説明

眼科用レーザ治療装置

【課題】ジョイスティックに配置するスイッチを有効に利用しつつ、誤操作の可能性を低減して良好に操作できる眼科用レーザ治療装置を提供すること。
【解決手段】治療レーザ光を患者眼に照射するためのレーザ照射光学系及び患者眼を観察するための観察光学系が配置された本体部と、本体部を患者眼に対して位置合わせするために術者が手で把持するグリップ部5aを持つジョイスティック5と、治療レーザ光やエイミング光の各種手術条件を設定する信号を入力するための操作部とを備え、治療レーザ光を患者眼に照射して治療を行う眼科用レーザ治療装置において、各種手術条件の一部を設定するスイッチ信号を入力するためにジョイスティック5に配置された補助スイッチ7であって、グリップ部より上方で、且つ患者眼側又は術者側の側部に形成された窪んだ開口部5dの内部に配置された操作部材を持つ補助スイッチ7を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者眼の患部にレーザ光を照射し、治療する眼科用レーザ治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科用レーザ治療装置では、スリットランプ等の観察光学系により患者眼の治療部位を拡大観察しながらレーザ照射光学系及び観察光学系が配置された本体部を患者眼に対して移動してレーザ治療を行う。本体部を患者眼に位置合わせするための移動には、術者が手で把持するジョイスティックが用いられている。レーザ照射に際しては、治療目的や患者眼の状態に応じてレーザ光のエネルギ(出力)やエイミング光等の各種の手術条件を設定するが、このための信号入力用のスイッチ操作部は、通常、ジョイスティックとは離れたところの本体部等に設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000―217839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、患者眼に対する本体部の位置合わせを完了した後に操作部のスイッチを操作する場合、ジョイスティックから手を離してスイッチ操作部を操作すると、位置合わせがずれてしまうことがある。このため、ジョイスティックにスイッチ操作部と同様な操作信号を入力するスイッチ部材を配置することが考えられるが、この場合にはジョイスティックの操作に伴う誤操作の可能性がある。また、ジョイスティックに限られた部分に多くのスイッチ部材を配置するには限界があり、複数のスイッチ部材を配置すると却って操作しにくくなってしまう虞もある。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑み、ジョイスティックに配置するスイッチを有効に利用しつつ、誤操作の可能性を低減して良好に操作できる眼科用レーザ治療装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するために、以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 治療レーザ光を患者眼に照射するためのレーザ照射光学系及び患者眼を観察するための観察光学系が配置された本体部と、該本体部を患者眼に対して位置合わせするために術者が手で把持するグリップ部を持つジョイスティックと、治療レーザ光やエイミング光の各種手術条件を設定する信号を入力するための操作部とを備え、治療レーザ光を患者眼に照射して治療を行う眼科用レーザ治療装置において、前記各種手術条件の一部を設定するスイッチ信号を入力するために前記ジョイスティックに配置された補助スイッチであって、前記グリップ部より上方で、且つ患者眼側又は術者側の側部に形成された窪んだ開口部の内部に配置された操作部材を持つ補助スイッチを備えることを特徴とする。
(2) (1)の眼科用レーザ治療装置において、前記補助スイッチの操作部材は、その先端が前記ジョイスティックの外周から突出しない位置に配置されていることを特徴とする。
(3) (1)又は(2)の眼科用レーザ治療装置において、前記補助スイッチは前記操作部材をジョイスティックの軸方向に移動する第1操作のスイッチ信号と、左右の各方向及び上下の各方向の少なくと一方の対称な方向に移動する第2操作のスイッチ信号が入力可能でスイッチでり、前記補助スイッチ信号のそれぞれに前記各種手術条件の一部を設定する機能が割り当てられていることを特徴とする。
(4) (1)又は(2)の眼科用レーザ治療装置において、前記補助スイッチは前記操作部材をジョイスティックの軸方向に移動する第1操作のスイッチ信号と、左右の各方向及び上下の各方向の少なくと一方の対称な方向に移動する第2操作のスイッチ信号が入力可能でスイッチであって、前記第1操作のスイッチ信号に装置の動作モードを切換え設定し、前記第2操作のスイッチ信号で治療レーザ光又はエイミング光の増減を設定するスイッチであることを特徴とする。
(5) (1)〜(4)の何れかの眼科用レーザ治療装置において、さらに、前記補助スイッチで入力されるスイッチ信号に割り当てられた手術条件設定用のスイッチ機能を、別の手術条件設定用のスイッチ機能に変更するスイッチ機能変更手段と、を設けたことを特徴とする。
(6) (5)の眼科用レーザ治療装置において、前記補助スイッチは前記操作部材の異なる方向への操作で複数のスイッチ信号を入力可能なスイッチであり、前記スイッチ機能変更手段は、それぞれのスイッチ信号に割り当てる手術条件設定用のスイッチ機能を任意に組み合わせて設定する手段を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ジョイスティックに配置するスイッチを有効に利用しつつ、その誤操作の可能性を低減できる。また、スイッチを良好に操作できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について、後発白内障治療や虹彩、隅角の穿孔による緑内障治療をジャイアントパルスのレーザにより行う眼科用レーザ治療装置を例として、図面に基づいて説明する。図1はレーザ治療装置の外観略図、図2は制御系及び光学系要部構成図である。
【0008】
1は装置本体であり、装置本体1内には治療用レーザ光源10からのレーザ光を照射するための光学系等が設けられている。また、装置本体1は治療レーザ光やエイミング光の各種手術条件を設定するための信号入力用操作部材が配置された操作部を兼用し、装置本体1の側部には治療レーザ光のエネルギ調節ノブ36a、フォーカスシフトノブ36b、エイミング回転ノブ36cが配置され、装置本体1の前側(術者側)には他の設定信号を入力するための多数のスイッチ及び表示器を持つコントロールパネル3が配置されている。
【0009】
4は患者眼を観察するための接眼部4aを含むスリットランプ部であり、スリットランプ部4は観察光学系を収納する顕微鏡部4b、照明光学系を収納する照明部4cにより構成される。顕微鏡部4bは本体1の上部に設置され、本体1及び照明部4cは、固定テーブル2上を摺動可能な摺動台9上に搭載されている。摺動台9の検者側には、手で把持するグリップ5aを持つジョイスティック5が設けられている。固定テーブル2に対する摺動台9の移動は、ジョイスティック5により行う。ジョイスティック5はシャフト5bを支柱として設けられており、ジョイスティック5を前後左右に傾けることにより、摺動台9を前後左右方向に摺動させることができる。また、グリップ5aをシャフト5bの軸回りに回転することにより、本体1,顕微鏡部4b及び照明部4cを一体的に上下に移動することができる機構となっている。ジョイスティック5及びグリップ5aを操作することにより、ヘッドレスト6に固定される患者眼に対して本体1及び顕微鏡部4bの位置合わせを行うことができる。このジョイスティック5による摺動機構及び上下移動機構の構成は周知のものが使用できるので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0010】
ジョイスティック5の頂部にはレーザ照射のトリガ信号を入力するためのトリガスイッチ8が設けられている。また、ジョイスティック5のグリップ5aのやや上あたりには、装置本体1に設けられたノブ36a〜36c、コントロールパネル3の操作部材とは別に各種手術条件を設定するための補助スイッチとしてのシャトルプッシュスイッチ7が設けられている。スイッチ7は、術者がジョイスティック5を手で握ったまま、その手の人指し指等で操作しやすいように患者眼側方向に配置されている。
【0011】
スイッチ7の配置構成を図3、図4により説明する。図3はジョイスティック5の側面図である。図3上の向かって右側が本体1及び患者眼が位置する方向である。図4(a)はジョイスティック5を上から見た図であり、図4(b)はジョイスティック5をスイッチ7のところで水平に切り出した断面図(図3のA−A断面図)である。
【0012】
ジョイスティック5において、シャフト5bを軸としてグリップ5aが、その上部にはジョイスティックヘッド5cが取り付けられている。グリップ5aを回転させると本体1が上下動する。この時、シャフト5bも共に回転するが、グリップ5aの上部に位置するヘッド5cは回転しない。トリガスイッチ8はヘッド5cの頭頂に配置されている。ヘッド5cの側部の患者眼側には窪んだ開口部5dが設けられ、この開口部5dの内部に操作部材となるチップ7aを持つシャトルプッシュスイッチ7が本体1の方向(患者眼方向)を向いて配置されている。開口部5dはヘッド5cの側部の一部分に薬研形状に形成され、その薬研形状のほぼ中央部分にスイッチ7が配置される。
【0013】
スイッチ7は、本実施形態では3つのスイッチ信号を入力可能なものを使用している。スイッチ7は、基板7bに円弧形状を持つチップ7aが取り付けられた構成であり、チップ7aを基板7bの中心O回りに時計回り(右方向)と反時計回り(左方向)にそれぞれ傾けることにより2つのスイッチ信号を入力できる。チップ7aを傾けるとスイッチONとなり、傾けている間はずっとONの状態となる。チップ7aを傾ける力を抜くと、基板7bに内蔵されたバネにより中央の位置に戻りOFFの状態になる。また、チップ7aが中央にある時には、チップ7aを基板7b方向に押すことにより、さらに別のスイッチ信号を入力できる。このスイッチ7は、一般に入手可能な市販品を使用できる。スイッチ7はジョイスティック5の軸に対して直交する方向に配置されている。このためチップ7aを左右(水平方向)に振ったり、押し込んだりすることによって、スイッチング機能を実現する。
【0014】
ここで、スイッチ7のチップ7aの先端がグリップ5aやヘッド5cの外周からほぼ突出しない位置に配置されている。開口部5dは、スイッチ7のすべてが見えない程度にヘッド5cの外周円から一部が欠けた(くぼんだ)構造であり、術者の指先がスイッチ7のチップ7aに接触して押し込み操作可能であると共に、チップ7aを水平左右方向に移動可能な大きさとしている。本実施形態における開口部5dの垂直方向の高さhは約6mm、グリップ5aの外周円の直径は約33mm、グリップ5aの外周円から開口部5dへの深さdは約2.4mm、開口部5dの水平方向の幅wは約18mmとなっている。
【0015】
開口部5dは、スイッチ7の上部を覆うように切り込まれ、チップ7aを取り囲むように切り込みを入れることによって、チップ7aを押し込む際のスペースが生じる。また、スイッチ7を中心に開口部5dの上下に切り込みを入れることにより、チップ7aが開口部5dのほぼ中央に位置できるため、操作時に指先の中心線上でチップ7aを捉えることができ、スイッチングが比較的し易くなる。
【0016】
スイッチ7をこのように配置することによって、術者はグリップ5aを把持したまま、人差し指等でチップ7aを操作して3つのスイッチ信号を入力することができる。また、チップ7aがグリップ5aの外周からほぼ突出しないように窪んだ開口部5dの内部に配置されているため、ジョイスティック5の操作中にスイッチ7を誤操作してしまう可能性が極力低減される。特に、本体1を上下させるためにグリップ5aを回転させる場合も、スイッチ7の操作性を落とすことなく、誤操作の可能性が低減される。
【0017】
なお、スイッチ7のチップ7aの先端がグリップ5aの外周円から飛び出さないようにすることが好ましいが、これに限るものではない。誤操作の低減が可能な範囲で、術者の操作し易いようにスイッチの先端(チップ)をグリップ5aの外周円から多少飛び出させて配置してもよい。その場合には微調整機能を付けて、術者の好みに合わせてもよい。例えば、スイッチ7の下部に送りねじ調整機構を設け、ジョイスティック5の外部からスイッチ7の位置を前後させる。
【0018】
また、上記ではスイッチ7をヘッド5cの側部の患者眼側に配置しているが、術者側に配置しても良い。この場合、術者はグリップ5aを手で把持したままスイッチ7のチップ7aを親指で容易に操作できる。
【0019】
また、スイッチ7を水平方向ではなく、垂直方向(ジョイスティック5の軸方向)に配置してもよい。その場合には、ヘッド5cに形成する開口部5dの形状も、スイッチ7の回転(傾倒)方向に合わせて垂直方向に設ければ良い。また、ジョイスティック5の上部に配置するものはシャトルプッシュスイッチ7に限るものではない。チップ7aを押し込み方向に移動するスイッチ信号と、左右の対称な各方向及び上下の対称な各方向の4方向に移動する4つのスイッチ信号を入力可能なスイッチでも良い。
【0020】
図2において、10は治療用レーザ光源であり、レーザ光源10内には、図示なき固体レーザロッド、励起光源、Qスイッチ等が設けられており、短時間でパルス幅が狭く、ピーク出力の大きいジャイアントパルスが出射される。固体レーザロッドには基本波長1064nmの光を発振するNd:YAGロッドを使用する。
【0021】
レーザ光源10からのレーザ光は以下の構成からなるレーザ照射光学系によって患者眼に向けて照射される。23はレーザ光の偏光方向を回転させる1/2波長板、24はブリュースタ角に配置された偏光板である。1/2波長板23は制御部20の制御によるモータ22によって回転され、偏光板11との組み合わせによって患部に照射されるレーザ光のエネルギ量を調整する。11はビームスプリッタ、12は光検出器、13は安全シャッタ、14はソレノイドであり、安全シャッタ13はソレノイド14の駆動によりレーザ光軸上に適時挿脱され、レーザ光軸上へのシャッタ13の挿入により患者眼へのレーザ照射が遮断される。シャッタ13が光軸上から外されている場合、治療レーザ光は凹レンズ27a及び凸レンズ27bによって光束を広げられて整えられた後、ダイクロイックミラー18で可視光半導体レーザ15からのエイミング光(主波長635nm)と同軸にされる。エイミング光に対するレーザ光のフォーカスシフトは、凸レンズ27bを移動する移動機構26がモータ25によって駆動されることによって行われる。
【0022】
半導体レーザ15から出射したエイミング光はコリメータレンズ16によって平行光束にされ、2つの孔が設けられたアパーチャ17により2本に分割される。アパーチャ17は、モータ等からなる回転機構17aにより、コリメータレンズ16の光軸中心に回転され、2つに分割されたエイミング光の並びを縦方向と横方向に変更できる。ダイクロイックミラー18以後の治療用レーザ光及びエイミング光は、光束を広げるエキスパンダレンズ28を通り、顕微鏡部4b内のダイクロイックミラー19(赤外光及び可視光の一部を反射し、可視光の大部分を透過する特性を持つ)を介して、対物レンズ41及びコンタクトレンズ47を介して患者眼Eの患部に集光される。
【0023】
顕微鏡部4b内の観察光学系は、左右の観察光路で共用される対物レンズ41と、左右の各光路に配置された変倍光学系42、結像レンズ43、正立プリズム群44、視野絞り45、接眼レンズ46を備える。変倍光学系42は設定倍率により適宜切り換えられるようになっている。
【0024】
また、顕微鏡部4b内の観察光学系には、治療・観察の各種条件の設定値を観察視野内で観察できるように、視野内表示系50が組込まれている。視野内表示系50は、片方の観察光路で変倍光学系42と結像レンズ43との間に斜設された、両面が全反射ミラーとなっている両面ミラー51を備える。両面ミラー51は観察光を多く遮蔽しない大きさとしている。両面ミラー51の上方には、LED等の発光素子による表示部52、コリメータレンズ53が配置されている。表示部52は視野絞り45と共役な位置に配置し、表示部52は光学素子や配置位置により表示光束が観察視野中心から外れて観察できるように設けられている。照明部4cの構成としては既知のスリット照明光学系を利用するが、本発明と関係が薄いため、詳細な説明は省略する。
【0025】
図5はコントロールパネル3に配置された入力スイッチ及び表示器の構成図である。31aは、治療レーザ光を照射可能な状態にするか否かを設定するSTATUS スイッチであり、このスイッチを押すごとに、READY状態(トリガスイッチ8の入力によりレーザ照射を可能にする状態)とSTANDBY状態(トリガスイッチ8の入力があってもレーザ照射がなされない状態)とに切り換わる。31bはREADY状態に切換えられたときに点灯するインジケータ、31cはSTANDBY状態に切換えられたときに点灯するインジケータである。
【0026】
32aは治療レーザ光のエネルギ量を示す表示部、32b及び32cはエイミング光の光量を増減するスイッチ、32dはエイミング光量の光量レベルを示すインジケータである。32eは1回のトリガ信号で治療レーザ光のパルス数を設定するバーストスイッチであり、32fはその表示器である。スイッチ32eを押すごとにパルス数が1〜3の間で切換えられる。32gは治療レーザの照射回数を表示するカウンタであり、32hはそのリセットスイッチである。32iはレーザ光のフォーカスシフト量を示す表示部である。33は、ジョイスティック5に配置されたスイッチ7からのスイッチ信号の機能割り当てを変更するための設定部であり、普段はカバーで覆われている。
【0027】
次に、以上のような構成を備えるレーザ治療装置について、以下にその動作を説明する。なお、スイッチ7のチップ7aを押したときの第1スイッチ信号には、装置の動作モードの切換え機能が割り当てられる。例えば、治療レーザ光を照射可能な状態にするか否かを切換え設定するSTATUS スイッチ31aと同じ機能(READY/STANDBYの切換え)が割り当てられているものとする。また、チップ7aを右方向/左方向に傾けたときの第2スイッチ信号及び第3スイッチ信号には、対称性のあるスイッチ機能を割り当てる。例えば、治療レーザ光のエネルギを増減する調節ノブ36aと同じ機能が割り当てられているものとする。このスイッチ機能割り当てデータは、メモリ21に記憶されている。
【0028】
なお、以上説明したスイッチ7の機能割り当てにおいて、第1スイッチ信号に動作モードの切換を、第2、3スイッチ信号に増減を伴う対称性のある機能を割り当てることが好ましいが、これに限るものではない。スイッチ7の第2,3スイッチ信号に動作モードの切換機能を割り当ててもよい。また、スイッチ7には3種類のスイッチ機能を割り当てたが、これに限るものではない。スイッチ7の第1スイッチ信号を無効化して、左右方向にのみスイッチ機能を割り当ててもよい。
【0029】
治療に際し、術者は装置本体1側に配置されたコントロールパネル3のスイッチやノブ36a〜36cを操作して、レーザ照射条件やエイミング光の観察条件等を初期設定する。治療レーザ光のエネルギ調節については、チップ7aの右方向/左方向の操作でも入力できる。術者は、照明部4cからの照明光によって照明された患者眼を顕微鏡部4bによって観察し、エイミング光の照準を患部に位置合わせするように、ジョイスティック5及びノブ5aを操作して装置本体1を移動する。エイミング光による照準は、患部上で2つに分離されたエイミングスポットが1つになるようにして合わせる。術者は片方ので手でコンタクトレンズ47を保持し、もう片方の手でジョイスティック5を保持する。照準合わせができたら、STANDBY状態からREADY状態に切換えるが、このときジョイスティック5からわざわざ手を離してコントロールパネル3に配置されたSTATUS スイッチ31aを操作しなくても、ジョイスティック5に配置されたスイッチ7のチップ7aを押すことで、その切換え信号を入力できる。ここで、READY状態に切換えるために、本体1側のスイッチ31aを押すと、その反動で本体1が動くことが多くある。この場合、せっかく完了させた照準合わせがずれてしまうことになり、再調整は作業性を低下させる。これに対して、ジョイスティック5を手で保持して本体1の移動を固定しつつ、そのジョイスティック5に配置されたスイッチ7を同じ手の指でREADY状態への切換え信号を入力できることにより、本体1が動いてしまうことを防止できる。また、術者は接眼部4aから眼を離すことなく、ジョイスティック5を握った手元のスイッチ7でREADY状態/STANDBY状態を切換えることができる。
【0030】
READY状態に切換えるとシャッタ13が光路から外される。その後、スイッチ8が押されると、制御部20はトリガ信号を受けてレーザ光源10を駆動してレーザ光を出射させる。レーザ光源10からの治療レーザ光は、前述の光学系に導光されて患者眼の患部に照射される。術者はレーザ光が照射された患部を観察し、治療効果が薄い場合は(又はその逆の場合は)、レーザ光のエネルギ量を調節する。例えば、後発白内障の水晶体後嚢の切裂治療では、眼内レンズと水晶体後嚢が密接していることが多く、眼内レンズを傷付けないために最初は弱いエネルギ量で照射する。エネルギ量を調整する場合においも、わざわざジョイスティック5から手を離して本体1側のエネルギ調節ノブ36aを操作することなく、手元のジョイスティック5に配置されたチップ7aを左方向/右方向に操作することによりその調節信号を入力できる。
【0031】
レーザ光のエネルギ量の設定状態は、コントロールパネル3の表示部32aで確認できるが、接眼部4aから眼を離すことなく確認できることが好ましい。このため、図6のように、接眼部4aから覗いた観察視野80内にも、レーザ照射条件の表示部が設けられている。図6において、81は観察される患者眼Eの虹彩、84は白く混濁した水晶体後嚢、83は位置合わせされたエイミング光像を示す。92は設定された照射条件を表示する表示部52の像であり、レーザ光のエネルギ表示92a、PULSE/BURST 設定表示92b、FOCUS SHIFT設定表示92c、STANDBY状態/READY状態の切換えを示す表示96a,96bが設けられている。また、チップ7aのスイッチ信号で変更された条件設定は、スピーカ35によって音声で術者に知らせるようにしても良い。
【0032】
ジョイスティック5に配置したスイッチ7のスイッチ信号の機能は、術者の好み(使用する頻度等)に応じて設定部33により別のものに変更できる。設定部33のスイッチ33aを押すと、スイッチ信号の機能変更モードとなる。このモードでは、コントロールパネル3の各スイッチ及び表示器は、その変更用の操作スイッチ及び表示器として兼用される。
【0033】
例えば、チップ7aの押し込みの第1スイッチ信号をスイッチ32eと同じバーストスイッチ信号に変更する場合、機能変更モードとすると、表示器32gの数値が点滅表示されるので、その数値をスイッチ32b,32cで第1スイッチ信号の設定を示す「1」に設定する。次に、スイッチ31aを押すと、表示器32aの数値表示が点滅に変わるので、その数値をスイッチ32b,32cでバーストモード切換え信号の割り当てを示す「21」に変更する。次に、スイッチ31aを押すと、表示器32aの数値表示の点滅が停止し、第1スイッチ信号の機能割り当ての設定が完了する。
【0034】
チップ7aの右方向の第2スイッチ信号をスイッチ32bと同じくエイミング光量の増加用信号に変更する場合、再び、スイッチ31aを押すと、表示器32gの数値が点滅表示されるので、その数値をスイッチ32b,32cで第2スイッチ信号の設定を示す「2」に設定する。次に、スイッチ31aを押すと、表示器32aの数値表示が点滅に変わるので、その数値をスイッチ32b,32cでエイミング光量の増加用信号の割り当てを示す「22」に設定する。スイッチ31aを押すと、表示器32aの点滅が停止し、第2スイッチ信号の機能割り当て設定が完了する。
【0035】
また、チップ7aの左方向の第3スイッチ信号をスイッチ32cと同じくエイミング光量の減少用信号に変更する場合、同様に、スイッチ31aを押すと、表示器32gの数値が点滅表示されるので、その数値を第3スイッチ信号の設定を示す「3」に設定した後、スイッチ31aで表示器32aの数値表示を点滅させ、スイッチ32b,32cを操作して表示器32aの数値表示をエイミング光量の減少用信号の割り当てを示す「23」に変更する。再び、スイッチ31aを押すと、表示器32aの点滅が停止し、第3スイッチ信号の機能割り当て設定が完了する。そして、最後に設定部33のスイッチ33aを押すことにより機能変更モードが解除され、メモリ21に記憶されたスイッチ7のスイッチ機能割り当てデータが更新される。
【0036】
なお、初期c設定のREADY/STANDBYの切換え、エネルギの増加、エネルギの減少に設定する場合、表示器32aに表示させる数値は、それぞれ「11」、「12」、「13」というように予め定められている。上記以外の条件設定においても、同様にそれぞれ表示器32aに表示させる数値が予め定められている。これらのスイッチ信号に対する設定方法を取り扱い説明書等に記載しておくことで、使用者においてもスイッチ信号の機能割り当ての変更を任意に行える。
【0037】
以上のようにジョイスティック5に配置されたスイッチ7のスイッチ信号機能を術者の好みのものに変更することにより、スイッチの数を増やすことなくそのスイッチ機能を有効に利用することができる。上記の変更の例で、1回のトリガで照射されるレーザ光のパルス数を頻繁に切換える場合は、ジョイスティック5を保持した手でチップ7aを押し込み操作することにより、その切換え信号を入力できる。観察用のエイミング光量を調整する場合は、チップ7aを右方向及び左方向に操作することにより、その調整信号を入力できる。なお、スイッチ7のスイッチ機能割り当てを変更した場合は、その変更に合わせて、図6に示した観察視野内に表示される表示部52の表示項目も変更される。
【0038】
上記ではスイッチ7による第1、第2及び第3のスイッチ信号の機能を変更するときは、それぞれコントロールパネル3により個別に変更するものとしたが、ジョイスティック5に設けたスイッチ7で予め登録されたものに変更する構成も可能である。例えば、チップ7aを長押し(2秒以上)する毎に、第1スイッチ信号の機能がREADY/STANDBYの切換え信号とバーストモード切換え信号とに順次変更される。チップ7aの右方向/左方向の回転操作についても、それぞれ2秒以上ON信号を入力する毎に、第2及び第3スイッチ信号の機能がエネルギの増減機能とエイミング光量の増減機能とに順次変更される。スイッチ7による第1〜第3スイッチ信号の機能を変更するための機構を、ジョイスティック5自体に設けておけば、その変更が一層容易に行える。
【0039】
また、スイッチ7による第1、第2及び第3のスイッチ信号の機能変更においては、コントロールパネル3等によりそれぞれ個別に変更するのではなく、複数の組み合わせのパターンを予め登録しておき、その組み合わせパターンを選択することで変更可能にするようにしても良い。図7は、予め登録しておく組み合わせ例を示した図である。パターン1では、上記の初期設定の組み合わせであり、第1スイッチ信号にREADY/STANDBY切換え機能が、第2スイッチ信号にエネルギUPの機能が、第3スイッチ信号にエネルギDOWNの機能がそれぞれ割り当てられている。パターン2では、第1〜第3信号に、それぞれバーストモード切換えの機能、エイミング光量UPの機能、エイミング光量DOWNの機能がそれぞれ割り当てられている。また、パターン3では、第1スイッチ信号にエイミング回転位置の縦/横の切換え機能(エイミング回転ノブ36cと同じ機能)が割り当てられ、第2スイッチ信号にフォーカスシフト量UPの機能及び第3スイッチ信号にフォーカスシフト量DOWNの機能(フォーカスシフトノブ36bと同じ機能)が割り当てられている。
【0040】
このパターン1〜3の組み合わせの登録について説明する。設定部33のスイッチ33bを押すと、スイッチ信号の組み合わせパターンの登録モードとなり、表示器32iの数値が点滅する。パターン1を登録する場合は、その数値表示を「P01」にスイッチ32b,32cで変更する。スイッチ31aを押すと、表示器32iの点滅が停止し、表示器32gの数値が点滅する。その後の各スイッチ信号の割り当ては、上記と同じ手順で行う。パターン2を登録する場合は表示器32iの数値を「P02」に設定し、パターン3を登録する場合は、表示器32iの数値を「P03」に設定する。各パターンでの各スイッチ信号の割り当ては、上記と同じ手順で設定する。パターン3でエイミング回転位置の縦/横の切換え機能、フォーカスシフト量UPの機能、フォーカスシフト量DOWNの機能を設定する場合、表示器32aに表示させる数値は、それぞれ「31」、「32」、「33」というように予め定められている。各パターンのスイッチ機能の割り当てができたら、再びスイッチ33bを押すことで、パターンの登録モードが解除され、メモリ21の組み合わせパターン登録データが更新される。
【0041】
組み合わせパターンを変更する場合、例えば、スイッチ32b及び32cを同時に押すと、組み合わせパターンの変更モードとなり、表示器32iに現在設定されているパターンを示す「P01」等が点滅表示される。その表示の値を、スイッチ32b又は32cで所望のパターンの値に変更し、再びスイッチ32b及び32cを同時に押すことで変更を完了させ、組み合わせパターンの変更モードから抜ける。例えば、パターン2からパターン3に変更したとすと、チップ7aの押しこみによる第1スイッチ信号が入力される毎に、制御部20はエイミング光の回転位置を縦/横に切換えるように、回転機構部17aを制御する。また、チップ7aの右方向の第2スイッチ信号、あるいは左方向の第3スイッチ信号が入力される毎に、制御部20は凸レンズ27bを移動するように移動機構26を駆動制御し、その設定分だけフォーカス位置を変える。
【0042】
このような構成としたことにより、複数の術者が1台のレーザ治療装置を使用する場合であっても、スイッチ7の各スイッチ信号に対する割り当て機能の組み合わせパターンを各術者の好みのものに容易に変更できる。
【0043】
また、上記の予め登録されたパターン1〜3の組み合わせの変更は、コントロールパネル3等で行うのではなく、ジョイスティック5に設けたスイッチで可能にすると都合が良い。このためのスイッチは、スイッチ7とは別に設けても良いが、スイッチ7を兼用することができる。例えば、チップ7aの押し込みによる長押し信号(2秒以上のON信号)が入力される毎に、制御部20は上記のパターン1〜3の組み合わせを順に変更する。この場合、さらに図6に示した接眼部4aから観察される視野内の表示部52に、何れのパターンに変更(選択)されているかを示す表示機能を設けると良い。あるいは、スピーカ35により音声で何れのパターンに変更されたかを報知でても良い。また、選択されたパターンに合わせて、チップ7aによる第1〜第3スイッチ信号の機能に対応するように、表示92a〜92c,96a、96bの表示態様を変更制御すると良い。こうした構成にすれば、術者は接眼部4aから眼を離すことなく、ジョイスティック5を保持した状態でスイッチ7のスイッチ機能を容易に変更することができ、その変更状態も容易に確認できる。また、異なる術者の好みに合わせた対応においても、容易にスイッチ7の機能を変更できる。
【0044】
以上の説明ではジャイアントパルスのレーザにより水晶体後嚢の切裂治療等を行うレーザ治療装置について述べたが、光凝固を行う治療レーザ装置においても本発明を適用することができる。すなわち、観察用のスリットランプとレーザ光源からのレーザ光を患者眼に向けて照射するレーザ照射部を持つタイプの光凝固装置においては、これらを位置合わせするためのジョイスティックを持つので、先の例と同じく、そのジョイスティクにスイッチ7を設ける。光凝固治療における手術条件としては、READY/STANDBYの切換え、治療レーザ光のエネルギ調節のほか、レーザ光のスポットサイズ調節、凝固時間(照射時間)の調節、休止時間の設定、シングルモードとリピートモード(トリガ信号が入力されている間、設定された凝固時間と休止時間を繰り返して照射されるモード)の切換え、等がある。スイッチ7に割り当てられたスイッチ機能(第1〜第3スイッチ信号に割り当てられた機能)は、これらの各種手術条件を前述と同じく、設定部33やチップ7aの長押し信号で変更可能しておく。したがって、光凝固レーザ装置においても、術者の好みに応じてスイッチ機能を変更し、ジョイスティックに配置するスイッチを有効に利用して操作性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施例であるレーザ治療装置の外観略図である。
【図2】レーザ治療装置の制御系及び光学系要部構成図である。
【図3】ジョイスティックの側面図である。
【図4】ジョイスティックを上から見た図及びシャトルプッシュスイッチの配置を示す断面図である。
【図5】レーザ治療装置のコントロールパネルの配置例を示す図である。
【図6】表示機能をつけた観察視野を示す図である。
【図7】設定変更の登録パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 装置本体
3 コントロールパネル
4 スリットランプ部
5 ジョイスティック
5a グリップ
5b シャフト
5c ヘッド
7 シャトルプッシュスイッチ
7a チップ
7b 基板
8 トリガスイッチ
10 レーザ光源
33 設定部
36a エネルギ調節ノブ
36b フォーカスシフトノブ
36c エイミング回転ノブ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療レーザ光を患者眼に照射するためのレーザ照射光学系及び患者眼を観察するための観察光学系が配置された本体部と、該本体部を患者眼に対して位置合わせするために術者が手で把持するグリップ部を持つジョイスティックと、治療レーザ光やエイミング光の各種手術条件を設定する信号を入力するための操作部とを備え、治療レーザ光を患者眼に照射して治療を行う眼科用レーザ治療装置において、前記各種手術条件の一部を設定するスイッチ信号を入力するために前記ジョイスティックに配置された補助スイッチであって、前記グリップ部より上方で、且つ患者眼側又は術者側の側部に形成された窪んだ開口部の内部に配置された操作部材を持つ補助スイッチを備えることを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項2】
請求項1の眼科用レーザ治療装置において、前記補助スイッチの操作部材は、その先端が前記ジョイスティックの外周から突出しない位置に配置されていることを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項3】
請求項1又は2の眼科用レーザ治療装置において、前記補助スイッチは前記操作部材をジョイスティックの軸方向に移動する第1操作のスイッチ信号と、左右の各方向及び上下の各方向の少なくと一方の対称な方向に移動する第2操作のスイッチ信号が入力可能でスイッチでり、前記補助スイッチ信号のそれぞれに前記各種手術条件の一部を設定する機能が割り当てられていることを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項4】
請求項1又は2の眼科用レーザ治療装置において、前記補助スイッチは前記操作部材をジョイスティックの軸方向に移動する第1操作のスイッチ信号と、左右の各方向及び上下の各方向の少なくと一方の対称な方向に移動する第2操作のスイッチ信号が入力可能でスイッチであって、前記第1操作のスイッチ信号に装置の動作モードを切換え設定し、前記第2操作のスイッチ信号で治療レーザ光又はエイミング光の増減を設定するスイッチであることを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかの眼科用レーザ治療装置において、さらに、前記補助スイッチで入力されるスイッチ信号に割り当てられた手術条件設定用のスイッチ機能を、別の手術条件設定用のスイッチ機能に変更するスイッチ機能変更手段と、を設けたことを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項6】
請求項5の眼科用レーザ治療装置において、前記補助スイッチは前記操作部材の異なる方向への操作で複数のスイッチ信号を入力可能なスイッチであり、前記スイッチ機能変更手段は、それぞれのスイッチ信号に割り当てる手術条件設定用のスイッチ機能を任意に組み合わせて設定する手段を含むことを特徴とする眼科用レーザ治療装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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