説明

眼内使用のための環状脂質インプラントの製造法

環状脂質治療薬を含んで成る生物適合性インプラントを、低温溶融押出法によって製造する。該インプラントは、眼症状を治療するために眼内使用するのに好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内インプラントの製造法、およびそれによって製造されるインプラントに関する。本発明は、特に、眼内使用に適したインプラントの低温製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼内使用に好適な薬物送達システム(「インプラント」)を製造することは知られている。インプラントは、1つまたはそれ以上の治療薬、ならびに1つまたはそれ以上の生分解性または非生分解性担体(例えば、ポリマーまたは非ポリマー担体)を含むことができる。一般に、担体は、インプラントの大部分を占め(即ち50wt%より大)、治療薬を保持し(担体機能)、次に、例えば、生分解性または生侵食性(bioerodible)担体が眼組織標的部位において(in situ)または該部位に近接して分解される際に、生体内で治療薬を放出する機能を発揮することができる。眼の中に配置するための生物適合性インプラントは、下記のような多くの特許に開示されている:米国特許第4521210号、第4853224号、第4997652号、第5164188号、第5443505号、第5501856号、第5766242号、第5824072号、第5869079号、第6074661号、第6331313号、第6369116号および第6699493号。
【0003】
眼内使用に適したインプラントは、圧縮法、溶媒蒸発法および押出法を包含する種々の方法によって製造されている。眼内インプラントを製造するための押出法は、先ず、治療薬および1つまたはそれ以上のポリマーを混合することによって行うことができる。典型的には、固形(即ち粉末)の治療薬およびポリマーを混合して、粉末の均質混合物を得る。上述のように、ポリマーは治療薬の担体として機能することができる。従って、生分解性ポリマーを使用した場合、治療薬は、インプラントの眼内挿入または埋め込み後に、ポリマーの分解と共にポリマーから拡散することができる。治療薬-ポリマー混合物を圧縮して錠剤を形成することができるが、押出インプラントは、治療薬のより望ましい放出プロフィールを示すことができる。従って、治療薬-ポリマー混合物をポリマーが溶融する温度に加熱し、次に、所望の寸法を有するインプラントを押し出すことによって、優れた特性を有するインプラントを製造することができる。ポリマーを溶融させることは、ポリマーマトリックスへの活性剤の均一分布を確実にするのを助け、冷却時に固形インプラントを与える。治療薬-ポリマー混合物を押し出す前に約90℃〜約115℃に加熱する眼内使用用の押出インプラントを製造することが知られている。例えば、米国特許出願公開第20050048099号を参照。
【0004】
残念なことに、治療薬-ポリマー混合物をポリマーが溶融する温度に加熱することは、望ましくない作用または不安定化作用を有しうる。例えば、ポリマーをその溶融温度に加熱することにより、治療薬およびポリマーのいずれかまたは両方の分解生成物および/または凝集体を形成しうる。これは、感受性眼組織に対して潜在的に毒性または免疫原性の物質を生じ、かつ/または押出インプラントから治療薬の所望放出プロフィールを得ることを妨げうる。さらに、治療薬をポリマー担体の溶融温度に加熱すること(ポリマーマトリックスへの治療薬の均質分散を得るため)は、感熱性治療薬の効力を減少させ、それによって、得られるインプラントの治療有効性を減少させうる。
【0005】
既存インプラントについての他の問題は、治療薬の多形体の存在から生じうる。多形体は、他の物質と同じ化学組成を有するが、異なる結晶構造で存在する物質である(例えば、ダイアモンドおよび黒鉛)。物質の種々の多形体は、種々の安定性、溶解性を有することができ、治療薬については、種々の効力または治療有効性を有しうる。既知のインプラントの場合、結晶性治療薬は、ポリマーマトリックスと共に一般に溶融され、固体インプラントの製造時に再結晶しうる。または、結晶性治療薬は、治療薬を溶融させずに、ポリマーと混合することもできる。いずれの場合も、治療薬は最終インプラントにおいて、ポリマーマトリックスに分散された治療薬の結晶として(即ち、粒子として)存在する。従って、インプラントを製造するいずれの既知の方法においても、治療薬は多形体の形態で存在し、各治療薬多形体は異なる治療有効性を有しうる。
【0006】
降圧治療薬は、多種の高眼圧症状、例えば、術後およびレーザートラベクレクトミー後の高眼圧症状の発現、緑内障の治療において、および手術前補助剤として、有用である。緑内障は、眼内圧上昇を特徴とする眼の疾患である。緑内障は、その病因に基づいて、原発性または続発性に分類されている。例えば、成人における原発性緑内障(先天性緑内障)は、解放隅角緑内障か、または急性または慢性の閉塞隅角緑内障のいずれかでありうる。続発性緑内障は、既存の眼疾患、例えば、ブドウ膜炎、眼内腫瘍または拡大(enlarged)白内障から生じる。
【0007】
緑内障に特徴的な眼内圧上昇は、房水流出の閉塞によりうる。慢性開放隅角緑内障において、前房およびその解剖学的構造物は正常に見えるが、房水の排出が妨げられている。急性または慢性閉塞隅角緑内障において、前房が浅く、虹彩角膜角が狭く、虹彩がシュレム管の入口における小柱網を閉塞しうる。瞳孔の散大が、虹彩根をその角度に対して前方へ押し、瞳孔閉塞を生じ、それによって急性発作を誘発しうる。狭い前房角を有する眼は、種々の重症度の急性閉塞隅角緑内障発作に罹患しやすい。
【0008】
続発性緑内障は、後房から前房へ、次にシュレム管への、房水の流れの何らかの障害によって生じる。前区の炎症性疾患は、膨隆虹彩において完全虹彩後癒着を生じることによって房水の排出を妨げ、滲出液で排水路を塞ぎうる。他の一般的な原因は、眼内腫瘍、拡大白内障、網膜中心静脈閉塞、眼の外傷、手術手技および眼内出血である。
【0009】
全てのタイプを考慮に入れると、緑内障は、40歳以上の全ての人の約2%が罹患し、急速な視力低下に進むまでに何年間にわたって無症候性でありうる。手術が必要とされない場合、慣例的に、局所β-アドレナリン受容体拮抗薬が緑内障治療の最適薬剤である。
【0010】
いくつかのプロスタグランジンが眼降圧薬として使用されており、それらは、PGF、PGF、PGE2、およびそのような化合物の特定の脂質溶解性エステル、例えばC1〜C5アルキルエステル、例えば1-イソプロピルエステルを包含する。残念なことに、眼表面(結膜)充血および異物感が、PGFおよびそのプロドラッグ、例えばその1-イソプロピルエステルを包含するプロスタグランジンの降圧薬としての局所眼使用(即ち、緑内障を治療するため)に常に伴う。PGF誘導体ラタノプロストは、高眼圧および緑内障の治療用に商標Xalatan(登録商標)として市販されている。ラタノプロストの局所使用は、使用者の虹彩を褐色にする望ましくない副作用を有しうる。
【0011】
Laedwif M.S.ら、PROSTAGLANDINS LEUKOT. ESSENT. FATTY ACIDS 72:251-6(April 2005)には、加齢性黄斑変性(ARMD)を有する患者における環状脂質(プロスタグランジンE1)の注射により、視力の向上を生じたことが開示されている。
【0012】
ビマトプロストは、天然プロスタミドの類似体(即ち構造誘導体)である。ビマトプロストの式(C25H37NO4)は、((Z)-7-[1R,2R,3R,5S)-3,5-ジヒドロキシ-2-[1E,3S)-3-ヒドロキシ-5-フェニル-1-ペンテニル]シクロペンチル]-5-N-エチルヘプテンアミドである。その分子量は415.58である。ビマトプロストは感熱分子であり、これは、約65℃より高い温度に加熱した場合に分解しうることを意味する。低pH環境において、ビマトプロストは、より低い温度およびより速い速度で分解しうる。ビマトプロストは、いくつかの多形結晶構造を有する。ビマトプロストの全ての多形体が、同じレベルの生物学的活性を有するわけではない。ビマトプロストは、水にわずかに可溶性(定義によれば、25℃において、水溶性物質3mgが水1mLに溶解できる)である。
【0013】
ビマトプロストは、眼内圧を低下させるのに使用できる。例えば下記を参照:Cantor, L., Bimatoprost: a member of a new class of agents, the prostamides for glaucoma management, Exp Opin Invest Drugs (2001);10(4):721-731;およびWoodward D.ら、The Pharmacology of Bimatoprost(Lumigan(商標))、Surv Ophthalmol 2001 May;45(Suppl 4):S337-S345。0.03%ビマトプロストの眼液剤は、Allergan(Irvine, California)から商標Lumigan(登録商標)として市販されている。Lumigan(登録商標)は、高眼圧および緑内障に有効な治療薬であり、1日1回局所的に、罹患している眼に投与される。Lumigan(登録商標)1mLにつき、活性剤としてのビマトプロスト0.3mg、防腐剤としての塩化ベンザルコニウム(BAK)0.05mg、および塩化ナトリウム、第二リン酸ナトリウム(sodium phosphate, dibasic)、クエン酸、および不活性剤としての精製水を含有する。
【0014】
眼内使用のためのビマトプロスト含有インプラントを製造することが知られている。例えば、米国特許出願第10/837260および11/368845参照。
【0015】
ポリマー溶解度パラメーター
物質の溶解度パラメーターは、その物質の相対溶解挙動を示す数値である。溶解度パラメーターは、物質の凝集エネルギー密度から導き出され、次に、これは気化熱から導き出される。物質の気化熱は、物質を気化させる(気体にする)のに必要とされるエネルギーである。気化熱(液体物質1立方メートル当たりのカロリー)から、凝集エネルギー密度(c)を導き出すことができる:
【数1】

[式中、c=凝集エネルギー密度;ΔHv=気化熱;R=気体定数;T=温度、およびVm=モル体積]
液体の凝集エネルギー密度(c)は、気化エネルギー(1立方センチメートル当たりのカロリー)を示す数値であり、液体分子を結合させるファンデルワールス力の程度の鏡面反射である。2つの物質の溶解性は、それらの分子間引力が同様である場合にのみ可能であり、同様の凝集エネルギー密度値を有する物質は、互いに混和性である。
【0016】
凝集エネルギー密度(c)の平方根は、物質の溶解度パラメーターを与える:
【数2】

【0017】
この溶解度パラメーターは、デルタ(δ)で表すことができる。δは、カロリー/cc(標準または旧式パラメーター)、または標準国際単位(SI単位)で表すことができる。SI単位はパスカルである。従って、1MPaは1ミリパスカルである。SIパラメーターは、標準溶解度パラメーター単位の約2倍の数値である:
【数3】

【0018】
物質の溶解度パラメーターのより新しいSI単位は、δ/MPa1/2(単にMPa1/2の略記法で示される場合もある)またはδ(SI)として一般に示される。
【0019】
ポリマーは、その気化熱を測定しうる前に一般に分解するので、膨潤挙動が、ポリマーの溶解度パラメーターを測定しうる方法の1つである。凝集度パラメーターという用語は、非液体物質の溶解度パラメーターを意味するために使用しうる。生分解性ポリマーの溶解度パラメーターを求めることができる。例えば、Siemann U., Densitometric determination of the solubility parameters of biodegradable polyesters, Proceed Intern Symp Control Rel Bioact Mater 12(1985):53-54参照。前記のように、MPa1/2は、溶解度パラメーターの標準単位である。溶解度パラメーターδはc1/2に等しく、ここでc=(ΔE/Vm)1/2である。簡単に言えば、2つの物質は、それらのΔG<0、およびΔG=ΔH-TΔSである場合に混合する(これは、反応の自由エネルギーを定義するギブス自由エネルギー[ΔG]の式であり、ここで、ΔHは定圧法におけるエンタルピー変化であり、ΔSはエントロピー変化である)。ΔSは混合に関して常に正であるが、ΔHは、ΔH〜Vmψ1ψ2(δ121/2にほぼ依存し、ここで、「1」および「2」は2つの成分である。δが互いに近いほど、ΔHはゼロにより近くなり、よりエネルギー的に好適な組合せである。
【0020】
固溶体は、溶媒中の1つまたはそれ以上の溶質の固体状態溶液である。固溶体に入った最初は結晶形態であった溶質は、この場合は固体状態溶液であるにもかかわらず、溶液中に存在するので、もはや結晶形態ではない。いくつかの混合物はある範囲の濃度の固溶体を容易に形成するが、他の混合物は固溶体を全く形成しない。任意の2つの物質が固溶体を形成する傾向は、問題とする物質の化学的、結晶学的および量子特性を含む複雑な事象である。例えば、溶質および溶媒が同様の原子半径(15%またはそれ以下の違い)、同じ結晶構造、同様の電気陰性度および/または同様のバランス(valance)を有する場合に、固溶体が形成しうる。水溶性薬剤および単一ポリマー賦形剤の溶解度パラメーターを比較して、それらが互いに混和性であり、それによって溶融押出時にガラス溶液が形成されるかを確認することが知られている。Forster, Aら、Selection of excipients for melt extrusion with two poorly water-soluble drugs by solubility parameter calculation and thermal analysis, Int J Pharmaceutics 226(2001)147-161。2つの固体の固溶体の形成時に、1つの固体が他方の固体(即ちポリマー)の補助溶媒(即ち、可溶化のため)として機能する能力は、補助溶媒がポリマーの可塑剤として機能する能力に依存し、かつ/またはそれらの溶解度パラメーターの相対的類似性に基づきうる。
【0021】
ポリエチレングリコール
ポリエチレングリコール(「PEG」)は、一般式C2nH4n+2On+1を有し、これは、以下のように表しうる:
【化1】

【0022】
ポリマーであるので、ポリエチレングリコールは、真融点に対立するものとしてガラス転移温度(Tg)(これは、ポリマーの軟化点または溶融温度と同じかまたは異なりうる)を有する。特定の範囲において、ポリエチレングリコールのガラス転移温度は、その分子量の増加に伴って増加する。例えば、PEG400は4〜8℃のTgを有し、PEG600は20〜25℃のTgを有し、PEG1500は44〜48℃のTgを有し、PEG4000は54〜58℃のTgを有し、PEG6000は56〜63℃のTgを有する。ポリ(エチレングリコール)は、種々の製品に使用されている非毒性の水溶性ポリマーである。例えば、それは緩下薬、スキンクリームおよび練り歯磨きに使用されている。
【0023】
PEG-3350[HO(C2H4O)n]は、平均分子量3350の合成ポリグリコールである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従って、必要とされるのは、治療薬およびポリマーから眼内インプラントを製造する方法であって、該インプラント中における望ましくない治療薬および/またはポリマー最終生成物または治療薬の結晶形態の発生を生じないかまたは減少させる製造法である。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、この必要を満たし、治療薬およびポリマーを含んで成る眼内インプラントを製造する方法であって、該インプラント中における望ましくない治療薬および/またはポリマー最終生成物の発生を生じないかまたは減少させる製造法を提供する。さらに、治療薬はインプラント中に結晶形態で存在せず、従って、治療薬の多形体がインプラントに存在しない。本発明は、治療薬および好適なポリマーを含んで成る眼内使用に適したインプラントを製造するための低温溶融押出法を提供することによって、この必要を満たすことができる。
【0026】
本発明の方法は、1つまたはそれ以上の眼科的に活性な環状脂質治療薬を含んで成る長時間および持続放出インプラントを提供する。これによって、眼にインプラントを配置された患者は、1つまたはそれ以上の薬剤の付加的投与を必要とせずに、治療量の環状脂質治療薬を比較的長いまたは延長された時間にわたって投与される。それによって、患者は、眼の治療に使用しうる治療活性剤を、比較的長い期間にわたって、例えば、少なくとも約1週間程度、例えばインプラントの投与後約2〜約6ヵ月間にわたって有する。そのような長期放出時間は、眼症状の有効治療を得ることを促進する。さらに、そのようなインプラントを好ましくは結膜下に投与することは、同量の環状脂質治療薬を局所組成物の形態で眼に投与するのと比較して、少なくとも1つの副作用(例えば充血)の発生および/または重症度を減少させることができる。さらに、環状脂質治療薬を含んで成るインプラントの結膜下投与は、環状脂質治療薬を網膜に与えて、網膜疾患または症状を治療するのに有効になりうる。環状脂質治療薬を含有するインプラントの結膜下投与は、そのような薬剤の網膜への特に有効な送達を生じるので、本発明は、全身投与によって生じうる副作用を生じずに、環状脂質治療薬を眼組織に送達する特に有利な方法を提供する。
【0027】
本発明によるインプラントは、環状脂質治療薬、および環状脂質治療薬と組み合わされた薬剤放出持続成分(例えば好適なポリマー)を含んで成る。本発明によれば、環状脂質治療薬は、眼症状を治療する(例えば、高圧眼において、眼内圧を低下させるかまたは低下した眼内圧を維持するか、または神経保護活性を有する環状脂質治療薬の有効量を眼の網膜に与える)のに有効なプロスタグランジン、プロスタグランジン類似体、プロスタグランジン誘導体、プロスタミド、プロスタミド類似体およびプロスタミド誘導体を含んで成るか、それから基本的に成るか、またはそれから成ることができる。ポリマーを環状脂質治療薬と組み合わして、インプラントが配置されている眼への、ある量の環状脂質治療薬の放出を持続させる。環状脂質治療薬は、インプラントが例えば結膜下に投与された後に、長期間にわたって眼に放出され、眼症状の少なくとも1つの症候を治療または減少させるのに有効である。本発明のインプラントは、実質量の眼充血を生じずに、眼内圧を低下させるか、または眼内圧を低下したレベルに維持することによって、高眼圧を軽減することができる。または、本発明のインプラントは、環状脂質治療薬を、強膜を経て後区の組織、特に網膜に送達することによって、眼の後区の障害、特に、網膜症状、例えば、滲出性または非滲出性の加齢性黄斑変性を軽減することができる。
【0028】
1つの実施形態において、インプラントは、環状脂質治療薬および生分解性ポリマーマトリックスを含んで成る。環状脂質治療薬は、生分解性ポリマーマトリックスと組み合わされ、該ポリマーマトリックスは、眼症状を治療するのに有効なインプラントからのある量の環状脂質治療薬の放出を持続するのに有効な速度で薬剤を放出する。インプラントは、生分解性または生侵食性であることができ、長期間にわたって、例えば1週間以上、例えば約3ヶ月間またはそれ以上、および約6ヵ月間またはそれ以上までの期間にわたって、眼の前区および後区のいずれかまたは両方に、環状脂質治療薬の持続放出を与える。
【0029】
インプラント生分解性ポリマー成分は、約1000キロダルトン(kD)〜約10kDの分子量を有する生分解性ポリマーの混合物であることができる。例えば、生分解性ポリマーは、約500kD〜約50kD、好ましくは約64kD未満の分子量を有するポリ乳酸ポリマーを含んで成ることができる。付加的にまたは選択的に、インプラントは、ポリ乳酸の第一生分解性ポリマー、およびポリ乳酸の異なる第二生分解性ポリマーを含んで成ることができる。さらに、インプラントは、種々の生分解性ポリマーの混合物を含んで成ることができ、各生分解性ポリマーは、約0.2デシリットル/グラム(dL/g)〜約1.0dL/gの内部粘度を有する。
【0030】
本明細書に開示されているインプラントの環状脂質治療薬は、眼症状を治療するのに有効なプロスタグランジン、プロスタグランジン類似体、プロスタグランジン誘導体、プロスタミド、プロスタミド類似体およびプロスタミド誘導体を包含しうる。好適なプロスタミド誘導体の一例は、ビマトプロストである。本発明の1つの実施形態は、持続放出ビマトプロストインプラントであって、好ましくは眼の結膜下に埋め込まれ、それによってビマトプロストを毎日投与する必要性を除くインプラントである。持続放出インプラントは、長期間にわたって、この降圧薬の制御放出を与えることができる。
【0031】
本発明の範囲に含まれる環状脂質治療薬の他の例として、限定するものではないが、ラタノプロスト、トラボプロストおよびウノプロストンならびにこれらの塩、誘導体および類似体である。さらに、インプラントは、環状脂質治療薬、ならびに眼症状を治療するのに有効となりうる1つまたはそれ以上の付加的な異なる治療薬と共に配合しうる。
【0032】
本発明インプラントの製造方法は、環状脂質治療薬と、1つまたはそれ以上の生分解性ポリマーとを組み合わすかまたは混合することを含む。次に、混合物を押し出すか、圧縮するか、または溶液流延して、単一組成物を形成しうる。次に、単一組成物を加工して、眼位置、例えば、結膜下、テノン下、硝子体内または強膜内位置における配置に適したインプラントを製造しうる。
【0033】
インプラントを眼領域、例えば結膜下(それに限定されない)に配置して、前区または後区の種々の眼症状を治療することができる。例えば、インプラントは環状脂質治療薬を前区の組織に送達することができ、それによって高眼圧を低下させ、このようにして、増加した眼内圧に関連した眼症状の少なくとも1つの症候を減少させるのに有効でありうる。または、本発明インプラントの結膜下投与は、神経変性疾患、例えば加齢性黄斑変性(ARMD)、例えば「湿性」または「乾性」ARMDの治療のために、環状脂質治療薬を網膜および後区の他の組織に送達するのに有効でありうる。
【0034】
本発明は、患者を治療するための薬剤の製造における、本明細書に記載されている環状脂質治療薬およびポリマー成分の使用も含む。
【0035】
低温押出法
本発明は、眼内インプラントの低温製造法を含む。該方法は、環状脂質治療薬およびポリマーを組み合わせて混合物を形成することによって行われる。次に、混合物を約50℃〜約80℃の温度に加熱し、次に、加熱混合物を押し出し、それによって眼内使用に適したインプラントを製造する。「低温」法とは、約50℃〜約80℃の温度で行われる方法を意味する。この方法によって製造されたインプラントは眼内インプラントであり、これは、インプラントが、眼組織内または眼腔または実質的な眼腔内への挿入または埋め込みに好適な構造にされ形状にされていることを意味する。従って、本発明の方法によって製造されるインプラントは、例えば、下記の位置への挿入または埋め込みに好適である:前房、後房、硝子体腔、脈絡膜、脈絡膜上腔、網膜下腔、結膜、結膜下腔、強膜外隙、角膜内腔、角膜上腔、強膜、毛様体輪、外科的誘発無血管領域、網膜黄斑、網膜およびテノン下位置。好ましくは、インプラントが抗高圧治療薬(例えば、プロスタグランジン類似体、α-アドレナリン受容体作用薬またはβ-遮断薬)を含有する場合、インプラントを結膜下に埋め込むかまたは挿入し、それによって、抗高圧治療薬の標的組織である毛様体に近接した位置に配置する。
【0036】
本発明の低温法は眼内使用に適したインプラントを生じるので、局所的(即ち、点眼薬として)および全身的投与経路は、本発明の範囲に含まれない。さらに、本発明の範囲に含まれる方法によって製造されたインプラントは、直径において微小粒子またはミクロスフェアではなく(微小球またはミクロスフェアは約0.1μ〜約5μの直径を有する)、何百または何千の微小粒子またはミクロスフェアの集団の投与に対して、単一インプラントまたは少数(即ち、5個またはそれ以下)のインプラントとして、眼内投与を目的とした個別固体インプラント(直径約0.1mm〜約10mm)である。
【0037】
本発明の範囲に含まれる眼内インプラントの低温製造法において、環状脂質治療薬は、プロスタグランジン、プロスタグランジン類似体、およびそれらの混合物であることができる。例えば、環状脂質治療薬は、ビマトプロスト、ビマトプロスト類似体、ラタノプロスト、ラタノプロスト類似体、トラボプロスト、トラボプロスト類似体、ウノプロストン、ウノプロストン類似体、プロスタグランジンE1、プロスタグランジンE1類似体、プロスタグランジンE2、プロスタグランジンE2類似体、およびそれらの混合物であることができる。本発明の範囲に含まれる好ましい環状脂質治療薬は、ビマトプロスト、ビマトプロスト類似体、およびそれらの混合物である。
【0038】
ポリマーマトリックスは、生分解性または非生分解性ポリマーであることができる。生分解性ポリマーは、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリラクチド-コ-ポリグリコリド、ポリ(ポリラクチド-コ-グリコリド)[PLGA]コポリマーおよびそれらのコポリマー、ならびにこれらのポリマーの誘導体であることができる。使用するのに好適な他のポリマーは、ポリカプロラクトン、およびPLGA-PEGまたはPLA-PEGジブロックまたはトリブロックポリマーを包含しうる。
【0039】
本発明の眼内インプラント低温製造法において、ポリマーは、インプラントの約30wt%〜約95wt%を占めることができ、環状脂質治療薬はインプラントの約5wt%〜約70wt%を占めることができる。注目すべきことに、インプラントから放出される環状脂質治療薬の効力は、その最大効力の少なくとも約50%であることができる。
【0040】
本発明の眼内インプラント低温製造法の詳細実施形態は、下記の工程を有しうる:(a)プロスタグランジン類似体および生分解性ポリマーを合わして混合物を形成する工程;(b)該混合物を約50℃〜約80℃の温度に加熱する工程;および(c)該加熱混合物を押し出し、それによって眼内使用に適したインプラントを製造する工程。
【0041】
本発明の選択的実施形態は、先ず、環状脂質治療薬、第一生分解性ポリマーおよび第二生分解性ポリマーを合わして混合物を形成することによって、眼内インプラントを製造する方法である。好ましくは、第一生分解性ポリマーおよび第二生分解性ポリマーは異なるポリマーであり、環状脂質治療薬、第一生分解性ポリマーおよび第二生分解性ポリマーの溶解度は、実質的にほぼ同等であり、第二生分解性ポリマーの融点は、第一生分解性ポリマーの溶融温度より低い。この方法の次の工程は、環状脂質治療薬、第一生分解性ポリマーおよび第二生分解性ポリマーを合わすことによって形成された混合物を加熱する工程である。混合物を、第二生分解性ポリマーの溶融温度より低い温度に加熱する。好都合には、混合物が加熱される温度は、環状脂質治療薬が実質的分解を示す温度よりも低い。この方法における第三工程は、加熱混合物を押し出し、それによって眼内使用に適したインプラントを製造する工程である。
【0042】
本発明のこの選択的実施形態において、第一生分解性ポリマーは、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリラクチド-コ-グリコリド、ポリ(ポリラクチド-コ-グリコリド)コポリマー、およびそれらのコポリマーであることができる。さらに、第二生分解性ポリマーは、任意の置換ポリラクチド、ポリグリコリド、またはポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、任意のポリ(カプロラクトン)または任意の前記ポリマーの置換誘導体、ならびに、低分子量ポリエーテルがブロックとしてポリマーと共に組み込まれている任意の前記ポリマーであることができる。
【0043】
意義深いことに、第二生分解性ポリマーは、第一生分解性ポリマーおよび環状脂質治療薬の補助溶媒として機能する。これは、混合物が第二生分解性ポリマーの溶融温度に加熱された際に、これら3成分の固溶体が形成されることを可能にする。第二生分解性ポリマーは、低い溶融温度(即ち、約50℃〜約80℃)を有し、重要なことに、環状脂質治療薬および第一生分解性ポリマーの両方の溶解度パラメーターに類似した溶解度パラメーターを有する。特に、好適な第二生分解性ポリマーは下記を包含しうる:
ポリマー 溶解度パラメーター(δ)
デカフルオロブタン 10.6
ポリ(イソブチレン) 16.2
ポリ(ヘキセメチレンアジパミド) 13.6
ポリプロピレン 18.0
ポリエチレン 18.1
ポリビニルクロリド 21.4
ならびに、約80℃未満の軟化点および約12〜約28(MPa)1/2の溶解度パラメーターを有する他の低分子量ポリマー、ワックスおよび長鎖炭化水素。
【0044】
好ましくは、環状脂質治療薬、第一生分解性ポリマーおよび第二生分解性ポリマーの溶解度は、全て、互いの約10MPa1/2以内である。さらに、環状脂質治療薬、第一生分解性ポリマーおよび第二生分解性ポリマーの溶解度パラメーター(溶解度)が全て、約15〜30MPa1/2であるのも好ましい。
【0045】
第一生分解性ポリマーは、インプラントの約30wt%〜約90wt%を占めることができ、第二生分解性ポリマーは、インプラントの約50wt%〜約30wt%を占めることができ、環状脂質治療薬は、インプラントの約5wt%〜約30wt%を占めることができる。
【0046】
本発明のこの選択的実施形態の詳細実施形態は、下記の工程を含んで成る眼内インプラントの製造法である:
(a) 下記の成分を合わして、混合物を形成する工程:
(i) プロスタグランジン類似体であって、インプラントの約5wt%〜約30wt%(かつ70wt%までも)を占めるプロスタグランジン類似体;
(ii) ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーであって、インプラントの約30wt%〜約90wt%を占めるポリ(ラクチド-コ-グリコリド)コポリマー;
(ii) 第二生分解性ポリマーであって、インプラントの約5wt%〜約40wt%を占める第二生分解性ポリマー;
ここで、
(α) ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーおよび第二生分解性ポリマーは、異なるポリマーであり;
(β) プロスタグランジン類似体、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーおよび第二生分解性ポリマーの溶解度は、全て、互いの約10MPa1/2以内であり;
(γ) 第二生分解性ポリマーの溶融温度は、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーの溶融温度より低く、さらに、プロスタグランジン類似体が実質的分解を示すかまたはそのラベル強度(label strength)の約50%未満の効力を示す温度より低い;
(b) 該混合物を、第二生分解性ポリマーのより低い溶融温度に加熱する工程であって、それによって第二生分解性ポリマーがプロスタグランジン類似体およびポリ(ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーの溶媒として機能しうる工程;および
(c) 該加熱混合物を押し出す工程であって、それによって眼内使用に適したインプラントを製造する工程。
【0047】
本発明は、本明細書において先に記載したように製造したインプラントを使用して、眼症状を治療する方法も含む。インプラントは、眼内位置への挿入または埋め込み後に、少なくとも1週間にわたって、環状脂質治療薬を放出する(例えば、その治療有効量を放出する)ことができる。環状脂質治療薬は、非酸性環状脂質治療薬であることができる。
【0048】
重要なことに、インプラントは、約0.4mm〜約12mmの平均最大寸法を有しうる。
【0049】
環状脂質治療薬は、下記の式(I)を有することができ:
【化2】

式中、
破線結合は、シスまたはトランス配置であることができる単結合または二重結合を表し;
Aは、2〜6個の炭素原子を有するアルキエン(alkyene)またはアルケニレン基であり、該基は、1個またはそれ以上のオキシド基で中断されてもよく、1個またはそれ以上のヒドロキシ、オキソ、アルコキシまたはアルキルカルボキシル基で置換されてもよく、該アルキル基は1〜6個の炭素原子を有し;
Bは、3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基であるか、またはアリール基であって、該アリール基は4〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビルアリールおよびヘテロアリールから成る群から選択され、該ヘテロ原子は、窒素、酸素および硫黄原子から成る群から選択され;
Xは、水素、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基、R5-C(=O)-またはR5-O-C(=O)-から成る群から選択され、ここでR5は1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基であり;
Zは、=Oであるか、または2個の水素基を表し;
R1およびR2の1つは、=O、-OHまたは-O-C(=O)-R6基であり、他方は-OHまたは-O-C(=O)-R6であるか、またはR1は=O、R2はHであり、ここでR6は1〜約20個の炭素原子を有する飽和または不飽和非環式炭化水素基であるかまたは-(CH2)mR7であり、ここでmは0〜10であり、R7は3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基であるかまたは前記のように定義されるヒドロカルビルアリールまたはヘテロアリール基であり;
または、医薬的に許容されるその塩であり;
但し、Bがヘテロ原子含有側基で置換されておらず、Zが=Oである場合、Xは-OR4でないものとする。
【0050】
または、環状脂質治療薬は、下記の式(II)を有することができる:
【化3】

[式中、
yは、0または1であり;
xは、0または1であり;
xおよびyの両方ともが1ではなく;
Yは、アルキル、ハロ、ニトロ、アミノ、チオール、ヒドロキシ、アルキルオキシ、アルキルカルボキシおよびハロ置換アルキルから成る群から選択される基であり、該アルキル基は1〜6個の炭素原子を有し;
nは、0、または1〜3の整数であり;
R3は、=O、-OHまたは-O-C(=O)R6である]。
【0051】
または、環状脂質治療薬は、下記の式(III)の化合物を含んで成ることができる:
【化4】

[式中、ハッチ線はα配置を示し、ベタ塗三角形はβ配置を示す]。
【0052】
または、環状脂質治療薬は、下記の式(IV)の化合物を含んで成ることができる:
【化5】

[式中、Y1は、Clまたはトリフルオロメチルである]。
【0053】
または、環状脂質治療薬は、下記の式(V)の化合物:
【化6】

および、その9-および/または11-および/または15-エステルを含んで成ることができる。ZはOであることができ、XはNH2およびOCH3から成る群から選択することができる。または、Yは0であることができ、ZはOであることができ、Xはアルコキシおよびアミノ基から成る群から選択できる。
【0054】
または、環状脂質治療薬は、下記から成る群から選択される化合物を含んで成る:
a) シクロペンタンヘプテノール-5-シス-2-(3α-ヒドロキシ-5-フェニル-1-トランス-ペンテニル)-3,5-ジヒドロキシ、[1α,2β,3α,5α];
b) シクロペンタンヘプテンアミド-5-シス-2-(3α-ヒドロキシ-5-フェニル-1-トランス-ペンテニル)-3,5-ジヒドロキシ、[1α,2β,3α,5α];
c) シクロペンタンN,N-ジメチルヘプテンアミド-5-シス-2-(3α-ヒドロキシ-5-フェニル-1-トランス-ペンテニル)-3,5-ジヒドロキシ、[1α,2β,3α,5α];
d) シクロペンタンヘプテニルメトキシド-5-シス-2-(3α-ヒドロキシ-5-フェニル-1-トランス-ペンテニル)-3,5-ジヒドロキシ、[1α,2β,3α,5α];
e) シクロペンタンヘプテニルエトキシド-5-シス-2-(3α-ヒドロキシ-4-メタ-クロロフェノキシ-1-トランス-ブテニル)-3,5-ジヒドロキシ、[1α,2β,3α,5α];
f) シクロペンタンヘプテニルアミド-5-シス-2-(3α-ヒドロキシ-4-メタ-クロロフェノキシ-1-トランス-ブテニル)-3,5-ジヒドロキシ、[1α,2β,3α,5α];
g) シクロペンタンヘプテニルアミド-5-シス-2-(3α-ヒドロキシ-4-メタ-トリフルオロメチル-フェノキシ-1-トランス-ブテニル)-3,5-ジヒドロキシ、[1α,2β,3α,5α];
h) シクロペンタンN-イソプロピルヘプテンアミド-5-シス-2-(3α-ヒドロキシ-5-フェニル-1-トランス-ペンテニル)-3,5-ジヒドロキシ、[1α,2β,3α,5α];
i) シクロペンタンN-エチルヘプテンアミド-5-シス-2-(3α-ヒドロキシ-5-フェニル-1-トランス-ペンテニル)-3,5-ジヒドロキシ、[1α,2β,3α,5α];
j) シクロペンタンN-メチルヘプテンアミド-5-シス-2-(3α-ヒドロキシ-5-フェニル-1-トランス-ペンテニル)-3,5-ジヒドロキシ、[1α,2β,3α,5α];
k) シクロペンタンヘプテノール-5-シス-2-(3α-ヒドロキシ-4-メタ-クロロフェノキシ-1-トランス-ブテニル)-3,5-ジヒドロキシ、[1α,2β,3α,5α];
l) シクロペンタンヘプテンアミド-5-シス-2-(3α-ヒドロキシ-4-m-クロロフェノキシ-1-トランス-ブテニル)-3,5-ジヒドロキシ、[1α,2β,3α,5α];および
m) シクロペンタンヘプテノール-5-シス-2-(3α-ヒドロキシ-5-フェニルペンチル)-3,5-ジヒドロキシ、[1α,2β,3α,5α]。
【0055】
または、環状脂質治療薬は、下記の式(VI)の化合物、または医薬的に許容されるその塩を含んで成ることができる:
【化7】

[式中、
破線結合は、シスまたはトランス配置であることができる単結合または二重結合を表し;
Aは、2〜6個の炭素原子を有するアルキエンまたはアルケニレン基であり、該基は、1個またはそれ以上のオキシド基で中断されてもよく、1個またはそれ以上のヒドロキシ、オキソ、アルコキシまたはアルキルカルボキシル基で置換されてもよく、該アルキル基は1〜6個の炭素原子を有し;
Dは、2〜10個の炭素原子を有する分岐鎖または非分岐鎖アルキルまたはヘテロアルキル基、3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、またはアリール基であって、該アリール基は4〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビルアリールおよびヘテロアリールから成る群から選択され、該ヘテロ原子は、窒素、酸素および硫黄原子から成る群から選択され;
Xは、水素、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基、R5-C(=O)-またはR5-O-C(=O)-から成る群から選択され、ここでR5は1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基であり;
Zは、=Oであるか、または2個の水素基を表し;
R1およびR2の1つは、=O、-OHまたは-O-C(=O)-R6基であり、他方は-OHまたは-O-C(=O)-R6であるか、またはR1は=O、R2はHであり、ここでR6は1〜約20個の炭素原子を有する飽和または不飽和非環式炭化水素基であるかまたは-(CH2)mR7であり、ここでmは0〜10であり、R7は3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基であるかまたは前記のように定義されるヒドロカルビルアリールまたはヘテロアリール基である]。
【0056】
または、環状脂質治療薬は、下記の式(VII)の化合物を含んで成ることができる:
【化8】

【0057】
または、環状脂質治療薬は、下記の式(VIII)の化合物を含んで成ることができる:
【化9】

[式中、ハッチ線はα配置を示し、ベタ塗三角形はβ配置を表す]。
【0058】
または、環状脂質治療薬は、下記の式(IX)の化合物を含んで成ることができる:
【化10】

【0059】
または、環状脂質治療薬は、下記の式(X)の化合物を含んで成ることができる:
【化11】

【0060】
または、環状脂質治療薬は、下記の式(XI)の化合物を含んで成ることができる:
【化12】

【0061】
本発明の他の態様および利点は、特に添付の図面と共に考慮される場合に、下記の説明および請求の範囲に示されている。
下記の図面は、本発明の特徴および態様を示している。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】種々の温度で作製した押出インプラントから放出されたビマトプロストの効力(y軸)における、減少する温度(x軸)の作用を示す棒グラフである。
【図2】図2は、57℃で作製された図1の押出インプラントから、50日間(x軸)にわたって放出されたビマトプロストの合計量(y軸)を示すグラフである。
【図3】図3は、50日間(x軸)にわたって、図2のインプラントから放出されたビマトプロストの毎日の量(y軸)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明は、持続放出眼内インプラントを製造する新規方法の発見に基づいている。本発明の新規方法で製造されるインプラントは、治療薬およびポリマーを含んで成ることができる。ポリマーは、生体内で治療薬がそれから放出される担体として機能する。治療薬およびポリマーを加熱し、押し出して、眼内使用に適したインプラントを製造する。好ましくは、ポリマーは、治療薬がその効力の実質量(即ち、50%またはそれ以上)を失う温度より低いTgを有する。治療薬がその効力の実質量を失う温度より高いTgをポリマー(第一ポリマー)が有する場合、治療薬および第一ポリマーの未加熱混合物に補助溶媒を添加することを含む方法によって、インプラントを製造することができる。補助溶媒も、ポリマー(第二ポリマー)であることができる。
【0064】
補助溶媒は、2つの重要な特性を有するべきである。第一に、補助溶媒は、治療薬および第一ポリマーの両方の溶解度(即ち、溶解度パラメーター)とほぼ同等の溶解度(即ち、溶解度パラメーター)を有するべきである。明らかに、これは、治療薬の溶解度が第一ポリマーの溶解度とほぼ同等であることを必要とする。ほぼ同等の溶解度を有する治療薬、第一ポリマーおよび補助溶媒の選択によって、補助溶媒を溶融させるための3つのインプラント成分の加熱が、補助溶媒への治療薬および第一ポリマーの可溶化を生じる。
【0065】
補助溶媒の第二の重要特性は、治療薬がその効力の実質量を失う温度より低い軟化点を補助溶媒が有することである。従って、本発明の方法によって、治療薬、第一ポリマーおよび補助溶媒を混合し、次に、補助溶媒の溶融温度に加熱した場合に、補助溶媒が治療薬および第一ポリマーを可溶化し、しかも、治療薬の効力の不当な損失を伴わずにそうする。補助溶媒がそれ自体ポリマー(第二ポリマー)である場合、補助溶媒は、治療薬および第一ポリマーを固溶体の形態で可溶化する。
【0066】
持続放出インプラント(例えば、眼の結膜下に埋め込まれる)は、長期間にわたって降圧薬の制御放出を与えることによって、抗高圧活性剤を毎日投与する必要性をなくす。抗高圧薬は、プロスタグランジン類似体、例えばビマトプロストであることができる。ビマトプロスト含有ポリマーインプラントは、長期間にわたってビマトプロストの制御投与量を眼に送達する有効な方法でありうる。本明細書に記載されているように、1つまたはそれ以上のインプラントの結膜下投与による治療薬の制御および持続投与は、眼の前区および/または後区の眼症状を治療するのに使用しうる。インプラントは、医薬的に許容される高分子組成物を含んで成り、1つまたはそれ以上の医薬活性剤、例えば環状脂質または他の眼内圧降下薬または神経保護薬を、長期間にわたって放出するように配合される。インプラントは、治療有効投与量の1つまたはそれ以上の薬剤を眼の領域に与えて、1つまたはそれ以上の望ましくない眼症状を治療または予防するのに有効である。従って、単一インプラント投与によって、患者に繰り返しの注射または繰り返しの局所点眼薬投与を受けさせずに、環状脂質治療薬を、それらが必要とされ維持される部位において長期間にわたって利用可能にすることができる。
【0067】
本発明のインプラントは、治療成分、および該治療成分と合わされた薬剤放出持続成分を含んで成る。本発明によれば、治療成分は、環状脂質治療薬を含んで成るか、それから本質的に成るか、またはそれから成る。薬剤放出持続成分は、治療成分と合わされて、インプラントが配置されている眼への、有効量の環状脂質治療薬の放出を持続させる。その量の環状脂質治療薬が、インプラントを患者の眼に埋め込むかまたは挿入した後に約1週間より長い期間にわたって放出され、眼症状の症候、例えば高眼圧または網膜変性の治療または軽減に有効である。
【0068】
定義:
「約」は、それによって修飾されている数、範囲、値またはパラメーターが、それより10%多いおよび10%少ない数、範囲、値またはパラメーターを包含することを意味する。
【0069】
「治療成分」は、眼症状を治療するために使用される1つまたはそれ以上の治療薬または物質を含んで成る、ポリマーマトリックス以外のインプラントの部分を意味する。治療成分は、インプラントの個別領域であることができ、またはインプラント全体に均質に分散していてもよい。治療成分の治療薬は、少なくとも1つの環状脂質を含んで成り、一般に眼科的に許容され、インプラントを眼に配置した際に重大な有害反応を生じない形態で与えられる。
【0070】
「環状脂質治療薬」は、眼治療活性を有する1つまたはそれ以上の環状脂質を含んで成る、眼内インプラントの一部を意味し、限定するものではないが、プロスタグランジン、プロスタグランジン類似体、プロスタグランジン誘導体、プロスタミド、プロスタミド類似体およびプロスタミド誘導体を包含し、それは、眼治療作用を与えるのに有効であり、例えば、限定するものではないが、高眼圧を低下させるかまたは低下した眼内圧を維持するか、または神経保護活性を有する環状脂質治療薬の有効量を眼の網膜に与えるのに有効である。抗緑内障活性を有する環状脂質は、眼内圧が亢進した眼に環状脂質を適用し、適用後に眼内圧が低下したかを評価することによって同定できる。神経保護活性を有する環状脂質は、例えば、神経変性障害、例えばARMDを有する眼に、環状脂質を硝子体内投与し、神経変性が遅くなったかまたは停止したか、または視力が向上したかを評価することによって同定しうる。
【0071】
「薬剤放出持続成分」は、インプラントからの治療薬の持続放出を与えるのに有効な、インプラントの一部を意味する。薬剤放出持続成分は、生分解性ポリマーマトリックスであることができ、またはそれは治療成分を含んで成るインプラントのコア領域を覆うコーティングであることができる。
【0072】
「〜と合わす」は、〜と混合する、〜に分散させる、〜に結合させる、〜を覆う、または〜を囲むことを意味する。
【0073】
「眼領域」または「眼部位」は、眼球の任意の区域を意味し、眼の前区および後区を包含し、それは一般に、眼球に見出される任意の機能的(例えば、視覚のため)または構造的組織、または眼球の内側または外側に部分的にまたは完全に沿って並ぶ組織または細胞層を包含するが、それらに限定されない。眼領域における眼球の区域の特定の例として、前房、後房、硝子体腔、脈絡膜、脈絡膜上腔、結膜、結膜下腔、強膜外隙、角膜内腔、角膜上腔、強膜、毛様体輪、外科的誘発無血管領域、網膜黄斑、および網膜が挙げられる。
【0074】
「眼症状」は、眼、または眼の部分または領域の1つを冒すかまたはそれに係る疾患、病気または症状を意味する。一般的に言えば、眼は、眼球、および眼球を構成する組織および液体、眼周囲筋(例えば、斜筋および直筋)、ならびに眼球内にまたはそれに近接に存在する視神経の一部を包含する。前眼症状は、前(即ち、眼の前方)眼領域または部位、例えば、水晶体包の後壁または毛様体筋の前方に位置する眼周囲筋、眼瞼、または眼球の組織または液体を、冒すかまたはそれに係わる疾患、病気または症状である。従って、前眼症状は、結膜、角膜、前房、虹彩、後房(網膜の後ろであるが、水晶体包の後壁の前)、水晶体または水晶体包、ならびに前眼領域または部位を血管化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒すかまたはそれらに係わる。
【0075】
従って、前眼症状は、例えば、下記のような疾患、病気または症状を包含しうる:無水晶体症;偽水晶体;乱視;眼瞼痙攣;白内障;結膜疾患;結膜炎;角膜疾患;角膜潰瘍;眼乾燥症候群;眼瞼疾患;涙器疾患;涙道閉塞症;近視;老眼;瞳孔障害;屈折障害および斜視。緑内障は、前眼症状と考えることもでき、なぜなら、緑内障治療の臨床目的が、眼の前房における水性液の高圧を低下させる(即ち、眼内圧を低下させる)ことでありうるからである。
【0076】
後眼症状は、後眼領域または部位、例えば、脈絡膜または強膜(水晶体包の後壁面の後方位置にある)、硝子体、硝子体房、網膜、視神経(即ち、視神経円板)、および後眼領域または部位を血管化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒すかまたはそれらに係わる疾患、病気または症状である。従って、後眼症状は、例えば、以下のような疾患、病気または症状を包含しうる:急性黄斑視神経網膜症;ベーチェット病;脈絡膜新生血管形成;糖尿病性ブドウ膜炎;ヒストプラスマ症;感染症、例えば、真菌またはウイルス性感染症;黄斑変性、例えば、急性黄斑変性、非滲出性加齢性黄斑変性および滲出性加齢性黄斑変性;浮腫、例えば、黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫;多病巣性脈絡膜炎;後眼部位または位置を冒す眼外傷;眼腫瘍;網膜障害、例えば、網膜中心静脈閉塞、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉塞症、網膜剥離、ブドウ膜炎網膜疾患;交感性眼炎;フォークト・小柳・原田(VKH)症候群;ブドウ膜拡散(uveal diffusion);眼レーザー治療によって生じたまたは影響を受けた後眼症状;光ダイナミック療法によって生じたまたは影響を受けた後眼症状、光凝固、放射線性網膜症、網膜上膜障害、網膜静脈分岐閉塞症、前部虚血性視神経障害、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、網膜色素変性および緑内障。緑内障は後眼症状と考えることができ、なぜなら、治療の目的が、網膜細胞または視神経細胞の損傷または損失による視力低下を予防するかまたは視力低下の発生を減少させること(即ち、神経保護)であるからである。
【0077】
「生分解性ポリマー」は、生体内で分解する1つまたはそれ以上のポリマーを意味し、1つまたはそれ以上のポリマーの侵食が治療薬の放出と同時にまたはそれに続いて起こる。特に、ポリマー膨潤によって薬剤を放出する作用をするメチルセルロースのようなヒドロゲルは、「生分解性ポリマー」という用語から明確に除外される。「生分解性」および「生侵食性」という用語は同義語であり、本明細書において交換可能に使用される。生分解性ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、または3種類以上のポリマー単位を含んで成るポリマーであってよい。
【0078】
「治療する」、「治療すること」または「治療」は、眼症状、眼傷害または損傷の減少もしくは回復もしくは予防、または負傷したもしくは損傷した眼組織の治癒を促進することを意味する。治療は、眼症状、眼傷害または損傷の少なくとも1つの症候を減少させるのに一般に有効である。
【0079】
「治療有効量」は、眼または眼の領域に、重大な負のまたは有害な副作用を生じずに、眼症状を治療するかまたは眼障害または損傷を減少させるか予防するのに必要とされる薬剤のレベルまたは量を意味する。前記に照らして、治療薬、例えば環状脂質の、治療有効量は、眼症状の少なくとも1つの症候を減少させるのに有効な量である。
【0080】
種々の期間にわたって薬物負荷を放出することができるインプラントが開発されている。これらのインプラントは、眼の結膜下腔に挿入された場合に、治療レベルの環状脂質を長期間(例えば、約1週間またはそれ以上)にわたって与える。開示されているインプラントは、眼症状、例えば、高い眼内圧に関連した眼症状の治療、より具体的には、緑内障の少なくとも1つの症候を減少させるのに有効である。
【0081】
インプラントの製造法も開発されている。例えば、本発明は、治療用ポリマーインプラント、ならびにそのようなインプラントの製造法および使用法を包含する。本発明の1つの実施形態において、インプラントは、生分解性ポリマーマトリックスを含んで成る。生分解性ポリマーマトリックスは、薬剤放出持続成分の1つのタイプである。生分解性ポリマーマトリックスは、生分解性インプラントを製造するのに有効である。生分解性インプラントは、生分解性ポリマーマトリックスと合わされた環状脂質治療薬を含んで成る。マトリックスは、インプラントが眼領域または眼部位、例えば眼の結膜下腔に配置された時点から約1週間以上の期間にわたって、ある量の環状脂質治療薬の放出を持続するのに有効な速度で分解する。
【0082】
シクロペンタンN-エチルヘプテンアミド-5-シス2-シス-2-(3α-ヒドロキシ-5-フェニル-1-トランス-ペンテニル)-3,5-ジヒドロキシ、[1α,2β,3α,5α]の名称を有するプロスタミド、ならびにその誘導体、類似体および/またはエステルは、本発明のこの態様に特に好ましい。この化合物は、ビマトプロストとしても既知であり、商品名Lumigan(登録商標)(Allergan, Inc., CA)で局所眼用液剤において入手可能である。
【0083】
インプラントは、ビマトプロスト、その塩またはその混合物を、含んで成るか、それから基本的に成るか、またはそれから成る治療成分を含んで成ることができる。環状脂質治療薬は、液体、誘導体化、粒子または粉末形態であることができ、それは生分解性ポリマーマトリックスによって閉じ込められてもよい。一般に、環状脂質粒子は、約3000ナノメートル未満の有効平均粒度を有する。特定のインプラントにおいて、粒子は、ほぼ3000ナノメートルより小さいオーダーの有効平均粒度を有しうる。例えば、粒子は、約500ナノメートル未満の有効平均粒度を有しうる。他のインプラントにおいて、粒子は、約400ナノメートル未満の有効平均粒度を有し、さらに他の実施形態において、約200ナノメートル未満の粒度を有しうる。
【0084】
インプラントの環状脂質治療薬は、好ましくは、インプラントの約10wt%〜90wt%である。より好ましくは、環状脂質治療薬は、インプラントの約20wt%〜約80wt%である。好ましい実施形態において、環状脂質治療薬は、インプラントの約20wt%(例えば、15wt%〜25wt%)を占める。他の実施形態において、環状脂質治療薬は、インプラントの約50wt%を占める。
【0085】
インプラントに使用するのに好適な高分子材料または組成物は、眼の機能または生理に実質的な障害を生じないように、眼と生物適合性の材料を包含する。そのような材料は、好ましくは少なくとも部分的に、より好ましくは実質的に完全に、生分解性または生侵食性である。
【0086】
有用な高分子材料の例として、限定するものではないが、有機エステルおよび有機エーテルから誘導され、かつ/またはそれらを含有する材料が挙げられ、該材料は、分解した際に、生理的に許容される分解生成物(モノマーを包含する)を生じる。さらに、無水物、アミド、オルトエステル等から誘導され、かつ/またはそれらを含有する高分子材料を、単独で、または他のモノマーと組み合わして、使用してもよい。高分子材料は、付加重合体または縮合重合体、好都合には縮合重合体であってよい。高分子材料は、架橋または非架橋、例えば軽度以下の架橋であってよく、例えば、高分子材料の約5%未満または約1%未満が架橋されていてよい。大抵は、ポリマーは、炭素および水素の他に、酸素および窒素の少なくとも1つ、好都合には酸素を含有する。酸素は、オキシ、例えばヒドロキシまたはエーテル、カルボニル、例えばノンオキソ-カルボニル、例えばカルボン酸エステル等として存在しうる。窒素は、アミド、シアノおよびアミノとして存在しうる。制御薬物送達のためのカプセル封入を記載しているHeller, Biodegradable Polymers in Controlled Drug Delivery, In: CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, Vol.1, CRC Press, Boca Raton, FL 1987, p.39-90に記載されているポリマーを、本発明のインプラントに使用しうる。
【0087】
他に関心が持たれるのは、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)、および多糖である。関心が持たれるポリエステルは、D-乳酸、L-乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、ポリカプロラクトンおよびそれらの組合せのポリマーを包含する。一般に、L-ラクテートまたはD-ラクテートを使用することによって、ゆっくり侵食するポリマーまたは高分子材料が得られ、侵食はラクテートラセミ体によって実質的に促進される。
【0088】
有用な多糖として挙げられるのは、水不溶性および例えば約5kD〜500kD分子量を特徴とする、アルギン酸カルシウムおよび機能化セルロース、特にカルボキシメチルセルロースエステルであるが、それらに限定されない。関心が持たれる他のポリマーは、生物適合性であり、かつ生分解性および/または生侵食性でありうるポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエーテルおよびそれらの組合せを包含するが、それらに限定されない。
【0089】
本発明に使用されるポリマーまたは高分子材料のいくつかの好ましい特性は、生分解性、治療成分との適合性、本発明の薬物送達システムを製造する際のポリマーの使用容易性、少なくとも約6時間、好ましくは約1日より長い生理環境における半減期、および水不溶性を包含しうる。
【0090】
マトリックスを形成するために含有される生分解性高分子材料は、望ましくは、酵素的および加水分解的不安定性になりやすい。水溶性ポリマーは、加水分解性または生分解性不安定架橋によって架橋させて、有用な水不溶性ポリマーを与えうる。安定度は、モノマーの選択、ホモポリマーを使用するかコポリマーを使用するか、ポリマーの混合物の使用、およびポリマーが末端酸性基を有するか、に依存して、広く変化させることができる。
【0091】
ポリマーの生分解性、従ってインプラントの長期間放出プロフィールを調節するのに同様に重要なのは、インプラントに使用される高分子組成物の相対平均分子量である。種々の分子量の同じかまたは異なる高分子組成物を、インプラントに含有させて、放出プロフィールを調節しうる。特定のインプラントにおいて、ポリマーの相対平均分子量は、約9〜約500kD、一般に約10〜約300kD、より一般的には約12〜約100kDである。
【0092】
いくつかのインプラントにおいて、グリコール酸と乳酸とのコポリマーが使用され、グリコール酸対乳酸の比率によって生分解の速度が調節される。最も急速に分解されるコポリマーは、ほぼ同量のグリコール酸および乳酸を有する。ホモポリマー、または同量でない比率を有するコポリマーは、分解に対して、より抵抗性である。グリコール酸対乳酸の比率は、インプラントの脆性にも影響を与える。ポリ乳酸とポリグリコール酸(PLGA)とのコポリマーにおけるポリ乳酸のパーセンテージは、0〜100%、好ましくは約15〜85%、より好ましくは約35〜65%であることができる。いくつかのインプラントにおいて、50/50 PLGAコポリマーが使用される。
【0093】
結膜下インプラントの生分解性ポリマーマトリックスは、2つまたはそれ以上の生分解性ポリマーの混合物を含んで成ることができる。例えば、そのインプラントは、第一生分解性ポリマーおよび異なる第二生分解性ポリマーの混合物を含んで成ることができる。1つまたはそれ以上の生分解性ポリマーが、末端酸性基を有しうる。
【0094】
侵食性ポリマーからの薬剤の放出は、いくつかのメカニズム、またはメカニズムの組合せの結果である。これらのメカニズムのいくつかは、インプラント表面からの脱離、溶解、水和ポリマーの有孔通路(porous channels)を通る拡散、および侵食を包含する。侵食は、本体(bulk)または表面、または両方の組合せであることができる。本明細書に記載されているように、インプラントのマトリックスは、眼への埋め込み後に1週間以上にわたって、ある量のプロスタミド成分の放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出することができる。特定のインプラントにおいて、治療量の環状脂質治療薬が、結膜下腔への投与後に約30〜35日間以下にわたって放出される。例えば、インプラントがビマトプロストを含んで成り、インプラントのマトリックスが、結膜下への配置後に約1ヵ月間にわたって治療有効量のビマトプロストの放出を持続させるのに有効な速度で分解する。他の例としては、インプラントがビマトプロストを含んで成り、マトリックスが、40日間以上、例えば約6ヵ月間にわたって、治療有効量のビマプロストの放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する。
【0095】
生分解性インプラントの1つの例は、種々の生分解性ポリマーの混合物を含んで成る生分解性ポリマーマトリックスと合わされた環状脂質治療薬を含んで成る。少なくとも1つの生分解性ポリマーは、約63.3kDの分子量を有するポリラクチドである。第二生分解性ポリマーは、約14kDの分子量を有するポリラクチドである。そのような混合物は、インプラントを結膜下に配置してから約1ヵ月間以上にわたる治療有効量の環状脂質治療薬の放出を持続させるのに有効である。
【0096】
生分解性インプラントの他の例は、種々の生分解性ポリマーの混合物を含んで成る生分解性ポリマーマトリックスと合わされた環状脂質治療薬を含んで成り、各生分解性ポリマーは約0.16dL/g〜約1.0dL/gの内部粘度を有する。例えば、1つの生分解性ポリマーは、約0.3dL/gの内部粘度を有しる。第二生分解性ポリマーは、約1.0dL/gの内部粘度を有しうる。他のインプラントは、約0.2dL/g〜0.5dL/gの内部粘度を有する生分解性ポリマーを含んで成りうる。前記の内部粘度は、クロロホルム中、0.1%、25℃で測定しうる。
【0097】
1つの特定インプラント配合物は、2種類のポリラクチドポリマーの組合せと合わされたビマトプロストを含んで成る。ビマトプロストは、インプラントの約20w%で存在する。1つのポリラクチドポリマーは、約14kDの分子量および約0.3dL/gの内部粘度を有し、もう1つのポリラクチドポリマーは、約63.3kDの分子量および約1.0dL/gの内部粘度を有する。2つのポリラクチドポリマーは、インプラントに1:1の比率で存在する。そのようなインプラントは、ビマトプロストを2ヶ月間以上にわたって放出するのに有効でありうる。
【0098】
インプラントから結膜下への環状脂質治療薬の放出は、放出の初期バースト、次に、放出される環状脂質治療薬量の漸増を包含しうるか、または放出は、プロスタミド成分の放出の初期遅延、次に、放出の増加を包含しうる。インプラントが実質的に完全に分解した際に、放出された環状脂質治療薬のパーセントは約100である。本明細書に開示されているインプラントは、眼に配置されてから約1週間までは、完全には放出しないか、または環状脂質治療薬の約100%を放出しない。
【0099】
インプラントの耐用期間にわたって、インプラントからの脂質治療薬の比較的一定した放出速度を与えるのが望ましい。例えば、インプラントの耐用期間にわたって、環状脂質治療薬が約0.01μg/日〜約2μg/日の量で放出されるのが望ましい。しかし、放出速度は、生分解性ポリマーマトリックスの配合に依存して、増加するかまたは減少するように変化させることができる。さらに、プロスタミド成分の放出プロフィールは、1つまたはそれ以上の線形部分、および/または1つまたはそれ以上の非線形部分を包含しうる。好ましくは、いったんインプラントが崩壊または侵食を開始したら、放出速度はゼロより大である。
【0100】
インプラントは、一体構造であることができ、即ち、1つまたはそれ以上の活性剤をポリマーマトリックスに均質に分散させることができ、または封入することができ、その場合、活性剤のレザバー(reservoir)がポリマーマトリックスによって封入される。製造のしやすさにより、一体構造インプラントは、封入形態より一般に好ましい。しかし、封入インプラントによって付与されるより優れた制御は、薬剤の治療レベルが狭い範囲にあるいくつかの状況において有利になりうる。さらに、環状脂質治療薬を包含する治療成分を、マトリックスに非均質パターンで分布させることができる。例えば、インプラントは、インプラントの第二部分と比較して、より高い濃度の環状脂質治療薬を有する部分を含有しうる。
【0101】
本明細書に開示されているインプラントは、約0.1mm〜約12mmの大きさを有しうる。針(シリンジ)で注射されるインプラントの場合、インプラントの最長寸法が、インプラントが針の管を通ることを可能とする限り、インプラントは任意の適切な寸法を有しうる。これは、一般に、インプラントの投与において問題ではない。ヒトの結膜下腔は、比較的大きい体積のインプラントを収容することができる。
【0102】
インプラントの総重量は、約0.1mg〜約5mgである。例えば、単一結膜下インプラント(ヒト患者)は、組み込まれた治療成分を含んで0.1〜2mgの重さであることができる。インプラント中の治療成分の量は、一般に、インプラントの重量の約55wt%〜約95wt%である。従って、中心が1つの材料から構成され、表面が同じかまたは異なる組成物の1つまたはそれ以上の層を有するインプラントを調製することができ、該層は、架橋されていてもよく、または異なる分子量、異なる密度または多孔度などであってよい。例えば、薬剤の初期ボーラスを急速に放出することが望ましい場合、インプラントの中心は、ポリラクテート-ポリグリコレートコポリマーで被覆されたポリラクテートであってよく、それによって初期分解の速度を速めることができる。または、中心がポリラクテートで被覆されたポリビニルアルコールであってよく、それによって、外側のポリラクテートの分解時に、中心が溶解し、眼から急速に流出される。
【0103】
インプラントは、任意の形状を呈することができる(ミクロスフェアおよび微粒子は除く)。インプラントの大きさの上限は、インプラントの耐性、挿入時の大きさ制限、所望される放出速度、取扱の容易性などのような要素によって、決定される。インプラントの大きさおよび形は、放出速度、治療期間、および埋め込み部位における薬剤濃度を調節するのにも使用できる。インプラントが大きいほど、比例的により多い投与量を送達するが、表面積対質量比に依存して、より遅い放出速度を有しうる。インプラントの特定の大きさおよび形状は、活性剤の活性およびその標的組織の位置に適合するように選択される。
【0104】
環状脂質治療薬、ポリマーおよび任意の他の調節剤の比率は、変化する平均比率を用いていくつかのインプラントを配合することによって、実験的に決めることができる。溶解または放出試験のUSP認可方法を使用して、放出速度を測定することができる。例えば、無限降下法(infinite sink method)を使用して、0.01Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS)37℃でpH7.4を含有する測定量の溶液に、インプラントの計量試料を添加し、該溶液量は、放出後の薬剤濃度が飽和の5%未満になる量である。混合物を37℃で維持し、ゆっくり撹拌して、インプラントを懸濁状態に維持する。時間の関数としての溶解薬剤の外観を、当分野で既知の種々の方法、例えば、分光測光法(spectrophotometrically)、HPLC、質量分析などによって、吸収度が一定になるまでか、または薬剤の90%以上が放出されるまで、追跡しうる。
【0105】
本明細書に開示されているインプラントに含有される環状脂質治療薬に加えて、インプラントは、1つまたはそれ以上の他の眼科的に許容される治療薬も含有しうる。例えば、インプラントは、1つまたはそれ以上の抗ヒスタミン薬、1つまたはそれ以上の抗生物質、1つまたはそれ以上のβ遮断薬、1つまたはそれ以上のステロイド、1つまたはそれ以上の抗腫瘍薬、1つまたはそれ以上の免疫抑制薬、1つまたはそれ以上の抗ウイルス薬、1つまたはそれ以上の抗酸化薬、およびそれらの混合物を含有しうる。本発明のシステムに使用しうる他の薬理的または治療的薬剤は、米国特許第4474451号、第4〜6欄、および第4327725号、第7〜8欄に開示されている薬剤を包含するが、それらに限定されない。
【0106】
抗ヒスタミン薬の例として、下記の物質が挙げられるが、それらに限定されない:ロラダチン、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ブロムフェニラミン、シプロヘプタジン、テルフェナジン、クレマスチン、トリプロリジン、カルビノキサミン、ジフェニルピラリン、フェニンダミン、アザタジン、トリペレナミン、デクスクロルフェニラミン、デクスブロムフェニラミン、メトジラジン、およびトリムプラジン、ドキシラミン、フェニラミン、ピリラミン、キオルシクリジン、トンジラミン、ならびにそれらの誘導体。
【0107】
抗生物質の例として、下記の物質が挙げられるが、それらに限定されない:セファゾリン、セフラジン、セファクロール、セファピリン、セフチゾキシム、セフォペラゾン、セフォテタン、セフトキシム、セフォタキシム、セファドロキシル、セフタジジム、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セフォキシチン、セフォニシド、セフォラニド、セフトリアキソン、セファドロキシル、セフラジン、セフロキシム、アンピリシン、アモキシシリン、シクラシリン、アンピシリン、ペニシリンG、ペニシリンVカリウム、ピペラシリン、オキサシリン、バカンピシリン、クロキサシリン、チカルシリン、アズロシリン、カルベニシリン、メチシリン、ナフシリン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、アズトレオナム、クロラムフェニコール、塩酸シプロフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、ゲンタマイシン、リンコマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン、硫酸ポリミキシンB、コリスチメテート、コリスチン、アジスロマイスン、オーグメンチン、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、およびそれらの誘導体。
【0108】
β遮断薬の例として、アセブトロール、アテノロール、ラベタロール、メトロプロロール、プロプラノロール、チモロール、およびそれらの誘導体が挙げられる。ステロイドの例として、下記の物質が挙げられる:コルチコステロイド、例えば、コルチゾン、プレドニゾロン、フルオロメトロン(flurometholone)、デキサメタゾン、メドリゾン、ロテプレドノール、フルアザコート、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ベタメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、リアムシノロン、ヘキサカトニド、酢酸パラメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノニド、フルオシノロン、トリアムシノロン、それらの誘導体およびそれらの混合物。
【0109】
抗腫瘍薬の例として、下記の物質が挙げられる:アドリアマイシン、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ドゥアノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキサート、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル-CCNU、シスプラチン、エトポシド、インターフェロン、カンプトテシンおよびその誘導体、フェネステリン、タキソールおよびその誘導体、タキソテールおよびその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、エトポシド、ピポスルファン、シクロホスファミド、およびフルタミド、ならびにそれらの誘導体。
【0110】
免疫抑制薬の例として、シクロスポリン、アザチオプリン、タクロリムス、およびそれらの誘導体が挙げられる。抗ウイルス薬の例として、インターフェロンガンマ、ジドブジン、塩酸アマンタジン、リバビリン、アシクロビル、バルシクロビル、ジデオキシシチジン、ホスホノギ酸、ガンシクロビル、およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0111】
抗酸化薬の例として、以下の物質が挙げられる:アスコルベート、α-トコフェロール、マンニトール、還元型グルタチオン、種々のカロテノイド、システイン、尿酸、タウリン、チロシン、スーパーオキシドジスムターゼ、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン(cryotpxanthin)、アスタザンチン、リコペン、N-アセチル-システイン、カルノシン、γ-グルタミルシステイン、クエルシチン、ラクトフェリン、ジヒドロリポ酸、シトレート、イチョウ抽出物、茶カテキン、ビルベリー抽出物、ビタミンEまたはビタミンEのエステル、パルミチン酸レチニル、およびそれらの誘導体。
【0112】
他の治療薬は、スクアラミン、炭酸脱水酵素阻害薬、α-2-アドレナリン受容体作用薬、駆虫薬、抗真菌薬、およびそれらの誘導体を包含する。個々にまたは組み合わせてインプラントに使用される1つまたはそれ以上の活性剤の量は、必要とされる有効投与量、およびインプラントからの所望放出速度に依存して広く変化する。一般に、活性剤は、インプラントの少なくとも約1wt%、より一般的には少なくとも約10wt%であり、かつ、一般にインプラントの約80wt%以下、より一般的には約40wt%以下である。
【0113】
いくつかの本発明インプラントは、2つまたはそれ以上の種々の環状脂質誘導体の組合せを含んで成る環状脂質治療薬を含んで成ってよい。1つのインプラントまたはインプラントの投与量は、ビマトプロストおよびラタノプロストの組合せを含んで成ってよい。他のインプラントまたはインプラントの投与量は、ビマトプロストおよびトラボプロストの組合せを含んで成ってよい。
【0114】
本明細書に記載されているように、本発明インプラントは、付加的治療薬を含んで成ることができる。例えば、1つのインプラントまたはインプラントの投与量は、ビマトプロストおよびβ-アドレナリン受容体拮抗薬の組合せを含んで成ってよい。より具体的には、インプラントまたはインプラントの投与量は、ビマトプロストおよびTimolol(登録商標)の組合せを含んで成ってよい。または、インプラントまたはインプラントの投与量は、ビマトプロストおよび炭酸脱水酵素阻害薬の組合せを含んで成ってよい。例えば、インプラントまたはインプラントの投与量は、ビマトプロストおよびドルゾラミド(Trusopt(登録商標))の組合せを含んで成ってよい。
【0115】
治療成分に加えて、本明細書に開示されているインプラントは、有効量の緩衝剤、防腐剤などを含有する組成物を含有することができ、またはそのような組成物において提供しうる。好適な水溶性緩衝剤は、下記の物質を包含するが、それらに限定されない:アルカリおよびアルカリ土類炭酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、コハク酸塩など、例えば、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなど。これらの物質は、好都合には、システムのpHを約2〜約9、より好ましくは約4〜約8に維持するのに充分な量で存在する。従って、緩衝剤は、インプラント全体の約5wt%にもなりうる。好適な水溶性防腐剤は、下記の物質を包含する:亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、パラベン、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノールなど、およびそれらの混合物。これらの物質は、約0.001wt%〜約5wt%、好ましくは約0.01wt%〜約2wt%の量で存在しうる。少なくとも1つの本発明インプラントにおいて、例えば、環状脂質治療薬がビマトプロストから基本的に成る場合に、塩化ベンザルコニウム防腐剤がインプラントに添加される。
【0116】
ある状況において、同じかまたは異なる薬理学的物質をそれぞれ使用して、いくつかのインプラントを埋め込むか挿入することができる。このようにして、単一投与によって二相または三相放出を与える放出プロフィールのカクテルが得られ、放出のパターンをかなり変化させうる。
【0117】
さらに、米国特許第5869079号に開示されているような放出調節剤もインプラントに含有させてよい。使用される放出調節剤の量は、所望される放出プロフィール、調節剤の活性、および調節剤の不存在下の環状脂質治療薬の放出プロフィールに依存する。電解質、例えば塩化ナトリウムおよび塩化カリウムも、インプラントに含有させてよい。緩衝剤または促進剤が親水性である場合、それは放出促進剤としても作用しうる。親水性添加剤は、インプラント中の薬剤を取り囲む物質のより速い溶解(該溶解は、露出される薬剤の表面積を増加させ、それによって薬剤生侵食の速度を増加させる)によって、放出速度を増加させる作用をする。同様に、疎水性緩衝剤または促進剤は、よりゆっくり溶解し、薬剤の露出を遅くし、それによって薬剤生侵食の速度を遅くする。
【0118】
ビマトプロストと生分解性ポリマーマトリックスとの組合せを含んで成る特定のインプラントにおいて、0.1mg〜約0.5mgの量のビマトプロストが、眼への埋め込み後、約3〜6ヵ月間にわたって放出または送達される。種々の方法を使用して、本明細書に記載されているインプラントを製造することができる。有用な方法は、粉砕法、圧縮法、押出法、界面法、成形法、射出成形法、それらの組合せなどを包含するが、必ずしもそれらに限定されない。
【0119】
圧縮法を使用してインプラントを製造することができ、一般に、押出法より速い放出速度を有するインプラントを生じる。圧縮法は、約50〜150psi、より好ましくは約70〜80psi、さらに好ましくは約76psiの圧力を使用し、約0℃〜約115℃、より好ましくは約25℃の温度を使用しうる。
【0120】
1つの実施形態において、治療用ポリマーインプラントを製造する方法は、環状脂質治療薬を高分子成分で封入して、環状脂質封入インプラントを製造することを含んで成る。そのようなインプラントは、本明細書に記載されている眼症状の1つまたはそれ以上を治療するのに有効であり、患者の結膜下腔に投与するのに好適である。環状脂質治療薬の治療活性は、インプラントの保存中、安定に維持され、これはインプラントの特定カプセル封入形態によると考えられる。
【0121】
本明細書に記載されているように、環状脂質治療薬は、単一種類の1つまたはそれ以上の環状脂質誘導体を含んで成ることができる。特定の実施形態において、環状脂質治療薬は、ビマトプロスト、そのエステル、およびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つのプロスタミド誘導体を含んで成る。他の実施形態において、環状脂質治療薬はビマトプロストから基本的に成る。
【0122】
他の実施形態において、環状脂質治療薬は、2種類またはそれ以上の環状脂質誘導体の組合せ、例えば、ビマトプロストとラタノプロスト、ビマトプロストとトラボプロストの組合せなどを含んで成ることができる。
【0123】
本発明の方法は、最終滅菌処理後に治療活性の全部でないにしてもかなりの部分を維持または保存している封入環状脂質治療薬インプラントを製造するのに有効である。本発明の方法は、インプラントの最終滅菌工程も含んで成りうることが理解される。インプラントは、包装前に、またはそれらの包装中に、滅菌することができる。1つまたはそれ以上の本発明インプラントを含有するパッケージを滅菌することが好ましい場合が多い。該方法は、1つまたはそれ以上の本発明インプラントを、滅菌量のγ線、e-ビーム線、および他の最終滅菌製品に暴露することを含んで成ってよい。1つの実施形態において、方法は、本発明インプラントを、γ線に約25kGyの線量で暴露する工程を含んで成ってよい。
【0124】
本明細書に記載されているように、本発明の方法に使用される高分子成分は、生分解性ポリマーまたは生分解性コポリマーを含んで成ることができる。少なくとも1つの実施形態において、高分子成分は、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)PLGAコポリマーを含んで成る。他の実施形態において、PLGAコポリマーは、75/25のラクチド/グリコリド比を有する。さらに他の実施形態において、PLGAコポリマーは、約63キロダルトンの分子量および約0.6dL/gの内部粘度の少なくとも1つを有する。
本発明の方法は、環状脂質治療薬、高分子成分および有機溶媒を含んで成る第一組成物を形成する工程、第二油含有組成物を形成する工程、ならびに第一組成物および第二油含有組成物を混合する工程も含んで成ってよい。
【0125】
本明細書に記載されているように、インプラントが分解する速度を変化させることができ、従って、本発明のインプラントは、インプラントの特定の形状および材料に依存して、種々の期間にわたって環状脂質治療薬を放出することができる。少なくとも1つの実施形態において、インプラントは、1日につき、インプラント中の環状脂質治療薬の約1%を放出することができる。他の実施形態において、インプラントは、生体外で測定した場合に、約0.7%/日の放出速度を有しうる。従って、約40日間で、約30%の環状脂質治療薬を放出しうる。
【0126】
本明細書に記載されているように、インプラントに存在する環状脂質治療薬の量は変化しうる。特定の実施形態において、インプラントの約50%wt/wtが、環状脂質治療薬である。他の実施形態において、環状脂質治療薬はインプラントの約40%wt/wtを占める。
【0127】
本発明のインプラントは、種々の方法によって、眼の結膜下腔に挿入できる。配置方法は、治療成分または薬剤の放出動態に影響を与えうる。本発明インプラントの好ましい投与手段は、結膜下注射である。インプラントの注射部位の位置は、エレメントの周囲の治療成分または薬剤の濃度勾配に影響を与え、従って、眼の所定組織への送達速度に影響を与えうる。例えば、眼の後方に向かって結膜に注射することは、薬剤をより効率的に後区の組織に向け、眼の前方により近い注射部位(但し、角膜は避ける)は、薬剤をより効率的に前区に向けうる。
【0128】
インプラントを含んで成る眼科的に許容される組成物を眼に投与することによって、インプラントを患者に投与しうる。例えば、インプラントは、液体組成物、懸濁液、乳濁液などにおいて与えてよく、眼の結膜下腔への注射または埋め込みによって投与しうる。
【0129】
1つまたはそれ以上の本発明インプラントを、眼症状の治療(例えば、眼症状の少なくとも1つの症候を減少させることによる)に有効なある量の環状脂質治療薬を放出するための形状にする。より具体的には、緑内障、例えば開放隅
角緑内障、高眼圧、開存性虹彩切開を伴う慢性閉塞隅角緑内障、偽剥脱性緑内障、および色素性緑内障を治療する方法において、インプラントを使用しうる。環状脂質治療薬含有インプラントを眼の結膜下腔に注射することによって、環状脂質治療薬が、房水の流れを増加させるのに有効であり、それによって眼内圧を低下させると考えられる。さらに、環状脂質治療薬を含有するインプラントの結膜下送達は、治療濃度の治療薬を眼の網膜に与えることもできる。
【0130】
本明細書に開示されているインプラントは、下記を包含する種々の眼疾患または症状を、予防または治療するのに使用することができる:
黄斑症/網膜変性: 黄斑変性(加齢性黄斑変性(ARMD)、例えば、非滲出性加齢性黄斑変性および滲出性加齢性黄斑変性を含む)、脈絡膜新生血管形成、網膜症(糖尿病性網膜症を含む)、急性および慢性黄斑視神経網膜症、中心性漿液性網脈絡膜症、および黄斑浮腫(類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫を含む)。
ブドウ膜炎/網膜炎/脈絡膜炎: 急性多発性斑状色素上皮症、ベーチェット病、バードショット脈絡網膜症、感染症(梅毒、ライム病、結核症、トキソプラスマ症)、ブドウ膜炎(中間部ブドウ膜炎(扁平部炎)および前部ブドウ膜炎を含む)、多病巣性脈絡膜炎、多発消失性白点症候群(MEWDS)、眼サルコイドーシス、後強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症、ブドウ膜炎症候群、およびフォークト-小柳-原田症候群。
血管疾患/滲出性疾患: 網膜動脈閉塞症、網膜中心静脈閉塞症、播種性血管内凝固症、網膜静脈分岐閉塞症、高血圧性眼底変化、眼虚血症候群、網膜動脈小血管瘤、コーツ病、中心窩傍(parafoveal)毛細管拡張症、半網膜静脈閉塞症、乳頭静脈炎、網膜中心動脈閉塞症、網膜動脈分岐閉塞症、頸動脈疾患(CAD)、霜状分岐血管炎、鎌状赤血球網膜症および他の異常ヘモグロビン症、網膜色素線条症、家族性滲出性硝子体網膜症、イールズ病。
外傷性/外科手術性: 交感性眼炎、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、PDT、光凝固、手術中の低灌流、放射線網膜症、骨髄移植網膜症。
増殖性疾患: 増殖性硝子体網膜症および網膜上膜、増殖性糖尿病性網膜症。
感染性疾患: 眼ヒストプラスマ症、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染関連網膜疾患、HIV感染関連脈絡膜疾患、HIV感染関連ブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性網膜外層壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核症、びまん性片側性亜急性神経網膜炎、およびハエウジ病。
遺伝病: 色素性網膜炎、関連網膜ジストロフィーを伴う全身疾患、先天性停在夜盲症、錐体ジストロフィー、シュタルガルト病および黄色斑眼底、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー、X連鎖網膜分離症、ソーズビー眼底ジストロフィー、良性同心性黄斑症、ビエッティ(Biett's)結晶状ジストロフィー、弾性線維性仮性黄色腫。
網膜断裂/円孔: 網膜剥離、黄斑円孔、巨大網膜断裂。
腫瘍: 腫瘍に関連した網膜疾患、先天性RPE肥大、後部ブドウ膜メラノーマ、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の複合(combined)過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞腫、眼内リンパ性腫瘍。
その他: 点状内脈絡膜症、急性後極部多発性板状色素上皮症、近視性網膜変性、急性網膜色素上皮炎など。
【0131】
少なくとも1つの実施形態において、患者の眼における眼内圧を低下させる方法は、本明細書に記載されている環状脂質治療薬を含有するインプラントを、結膜下注射によって患者に投与することを含んで成る。適切な大きさの針、例えば22ゲージ針、27ゲージ針または30ゲージ針を有する注射器を、有効に使用して、ヒトまたは動物の眼の結膜下腔に組成物を注射することができる。インプラントからの環状脂質治療薬の長期間の放出により、頻繁に繰り返される注射を必要としない場合が多い。
【0132】
特定のインプラントにおいて、インプラント調製物は、ビマトプロスト、その塩、およびそれらの混合物から基本的に成る治療成分、ならびに生分解性ポリマーマトリックスを含んで成る。生分解性ポリマーマトリックスは、PLA、PLGAまたはそれらの組合せから基本的になることができる。眼に配置した場合に、調製物は、結膜下投与から約1日以内で約40%〜約60%のビマトプロストを放出して、ビマトプロストの負荷投与量を与える。次に、インプラントは、1日当たり約1%〜約2%のビマトプロストを放出して、持続治療効果を与える。そのようなインプラント調製物は、眼内圧を低下させ、低下した眼内圧、例えば約15mmHg未満を、数か月間、場合によっては1年または2年間維持するのに有効でありうる。
【0133】
本明細書に開示されている他のインプラントを、結膜下注射から2日以内にインプラントから放出される環状脂質治療薬の量がインプラント中の環状脂質治療薬の総量の約40%未満になるような形状にすることができる。特定の配合物において、注射して約1週間後まで、環状脂質治療薬の40%が放出されない。特定のインプラント配合物において、眼に配置してから約1日以内に、環状脂質治療薬の約30%未満が放出され、残りの約2%が、眼に配置してから約1ヵ月間で放出される。他のインプラントにおいて、環状脂質治療薬の約20%未満が、結膜下投与から約1日以内に放出され、約1%がそのような投与から約2ヶ月間にわたって放出される。
【実施例】
【0134】
以下の例示的実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0135】
実施例1
ビマトプロスト微粒子の製造方法
眼内使用に好適な生分解性微粒子(ミクロスフェア)を、ビマトプロストと生分解性ポリマーとを合わすことによって製造した。即ち、ポリ乳酸(PLA)800mgをビマトプロスト200mgと合わした。その組合せを、ジクロロメタン25mLに溶解させた。次に、混合物を45℃で一晩にわたって真空において、ジクロロメタンを蒸発させた。得られた混合物はキャストシートの形態であった。キャストシートを切断し、約125μmの孔径を有する篩を粒子が通るまで、ドライアイスを用いて高剪断粉砕機で粉砕した。微粒子に存在するビマトプロストのパーセントを、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析した。微粒子からのビマトプロストの放出パーセントを、透析によって測定した。回収した粒子に残留するビマトプロストのパーセントを、HPLCによって分析した。
【0136】
得られた放出プロフィールを、表1に示す。
【表1】

【0137】
ビマトプロストの負荷パーセントは14.93%であった。回収放出粒子に残留するビマトプロストのパーセントは4.94%であった。
【0138】
実施例2
ビマトプロストインプラントを製造する押出法および圧縮法
ビマトプロストを、乳鉢において、生分解性ポリマー組成物と合わす。その組合せを、約96RPMに設定した振とう機で約15分間混合する。粉末ブレンドを乳鉢の側壁からかき落とし、次に、さらに15分間再混合する。混合粉末ブレンドを、特定温度で半溶融状態に合計30分間加熱し、ポリマー/薬剤メルトを形成する。
【0139】
9ゲージのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)管を用いて、ポリマー/薬剤メルトをペレット化し、ペレットをバレルに装填し、材料を特定のコア押出温度でフィラメントに押し出すことによって、ロッドを作製する。次に、フィラメントを、約1mgの大きさのインプラントまたは薬物送達システムに切断する。ロッドは、約2mm長さ x 0.72mm直径の寸法を有しうる。ロッドインプラントは、約900μg〜約1100μgの重さである。
【0140】
ウエハは、カーバー(Carver)プレスを用いて特定温度でポリマーメルトを扁平化し、扁平材料をウエハに切断することによって形成され、各ウエハは約1mgの重さである。ウエハは、直径約2.5mmおよび厚さ約0.13mmを有する。ウエハインプラントは、約900μg〜約1100μgの重さである。
【0141】
各インプラントを、37℃のリン酸緩衝生理食塩水10mLと共に、24mLのネジ蓋バイアルに入れることによって、生体外放出試験を行う。第1日、第4日、第7日、第14日、第28日およびその後2週間ごとに、1mLのアリコートを取り、同量の新しい媒質と交換する。
【0142】
薬剤アッセイを、Waters 2690 Separation Module(または2695)およびWaters 996 Photodiode Array Detectorから成るHPLCによって行う。Ultrasphere, C-18(2)、5μm;4.6 x 150mmカラム、30℃、を分離に使用し、検出器を約264nmに設定する。移動相は(10:90)MeOH-緩衝移動相であり、流速1mL/分および合計実行時間12分/試料である。緩衝移動相は、(68:0.75:0.25:31)13mM 1-ヘプタンスルホン酸、ナトリウム塩−氷酢酸−トリエチルアミン−メタノールを含んで成ってよい。放出速度は、時間経過にともなって所定量の媒質に放出された薬剤量(μg/日)を算出することによって求める。
【0143】
インプラントに使用しうるポリマーは、Boehringer Ingelheimから得られる。ポリマーの例として、RG502、RG502H、RG752、R202H、R203およびR206、ならびにPurac PDLG(50/50)が挙げられる。RG502およびRG502Hは(50:50)ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)であり、RG502はエステル末端基を有し、RG502Hは酸末端基を有し、RG752は(75:25)ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)であり、R202Hは、酸末端基または末端酸基を有する100%ポリ(D,L-ラクチド)であり、R203およびR206は両方とも100%ポリ(D,L-ラクチド)である。Purac PDLG(50/50)は(50/50)ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)である。RG502、RG502H、RG752、R202H、R203、R206およびPurac PLDGの内部粘度は、それぞれ、0.2、0.2、0.2、0.2、0.3、1.0および0.2dL/gである。RG502、RG502H、RG752、R202H、R203、R206およびPurac PLDGの平均分子量は、それぞれ、11700、11200、11200、6500、14000、63300および9700ダルトンである。製造されたインプラントは、眼症状の治療のために眼内使用するのに好適である。
【0144】
実施例3
緑内障治療用のビマトプロスト/PLA/PLGA眼内インプラント
両眼に緑内障を患う72才の女性に、ビマトプロストおよびPLAとPLGAの組合せを含有する眼内インプラントを各眼に投与する。インプラントの重さは約1mgであり、約500mgのビマトプロストを含有する。1個のインプラントを、シリンジによって各眼の硝子体に配置する。約2日で、患者は眼の不快感のかなりの軽減を報告する。検査は、眼内圧が低下したことを示す:8:00AMに測定した平均眼内圧が、28mmHgから14.3mmHgに低下した。患者を約6ヵ月間監視する。眼内圧レベルは、6ヵ月間にわたって15mmHg未満に維持され、患者は減少した眼の不快感を報告する。
【0145】
実施例4
高眼圧治療用のビマトプロスト/PLA眼内インプラント
62才の男性が、左眼に33mmHgの眼内圧を示す。ビマトプロスト400mgおよびPLA 600mgを含有するインプラントを、トロカールによって左眼の硝子体に挿入する。患者の眼内圧を1週間にわたって毎日監視し、その後、月に1回監視する。埋め込みから1日後に、眼内圧が18mmHgに低下する。埋め込みから7日目までに、眼内圧が14mmHgで相対的に安定する。患者は、2年間にわたって高眼内圧のどのような徴候も示さない。
【0146】
実施例5
ビマトプロストインプラントを製造する低温溶融押出法
プロスタミド類似体ビマトプロスト((Z)-7-[1R,2R,3R,5S)-3,5-ジヒドロキシ-2-[1E,3S)-3-ヒドロキシ-5-フェニル-1-ペンテニル]シクロペンチル]-5-N-エチルヘプテンアミド)を、低温(65℃〜71℃)溶融押出法によって作製される持続放出ポリマーインプラントに組み込んだ。作製されたインプラントは、30wt%〜50wt%のビマトプロスト、および50wt%〜70wt%のポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー(PLGA)から成っていた。
【0147】
ビマトプロストを溶融させ、ポリマーを軟化させるのに充分に高い温度であるが、実質的なビマトプロスト効力の損失を避けるのに充分に低い温度で、インプラントを作製した。使用したビマトプロストおよびPLGAポリマーの溶解度パラメーターは同様であり、それによってビマトプロストはポリマーに可溶性であり、それにより、使用した温度において固溶体を生じた。治療薬およびポリマー担体の固溶体から作製した押出インプラントは、ビマトプロストがポリマー担体中の固体分散物として存在する押出インプラントと比較して、治療薬のより均一かつ再現性のある放出プロフィールを与えることができる。
【0148】
ピストン駆動押出機またはDaca押出機/マイクロコンパウンダーでの溶融押出によって、ポリマーインプラントを作製した。インプラントはロッド形であるが、単に押出ダイを変えることによって、任意の幾何学的形状にすることができる。
【0149】
Boehringer Ingelheimから入手したポリマーを使用し、Torcan Chemical(Aurora, Ontario, Canada)から入手したビマトプロストを使用した。インプラントを作製するために、1/4”ステンレス鋼ボールを有するRetschボール-ミルカプセル中で、ポリマーおよびビマトプロストを合わし(表2参照)、次に、カプセルを、Retschミル(MM200型)に20サイクル/分で5分間置いた。次に、カプセルをミルから取り出し、粉末ブレンドをヘラで攪拌した。粉末ブレンドを含有するカプセルを、Turbulaミキサーで5分間混合した。粉末ブレンドを、均質性について検査し、必要であれば混合手順を繰り返す。
【0150】
スチール粉末漏斗およびヘラを使用して、粉末ブレンドを、空気圧縮プレスに取り付けた押出機バレルに移した。少量の粉末ブレンドを押出機バレルに装填し、粉末を50psiに設定したプレスで圧縮した。
【0151】
粉末ブレンド装填バレルを、押出機に配置し、65〜71℃の温度に平衡させた。フィラメントを0.0025”/秒で720ミクロンのサーキュラーダイを経て押し出して、ロッド形インプラントを製造した。押し出されたフィラメントは平滑であり、一定の直径を有していた。作製されたインプラント配合物を表2に示す。
【0152】
フィラメントを1mgのロッド(約2mmの長さ)に切断し、時間の経過に伴うそれらの薬剤放出を、リン酸緩衝生理食塩水pH7.4において監視した。
【表2】

【0153】
ビマトプロスト含有ポリマーインプラントを使用して、制御投与量のビマトプロストを眼領域に送達して、眼症状を長期間にわたって治療することができる。
【0154】
ビマトプロストインプラントは、低融点ポリマー、例えばポリカプロラクトンを使用して製造することもできる。さらに、押出法の代わりに、ポリマーおよびビマトプロストの直接圧縮を使用して、眼内使用に好適なタブレットインプラントを製造することができる。
【0155】
実施例6
ビマトプロストインプラントを製造する超低温法
この実験において、本発明者らは、眼内投与に好適な、他のビマトプロスト含有ポリマー持続放出インプラントを作製した。約57℃もの低い温度で行うために本発明者らが開発した溶融押出法によって、インプラントを作製した。作製された例示的インプラントは、以下の物質を含有していた:15% ビマトプロスト(治療薬)、10% ポリエチレングリコール(PEG3350)(補助溶媒または第二ポリマー)、および75% ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー(Resomer(登録商標)RG752S、PLGA)(ポリマー担体または第一ポリマー)。
【0156】
PLGAインプラントの一般的な押出温度は、約85℃〜約110℃である。本発明者らは、約80℃またはそれ以上の押出温度において、50%またはそれ以下のビマトプロストが治療的に不活性(効力の損失)であることを確認した。図1参照。図1に示すように、5種類の配合のビマトプロスト含有持続放出インプラントまたは薬物送達システム(「DDS」)を作製した。図1のx軸に沿って左から右に、これらの5つの配合物が示されている。
【表3】

【0157】
RG504は、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(即ちPLGA)ポリマーレゾマー(resomer)であり、48:52〜52:48(即ち、約50:50)のD,L-ラクチド:グリコリドのモル比を有する。RG504は、0.1%クロロホルム中25℃で0.45〜0.60dl/gの内部粘度(即ち、約60,000の平均分子量)を有し、Boerhinger Ingelheim(Ridgefield, Connecticut)から入手可能である。
【0158】
RG752Sも、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(即ちPLGA)ポリマーレゾマーであるが、73:27〜77:23(即ち、約75:25)のD,L-ラクチド:グリコリドのモル比を有する。RG752Sは、クロロホルム中0.1wt%の濃度において25℃で0.16〜0.24dl/gの内部粘度を有し、これもBoerhinger Ingelheim(Ridgefield, Connecticut)から入手可能である。
【0159】
ビマトプロストの理論最大効力は、定義上、ビマトプロストの「ラベル強度」(「LS」)に等しい。例えば、ビマトプロスト150μgを含んで成るインプラント1mgのラベル強度は150μgである。従って、そのインプラントを試験し、それが含有する全150μgのビマトプロストを特定期間にわたって放出することが確認された場合、インプラントは100%の効力を有すると言える。本発明者らは、作製したインプラントから放出されたビマトプロストの効力を、HPLC(高圧液体クロマトグラフィー)によって、それらのラベル強度のパーセントとして測定した。即ち、作製されたビマトプロストインプラント(それぞれ約1mgの重さ)を、10mL容量フラスコ中の0.5mLアセトニトリルに溶解し、5分間音波処理した。次に、フラスコに希釈液(72:18:10の水:アセトニトリル:メタノール)を容量まで満たし、充分に混合し、分析のためにHPLCバイアルに移した。
【0160】
HPLC分析は、Waters Alliance 2695 HPLCシステム、Waters Symmetry(登録商標)C18逆相カラム4.6mm x 75mm、およびWaters 2487 UV検出器を使用して行った。分析条件は、流速1.5mL/分、UV波長210nm、カラム温度30℃、および移動相72:18:10(水:アセトニトリル:メタノール、v/v/v)および0.03%(w/v)トリフルオロ酢酸であった。分析した試料および標準の注入量は、45分のサイクル時間で75μLであった。
【0161】
図1に示すように、作製したDDSから放出されたビマトプロストの効力は、85℃で実施した溶融押出法によってDDSを作製した場合の約40%から、57℃で実施した溶融押出法によってDDSを作製した場合の約90%より大に増加した。このように、ビマトプロストの効力は、DDSの作製に使用した溶融押出法を実施した温度に逆比例していた。DDS配合物における種々のレゾマーの使用およびPEG3350の存在は、より高い温度がより低いビマトプロスト効力に相関するというこの発見に、関連性がない。言い換えれば、DDS配合物における、異なるレゾマーの使用、異なる量の異なるレゾマーの使用、およびPEG3350の含有は、ビマトプロストが暴露される温度に影響を与えなかった。
【0162】
このように、ビマトプロストが感熱治療薬であることを知り、本発明者らは、ビマトプロスト含有インプラントを製造するための極めて低い温度の溶融押出法を開発した。溶融押出法によって、少なくとも約50%のビマトプロストが生物学的に活性である(即ち少なくとも50%のLSでの効力を有する)DDSを製造するために、押出温度を約80℃未満に下げる必要がある。DDSの製造に使用されるPLGAを包含する大部分のレゾマーの融点は約80℃を超えるので、押出温度を下げるだけでは充分でなく、なぜなら、そうすることによって部分的にまたは不充分にのみ溶融したポリマーを生じ、該ポリマーにおいて活性剤は均質分布からほど遠くなるからである。DDSのポリマーにおける活性剤の不均質分布は、バースト放出作用を生じ、それに続いて、ポリマーからの活性剤放出の量および速度において広い変動を生じうる。そのような欠陥DDSは治療有効性を有し得ない。
【0163】
従って、目的は、押出温度を低下させ、かつ、DDS(インプラント)のポリマーマトリックスへのビマトプロスト(好ましくは非結晶質)の均質混合を維持する方法によって、押出PLGA-ビマトプロストインプラントを製造することであった。
【0164】
本発明者らは、溶解度パラメーターの分析に基づいて、ビマトプロストが、使用されるPLGAポリマー(ポリマー担体または第一ポリマー)に可溶性であることを確認した。従って、ポリマーを加熱する際に、使用されるビマトプロストおよびポリマーの固溶体を形成することができる。低温でビマトプロストおよびPLGAの固溶体を形成することによって、ビマトプロスト効力の実質的損失の発生を避けることができる。さらに、ビマトプロストおよび同様の溶解度パラメーターPLGAの固溶体を形成する(好適な補助溶媒の使用による)ことは付加的利点を有し、該利点は、インプラントが補助溶媒中のビマトプロストおよびPLGAの固溶体であるので、最終押出インプラントにおいてビマトプロストが再結晶するのを防止することである。従って、ビマトプロスト多形体がインプラントに存在しない。最後に、ビマトプロストおよびPLGAを混合し、ポリマーを溶融させ、溶融混合物を押し出してDDSを形成する場合に形成される固体分散物中のビマトプロストの分散と比較して、ビマトプロストがポリマーに均質に分散される。
【0165】
上述のように、ビマトプロストの効力をLSの約50%より上に維持するのに必要とされる低い押出温度において、PLGAポリマーは、充分に溶融されない。本発明者らは、使用されるビマトプロストおよびポリマーと同じ(または実質的に同じ)溶解度パラメーターを有する低融点ポリマー補助溶媒(例えばPEG)の添加によって、押出温度を57℃もの低い温度に下げられることを見出した。それによって、ビマトプロストの効力が維持された。さらに、本発明者らは、本発明者らが開発したPEG含有DDS配合物は、ビマトプロストと同じくらい水溶性のある薬剤に一般に関連した「バースト」放出を減少させることも見出した。図2および図3は、それぞれ、本発明者らが作製した例示的DDS配合物から放出されたビマトプロストの合計パーセントおよび毎日のマイクログラムを示し;図2および図3の両方において、観測された配合物は、表3の8092-108G配合物であった。
【0166】
図2は、50日間にわたって8092-108G DDSから放出されたビマトプロストの合計量を示している。ほぼ第8日〜ほぼ第40日(32日間)において、放出は線形であった。図3は、50日間にわたって8092-108G DDSから放出されたビマトプロストの毎日の量を示している。ほぼ第13日〜ほぼ第42日(29日間)において、毎日の放出速度は、約3.3μgビマトプロスト/日〜2.5μgビマトプロスト/日であり、これは、29日間に、毎日の放出速度が約32%以上変化しなかったことを意味する。ほぼ第13日〜ほぼ第38日(25日間)において、毎日の放出速度は約3.3μgビマトプロスト/日〜約3.0μgビマトプロスト/日であり、これは、25日間に、毎日の放出速度が約10%以上変化しなかったことを意味する。
【0167】
本発明者らが、ビマトプロストおよびPLGAの補助溶媒としてPEGを選択したことは、DDSの3つの成分(PEG、ビマトプロストおよびPLGAS)の溶解度パラメーターについての本発明者らの分析および比較に基づいていた。即ち、表4に示す溶解度パラメーターは、ビマトプロストがPLGAポリマーおよびPEG3350の両方に溶解性であると予測しうることを示している。さらに、それぞれの溶解度パラメーターの比較は、PEG3350がPLGAに溶解性であると予測しうることを示す。従って、低い溶融温度でのPEG3350の溶融時に、PEG3350がPLGAを効果的に可塑化し、より低いPEG3350溶融温度でそれを押し出すことを可能にすると予測しうる。溶解度パラメーターが薬剤およびPLGAと10(MPa)1/2より大で異ならない限り、これと同じ原理を、他の低融点ポリマー、例えばポリカプロラクトンに一般に適用できる。他のポリマーを使用して、種々のブレンドおよび放出特性を得ることができる。本発明者らが推奨する配合法は、溶融押出であるが、適したインプラントを、ポリマーおよびビマトプロストの直接圧縮または溶液流延によって製造することもできる。本発明者らがこの実験で作製したインプラントは、円柱形であるが、押出ダイを変えることによって他の断面形を有する適したインプラントを製造することもできる。
【0168】
本発明者らがこの実験で作製したポリマーインプラントは、Daca押出機/マイクロコンパウンダー(Daca Instruments, Inc., Goleta, CA)を使用して、57℃もの低い温度での溶融押出によって作製された。Boehringer Ingelheimから入手したPLGAレゾマー(ポリマー)を使用した。Sigma AldrichおよびTorcan Chemicalからそれぞれ入手したPEG3350およびビマトプロストを使用した。ポリマー(PLGAおよびPEG3350)およびビマトプロストを、2個の1/4”ステンレス鋼ボールを有するステンレス鋼容器中で合わし、Turbulaミキサーで15分間混合した。容器を取り出し、含有物をヘラで攪拌した。次に、それをTurbulaミキサーにさらに15分間もどし、次に、粉末ブレンドの均質性を検査し、必要であれば、混合手順を繰り返した。
【0169】
粉末ブレンドを、制御速度で押出機に装填した。フィラメントDDSを、720μ直径サーキュラーダイを経て押出し、円柱形インプラントを製造した。押し出されたフィラメントは、一定の直径を有する平滑面を有していた。フィラメントを1mgロッド(約2mmの長さ)に切断し、次に、リン酸緩衝生理食塩水pH7.4(0.01M)に入れて、それらの薬剤放出を生体外で、ある期間にわたってHPLCによって監視した。
【表4】

【0170】
表4において、MPaはミリパスカルの略語である。
【0171】
本明細書において引用されている全ての文献、論文、刊行物ならびに特許および特許出願は、それらの内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。本発明を種々の特定の実施例および実施形態に関して記載したが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲内で様々に実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 環状脂質治療薬およびポリマーを合わして混合物を形成する工程;
(b) 該混合物を約50℃〜約80℃の温度に加熱する工程;および
(c) 該加熱混合物を押し出し、それによって眼内使用に適したインプラントを製造する工程
を含んで成る、眼内インプラントの低温製造法。
【請求項2】
環状脂質治療薬が、プロスタグランジン、プロスタグランジン類似体、およびそれらの混合物から成る群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
環状脂質治療薬が、ビマトプロスト、ビマトプロスト類似体、ラタノプロスト、ラタノプロスト類似体、トラボプロスト、トラボプロスト類似体、ウノプロストン、ウノプロストン類似体、プロスタグランジンE1、プロスタグランジンE1類似体、プロスタグランジンE2、プロスタグランジンE2類似体、およびそれらの混合物から成る群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
環状脂質治療薬が、ビマトプロスト、ビマトプロスト類似体、およびそれらの混合物から成る群から選択される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ポリマーが生分解性ポリマーである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
生分解性ポリマーが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリラクチド-コ-グリコリド、およびそれらのコポリマーから成る群から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ポリマーが、インプラントの約30wt%〜約95wt%を占める請求項1に記載の方法。
【請求項8】
環状脂質治療薬が、インプラントの約5wt%〜約70wt%を占める請求項1に記載の方法。
【請求項9】
インプラントから放出される環状脂質治療薬の効力が、最大効力の少なくとも約50%である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
眼内インプラントの低温製造法であって、下記の工程を含んで成る方法:
(a) プロスタグランジン類似体および生分解性ポリマーを合わして混合物を形成する工程;
(b) 該混合物を約50℃〜約80℃の温度に加熱する工程;および
(c) 該加熱混合物を押し出し、それによって眼内使用に適したインプラントを製造する工程。
【請求項11】
請求項1に記載の方法によって製造されたインプラント。
【請求項12】
(a)(i) 環状脂質治療薬;
(ii) 第一生分解性ポリマー;および
(ii) 第二生分解性ポリマー;
を合わして、混合物を形成する工程
(ここで、
(α) 第一生分解性ポリマーおよび第二生分解性ポリマーは、異なるポリマーであり;
(β) 環状脂質治療薬、第一生分解性ポリマー、および第二生分解性ポリマーの溶解度は、実質的に同じであり;
(γ) 第二生分解性ポリマーの溶融温度は、第一生分解性ポリマーの溶融転移温度より低い);
(b) 該混合物を、第二生分解性ポリマーのより低い溶融温度に加熱する工程であって、それによって第二生分解性ポリマーが環状脂質治療薬および第一生分解性コポリマーの溶媒として機能しうる工程(ここで、第二生分解性ポリマーの溶融温度は、環状脂質治療薬が効力の実質的損失を示す温度より低い);および
(c) 該加熱混合物を押し出す工程であって、それによって眼内使用に適したインプラントを製造する工程
を含んで成る、眼内インプラントの製造法。
【請求項13】
環状脂質治療薬成分が、プロスタグランジン、プロスタグランジン類似体、およびそれらの混合物から成る群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
環状脂質治療薬が、ビマトプロスト、ビマトプロスト類似体、およびそれらの混合物から成る群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項15】
第一生分解性ポリマーが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリラクチド-コ-グリコリド、およびそれらのコポリマーから成る群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項16】
第二生分解性ポリマーが、デカフルオロブタン、ポリ(イソブチレン)、ポリ(ヘキセメチレンアジパミド)、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリエチレングリコールから成る群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項17】
環状脂質治療薬、第一生分解性ポリマーおよび第二生分解性ポリマーの溶解度が、全て、互いの約10MPa1/2以内である請求項12に記載の方法。
【請求項18】
環状脂質治療薬、第一生分解性ポリマーおよび第二生分解性ポリマーの溶解度が、全て、約15〜30MPa1/2以内である請求項12に記載の方法。
【請求項19】
第一ポリマーが、インプラントの約30wt%〜約90wt%を占める請求項12に記載の方法。
【請求項20】
第二ポリマーが、インプラントの約50wt%〜約30wt%を占める請求項12に記載の方法。
【請求項21】
環状脂質治療薬が、インプラントの約5wt%〜約30wt%を占める請求項12に記載の方法。
【請求項22】
(a)(i) プロスタグランジン類似体であって、インプラントの約5wt%〜約30wt%を占めるプロスタグランジン類似体;
(ii) ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーであって、インプラントの約30wt%〜約90wt%を占めるポリ(ラクチド-コ-グリコリド)コポリマー;および
(ii) 第二生分解性ポリマーであって、インプラントの約5wt%〜約40wt%を占める第二生分解性ポリマー
を合わして、混合物を形成する工程
(ここで、
(α) ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーおよび第二生分解性ポリマーは、異なるポリマーであり;
(β) プロスタグランジン類似体、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーおよび第二生分解性ポリマーの溶解度は、全て、互いの約10MPa1/2以内であり;
(γ) 第二生分解性ポリマーの溶融温度は、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーの融点より低い);
(b) 該混合物を、第二生分解性ポリマーのより低い溶融温度に加熱する工程であって、それによって第二生分解性ポリマーがプロスタグランジン類似体およびポリ(ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーの溶媒として機能しうる工程;および
(c) 該加熱混合物を押し出す工程であって、それによって眼内使用に適したインプラントを製造する工程(該インプラントから放出されるプロスタグランジン類似体は、少なくとも約50%の効力を有する)
眼内インプラントの製造法であって、下記の工程を含んで成る方法:。
【請求項23】
眼症状の治療法であって、請求項1に記載の方法によって製造されたインプラントを眼内投与する工程を含んで成る方法。
【請求項24】
眼内投与の位置が、前房、後房、硝子体腔、脈絡膜、脈絡膜上腔、網膜下腔、結膜、結膜下腔、強膜外隙、角膜内腔、角膜上腔、強膜、毛様体輪、外科的誘発無血管領域、網膜黄斑、網膜およびテノン下位置から成る群から選択される請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−513555(P2010−513555A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543071(P2009−543071)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/087139
【国際公開番号】WO2008/079674
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】