説明

眼用レンズの製造方法および眼用レンズの製造装置

【課題】優れた形状精度で目的とする眼用レンズをモールド成形することの出来る、新規な眼用レンズの製造方法を提供すること。
【解決手段】レンズ後面を成形する雄型16とレンズ前面を成形する雌型14とを互いに重ね合わせて、それら雄型16と雌型14の対向面間に成形キャビティ18を形成し、該成形キャビティ18に重合性モノマー40を充填して重合することにより眼用レンズを成形するに際して、該成形キャビティ18の外周部分よりも先に中央部分において該重合性モノマー40を重合させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼用レンズの製造方法および製造装置に係り、特に、優れた成形精度で目的とする眼用レンズをモールド成形することが出来る、眼用レンズの新規な製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンタクトレンズや眼内レンズ等(以下、これらを「眼用レンズ」と総称する)の製造方法の一種として、モールド成形法が知られている。モールド成形法は、例えば特開昭50−151966号公報(特許文献1)や特開昭55−151618号公報(特許文献2)等に示されているように、レンズ後面を成形する雄型とレンズ前面を成形する雌型を重ね合わせて成形キャビティを形成し、該成形キャビティに充填された重合性モノマーを重合させることによって眼用レンズを製造する。モールド成形法によれば、目的とする眼用レンズを低コストで大量に生産することが出来る。
【0003】
ところで、眼用レンズは、人眼に装着される医療具であり、眼用レンズの前面および後面は屈折率等の光学特性や装用感に大きな影響を与えるものであることから、高い寸法精度が要求される。特に、光学部の前面や後面の形状精度が悪いと目的とする矯正効果が発揮され難いし、コンタクトレンズではベースカーブの形状精度が悪いと良好な装用感が得られ難い。
【0004】
しかしながら、従来のモールド成形法では、成形収縮等に起因してレンズ成形品に生ずる寸法誤差を抑えることが難しく、満足できる形状精度が得られ難かった。しかも、この形状精度の問題は、キャビティ形状に対応したレンズ形状の再現性の問題であり、脱型後の変形によるものであるから、モールドの寸法精度をいくら良くしても、解決できなかった。
【0005】
なお、予め眼用レンズの脱型後の変形量を考慮して成形キャビティを設計することも考えられる。しかし、キャビティ形状に対するレンズ成形品の寸法誤差(変形量)は、パワーやベースカーブ等のレンズ規格によって区々である。それ故、従来のモールド成形法では、同一のベースカーブでもフロントカーブが異なる場合には、変形量を考慮してベースカーブを与える雄型もそれぞれ用意しなければならなくなり、型数が膨大となることから、好ましい方策ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭50−151966号公報
【特許文献2】特開昭55−151618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の事情を背景として為されたものであって、その解決課題は、より優れた精度で目的とする眼用レンズをモールド成形することの出来る、新規な眼用レンズの製造方法を提供することを、目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、上記製造方法に好適に用いることの出来る、新規な構造の眼用レンズの製造装置を提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、前述の如き課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0010】
眼用レンズの製造方法に関する本発明の第一の態様は、レンズ後面を成形する雄型とレンズ前面を成形する雌型とを互いに重ね合わせて、それら雄型と雌型の対向面間に成形キャビティを形成し、該成形キャビティに重合性モノマーを充填して重合することにより眼用レンズを成形するに際して、前記成形キャビティの外周部分よりも先に中央部分において前記重合性モノマーを重合させることを、特徴とする。
【0011】
本発明者は、従来のモールド成形法において問題とされていた脱型後の眼用レンズの変形が、主として重合収縮による眼用レンズへの残留応力に起因するものであるとの知見を得、かかる知見に基づいて本発明を完成した。即ち、本発明者は、モールド成形による眼用レンズの残留応力のコントロールの観点から、多くの実験と検討を繰り返した結果、レンズ中央部分の形状を外周部分よりも先に重合成形することによって、眼用レンズの成形精度の向上と安定化が達成され得ることを、新たに見出したのである。それ故、本発明方法に従えば、モールドのキャビティ形状に高精度に対応した形状を有し、目的とする光学特性等を発揮し得る眼用レンズを安定して製造することが出来るのである。
【0012】
また、本発明方法に従えば、モールド成形による眼用レンズの形状誤差そのものが抑えられることから、眼用レンズの前面と後面の一方の面の形状変更が眼用レンズの脱型後の変形量を異ならせて他方の面の形状まで変化してしまうという従来技術の問題解決にも効果的である。例えば、コンタクトレンズのモールド成形において、同一のベースカーブでフロントカーブを異ならせて複数種類の付加度数を設定するに際しても、ベースカーブを与える雄型として同一のものを採用し、フロントカーブを与える雌型のみを交換することで対応できる。これにより、用意すべき型数を少なく出来て、特に規格数が膨大なハードコンタクトレンズ等においても、フルモールド製法によるレンズ製造の実現が容易となる。
【0013】
更にまた、レンズ中央部分から重合性モノマーを重合させることによって、重合性モノマーを重合させる外部エネルギーの伝達方向を、成形キャビティに充填された重合性モノマーにおいて略一定にすることが出来る。これにより、均一な重合を行なうことが可能となり、残留モノマーの抑制や組成の均一性の向上も図られ得る。
【0014】
眼用レンズの製造方法に関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る眼用レンズの製造方法において、前記雌型の中央部分を通じて前記重合性モノマーに対する重合処理を施すものである。このようにすれば、重合の外部エネルギーをより確実に重合性モノマーの中央部分に及ぼすことが出来て、中央部分からの重合をより確実に行なうことが出来る。
【0015】
眼用レンズの製造方法に関する本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係る眼用レンズの製造方法において、前記成形キャビティに充填された前記重合性モノマーに対して、該成形キャビティの中央部分において重合処理を施す一次重合の後、該成形キャビティの全体において重合処理を施す二次重合を行なうものである。このようにすれば、重合性モノマーの中央部分を重合させた後に、周辺部分を含む全体に重合の外部エネルギーを及ぼして重合させることによって、より優れた形状安定性を得ることが出来ると共に、より効率的で速やかな重合成形を容易に行なうことも出来る。
【0016】
眼用レンズの製造方法に関する本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れか一つの態様に係る眼用レンズの製造方法において、前記重合性モノマーを熱重合させるものである。
【0017】
眼用レンズの製造方法に関する本発明の第五の態様は、上記第四の態様において、前記雄型又は前記雌型における加熱部分を外部の熱影響から保護する保護部材を用いるものである。このようにすれば、風や他の成形型からの放射熱等の周囲環境による影響を抑えることが出来る。なお、保護部材としては、熱伝導率の小さい断熱材を用いることが雌雄型への熱的悪影響を回避する等の趣旨から好ましいが、周囲環境の影響因子や耐熱性,コスト等を考慮して各種材料や形状が選択される。
【0018】
眼用レンズの製造方法に関する本発明の第六の態様は、前記第一乃至第三の何れか一つの態様に係る眼用レンズの製造方法において、前記重合性モノマーを光重合させるものである。本態様においては、成形型として光透過性を有するものが用いられる。
【0019】
眼用レンズの製造方法に関する本発明の第七の態様は、前記第一乃至第六の何れか一つの態様に係る眼用レンズの製造方法において、前記雄型および前記雌型として樹脂型を用いるものである。特に熱重合を採用する場合には、樹脂型は金属型に比して熱伝達率が小さいことから、成形キャビティに充填された重合性モノマーに対する熱エネルギーの付与部分のコントロールが容易となり、重合性モノマーの中央部分に対してより効率的又は集中的に熱エネルギーを作用させることが可能となる。
【0020】
眼用レンズの製造装置に関する本発明の第一の態様は、レンズ後面を成形する雄型とレンズ前面を成形する雌型が互いに重ね合わされて、それら雄型と雌型の対向面間に形成された成形キャビティに充填された重合性モノマーを重合させることにより眼用レンズを成形する眼用レンズの製造装置において、前記重合性モノマーを重合させるための外部エネルギーを前記成形キャビティの中央部分に及ぼす中央重合処理手段を設けたことを、特徴とする。
【0021】
このような製造装置を用いれば、成形キャビティに充填された重合性モノマーの中央部分を外周部分よりも先に重合させることが出来て、目的とする眼用レンズをモールド成形で精度良く製造することが出来る。
【0022】
眼用レンズの製造装置に関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る眼用レンズの製造装置において、前記外部エネルギーとしての熱エネルギーを発生するホットプレートと、該ホットプレートに接触することで該熱エネルギーを前記重合性モノマーに及ぼす前記雌型とを備えており、該雌型における該成形キャビティの中央部分の形成部分の外面において該ホットプレートに接触する中央伝熱部が設けられることにより、前記中央重合処理手段が構成されているものである。本態様によれば、雌型の中央部分を通じて重合性モノマーに熱エネルギーを及ぼすことによって、重合性モノマーを中央部分から重合させることが出来る。
【0023】
眼用レンズの製造装置に関する本発明の第三の態様は、前記第二の態様に係る眼用レンズの製造装置において、前記雌型の前記中央伝熱部が平坦面とされているものである。本態様によれば、成形型をホットプレート上に安定して載置出来ると共に、雌型の中央部分がホットプレートに対して所定面積の面接触状態とされることから、ホットプレートからの熱エネルギーをより効率的に重合性モノマーの中央部分に及ぼすことが出来る。
【発明の効果】
【0024】
本発明に従う製造方法によれば、成形キャビティに充填された重合性モノマーの中央部分を先に重合させることによって、成形品の残留応力に起因すると考えられる脱型後の変形を抑えることが出来る。これにより、目的とする眼用レンズをモールド成形によって優れた形状精度で製造することが可能となる。
【0025】
また、本発明に従う製造装置を用いれば、成形キャビティに充填された重合性モノマーの中央部分に効果的に外部エネルギーを及ぼすことが出来て、重合性モノマーを中央部分から重合させることが出来る。これにより、成形品の残留応力に起因すると考えられる脱型後の変形を抑えて、目的とする眼用レンズをモールド成形によって優れた形状精度で製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態として、本発明に従う構造とされた製造装置を用いて本発明方法に従ってコンタクトレンズを製造する一工程を示す説明図。
【図2】本発明の製造方法と従来公知の製造方法に基づいて製造したコンタクトレンズのそれぞれについてベースカーブを測定した結果を示すグラフ。
【図3】断熱材を用いない本発明の製造方法に基づいて製造したコンタクトレンズについてパワー値を測定した結果を示すグラフ。
【図4】断熱材を用いた本発明の製造方法に基づいて製造したコンタクトレンズについてパワー値を測定した結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0028】
先ず、図1に、本発明の一実施形態としての眼用レンズの製造方法と、該製造方法に好適に用いられる眼用レンズの製造装置10を概略的に示す。本実施例に例示する製造方法は、眼用レンズとしてコンタクトレンズを製造するものである。なお、以下の説明において、上下方向とは、特に断りの無い限り、図1中の上下方向を言うものとする。
【0029】
本製造方法に用いられるコンタクトレンズ用成形型12は、モールド成形法において従来から用いられている公知の成形型と略同様のものであり、雌型14と雄型16によって構成されている。そして、雌雄両型14,16が互いに型合せされることによって、図示されているように、それら雌雄両型14,16の型合せ面間にコンタクトレンズの成形キャビティ18を形成するようになっている。なお、本実施形態における製造装置10は、雌雄両型14,16と後述するホットプレート34を含んで構成されている。
【0030】
雌型14は、全体として上方に開口する凹形状を有している。詳細には、雌型14の中央部分は下方に向かって突出する部分的な球殻形状又はボウル状の球殻状部20とされており、球殻状部20の上端開口縁部には軸直角方向外方に広がるフランジ状部22が一体形成されている。そして、球殻状部20の軸方向上方(図1中の上方)の面である凹側表面によって、目的とするコンタクトレンズのフロントカーブに対応した前面成形面24が形成されている。
【0031】
さらに、球殻状部20の外面の突出先端部には、軸直角方向に広がる円形の平坦面26が形成されている。平坦面26の径寸法:φは、目的とするコンタクトレンズの外径寸法よりも小さく、光学部の外径寸法かそれよりも小さく設定されていることが好ましい。具体的には、0.5〜3mm程度に設定される。また、この平坦面26が形成されていることにより、成形型12は、後述する重合性モノマー40を成形キャビティ18内に充填した雌型14と雄型16の重ね合わせ状態で、平面上で自立可能とされている。
【0032】
一方、雄型16は、全体として下方に向かって突出する凸形状を有している。詳細には、雄型16の中央部分は下方に向かって突出する球殻状部28とされており、球殻状部28の上端開口縁部には軸直角外方に広がるフランジ状部30が一体形成されている。そして、球殻状部28の軸方向下方(図1中の下方)の面である凸側表面によって、目的とするコンタクトレンズのベースカーブに対応した後面成形面32が形成されている。
【0033】
これら雌型14および雄型16は、成形に際して成形キャビティ18の形状を略一定に保ち得るに充分な剛性を有する材料と形状、寸法をもって形成されている。特に本実施形態においては、雌雄両型14,16は何れも熱可塑性樹脂材料によって形成されており、例えばポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE),ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリスチレン(PS),ポリカーボネート(PC),塩化ビニル(PVC),ナイロン(PA),ポリアセタール(POM),フッ素樹脂等の合成樹脂が成形材料として好適に採用される。なお、雌型14と雄型16には、両型14,16とも同じ材料を採用しても良く、或いは、互いに異なる材料を採用しても良い。また、雌型14や雄型16の形成材料として、上述の如き熱可塑性樹脂の他、熱硬化性樹脂やガラス,金属等の各種材料も、要求される成形精度や採用される成形条件等に応じて採用可能である。
【0034】
このような成形型12は、ホットプレート34上に載置される。ホットプレート34は、電気エネルギーで加熱されるようになっており、図示しないコントローラで温度調節可能とされている。また、ホットプレート34は、略平板形状とされており、載置面36が略水平面となる状態で配設されている。なお、ホットプレート34による成形型12の加熱の安定化を図るために、ホットプレート34を容器や装置の内部に設置してエアコンの風等の外乱の影響を防止することが望ましい。
【0035】
さらに、ホットプレート34の載置面36上には、保護部材としてのベーク38が設けられている。ベーク38の具体的形状は特に限定されるものではないが、本実施形態においては全体として略円筒形状の部材とされており、軸方向下方(図1中、下方)の端部が拡径されている。ベーク38の内径寸法は、雌型14の球殻状部20を収容し得る大きさに設定される。また、ベーク38の軸方向寸法:hは、雌型14の球殻状部20の頂点にあたる平坦面26からフランジ状部22の下端面までの高さ寸法:Hよりも僅かに小さくされている。ベーク38の形成材料は特に限定されるものではなく、紙ベークや布ベーク、その他例えばPBT等の樹脂材料も採用可能であり、好適には、断熱材が使用される。図示は省略するが、ホットプレート34には、ベーク38の多数が配列されるようになっており、各ベーク38によって、成形型の収容部が構成されている。
【0036】
上述の如き製造装置10を用いて目的とするコンタクトレンズをモールド成形(重合)するに際しては、先ず、雌型14を適当な冶具などにより鉛直上方に向かって開口した状態で支持して、球殻状部20の前面成形面24によって形成された受け皿状の領域に、目的とするコンタクトレンズを得るための適当な重合性モノマー40を図示しない注入管などを通じて注入する。
【0037】
重合性モノマー40としては、コンタクトレンズや眼内レンズの原料として使用されている公知の各種の液状のモノマー組成物が適宜に採用され得ることとなり、例えば、一般に、従来から用いられているラジカル重合可能な化合物の1種若しくは2種以上が配合なされてなるものの他、また、マクロマーやプレポリマーから構成されるもの等であっても、何等差し支えない。例えば、以下のものが挙げられる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、tert−ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの直鎖状、分岐鎖状および環状のアルキル(メタ)アクリレート類;
ペンタメチルジシロキサニルメチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルジシロキサニルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、モノ(メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ)ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、モノ(メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ)ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルエチルテトラメチルジシロキサニルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、ペンタメチルジシロキサニルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルエチルテトラメチルジシロキサニルメチル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキサニルプロピル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレートなどのシリコン含有(メタ)アクリレート類;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、テトラフルオロ−tert−ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロ−tert−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシオクタフルオロ−6−トリフルオロメチルヘプチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシドデカフルオロ−8−トリフルオロメチルノニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキサデカフルオロ−10−トリフルオロメチルウンデシル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有(メタ)アクリレート類;
スチレン、ペンタフルオロスチレン、メチルスチレン、トリメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、(ペンタメチル−3,3−ビス(トリメチルシロキシ)トリシロキサニル)スチレン、(ヘキサメチル−3−トリメチルシロキシトリシロキサニル)スチレン、ジメチルアミノスチレン、トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチレンなどのスチレン誘導体類;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリル酸;
N−ビニルピロリドン、α−メチレン−N−メチルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルピロリドンなどのビニルラクタム類;
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−アミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;
アミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート類;
メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシ基含有(メタ)アクリレート類;
ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環含有(メタ)アクリレート類;
イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸などのアルキル基、フッ素含有アルキル基、シロキサニルアルキル基で置換されていても良いアルキルエステル類;
グリシジル(メタ)アクリレート;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;
4−ビニルピリジン;
ビニルイミダゾール、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペリジン、N−ビニルサクシンイミドなどのヘテロ環式N−ビニルモノマー;
N−(メタ)アクリロイルピペリジン;
N−(メタ)アクリロイルモルホリン
【0038】
これらのモノマーを1種または2種以上選択して重合してマクロモノマーとし、これをレンズ成分(レンズ形成モノマー)の1つとして用いることも可能である。
【0039】
なお、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、これは(メタ)アクリル誘導体についても同様である。
【0040】
また、たとえば、酸素透過性に優れる眼用レンズを得ようとする場合、シリコン含有(メタ)アクリレート類、シリコン含有スチレン誘導体類などのシリコン含有モノマーやフッ素含有アルキル(メタ)アクリレート類などを選択することができ、また、強度に優れる眼用レンズを所望の場合や、眼用レンズの硬度を調節する場合には、アルキル(メタ)アクリレート類やスチレンを含めたスチレン誘導体類または(メタ)アクリル酸などを選択することができる。
【0041】
眼用レンズに抗脂質汚染性を付与したい場合には、フッ素含有アルキル(メタ)アクリレート類やフッ素含有スチレン誘導体類などのフッ素含有モノマーを選択することができる。さらに、レンズに親水性を付与したり、含水性の柔軟な眼用レンズを得ようとする場合には、水酸基含有(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、アミノアルキル(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリル酸、N−ビニルラクタム類などの親水性基を有するモノマーを選択することができる。
【0042】
その他、高屈折率のレンズ材料を得ようとする場合には、芳香族環を含有するモノマー、たとえば、スチレン系モノマーや芳香族環含有(メタ)アクリレート類などを選択することができる。
【0043】
眼用レンズ材料として、架橋剤または分子内に2個以上の重合性基を有するマクロモノマーを用いることができる。このようなモノマーとしては、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、4−ビニルベンジルメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシエチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、アジピ酸ジアリル、トリアリルイソシアヌレート、α−メチレン−N−ビニルピロリドンなどがあげられる。これらのモノマーを使用することで、得られる重合体内に三次元架橋構造を形成することができ、材料の物性が強靭となり、機械的強度や硬度を向上させることができるとともに、均一で透明であり、歪みのない光学性に優れた眼用レンズを得ることができ、さらに、眼用レンズに耐久性(耐薬品性、耐熱性、耐溶媒性)を付与したり、重合後のモノマーの溶出を抑制することができる。
【0044】
また、上記化合物には、必要に応じて、適当な架橋剤や、重合開始剤、例えば熱重合開始剤、光重合開始剤等や増感剤等の添加剤が配合されて、液状のモノマー組成物とされる。例えば、ラジカル重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイルなどが挙げられ、これらのうちから1種または2種以上が選択されて使用される。そして、その使用量は、重合に供せられる全モノマー混合物100重量部に対して、約0.01〜1重量部の範囲で使用することが好ましい。また、後述のように光線などを利用して重合する場合には、光重合開始剤や増感剤をさらに添加することが好ましい。
【0045】
次に、雌型14に対して、雄型16を、それらの型中心軸を一致させた状態下で鉛直上方から重ね合わせる。これにより、前面成形面24と後面成形面32の対向面間に、重合性モノマー40が充填された成形キャビティ18が形成される。なお、雌雄両型14,16の型合わせ面間には、成形キャビティ18の外周側に余剰モノマー収容空間41が画成されており、成形キャビティ18への重合性モノマー40の充填が担保されている。
【0046】
そして、雌型14と雄型16を型合わせ状態に保持して、雌型14の球殻状部20をベーク38内に挿入した状態で、ホットプレート34の載置面36上に載置する。ホットプレート34上への載置に際して、雌型14の球殻状部20に平坦面26が形成されていることから、平坦面26を載置面36に重ね合わせて、成形型12をホットプレート34上に安定して載置することが出来る。特に本実施形態においては、成形型12の載置面36への載置状態において、ベーク38は球殻状部20に対して水平方向で隙間を隔てて位置されると共に、雌型14のフランジ状部22はベーク38の上方に離隔して位置されるようになっており、雌型14は、全体がベーク38に対して非接触とされている。
【0047】
なお、ホットプレート34上に載置された成形型12の上面に、更にマスプレートを載置しても良い。このマスプレートの下面は、水平方向に広がる平坦面とされており、雄型16のフランジ状部30の上面に重ね合わされる。これにより、マスプレートとホットプレート34との間で各成形型12を挟んで、マスプレートの重量を各成形型12に対して雌雄型14,16の型閉方向に作用させる。そして、雌型14の平坦面26をホットプレート34の載置面36に対して確実に接触させて傾斜を防止すると共に、雌雄両型14,16を嵌合状態に一層安定して保持することができる。
【0048】
また、ホットプレート34の載置面36は、充分に大きな平面形状とされることにより、そこに成形型12の複数個が並置される。これにより、複数のコンタクトレンズを同時に重合成形することができる。また、必要に応じて採用される上記マスプレートも、それら複数の成形型12の各雄型16の上に重ね合わされる。
【0049】
そして、ホットプレート34を加熱することによって、成形キャビティ18内に充填された重合性モノマー40を中央部分から加熱する一次重合を行なう。一次重合においては、雌型14において球殻状部20の中央部分に形成された平坦面26が載置面36に重ね合わされていることによって、雌型14の球殻状部20の中央部分から加熱が開始される。このように、ホットプレート34に接触する平坦面26によって中央伝熱部が構成されており、ホットプレート34と平坦面26を含んで中央重合処理手段が構成されている。これにより、成形キャビティ18内は中央部分から加熱されて、重合性モノマー40は、成形キャビティ18内における中央部分から熱エネルギーが及ぼされる。その結果、重合性モノマー40は、成形キャビティ18内における中央部分において外周部分よりも先に重合が開始される。
【0050】
なお、この一次重合は、後述する二次重合を採用する場合にも、成形キャビティ18内の中央部分で重合性モノマー40の重合が完了するまで行なうことが望ましいが、必ずしも重合性モノマー40の重合が完全に完了するまで行なう必要はない。蓋し、二次重合との組み合わせで、成形キャビティ18内の重合性モノマー40の重合が完了すれば良いからである。
【0051】
すなわち、好適には、上記一次重合の終了後に、成形キャビティ18内に充填された重合性モノマー40の全体を加熱する二次重合が行なわれる。二次重合は、一次重合が完了した成形型12を、雌型14と雄型16の重ね合わせ状態を維持して、恒温乾燥機等に移して、成形型12の全体を加熱することによって行なわれる。
【0052】
なお、成形キャビティ18内の中央部分は、一次重合である程度又は完全に重合が完了していることから、二次重合では、重合が未処理又は未了である成形キャビティ18内の外周部分だけを加熱しても良い。しかし、成形キャビティ18内の全体を加熱する方が作業が容易であり、成形キャビティ18内の全体での重合を完全に完了することが出来る。
【0053】
これら一次重合および二次重合によって成形キャビティ18内に充填された重合性モノマー40の全体の重合処理が完了して、成形キャビティ18の形状に対応した目的とするコンタクトレンズが成形される。そして、これら重合処理の後に雌雄両型14,16を型開きして、形成されたコンタクトレンズを脱型することによって、目的とするコンタクトレンズの製造を終了する。
【0054】
なお、一次重合および二次重合に際しての温度や時間の処理条件は、採用する重合性モノマー40や成形する眼用レンズの形状や容積等を考慮して決定されるものである。そこにおいて、一次重合において成形キャビティ18の中央部分における重合が完全に完了し、且つ二次重合において成形キャビティ18の外周部分における重合が完全に完了するように、一次重合および二次重合の処理温度および処理時間を設定することが好適である。具体的に例示すると、一次重合と二次重合において、何れも、80〜100℃で20〜40分の加熱条件が採用され、特に好適には、一次重合が80℃で30分、二次重合が100℃で40分のように、一次重合よりも二次重合における加熱温度および加熱時間の少なくとも一方が高く又は長く設定される。
【0055】
本製造方法によれば、一次重合において、雌型14の平坦面26がホットプレート34の載置面36に重ね合わされていることによって、成形キャビティ18内の重合性モノマー40は、成形キャビティ18の外周部分よりも先に中央部分から重合される。これにより、レンズ残留応力を除去乃至は軽減して脱型後の眼用レンズの変形を抑えることが出来て、成形キャビティ18の形状により精度良く合致したレンズ形状を得ることが出来る。特に、光学部が設けられるレンズ中央部分の形状安定性が極めて効果的に高められることから、得られる眼用レンズの光学特性の安定化が達成される。
【0056】
なお、成形キャビティ18の形状に対する成形後の眼用レンズの形状誤差である、眼用レンズの脱型後の変形(ひずみ)が、上述の製造方法によって抑えられることは後述する実施例を含む多くの実験によって明らかである。その技術的理由は、中央部分から重合を開始させることで、熱伝達の方向ひいては重合の方向を中央部分から外周に向けて揃えられること、およびそれに伴って眼用レンズに生ずる歪又は内部応力が自由端である外周縁部に向けて逃がされること、などによるものであろうと推定される。
【0057】
その結果、例えば目的とするベースカーブが一定の場合には、共通の雄型を用いて雌型を交換するのみで、ベースカーブを等しくして球面レンズ度数や円柱レンズ度数等が異なる各規格のレンズを成形することも可能となる。これにより、従来のように眼用レンズの脱型後の変形量を考慮して、特定のベースカーブでも各規格毎に雄型を用意することも不要とされて、型数を大幅に削減することが出来る。従って、規格数が膨大であることから従来では困難とされていた、フルモールド製法によるハードレンズの製造も容易となる。
【0058】
さらに、重合性モノマー40への熱伝達の方向が、中央部分から外周部分に向かう方向に揃えられて、何れの成形品(眼用レンズ)においても略同様とされることから、成形品への残留モノマーの抑制や、組成の均一化も図られる。加えて、雌型14の球殻状部20がベーク38で覆われていることから、エアコンの風や他の成形型からの放熱等による外乱も抑えられている。特に本実施形態においては、雌型14がベーク38に非接触とされることによって、ベーク38から雌型14への熱伝導も抑えられている。但し、ベーク38は雌型14への接触状態とされていても良い。
【0059】
更にまた、上記製造装置10においては、金型に比して熱伝達率の低い樹脂型が用いられている。これにより、成形キャビティ18の中央部分に対して、熱をより集中して効率的に作用させることが可能とされている。
【0060】
そして、本製造方法においては、雌型14における球殻状部20の中央部分を加熱する一次重合の後に、成形型12の全体を加熱する二次重合が行なわれている。これにより、成形キャビティ18の外周部分の重合性モノマー40の重合もより確実に行なわれて、レンズ形状の更なる安定化が図られる。
【0061】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0062】
例えば、成形キャビティ内の加熱は、前記実施形態の如き熱伝導によるものに限定されず、例えば赤外線照射等でも良い。また、重合の外部エネルギーは熱に限定されるものではなく、採用する重合性モノマーの種類に応じて適当な外部エネルギーが採用される。例えば、光重合性のモノマーを採用する場合には、外部エネルギーとして紫外線等の電磁波を採用して光重合を実施しても良い。赤外線照射や光重合を用いる場合には、照射する光線の光径や照射方向を適宜に調節することによって、重合性モノマーの中央部分からの重合が行なわれる。
【0063】
また、成形型は樹脂型に限定されるものではなく、金型を用いても良い。例えば金型を用いて成形キャビティの中央部分を加熱する場合には、樹脂型に比してより高い温度で加熱したり、より狭い範囲を集中して加熱することによって行なわれることが好ましい。
【0064】
さらに、底部外面に平坦面(26)が形成されていない、球状凸形の底部外面を有する雌型14を採用する場合に、この雌型14が載置されるホットプレート34の載置面36に対して、雌型14の底部外面に対応する球状凹部を形成しても良い。これにより、球状凸形の底部外面を有する雌形14でも、中央部分におけるホットプレート34への接触面積を充分に確保できると共に、ホットプレート34上に安定して載置することが可能となる。
【0065】
また、重合性モノマーに対する中央部分の重合は、必ずしも重合処理の最初に行なわれる必要は無い。例えば、支持部を含んでモールド成形されるワンピース型の眼内レンズを本製造方法に従って製造するに際して、支持部を先に重合させた後に、レンズ部の中央部分を重合させ、その後にレンズ部の外周部分を重合させる等しても良い。
【実施例】
【0066】
本発明の有効性を確認するために、幾つかの実施例について、レンズ度数および後面曲率の測定を行なった。これらの実施例について、併せて行なった比較例と共に、以下に説明する。
【0067】
実施例および比較例のレンズ材料として、トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン55重量部、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート35重量部、エチレングリコールジメタクリレート10重量部を混合し、そこに重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3重量部を加え、その他UV吸収剤又は色素を加えて配合液を調合した。そして、得られた配合液をプラスチック製樹脂からなるモールド成形型に入れて、下記重合条件にて重合した。
【0068】
比較例1は、従来公知のモールド成形法と同様に、恒温乾燥機中に90℃で30分間加熱した。また、実施例についてはベークを用いない実施例1と、ベークを用いた実施例2の2つを用意した。実施例1は、ホットプレート(松下電器産業株式会社製のNK−91C)上に雌型が下になるようにセットし、一次重合として90℃で30分間加熱後、恒温乾燥機中に移して更に二次重合として90℃で30分間加熱した。一方、実施例2は、ホットプレート(松下電器産業株式会社製のNK−91C)上に断熱材としての布ベークをセットして、断熱材の内側に雌型が下になるようにセットし、一次重合として90℃で30分間加熱後、恒温乾燥機中に移して更に二次重合として90℃で30分間加熱した。
【0069】
【表1】

【0070】
先ず、上記比較例1の製造方法に従い、目的とするB.C.=7.80として、Powerを−1.00〜−10.00まで異ならせた5つの試験体を用意した。それと共に、ベークを用いない上記実施例1の製造方法に従い、比較例1と同じB.C.およびPowerの5つの試験体を用意した。表1および図2に、完成した試験体のB.C.の測定結果を示す。
【0071】
表1および図2から明らかなように、従来の製法に従って製造された比較例1は、Powerが大きくなるに連れてB.C.が目的とする7.80から大きく外れてレンズ度数が変化してしまうのに対して、本発明の製法に従って製造された実施例1は、何れのPowerにおいても目的とするB.C.=7.80に近い値が得られている。このことから、本発明に従う製造方法によれば、特定の後面曲率を与える雄型に対して、前面曲率を与える雌型を異ならせても、前面曲率の変化に伴う後面曲率の変動を抑えて、目的とする後面曲率が精度良く得られることが確認された。
【0072】
次に、実施例1および実施例2の製法にそれぞれ従って、各実施例毎に、B.C./Power/DIA.=8.10/−1.50/9.4の実施例1−1および実施例2−1と、B.C./Power/DIA.=7.90/−4.25/9.6の実施例1−2および実施例2−2の2つの規格のレンズをそれぞれ用意し、各規格毎に10個の試験体を用意した。
【0073】
【表2】

【0074】
表2と図3および図4に、実施例1に従って製造された実施例1−1および実施例1−2の各規格の10個の試験体、および実施例2に従って製造された実施例2−1および実施例2−2の各規格の10個の試験体について、Powerを測定した結果を示す。
【0075】
これら表2と図3および図4から明らかなように、ベークを用いる実施例2は、ベークを用いない実施例1に比して、Power値のばらつきが抑えられている。このことから、ベークを組み合わせて用いることによって、より優れた形状安定性が得られることが確認された。
【0076】
次に、本発明の製法に従って製造された実施例3および実施例4と、従来の製法に従って製造された比較例2および比較例3について、残留(未重合)モノマー量を測定した。
【0077】
先ず、実施例3および実施例4として、実施例3は70℃、実施例4は80℃に設定したホットプレート上に、配合液を充填したモールド型を、雌型の頂点がホットプレートに接する形で載置して、一次重合として30分間予備重合を行った。その後、二次重合として100℃に設定した恒温乾燥機に移し、重合を完結させた。
【0078】
一方、比較例2および比較例3として、比較例2は70℃、比較例3は80℃に設定した恒温乾燥機に、配合液を充填したモールド型を入れ、30分間予備重合を行った後、乾燥機の温度を100℃に上昇させて30分加熱することにより、重合を完結させた。
【0079】
これら実施例3,4および比較例2,3について、FDA GUIDANCE
DOCUMENT FOR CLASS III CONTACT LENSES APRIL 1989のp.18「Leachable and residual monomers」を参考にして、レンズ1枚をアセトニトリル5mLで50℃、72時間抽出し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、各共重合成分の標準液から作成された検量線により、抽出液中の濃度を求め、下記式により、配合組成比に対する未重合モノマー量を定量した。
【0080】
なお、HPLC条件として、高速液体クロマトグラフ:WATERS社製 2695 セパレーションモジュール、検出器:WATERS社製 フォトダイオードアレイ検出器 996、カラム:野村化学株式会社製 Develosil ODS HG−5 Length 250mm × I.D. 4.6mmを使用した。
【0081】
また、移動相として、初期設定値をアセトニトリル/蒸留水=30/70とし、測定開始と同時に移動相の組成を連続的に変化させ(リニアグラジエント)、30分後にアセトニトリル/蒸留水=100/0になるように設定した。そして、分析終了までアセトニトリル/蒸留水=100/0で保持した。なお、検出波長は210nm、流量は1.0mL/min、オーブン温度は40℃、打込み量は20mLとした。また、配合組成比に対する溶出率(%)={抽出液中の濃度×5×10−6/(抽出したレンズの重量×各成分の配合組成比)}×100で算出した。
【0082】
【表3】

【0083】
表3に、実施例3,4および比較例2,3について、重合方法と配合組成比に対する未重合モノマー量の測定結果を併せ示す。表3から明らかなように、比較例2,3は何れも未重合モノマーが多く、規格を満たさないのに比して、本製造方法によれば、実施例3,4の何れにおいても未重合モノマーを低減することが出来て、規格を満たすことが確認された。
【符号の説明】
【0084】
10:眼用レンズの製造装置、12:コンタクトレンズ用成形型、14:雌型、16:雄型、18:成形キャビティ、26:平坦面、34:ホットプレート、38:ベーク(保護部材)、40:重合性モノマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ後面を成形する雄型とレンズ前面を成形する雌型とを互いに重ね合わせて、それら雄型と雌型の対向面間に成形キャビティを形成し、該成形キャビティに重合性モノマーを充填して重合することにより眼用レンズを成形するに際して、
前記成形キャビティの外周部分よりも先に中央部分において前記重合性モノマーを重合させることを特徴とする眼用レンズの製造方法。
【請求項2】
前記雌型の中央部分を通じて前記重合性モノマーに対する重合処理を施す請求項1に記載の眼用レンズの製造方法。
【請求項3】
前記成形キャビティに充填された前記重合性モノマーに対して、該成形キャビティの中央部分において重合処理を施す一次重合の後、該成形キャビティの全体において重合処理を施す二次重合を行なう請求項1又は2に記載の眼用レンズの製造方法。
【請求項4】
前記重合性モノマーを熱重合させる請求項1〜3の何れか1項に記載の眼用レンズの製造方法。
【請求項5】
前記雄型又は前記雌型における加熱部分を外部の熱影響から保護する保護部材を用いる請求項4に記載の眼用レンズの製造方法。
【請求項6】
前記重合性モノマーを光重合させる請求項1〜3の何れか1項に記載の眼用レンズの製造方法。
【請求項7】
前記雄型および前記雌型として樹脂型を用いる請求項1〜6の何れか1項に記載の眼用レンズの製造方法。
【請求項8】
レンズ後面を成形する雄型とレンズ前面を成形する雌型が互いに重ね合わされて、それら雄型と雌型の対向面間に形成された成形キャビティに充填された重合性モノマーを重合させることにより眼用レンズを成形する眼用レンズの製造装置において、
前記重合性モノマーを重合させるための外部エネルギーを前記成形キャビティの中央部分に及ぼす中央重合処理手段を設けたことを特徴とする眼用レンズの製造装置。
【請求項9】
前記外部エネルギーとしての熱エネルギーを発生するホットプレートと、該ホットプレートに接触することで該熱エネルギーを前記重合性モノマーに及ぼす前記雌型とを備えており、該雌型における該成形キャビティの中央部分の形成部分の外面において該ホットプレートに接触する中央伝熱部が設けられることにより、前記中央重合処理手段が構成されている請求項8に記載の眼用レンズの製造装置。
【請求項10】
前記雌型の前記中央伝熱部が平坦面とされている請求項9に記載の眼用レンズの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−264602(P2010−264602A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115577(P2009−115577)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【Fターム(参考)】