説明

眼科的状態の処置

【課題】眼に送達するのに適した薬学的組成物と組み合わせた成形コンタクトレンズの使用を提供すること。
【解決手段】この成形コンタクトレンズは、好ましくは市販されており、そして角膜矯正のために特別に設計されない。この薬学的組成物中の因子(例えば、ヒアルロニアーゼ)は、眼の屈折異常を矯正するために上記眼の角膜を成形する。このコンタクトレンズおよびこの薬学的組成物は、角膜の前面の曲率半径の変化を起こし、それによって眼の屈折異常を矯正する。本発明の技術の利点の1つは、個々の視覚的必要性を有する患者が、その患者の近見視力および遠方視力への必要性を満たす、この処置を管理することである。本発明はまた、キットを提供し、このキットは、本発明のシステムに有用な、成形コンタクトレンズ、眼への送達に適した薬学的組成物、および説明書を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権情報)
本出願は、米国特許法第119条(a)の下、本明細書に参考として援用される、発明の名称が「METODO PARA EL TRATAMIENTO DE LA PRESBICIA INDUCIENDO CAMBIOS EN EL PODER Y
FISIOLOGIA CORNEAL」である、2003年12月19日出願のメキシコ特許出願番号PA/a/2003/011987に基づく優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、角膜の屈折力を含む眼の角膜の変化を起こすことによって、老眼、近視、遠視、乱視、および他の眼科的状態を処置するためのシステムを提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
眼の4つの屈折面の内、角膜の前面は、眼の屈折力の大部分を提供する。したがって、屈折の異常を含む眼科的状態(例えば、近視および遠視)を処置するために角膜の曲率を変える種々の外科的技術が、開発されてきた。これらの技術としては、角膜切開、凍結プロセスによる角膜切開、自動化層状角膜曲率形成術(ALK)、光反応性角膜曲率形成術(PRK)、レーザー角膜内切削形成術(LASIK)、レーザー基質内角膜曲率形成術、レーザー上皮細胞角膜曲率形成術(LASEK)、伝導式角膜移植術(CK)、および強膜切除術が挙げられる(特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献5;特許文献6;特許文献7;特許文献8;特許文献9;特許文献10;特許文献11(これらのそれぞれは、本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。これらの技術の全ては、角膜の曲率を変える種々の技術を使用することによって機能するが、どの程度屈折異常が矯正され得るかによって制限され、そしてこれらの技術を使用して処置され得る患者の型に制限される。(例えば、いくつかの患者において、角膜は、角膜をさらに薄くする技術を安全に利用するには薄すぎる)。上記技術のいくつかは、ダイアモンドナイフによって角膜を切開する工程および/または角膜の領域を切除する工程を包含し、それによって感染または他の合併症の危険度が増加する。これらの技術はまた、その手順を行う外科医の器用さ、外科医の外科手術の経験、および外科医のレーザー切除(例えば、Er:YAGレーザー(2.94ミクロンにて)、Ho:YAGレーザー(約2ミクロンにて);ラマンシフトした固体レーザー(2.7〜3.2ミクロンにて)、または光学パラメトリック振動(OPO)レーザー(2.7〜3.2ミクロンにて)による)を行う経験に大きく依存する。
【0004】
さらにより最新の技術は、その手順の後に、少量またはさらに中程度の量の屈折異常を残し、単一の外科的手順で、所望の近見視力および遠方視力を達成できない、角膜組織または強膜組織を切断する能力によって制限される。この残った屈折異常はまた、不規則であり将来それを矯正することを、より困難にする。この技術が、患者が必要とする視覚的要求を満たし得ない場合、眼科医は、残りの屈折異常を矯正するためにさらなる方法を使用しなければならない。これは、眼鏡を処方することか、コンタクトレンズを処方することか、または第2の外科的手順(一般的に「修正」として公知である)を実施することによって通常行われる。したがって、これらの技術を使用する屈折異常の矯正に対する制限は、重大であり、そして二次的測定によっても矯正不可能な視力を有する危険は無視できない。
【0005】
さらに、これらの技術を使用して老眼を処置する試みはまた、非常に限られた成功しか有さない。老眼(ショートアーム疾患(short arms disease)としても公知)は、水晶体調節の欠如であり、これは、眼の焦点の変更を妨げる。この現象は、最終的には、40歳を超えた全ての個体に生じる。調節は、両眼を近い焦点に集中させ、瞳孔を収縮(縮瞳)させ、そして水晶体の屈折力を増加させることによって、固体に近くの物を見させ、それによって、網膜上に近くの物の像の焦点をあわせるための曲率を増加する。代表的に、幼児は、合計14ジオプトリの調節を有する。人間が年齢を重ねると、眼の水晶体は、大きく、厚くなりそして伸縮性がなくなってくる。これらの水晶体における変化は、水晶体中のタンパク質の進行性の変性に大きく依存する。形状を変化させる水晶体の能力が減少する場合、調節の力は、幼児における約14ジオプトリから45歳〜50歳での2ジオプトリ未満まで減少し、そして70歳における約0ジオプトリまで減少する。一旦、人間が、老眼の状態に達すると、その眼は、恒久的にほぼ一定の距離で焦点を合わせたままであり、これは、個体の眼の物理的特徴に大きく依存する。眼が、もはや近くおよび遠くを見るための調節ができない場合、遠くを見るためのより高いセグメントおよび近くを見るためのより低いセグメントを有する二重焦点眼鏡を装着することを高齢者に要求する。
【0006】
この一般的な視界の調節および老眼はまた、視覚系の他の局面を考慮しない。例えば、この視界は、眼、筋系、および調節のプロセスにおける視覚皮質を含む脳を調整するのに必要な、より高い認識機能を考慮しない。上記の所望される単眼視野技術(例えば、片方の眼のミオピゼーション(myopization)、LASIK単眼視野)、周囲の曲率を変化させることによって角膜の中心部に正の領域を生じる異なった技術、および強膜硬性、毛様体筋、および毛様小帯を変化させ、そして他のより侵襲的な技術の間で水晶体の調節力を増加する強膜切除または強膜移植は、老眼の処置において非常に限られた成功しか有さない。これらの不本意な結果は、眼の生理学的挙動ならびに脳、神経系、および筋系とのその接続の完全な理解の欠如、角膜および水晶体の屈折力の不正確な測定、ならびにヒトの外科医によって行われる外科手術技術における正確性の欠如を含む種々の原因から生じ得る。
【0007】
眼科医は、老眼を処置するために、眼に関する種々のパラメータを測定する高性能な装置を使用し始めた。しかし、最も高性能な測定でさえ、眼の角膜および他の部分が、パラメータの有限集合によって十分に記載できない多くの変化形が存在する点でフィンガープリントと同様であるという事実に起因して、ただの近似でしかない。また、角膜、水晶体、網膜、および視覚系の他の部分が、異なる条件下(例えば、近見視力の刺激および遠方視力の刺激)で外科手術後に、どのように反応するのかを正確に知ることは、不可能である。さらに、角膜が、屈折矯正手術後にどのように治癒(例えば、最終的な曲率半径)するのかを知ることは不可能である。
【0008】
老眼の処置に存在する上記制限は、これらの技術が、眼の1つの解剖学的領域(すなわち、角膜または水晶体)のみを考慮しているという事実から生じる。次に、近見視力の任意の矯正は、被検体の遠方視力の減少を生じる。さらに、これらの既存の矯正技術は、特に、各被検体の眼の個性および独自性を無視する眼のグルストランドのモデルを用いて眼をモデル化する。例えば、眼球は、完全な球状ではない。角膜の力およびこの球体の力を計算するのに使用される、眼およびその構成要素の多くの数学的モデル(例えば、光線追跡)が存在するが、おそらくグルストランドのモデルが、最も一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0139737号明細書
【特許文献2】米国特許第5,144,630号明細書
【特許文献3】米国特許第5,520,679号明細書
【特許文献4】米国特許第5,484,432号明細書
【特許文献5】米国特許第5,489,299号明細書
【特許文献6】米国特許第5,722,952号明細書
【特許文献7】米国特許第5,465,737号明細書
【特許文献8】米国特許第5,354,331号明細書
【特許文献9】米国特許第5,529,076号明細書
【特許文献10】米国特許第6,258,082号明細書
【特許文献11】米国特許第6,263,879号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、老眼の有望な、非侵襲性の処置の必要性が残る。おそらく、この処置はまた、近視、遠視、および乱視が挙げられる屈折異常を含む他の眼科的状態を処置するために使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、眼科的状態(例えば、老眼、近視、遠視、乱視、および眼の屈折における異常に関する他の状態)を処置するためのシステムを提供する。このシステムは、角膜の生理機能(角膜の屈折力が挙げられる)を、角膜の形状を変化させる動的かつ相互作用的な技術を介して変化させ、それによってその屈折力を変化させる。処置される患者は、個々の視覚的必要性に関する処置を管理し、医師または検眼医は、適切な処置レジメンを設計するために、患者からのこのフィードバックならびに患者の年齢、患者の視覚的必要性(例えば、作業習慣、日常生活)、患者の視力、眼の測定結果などに関する情報を使用する。この方法において、処置される各人間の個性および個々人の眼は、処置手順の間に考慮される。この処置は、角膜を再形成する1組の処方されたコンタクトレンズを装着する工程およびその患者に対して処方された角膜の再形成を可能にする薬学的組成物(例えば、点眼剤)を投与する工程を包含する。
【0012】
このシステムの多くの利点の1つは、角膜の変化が、あらゆる型の外科手術を利用せずになされることである。既存の処置に対する別の利点は、本発明のシステムが、動的であり、段階的であり、そして相互作用的であり;したがって、処置が、患者の視覚的必要性を満たす必要に応じて何度でも調整され得るかまたは繰り返され得る点である。また、角膜に起こるこの変化は、可逆的である。例えば、この技術は、疾患の進行、視力の変化、加齢、作業習慣の変化、読書習慣の変化などに起因して繰り返される必要があり得る。好ましくは、患者の視覚的必要性は、最初の処置によって満たされる。
【0013】
第1に、角膜の曲率における良好な調整を達成するために、器具が、角膜の屈折力、角膜の曲率、角膜の厚さ、および眼球の形状(すなわち、眼の総合力)を測定するために使用される。これらの最初の測定が行われた後、起こされるべき角膜の曲率の変化が決定され、1組のコンタクトレンズが、患者による使用のために処方される。このコンタクトレンズは、後部の曲率半径および前部の曲率半径における異なる基部の曲率ならびにその光学的直径および角膜の生理機能および構造の変化を起こす複数の周辺部に基づいて選択される。特定の実施形態において、このコンタクトレンズは、角膜の中心部に圧力を加え、それによって角膜を平らにし、そして屈折力を落とす。他の実施形態において、このコンタクトレンズは、角膜の周辺にて圧力を加え、それによって角膜の傾斜を急にし、そして屈折力を上げる。このコンタクトレンズは、所望の形状を達成し、それによって患者が必要とする屈折力を達成するために角膜の形状を、絶えず、段階的に、そして均一に変化させる。本発明のシステムに使用されるコンタクトレンズは、好ましくは既に市販されている既製のハードコンタクトレンズまたは既製のソフトコンタクトレンズである。好ましくは、このコンタクトレンズは、角膜矯正のために特別に設計されない。このコンタクトレンズは、処置される患者のために特別に作製され得るか、またはこのコンタクトレンズは、角膜矯正のために特別に作製され得る。コンタクトレンズの装着は、所望の角膜の変化、患者の視覚的記憶、患者の年齢、このレンズに関する患者の耐性、処置の持続期間、処方される薬学的組成物などを含む種々の要因によって決定される。特定の実施形態において、このコンタクトレンズは、所望の変化がなされるまで、1日あたり数時間(例えば、1日あたり2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、または12時間)装着されるか、数週間(2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、または10週間)の間1日中装着される。特定の実施形態において、このコンタクトレンズは、一晩中装着される。この処置に使用されるコンタクトレンズは、患者の診察を受け持つ眼科医によって決定される処置の過程にわたって交換され得る。本発明は、角膜の屈折力を5ジオプトリまで変化させ、好ましくは4ジオプトリまで変化させ得る。
【0014】
コンタクトレンズの装着のみならず、患者はまた、角膜がより容易に成形される眼への送達に適した薬学的組成物(好ましくは点眼剤)を使用する必要がある。この薬学的組成物はまた、角膜の曲率の変化を安定化しても改良しても増加させてもよく、または所望されない副作用の発生率を減少させてもよい。特定の実施形態において、この組成物は、角膜の表面上のコンタクトレンズによって加えられる眼への機械的負荷を上昇させる。代表的に、これらの点眼剤は、酵素(例えば、ヒアルロナーゼおよび/もしくはコラゲナーゼ、ならびに/またはカルバミド(尿素)のような他の因子)を含む。特定の実施形態において、この薬学的組成物はまた、メチルセルロースまたはポリビニルアルコールのようなビヒクルを含む。この点眼剤の処方は、種々の因子(例えば、患者の年齢、角膜においてなされる変化の程度、患者の角膜の生理機能、処理される疾患、この処置の持続期間など)に依存して調整される。この点眼剤はまた、他の成分(例えば、潤滑剤、ビタミン類、抗生物質、抗炎症剤、抗アレルギー剤、免疫抑制剤、血管収縮剤、および麻酔薬)を含み得る。この点眼剤はまた、液状、スプレー状、またはゲル状であり得る。代表的に、この点眼剤は、1日に少なくとも1回投与される。特定の実施形態において、この点眼剤は、1日に1回、2回、3回、4回、または5回投与される。他の実施形態において、この点眼剤は、5分毎、15分毎、30分毎、1時間毎、2時間毎、または3時間毎に投与される。この点眼剤の使用は、患者がそのコンタクトレンズを装着する間中、継続される。本発明は、この処置方法に点眼剤として使用されるべき薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物はまた、屈折異常を低下させるかまたは緩和することによる患者の処置、および老眼の防止における、屈折矯正の外科手術との組み合わせに有用であり得る。
【0015】
特定の実施形態おいて、上記点眼剤中に見出される薬学的因子は、上記コンタクトレンズ中に含まれる。例えば、このコンタクトレンズは、このコンタクトレンズの装着がこの因子の継続的な送達を提供するように、その因子によって含浸されるかまたは覆われる。本明細書中に記載される因子のいずれか(例えば、ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼ、ビヒクル、抗炎症剤、潤滑剤、抗生物質など)は、上記因子の徐放性送達のためにこのコンタクトレンズに添加され得る。この因子を送達するこの様式は、そのコンタクトレンズが、患者が寝ている夜間に装着される場合に特に有用である。
【0016】
本発明の処置システムは、眼科的状態(例えば、老眼、近視、遠視、および乱視)を処置するのに有用である。この処置システムはまた、屈折異常に関する他の疾患を処置するのに有用であり得る。好ましくは、本発明のシステムは、これらの状態に対する処置の最初の方針である。他の実施形態において、その患者は、既により伝統的な処置(例えば、LASIKまたはPRKを受容し得、そして本発明のシステムは、最初の手順後に保持されるあらゆる残りの屈折異常をさらに矯正するのに使用され得る。これは、さらなる外科手術なしに任意の保持される屈折異常を矯正し得る。この残りの屈折異常は、一般的に、上記外科手術前の屈折欠損の正確な測定の欠如に起因するが、上記のような他の原因にも起因し得る。したがって、残りの異常を矯正する最適な方法は、動的かつ相互作用的な技術(例えば、その患者が、近見視力および遠方視力に対する個人別の視覚的必要性が満たされた(すなわち、角膜の力が患者の視覚的記憶および大脳による調節に基づく患者の視覚的必要性にとって十分である)ことに気付くまで、角膜の曲率を段階的に変化させるための本発明の方法)を使用している。特定の実施形態において、この角膜の力は、好ましくは近くまたは遠くを見ることを防ぎ得ることに起因して矯正されない。その代わりに、この患者は、種々の状況(例えば、微光、疲労、遠くを見ること、近くを見ること、読書など)下における完全な視界を達成する他の補完的手段に依存し得る。
【0017】
1つの局面において、本発明は、本発明の方法を使用して、眼科的状態(例えば、老眼)を処置するのに有用な品目を含むキットを提供する。このキットは、以下の全てまたはいくつかを備え得る:コンタクトレンズのための容器、コンタクトレンズを洗浄および/または殺菌するための溶液、少なくとも1対のコンタクトレンズ、予備のコンタクトレンズ、上記のような点眼剤、潤滑剤、視力表、鏡、および患者のための説明書。好ましくは、本キットの品目は、好ましくは携帯できる人間工学的な容器中に包装される。
【0018】
別の局面において、本発明は、処置を行う眼科医、検眼医、看護士、または他のヘルスケアの専門家に有用なソフトウェアを提供する。患者についての特定の情報は、コンピューター上で実行されるプログラムに入力される。この情報としては、氏名、年齢、性別、職業、視覚的必要性の記載、視力、角膜曲率測定、検影法などが挙げられ得る。その後、このソフトウェアの操作者は、一連の質問(例えば、ハードコンタクトレンズまたはソフトコンタクトレンズ)をされる。プログラムに入力されたデータから、このソフトウェアは、使用するべきコンタクトレンズの型(例えば、ソフトまたはハード)、ジオプトリの屈折力、後部のベース曲線、後部周辺の曲率、前部曲線、前部周辺の曲線、中心部の直径、および周辺部の直径)を決定し得る。このソフトウェアはまた、患者および/または投薬レジメンに対して処方されるべき薬学的組成物の組成を決定するのに使用され得る。
【0019】
(定義)
「動物」:用語動物は、本明細書中で使用される場合、ヒトならびに非ヒト動物(例えば、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、および魚類が挙げられる)を指す。好ましくは、非ヒト動物は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、霊長類、またはブタ)である。特定の実施形態において、この動物は、ヒトである。
【0020】
「大脳による調節」:大脳の調節とは眼と大脳の運動系に関係する筋肉の動きを制御する任意の機能を指す。大脳による調節は、近くの物および遠くの物を良好に見るために、像に焦点を合わすのに必要である。特定の場合において、脳の調節とは、反射弓ならびに近くおよび遠くを良好に見るために、身体(例えば、頭、首)および眼の適切な動きを達成するのに必要とされる筋肉の刺激および神経の刺激を指す。
【0021】
「角膜の力」:角膜の力とは、曲率半径をいう場合に、角膜の屈折力のジオプトリで表される数値かまたはミリメートルで表される数値を指す。角膜の力は、視覚的記憶および大脳による調節を含む視覚系の要求を満たすのに必要とされる屈折力の数値を指す。この角膜の力を測定するために、前部の曲率半径、角膜の厚さ、および角膜の後部の曲率半径を決定することが必要である。ほとんどの場合、この角膜の力は、角膜の力に寄与する全ての種々の構造的領域が測定され得ないことに起因して、正確に測定され得ない。角膜の力はまた、(例えば、疲労に起因して)1日の間に変化し、そして毎日変化する。
【0022】
「角膜の力の変化の誘導」とは、曲率半径(それぞれの眼において患者が必要とする近見視力および遠方視力を達成する、角膜の屈折力を変化させるのに必要な屈折力を達成するために引き起こされるべき角膜前部の曲率半径の値)のジオプトリまたはミリメートルでの数学的変化をいう。
【0023】
「有効量」:一般的に、活性因子または薬学的組成物の「有効量」とは、所望の生物学的応答を誘発するのに必要な量を指す。当業者によって理解されるように、因子の有効量は、所望の生物学的な終点、送達される因子、処置される疾患、処置される被検体などの要因に依存して変動し得る。薬学的組成物中のヒアルロナーゼの有効量は、角膜の成形を可能にするのに十分なヒアルロン酸分子の分解に必要な量である。薬学的組成物中のコラゲナーゼの有効量は、角膜の成形を可能にするのに十分なコラーゲンの分解に必要な量である。薬学的組成物中のカルバミドの有効量は、角膜の形成を可能にするのに必要な量である。
【0024】
「成形コンタクトレンズ」:成形コンタクトレンズは、本発明の方法およびシステムとともに使用される任意のコンタクトレンズである。このレンズは、いくつかの実施形態において、形状に角膜を成形するために、特別に設計され得る。しかし、他の実施形態において、この成形コンタクトレンズは、本発明のシステムのために特別に設計されないが、視界を矯正するために、患者に代表的に装着される既製のコンタクトレンズの代わりである。この成形コンタクトレンズは、ハードであってもソフトであってもよく、透過性であっても透過性でなくてもよい。この成形コンタクトレンズは代表的に、プラスチック、ポリマーまたはガラスから作製される。いくつかの実施形態において、この成形コンタクトレンズは、角膜を特定の形状に成形するのに役立つ薬学的因子を含有する。
【0025】
「眼と大脳の運動系」:この眼と大脳の運動系とは、適切な姿勢を達成し、そして近くの物および遠くの物を見るために必要な反射、随意運動、および不随意運動を活性化し得るために相互接続(例えば、神経)によって、身体および眼球の筋肉の調整を行うように相互作用する身体の解剖学的構造をいう。このシステムとしては、視覚野、運動皮質、頭および首の筋肉、眼の筋肉、視神経、脳神経および眼が挙げられ得る。
【0026】
「分散点(point of dispersion)」:分散の点は、後方をたどる場合に発散した光線が交差する点である。この分散点はまた視覚系を特徴付ける物体の画像化または視覚刺激を指し得る。
【0027】
「支質の滑り(stromal sliding)」:支質の滑りは、角膜に対して行われる任意の屈折矯正手術後の角膜支質の移動である。支質の滑りは、角膜組織の切除または剥離の間の層の分離に起因する。これは、角膜の傷を滑らせて、それにより治癒プロセスの間に角膜の湾曲を平らにするかまたは傾斜させることを可能にする。支質の滑りはまた、本発明の技術の重要な部分である。
【0028】
「視力」:視力とは、人間の視界の透明性または鮮明さ、人間の視界がどの程度良好かの基準をいう。特定の実施形態において、それは、スネレン視力(例えば、20/20)を指す。
【0029】
「視覚的記憶」:視覚的記憶とは、人間の人生の間に眼と大脳の運動系を介して受容される脳における像の蓄積をいう。視覚的記憶は、小児期の間に最初の像が脳に届くとき形成され始める。脳は、光の波長を像として認識し、そして知覚する。脳は、視覚的刺激に反応するためにこの情報を蓄積しかつ使用して全ての像を組織化し、そのものを認識する(例えば、アルファベットの文字)。この視覚的記憶は、特定の型の刺激をどの程度頻繁に眼の前にするかに依存して発達する。視覚的記憶の発達は、網膜または脳に届く像の鮮明さ、身体的発達および精神的発達、環境の影響、遺伝などに依存し得る。この視覚的記憶は、矯正(例えば、眼鏡またはコンタクトレンズ)を伴うかまたは矯正を伴わずに脳に伝達される像によって形成される。通常は、視覚的記憶は、例えば、病気、ストレス、疲労などに起因する、小さな矛盾を許容する。視覚的記憶は、患者が、通常の活動(例えば、運転すること、読書をすること、ものを書くこと、絵を描くこと、スポーツをすることなど)を補償し、そしてそれを行わせることを可能にする。視覚的記憶は、視力の発達に重要であり、そして身体の全ての代償機構(例えば、大脳調節)を組織化するために使用される。例えば、眼は、近くの刺激について良質な像を脳に伝達できず、視覚的記憶は、予測される視覚的な質を要求するために応答し、そして働き始める。この視覚的記憶は、特定の代償機構(例えば、大脳による調節)を導き得る。大脳による調節が、適切に補償し得ない場合、その患者は、他の代償機構(例えば、斜視、明るくすること、眼をさらに離すかまたは近付けること、眼鏡の使用など)の使用が必要であり得る。例えば、本を読むことにおいて、この患者が、疲れている場合、彼らは、読むために本を近付けて保持するかまたは明るくする必要がある。角膜の力は、好ましくは脳に伝達される視覚的な像が視覚的記憶によって受容されるように調整される。患者自身の満足および新しい像の受容は、好ましくは本発明のシステムによって角膜の力が視覚的記憶に必要とされる程度まで矯正される様式である。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
眼科的状態を処置するための方法であって、該方法が、以下の工程;
コンタクトレンズを提供する工程;
ヒアルロニダーゼまたはコラゲナーゼを含有する、眼への投与に適した薬学的組成物を提供する工程;
眼科的状態を罹患する患者の眼に該コンタクトレンズを適用する工程;および
患者の眼に該薬学的組成物を適用する工程
を包含する、方法。
(項目2)
角膜の生理機能および構造に変化を起こすことによって眼科的状態を処置するための方法であって、該方法が、以下の工程:
成形コンタクトレンズ、およびヒアルロニダーゼまたはコラゲナーゼを含有する薬学的組成物を使用して、両眼の前面の曲率半径を変化させることによって角膜の力に変化を起こす工程;
を包含する、方法。
(項目3)
角膜の生理機能および構造に変化を起こすことによって眼科的状態を処置するための方法であって、該方法が、以下の工程:
成形コンタクトレンズ、およびヒアルロニダーゼまたはコラゲナーゼを含有する薬学的組成物を使用して、片眼のみの前面の曲率半径を変化させることによって角膜の力に変化を起こす工程;
を包含する、方法。
(項目4)
角膜の生理機能および構造に変化を起こすことによって眼科的状態を処置するための方法であって、該方法が、以下の工程:
遠方視力を実質的に消失させることなく近見視力を矯正し得る範囲内の角膜の力を、球状近視(近視)および円柱状近視(乱視)を考慮して計算する工程;
非点収差の軸と一緒に該角膜の力に起こされる変化が、該患者の視覚系に必要とされる変化になるように、患者が近見視力を必要とするそれぞれの眼に対して最適な非点収差の軸を考慮する工程;
該角膜の力における必要な変化を該患者に導き、それにより良好な近見視力が得られることを可能にする、工程;
該角膜の表面を変化させるために成形コンタクトレンズを使用する工程;および
ヒアルロニダーゼまたはコラゲナーゼを含有する薬学的組成物を該眼に投与する工程;
を包含する、方法。
(項目5)
前記球状(近視)が、+0.100D〜+0.999Dの範囲にある、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記円柱状(乱視)が、−0.100D〜−0.999Dの範囲にある、項目4に記載の方法。
(項目7)
遠視が、+0.100D〜+0.999Dの範囲にあり、そして前記円柱状(乱視)が、−0.100D〜−0.999Dの範囲にある、項目4に記載の方法。
(項目8)
前記コンタクトレンズが、市販される、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目9)
前記コンタクトレンズが、特別注文ではない、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目10)
前記コンタクトレンズが、角膜矯正のために特別に設計されない、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目11)
前記コンタクトレンズが、長時間装用コンタクトレンズである、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目12)
前記薬学的組成物が、酵素、麻酔剤、ビタミン類、抗生物質、および抗炎症剤からなる群より選択される因子の組み合わせである、請求項1、2、3または4に記載の方法。
(項目13)
前記薬学的組成物が、ヒアルロニダーゼおよびコラゲナーゼを含有する、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目14)
前記薬学的組成物が、メチルセルロース、セルロース、およびポリビニルアルコールからなる群より選択されるビヒクルをさらに含有する、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記薬学的組成物が、点眼剤の形態である、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目16)
前記薬学的組成物が、ゲルの形態である、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目17)
前記薬学的組成物が、高張性である、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目18)
前記薬学的組成物が、低張性である、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目19)
前記処置が、眼科的状態の矯正を、少なくとも7日間もたらす、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目20)
前記処置が、眼科的状態の矯正を、少なくとも6ヶ月間もたらす、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目21)
前記処置が、眼科的状態の矯正を、少なくとも1年間もたらす、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目22)
前記処置が、外科手術なしで3ジオプトリまでの屈折異常の矯正をもたらす、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目23)
前記処置が、外科手術なしで4ジオプトリまでの屈折異常の矯正をもたらす、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目24)
前記眼科的状態が、老眼である、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目25)
前記眼科的状態が、近視である、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目26)
前記眼科的状態が、遠視である、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目27)
前記眼科的状態が、乱視である、項目1、2、3または4に記載の方法。
(項目28)
薬学的組成物であって、以下:
(1)ヒアルロニダーゼおよびコラゲナーゼからなる群より選択される酵素;ならびに
(2)酵素、麻酔剤、ビタミン類、抗生物質、潤滑剤、抗炎症剤、およびビヒクルからなる群より選択される少なくとも1つの因子;を含有する、薬学的組成物。
(項目29)
前記組成物が、高張性である、項目28に記載の薬学的組成物。
(項目30)
前記組成物が、高張性である、項目28に記載の薬学的組成物。
(項目31)
前記組成物が、眼への投与に適する、項目28に記載の薬学的組成物。
(項目32)
前記組成物が、液体である、項目28に記載の薬学的組成物。
(項目33)
前記組成物が、半固体のゲルである、項目28に記載の薬学的組成物。
(項目34)
前記組成物が、ビヒクルとしてポリマーを含有する、項目28に記載の薬学的組成物。
(項目35)
前記ポリマーが、メチルセルロースおよびポリビニルアルコールからなる群より選択される、項目34に記載の薬学的組成物。
(項目36)
前記組成物が、ヒアルロニダーゼを含有する、項目28に記載の薬学的組成物。
(項目37)
前記組成物が、コラゲナーゼを含有する、項目28に記載の薬学的組成物。
(項目38)
前記組成物が、コラゲナーゼおよびヒアルロニダーゼを含有する、項目28に記載の薬学的組成物。
(項目39)
前記組成物が、麻酔剤、抗生物質、抗炎症剤、抗アレルギー剤、ビタミンA、ヒアルロニダーゼ、カルバミド、および血管収縮剤を含有する、項目28に記載の薬学的組成物。
(項目40)
項目39に記載の薬学的組成物であって、さらにコラゲナーゼを含有する、薬学的組成物。
(項目41)
前記組成物が、麻酔剤、抗生物質、抗炎症剤、抗アレルギー剤、ビタミンA、ヒアルロニダーゼ、カルバミド、サイトキナーゼ、および血管収縮剤からなる群より選択される少なくとも3つの因子を含有する、項目28に記載の薬学的組成物。
(項目42)
前記組成物が、麻酔剤、抗生物質、抗炎症剤、ビタミンA、ヒアルロニダーゼ、カルバミド、サイトキナーゼ、および血管収縮剤からなる群より選択される少なくとも4つの因子を含有する、項目28に記載の薬学的組成物。
(項目43)
薬学的組成物であって、以下:
0.1%〜5%の範囲のヒアルロニダーゼ;
0.1%〜6%の範囲のコラゲナーゼ;および
メチルセルロースおよびポリビニルアルコールからなる群より選択されるビヒクル;
を含有する、薬学的組成物。
(項目44)
前記組成物が、低張性である、項目43に記載の組成物。
(項目45)
前記組成物が、低張性である、項目43に記載の組成物。
(項目46)
さらに、麻酔剤、抗生物質、抗炎症剤、ビタミンA、カルバミド、および血管収縮剤からなる群より選択される少なくとも1つの因子を含有する、項目43に記載の組成物。
(項目47)
コンタクトレンズ、およびヒアルロニダーゼまたはコラゲナーゼを含有する薬学的組成物を備えるキット。
(項目48)
項目47に記載のキットであって、説明書をさらに備える、キット。
(項目49)
項目47に記載のキットであって、コンタクトレンズクリーニング用品をさらに備える、キット。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、眼のグルストランドのモデルの図示である。このモデルは、角膜および眼の他の部分の屈折力を計算するのに使用される。このようなスキームは、患者の視力を矯正するのに必要な角膜の調整を決定するのに有用である。
【図2】図2は、球面円柱レンズによって像の情報を示すのに使用されるシュツルム円錐体の図示である。
【図3】図3は、眼の構造的領域の厚さおよび曲率半径に存在する違いを示す写真である。
【図4】図4は、支質の滑りを示す模式図である。
【図5】図5は、眼の数学的モデルを示す。この図は、角膜の力および眼球の屈折力を計算するのに必要とされる理論上の測定を示す。眼に関するこの伝統的なモデルが、眼球を示す球および角膜の数学的定数を使用することに注意すべきである。
【図6】図6は、正常な眼を示す。正常な眼は、実際には球ではない。これは、種々の構造上の不規則性および構造上の相違を有し、そして眼の軸は、幾何学的な軸の中心からずれる。
【図7】図7は、角膜の頂上の中心上に位置する小さくコンタクトレンズを示す。このコンタクトレンズを使用して、角膜の中心部に圧力が加えられる。その周辺部は、コンタクトレンズに接触しない。角膜の中心部に対する圧力は、角膜の中央を平らにし、そして角膜の屈折力を減少させる。
【図8】図8は、角膜の頂上の中心上に位置する小さいコンタクトレンズを示す。このコンタクトレンズは、角膜の周辺部に圧力を加えている。この角膜の中心部は、コンタクトレンズに接触しない。この周辺に対する圧力は、角膜の中央を傾斜させることによって、角膜に屈折力を加える。
【図9】図9は、角膜の頂上の中心上に位置する大きいコンタクトレンズを示す。このコンタクトレンズは、角膜の周辺部に圧力を加えている。この周辺の圧力は、角膜の中心部分を傾斜させることによって、角膜に屈折力を加える。
【図10】図10は、角膜の頂上の中心上に位置する大きいコンタクトレンズを示す。この図において、このコンタクトレンズは、角膜の中心部に圧力を加えている。この中心部に対する圧力は、角膜を平らにし、そして角膜から屈折力を取り除く。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(本発明の特定の好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明の処置システムは、角膜の曲率(例えば、角膜の前面の半径)の変化を起こすことに基づく。この変化は、患者が、眼鏡、コンタクトレンズ、または他の視覚的補助に対する必要性を有さずに近くまたは遠くを良好に見ることを可能にする。このシステムは、処置される患者の視覚的必要性にしたがって、垂直軸(水平軸または斜めの軸)を有する複性近視性乱視を起こすことによって機能する。このシステムは、相互作用的であり、そしてこの処置をどの程度続けるかに関する患者からの入力に依存する。これは、本発明のシステムと眼科医による眼の状況の詳細な測定に本質的に依存する、当該分野において既に公知であるシステムとの間の違いの1つである。
【0032】
角膜前部の半径の変化を起こすのに使用される方法としては、屈折外科的技術(例えば、LASIK、LASEK、PRK、CK、または角膜もしくは強膜の前面の層を変化させる他の外科的手順)または眼の屈折力の任意の変化もしくは任意の変更後の成形コンタクトレンズの装着;屈折異常を穏やかに低下させる場合、患者が手術され、そして治癒プロセスが既に完了した場合、または外科手術の経験が無い患者が、老眼、近視、遠視、乱視または他の眼科的状態に苦しむ場合の、成形コンタクトレンズの装着および眼に対する投与に適する薬学的組成物の使用が挙げられる。本方法は、角膜の正常な生理機能が変えられるのと同時に、患者の視覚的記憶および大脳による調節が変えられ、患者の所望の近見視力および遠方視力を達成するのに必要な角膜の屈折力を達成する、動的かつ相互作用的な技術である。本発明の方法は、角膜を、段階的手段、継続的手段、計画的手段および制御的手段によって、不可逆的な変化または望ましくない合併症を形成せずに変化させる。特定の実施形態において、この方法は、一定の様式で角膜を変化させる。他の実施形態において、この誘導された変化は、一定ではない(例えば、乱視の処置において)。この患者は、カメラのレンズを合わせる写真家のように、所望の視界を達成する処置への誘導において重要な役割を担う。
【0033】
屈折異常を有する任意の患者は、本発明のシステムを使用して処置され得る。本発明のシステムを使用して処置できる眼科的状態としては、老眼、遠視、近視、乱視、および角膜の形状を変化させることによって処置され得る任意の他の眼科的状態が挙げられる。特定の実施形態において、その患者は、老眼を患うか、またはその危険性がある。特定の患者は、眼鏡またはコンタクトレンズを必要としない近くおよび遠くについての良好な視力を有するが、年齢の増加によって老眼を発症し、減少した近見視力を生じ得る。他の実施形態において、この患者は、生まれつき屈折の欠陥(例えば、屈折の遺伝的欠陥)を有し、そしてその患者は、近く、中間、または遠くの異なる距離のいずれか1つにおける欠陥を矯正することを望む。なお他の実施形態において、その患者は、外科手術を受けて、屈折異常を矯正するが、近見視力、遠方視力、および/または中距離視力において屈折の残った欠陥を保持する。特定の実施形態において、18歳を下回る患者は、この患者が40歳に到達した場合に、老眼の症状が出始めるような屈折の欠陥について処置され、角膜の屈折力の変化は、最小化され得、したがって不自由または不快感を伴わずにより良好に患者に受け入れられる(例えば、視覚的記憶、大脳による調節)。
【0034】
大脳による調節は、天然のプロセスである。大脳による調節は、脳の機能(具体的には、視覚器官を介して像を形成させ、そして光学系および運動系を内部接続する反射を起こし、そしてそれを完了するのに使用される筋肉の動きを実行する機能)に基づく。一旦、像が眼によって捕捉されると、それらは、脳(視覚皮質)に送られ、そして視覚的記憶中に保存される。各個体の通常の発育の間に視覚的刺激は変化し、そしてこれは、大脳による調節が、その個体が見かけ上無意識に行う機能の実行においてこのような重要な役割を果たす理由である。したがって、本発明のシステムは、患者の処置における大脳による調節を考慮する。焦点の定まらないぼやけた像の伝達は、眼のシステムおよび神経系が同調しない場合、老眼の発症における視覚的記憶中の他の像に関連させ、そしてそれを解釈することが非常に困難になる。結果として、患者は、眼鏡の使用を必要とする。本発明の技術は、患者が視覚野および視覚的記憶を含む視覚系の要求を満たすことを必要とする、近見視力および遠方視力を達成するために角膜を成形する。
【0035】
本発明は、眼のグルストランドのモデル(図1)かつシュツルムの円錐体(図2)検討することによって、より良く理解される。当業者によって理解されるように、視覚系を数学的に模す眼に関する他のモデルもまた、使用され得る。グルストランドのモデルは、古くそして伝統的な数学的概念を使用する本発明にしたがって、角膜の屈折力の計算についての要素を示す。角膜の屈折力のこの計算は、角膜の前面の曲率半径、角膜の厚さ、および角膜の後面の曲率半径に基づく。
【0036】
角膜の前面の曲率半径の最初の測定は、角膜計測定によって得られる。角膜計によって決定される屈折率が処置を行う医師による計算に使用されるのと同じである場合、この測定は、ジオプトリで直接行われる。好ましくは、この測定は、処置を行う医師によって使用されるのと同じ単位で行われる。さらに、本発明に使用される全ての器具は、一緒に校正されることが好ましい、特定の実施形態において、最初の半径(R)の測定は、ミリメートルにおいてなされ、次いで以下の式を使用してジオプトリに変換される:
D=[(n−n’)×1.000]/R
ここでD=ジオプトリ、n=空気の屈折率、n’=角膜の屈折率、R=角膜の前面の曲率半径、R=最初の半径、およびD=最初のジオプトリ。
【0037】
(屈折の欠陥の評価)
眼における屈折の欠陥の量は、以下の式を用いて角膜頂で測定される:
=D/[1−(xD/1.000)]
ここでD=頂点についてのジオプトリ、およびD=矯正のジオプトリ。
【0038】
次いで、最終的なジオプトリは、以下の式によって計算される:
=D+D=332/R+D
ここでD=最終的なジオプトリ、D=最初のジオプトリ、R=最初のジオプトリ、およびD=角膜頂についてのジオプトリ。
【0039】
(最終的な半径)
成形された角膜の前面の最終的な曲率半径は、種々の測定装置との使用を容易にするために、ジオプトリの代わりにミリメートルで計算される。この最終的な半径は、以下の式を使用して計算される:
=332/[(332/R)+D
ここでR=最終的な半径、R=最初の半径、およびD=角膜頂についてのジオプトリ。
【0040】
(角膜の厚さ)
角膜の厚さは、前面の曲率半径と界面(支質前部の切除面)の曲率半径の違いに基づいて計算される。
【0041】
(後面の半径)
後面の曲率半径は、最終的な半径から外科手術後の支質の厚さを引いたものに等しい(Rsp=R−E
光学装置の校正は、眼のグルストランドのモデルに基づく。測定される(例えば、曲率半径、角膜の厚さ、屈折率)眼の部分のいずれか一部に大きな変化が存在する場合、もはや自動化光学装置(例えば、自動角膜屈折計)の多くは、角膜の屈折力を正確にできない。したがって、正確な数学的計算を行い得るために、前面の曲率半径、角膜の厚さ、および後面の曲率半径を実際に測定することが、装置を利用するのに必要である(例えば、Bausch & Lomb Surgicalから市販されるORBSCAN II)。一般的に、この型の装置は、角膜の屈折力の非常に大きな増加(例えば、0.25D)を測定し、これは患者の視力の測定を矯正するための誤差を生じるので、したがって、患者に対する所望の近見視力および遠方視力に到達するのに必要とされる角膜の屈折力の計算のための数式を得る。
【0042】
本発明において、角膜の引き起こされる屈折力は、0.100のジオプトリ〜0.999のジオプトリの球状(近視)および近視性の円柱状(乱視)と同様に考慮され、これは、遠方視力を顕著に減少させずに近見視力を矯正し得る推奨可能な範囲である。近視性単乱視は、−0.100〜−0.999Dの球状である。遠視性単乱視は、+0.100〜+0.999Dの球状である。乱視における円柱は、−0.100〜−0.999である。乱視の軸は、0°〜360°であり得る。当業者によって理解されるように、視覚的な質および視覚的な能力もまた、瞳孔の直径に関係する。
【0043】
水晶体、小帯、毛様体筋、毛様体、強膜、脳、視覚皮質、および視覚的記憶を含む視覚系の全体は、本発明の動的かつ相互作用的なシステムにおいて検討される。眼の各部は視界において重要な役割を果たし、そして医原性または加齢のいずれかによるこれらの部分の各々の改変は、患者の視界に変化を引き起こす。
【0044】
一旦、測定および上記の計算が、測定されると、この患者は、近見視力および遠方視力の両方についての患者の視覚的必要性を決定するために診察される。このことは、患者が、実際に評価し、感じ取り、そして個々人の角膜の屈折力を信頼するという事実に基づく。この処置を施す人間は、この情報を上記の数式に取り組むために使用し得る。この組み合わせたアプローチは、患者の角膜に起こされるべき傾斜付け(steepness)または平坦化を決定する点において患者の処置を導く。
【0045】
患者の角膜の再形成を行うために、本発明のシステムは、成形コンタクトレンズの使用と眼への投与に適した薬学的因子(例えば、点眼剤)の使用とを組み合わせる。特定の実施形態において、コンピューターソフトウェアは、患者に最も適したコンタクトレンズを決めるためそして/または薬学的因子の処方を決めるために使用される。
【0046】
本発明のソフトウェアは、ヘルスケアの専門家(例えば、眼科医、検眼医、看護士など)に、患者についての特定の情報を入力することを促す。この情報としては、氏名;年齢;性別;職業;精密作業の間隔;コンタクトレンズに対する耐性(その患者が以前にコンタクトレンズを使用していた場合)、検眼データ;視力(例えば、近見、遠方、両眼、それぞれ単独の眼、矯正、または非矯正);角膜曲率測定;局所解剖学;パキメトリー(paquimetry)(角膜の厚さ);ウェーブフロント;光線追跡測定法;通常の瞳孔を用いる検影法;通常の瞳孔を用いる屈折;最も矯正された視力(例えば、遠方または近見、両眼またはそれぞれ単独の眼);散瞳を用いる検影法;散瞳を用いる屈折;45〜55cmにおける視界か、イエーガー3か、イエーガー4か、またはイエーガー5に対する最も良好な近見視力などが挙げられ得る。上記された入力データのいずれかは、その患者によって使用されるべきコンタクトレンズまたは薬学的組成物に関するプログラムの決定に含まれ得るか、またはそれか除外され得る。このソフトウェアはまた、ジオプトリからミリメートルへの角膜曲率測定の変換を許容する。その使用者は、平らにするのか、傾斜を付けるのか、または平均的な角膜曲率測定かの選択を促され得る。その使用者は、患者のためにソフトコンタクトレンズまたはハードコンタクトレンズのどちらを選ぶのかを問われ得る。その使用者は、後部のベースカーブ、後部周辺のベースカーブ、前部のカーブ、および/または前部周辺のカーブの入力を問われ得る。その使用者はまた、その力の選択を問われ得る。特定の実施形態において、このソフトウェアは、入力されたデータを、患者によって使用されるべきコンタクトレンズを決定するのに使用する。このソフトウェアは、ソフトコンタクトレンズ対ハードコンタクトレンズ、ジオプトリの屈折力、後部のベースカーブ、後部周辺の曲率、前部のカーブ、前部周辺のカーブ、中心部の直径、および/または周辺部の直径を決定し得る。特定の実施形態において、このソフトウェアは、上記薬学的組成物の組成および/またはこの薬学的組成物のための投薬レジメンを決定する。
【0047】
特定の実施形態において、上記ソフトウェアは、初めに使用者に以下の患者データを要求することによって開始する:氏名、年齢、右眼の角膜曲率測定、右眼のパキメトリー(角膜の厚さ)、右眼の欠陥、左眼の角膜曲率測定、左眼のパキメトリー(角膜の厚さ)、左眼の欠陥、およびその患者が以前にコンタクトレンズを装着したか否か。その患者が以前にコンタクトレンズを装着していた場合、この使用者は、コンタクトレンズの型がどのようなものであったか、そしてそれは快適であったか否かに関する情報の入力を促される。コンタクトレンズを装着したことがない患者については、この使用者は、患者の感受性のレベル(例えば、高い、低い、無し)の選択を問われる。その情報が入力された後、このソフトウェアは、全てのデータが入力されており、そしてその情報が一定の範囲内に収まることを確認する。例えば、患者の年齢は、1歳と100歳との間である必要がある。右眼および左眼の角膜曲率測定は、34.09Dと55.32Dとの間である必要がある。両眼のパキメトリーは、450ミクロンと650ミクロンとの間の値である必要がある。この使用者は、全てのデータの入力を確認して過誤の機会を減少させることを求められる。全てのデータが入力された後、次いでこのソフトウェアは、本明細書中に記載される式を使用して結果を算出する。このソフトウェアは、患者に対して推奨される型またはコンタクトレンズおよびミリメートルで示されるベースカーブを決定する。その欠陥が、2Dより大きい場合、メッセージは、「患者に応じたレンズの度数を決めてください」である。どちらかの眼の角膜曲率測定値が、40D未満であるか、または48Dより大きい場合、以下のメッセージが出現する:「周辺のベースカーブを決めてください」。付表Aは、このようなソフトウェアを実行するコンピューターの種々の画面の写真を示す。
【0048】
屈折異常に関する障害(例えば、老眼)を罹患する患者を処置するための本発明の方法は、患者を評価すること(例えば、年齢、患者の作業必要性、眼の疾患など)、角膜の前面の曲率半径において必要な変化を起こす成形コンタクトレンズの使用を指示すること、およびコンタクトレンズと組み合わせて使用されるべき薬学的組成物の使用を指示することが挙げられる。
本発明のシステムは、−0.25D〜−0.75Dの近視性範囲(球状)によってか、または−0.25D〜−0.75Dの近視性単乱視(円柱状)によって角膜の前面の曲率半径に変化を起こすことによって角膜の屈折力に変化を起こすために使用され得る。1.00Dより大きい近視(球状)か、または乱視(円柱状)において1.00Dを上回ることで角膜の屈折力に変化を起こすことによって、近見視力は改善されるが、遠方視力は減少する。特定の好ましい実施形態において、遠方視力を実質的に減少させること無く近見視力を矯正する範囲は、0.100Dから0.999Dまでである。患者が近見視力に対して必要とする乱視の最適な軸を決定するために、それぞれの眼は、別個に評価される。
【0049】
他の実施形態において、上記変化は、近視性単乱視の縦軸(例えば、垂直(90°)に対して45°未満である縦の乱視の場合)で角膜の屈折力において引き起こされる。
【0050】
本発明の方法は、全ての患者のそれぞれの眼の処置が完全に個人的であることを可能にするので、特に有用である。完全に個人的である患者ごとのそれぞれの眼の処置が可能であることに起因して特に有用である。処置を行う医師は、測定装置または患者の視覚異常の処置に利用可能な眼鏡またはコンタクトレンズによって制限されない。したがって、矯正の正確性は、0.100Dに限定されない代わりに、正確性のより高い程度(例えば、0.01D、0.005D、0.001D、0.0005D、または0.0001D)で行われ得る。その患者は、患者の視覚的必要性に従う処置を管理する。処置を行う医師は、必要とされる処置を中止または変更し得る。
【0051】
上記されるように、近視または乱視の程度を測定するのに使用する既存の器具は、角膜の前面の曲率半径の値、角膜の厚さ、または角膜の後面の曲率半径を、要求される正確性を伴って測定しない。
【0052】
処方されそして患者によって装着される成形コンタクトレンズは、角膜の前面に機械的な力を加え、それによって角膜の屈折力に変化を起こす。特定の実施形態において、この成形コンタクトレンズは、成形ハードコンタクトレンズまたは硬性成形コンタクトレンズである。他の実施形態において、この成形コンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズである。
【0053】
一旦、上記成形コンタクトレンズが、患者の眼に配置されると、角膜の成形を可能にする薬学的組成物(例えば、点眼剤)は、眼に投与され、そして/または角膜のラメラ間の接触を減少させる。このコンタクトレンズおよび薬学的組成物は共に、角膜の屈折力に変化を形成する。この薬学的組成物が、より頻繁に投与されるほど、角膜のラメラは、より迅速に形状における所望の変化を取り入れる。特定の実施形態において、この組成物は、少なくとも8時間毎に投与される。他の実施形態において、この組成物は、6時間毎に投与される。特定の他の実施形態において、この組成物は、約3時間毎に投与される。なお他の実施形態において、この組成物は、約2時間毎に投与される。他の実施形態において、この組成物は、1時間毎に投与される。この組成物は、患者の必要性(例えば、作業における必要性、休息時間、睡眠など)に応じて、高張性(5%〜40%、好ましくは約10%、約20%、約30%、または約40%)または低張性(0%〜5%、好ましくは約1%、約2%、約3%、または約4%)であり得る。高張性の薬学的組成物(例えば、40%)は、代表的に、より迅速な結果が望まれる場合に使用される。
【0054】
いかなる特定の理論にも束縛されることは望まないが、本発明のシステムは、以下の機構によって機能すると考えられる。切断、切除、または剥離のいずれかによって強膜のラメラ間に空間を生じる任意の屈折矯正外科的技術後、強膜の滑りは、支質をより近視性の欠陥を矯正するために周辺部に向かって滑らせるか、または遠視または老眼を矯正するために角膜の中心に向かって滑らせる(図4を参照のこと)。成形コンタクトレンズが、そのコンタクトレンズの機械的な力を向上させる薬学的組成物と組み合わせて使用される場合、角膜の支質は、その解剖学的構造および組織学的構造にしたがって変えられる。このコンタクトレンズおよび薬学的組成物は、分子構造(例えば、ラメラ)の機械力に変化を起こし、細胞およびタンパク質(例えば、角膜の支質中に見出されるコラーゲンおよびヒアルロン酸)に変化を起こす。この角膜の表面は、角膜の支質を成形することによって、より均一になる。全ての健康な角膜は、等長性の断層撮影法および超音波によって示される場合、表面においてある程度の凹凸を有する。本発明のシステムにおいて、あらゆる像の質および鮮明さ(すなわち、視力)は、角膜の表面をより均一にすることによって改善される。
【0055】
上記成形コンタクトレンズに関する計算のために、最も平らな角膜曲率測定が用いられる。当業者はまた、傾斜が急な角膜曲率測定または両方の平均を使用し、そしてこの角膜曲率に基づいて、角膜の前面の曲率半径を平らにするかまたは傾斜付けするのに必要な計算を行い、したがって、眼の屈折の欠陥を矯正する。成形コンタクトレンズのベースカーブは、それぞれ単独の眼についての屈折力の変化に基づいて計算される。この成形コンタクトレンズのベースカーブは、要求される屈折異常に応じて、1つ〜4つのより平坦なジオプトリまたはより傾斜の急なジオプトリ、より好ましくは1つ〜3つのより平坦なジオプトリまたはより傾斜の急なジオプトリ、さらにより好ましくは1つ〜2つのより平坦なジオプトリまたはより傾斜の急なジオプトリを用いて計算され始める。周辺のベースカーブは、その成形コンタクトレンズの適応に依存し、そして中心部より大きい0.5mmの半径であるように計算されるが、その設計に応じて変化し得る。本発明のシステムに使用される成形コンタクトレンズの直径は、約8.0mm〜18.0mmである。これらの直径は、商業的に利用可能である。特定の実施形態において、この成形コンタクトレンズは、8.0mm〜12.0mmの範囲の直径を有するハードコンタクトレンズである。他の実施形態において、この成形コンタクトレンズは、13.0mm〜15.0mmの範囲の直径を有するソフトコンタクトレンズである。ソフトコンタクトレンズは、角膜全体を覆い、そして強膜から強膜までにおよび得る。特定の実施形態において、この成形コンタクトレンズは、硬い材料と柔らかい材料との組み合わせである。これは、約12.0mm、約13.0mm、約14.0mm、または約15.0mmまでを上回って中央では硬くあり得、その後約16.0mm、17.0mm、および18.0mmまでを上回って周辺では柔らかくあり得る。より大きなコンタクトレンズ(好ましくはソフトコンタクトレンズ)は、夜に成形コンタクトレンズとして使用され得る。この成形コンタクトレンズの屈折力は、その患者が快適に見るのに必要な可能な限り近い屈折力に対して決定される。この成形コンタクトレンズによる適合プロセス中に、その視界が患者の必要性に適切ではない場合、その患者が処置を受ける間、この患者は、眼鏡を処方される。
【0056】
角膜が適合されるかまたは適合された場合、種々の検眼の測定は、その処置が計画通りに進んでおり、そして適切であることを確認するために、必要に応じて繰り返される。このような測定としては、近見および遠方に対する視力、小さな文字を満足に見るための距離(J−3〜J−4)(例えば、新聞または雑誌の文字)、オルト形、角膜曲率測定、客観的な検影法および主観的な検影法、成形コンタクトレンズの適合の図、成形コンタクトレンズの動き、ならびに成形コンタクトレンズの快適さが挙げられ得る。この測定が用いられた後、変化は、これらの測定に基づく処置計画についてなされる。成形コンタクトレンズおよび/または薬学的組成物における変化は、その後の数週間にわたって角膜の所望の屈折力を生じるようになされ得る。特定の好ましい実施形態において、毎週の定期的な修正は、処置の開始後、最初の8週間の間行われる。特定の実施形態において、その患者が、屈折矯正手術を受けていない場合、眼への投与のための薬学的組成物が、処方されるべきである。
【0057】
本発明のシステムに使用される成形コンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズまたはソフトコンタクトレンズであり得る。成形ソフトコンタクトレンズの場合、正または負の曲率が、角膜に引き起こされ、患者の眼における不快感は、この患者がそのコンタクトレンズに順応するにしたがって減少する。成形ハードコンタクトレンズが使用される場合、より機械的な圧力が、角膜上に加えられる。特定の好ましい実施形態において、このコンタクトレンズは、気体透過性である。
【0058】
本発明のシステムに使用される薬学的組成物は、角膜のラメラ、コラーゲン繊維、ヒアルロン酸、および角膜の水和の割合に変化を起こすのを補助する因子を含有する。角膜の解剖学、組織学、および生理学の他の局面はまた、薬学的組成物中の因子に影響され得る。特定の実施形態において、この組成物は、角膜の水和の割合に変化を起こすために、高張性であっても低張性であってもよい。他の実施形態において、この組成物は、角膜の分子構造(例えば、ラメラ)の支持力を変化させ、そのようにして支質を所望の曲率に形成するために使用される。特定の実施形態において、この薬学的組成物中に使用される因子は、規制当局(例えば、米国食品医薬品局(FDA)または類似の海外の規制機関)によってヒトに対する使用が承認されている。好ましくは、この因子は、眼における使用が承認されている。
【0059】
特定の実施形態において、上記組成物は、角膜のラメラ間の接合因子のように機能するヒアルロン酸を分解することが知られている酵素ヒアルロニダーゼを含有する。ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸、コンドロイチン、ならびにコンドロイチン4硫酸Aおよびコンドロイチン4硫酸Cにおける4つの結合の1つの加水分解を触媒することによってムコ多糖類を分解する酵素である。ムコ多糖類は、上記支質(角膜の中間層の結合組織)の細胞内基質(接合因子または接着因子)の1つである。角膜の形状は、その角膜の支質層中のコラーゲン繊維の配置およびこれらの繊維の間のムコ多糖層の配置に大きく依存する。ヒアルロニダーゼは、角膜中に放出されると、ムコ多糖鎖を分解する。したがって、角膜の支質は、より成形コンタクトレンズによって再形成されやすくなるように軟化される。
【0060】
ヒアルロニダーゼは、この酵素が、少なくとも90%の純度、少なくとも95%の純度、少なくとも96%の純度、少なくとも97%の純度、少なくとも98%の純度、または少なくとも99%の純度まで精製され得る種々の天然の供給源から得ることができる。天然の供給源としては、ウシ(雄ウシ)の精巣、ヒツジ(ovine)(ヒツジ(sheep)の精巣、および細菌(ストレプトミセス属)が挙げられる。特定の実施形態において、ヒアルロニダーゼは、市販されている。例えば、ヒアルロニダーゼの1つの形態は、商品名WYDASE(登録商標)(Wyeth Laboratories,Inc.,Philadelphia,PA)の下で入手できる。WYDASE(登録商標)ヒアルロニダーゼは、高度に精製されたウシ精巣のヒアルロニダーゼの調製物である。ヒアルロニダーゼ酵素は、凍結乾燥粉末として供給され得る。この粉末は、リン酸緩衝生理食塩水を使用して再構成され得る。代表的な比率としては、1ミリリットルあたり約150USP単位のヒアルロニダーゼが挙げられる。特定の実施形態において、このヒアルロニダーゼは、組換えDNA技術を使用して調製される。このヒアルロニダーゼは、修飾型(例えば、切断形態、化学修飾型、または遺伝子改変型)であり得る。
【0061】
特定の実施形態において、薬学的組成物中のヒアルロニダーゼの濃度(重量%)は、0.01重量%〜10重量%、0.1重量%〜7重量%、0.1重量%〜5重量%、または1重量%〜5重量%の範囲である。ヒアルロニダーゼの濃度の増加は、角膜を成形するコンタクトレンズの能力を増加する。さらに、この組成物中のポリマー(例えば、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、セルロースなど)のようなビヒクルの使用は、ビヒクルを使用しない場合よりも長くヒアルロニダーゼを角膜上で作用させる。
【0062】
哺乳動物において角膜を軟化するためのヒアルロニダーゼの有効量は、1ミリグラムの基質(すなわち、角膜のムコ多糖)あたり約50単位の酵素〜1ミリグラムの基質あたり約5,000単位の酵素の間であることが発見された。好ましくは、この有効量は、1ミリグラムの基質あたり100単位と1,500単位との間である。より高い用量は、必要な投与回数を減らすために投与され得る。
【0063】
角膜を軟化する組成物中に含まれ得る他の酵素としては、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼAC、ケラチナーゼ(keratanse)、およびストロメライシンが挙げられ、これらは、角膜の種々のプロテオグリカン成分に対して作用することが示された。
【0064】
特定の実施形態において、上記組成物は、細胞外マトリックスタンパク質として機能する、コラーゲンを分解することが知られている酵素コラゲナーゼを含有する。特定の実施形態において、コラゲナーゼは、組換えDNA技術を使用して調製される。他の実施形態において、コラゲナーゼは、天然の供給源から精製される。コラゲナーゼは、修飾型(例えば、切断形態、化学修飾型、または遺伝子改変型)であり得る。角膜のコラーゲン成分を分解する他の酵素としては、マトリックスメタロプロテイナーゼ1(間質性のコラゲナーゼ)およびマトリックスメタロプロテイナーゼ2(ゼラチナーゼ)が挙げられる。これらの酵素は、個別に使用されても他の酵素(例えば、角膜のプロテオグリカン成分を分解する酵素)と組み合わせて使用されてもよい。それぞれ、1997年5月6日および2000年10月17日に公報が発行された、米国特許第5,626,865号および同第6,132,735号(これらの各々は本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。特定の実施形態において、その薬学的組成物は、ヒアルロニダーゼとコラゲナーゼとの組み合わせを有する。
【0065】
特定の実施形態において、上記薬学的組成物中のコラゲナーゼの濃度(重量%)は、0.01重量%〜10重量%、0.1重量%〜7重量%、0.1重量%〜6重量%、または1重量%〜5重量%の範囲である。コラゲナーゼの濃度の増加は、角膜を成形するコンタクトレンズの能力を増加する。さらに、この組成物中のポリマー(例えば、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、セルロースなど)のようなビヒクルの使用は、ビヒクルが存在しない場合よりも長くコラゲナーゼを角膜上で作用させる。
【0066】
別の実施形態において、患者の眼に対して内因性の酵素が、角膜を軟化するために使用される。これらの内因性の酵素は、活性化されて軟化プロセスを開始する。メタロプロテイナーゼは、インターロイキン−1α、腫瘍壊死因子、尿酸一ナトリウム一水和物、4−アミノ酢酸フェニル水銀、ヒト血清アミロイドA、ヒトBミクログロブリン、および塩化銅の投与によって活性化される。それぞれ、1997年5月6日および2000年10月17日に公報が発行された、米国特許第5,626,865号および同第6,132,735号(これらの各々は本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0067】
特定の実施形態において、上記組成物は、カルバミド(尿素)を含有する。特定の実施形態において、このカルバミドは、商業的供給源から得られる。他の実施形態において、このカルバミドは、天然の供給源から精製される。このカルバミドは、カルバミドの誘導体またはカルバミドの塩であり得る。
【0068】
上記薬学的組成物はまた、角膜中に見出される他の糖類またはタンパク質を分解する酵素を含有する。特定の実施形態において、この酵素が作用して、角膜中のラメラの集合を平らにする。他の実施形態において、この薬学的組成物は、角膜の支質の水和または角膜の厚さを変更する。他の実施形態において、角膜の分子構造(例えば、角膜のラメラ)の支持力を変化させることが知られる因子が、この薬学的組成物中に含まれる。
【0069】
上記薬学的組成物は、本発明の手順に有用な他の因子を含み得る。特定の実施形態において、この薬学的組成物は、角膜上の成形コンタクトレンズの刺激を減少させる麻酔剤を含有する。麻酔剤の例としては、ベンゾカイン、ブピバカイン、コカイン、エチドカイン、リドカイン、メピバカイン、プラモキシン、プリロカイン、クロロプロカイン、プロカイン、プロパラカイン、ロピカイン、およびテトラカインが挙げられる。他の実施形態において、この薬学的組成物は、抗炎症剤(例えば、ステロイドまたは非ステロイド性抗炎症剤)を含有する。抗炎症剤の例としては、アスピリン、アセトアミノフェン、インドメタシン、スルファサラジン、オルサラジン、サリチル酸ナトリウム、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サルサラート、ジフルニサル、サリチルサリチル酸、スリンダク、エトドラク、トルメチン、ジクロフェナク、ケトロラク、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、スプロフェン、オキサプロキシン(oxaproxin)、メクロフェナム酸、メフェナム酸、オキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ピラゾリジンジオン、フェニルブタゾン、オキシフェンタトラゾン(oxyphenthatrazone)、フェニラミン、アンタゾリン、ナブメトン、COX−2インヒビター(Celebrex)、アパゾン、ニメスリド、およびジロートンが挙げられる。糖質コルチコイド(例えば、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、およびデキサメタゾン)もまた、抗炎症剤として使用され得る。なお他の実施形態において、この薬学的組成物は、潤滑剤を含有。これらの因子は、上記処置の間に患者の快適さを改善するために含まれる。個々の患者に基づいて当業者は、その患者のために処方される点眼剤の組成を決定する。
【0070】
特定の他の実施形態において、上記薬学的組成物は、抗微生物剤(例えば、抗細菌剤、抗ウイルス剤、および/または抗真菌剤)を含む。例示的な抗微生物剤としては、亜鉛バシトラシン、クロラムフェニコール、クロロテトラサイクリン、シプロフロキサシン、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、ノルフロキサシン、スルファセタミド、スルフイソキサゾール、ポリミキシンB、テトラサイクリン、トブラマイシン、イドクスウリジン、トリフルリジン、ビダラビン、アシクロビル、フォスカーネット、ガンシクロビル、ナタマイシン、アムホテリシンB、クロトリマゾール、エコナゾール、フルコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、フルシトシン、クリンダマイシン、ピリメタミン、フォリン酸、スルファジアジン、およびトリメトプリム−スルファメトキサゾールが挙げられる。
【0071】
上記薬学的組成物はまた、血管収縮剤を含有し得る。血管収縮剤としては、ジピベフリン(プロピン)、エピネフリン、フェニレフリン、アプラクロニジン、コカイン、ヒドロキシアンフェタミン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、ダピプラゾール、ベタキソロール、カルテオロール、レボブノロール、メチプラノロール、およびチモロールが挙げられる。
【0072】
上記薬学的組成物はまた、ビタミン類または他の栄養分(例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE、ビタミンK、および亜鉛)を含有し得る。
【0073】
上記薬学的組成物は、眼への投与に適した任意の形態で提供され得る。例えば、この薬学的組成物は、点眼剤、半固体のゲル、またはスプレーの形態であり得る。特定の実施形態において、成形コンタクトレンズは、支質を成形するのに必要な因子を含浸される。この様式において、その因子は、患者がそのコンタクトレンズを装着している場合、継続的かつ徐放様式で、角膜に対して送達され得る。
【0074】
本発明の例示的な薬学的組成物は、5〜10%の麻酔剤、10〜20%の抗生物質、10〜20%の抗炎症剤、20〜30%の抗アレルギー剤、20〜30%のビタミンA、2〜6%のヒアルロニダーゼ、3〜5%のカルバミド(尿素)、2〜5%のサイトキナーゼ、および10〜20%の血管収縮剤を含有し得る。これらの因子はまた、高張性の溶液または低張性の溶液で組み合わされ得る。この組成物はまた、ポリマー(例えば、メチルセルロース、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなど)のようなビヒクルを含有する。上記因子は、組み合わせて投与されても別個に投与されてもよい。当業者によって理解されるように、1つ以上の上記因子は、処置を行う医師によって決定される通りにその薬学的処方物から除かれ得る。当業者によって理解されるように、種々の置換は、その薬学的組成物中の因子に対してなされ得る。例えば、種々の広いスペクトルの抗生物質が、患者のアレルギー、費用、感染しそうな生物などのような要因に依存して使用され得る。さらに、種々の麻酔剤、抗炎症剤、血管収縮剤、抗アレルギー剤、およびサイトキナーゼが、使用され得る。
【0075】
特定の実施形態において、上記成形コンタクトレンズおよび上記薬学的組成物は、キット中に提供される。このキットは必要に応じて、潤滑性の点眼剤、コンタクトレンズに対する洗浄液、コンタクトレンズの携帯用ケース、1対の予備のコンタクトレンズ、およびそのコンタクトレンズを装着し、そして薬学的組成物を使用するための説明書を備える。
【0076】
上記で検討した全ての要素に関して、本発明の方法によって老眼を矯正するための数式は、以下の通りである:
=[332/(332/R+D)]+R(視覚的記憶の球状および円柱状)
=D+D=(332/R)+D+D(視覚的記憶の球状および円柱状)
ここでR、R、D、D、またはDは、これまでに定義した通りである。成形コンタクトレンズの処方についての計算は、本明細書中に記載される式をプログラムされたコンピューターによって実行され得ることが心に留められるべきである。
【0077】
老眼の患者および屈折矯正手術を必要とする患者において、患者の視覚系(視覚的記憶を含む)が、新しい像を受容し始めるのと一緒に、大脳による調節が、患者の近見視力および遠方視力についての習慣を変えることをその患者に慣らし、そして身につけさせるように、縦軸(または水平もしくは斜方)を有する複性近視性乱視の数式によって示される角膜の変化を起こすことが必要である
一旦、所望の終点が本発明のシステムを使用して達成されると、上記成形コンタクトレンズおよび上記薬学的組成物の使用は、継続されない。上記処置は、その患者の視界または視覚的必要性が、時間と共に変わる場合、繰り返され得る。例えば、老眼が進行する場合、再度の処置が必要であり得る。または、患者が、作業習慣を変える場合、再度の処置が必要であり得る。加齢もまた、再度の処置を必要とする視界の変化を生じ得る。既に記載したように、その患者は、所望の視界を達成する処置を導く。したがって、患者によって提供された情報および角膜の屈折力の測定において得られた結果に基づいて、患者が望む場合、遠方視力が近見視力より良い場合、角膜前面の曲率半径(球状および円柱状の両方)は、傾斜付けされることを必要とする。患者が、遠方視力より良い近見視力を有する場合、角膜前面の曲率半径は、平坦化されることを必要とする。像が歪められる場合、乱視(円柱状)の軸の変化が、視界が改善するまで引き起こされる。
【0078】
各評価を用いて、同じ成形コンタクトレンズを継続するか否か、または新しいコンタクトレンズが使用されるべきか否かの判断がなされる。さらに、成形コンタクトレンズと一緒に使用される薬学的組成物に関して、同じ判断がなされる必要がある。
【0079】
本発明の方法の別の重要な局面は、角膜の屈折力を変化させて、任意の屈折矯正手術または屈折異常を矯正する他の技術の結果を改善するのに本発明の方法が使用され得る点である。屈折矯正手術を最近、受けた患者において、角膜の屈折力が、調整され得るか、または改善され得る。上記されるように、ほぼ全ての屈折矯正手術には、患者が必要とする視界に到達するために矯正され得るか、または改善され得る残りの屈折異常が存在したままである。屈折矯正手術後の最初の4週間(これは、角膜に受けた傷が完全に治癒するために適切な時間である)の間に、角膜の屈折力の変化が引き起こされ得る。特定の実施形態において、本発明の処置は、外科手術後、24時間、48時間、73時間、または1週間にて開始される。成形コンタクトレンズによって生じた角膜上の外圧は、角膜の前面の曲率半径を変化させて、患者の視界を改善し、そして屈折矯正手術後に残された任意の屈折異常を調整するか、または減少させる。屈折において残った任意の欠陥が、本発明の技術を使用して矯正される得ることに起因して、屈折矯正手術は、本発明の技術によって補完される。特定の場合において、本発明の技術は、屈折矯正手術に対する必須の補完となる。
【0080】
図2において、シュツルム円錐体は、数学的に示すと、球面円柱レンズ(例えば、ヒトの眼における角膜)によって形成される、より小さい錯乱円を示し、これは、全ての光線が交差する点であることを示す。シュツルム円錐体は、レンズがガラスまたはプラスチックで作製される場合に、球面円柱レンズを、滑らかかつ均一な表面として考える。
【0081】
眼科医は、老眼の矯正に対する間違った解決策として複性近視性乱視を参照し続ける。なぜなら、眼科医は、網膜レベルで2つの像を生じており、したがって患者は、引き起こされる近視および乱視によって良好にものを見られないと考えるからである。眼科医および検眼医はまた、シュツルム円錐体およびより小さい錯乱円における2つの平面の基準での測定を行う。しかし、このような解釈は、本発明のシステムの利点の1つに関する異なる方法でなされるべきである。網膜レベルで任意の像を形成する光線は、角膜の小さい中心部、および中心の光線に近い光線(いわゆる度数軸(power axis))のみを含む、頂点または軸性の軸の測定を検討することからなるパラ軸性光学と解釈され得、そして乱視および近視のような屈折異常を除く像における収差を予測できない。パラ軸性光学の計算は、行うのが比較的容易であり、そして筆算か、または電卓か、またはコンピューターによって行われ得る。また、この計算は、幾何光学に基づいて行われ、これは、光を波として考えずに、むしろ光の伝達を線(すなわち、一定の屈折率を有する均一な媒体中の直線)として考えるという制限を有する。幾何光学の計算方法は、この線を追跡する工程からなり、そして代表的に、このような計算を実行するためにプログラムされたコンピューターを使用する工程を包含する。最も重要であり、有用であり、そして基本的である理論は、光学および物理学を組み込む理論である。このような理論は、光が波であるという事実を考慮する。この理論は、この波の干渉、および回折(この波が、異なる半径、厚さ、および/または屈折率の表面(例えば、角膜、レンズおよび眼の他の要素)を横切る場合)を予測する。このアプローチを使用する光学の計算は、より難解である。それにもかかわらず、このアプローチは、網膜の凹凸、ならびに介在する各要素の半径ならびに厚さの違いおよびそれぞれ単独の眼における屈折率の違いを、まだ完全に計算しない。したがって、この計算もまた、完全ではない。
【0082】
本発明の技術に関して、上記の不利益は、本発明のシステムが、特定の患者の視覚的記憶および大脳による調節、ならびに網膜における点像分布関数(PSF)を考慮する点に起因して、最小化されても排除されてもよい。図3の等間隔の組織分布地図(Rabinowitzら、Color Atlas of Corneal Topography,Interpreting Videokeratography,Igaku−shoin Medical Publishers,Inc.,65ページ;本明細書中に参考として援用される)に示されるように、角膜の前面および後面の両方は、可能な限り最も明るくなるように小さい錯乱円を使用することのみが可能である凹凸のある表面を有する。本発明のシステムを介して角膜の前面はより均一になる。角膜の前面をより均一にし、そして角膜の屈折力に変化を起こすことにおいて、本発明のシステムは、近見視力および遠方視力の両方についての患者の視覚的必要性および視覚的記憶によって導かれる。
【0083】
上述されるように、角膜の全表面は、その曲率半径および厚さが異なる。より小さい錯乱円および網膜における点像分布関数は、代表的に計算されるものより明確ではない。特定の個体が、以前に眼鏡またはコンタクトレンズを必要としない理由は、単純にそれらの屈折異常が非常に低い(例えば、0.690ジオプトリの近視および0.712ジオプトリの乱視(実際の測定値は、0.50Dの近視および0.75Dの乱視である))という事実に起因する。視覚的記憶および眼と脳に関する運動系を含む大脳による調節を有する脳は、屈折における適切な焦点または欠陥の適切な調節を可能にする眼の筋肉および領域によって、これらの小さな屈折の欠陥を補い得る。
【0084】
ヒトの眼の網膜中に見出される、より小さい錯乱円は、完全に均一な円に該当せず、そしてその円周において球形ではない。さらに、角膜の解剖学的な凹凸は、計算不可能な計り知れない数の、非常に小さいが異なる焦点を生じる。眼科医および検眼医によって理解されるように、このことは、これらの小さい凹凸が、眼のそれぞれの解剖学的構造中に見出されることを理解するとき、さらに複雑にすらなる。
【0085】
代表的な、LASIK外科手術の間に角膜の円盤(corneal disk)が、持ち上げられ、そしてレーザー光線が適用されて、剥離を生じる点に注目すべきである。LASIK技術のような切断または支質の剥離を包含する他の外科手術技術において、角膜の円盤は、切除された支質の空間中に滑らされる。本発明の技術は、支質の滑りの使用をなす。眼に投与される薬学的組成物は、支質の滑りを可能にするか、または好ましくはそれを増強させ、この滑りは、成形コンタクトレンズによって加えられた圧力による角膜の傾斜付けまたは平坦化を可能にする。本発明の技術が、屈折矯正手術後に使用される場合にのみ、この支質の滑りが観察され得る。この支質の滑りは、角膜切除の全表面において形成され、たった10分の1ミクロンまたは数ミクロンが、その外科手術によって残された残りの屈折の欠陥を矯正するのに必要とされる。本発明のシステムは、視界が、例えば、122.5°の軸を有する0.567Dの近視性の球状でありかつ0.682Dの近視性単乱視である両眼に対する最適条件に到達することを可能にする。
【0086】
角膜の円盤は、角膜の前面の曲率半径を平坦化する工程によって近視をさらに矯正するために周辺に向かって動かされるか、または角膜の前面の曲率半径を傾斜付けする工程によって、遠視または老眼を改善するために角膜の中心に向かって動かされる(「Cirugia Refractiva de la Cornea」,Instituto Barraquer de America,Bogota,Colombia,1999,p.171(これは、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。支質の滑りについての式は、「Cirugia Refractiva de la Cornea」,Instituto Barraquer de America,Bogota,Colombia,1999,p.171に既に展開される。
【0087】
(他の実施形態)
前述は、本発明の特定の非限定的な好ましい実施形態の記載である。当業者は、添付の特許請求の範囲に定義されるように、この記載についての種々の変更および改変が、本発明の精神または範囲から逸脱せずに行われ得る点を理解する。
【0088】
(付表A)
【0089】
【化1】

【0090】
【化2】

【0091】
【化3】

【0092】
【化4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−78659(P2013−78659A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−18172(P2013−18172)
【出願日】平成25年2月1日(2013.2.1)
【分割の表示】特願2011−102443(P2011−102443)の分割
【原出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(506202098)オシオ コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】