術(iridectomy)を施した。虹彩切除術の後、強膜及び角膜フラップを閉じた。手術の結果として、ブレブ(ないしは、濾過疱)が形成された。
【0163】
手術後の規定の時点で、全ての個体を検査して、IOPを測定した。両眼の検査は、手術後の第1日目[手術から1日経過後]と、そして、第1日目以降は2日毎に犠牲にするまで行なった。IOPは、Tono‐Pen(登録商標)眼圧計を使用して測定した。ブレブのサイズ及び特徴を観察して記録し、そして、ブレブの消失(ブレブの瘢痕化、平坦化及び血管新生によって示される)を終了時点として使用した。
【0164】
線維柱帯切除術後の第3日目、第8日目、第14日目及び第30日目の各々の時点において、致死量のRompun(登録商標)の投与によって動物を犠牲にし、両眼を摘出した。各々の眼から、ブレブの上部分(繊維性の結膜を含む)と、下部分(非繊維性の結膜)とを収集した。各動物の一方の眼のサンプルは、液体窒素で凍結して、RNA解析とタンパク質解析とに使用した。各動物の他方の眼のサンプルは、収集して、4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィンに包埋した。7μmの切片[複数]を切り出した。切り出した切片のいくつかは、免疫組織化学によってCD45発現について解析して、炎症の指標とした(実施例4)。他の切片は、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色、マッソントリクローム染色及びシリウスレッド染色によって繊維症について解析した(実施例5)。更なる切片は、免疫組織化学によってLOX及びLOXL2発現について解析した(実施例6)。
【0165】
イメージ画像はZeiss Imager Z1を使用して、10×の倍率で、1292×968ピクセルの解像度で取得し、写真画像はZeiss Axiocam MrC5で撮像した。イメージ画像は、Zeiss KS300ソフトウェアを使用して、形態学的に解析した。このソフトウェアを使用して、切片のトータルの領域を測定し、切片内で異なるマーカー(下記参照)でポジティブに染色された領域を測定した。そして、トータルの切片領域に対する研究対象下の特定のマーカーにポジティブな領域の分数(フラクション)を算出した。データは、Statistica6.1統計ソフトウェアで、スチューデントT−検定を使用して、独立のサンプルについて解析した。0.05より小さいP値を、統計学的に有意なものとした。
【0166】
[実施例2:IOP測定]
線維柱帯切除術の施術前と、線維柱帯切除術後の第1日目と、そして、第1日目以降は2日毎とにおいて、眼圧(IOP)の測定を行なった(図1)。左眼及び右眼の両方において、線維柱帯切除術から1日以内にIOPが30〜40%ずつ減少し、第13‐15日目まで安定なままであった。その後、IOPが増加し、外科手術前のIOPと同程度(comparable)のレベル、又は、手術前のIOPを上回るレベルまで戻った。
【0167】
[実施例3:ブレブ領域(部分・エリア)の測定]
カリパスを用いて、ブレブの長さ及び幅を測定することによって、ブレブ領域を測定(決定)した(図2)。両眼について、外科手術から1日経過した時点の平均のブレブ領域(面積)は、14‐19mmであった。手術から1日経過した時点の後において、ブレブ領域は、線維柱帯切除術後第13日目まで着実に減少し、第13日目の平均のブレブ領域は、1‐2mmであった。第13日目の後に、実験に使用した残りの動物の2つ(両眼)において、ブレブが消失した(すなわち、平坦化、瘢痕化、そして、血管新生した)。
【0168】
[実施例4:炎症]
ブレブの上部分由来(繊維性)の薄い切片、及び、結膜由来(非繊維性)の薄い切片を、CD45(白血球マーカー、存在すれば炎症の指標となる)についての免疫組織化学によって解析した。この解析に関しては、抗原賦活化(antigen retrieval)を20分間、95℃で実行し、そして、ウサギ血清をブロッキング剤として使用した。切片は、オーバーナイトで、室温で、マウス抗ウサギCD45抗体(1/100;AbDSerotec)でインキュベートした。次の日に、スライドガラスをビオチン標識化ウサギ抗マウス抗体(1/300に希釈;Dakocytomation)で、45分間、室温でインキュベートした。次に、切片を、TSA Indirect kit(Perkin Elmer TSATM; NEL7004)を使用して室温で増感させ(developed)、TNT洗浄バッファを使用して洗浄した。ストレプトアビジンペルオキシダーゼは1/100の希釈率で使用し、ビオチンはワーキングバッファ(working buffer)に1/50希釈した。ジアミノベンジジン(DAB, Sigma, St Louis, MO)を、色素原として使用した。
【0169】
CD45−ポジティブな細胞の細胞数をカウントし、切片の領域をZeiss KS300ソフトウェアを使用して測定(決定)した。次に、白血球密度を、切片の1mm当りのCD45ポジティブ細胞の細胞数として算出し、炎症の度合いの指標(measure)として使用した。
【0170】
この解析の結果は、結膜(非繊維性)のサンプルには、白血球が存在しないことを示した(すなわち、CD45免疫反応性は観察されなかった)。ブレブ(繊維性)のサンプルにおいては、白血球の数は、第3日目から第8日目まで増加し、第8日目にピークに至り、第8日目以降に減少した。図3の染色試料の例を参照。図4は、線維柱帯切除術後の第3日目、第8日目、第14日目及び第30日目のCD45のレベルの定量を示す。
【0171】
[実施例5:繊維症]
上述のように取得した薄い切片を、トリクローム、シリウスレッド又はヘマトキシリン/エオシン(H&E)で染色し、顕微鏡検査によって解析した。トリクロームによって染色した切片の例、シリウスレッドによって染色した切片の例、及び、H&Eによって染色した切片の例が、図5、6及び7にそれぞれ示される。
【0172】
コラーゲン染色を示す切片の領域を測定して、当該切片のトータルの領域に対するパーセンテージとして表現することによって、繊維性の度合いを定量的にスコア化した。領域は、Zeiss KS300ソフトウェアを使用して測定した。
【0173】
3種類全ての染色方法の結果は、非繊維性の結膜の組織におけるコラーゲン沈着は全ての時点において同程度であるが、繊維性の組織におけるコラーゲンレベルは全ての時点において非繊維性の組織のものよりも高く、繊維性の組織において第3日目から第14日目までにわずかな上昇傾向を有することを示した(図8参照)。ブレブが消失する第13日目の直後(just after)の第14日目に、コラーゲン沈着がプラトー(台地状)になるように見えることに着目すると興味深い。つまり、IOPの増加と、ブレブ消失とが、第13日目の辺りの同時期に生じて、繊維性ダメージをもたらしていると思われる。
【0174】
[実施例6:リシルオキシダーゼ(lysyl oxidase:LOX)タンパク質及びリシルオキシダーゼlike2(lysyl oxidase-like 2:loxl2)タンパク質の発現]
ブレブの上部分(繊維性の部分)と、下部分(結膜、非繊維性の部分)とから上述のように取得した7マイクロメートルの切片を、免疫組織化学によって、LOXタンパク質及びLOXL2タンパク質の存在について解析した。M64抗体をLOXの検出に使用し、M20抗体をLOXL2の検出に使用した。これらの抗体は、両方ともにマウス抗ヒトモノクローナル抗体であり、両方ともに同一出願人による米国特許出願公開US2009/0053224号に開示されている。M64(3μg/ml)は、1/1,000希釈で使用し、M20(55μg/ml)は、1/200希釈で使用した。
【0175】
免疫組織化学を、実施例4に開示された方法と類似の方法を使用して実行した。イメージ画像はZeiss Imager Z1を使用して、10×の倍率で、1292×968ピクセルの解像度で取得し、[写真画像は]、Zeiss Axiocam MrC5を使用して取得した。形態学的な解析は、Zeiss KS300ソフトウェアを使用して実行した。データを、独立のサンプルについて、Statistica6.1統計ソフトウェア(スチューデントT−検定を使用する)を使用して解析した。0.05未満のP値を、統計学的に有意なものとした。
【0176】
LOX及びLOXL2について染色した切片の例を、図9及び図10に示す。線維柱帯切除術後の眼の繊維性の領域と非繊維性の領域とにおける、LOXの発現レベルの定量、及びLOXL2の発現レベルの定量を図11に示す。結果は、ブレブの下部分(非繊維性の結膜の組織)と比較した場合に、ブレブの上部分(繊維性の組織)において、LOX及びLOXL2の両方が、一般的に、より高く発現したことを示す。
【0177】
[実施例7:LOX及びLOXL2のmRNAの発現]
リシルオキシダーゼ(LOX)及びリシルオキシダーゼ関連タンパク質(lysyl oxidase-related protein、例えば、LOXL2)の転写産物のレベルを解析するために、RNAは凍結組織(実施例1参照)から精製する。
【0178】
組織サンプルは、β‐メルカプトエタノールを含む700μlのQiagen RLTバッファに懸濁し、ホモジナイザ(Polytron hand-held electric homogenizer)を使用して均質化処理(ホモジナイズ)する。RNAの単離は、RNeasy Mini kit(Qiagen, Valencia, CA)を使用して、製造元の指示に従って実行する。溶出したRNAを、Ambion rDNAse Iを用いて、薬剤仕様書に従って、DNase処理する。
【0179】
リシルリシルオキシダーゼタンパク質、及び、リシルオキシダーゼlikeタンパク質のmRNAレベルは、定量的逆転写/ポリメラーゼ連鎖反応(quantitative reverse transcription/polymerase chain reaction:qRT−PCR)によって決定する。逆転写反応及び増幅反応を、各反応に100ngのRNAのテンプレートを使用して、キット(tratagene Brilliant II One-Step Core Reagents kit)を使用して、製造元の指示に従って、実行する。ターゲットmRNAについてのプライマー及びFAM/BHQ−1プローブは、Beacon Designer(登録商標)ソフトウェア(Premier Biosoft, Palo Alto, CA)を使用してデザインし、プライマーについては400nMの最終濃度で、プローブについては250nMの最終濃度で使用する。
【0180】
プライマー/プローブのセットは、インビトロsiRNAノックダウン実験によって、それらのターゲットmRNAに対する特異性を確認し、そして、細胞株RNA(cell line RNA)の段階希釈物(dilutions、中程度のレベルから高いレベルのターゲットmRNAsを発現しているもの)を使用して、プライマー/プローブのセットの増幅効率についてテストする。100%の増幅効率とは、各サイクルの間にアンプリコンの量が2倍に増加すること(対数期の増幅反応の間に生じる)に対応し、3.32サイクル毎にアンプリコンの量の10倍増加をもたらす効率である。増幅効率は、C対インプットRNA濃度を片対数スケール(グラフ)にプロットし、作成される曲線の勾配(スロープ)を測定することによって決定する。増幅効率のパーセンテージ(E)は、以下のように算出される。

【0181】
全てのプライマー/プローブのセットの増幅効率は、>90%となるように決定される。
【0182】
テストmRNAのレベルをリボゾームタンパク質L19(ribosomal protein L19)のmRNAレベルに対して規格化し、結膜の組織(非繊維性)と比較した場合のブレブ組織(繊維性)の相対的発現量として結果が表現される。
【0183】
[実施例8:繊維柱帯切除術後のLOXの阻害剤及びLOXL2の阻害剤での処置]
ブレブ組織(繊維性)におけるLOX及びLOXL2の発現の増加(実施例6)は、これらのタンパク質の活性を減少させることで、ブレブの繊維症化と、最終的なブレブの消失とが阻止できる可能性があることを示唆した。このアイデアを検証するために、繊維柱帯切除術後に、動物を抗LOX抗体及び抗LOXL2抗体で処置し、そして、眼圧(IOP)及び種々のブレブの特徴の測定を実行した(実施例9)。炎症の度合い(extent)(実施例10)、血管新生の度合い(実施例10)及び繊維症(実施例11)の度合いに対する抗体処置の効果も測定した。
【0184】
抗LOX抗体であるM64及び抗LOXL2抗体であるM20を、3mg/mlのワーキング溶液−PBST(1×リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4+0.01%のTween(登録商標)20)に製剤化した。抗体のワーキング溶液は4℃で保存した。
【0185】
12羽のメスのニュージーランドウサギ(12−14週齢)をこの研究に使用した。各動物について、実施例1に記載のように(ただし、強膜フラップの寸法が5mm×5mmであるという条件を除く)、繊維柱帯切除術を両眼に対して実行した。手術後に、各動物の一方の眼を抗体で処置し、そして、他方の眼をビヒクル(PBS、pH7.4)で処置した。6羽の動物は抗LOX抗体で処置し、[残りの]6羽は抗LOXL2抗体で処置した。抗体は、第0日目(即ち、手術の直後)に投与し、その後は30日間にわたって1週間に2回投与した。第0日目に、一方の眼の結膜下には、100μlの抗体(0.3mg)を注射し、かつ、同じ眼の前眼房に200μl(0.6mg)を注射した。そして、他方の眼には、ビヒクルを投与した(結膜下に100μlを注射し、かつ、200μlを注射した)。その後は、抗体で処置された眼には100μlの抗体(0.3mg)を結膜下注入によって1週間に2回投与し、コントロールの眼には100μlのビヒクルを同じ時期(time)に結膜下注入した。
【0186】
[実施例9:LOX及びLOXL2を阻害することによるブレブ特性に対する効果]
眼圧(IOP)及びブレブ特性についての両眼の検査を、手術後の第1日目と、そして、その後は2日毎に(alternate days)、犠牲にするまで実行した。IOPは、Tono−Pen(登録商標)眼圧計を使用して測定した。ブレブの特徴は、ブレブの領域(面積)、ブレブの高さ、及び、結膜の血管状態(conjunctival vascularity)を含んだ。瘢痕化して平坦なブレブの様相をブレブの消失と見なした。
【0187】
眼圧
眼圧は、テストした各時点において、コントロールの眼と処置された眼との間で同様であった(図12)。
【0188】
ブレブ領域(面積)
ブレブの領域は、カリパスを使用して測定した。繊維柱帯切除術後における抗LOX抗体又は抗LOXL2抗体のいずれかでの眼の処置は、コントロールの眼と比較して、統計的に有意なブレブの領域の増加をもたらした(図13)。
【0189】
ブレブの高さ
ブレブ高さは、カリパスを使用して測定した。繊維柱帯切除術後における抗LOX抗体又は抗LOXL2抗体のいずれかでの眼の処置は、コントロールの眼と比較して、統計的に有意なブレブの高さの増加をもたらした(図14)。
【0190】
ブレブの残存
ブレブの残存(即ち、ブレブの消失が無いこと)については、ブレブの消失(瘢痕化して平坦なブレブの様相として定義される)を実験の終了時点と見なした。抗体で処置した眼及び処置していない眼におけるブレブの解析は、コントロールの眼(PBSで処置された眼)と比較して、抗LOX抗体又は抗LOXL2抗体のいずれかでの処置によって、手術後のブレブの残存(期間)が顕著に延長したことを示した。これらのデータは、カプラン・マイヤー生存プロットの形式で図15に示される。カプラン・マイヤー生存解析は、ログランク検定を使用して、ブレブの消失について実行した。
【0191】
[実施例10:LOX及びLOXL2を阻害することによる血管新生及び炎症に対する効果]
全ての動物は、手術後の第30日目に犠牲にした。死亡した直後に、両眼(コントロール眼及び抗体で処置された眼)を摘出した。各々の眼から、ブレブの上部分(繊維性の結膜を含む)及び下部分(非繊維性の結膜)を収集した。これらのサンプルを、4%パラホルムアルデヒドの中で固定し、パラフィンに包埋した。7μmの切片を切り出した。切り出した切片のいくつかは、CD31発現について解析して、血管新生を評価した。そして、他の切片は、CD45発現について解析して、炎症の指標とした。更なる切片は、シリウスレッドで染色することによって、繊維症について解析した。
【0192】
イメージ画像を、Axiocam Mrc5デジタルカメラ(Karl Zeiss)を備えたライカ社の顕微鏡で、20×の倍率で、2584×1936ピクセルの解像度で取得した。形態計測的な解析(morphometric analyses)(即ち、薄い切片における領域の測定)をAxiovisionソフトウェアを使用して実行した。
【0193】
組織学的なデータは、独立のサンプルについて、スチューデントT−検定を使用して解析した。個々の時点のデータは、反復測定についての混合モデル解析を使用して(SAS9.2を使用して)解析した。0.05より小さいP値を、統計学的に有意なものとした。データは、平均±SEMとして示した。
【0194】
血管新生
第30日目の眼からの薄い切片を、内皮マーカーCD31(存在すれば血管新生の指標となる)の発現についての免疫組織化学によって解析した。この解析に関しては、切片を、37℃で、7分間のトリプシン消化に供し、ヤギ血清をブロッキング剤として使用した。切片を、マウス抗ヒトCD31抗体(1/500;Pharmingen)で、室温で、オーバーナイトでインキュベートした。次の日に、スライドガラスを、ビオチン標識化ヤギ抗マウス抗体(1/300希釈、Dakocytomation)で、45分間、室温でインキュベートした。次に、切片を、TSA Indirect Kit(Perkin Elmer TSATM; NEL7004)を使用して、室温で、増感させ(developed)、TNT洗浄バッファで洗浄した。ストレプトアビジンペルオキシダーゼは1/100希釈で使用し、ビオチンはワーキングバッファに1/50倍希釈した。ジアミノベンジジン(DAB, Sigma, St. Louis, MO)を、色素原として使用した。CD31免疫反応性を示す切片の領域を測定して、病変部のトータルの領域に対するパーセンテージとして表現することによって、血管新生の度合いを定量した。
【0195】
CD31染色の結果の例を図16の最も左側のカラムに示し、定量的な解析を図17に示す。定量は、CD31免疫反応性を示す切片の領域を測定して、当該切片のトータルの領域に対するパーセンテージとして表現することによって実行した。領域は、Zeiss Axiovision 40V 4.7.1.0ソフトウェアを使用して測定した。
【0196】
抗LOXL2抗体を用いた手術後の処置は、PBSで処置した眼と比較した場合に、ブレブにおける統計学的に有意な47%の血管新生の減少をもたらすことが、CD31レベルの定量によって示された(図17、パネルB)。非ブレブ(non-bleb)の組織におけるバックグラウンドのCD31レベルによって補正(corrected)した場合には、CD31発現の65%の減少が観察された。
【0197】
CD31発現は、非ブレブ組織のコントロールの眼と、非ブレブ組織の抗体で処置した眼との間で類似した(図17のパネルA;図17のパネルB)。この試験において、抗LOX抗体での処置によっては、ブレブにおけるCD31の発現は減少しなかった(コントロールの眼と比較して、図17のパネルA)。
【0198】
炎症
CD45免疫反応性を示す細胞の細胞数を計測して、切片におけるCD45−ポジティブ細胞の密度としてこの数を表現することによって、炎症の度合いを定量した。CD45についての免疫組織化学的な解析を上述の実施例4に記載のように実行した。
【0199】
CD45染色の結果の例を図16の中央の(central)カラムに示し、定量的な解析を図18に示す。領域は、Zeiss Axiovision 40V 4.7.1.0ソフトウェアを使用して測定した。
【0200】
CD45レベルの定量によって、手術後の抗LOXL2抗体での処置は、PBSで処置した眼と比較した場合に、ブレブにおける統計学的に有意な34%の炎症の減少をもたらしたことが示された(図18、パネルB)。非ブレブ組織におけるバックグラウンドのCD45レベルによって補正した場合には、CD45発現の53%の減少が観察された。
【0201】
CD45の発現は、非ブレブ組織のコントロールの眼と、非ブレブ組織の抗体で処置した眼との間で類似した(図18のパネルA;図18のパネルB)。この試験において、抗LOX抗体での処置によっては、ブレブにおけるCD45の発現は減少しなかった(コントロールの眼と比較して、図18のパネルA)。
【0202】
[実施例11:LOX及びLOXL2を阻害することによる繊維症に対する効果]
シリウスレッド染色を使用して、処置した眼及び処置していない眼におけるコラーゲン沈着を解析することによって、繊維症に対する抗体での処置の効果を測定した。シリウスレッドで染色した切片は、偏光条件下で解析した。
【0203】
コラーゲン染色を示す切片の領域を測定して、当該切片のトータルの領域に対するパーセンテージとして表現することによって、繊維症の度合いを定量的にスコア化した。領域は、Zeiss Axiovision 40V 4.7.1.0ソフトウェアを使用して測定した。
【0204】
コラーゲン染色の結果の例を図16の最も右側のカラムに示し、定量的な解析を図19に示す。PBS処置された眼と比較した場合に、抗LOXL2抗体を用いた手術後の処置は、ブレブにおける統計学的に有意なコラーゲン沈着の16%の減少をもたらすことが、コラーゲンレベルの定量によって示された(図19のパネルB)。非ブレブ組織におけるバックグラウンドのコラーゲンレベルによって補正した場合には、コラーゲン沈着の53%の減少が観察された。
【0205】
抗LOX抗体での処置も統計学的に有意な22%のコラーゲン沈着の減少をもたらし(図19のパネルA)、非ブレブ組織におけるバックグラウンドのコラーゲンレベルによって補正した場合には、63%の減少を生じた。
【0206】
コラーゲン沈着は、非ブレブ組織のコントロールの眼と、非ブレブ組織の抗体で処置した眼とにおいて類似であった(図19のパネルA;図19のパネルB)。
【0207】
[実施例12:LOX及びLOXL2を阻害することによる房水における種々のサイトカイン及び成長因子の発現に対する効果]
第−1日目(マイナス1日目)、第1日目、第4日目、第6日目、第8日目、第15日目及び第30日目の房水のサンプル(200μL)を各々の眼から収集した。ELISAによって、いくつかの異なる成長因子及びサイトカインの存在に関して、第30日目のサンプルを解析した(RBM, Austin, TX)。
【0208】
この解析の結果によれば、コントロールの眼(PBS処置した眼)と比較して、抗LOX抗体で処置した眼において、β2‐マイクログロブリン、ICAM‐1(intercellular adhesion molecule-1:細胞内接着分子‐1)及びRANTES(活性化の際に制御され、正常なT細胞で発現及び分泌される)の発現が上方制御(アップレギュレート)されることが示された。抗LOXL2抗体で処置した眼において、以下の分子の発現が増加した:α1−アンチトリプシン、β2‐マイクログロブリン、因子(Factor)VII、ICAM−1、IL−15(インターロイキン‐15)、IL−17(インターロイキン17)、IL−1β(インターロイキン‐1β)、IL‐1ra(インターロイキン‐1レセプターアンタゴニスト)、MCP−1(単球走化性タンパク質‐1)、MMP‐3(マトリックスメタロプロテアーゼ‐3)及びVCAM‐1(血管細胞接着分子‐1)。
【0209】
要するに、抗LOX抗体及び抗LOXL2抗体は、両者ともに、コントロールと比較して、ブレブの領域及びブレブの残存を増加することによって、外科手術の成果を顕著に改善することが可能であった。異なる免疫組織化学的な染色(CD31,CD45及びシリウスレッド)の解析によれば、抗LOXL2処置した群において、コントロールと比較して、血管新生、炎症及び繊維症の顕著な減少が示された。抗LOX抗体での処置は、コントロールと比較して、コラーゲン沈着の顕著な減少をもたらした。
【0210】
これらの結果は、LOX及びLOXL2が眼の創傷(ocular wound)の治癒のプロセスにおいて重要であることを示し、そして、繊維柱帯切除術後における繰り返しの抗LOX注射及び抗LOXL2注射の有効性に関する証拠を提供する。これらの結果は、繊維柱帯切除術のモデルにおける、抗LOX抗体及び抗LOXL2抗体で処置した後の、いくつかのサイトカイン及び他のタンパク質のレベルの変化も実証した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物における眼の繊維症を処置する方法であって、
前記生物の1つ以上の細胞における、リシルオキシダーゼ(LOX)タンパク質又はリシルオキシダーゼlike2(LOXL2)タンパク質の活性を阻害することを含む方法。
【請求項2】
リシルオキシダーゼ(LOX)タンパク質の活性を阻害することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リシルオキシダーゼ関連性2(LOXL2)タンパク質の活性を阻害することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
LOXの活性を、前記生物に対して抗LOX抗体を投与することによって阻害することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
LOXL2の活性を、前記生物に対して抗LOXL2抗体を投与することによって阻害することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
緑内障の処置を受けつつある生物において、眼の繊維症が生じていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記緑内障の処置が眼の外科手術であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記外科手術が線維柱帯切除術であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生物の眼に抗LOX抗体を導入することを特徴とする請求項4、6、7又は8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
抗LOXL2抗体を、前記生物の眼に導入することを特徴とする請求項5〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
抗LOX抗体をコードするポリヌクレオチドを、前記生物に投与することを特徴とする請求項4、6、7又は8の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
抗LOXL2抗体をコードするポリヌクレオチドを、前記生物に投与することを特徴とする請求項5〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリヌクレオチドを、前記生物の眼に導入することを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリヌクレオチドが、アデノ随伴ウィルス(adeno-associated virus:AAV)、アデノウィルス及びレンチウィルスから成る群から選択されるウィルス性ベクターの中にキャプシド形成されることを特徴とする請求項11〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ウィルス性ベクターがアデノ随伴ウィルス(AAV)であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ウィルス性ベクターがAAVタイプ2又はAAVタイプ4であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記生物が哺乳類であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記哺乳類がヒトであることを特徴とする請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2013−506005(P2013−506005A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532238(P2012−532238)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/050542
【国際公開番号】WO2011/041309
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(512043588)ギリアド バイオロジクス,インク. (7)
【氏名又は名称原語表記】GILEAD BIOLOGICS,INC.
【Fターム(参考)】