説明

眼鏡型無線通信機

【課題】折り畳み時において、アンテナ特性がよい眼鏡型無線通信機を実現する。
【解決手段】ユーザの頭部に装着される眼鏡型無線通信機1は、左右の接眼部11、テンプル14、無線通信を行うためのアンテナ100および接眼部11とテンプル14とを折り畳むための蝶番17を備え、折り畳まれた状態において、テンプル14が接眼部11の外周に沿った外周領域に配置されたアンテナ100から離れる方向に湾曲する形状を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡型無線通信機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3Dテレビを視聴するための3D眼鏡、3Dゲームを楽しむための3D眼鏡及び眼鏡型のヘッドマウントディスプレイ等、眼鏡の体裁を有する電子機器が開発されている。これらの電子機器は、アンテナを備え、無線通信を行う場合がある。
【0003】
従来、アンテナを備えた眼鏡型の無線通信機としては、例えば、特許文献1に記載のような、眼鏡のフレームにアンテナを配置したものが知られている。例えば、特許文献1には、フレームにアンテナを配置した可変焦点眼鏡が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−214545号公報(2002年7月31日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術に係る眼鏡型の無線通信機では、当該無線通信機を閉じた(折り畳んだ)際、アンテナ特性が劣化する場合がある。
【0006】
図9は、従来技術に係る無線通信機におけるアンテナの配置の一例を示す図であり、(a)は無線通信機を開いた(第1のアンテナ91と第2のアンテナ92とを離した)状態(開時)における斜視図であり、(b)は(a)の無線通信機の上面図である。また、図9(c)は無線通信機を折り畳んだ(第1のアンテナ91と第2のアンテナ92とを近接させた)状態(折り畳み時)における斜視図であり、(d)は(c)の無線通信機の上面図である。
【0007】
図9(a)および(b)に示す無線通信機において、第1のアンテナ91と第2のアンテナ92とは給電線路93によって接続されている。この無線通信機を、図9(c)および(d)に示すように、給電線路93を中心に第1のアンテナ91と第2のアンテナ92とが近接するように折り畳み、無線通信を行うと、当該無線通信機の第1のアンテナ91と第2のアンテナ92とが容量結合する。
【0008】
折り畳み時に第1のアンテナ91と第2のアンテナ92とが容量結合することにより、第1のアンテナ91および第2のアンテナ91のアンテナ特性が開時より低い周波数帯域または高い周波数帯域にずれてしまう(シフトする)ことがある。これにより、折り畳み時では、当該アンテナの使用周波数帯域において良好な特性を得ることができなくなり、アンテナ特性の劣化を引き起こすという問題がある。
【0009】
この問題について、図10を参照して更に説明する。図10は、従来技術に係る眼鏡型の無線通信機におけるアンテナの配置の一例を示す。図10(a)は、眼鏡型無線通信機を開いた(テンプル14とリム12とを離した)状態(開時)における眼鏡型無線通信機の側面図であり、(b)はその状態における眼鏡型無線通信機の上面図である。また、図10(c)は、眼鏡型無線通信機を折り畳んだ(テンプル14とリム12とを近接させた)状態(折り畳み時)における眼鏡型無線通信機の側面図であり、(d)はその状態における眼鏡型無線通信機の上面図である。なお、図10(b)および図10(d)において
、リム12は説明の便宜上、省略する。図10(b)および(d)に示すように、図9の無線通信機と同様に、眼鏡型無線通信機は、第1のアンテナ94と第2のアンテナ95とを備えている。第1のアンテナ94は、右側のリム12に配置され、第2のアンテナ95は右側のテンプル14に配置されている。また、第1のアンテナ94と第2のアンテナ95とは智16や蝶番17を介して、電気的に接続している。なお、智16や蝶番17は、第1のアンテナ94と第2のアンテナ95とを電気的に接続していなくてもよい。また、第1のアンテナ94と第2のアンテナ95とは、少なくとも一方を備えていればよい。このとき、第1のアンテナ94または第2のアンテナ95が配置されていない側は、金属等の導電体で形成されることが好ましい。
【0010】
図10(c)および(d)に示すように、眼鏡型無線通信機を折り畳んだ状態で無線通信を行うと、図9の無線通信機と同様に、第1のアンテナ94と第2のアンテナ95とが干渉し合い、容量結合する。よって、第1のアンテナ94および第2のアンテナ95のアンテナ特性が開時より低い周波数帯域または高い周波数帯域にずれてしまい、当該アンテナの使用周波数帯域において良好な特性を得ることができなくなる。
【0011】
このアンテナ特性の劣化について、更に、図10(d)を用いて説明する。図10(d)のように、第1のアンテナ94と第2のアンテナ95とが直線で平行である場合における容量結合量は、容量係数Cと電圧との積に比例する。ただし、第1のアンテナ94と第2のアンテナ95との間の電界は、一様であるとする。容量係数Cは、折り畳み時の第1のアンテナ94と第2のアンテナ95との重畳部分の長さ(X軸方向の重畳量)をL、第1のアンテナ94と、第2のアンテナ95との重畳部分の幅(Z軸方向の重畳量)をA、テンプル14とリム12との距離をD、真空における誘電率をε0としたとき、次式で表すことができる。
【0012】
C=ε0×L×A/D・・・(1)
なお、式(1)において、テンプル14とリム12との距離Dは、智16の厚み(Y軸方向の長さ)Tと同じになるため、D=Tが成り立つ。また、折り畳み時のモダン15とリム12との距離Wは、智16の厚みにより決定するため、W=Tが成り立つ。
【0013】
ここで、電圧は定数であるため、式(1)で示した容量係数Cの変化に従って、第1のアンテナ94と第2のアンテナ95との容量結合量は変化する。よって、容量係数Cが増加すると第1のアンテナ94および第2のアンテナ95の容量結合量は増加する。容量結合量が増加すると、第1のアンテナ94および第2のアンテナ95のアンテナ特性が開時より低い周波数帯域または高い周波数帯域にシフトする。これにより、当該アンテナの使用周波数帯域において良好な特性を得ることができなくなる。
【0014】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、折り畳み時において、アンテナ特性がよい眼鏡型無線通信機を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係る眼鏡型無線通信機は、ユーザの頭部に装着される眼鏡型無線通信機であって、左右の接眼部、前記ユーザの耳に掛着されるテンプル、無線通信を行うためのアンテナ、および前記接眼部と前記テンプルとを折り畳むための蝶番を備えており、前記接眼部の外周に沿った外周領域および前記テンプルには共に前記アンテナが配置されているか、または、前記接眼部の外周に沿った外周領域および前記テンプルの一方にはアンテナが配置されており他方には導電体が配置されており、前記テンプルが、前記接眼部と前記テンプルとが折り畳まれた状態において、前記外周領域に配置された前記アンテナまたは前記導電体から離れる方向に湾曲する形状を有していることを特徴としている。
【0016】
前記眼鏡型無線通信機は、アンテナを備え、前記接眼部の外周に沿った外周領域およびテンプルに当該アンテナまたは導電体が配置されているため、接眼部とテンプルとが折り畳まれた状態で、無線通信を行うと、当該接眼部の外周に沿った外周領域のアンテナまたは前記導電体とテンプルとが干渉しあい、容量結合する。
【0017】
しかし、上記構成によれば、テンプルは、外周領域から離れるように湾曲する形状に形成されているため、湾曲していない場合と比べ、テンプルと外周領域との距離を長くすることができる。そのため、容量結合量を小さくすることができ、接眼部とテンプルとを離した状態(折り畳まれていない状態)より低い周波数または高い周波数へのアンテナ特性のシフト量を小さくすることができる。したがって、接眼部とテンプルとが折り畳まれた状態において、当該眼鏡型無線通信機のアンテナの使用周波数帯におけるアンテナ特性の劣化を防ぐことができる。
【0018】
また、本発明に係る眼鏡型無線通信機は、前記テンプルと、前記外周領域に配置された前記アンテナまたは前記導電体の各点との間の平均距離の方が、前記蝶番と、前記外周領域に配置された前記アンテナまたは前記導電体との間の距離よりも長いことが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、前記テンプルと外周領域に配置された前記アンテナまたは前記導電体の各点との間の平均距離が、前記蝶番と前記外周領域に配置された前記アンテナまたは前記導電体との間の距離と同じ距離になるように前記テンプルが配置されている場合に比べ、前記テンプルと前記外周領域に配置されたアンテナまたは前記導電体との容量結合量を、小さくすることができる。よって、接眼部とテンプルとが折り畳まれた状態において、当該眼鏡型無線通信機のアンテナの使用周波数帯におけるアンテナ特性の劣化をより好適に防ぐことができる。
【0020】
また、本発明に係る眼鏡型無線通信機における前記テンプルは、前記接眼部と前記テンプルとが折り畳まれた状態において、前記接眼部から前記ユーザに向かう方向に湾曲する形状を有していることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、前記接眼部と前記テンプルとが折り畳まれた状態において、前記テンプルと前記接眼部の外周に沿った外周領域に配置されたアンテナまたは前記導電体との距離を長くすることができる。よって、接眼部とテンプルとが折り畳まれた状態において、前記テンプルと前記外周領域に配置されたアンテナまたは前記導電体との容量結合量を小さくすることができ、当該眼鏡型無線通信機のアンテナの使用周波数帯におけるアンテナ特性の劣化をより好適に防ぐことができる。
【0022】
また、本発明に係る眼鏡型無線通信機における前記外周領域には、前記アンテナまたは前記導電体が配置されていない領域があり、前記テンプルは、前記接眼部と前記テンプルとが折り畳まれた状態において、前記外周領域における前記アンテナまたは前記導電体が配置されている領域から、前記アンテナまたは前記導電体が配置されていない領域に向かう方向に湾曲する形状を有していてもよい。
【0023】
このように、前記テンプルは、前記接眼部と前記テンプルとが折り畳まれた状態において、記外周領域における前記アンテナまたは前記導電体が配置されている領域から、離れる方向に形成されることにより、当該眼鏡型無線通信機のアンテナの使用周波数帯におけるアンテナ特性の劣化を好適に防ぐことができる。
【0024】
また、本発明に係る眼鏡型無線通信機は、前記接眼部と前記テンプルとが折り畳まれた状態において、前記蝶番と、前記外周領域に配置された前記アンテナまたは前記導電体と
の間の距離の方が、前記テンプルの前記蝶番とは反対側の端部と、前記外周領域における前記アンテナまたは前記導電体との間の距離よりも短くてもよいし、同じか長くてもよい。
【0025】
このように、前記テンプルの前記蝶番とは反対側の端部がどのような位置に形成されていても、外周領域に配置された前記アンテナまたは前記導電体から離れる方向に湾曲する形状を有するように前記テンプルを形成することにより、より好適にアンテナ特性の劣化を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る眼鏡型無線通信機は、ユーザの頭部に装着される眼鏡型無線通信機であって、左右の接眼部、前記ユーザの耳に掛着されるテンプル、無線通信を行うためのアンテナ、および、前記接眼部と前記テンプルとを折り畳むための蝶番を備えており、前記接眼部の外周に沿った外周領域および前記テンプルには共に前記アンテナが配置されているか、または、前記接眼部の外周に沿った外周領域および前記テンプルの一方にはアンテナが配置されており他方には導電体が配置されており、前記テンプルが、前記接眼部と前記テンプルとが折り畳まれた状態において、前記外周領域に配置された前記アンテナまたは前記導電体から離れる方向に湾曲する形状を有していることを特徴としている。
【0027】
したがって、接眼部とテンプルとが折り畳まれた状態において、当該眼鏡型無線通信機のアンテナの使用周波数帯におけるアンテナ特性の劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】眼鏡型無線通信機の構成の一例を示す上面図である。
【図2】(a)は眼鏡型無線通信機の開時における斜視図であり、(b)は眼鏡型無線通信機の折り畳み時における斜視図である。
【図3】眼鏡型無線通信機の概観図である。
【図4】眼鏡型無線通信機のXY平面図である。
【図5】眼鏡型無線通信機の構成の一変形例を示す図であり、(a)は開時における斜視図であり、(b)は折り畳み時における斜視図であり、(c)は折り畳み時における上面図である。
【図6】眼鏡型無線通信機の構成の他の変形例を示す上面図である。
【図7】眼鏡型無線通信機の構成の他の変形例を示す上面図である。
【図8】眼鏡型無線通信機の構成の他の変形例を示す図であり、(a)は開時における正面斜視図であり、(b)は開時における背面斜視図であり、(c)は折り畳み時におけるユーザ側から見た図である。
【図9】従来の無線通信機の構成の一例を示す図であり、(a)は開時における斜視図であり、(b)は開時における上面図であり、(c)は折り畳み時における斜視図であり、(d)は折り畳み時における上面図である。
【図10】従来の眼鏡型無線通信機の構成の一例を示す図であり、(a)は、開時における側面図であり、(b)は開時における上面図であり、(c)は折り畳み時における側面図であり、(d)は折り畳み時における上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明に係る眼鏡型無線通信機は、眼鏡の体裁を有し、ユーザの頭部に装着されるものである。また、本発明に係る眼鏡型無線通信機は、無線通信を行うものであれば、特に限定されず、3D眼鏡、ヘッドマウントディスプレイ、ヘッドセット、ラジオ受信機、個人識別装置等様々な用途に適用し得る。
【0030】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態(実施形態1)について、図1から図7を参照して説明すれば、以下のとおりである。
【0031】
(眼鏡型無線通信機1の概略)
まず、図3を参照して、本実施形態に係る眼鏡型無線通信機1の概略について説明する。図3は、本実施形態における眼鏡型無線通信機1の概観図である。図3に示すように、眼鏡型無線通信機1は、眼鏡型の形状を有しており、接眼部11、リム12、ブリッジ13、テンプル14、モダン15、智16、蝶番17、パッド18およびクリングス19などを有する。
【0032】
接眼部11は、左右の目の前に配置される光学部材であり、例えば、眼鏡型のレンズであり得、LCD(Liquid Crystal Display)、網膜操作ディスプレイなど、画像を表示するためのディスプレイに組み込まれているものであってもよい。
【0033】
リム12は、接眼部11の周りを囲んで接眼部11を保持する保持部材である。リム12は、必ずしも接眼部11の周りの全てを保護している必要はなく、接眼部11の略半分、または一部のみを保護するものであってもよい。また、眼鏡型無線通信機1は、リム12を備えていなくともよい。
【0034】
ブリッジ13は、左右の接眼部11を連結するための連結部材である。ブリッジ13は、リム12を介して、または介さずに、左右の接眼部11を所定の位置関係にて連結する。
【0035】
テンプル14は、耳掛けを含んだ部材であり、ツルとも称される。また、テンプル14において、ユーザの耳に接する部分を、モダン15と称される被覆部材が被覆している場合もある。
【0036】
智16は、接眼部11とテンプル14とを接続するための接続部材である。智16は、接眼部11の外周に沿った領域に設けられており、リム12と一体化されていてもよいし、独立して接眼部に結合していてもよい。
【0037】
蝶番17は、接眼部11等に対してテンプル14を折り畳み可能にするための開閉部材であり、智16とテンプル14との間に設けられている。
【0038】
パッド18は、ユーザの鼻に接する部材である。
【0039】
クリングス19は、パッド18と接眼部11とを連結する連結部材である。クリングス19は、リム12を介して、または介さずに、パッド18と接眼部11とを所定の位置関係にて連結する。また、眼鏡型無線通信機1は、クリングス19を備えていなくともよく、その場合、パッド18と接眼部11またはリム12とは直接結合され得る。
【0040】
なお、各部は、例えば、一般の眼鏡と同じ材料で構成してもよいが、これに限定されない。例えば、リム12、ブリッジ13、及び、テンプル14の材料としては、例えば、金属(例えば、チタン、チタン合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、ニッケルクロム合金、及び、ステンレスなど)、プラスチック(例えば、エポキシ樹脂、セルロイド、アセテート、及び、ポリアミドなど)等を用いることができるが、これに限定されない。
【0041】
(眼鏡型無線通信機1の構成)
次に、眼鏡型無線通信機1の構成について、図1および図2を参照して説明する。図1
は、眼鏡型無線通信機1を折り畳んだ(テンプル14と接眼部11とを近接させた)状態(折り畳み時)の眼鏡型無線通信機1の上面図であり、図2(a)は、眼鏡型無線通信機1を開いた(テンプル14と接眼部11とを離した)状態(開時)の眼鏡型無線通信機1を示す斜視図であり、(b)は、眼鏡型無線通信機1を折り畳み時の眼鏡型無線通信機1を示す斜視図である。なお、図1および図2において、説明の便宜上、左側のテンプル14は省略している。また、図1および図2では、リム12を含まない構成の眼鏡型無線通信機について説明するが、本実施形態はこれに限定されず、リム12を含む構成であってもよい。
【0042】
眼鏡型無線通信機1は、図2に示すように、無線通信を行うためのアンテナ100とアンテナ110とを有している。図2に示すように、アンテナ100は接眼部11の上部であって、接眼部11の外周に沿った外周領域に配置されている。また、アンテナ110は、テンプル14に配置されている。智16や蝶番17は、金属等の導電体によって構成され、アンテナ100およびアンテナ110を電気的に接続している。なお、接眼部11の外周とは、ユーザの眼に対向する面における外周を指す。なお、智16や蝶番17は、アンテナ100とアンテナ110とを電気的に接続していなくてもよい。
【0043】
テンプル14は、図1に示すように折り畳み時、アンテナ100から離れるように、テンプル14の智16側の端部(智16との接続部分、蝶番17)から、テンプル14の智16側とは反対側の端部(モダン15の蝶番17とは反対側の端部)にかけて、円弧状に湾曲する形状に形成されている。具体的には、図1に示すように、モダン15の蝶番17とは反対側の端部を端部a、テンプル14の智16側の端部を端部bとし、端部aと端部bとをつなぐ直線を線分abとするとき、テンプル14は線分abよりY軸正方向に膨らむように形成されている。つまり、接眼部11からユーザ側(Y軸正方向側)に向かって、膨らむように形成されている。よって、アンテナ100と線分abとの距離をDとし、アンテナ100とテンプル14における接眼部11から最も離れた位置との距離をFとすると、D<Fが成り立つ。
【0044】
また、眼鏡型無線通信機1の智16は、図1に示すように厚み(Y軸方向の長さ)がTである。折り畳み時のモダン15と接眼部11との距離Wは、智16の厚みにより決定するため、W=Tとなる。なお、智16の厚みTは、アンテナ100と線分abとの距離Dと同じになるため、T=Dである。
【0045】
(眼鏡型無線通信機1の容量係数)
次に、眼鏡型無線通信機1の容量係数について、図4を参照して説明を行う。図4は、図1の眼鏡型無線通信機1におけるXY平面図である。なお、図4において、モダン15は説明の便宜上、省略している。
【0046】
眼鏡型無線通信機1の電界は、図4の矢印で示すようにテンプル14の端部では小さく、テンプル14の略中央部では、大きくなる。つまり、眼鏡型無線通信機1の電界は一様ではない。そのため、アンテナ100とアンテナ110との容量係数Cを上述した式(1)で求めることができない。
【0047】
よって、図4に示すように、アンテナ110(テンプル14)とアンテナ100(接眼部11)各点との間の平均距離を平均距離D’とし、この平均距離D’を求める。
【0048】
テンプル14の形状が、y=f(x)であるとすると、智16、テンプル14およびアンテナ100で囲まれた領域の面積Sは、次式で表すことができる。
【0049】
【数1】

【0050】
なお、上記式において、Lは、眼鏡型無線通信機1の折り畳み時におけるアンテナ100とアンテナ110との重畳部分の長さ(X軸方向の重畳量)を表す。
【0051】
よって、平均距離D’は、D’=S/Lで表すことができる。ここで、アンテナ100とアンテナ110との容量係数Cを小さくするために、平均距離D’は、距離Dより長くする必要がある。よって、D’>Dが成り立つ。つまり、眼鏡型無線通信機1は、D’>Dが成り立つような形状にテンプル14を形成すればよい。
【0052】
このようにテンプル14を形成することにより、眼鏡型無線通信機1の折り畳み時における容量係数Cを小さくすることができ、眼鏡型無線通信機1の折り畳み時におけるアンテナ間の容量結合量を低減することができる。また、アンテナ間の容量結合量を低減することにより、開時より低い周波数または高い周波数へのアンテナ特性のシフト量を小さくすることができる。したがって、眼鏡型無線通信機1の折り畳み時、アンテナ100およびアンテナ110の使用周波数帯におけるアンテナ特性の劣化を防ぐことができる。
【0053】
なお、アンテナ100は図2に示すように、接眼部11の上部に配置されていることを例に説明を行ったが、アンテナ100の配置はこれに限定されない。アンテナ100は、例えば、接眼部11の下部に配置されていてもよいし、接眼部11におけるユーザの眼に対向する面(レンズ面)上に設けられていてもよい。また、アンテナ100は、接眼部11におけるユーザの眼に対向する面の反対側の面(外側のレンズ面)上に設けられていてもよい。なお、レンズ面上または外側のレンズ面上にアンテナ100が配置される場合、当該アンテナ100は、透明な導体や半透過性材料等を用いることが好ましい。
また、接眼部11の外周をリムが囲んでいる場合、アンテナ100は、接眼部11とリム12との間に設けられていてもよいし、リム12の内部または外部に設けられていてもよい。このように、本実施形態において、アンテナ100は、接眼部11の外周に沿って配置されていればよく、設置される先の部材および面は特に限定されない。
【0054】
また、図1および図2における眼鏡型無線通信機1は、アンテナ100とアンテナ110とを備えていることを例に説明を行ったが、眼鏡型無線通信機1の構成はこれに限定されない。つまり、アンテナ100とアンテナ110とは、少なくとも一方を備えていればよい。このとき、アンテナ100またはアンテナ110が配置されていない側は、金属等の導電体で形成されることが好ましい。
【0055】
つまり、アンテナ100がリム12またはレンズ上に配置されている場合、テンプル14は、導電体で形成されていることが好ましい。また、アンテナ110がテンプル14に形成されている場合、眼鏡型無線通信機1は導電体で形成されたリム12を備えることが好ましい。このとき、智16や蝶番17は、アンテナと導電体とを電気的に接続してもよいし、電気的に接続していなくてもよい。
【0056】
このように、テンプル14およびリム12(接眼部11の外周)のどちらか一方にアンテナが備えられ、他方が導電体で形成されることにより、アンテナが配置されていない方は、アンテナのアンテナグランドとして動作する。このような眼鏡型無線通信機1のアンテナとアンテナグランドとを近接させた場合、アンテナ特性が劣化してしまう虞があるため、上述したようにD’>Dを満たすようにテンプル14を形成することが好ましい。
【0057】
これにより、眼鏡型無線通信機1の折り畳み時における容量係数Cを小さくすることができ、眼鏡型無線通信機1の折り畳み時におけるアンテナ間の容量結合量を低減することができる。また、アンテナ間の容量結合量を低減することにより、開時より低い周波数または高い周波数へのアンテナ特性のシフト量を小さくすることができる。したがって、眼鏡型無線通信機1の折り畳み時、アンテナ100およびアンテナ110の使用周波数帯におけるアンテナ特性の劣化を防ぐことができる。
【0058】
(変形例1)
上述した図1の眼鏡型無線通信機1は、テンプル14の部分が円弧状に湾曲していることを例に説明を行ったが、テンプル14の形状は、これに限定されず、例えば折れ曲がった形状であってもよい。以下、テンプル14が折れ曲がった形状の眼鏡型無線通信機5について、図5を参照して説明を行う。
【0059】
図5は、本実施形態に係る眼鏡型無線通信機5の構成を示す図であり、(a)は開時における斜視図であり、(b)は折り畳み時における斜視図であり、(c)は折り畳み時における上面図である。なお、接眼部11、リム12、ブリッジ13、モダン15、智16、蝶番17、パッド18、及び、クリングス19といった部材は、図3と同様の構成を有する。また、図1に示した眼鏡型無線通信機1と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。なお、図5において、説明の便宜上、左側のテンプル14は省略している。また、図5では、リム12を含まない構成の眼鏡型無線通信機について説明するが、本実施形態はこれに限定されず、リム12を含む構成であってもよい。
【0060】
図5に示すように、眼鏡型無線通信機5は、無線通信を行うためのアンテナ100とアンテナ110とを有している。アンテナ100は接眼部11の上部であって、接眼部11の外周に沿った外周領域に配置されている。また、アンテナ110は、テンプル14’に配置されている。智16は、金属等の導電体によって構成され、アンテナ100およびアンテナ110を電気的に接続している。なお、智16や蝶番17は、アンテナ100とアンテナ110とを電気的に接続していなくてもよい。
【0061】
テンプル14’は、図5(c)に示すように折り畳み時、アンテナ100から離れるように、テンプル14’の智16側の端部(智16との接続部分、蝶番17)から、テンプル14’の智16側とは反対側の端部(モダン15の蝶番17とは反対側の端部)にかけて、折れ曲がった形状に形成されている。具体的には、モダン15の蝶番17とは反対側の端部を端部a、テンプル14’の智16側の端部を端部bとし、端部aと端部bとをつなぐ直線を線分abとするとき、テンプル14’は線分abよりY軸正方向に山ができるように折れ曲がって形成されている。よって、アンテナ100と線分abとの距離をDとし、接眼部11とテンプル14’におけるアンテナ100から最も離れた位置との距離をFとすると、D<Fが成り立つ。
【0062】
このようにテンプル14’を形成することにより、眼鏡型無線通信機5の折り畳み時における容量係数Cを小さくすることができ、眼鏡型無線通信機5の折り畳み時におけるアンテナ間の容量結合量を低減することができる。また、アンテナ間の容量結合量を低減することにより、開時より低い周波数または高い周波数へのアンテナ特性のシフト量を小さくすることができる。したがって、眼鏡型無線通信機5の折り畳み時、アンテナ100およびアンテナ110の使用周波数帯におけるアンテナ特性の劣化を防ぐことができる。
【0063】
なお、テンプル14およびテンプル14’の形状は、図1のような円弧状や図5のような折れ曲がった形に限定されず、アンテナ100(接眼部11の外周)と離れる方向に湾
曲した形状であれば、どのような形状でもよい。
【0064】
(変形例2)
上述した図1の眼鏡型無線通信機1は、折り畳み時のモダン15とアンテナ100との距離Wが、智16の厚みTと同じであることを例に説明を行ったが、モダン15とアンテナ100との距離はこれに限定されない。モダン15とアンテナ100との距離Wは、智16の厚みTより小さくてもよい(W<T)。
【0065】
図6は、折り畳み時における眼鏡型無線通信機6の構成を示す上面図である。なお、接眼部11、リム12、ブリッジ13、テンプル14、モダン15、智16、蝶番17、パッド18、及び、クリングス19といった部材は、図3と同様の構成を有する。また、図1に示した眼鏡型無線通信機1と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。また、図6において、説明の便宜上、左側のテンプル14は省略している。
【0066】
図6に示すように、眼鏡型無線通信機6は、無線通信を行うためのアンテナ100とアンテナ110とを有している。アンテナ100は接眼部11の上部であって、接眼部11の外周に沿った外周領域に配置されている。また、アンテナ110は、テンプル14に配置されている。智16は、金属等の導電体によって構成され、アンテナ100およびアンテナ110を電気的に接続している。なお、智16や蝶番17は、アンテナ100とアンテナ110とを電気的に接続していなくてもよい。
【0067】
テンプル14は、図6に示すように折り畳み時、アンテナ100から離れるように円弧状に湾曲する形状に形成されている。テンプル14の智16側の端部bを通り、アンテナ100と平行な直線を直線abとするとき、テンプル14は直線abよりY軸正方向に膨らむように形成されている。つまり、アンテナ100と直線abとの距離をDとし、アンテナ100とテンプル14における接眼部11から最も離れた位置との距離をFとすると、D<Fが成り立つ。なお、距離Dは、智16の厚みTと等しいため、D=Tが成り立つ。
【0068】
また、モダン15の智16側とは反対側の端部は、智16の厚みよりアンテナ100側に近くなるように形成されている。具体的には、折り畳み時のモダン15とアンテナ100との距離をWとするとき、W<Tを満たすように形成されている。
【0069】
ここで、アンテナ100とアンテナ110との距離、つまり、接眼部11の外周領域の各点とテンプル14との間の平均距離をD’とすると、図4を用いて説明したとおり、平均距離D’は、D’=S/Lで表すことができる。ここで、Sは図4に示すように、智16、テンプル14およびアンテナ100で囲まれた領域の面積であり、Lは、眼鏡型無線通信機6の折り畳み時におけるアンテナ100とアンテナ110との重畳部分の長さ(X軸方向の重畳量)である。
【0070】
アンテナ100とアンテナ110との容量係数Cを小さくするために、平均距離D’は、距離Dより長くする必要がある。よって、D’>Dが成り立つ。つまり、眼鏡型無線通信機6は、D’>Dが成り立つような形状にテンプル14を形成すればよい。
【0071】
このように、モダン15(テンプル14)とアンテナ100との距離が智16の厚みより小さくなるように構成された眼鏡型無線通信機6であっても、アンテナ100とテンプル14との距離の平均距離が、テンプル14の智16側の端部から接眼部11までの距離(智16の厚さ)より長くなるようにテンプル14を形成することにより、眼鏡型無線通信機6の折り畳み時における容量係数Cを小さくすることができる。よって、眼鏡型無線
通信機6の折り畳み時、アンテナ100およびアンテナ110の使用周波数帯におけるアンテナ特性の劣化を防ぐことができる。
【0072】
(変形例3)
上述した図6の眼鏡型無線通信機6は、折り畳み時のモダン15とアンテナ100との距離Wが、智16の厚みTより小さいことを例に説明を行ったが、モダン15とアンテナ100との距離Wは、智16の厚みTより長くてもよい(W>T)。
【0073】
図7は、折り畳み時における眼鏡型無線通信機7の構成を示す上面図である。なお、接眼部11、リム12、ブリッジ13、テンプル14、モダン15、智16、蝶番17、パッド18、及び、クリングス19といった部材は、図3と同様の構成を有する。また、図1から図3に示した眼鏡型無線通信機1と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。また、図7において、説明の便宜上、左側のテンプル14は省略している。
【0074】
図7に示すように、眼鏡型無線通信機7は、無線通信を行うためのアンテナ100とアンテナ110とを有している。アンテナ100は接眼部11の上部であって、接眼部11の外周に沿った外周領域に配置されている。また、アンテナ110は、テンプル14に配置されている。智16は、金属等の導電体によって構成され、アンテナ100およびアンテナ110を電気的に接続している。なお、智16や蝶番17は、アンテナ100とアンテナ110とを電気的に接続していなくてもよい。
【0075】
テンプル14は、図7に示すように折り畳み時、アンテナ100から離れるように円弧状に湾曲する形状に形成されている。テンプル14の智16側の端部bを通り、アンテナ100と平行な直線を直線abとするとき、テンプル14は直線abよりY軸正方向に膨らむように形成されている。つまり、アンテナ100と直線abとの距離をDとし、アンテナ100とテンプル14における接眼部11から最も離れた位置との距離をFとすると、D<Fが成り立つ。なお、距離Dは、智16の厚みTと等しいため、D=Tが成り立つ。
【0076】
また、モダン15の智16側とは反対側の端部は、智16の厚みより接眼部11側から離れるように形成されている。具体的には、折り畳み時のモダン15と接眼部11との距離をWとするとき、W>Tを満たすように形成されている。
【0077】
ここで、アンテナ100とアンテナ110との距離、つまり、接眼部11の外周領域の各点とテンプル14との間の平均距離をD’とすると、図4を用いて説明したとおり、平均距離D’は、D’=S/Lで表すことができる。ここで、Sは図4に示すように、智16、テンプル14およびアンテナ100で囲まれた領域の面積であり、Lは、眼鏡型無線通信機7の折り畳み時におけるアンテナ100とアンテナ110との重畳部分の長さ(X軸方向の重畳量)である。
【0078】
図7に示すように、形成された眼鏡型無線通信機7において、平均距離D’は、距離Dより長くなる。つまり、D’>Dが成り立つ。このように、モダン15(テンプル14)とアンテナ100との距離が智16の厚みより長くなるように構成された眼鏡型無線通信機7は、アンテナ100とテンプル14との距離の平均距離が、テンプル14の智16側の端部(蝶番17)から接眼部11までの距離(智16の厚さ)より長くなるようにテンプル14が形成されているため、眼鏡型無線通信機7の折り畳み時における容量係数Cを小さくすることができる。よって、眼鏡型無線通信機7の折り畳み時、アンテナ100およびアンテナ110の使用周波数帯におけるアンテナ特性の劣化を防ぐことができる。
【0079】
以上のように、本実施形態に係る眼鏡型無線通信機は、ユーザの頭部に装着される眼鏡型無線通信機であって、左右の接眼部11、ユーザの耳に掛着されるテンプル14、無線通信を行うためのアンテナ100または110、および、接眼部11とテンプル14とを折り畳むための蝶番17を備えている。ここで、蝶番17とは、テンプル14の智16側の端部にあり、接眼部11とテンプル14とを折り畳むための機構である。蝶番17は、導体で形成することで智16とテンプル14を電気的に接続することも可能である。接眼部11の外周に沿った外周領域(例えば、リム12)、および、テンプル14には、共にアンテナが配置されている(アンテナ100およびアンテナ110が配置されている)か、または接眼部11の外周に沿った外周領域およびテンプル14の一方にはアンテナ(アンテナ100またはアンテナ110)が配置されており、他方には導電体が配置されている。テンプル14は、接眼部11とテンプル14とが折り畳まれた状態において、外周領域に配置されたアンテナ100または導電体から離れる方向に湾曲する形状を有している。
【0080】
眼鏡型無線通信機は、アンテナを備え、接眼部11の外周に沿った外周領域およびテンプル14に当該アンテナまたは導電体が配置されているため、接眼部11とテンプル14とが折り畳まれた状態で、無線通信を行うと、接眼部11の外周に沿った外周領域に配置されたアンテナ100または導電体とテンプル14とが干渉しあい、容量結合する。
【0081】
しかし、上記構成によれば、テンプル14は、外周領域から離れるように湾曲する形状に形成されているため、湾曲していない場合と比べ、テンプル14と外周領域との距離を長くすることができる。そのため、容量結合量を小さくすることができ、接眼部11とテンプル14とを離した状態(折り畳まれていない状態)より低い周波数または高い周波数へのアンテナ特性のシフト量を小さくすることができる。したがって、接眼部11とテンプル14とが折り畳まれた状態において、当該眼鏡型無線通信機のアンテナの使用周波数帯におけるアンテナ特性の劣化を防ぐことができる。
【0082】
なお、本明細書において、湾曲とは、弓形に曲がることを指し、曲線状であっても、折線状であってもよい。
【0083】
また、本実施形態に係る眼鏡型無線通信機は、テンプル14と、外周領域に配置されたアンテナ100または前記導電体の各点との間の平均距離(平均距離D’)の方が、蝶番17(テンプル14の智16側の端部)と、前記外周領域に配置されたアンテナ100または前記導電体との間の距離Dよりも長い(D’>D)ことが好ましい。
【0084】
上記構成によれば、テンプル14と外周領域に配置されたアンテナ100または導電体の各点との間の平均距離が、蝶番17と外周領域に配置されたアンテナ100または導電体との間の距離と同じ距離になるように、テンプル14が配置されている場合(つまり、D’=Dとなるようにテンプル14が配置されている場合)に比べ、テンプル14と外周領域に配置されたアンテナ100または導電体との容量結合量を、小さくすることができる。よって、接眼部11とテンプルとが折り畳まれた状態において、当該眼鏡型無線通信機のアンテナの使用周波数帯におけるアンテナ特性の劣化をより好適に防ぐことができる。
【0085】
また、テンプル14は、接眼部11とテンプル14とが折り畳まれた状態において、接眼部11から前記ユーザに向かう方向に湾曲する形状を有していることが好ましい。
【0086】
上記構成によれば、接眼部11とテンプル14とが折り畳まれた状態において、テンプル14と接眼部11の外周に沿った外周領域に配置されたアンテナ100または導電体との距離を長くすることができる。よって、接眼部11とテンプル14とが折り畳まれた状
態において、テンプル14と外周領域に配置されたアンテナ100または導電体との容量結合量を小さくすることができ、当該眼鏡型無線通信機のアンテナの使用周波数帯におけるアンテナ特性の劣化をより好適に防ぐことができる。
【0087】
また、折り畳み時において、図7の眼鏡型無線通信機7のように蝶番17と、アンテナ100との間の距離Dの方が、テンプル14の蝶番17とは反対側の端部(図1においては、端部a)と、アンテナ100との間の距離Wよりも短くてもよいし、図1の眼鏡型無線通信機1のように、同じであってもよいし、図6の眼鏡型無線通信機6のように長くてもよい。
【0088】
このように、テンプル14の蝶番17とは反対側の端部がどのような位置に形成されていても、外周領域に配置されたアンテナ100から離れる方向に湾曲する形状を有するようにテンプル14を形成することにより、より好適にアンテナ特性の劣化を防ぐことができる。
【0089】
〔実施形態2〕
実施形態1では、テンプル14が、折り畳み時、アンテナ100からユーザ側に向かって形成されていることについて説明を行ったが、本発明における眼鏡型無線通信機はこれに限定されない。例えば、テンプル14は、図1におけるZ軸方向に向かって形成されていてもよい。
【0090】
以下、本発明の他の実施形態(実施形態2)について、図8を参照して説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態1にて説明した図面と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。なお、本実施形態において、接眼部11、リム12、ブリッジ13、テンプル14、モダン15、智16、蝶番17、パッド18、及び、クリングス19といった部材は、実施形態1と同様の構成を有する。
【0091】
(眼鏡型無線通信機8の構成)
次に、眼鏡型無線通信機8の構成について、図8を参照して説明する。図8(a)は、眼鏡型無線通信機8を開いた(テンプル14と接眼部11とを離した)状態(開時)の眼鏡型無線通信機8の正面斜視図である。また、図8(b)は、開時の眼鏡型無線通信機を(a)とは反対側(Y軸正方向)、つまり、ユーザ側から見たときの斜視図である。また、図8(c)は、眼鏡型無線通信機8を折り畳んだ(テンプル14と接眼部11とを近接させた)状態(折り畳み時)の眼鏡型無線通信機8をユーザ側(Y軸正方向)から見たときの正面図である。なお、図8において、説明の便宜上、一方のテンプル14は省略している。また、図8では、リム12が接眼部11の上部に含まれる構成の眼鏡型無線通信機について説明するが、本実施形態はこれに限定されず、接眼部11の外周にリム12を含む構成であってもよいし、リム12を含まない構成であってもよい。
【0092】
眼鏡型無線通信機8は、図8に示すように、無線通信を行うためのアンテナ100とアンテナ110とを有している。図8に示すように、アンテナ100は接眼部11の上部のリム12に配置されている。また、アンテナ110は、テンプル14に配置されている。智16は、金属等の導電体によって構成され、アンテナ100およびアンテナ110を電気的に接続している。なお、智16や蝶番17は、アンテナ100とアンテナ110とを電気的に接続していなくてもよい。
【0093】
テンプル14は、図8(c)に示すように折り畳み時、アンテナ100から離れるように、テンプル14の智16側の端部(智16との接続部分、蝶番17)から、テンプル14の智16側とは反対側の端部(モダン15の蝶番17とは反対側の端部)にかけて、円
弧状に湾曲する形状に形成されている。具体的には、テンプル14と智16との接続部(テンプル14の智16側の端部)とアンテナ100との距離をDとし、アンテナ100とテンプル14におけるアンテナ100から最も離れた位置との距離をFとすると、図8に示すように、D<Fが成り立つように形成されている。
【0094】
ここで、アンテナ100とアンテナ110との距離、つまり、接眼部11の外周領域の各点とテンプル14と間の平均距離をD’とすると、図4を用いて説明したとおり、平均距離D’は、D’=S/Lで表すことができる。ここで、Sは智16、テンプル14およびアンテナ100で囲まれた領域の面積であり、Lは、眼鏡型無線通信機8の折り畳み時におけるアンテナ100とアンテナ110との重畳部分の長さ(Z軸方向の重畳量)である。
【0095】
アンテナ100とアンテナ110との容量係数Cを小さくするために、平均距離D’は、距離Dより長くする必要がある。よって、D’>Dが成り立つ。つまり、眼鏡型無線通信機8は、D’>Dが成り立つような形状にテンプル14を形成すればよい。
【0096】
また、本実施形態において、テンプル14は、折り畳み時、アンテナ100から接眼部11の下方向(Z軸正方向)に向かって形成されていることを例に説明を行ったが、これに限定されない。テンプル14は、折り畳み時、アンテナ100から接眼部11の上方向(Z軸負方向)に向かって形成されていてもよい。また、例えば、接眼部11の下部にリム12を含んだ眼鏡型無線通信機であって、アンテナ100が当該リム12に配置されている場合、テンプル14は、折り畳み時、アンテナ100から接眼部11の上方向(Z軸負方向)に向かって形成されていてもよいし、下方向(Z軸正方向)に向かって形成されていてもよい。
【0097】
ただし、テンプル14は、アンテナ100がアンテナまたは導電体が配置されていない領域(図8の場合、接眼部11の下側)に向かう方向(図8の場合、Z軸正方向)に向かって形成されるほうが、アンテナ特性のシフト量をより小さくすることができる。
【0098】
このように、本実施形態に係る眼鏡型無線通信機8における接眼部11の外周領域(リム12)には、アンテナ100または導電体が配置されていない領域があり、テンプル14は、接眼部11とテンプル14とが折り畳まれた状態において、リム12におけるアンテナ100または前記導電体が配置されている領域から、アンテナ100または前記導電体が配置されていない領域に向かう方向(図8の場合、Z軸正方向)に湾曲する形状を有していてもよい。
【0099】
よって、眼鏡型無線通信機8の折り畳み時における容量係数Cを小さくすることができる。よって、眼鏡型無線通信機8の折り畳み時、アンテナ100およびアンテナ110の使用周波数帯におけるアンテナ特性の劣化を好適に防ぐことができる。
【0100】
なお、本実施形態では、リム12の上側にアンテナ100が配置されている場合、折り畳み時において、テンプル14は、Z軸正方向に湾曲する形状湾曲するように形成されていることを例に説明を行ったが、テンプル14はこれに限定されない。例えば、テンプル14は、Z軸正方向からユーザ側(Y軸正方向)に傾斜するように形成されてもよい。つまり、テンプル14は、折り畳み時において、外周領域における前記アンテナまたは前記導電体が配置されている領域から、離れる方向に形成されていればよい。これにより、当該眼鏡型無線通信機8のアンテナの使用周波数帯におけるアンテナ特性の劣化を好適に防ぐことができる。
【0101】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の
変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、3次元眼鏡、ゲーム用眼鏡、ヘッドマウントディスプレイ、ヘッドセット、ラジオ受信機、個人識別装置等の製造分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1、5、6、7、8 眼鏡型無線通信機
11 接眼部
12 リム
13 ブリッジ
14、14’ テンプル
15 モダン
16 智
17 蝶番
18 パッド
19 クリングス
100 アンテナ
110 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの頭部に装着される眼鏡型無線通信機であって、
左右の接眼部、前記ユーザの耳に掛着されるテンプル、無線通信を行うためのアンテナ、及び、前記接眼部と前記テンプルとを折り畳むための蝶番を備えており、
前記接眼部の外周に沿った外周領域および前記テンプルには共に前記アンテナが配置されているか、または、前記接眼部の外周に沿った外周領域および前記テンプルの一方にはアンテナが配置されており他方には導電体が配置されており、
前記テンプルが、前記接眼部と前記テンプルとが折り畳まれた状態において、前記外周領域に配置された前記アンテナまたは前記導電体から離れる方向に湾曲する形状を有していることを特徴とする眼鏡型無線通信機。
【請求項2】
前記テンプルと、前記外周領域に配置された前記アンテナまたは前記導電体の各点との間の平均距離の方が、前記蝶番と、前記外周領域に配置された前記アンテナまたは前記導電体との間の距離よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の眼鏡型無線通信機。
【請求項3】
前記テンプルは、前記接眼部と前記テンプルとが折り畳まれた状態において、前記接眼部から前記ユーザに向かう方向に湾曲する形状を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の眼鏡型無線通信機。
【請求項4】
前記外周領域には、前記アンテナまたは前記導電体が配置されていない領域があり、
前記テンプルは、前記接眼部と前記テンプルとが折り畳まれた状態において、前記外周領域における前記アンテナまたは前記導電体が配置されている領域から、前記アンテナまたは前記導電体が配置されていない領域に向かう方向に湾曲する形状を有していることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の眼鏡型無線通信機。
【請求項5】
前記接眼部と前記テンプルとが折り畳まれた状態において、前記蝶番と、前記外周領域に配置された前記アンテナまたは前記導電体との間の距離の方が、前記テンプルの前記蝶番とは反対側の端部と、前記外周領域における前記アンテナまたは前記導電体との間の距離よりも短いことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の眼鏡型無線通信機。
【請求項6】
前記接眼部と前記テンプルとが折り畳まれた状態において、前記蝶番と、前記外周領域に配置された前記アンテナまたは前記導電体との間の距離が、前記テンプルの前記蝶番とは反対側の端部と、前記外周領域における前記アンテナまたは前記導電体との間の距離と同じか、長いことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の眼鏡型無線通信機。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−98939(P2013−98939A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242836(P2011−242836)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】