説明

眼疾患の予防又は治療用組成物

【課題】本発明の有効成分として利用される化合物は、角膜上皮細胞からMMP−9及び炎症媒介サイトカイン(IL−1β、TNF−α等)の発現を抑制し、ヒト網膜内皮細胞におけるVEGF−媒介VEGFR−2活性を抑制することにより、究極的に眼球乾燥症、炎症性眼疾患、血管新生による眼疾患及びコンタクトレンズの使用による眼の副作用のような眼疾患の予防又は治療活性を示す。また、本発明の組成物は、細胞毒性及び皮膚副作用がないため、医薬組成物、機能性食品組成物又は食品組成物として安全に使用することができる。更に、本発明の組成物は、コンタクトレンズ着用による非細菌性炎症及び眼接触潤滑活性を有する洗浄剤及び潤滑剤として使用することができる。
【解決手段】本発明は、有効成分として、下記一般式Iで表される化合物を含む眼疾患予防用又は治療用の組成物に関する。
[一般式I]
S−(MS)−(MS)
(式中、Sは、シアル酸を示し、(MS)及び(MS)は、それぞれ独立して、単糖類残基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼疾患の予防又は治療用組成物及び人工涙液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
眼球乾燥症は、人種、年齢及び診断基準によって、有病率が5.5%〜15%と報告された非常に一般的な疾患である(1,2)。この疾患は、眼球痛み、不規則な角膜表面、ぼけて振動する視界及び角膜潰瘍の危険性の上昇などの特徴を有する(3,4)。角膜透過性の変化により、不安定な涙膜由来の慢性眼球乾燥症及び乾性角膜炎が生じ、炎症を起こすことが知られている。これは、涙に炎症媒介ケモカイン及びサイトカインの増加、結膜上皮による免疫活性及び接着分子(HLA−DR及び細胞間接着分子[ICAM−1])の発現増加、そして結膜におけるTリンパ球数の増加により立証されている(5,6)。乾性角結膜炎(keratoconjunctivitis sicca,KCS)から生じた角膜潰瘍は、視覚低下、視力喪失、更には失明を引き起こす恐れがある(7,8)。MMP−9(matrix metalloproteinase−9)の濃度及び活性は、眼球乾燥症患者の涙液(9)だけではなく、実験用眼球乾燥症(EDE)マウスの角膜上皮及び涙液(10)においても大きく増加することが報告されている。
【0003】
近来、眼球表面の炎症及びアポトーシスは、眼球乾燥症の発達に重要な役割をするという証拠が絶えず報告されている(11)。高浸透圧ストレス及び眼球乾燥症に伴い増加された炎症性サイトカイン(即ち、インターロイキン(IL)−1、腫瘍壊死因子(TNF)−α及び形質転換成長因子(TGF)−β)は、角膜上皮によるMMP−9の発現を増加させることが知られている(12)。このような慢性的な炎症環境は、扁平上皮化生及び杯細胞の消失のような特徴的な結膜上皮の病理学的変性に一部起因する(13)。
【0004】
既存の内皮細胞から新たに血管が形成される血管新生は、傷の治癒、胚発生、慢性炎症、及び腫瘍進行及び転移を始めとする多様な生理学的及び病理学的状態の素過程として知られている(14,15)。また、血管新生は、糖尿病性網膜症、黄斑変性、未熟児網膜症及び静脈閉鎖網膜症などの種々の視力喪失状態の特徴として知られている(16)。新しい血管は、既存の血管が蛋白質分解酵素による内皮細胞のBM(basement membrane)及びECM(extracellular matrix)の分解(17,18)、内皮細胞の増殖及び移動(19)、並びに発生期血管チューブの形成及び閉鎖(20)などの一連の過程を通じて成長することが知られている。血管新生に付随する網膜損傷による視力喪失状態に関しては、前記いずれかの過程の抑制が、潜在的な治療学的価値があることが知られている(16)。
【0005】
シアリルラクトース(Neu5Ac α−2,3−D−Gal β−1,4−D−Glc)(図1)は、GM3ガングリオシドの糖の頭部分であるグリコスフィンゴリピドを含むシアル酸であり、哺乳動物の血漿−細胞膜の普遍的な成分である(12,22)。しかし、シアリルラクトースの、眼球乾燥症を始めとした各種眼疾患に対する研究は、未だなされていない。
【0006】
本明細書全体にかけて多数の特許文献及び論文が参照されて、その引用が表示されている。引用された特許文献及び論文の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、多様な眼疾患を予防又は治療する物質を開発するために鋭意研究した。その結果、シアリルオリゴ糖が、眼球乾燥動物モデルにおいてMMP−9及び炎症媒介サイトカイン(IL−1β、TNF−α等)の発現を抑制して、ヒト網膜内皮細胞におけるVEGF−媒介VEGFR−2活性を抑制することにより、眼球乾燥症、炎症性眼疾患、血管新生による眼疾患及びコンタクトレンズの使用による眼の副作用のような眼疾患を効果的に予防又は治療することができることを確認し、本発明を完成した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、眼疾患予防用又は治療用の組成物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、人工涙液の組成物を提供することである。
【0010】
本発明のまた他の目的は、コンタクトレンズの洗浄用、潤滑用又はパッケージング用の組成物を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、眼疾患予防又は治療の方法を提供することである。
【0012】
本発明のまた他の目的は、眼の潤滑又は保湿の方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、コンタクトレンズの洗浄、潤滑又はパッケージングの方法を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲及び図面により、更に明確にされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の有効成分であるシアリルラクトースの構造を示す図である。
【図2】図2は、無処理群(UT)、眼球乾燥症実験群(EDE)及び二つの処理群の角膜上皮細胞におけるMMP−9、TNF−α、IL−1α及びIL−βに対するRNA発現程度を示すRT−PCR結果を示す図である。SLは、シアリルラクトースを示す。
【図3】図3は、無処理群(UT)、眼球乾燥症実験群(EDE)及び二つの処理群において、MMP−9バンドを表すザイモグラムを示す図である。SLは、シアリルラクトースを示す。
【図4】図4は、シアリルラクトースによるVEGF−誘導VEGFR−2リン酸化の抑制効果を確認するためのSDS−PAGEで分析した結果を示す図である。
【図5】図5は、インビトロでHRECのVEGF−誘導チューブ形成の抑制効果を確認するためのNikon光顕微鏡写真を示す図である。
【図6】図6は、HRECの超粘性接着(focal adhesion)を有するVEGF−誘導アセンブリーに対するシアリルラクトースの抑制効果を確認するための蛍光マイクロスコピー分析結果を示す図である。白色矢印は、それぞれ抗FAK(図6B)及び抗PAXILLIN(図6F)染色ドットクラスターを示す。
【図7】図7は、HRECのVEGF−誘導細胞間接着に対するシアリルラクトースの抑制効果を確認するための蛍光マイクロスコピー分析結果を示す図である。白色矢印は、セラミドグリカナーゼ(ceramide glycanase)によるシアリルラクトースの切断を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一様態によると、本発明は、有効成分として、下記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物を含む眼疾患予防用又は治療用の組成物を提供する。
[一般式I]
S−(MS)−(MS)
(式中、Sは、シアル酸を示し、(MS)及び(MS)は、それぞれ独立して、単糖類残基を示す。)
【0017】
本発明の他の様態によると、本発明は、有効成分として、下記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物を含む組成物を対象に投与する段階を含む眼疾患の予防又は治療の方法を提供する。
[一般式I]
S−(MS)−(MS)
(式中、Sは、シアル酸を示し、(MS)及び(MS)は、それぞれ独立して、単糖類残基を示す。)
【0018】
本発明者らは、多様な眼疾患を予防又は治療する物質を開発するために鋭意研究した。その結果、シアリルオリゴ糖が、眼球乾燥動物モデルにおいてMMP−9及び炎症媒介サイトカイン(IL−1β、TNF−α等)の発現を抑制して、ヒト網膜内皮細胞におけるVEGF−媒介VEGFR−2活性を抑制することにより、眼球乾燥症、炎症性眼疾患、血管新生による眼疾患及びコンタクトレンズの使用による眼の副作用などの眼疾患を効果的に予防又は治療することができることを確認した。
【0019】
本発明において有効成分は、前記一般式Iで表される化合物である。前記一般式Iにおいて、Sは、シアル酸を示す。前記シアル酸は、多様な方式で、(MS)に結合されてもよく、最も好ましくは、α2、3結合により単糖類化合物(MS)に結合される。Sは、シアル酸の他に、修飾されたシアル酸であってもよい。例えば、Sは、シアル酸の4番炭素にある−OH基が修飾(例えば、C〜Cアルキル基により修飾)されたものであってもよい。最も好ましくは、Sは、未修飾のシアル酸である。
【0020】
(MS)及び(MS)に位置する単糖類化合物は、当業界に公知のいかなる単糖類化合物を利用することができ、例えば、四炭糖(例えば、エリトロース、トレオース等)、五炭糖(例えば、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース等)及び六炭糖(例えば、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース等)を含む。(MS)及び(MS)に位置する単糖類化合物は、好ましくは、5炭糖又は六炭糖であり、より好ましくは、六炭糖であり、更に好ましくは、グルコース、マンノース又はガラクトースであり、最も好ましくは、グルコース又はガラクトースである。(MS)及び(MS)に位置する単糖類化合物は、D−又はL−形態の立体異性体を有してもよく、最も好ましくは、D−形態の立体異性体である。
【0021】
(MS)及び(MS)には、同一又は異なる単糖類化合物が結合されてもよく、好ましくは、相異なる単糖類化合物が結合される。
【0022】
本発明の好ましい具現例によると、(MS)には、ガラクトース又はグルコース、(MS)には、グルコース又はガラクトースが結合されて、最も好ましくは、(MS)には、ガラクトース、(MS)には、グルコースが結合される。(MS)に、ガラクトース、(MS)に、グルコースが結合されており、二糖類化合物、ラクトースが形成される。
【0023】
(MS)及び(MS)に位置する単糖類化合物は、修飾されてもよく、未修飾であってもよい。例えば、修飾された単糖類化合物の場合、−OH基にアセチル基又はN−アセチル基が結合できる。好ましくは、(MS)及び(MS)に位置する単糖類化合物は、未修飾の単糖類化合物である。
【0024】
本発明において有効成分として利用される前記一般式Iで表される化合物の最も好ましい具現例は、シアル酸−ガラクトース−グルコースである。シアル酸−ガラクトース−グルコースは、シアリルラクトースである。
【0025】
本発明の組成物において、有効成分として利用されるものは、前記化合物そのものだけでなく、それの薬剤学的に許容可能な塩、水和物又は溶媒和物であってもよい。
【0026】
用語、‘薬剤学的に許容可能な塩’は、所望の薬理学的効果、即ち、角膜上皮細胞からMMP−9及び炎症媒介サイトカイン(IL−1β、TNF−α等)の発現を抑制して、網膜内皮細胞におけるVEGF−媒介VEGFR−2活性を抑制する前記化合物の塩を示す。このような塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩等の無機酸;酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ビス硫酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、ナフチレート、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩等の有機酸を用いて形成された塩などが挙げられる。
【0027】
用語、‘薬剤学的に許容可能な水和物’は、所望の薬理学的効果を有する前記化合物の水和物を示す。用語、‘薬剤学的に許容可能な溶媒和物’は、所望の薬理学的効果を有する前記化合物の溶媒和物を示す。前記水和物及び溶媒和物も、上述の酸を用いて製造することができる。
【0028】
前記一般式Iで表される化合物、その薬剤学的に許容可能な塩、水和物又は溶媒和物を有効成分として含む本発明の組成物は、角膜上皮細胞におけるMMP−9及び炎症媒介サイトカイン(IL−1β、TNF−α等)の発現を抑制して、ヒト網膜内皮細胞におけるVEGF−媒介VEGFR−2活性を抑制することにより、究極的に眼球乾燥症、炎症性眼疾患及び血管新生による眼疾患のような眼疾患の予防又は治療活性を示す。
【0029】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物により予防又は治療できる眼疾患は、眼球乾燥症、炎症性眼疾患、網膜血管新生による眼疾患及びコンタクトレンズの使用による眼の副作用である。
【0030】
本発明のより好ましい具現例によると、本発明の組成物により予防又は治療できる眼疾患は、眼球乾燥症である。
【0031】
本発明のより好ましい他の具現例によると、本発明の組成物により予防又は治療できる炎症性眼疾患は、マイボーム腺機能不全、スティーブンス−ジョンソン症候群、シェーグレン症候群、ブドウ膜炎及び角膜炎である。
【0032】
本発明のより好ましい具現例によると、本発明の組成物により予防又は治療できる網膜血管新生による眼疾患は、糖尿病性網膜症、黄斑変性(macular degeneration)、未熟児網膜症(retinopathy of prematurity)、角膜移植拒否(corneal graft rejection)、後水晶体線維増殖症(retrolental fibroplasia)、新生血管緑内障、虹彩血管新生、網膜新血管新生、低酸素症、眼の腫瘍及び顆粒性結膜炎(trachoma)であり、最も好ましくは、ヒト網膜内皮細胞におけるVEGF−媒介VEGFR−2活性化を抑制し、網膜血管新生を抑制する。
【0033】
本発明のより好ましい他の具現例によると、本発明の組成物により予防又は治療できるコンタクトレンズの使用による眼の副作用は、コンタクトレンズ着用による眼球不便、乾燥感、ひりつく感覚及び非細菌性炎症である。
【0034】
本発明の組成物は、医薬組成物、機能性食品組成物又は食品組成物として製造できる。
【0035】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、(a)上述の本発明の一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物の薬剤学的有効量;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0036】
本明細書において、用語‘薬剤学的有効量’は、前記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物の効能又は活性を達成するに充分な量を意味する。
【0037】
本発明の組成物が医薬組成物として製造される場合、本発明の医薬組成物は、薬剤学的に許容される担体を含む。本発明の医薬組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に利用されるものであって、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の医薬組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを更に含むことができる。適した薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0038】
本発明の医薬組成物は、経口又は非経口で投与でき、非経口投与の場合は、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、経皮投与、粘膜投与、点眼投与などにより投与できる。
【0039】
本発明の医薬組成物の適合した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、反応感応性等の要因により様々な投与量とすることができる。本発明の医薬組成物の投与量としては、好ましくは、成人基準に、1日当たり0.001mg/kg(体重)〜100mg/kg(体重)であり、より好ましくは、0.01mg/kg(体重)〜80mg/kg(体重)であり、最も好ましくは、0.1mg/kg(体重)〜60mg/kg(体重)である。なお、医者又は薬剤師の判断によって、一定時間間隔で1日1回乃至数回に分割投与することもできる。特に、点眼投与の場合は、0.001質量%〜3質量%、好ましくは、0.01質量%〜1質量%程度の製剤を1日1回乃至数回点眼する。
【0040】
本発明の薬剤学的及び健康食品上の組成物は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を利用して製剤化することにより、単位容量形態に製造されるか、又は多用量容器内に入れて製造される。
【0041】
本発明の組成物の好ましい剤形の具体例としては、溶液、懸濁液、シロップ剤、エマルジョン、リポソーム、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、徐放型製剤、点眼剤、カプセル剤、コンタクトレンズ洗浄剤、コンタクトレンズ潤滑剤などが挙げられ、分散剤、安定化剤などを更に含むことができる。
【0042】
経口投与用固体剤形としては、投与経路により、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤などを使用してもよい。このような固体剤形において、活性化合物は、一つ以上の不活性薬剤学的に許容される賦形剤又は担体(例えば、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウム)及び/又はa)充填剤又は増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、珪酸等)、b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニールピロリドン、スクロース、アラビアゴム等)、c)保湿剤(例えば、グリセロール等)、d)崩解剤(例えば、寒天−寒天、炭酸カルシウム、イモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、特定珪酸塩、炭酸ナトリウム等)、e)液状遅延剤(例えば、パラフィン等)、f)吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物等)、g)湿潤剤(例えば、セチルアルコール、グリセロールモノステアレート等)、h)吸収剤(例えば、カオリン、ベントナイト粘土等)及びi)潤滑剤(例えば、タルク、カルシウムステアレート、マグネシウムステアレート、固体ポリエチレングリコール、ナトリウムラウリルサルフェート及びこれらの混合物等)と混合してもよい。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、緩衝剤を更に含んでもよい。
【0043】
また、ラクトース又はミルクシュガーのような賦形剤だけではなく、高分子量のポリエチレングリコールなどを使用した軟質及び硬質ゼラチンカプセルに充填剤として使用してもよい。
【0044】
錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤の固体投与型は、腸溶コーティング又は薬剤分野によく知られた他のコーティング剤でコーティングされてもよい。
これらは、任意の混濁化剤を含有させてもよく、また、これらが腸管の特定部位で任意に遅延された方式で活性成分のみを放出するか、活性成分を優先的に放出するように組成できる。また、必要な場合、活性化合物は、マイクロカプセル内に、1種あるいは複数種の賦形剤を含有させてもよい。
【0045】
特に、点眼投与の場合、本発明の組成物を精製水、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、グリセリン等)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート80、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等)、防腐剤(例えば、エデト酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム等)、緩衝剤(例えば、リン酸ナトリウム等)、pH調整剤(例えば、塩酸、水酸化ナトリウム等)などの慣用の製薬上必要な成分と混合して、通常法に基づき点眼薬の形態に製剤化することにより得られる。液性としては、中性付近のpH(pH5〜pH8)に調整することが好ましく、更に浸透圧も1付近に調整することが好ましい。
【0046】
経口投与用液体剤形としては、薬剤学的に許容されるエマルジョン、溶剤、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシル剤が含まれる。活性化合物の他に、液体剤形として、水、他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(特に、綿実油、ピーナッツ油、玉蜀黍油、胚芽油、オリーブ油、蓖麻子油、ごま油等)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル及びこれらの混合物等)のように、本分野でよく使用される不活性稀釈剤を含有させてもよい。不活性稀釈剤の他に、経口組成物として、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、風味剤、芳香剤等の補助剤を含有させてもよい。
【0047】
直腸又は膣内投与用剤形としては、好ましくは、本発明の化合物を、室温で固体であるが体温では液体であって、直腸又は膣で溶けて活性化合物を放出する適した非刺激性補助剤又は担体(例えば、ココアバーター、ポリエチレングリコール、座剤用ワックス等)と混合して製造できる座剤などが挙げられる。
【0048】
非経口注射のために適した剤形としては、生理学的に許容される滅菌水性又は非水性溶液、分散液、懸濁液又はエマルジョン、及び滅菌注射溶液又は分散液に再構成するための滅菌粉末を含んでもよい。適した水性及び非水性担体、稀釈剤、溶媒又は賦形剤の例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等)、植物性オイル(例えば、オリーブ油等)、注射用有機エステル(例えば、エチルオレート等)及びこれらの適した混合物が含まれる。
【0049】
また、本発明の組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤のような補助剤を含有することができる。各種抗菌剤及び抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等)により微生物の作用を抑制することができる。また、糖、塩化ナトリウムなどのような浸透圧調節剤を含むことが好ましい。吸収遅延剤(例えば、アルミニウムモノステアレート、ゼラチン等)を使用して、注射用薬剤の吸収を遅延させることができる。
【0050】
懸濁剤としては、活性化合物の他に、懸濁化剤(例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、ソルビタンエステル、微細結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天−寒天、トラガカント又はこれらの混合物等)を含有させてもよい。
【0051】
一部の場合、薬物の効果を持続させるために、皮下又は筋肉内注射から薬物の吸収を徐々にすることが好ましい。これは、水溶性の低い結晶形又は非結晶形物質の液体懸濁液を使用することにより達成することができる。この際、薬物の吸収速度は、溶解速度に左右されて、溶解速度は、結晶の大きさ及び結晶の形態に左右される。一方、非経口投与された薬物形態の遅延された吸収は、薬物をオイル賦形剤内に溶解させるか、懸濁させることにより達成される。
【0052】
注射用デポー形態は、薬物の微細カプセルマトリックスをポリラクチド−ポリグリコリドのような生体分解性重合体に形成することにより製造される。薬物と重合体の比率及び使用された特定重合体の性質によって、薬物の放出速度を調節してもよい。
【0053】
他の生体分解性重合体の例としては、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物)などが挙げられる。また、デポー注射用剤形は、薬物を体組織適合性であるリポソーム又はマイクロエマルジョン内に捕獲させることにより製造される。
【0054】
注射用剤形は、例えば、滅菌用フィルターを通じたろ過により滅菌させてもよく、使用直前に滅菌化剤を滅菌水又は他の滅菌注射用媒質中に溶解又は分散させることができる滅菌固体組成物の形態で混入させることにより滅菌させてもよい。
【0055】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、経口投与用組成物であり、リポソーム又は徐放性製剤の剤形である。
【0056】
本発明の他の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、非経口投与用組成物であり、その剤形は、リポソーム、徐放性製剤又は点眼剤である。
【0057】
本発明の医薬組成物が経口投与剤形だけではなく、非経口投与(好ましくは、静脈投与又は点眼投与)剤形に製造される場合、その剤形は、リポソーム、徐放性製剤又は点眼剤である。
【0058】
本発明の医薬組成物をリポソームに内包させて、薬物伝達のための剤形の安定性を提供することができる。本発明に利用されるリポソームは、ポリオール、界面活性剤、リン脂質、脂肪酸及び水を含む混合物により製造できる(Prescott,Ed.,Methods in Cell Biology,(XIV),p.33et seq.(1976))。
【0059】
リポソームに利用されるポリオールは、特に制限されず、好ましくは、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、メチルプロパンジオール、イソプレングリコール、ペンチルグリコール、エリスリトール、キシリトール及びソルビトールを含み、最も好ましくは、プロピレングリコールである。
【0060】
リポソームの製造に利用される界面活性剤としては、当業界に公知のいかなるものを使用してもよく、例えば、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などを使用してもよく、好ましくは、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などを使用してもよい。陰イオン性界面活性剤の具体的な例としては、アルキルアシルグルタメート、アルキルホスフェート、アルキルラクチレート、ジアルキルホスフェート、トリアルキルホスフェートなどが挙げられる。非イオン性界面活性剤の具体的な例としては、アルコキシ化アルキルエーテル、アルコキシ化アルキルエステル、アルキルポリグリコシド、ポリグリセリルエステル、シュガーエステルなどが挙げられる。最も好ましくは、非イオン性界面活性剤に属するポリソルベート類が利用される。
【0061】
リポソームの製造に利用される他の成分であるリン脂質は、両親和性脂質として利用されたもので、天然リン脂質(例えば、卵黄レシチン、大豆レシチン、スフィンゴミエリン等)、合成リン脂質(例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン、水添レシチン等)などを含み、好ましくは、レシチンである。前記レシチンは、より好ましくは、大豆又は卵黄から抽出した天然由来の不飽和レシチン又は飽和レシチンである。通常、天然由来のレシチンは、ホスファチジルコリンの量が23質量%〜95質量%、そして、ホスファチジルエタノールアミンの量が20質量%以下である。
【0062】
リポソーム製造に利用される脂肪酸は、高級脂肪酸であって、好ましくは、C12〜C22アルキル鎖の飽和又は不飽和脂肪酸であり、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレイン酸などが挙げられる。リポソームの製造に利用される水は、一般に脱イオン化された蒸留水である。
【0063】
リポソームは、当業界に公知された多様な方法を通じて製造されてもよく、最も好ましくは、前記成分を含む混合物を高圧ホモゲナイザーに適用して製造される。
【0064】
このように製造されたリポソームシステムは、様々な種類の難溶性物質を溶解すると同時に、不安定な物質を安定化させて、薬物伝達を極大化する長所を有している。
【0065】
本発明の医薬組成物は、持続的に有効成分の有効血中濃度を維持することにより、薬剤の服用回数を減らし、服薬順応度を高めることができるように、徐放性製剤として製造してもよい。
【0066】
徐放性製剤は、本発明の有効成分の他に、徐放化担体及びその他の補助剤を含んで製剤化される。本発明で使用される徐放化担体は、当業界に公知された多様な徐放化担体を利用することができるが、好ましくは、ポリエチレンオキシドである。
【0067】
また、その他の補助剤として、薬剤学的分野で通常的に使用される希釈担体が使用できる。このような目的で使用される稀釈担体の例としては、ラクトース、デキストリン、デンプン、微細結晶性セルロース、リン酸一水素カルシウム、炭酸カルシウム、糖類及び二酸化珪素などがあり、その他、流動性を増加させるために、ステアリン酸亜鉛又はマグネシウムのような滑沢剤や製薬分野で使用可能な他の補助剤を含んでもよい。
【0068】
本発明の組成物が食品組成物(又は機能性食品組成物)として製造される場合は、有効成分として、前記一般式Iで表される化合物だけではなく、食品製造時に通常的に添加される成分を含み、例えば、蛋白質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤、香味剤などを含む。上述の炭水化物の例としては、単糖類(例えば、ブドウ糖、果糖等)、二糖類(マルトース、スクロース、オリゴ糖等)、及び多糖類(例えば、デキストリン、シクロデキストリン等)等の通常的な糖;キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコールなどが挙げられる。香味剤としては、天然香味剤[ソーマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウディオサイドA、グリチルリチン等)]、合成香味剤(サッカリン、アスパルテーム等)などが挙げられる。
【0069】
例えば、本発明の食品組成物がドリンク剤として製造される場合は、本発明の一般式Iで表される化合物の他に、クエン酸、液状果糖、砂糖、ブドウ糖、酢酸、りんご酸、果汁、トチュウ抽出液、棗抽出液、甘草抽出液などを更に含んでもよい。
【0070】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、有効成分として、下記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物を含む人工涙液の組成物を提供する。
[一般式I]
S−(MS)−(MS)
(式中、Sは、シアル酸を示し、(MS)及び(MS)は、それぞれ独立して、単糖類残基を示す。)
【0071】
本発明の他の様態によると、本発明は、有効成分として、下記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物を含む人工涙液を眼に局所的に適用する段階を含む眼の潤滑又は保湿方法を提供する。
[一般式I]
S−(MS)−(MS)
(式中、Sは、シアル酸を示し、(MS)及び(MS)は、それぞれ独立して、単糖類残基を示す。)
【0072】
本発明の人工涙液の組成物に有効成分として利用される前記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物は、上述の本発明の眼疾患予防用又は治療用の組成物に利用される有効成分と同一であるため、明細書の過度なる煩雑性を避けるために重複記載を省く。
【0073】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の人工涙液の組成物に利用される有効成分は、涙腺から涙液の分泌を促進し、眼球乾燥症の予防又は治療活性を示す。
【0074】
本発明の人工涙液の組成物は、電解質、非イオン性界面活性剤、抗菌剤、ホウ酸塩及びポリオール複合体又は低分子量のアミノ酸を更に含む。
【0075】
人工涙液の組成物に含まれる電解質は、天然の涙を刺激するために利用されて、天然の涙に含まれたイオンを含む。例えば、本発明に利用される電解質には、カリウム、カルシウム、マグネシウム及び亜鉛があり、その濃度は、U.S.Pat.No.5,403,598に記載されている。
【0076】
本発明の組成物に利用される非イオン性界面活性剤により、本発明の組成物の表面張力を減少され、角膜表面に溶液が均一に広がる。非イオン性界面活性剤は、当業界に公知された多様な界面活性剤を含むが、好ましくは、15以上のHLB値を有するポリソルベート80(Tween 80)のようなポリソルベート類、並びにエチレンジアミンにエチレンオキシド及びプロピレンオキシドを添加して製造されたブロック共重合体などが挙げられる。本発明に利用された界面活性剤の量は、約38dynes/cm〜約45dynes/cmの表面張力を有する組成物を提供するための充分な量を意味し、前記範囲の表面張力は、天然の涙の表面張力に相応する。
【0077】
本発明の人工涙液組成物は、1回投与製品として製造されてもよく、分割投与製品として製造されてもよい。製品化以後、組成物の無菌状態を維持するために、1回投与製品は抗菌保存剤が不要であるが、分割投与製品は必要な場合もある。
【0078】
本発明の組成物に利用される抗菌保存剤として、好ましくは、ポリクオタニウム−1であり、その含量は、0.1ppm〜10ppmである。本発明の組成物において、抗菌保存剤の抗菌活性を改善させるために、更にホウ酸塩/ポリオール複合体又は低分子量のアミノ酸を含む。
【0079】
ホウ酸塩/ポリオール複合体の含量は、組成物の総質量を基準に0.5質量%〜6.0質量%であり、好ましくは、1.0質量%〜2.5質量%である。ホウ酸塩とポリオールのモル比は、1:0.1〜1:10であり、好ましくは、1:0.25〜1:2.5である。本発明に利用されるホウ酸塩は、ホウ酸、ホウ酸の塩及び他の薬剤学的に許容されるホウ酸塩、又はこれらの組み合わせを意味し、好ましくは、ホウ酸、ホウ酸塩ナトリウム、ホウ酸塩カリウム、ホウ酸塩カルシウム、ホウ酸塩マグネシウム及びこれらの組み合わせである。ポリオールは、当業界に公知された多様なポリオールを含み、好ましくは、糖、糖アルコール及び糖酸であり、より好ましくは、マンニトール、ソルビトール、プロピレングリコール及びグリセロールであって、最も好ましくは、グリセロールである。
【0080】
抗菌活性の改善のために、本発明の組成物に利用される低分子量のアミノ酸の含量は、0.01質量%〜2.5質量%、より好ましくは、0.1質量%〜1.0質量%であり、分子量は、好ましくは75〜250である。前記低分子量のアミノ酸は、より好ましくは、グリシンである。
【0081】
本発明の人工涙液組成物は、眼と両立できるpH及び浸透圧を有するように製造される。好ましくは、pHは、6.8〜7.8であり、浸透圧は、250mOsm/kg〜350mOsm/kgである。
【0082】
本発明の組成物を眼に適用する場合、安定感及び組成物の滞留時間を増加させるために、改善された粘性を有するように本発明の人工涙液組成物を製造する。好ましくは、粘性は、1cps〜20cpsであり、より好ましくは、2cps〜20cpsであり、最も好ましくは、5cps〜20cpsである。
【0083】
本発明の人工涙液組成物は、眼球乾燥症の予防又は治療のために、角膜に局所的に使用してもよく、眼湿潤剤又は眼潤滑剤として利用され、角膜に1滴〜2滴点眼して使用してもよい。
【0084】
本発明のまた他の形態によると、本発明は、下記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物を含むコンタクトレンズ洗浄用、潤滑用又はパッケージング用の組成物を提供する。
[一般式I]
S−(MS)−(MS)
(式中、Sは、シアル酸を示し、(MS)及び(MS)は、それぞれ独立して、単糖類残基を示す。)
【0085】
本発明の他の様態によると、本発明は、下記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物を含む組成物をコンタクトレンズと接触する段階を含む、コンタクトレンズの洗浄、潤滑又はパッケージングの方法を提供する。
[一般式I]
S−(MS)−(MS)
(式中、Sは、シアル酸を示し、(MS)及び(MS)は、それぞれ独立して、単糖類残基を示す。)
【0086】
本発明のコンタクトレンズ洗浄用の組成物は、主な成分として界面活性剤、及び補助成分として、前記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物を含むことができる。洗浄作用を有する界面活性剤は、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性及び両性界面活性剤を始めとして、当業界に公知された多様な界面活性剤を主な洗浄剤として含む。代表的な陰イオン性界面活性剤は、脂質、蛋白質、及び他のコンタクトレンズ浸漬物に対して優れた洗浄活性を提供する硫酸塩化された界面活性剤及びスルホン酸塩化された界面活性剤と、これらの生理的許容塩を含む。その例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム(硫酸塩化されてエトキシル化されたラウリルアルコールのナトリウム塩)、ラウレス硫酸アンモニウム(硫酸塩化されてエトキシル化されたラウリルアルコールのアンモニウム塩)、トリデセス硫酸ナトリウム(硫酸塩化されてエトキシル化されたトリデシルアルコールのナトリウム塩)、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、2ナトリウムラウリル又はラウレススルホスクシネート(スルホコハク酸のラウリル又はエトキシル化されたラウリルアルコール1/2エステルの2ナトリウム塩)、2ナトリウムオレアミドスルホスクシネート、及びジオクチルナトリウムスルホスクシネート(2−エチルヘキシルアルコールとスルホコハク酸のジエステルのナトリウム塩)などを含む。
【0087】
優れた洗浄活性を有する非イオン性界面活性剤は、バスフコーポレーション社で商品名プルロニック(例えば、Pluronic P104又はL64)として市販されている多様な界面活性剤を始めとして、特定ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンブロック共重合体(ポロキサマー)界面活性剤を含む。
【0088】
本発明の組成物は、陽イオン性界面活性剤を含むことができ、代表的な陽イオン性界面活性剤としては、トリ4級リン酸塩エステルなどがある。また、本組成物は、両性界面活性剤を含有することができて、イミダゾリン誘導体及びN−アルキルアミノ酸などがある。
【0089】
本発明のコンタクトレンズ潤滑用の組成物において、前記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物は、上述のように涙腺から涙の分泌を促進するため、これにより分泌された涙液は、コンタクトレンズの表面に涙液膜を形成し、潤滑役割をする。したがって、前記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物は、潤滑組成物において、特に有効成分として利用できる。
【0090】
本発明のコンタクトレンズパッケージング用の組成物は、コンタクトレンズ保存用として使用される水溶液であり、一般に塩水、その他の緩衝溶液及び脱イオン水を含むが、これらに限定されるものではない。好ましくは、本発明のパッケージング組成物は、塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム又はこれの相応するカリウム塩を含む塩含有塩水である。これらの成分は、一般に、酸と塩基の添加が、pH変化を比較的小さく起こすように配合されて、酸及びこれの対塩基を含む緩衝溶液を形成する。緩衝溶液は、更に2−(N−モルフォリノ)エタンスルホン酸(MES)、水酸化ナトリウム、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2”−ニトリロトリエタノール、n−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、アセト酸、アセト酸ナトリウム及びこれらの混合物を含む。
【0091】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、下記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物が表面コーティングされたコンタクトレンズを提供する。
[一般式I]
S−(MS)−(MS)
(式中、Sは、シアル酸を示し、(MS)及び(MS)は、それぞれ独立して、単糖類残基を示す。)
【0092】
上述のように、本発明に利用される有効成分である前記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物は、眼疾患の予防又は治療用途を有するため、前記化合物をコンタクトレンズにコーティングして、これを利用することにより、眼疾患を予防するか治療することができる。
【0093】
眼疾患を予防又は治療するための有効成分である前記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物が表面コーティングされるコンタクトレンズは、(i)ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シリコンアクリレート、フルオロシリコンメタクリレートなどのアクリルエステルの重合により製造される材料から形成される気体透過性硬質又は剛性角膜形態のレンズ及び(ii)レンズの含水量が20質量%以上になるように、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)又は他の親水性単量体のような単量体由来の一定比率の親水性反復単位を有する重合体から形成されるゲル、ハイドロゲル又はソフト形態のレンズを含む。
【実施例】
【0094】
以下、実施例を通じて本発明を更に詳細に説明するが、これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとっては自明なことであろう。
【0095】
<実験材料及び実験方法>
−細胞培養−
ヒト網膜内皮細胞(human retinal endothelial cell,HREC)をSciencell(米国)から得た。細胞を滅菌された内皮細胞成長培地(ECM,Sciencell,米国)で培養して、湿式5% CO培養器で37℃に保管した。本発明では、HRECのパッセージ4乃至6を利用した。
【0096】
−眼球乾燥症のマウスモデル−
6〜8週齢のC57BL/6マウス(中央実験動物(株)、ソウル、大韓民国)を眼球乾燥症実験(EDE)群として利用した。全ての実験は、眼科及び視力研究における動物の使用に関するARVO規定にしたがって行った(23)。臀部(hindquarters)を交互に1日4回9AM、12AM、3PM及び6PMに0.5mg/0.2mLスコポラミンハイドロブロマイド(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)を皮下注射して、1日18時間空気及び40%以下の周囲湿度に露出させることにより、EDEを誘導した。正常群(無処理群)(UT)、EDE実験群(対照群)、EDE+シアリルラクトース(1mg/kg)(処理群)及びEDE+シアリルラクトース(5mg/kg)(処理群)に分類して評価した。
【0097】
−涙液形成の測定−
涙液の形成は、コットンスレッド(Zone−quick;Oasis)で測定した。jeweler forcepsでスレッドを持ち、60秒間側面眼角(canthus)の眼球表面に適用した。スレッドの濡れた部分は、コットンスレッド上の目盛りを利用して、ミリメートルで測定した。
【0098】
−RNA分離及びRT−PCR−
各群(各実験に該当する群当たり六つの眼)から収集された角膜及び結膜上皮細胞から総RNAをTrizol試薬(JBI Co.,韓国)を利用して分離し、利用するまで−80℃で保管した。cDNAは、製造社のプロトコールにしたがってRNA PCRキット(Bioneer,韓国)のオリゴdT−アダプタープライマーと逆転写酵素で合成した。1番目−鎖のcDNAのPCR反応は、マウスIL−1β,TNF−α,MMP−9及びGAPDH mRNAに対する特異的プライマーセットを用いて行った(表1)。RT−PCRアッセイにおいて同一な量のmRNAの利用は、mGAPDHの発現程度を分析することにより確認した。PCR産物は、1×TAEバッファとEtBrを含有する2%アガロースゲル上で電気泳動することにより分離した。
【0099】
【表1】

【0100】
−ザイモグラフィー−
角膜及び結膜上皮細胞におけるゼラチン分解酵素の程度は、従来報告された方法(24)にしたがって、SDS−PAGEゼラチンザイモグラフィーを利用して測定した。組織を50mM Tris−HCl(pH 8.0)、150mM NaCl、0.02% NaN、100mg/mLフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、及び1% Triton X−100を含有するバッファで均質化した。細胞ライセートは、4℃で10分間、10,000×gで遠心分離し、電気泳動によりゼラチン(0.5mg/mL)を含有する8%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。前記ゲルを室温で30分間、0.25% Triton X−100に浸漬してSDSを除去した後、50mM Tris−HCl、150mM NaCl、10mM CaCl、2 ZnSO、0.01% Brij−35、及び5mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF、セリン蛋白質分解酵素抑制剤)を含有する分解バッファで一晩中37℃で反応し、蛋白質分解酵素がその基質を分解するようにした。ゲルを蒸留水で洗浄し、2時間、40%イソプロパノールで0.25%クマシーブリリアントブルーR−250で染色し、10%アセト酸で脱色した。
【0101】
−ウェスタンブロッティング分析−
各HRECを50mM Tris−HCl(pH 8.0)、150mM NaCl、0.02% NaN、100μg/mLフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、1μg/mLアプロチニン、及び1% Triton X−100を含有するバッファで均質化した。蛋白質濃度は、Bio−Rad蛋白質アッセイ(Bio−Rad,USA)を利用して測定した。総細胞ライセートの30μg試料をSDS−PAGEを利用して大きさ別に分離し、Hoefer電気移動システム(Amersham Biosciences,UK)を利用してニトロセルロース膜に電気泳動的に移動させた。ターゲット蛋白質を検出するために、前記膜をp−AKT、ERK、p−ERK、VEGFR−2(flk−1、Q−20)、VE−カドヘリン(Cadherin)、FAK、paxillin、vincullin(SantaCruz Biotecnology,米国)、及びp−VEGFR−2(Cell Signaling Tech.,米国)抗体と反応した。検出は、二次ホースラディッシュペルオキシダーゼ−結合抗−ラビットIgG抗体、抗−ゴートIgG抗体及び抗−マウスIgG抗体(SantaCruz Biotecnology,米国)、そしてECL chemiluminescenceシステム(Amersham Biosciences,UK)を利用して行った。
【0102】
−免疫蛍光マイクロスコピー−
HRECを12mm π−滅菌した6−ウェル組織培養プレートのゼラチン−コーティングカバースリップ上に接種した。シアリルラクトースの存在又は不存在時にHREC単独又はVEGFと共に処理した後、これを3.7%ホルマリンで固定した。次いで、PBS中で細胞を0.5×Triton X−100により透過させて、PBSで3回洗浄した。非−特異的部位は、軽く振りながら室温で30分間、1%牛血清アルブミン含有PBSでブロッキングした。FAK、paxillin、vincullin、及びVE−カドヘリン抗体の溶液に前記細胞を浸して、培養物を一晩中4℃で反応した。PBSで洗浄した後、細胞を室温で1時間、Alexa Flour 594−コンジュゲートゴート抗−マウスIgG(Molecular Probes,米国)及びAlexa Flour 488−コンジュゲートゴート抗−ラビットIgG(Molecular Probes,米国)で追加的に反応して、PBSで洗浄した後、蛍光マイクロスコピーを利用して分析した。また、抗原を予め付着しておいた一次抗体又は二次抗体のみを陰性対照群実験として行った。
【0103】
−チューブ形成アッセイ−
毛細管−類似ネットワークを形成するVEGF−誘導HRECの活性に対するシアリルラクトースの抑制効果をマトリゲル−コーティング24ウェル培養プレートで調べた。マトリゲル(13.9mg/mL)を一晩中4℃で溶かして、1:1の比でECM培地と混合した。ECM−稀釈マトリゲル(6.95mg/mL)の70μLを24ウェル培養プレートの各ウェルに添加して、1時間、37℃で重合した。チューブ形成を試験するHRECを組織培養プレートから取り外して、洗浄し、1%FBS(1×10細胞/ウェル)含有ECM培地で再懸濁した後、VEGFの不存在又は存在時に多様な濃度のシアリルラクトースと共に前記マトリゲル−コーティングウェルに添加した。前記プレートを5%CO反応器で24時間、37℃で反応した後、プレートの各ウェルに形成された毛細管−類似チューブをNikon光顕微鏡で写真を取った。
【0104】
<実験結果>
−涙液形成に対するシアリルラクトースの効果−
UT、EDE及び二つの処理群(6 eyes/group/experiment,in four different sets of experiments)から得られた側面眼角(canthus)の眼球表面に形成された涙液をコットンスレッドで測定した。スコポラミンにより誘導されたEDE及び通風は、UT(無処理群)に比べて涙液の形成が減少された。一方、処理群(EDE+シアリルラクトース)は、涙液形成において、統計的に有意な増加を観察した(表2)。
【0105】
【表2】

涙液測定用糸における濡れた部分の測定値
【0106】
−MMP−9及び炎症媒介サイトカインに対するシアリルラクトースの効果−
MMP−9、IL−1β、TNF−α及びハウスキーピング遺伝子GAPDHを暗号化するRNA転写体の程度は、各群(UT,EDE及びEDE+シアリルラクトース)から得られた角膜上皮細胞の総RNAを利用してRT−PCRで評価した。EDEにシアリルラクトースを処理した場合、MMP−9、IL−1β及びTNF−α転写体の程度が減少した(図2)。二つの処理群の中、EDE+シアリルラクトース(5mg/kg)群が、遺伝子の発現において、全体的に最も大きい減少を示すことを確認することができた。
【0107】
−EDEにおいて角膜MMP−9発現に対するシアリルラクトースの効果−
ゼラチン分解活性(105kDaのゼラチン分解バンドは、マウスMMP−9と一致)をUT,EDE及び二つの処理群から収集した角膜及び結膜上皮細胞で評価した。ザイモグラフィーから、EDE群マウスの角膜は高いゼラチン分解活性を有することがわかった。しかし、EDE+シアリルラクトース(1mg/kg)群及びEDE+シアリルラクトース(5mg/kg)群の場合は、角膜及び結膜上皮細胞においてゼラチン分解活性が減少して、UTの場合は、ゼラチン分解活性が全く減少しなかった(図3)。
【0108】
−VEGF−刺激HRECにおいてシアリルラクトースよるVEGFR−2及びVEGF−関連信号経路活性化の抑制−
VEGF−媒介VEGFR−2の活性化は、内皮細胞においてVEGFR−2の下流シグナル経路を通じて腫瘍の血管新生に重要な役割をする(25)。VEGF−媒介VEGFR−2活性化は、PI−3K/AKT−依存細胞移動を活性化させる(26)。なお、内皮細胞においてVEGF−誘導細胞の生存は、VEGFR−2下流シグナル活性としてPI−3K/AKT活性と関連がある(27)。したがって、本発明者らは、VEGF−誘導内皮細胞の表面におけるVEGFR−2の活性がシアリルラクトースにより調節されるかどうかを調べてみた。図4から確認できるように、シアリルラクトースが濃度−依存的に内皮細胞におけるVEGF−刺激VEGFR−2リン酸化を強力に減少させることがわかった。また、本発明者らは、シアリルラクトースによりVEGF−刺激シグナル経路の活性化が調節されるかどうかを調べた。図4からわかるように、シアリルラクトースがVEGF−誘導AKTの活性を著しく減少させることがわかり、これは、内皮細胞の生存、移動及び増殖に係わることが示唆された。
【0109】
このような実験結果は、シアリルラクトースがHRECにおいてVEGF−強化VEGFR−2及びVEGF−媒介シグナル経路の活性化により誘導された多様な下流シグナルを抑制することにより、抗−血管新生作用に係わることが示唆された。
【0110】
−HRECのVEGF−誘導チューブ形成に対するシアリルラクトースの抑制効果−
血管新生において、VEGF−媒介VEGFR−2活性化は、内皮細胞の増殖、移動、生存、チューブ形成などの血管新生作用に密接に係わっている(25)。したがって、本発明者らは、HRECのVEGF−刺激増殖、移動及びチューブ形成の見地で、シアリルラクトースの抗−血管新生作用を調べた。図5から確認できるように、VEGFの存在時にHRECを成長因子−減少マトリゲルにおいておく場合、VEGFは、長くて丈夫なチューブ−類似構造を形成して、これは、対照群に比べ著しく多い細胞によりなされた。シアリルラクトースは、HRECにおいて濃度−依存的にVEGFに誘導された内皮細胞チューブの幅及び長さを非常に減少させた。このような結果から、シアリルラクトースは、HRECにおいてVEGF−誘導インビトロ血管新生を抑制する重要な効果を有することが確認された。
【0111】
−HRECの超粘性接着(focal adhesion)を有するVEGF−誘導アセンブリーに対するシアリルラクトースの抑制効果−
VEGF−刺激FAK及びpaxillinチロシンリン酸化により形成された超粘性接着に対するシアリルラクトースの効果を更に調べた。HRECをシアリルラクトースの不存在又は存在時に50ng/mL VEGFで刺激した。抗−FAK染色ドットクラスターを白色矢印で示した。VEGF−誘導HRECにおいて抗−FAKで免疫染色された超粘性接着は増加した(図6B)。しかし、超粘性接着は、シアリルラクトースにより著しく抑制された(図6C)。また、対照細胞群は、核周囲と推定された領域で強く広がったpaxillin免疫蛍光染色を示した。強く染色された超粘性接着-類似構造を識別することができたが、その数は相対的に少なかった(図6F)。シアリルラクトースは、VEGF−刺激HRECの超粘性接着において、抗−paxillin免疫染色のリクルートメント及び増加を確実にブロッキングした(図6G)。
【0112】
接合成分の高まったチロシンリン酸化程度と関連した内皮細胞単一層は、細胞間接着を減少させて、HUVEC(human umbilical vein endothelical cell)においてVEGFにより誘導された上皮細胞の運動性及び透過性を増加させる(28−30)。したがって、本発明者らは、シアリルラクトースが細胞間接触においてホスホチロシンの程度を変化させることにより、HUVECにおけるこのような効果を変換させることができるかどうかを調べた。非刺激されたロング−コンフルエント単一層において、ホスホチロシンシグナルは、広いオーバーラッピング細胞面積によく広がって、超粘性接着にのみ弱い染色を示した(図7A)。VEGFは、1時間後にジグザグパターンで再分配されたVE−カドヘリン染色に対するホスホチロシンラベリングを刺激した(図7B)。VEGF−刺激HRECの細胞間接合において、鋭い連続線で明らかに表れる細胞間接触の領域がシアリルラクトースにより回復された(図7C)。このような結果から、シアリルラクトースが超粘性接着における抗−paxillin免疫染色及びHRECにおける細胞間接着の回復を効果的に抑制することが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上、詳述したように、本発明は、有効成分として上述の一般式Iで表される化合物を含む眼疾患の予防又は治療用組成物を提供する。本発明の有効成分として利用される化合物は、角膜上皮細胞におけるMMP−9及び炎症媒介サイトカイン(IL−1β、TNF−α等)の発現を抑制して、ヒト網膜内皮細胞からVEGF−媒介VEGFR−2活性を抑制することにより、究極的に眼球乾燥症、炎症性眼疾患、血管新生による眼疾患、コンタクトレンズの使用による眼の副作用などの眼疾患の予防又は治療活性を示す。なお、本発明の組成物は、細胞毒性及び皮膚副作用がなくて、医薬組成物、機能性食品(neutraceutical)組成物又は食品組成物に安全に適用することができる。更に、本発明の組成物は、コンタクトレンズ着用による非細菌性炎症及び眼接触潤滑活性を有する洗浄剤及び潤滑剤として適用することができる。
【0114】
以上、本発明の特定な部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。
【0115】
[参考文献]
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、下記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物を含むことを特徴とする眼疾患予防用又は治療用の組成物。
[一般式I]
S−(MS)−(MS)
(式中、Sは、シアル酸を示し、(MS)及び(MS)は、それぞれ独立して、単糖類残基を示す。)
【請求項2】
一般式Iにおいて、(MS)は、ガラクトースを示し、(MS)は、グルコースを示す請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
眼疾患が、眼球乾燥症、炎症性眼疾患、網膜血管新生による眼疾患又はコンタクトレンズの使用による眼の副作用である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
眼疾患が、眼球乾燥症である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
炎症性眼疾患が、マイボーム腺機能不全、スティーブンス−ジョンソン症候群、シェーグレン症候群、ブドウ膜炎及び角膜炎からなる群から選択される請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
網膜血管新生による眼疾患が、糖尿病性網膜症、黄斑変性(macular degeneration)、未熟児網膜症(retinopathy of prematurity)、角膜移植拒否(corneal graft rejection)、後水晶体線維増殖症(retrolental fibroplasia)、新生血管緑内障、虹彩血管新生、網膜新血管新生、低酸素症、眼の腫瘍及び顆粒性結膜炎(trachoma)からなる群から選択される請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
ヒト網膜内皮細胞におけるVEGF−媒介VEGFR−2の活性化が抑制されて、網膜血管新生が抑制される請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
医薬組成物である請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
剤形が、溶液、懸濁液、シロップ剤、エマルジョン、リポソーム、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、徐放型製剤、点眼剤、カプセル剤、コンタクトレンズ洗浄剤及びコンタクトレンズ潤滑剤からなる群から選択された剤形である請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
機能性食品組成物又は食品組成物である請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
有効成分として、下記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物を含むことを特徴とする人工涙液の組成物。
[一般式I]
S−(MS)−(MS)
(式中、Sは、シアル酸を示し、(MS)及び(MS)は、それぞれ独立して、単糖類残基を示す。)
【請求項12】
一般式Iにおいて、(MS)は、ガラクトースを示し、(MS)は、グルコースを示す請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
有効成分が、涙腺からの涙の分泌を促進する請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
下記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物を含むことを特徴とするコンタクトレンズ洗浄用、潤滑用又はパッケージング用の組成物。
[一般式I]
S−(MS)−(MS)
(式中、Sは、シアル酸を示し、(MS)及び(MS)は、それぞれ独立して、単糖類残基を示す。)
【請求項15】
有効成分として、下記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物を含む組成物を対象に投与する段階を含むことを特徴とする眼疾患の予防又は治療の方法。
[一般式I]
S−(MS)−(MS)
(式中、Sは、シアル酸を示し、(MS)及び(MS)は、それぞれ独立して、単糖類残基を示す。)
【請求項16】
一般式Iにおいて、(MS)は、ガラクトースを示し、(MS)は、グルコースを示す請求項15に記載の方法。
【請求項17】
眼疾患が、眼球乾燥症、炎症性眼疾患、網膜血管新生による眼疾患又はコンタクトレンズの使用による眼の副作用である請求項15に記載の方法。
【請求項18】
眼疾患が、眼球乾燥症である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
炎症性眼疾患が、マイボーム腺機能不全、スティーブンス−ジョンソン症候群、シェーグレン症候群、ブドウ膜炎及び角膜炎からなる群から選択される請求項17に記載の方法。
【請求項20】
網膜血管新生による眼疾患が、糖尿病性網膜症、黄斑変性(macular degeneration)、未熟児網膜症(retinopathy of prematurity)、角膜移植拒否(corneal graft rejection)、後水晶体線維増殖症(retrolental fibroplasia)、新生血管緑内障、虹彩血管新生、網膜新血管新生、低酸素症、眼の腫瘍及び顆粒性結膜炎(trachoma)からなる群から選択される請求項17に記載の方法。
【請求項21】
ヒト網膜内皮細胞におけるVEGF−媒介VEGFR−2の活性化が抑制されて、網膜血管新生が抑制される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
組成物が、医薬組成物である請求項15から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
剤形が、溶液、懸濁液、シロップ剤、エマルジョン、リポソーム、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、徐放型製剤、点眼剤、カプセル剤、コンタクトレンズ洗浄剤及びコンタクトレンズ潤滑剤からなる群から選択された剤形である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
有効成分として、下記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物を含む人工涙液を眼に局所的に適用する段階を含むことを特徴とする眼の潤滑又は保湿の方法。
[一般式I]
S−(MS)−(MS)
(式中、Sは、シアル酸を示し、(MS)及び(MS)は、それぞれ独立して、単糖類残基を示す。)
【請求項25】
一般式Iにおいて、(MS)は、ガラクトースを示し、(MS)は、グルコースを示す請求項24に記載の方法。
【請求項26】
有効成分が、涙腺からの涙の分泌を促進する請求項24に記載の方法。
【請求項27】
下記一般式Iで表される化合物、その塩、水和物又は溶媒和物を含む組成物をコンタクトレンズと接触する段階を含むことを特徴とするコンタクトレンズの洗浄、潤滑又はパッケージングの方法。
[一般式I]
S−(MS)−(MS)
(式中、Sは、シアル酸を示し、(MS)及び(MS)は、それぞれ独立して、単糖類残基を示す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−505928(P2012−505928A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533097(P2011−533097)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/KR2009/005983
【国際公開番号】WO2010/047500
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(511028618)ベネバイオシス カンパニー リミテッド (2)
【出願人】(506394418)スンキュンクワン ユニヴァーシティー ファウンデーション フォー コーポレイト コラボレイション (10)
【Fターム(参考)】