説明

着圧可変コンプレッションパンツ

【課題】本発明は、快適性と運動機能性を同時に具備する着圧可変コンプレッションパンツを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は着圧可変コンプレッションパンツに関し、該パンツを着用して運動する場合、衣服内相対湿度が40%以下の時に比べ、衣服内相対湿度が60%〜100%の時の衣服圧は10%〜80%減少し、衣服内相対湿度が100%を越える時の衣服圧は10%〜100%減少する。本発明は快適性と運動機能性を兼ね備えていることで、運動過程で身体に生じる色々な変化に適時に対応できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着圧可変コンプレッションパンツに関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活に注意を払い、いろいろな運動を行うことで、自分の健康を重視する人間はだんだん多くなっている。これに伴って、スポーツウェアなどのスポーツ用品の性能への要求も高くなり、快適性と運動機能性を兼ね備えているスポーツウェアの開発は新たな需要になる。
現在市販されているコンプレッションパンツは、高弾性編物又は高弾性織物の組合せにより、部分的に異なるストレッチ性を持たせる設計に注目されている。高弾性部を利用して筋肉への拘束力を強化する方法としてCN1774185A(特許文献1)では、大腰筋を効率的に鍛えることができ、かつ、大腰筋に負荷をかけるのに不必要な範囲にまで高弾性部が設けられることに起因して着用感が損なわれることを防止するスパッツが開示されている。テーピング理論を利用する方法として特許第4495674号(特許文献2)では、帯状素材で拘束部を形成し、運動能力と運動効果を向上するものが開示されている。
上記の技術で採用された弾性素材は、運動過程において変化が生じないことが問題点である。実際の運動課程で、体の各部位、特に我々の運動能力を支配する一つの重要な要因としての筋肉は変化している。たとえば、運動課程において筋肉がしっかり拘束されていると、筋肉の振動によるエネルギー損失が減少できるが、運動課程において、血液により体中の酸素と栄養元素を筋肉に取り込むことで筋肉が充血のため膨張状態になった上でもまだ、ひたすら筋肉を拘束し続ければ、逆の結果になる。すなわち、運動過程で生じた色々な変化に対して直ちに対応でき、運動能力と運動効果を向上させ、かつ、快適なコンプレッションパンツが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】CN1774185A
【特許文献2】特許第4495674号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、かかる従来技術の背景に鑑み、快適性と運動機能性を同時に具備する着圧可変コンプレッションパンツを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような構成を有する。すなわち、
(1) 衣服内相対湿度が40%以下の時の衣服圧に対し、衣服内相対湿度が60%〜100%の時の衣服圧が、10%〜80%減少し、衣服内相対湿度が100%を越える時の衣服圧は、衣服内相対湿度が40%以下の時の衣服圧に対して、10%〜100%減少することを特徴とする着圧可変コンプレッションパンツ。
(2) 前記着圧可変コンプレッションパンツの身体周囲の50%以上は一種の弾性織編物で構成され、該弾性織編物は、未着用かつフリー状態下で30%〜80%の伸長範囲において、乾燥時の伸長回復応力が0.3〜12Nであり、かつ、乾燥時に対し、吸湿時の伸長回復応力が10%〜80%減少、および/または、乾燥時に対し、吸水時の伸長回復応力が10%〜100%減少することを特徴とする上記(1)に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。
(3) 前記弾性織編物の変化が、可逆に起こることを特徴とする上記(2)に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。
(4) 該着圧可変コンプレッションパンツを着用し、運動強度が3〜12Metsの運動を行う時の呼吸商が1.5以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。
(5) 該着圧可変コンプレッションパンツを着用し、運動強度が3〜12Metsの運動を発汗するまで行い、発汗時の衣服内絶対湿度が、運動前の安静状態に対して1.1倍以上になる時、発汗前の心拍数に対して発汗時の心拍数の上昇幅が10%より小さいことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。
(6) 該着圧可変コンプレッションパンツを着用し、運動強度が3〜12Metsの運動を発汗するまで行った後回復した時、運動時の心拍変動値に対して回復時の心拍変動値の上昇幅が20%未満であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。
(7) 前記弾性織編物が、5〜15重量%のストレッチ繊維と、95〜85重量%の非ストレッチ繊維で構成されており、40〜100℃、5〜30分間の条件下で、濃度が10〜150g/Lのギ酸又はベンジルアルコールで処理した後洗浄したものであることを特徴とする上記(2)に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。
(8) 前記ストレッチ繊維がポリウレタン繊維であることを特徴とする上記(7)に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。
(9) 前記非ストレッチ繊維は、20重量%以上のポリアミド繊維と、80重量%以下のその他の繊維を含むことを特徴とする上記(7)に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。
(10) 前記ポリアミド繊維が、ポリアミドフィラメント100%、または、ポリアミドスパン100%、または、ポリアミドフィラメントを含む混繊糸、または、ポリアミドスパンを含む混紡糸であり、前記その他の繊維が、ポリエステル、綿およびレーヨンの少なくとも1種であり、前記混繊糸、あるいは、前記混紡糸の他成分が、ポリエステル、綿およびレーヨンの少なくとも1種であることを特徴とする上記(9)に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、快適性と運動機能性を同時に具備する着圧可変コンプレッションパンツを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明を実施するための形態につき詳細に説明する。
【0008】
本発明の着圧可変コンプレッションパンツを着用して運動する場合、衣服内相対湿度が40%以下の時の衣服圧に対し、衣服内相対湿度が60%〜100%の時の衣服圧は10%〜80%減少し、衣服内相対湿度が100%を越える時の衣服圧は、衣服内相対湿度が40%以下の時の衣服圧に対して10%〜100%減少する。
本発明の着圧可変コンプレッションパンツは、運動強度が増加すると共に、汗が出て、衣服内の相対湿度が持続的に上昇することを利用し、発生した気体汗、または、液体汗を吸収することによって衣服圧が減少し、筋肉への拘束力が次第に小さくなることで上記問題点を解決する。人体の変化に対して適時・スマート的に対応することで、運動能力を最大限に発揮させることができる。ここで言う衣服内とは、皮膚と衣服の間の空気層のことである。
市販のコンプレッションパンツは、運動初期、すなわち、運動強度が低いウォーミングアップ時には、筋肉を締めつけ拘束することにより、動いた時の筋肉の振動による無駄なエネルギー損失を効率的に減少させ、運動能力を充分に発揮させることができるが、運動強度が増加していくと、血液により体中の酸素と栄養元素を持続に筋肉に取り込むことで、筋肉が充血のため膨張状態になり、この場合、もし運動初期と同じ着圧で筋肉を拘束すれば、筋肉が緊張しすぎて運動に不利である。
衣服内相対湿度は、日本神栄社製THT−B3T−80型温湿度センサーとTHT−B121型温湿度変換装置を用いて測定する。測定部位は、大腿前後、または、小腿前後である。
衣服圧は、日本AMI社製接触圧測定装置を用いて測定する。直径が20mmのバックを使用して臀部、大腿前、大腿後、小腿前と小腿後との5部位を測定する。
本発明の着圧可変コンプレッションパンツの身体周囲の50%以上は一種の弾性織編物で構成され、該弾性織編物は、未着用かつフリー状態下で30%〜80%の伸長範囲において、乾燥時の伸長回復応力が0.3〜12Nであることが好ましい。
また、この伸長回復応力は、乾燥時に対して吸湿時に10%〜80%減少することが好ましく、および/または、伸長回復応力は、乾燥時に対して吸水時に10%〜100%減少することが好ましい。さらに、これらの変化は、可逆的に起こることが好ましい。
実着用時、人間は運動することによって発汗し、衣服内相対湿度が上昇する。この時発生した気体汗、または、液体汗を吸収することにより、本発明の弾性織編物が伸長する。この変化により、織編物の伸長回復応力を低下させ、着用時の衣服圧を小さくすることができる。上記、伸長回復応力は、実着用時の圧迫感と緊密な関係があり、伸長回復応力が小さければ小さいほど、人体に与える圧迫感が小さく、筋肉に適度な緊張を与え、快適に運動効率の向上を維持することができる。
伸長回復応力は、日本A&D社製引張試験機を用い、日本工業規格JIS L1096に規定する方法により伸長回復率と残留伸長率を測定することから求める。具体的な測定方法は、以下のとおりである。
弾性織編物を、応力が20Nになるまで引張り、伸長回復率が80%と30%時のそれぞれの伸長回復応力を読取る。乾燥時、吸湿時および吸水時の伸長回復応力をそれぞれ測定する。ここで言う乾燥時とは、弾性織編物を標準環境20℃×65%RH下で24時間調湿した状態である。吸湿時とは、弾性織編物を標準環境20℃×90%RH下で24時間調湿した状態である。吸水時とは、弾性織編物を100%浸漬した状態である。100%浸漬とは、吸水時の弾性織編物の重量が乾燥時の2倍になった状態を言う。
本発明の着圧可変コンプレッションパンツを着用し、運動強度が3〜12Metsの運動を行う時の呼吸商は1.5以下である。
運動強度は、運動による人体への生理刺激の強さを表す数値である。体重1kg当たり1時間に1kcalを消費する時の運動強度が1Metsであり、座って安静にしている状態が1Mets、普通歩行が3Metsに相当する。運動強度を数値化する一つの方法として、酸素摂取量がある。
呼吸商は、RQと略称し、生物体が単位時間内に放出した二酸化炭素と吸収した酸素との体積比、または、モル比、すなわち、呼吸システムから放出した二酸化炭素と吸収した酸素との分子比である。
糖分、脂肪、蛋白質が酸化する時、それぞれのCOの生成量とOの消費量が異なるので、三者それぞれの呼吸商も異なる。
呼吸商は蛋白質呼吸商と非蛋白質呼吸商に分けられる。一定時間内の尿中窒素量を測定し、次いで、尿中窒素量から体内蛋白質の消費量を求め、蛋白質が分解する時のOの消費量とCOの生成量を求めることにより、蛋白質呼吸商を算出する。測定して得られたOの総消費量とCOの総生成量、すなわち、混合呼吸商から、蛋白質呼吸商を除いて、非蛋白質呼吸商、すなわち、糖と脂肪の呼吸商を算出できる。
運動中、脂肪の消費量は糖分より多い。非蛋白質呼吸商が比較的小さい場合、運動者が実施した運動を有酸素運動と呼び、これは一種の健康的な運動である。酸化反応に使われる蛋白質の量は、脂肪や糖分の量に比べて極めて少ないため、蛋白質呼吸商を省略しても良いので、測定して得られた混合呼吸商を、非蛋白質呼吸商と見なすことができる。すなわち、呼吸商の値が小さければ小さいほど、有酸素運動の程度が高く、実施した運動が健康的である。
運動強度と呼吸商は、下記の式で算出する。運動者の酸素摂取量と二酸化炭素排出量の測定は、ドイツイエガー社製心肺機能測定装置を用いる。運動者の体重は、日本メトラー精密天秤を用いる。
運動強度=酸素摂取量[ml/min]/(運動者の体重[Kg]*3.5[ml/Kg/min])
呼吸商=酸素摂取量[ml/min]/二酸化炭素排出量[ml/min]
本発明の着圧可変コンプレッションパンツを着用し、運動強度が3〜12Metsの運動を発汗するまで行い、発汗時の衣服内絶対湿度が、運動前の安静時に対して1.1倍以上になる時、発汗前の心拍数に対して発汗時の心拍数の上昇幅は10%より小さい。ここで言う心拍数は、一定時間内の心臓の拍動回数であり、心臓拍動の速さを表す。人間は安静時、または、睡眠時に心拍数が減少し、運動時、または、興奮時に心拍数が増加する。安静時に対する運動時の心拍数の上昇幅が小さければ小さいほど、心臓への負担が小さく、運動に有利である。
心拍数は、アメリカMORTARA製12lead holterレコーダーを用いて測定し、得られたデータを5.0バージョンのソフトウェアで分析する。
大腿前後、または、小腿前後の衣服内絶対湿度は、日本神栄社製THT−B3T−80型温湿度センサーとTHT−B121型温湿度変換装置を用いて測定する。
本発明の着圧可変コンプレッションパンツを着用し、運動強度が3〜12Metsの運動を行い発汗した後回復した時、運動時の心拍変動値に対して回復時の心拍変動値(LF/(LF+HF))値の上昇幅は20%より小さい。
心拍変動値は、心拍変動の高周波(HF)成分と、低周波(LF)成分との値から、LF/(LF+HF)の値で求める。
心拍変動率HRVは、一拍一拍の心拍の周期変動状況である。心臓の自律活動性は各種のペーシング組織に関係があるにも関らず、心拍数、および、そのリズムは、自律神経系統、すなわち、副交感神経系統と交感神経系統とが共同で制御する。スペクトル分析によると、心拍変動には迷走神経の状態を示す高周波(HF)成分と、迷走神経と交感神経の状態を示す低周波(LF)成分を含む。LF成分は、交感神経の作動が優位である。LF成分とHF成分のスペクトル分析により、心臓交感神経と迷走神経活動の均衡程度を評価することができる。安静状態下では、迷走神経が作動し優位となるので、心拍変動は迷走神経により調節する。一方、運動、緊張、痛みなどの状態下では、交感神経が作動し優位を占める。すなわち、心拍変動値LF/(LF+HF)の値が大きければ大きいほど、交感神経が作動し、主導的な役割を果たし、人体のストレスが大きいことを表明できる。逆に、LF/(LF+HF)の値が小さければ小さいほど、迷走神経が作動し主導的な役割を果たし、人体のリラックス感が大きいことが表明できる。
回復時と運動時のLF/(LF+HF)値の比較とは、運動後の回復時、すなわち、椅座安静10分後の状態と運動状態のLF/(LF+HF)の差異である。一般的に言えば、運動状態のLF/(LF+HF)は、安静状態のそれより大きいが、運動直後の数分間以内の短時間で運動前の安静状態に戻ることができないので、回復状態の数値は運動状態より大きい。運動時のLF/(LF+HF)値に対する回復時のLF/(LF+HF)値の上昇幅は、小さければ小さいほど、人体は運動後の回復が速くなり、リラックス感や快適感も感じ易くなる。
心拍変動値LF/(LF+HF)は、アメリカMORTARA製12lead holterレコーダーにより測定したデータを5.0バージョンのソフトウェアで分析して得られたものである。
本発明に使用する弾性織編物は、5〜15重量%のストレッチ繊維と、95〜85重量%の非ストレッチ繊維で構成されていることが好ましい。
【0009】
さらに、該ストレッチ繊維がポリウレタン繊維であることが好ましい。
【0010】
また、非ストレッチ繊維は、20重量%以上のポリアミド繊維と、80重量%以下のその他の繊維を含むことが好ましい。
ここで言うポリアミド繊維は、ポリアミドフィラメント100%、または、ポリアミドスパン100%、または、ポリアミドフィラメントを含む混繊糸、または、ポリアミドスパンを含む混紡糸であることが好ましい。
その他の繊維は、ポリエステル、綿、レーヨンの少なくとも1種であることが好ましく、混繊糸、あるいは、混紡糸の他成分は、ポリエステル、綿、レーヨンの少なくとも1種であることが好ましい。
上記素材構成からなる糸を用いて、織物、または、編物を作成する。織物組織、編物組織は、本発明のストレッチパンツの各種性能を満たすものであれば特に限定はしない。
次いで、蟻酸、または、ベンジルアルコール液によって処理することにより、上記弾性織編物を得る。処理条件は、以下のとおりである。蟻酸、または、ベンジルアルコール液の濃度は、10〜150g/Lが好ましく、さらに好ましくは50〜100g/Lである。10g/Lより少ないと、十分な効果が得られず、150g/Lより多いと、ポリアミド繊維の表面が溶解し、ストレッチパンツとして十分な布帛強力が得られないだけでなく、処理コストが高くなる。処理温度は、40〜100℃、処理時間は5〜30分間であることが好ましい。
上記のプロセスを経て得られた弾性織編物は、酸性染料、または、反応染料で染色した後、乾燥、熱セット後の色堅牢度が4級以上であることが好ましい。色堅牢度は、以下の方法によって測定する。
洗濯色堅牢度:JIS L0844A−2法
摩擦色堅牢度:JIS L0849法
耐光堅牢度 :JIS L0842法
耐汗色堅牢度:JIS L0848法
昇華色堅牢度:JIS L0854法
色泣き :大丸法
洗濯耐久性:JIS L0217法 家庭洗濯50回後上記の性能が保持できる。
【実施例】
【0011】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例における、各種測定・評価は上記方法を用いた。
[実施例1]
ポリアミド繊維を含む110dtex−51fの芯鞘複合変形糸90%と、33dtexのポリウレタン糸10%とからなる、目付196g/m、タテ密度48ウェル(W)、ヨコ密度78コース(C)の天竺編物を得た。編成は、日本福原製28ゲージ丸編機を使用した。次いで、該天竺編物を通常の条件で精練、プレセットし、98℃下で100g/Lのベンジルアルコールによって10分間処理し、洗浄した後、酸性染料によって通常の条件で染色、洗浄後、セットして弾性編物を得た。この弾性編物を30%〜80%伸長する時、乾燥状態の伸長回復応力が1.0〜9.6Nで、かつ、吸湿状態の伸長回復応力が0.8〜4.1Nで、吸水状態の伸長回復応力が0.3〜1.0Nである。各項目の色堅牢度は4級以上で、家庭洗濯50回後も各性能を保持している。
次に、身体周囲径の100%に、この弾性編物を使用し、男性用Lサイズのコンプレッションパンツを製作した。こうして製作したコンプレッションパンツを、25℃×50%RHの条件下で、身長173cm、体重72kgの男性被験者が着用し、着用テストを行った。運動条件は、安静後トレッドミルにより8km/hrの速度で15分間走った後、椅子に座って休憩し、10分後を回復時とした。運動強度は、8.0Metsである。この過程において、大腿前後と小腿前後の衣服内相対湿度が30%の時、臀部の衣服圧が0.76kPa、大腿前の衣服圧が0.51kPa、大腿後の衣服圧が0.42kPa、小腿前の衣服圧が3.63kPa、大腿後の衣服圧が2.69kPaである。大腿前後と小腿前後の衣服内相対湿度が90%の時、臀部の衣服圧が0.48kPa、大腿前の衣服圧が0.31kPa、大腿後の衣服圧が0.27kPa、小腿前の衣服圧が1.82kPa、小腿後の衣服圧が1.31kPaである。運動時の最大呼吸商が1.12である。運動前安静の時、大腿前後と小腿前後の衣服内絶対湿度が12mmHgである。運動後衣服内絶対湿度が12mmHgより小さい時の心拍数が152で、衣服内絶対湿度が13.2mmHgより大きい時の心拍数が159である。運動時の心拍率変動値LF/(LF+HF)が0.59で、運動後回復時の心拍率変動値LF/(LF+HF)が0.69である。結果を表1に示す。
[実施例2]
ポリアミド繊維を含む110dtex−51fの芯鞘複合変形糸90%と、33dtexのポリウレタン糸10%とからなる、目付196g/m、タテ密度48ウェル(W)、ヨコ密度78コース(C)の天竺編物を得た。編成は、日本福原製28ゲージ丸編機を使用した。次いで、該天竺編物を通常の条件で精練、プレセットし、60℃下で50g/Lのベンジルアルコールによって30分間処理し、洗浄した後、酸性染料で通常の条件で染色し、セットして弾性編物を得た。この弾性編物を30%〜80%伸長する時、乾燥状態の伸長回復応力が0.6〜9.2Nで、かつ、吸湿状態の伸長回復応力が0.4〜8.1Nで、吸水状態の伸長回復応力が0.3〜7.2Nである。各項目の色堅牢度は4級以上で、家庭洗濯50回後も各性能を保持している。
次に、身体周囲径の60%に、この弾性編物を使用した男性用Mサイズのコンプレッションパンツを製作した。こうして製作したコンプレッションパンツを、25℃×50%RHの条件下で、身長168cm、体重60kgの男性被験者が着用し、着用テストを行った。運動条件は、安静後トレッドミルにより7.6km/hrの速度で15分間走った後、椅子に座って休憩し、10分後を回復時とした。運動強度は、7.8Metsである。この過程において、大腿前後と小腿前後の衣服内相対湿度が35%の時、臀部の衣服圧が0.73kPa、大腿前の衣服圧が0.48kPa、大腿後の衣服圧が0.41kPa、小腿前の衣服圧が3.35kPa、大腿後の衣服圧が2.46kPaである。大腿前後と小腿前後の衣服内相対湿度が88%の時、臀部の衣服圧が0.65kPa、大腿前の衣服圧が0.42kPa、大腿後の衣服圧が0.34kPa、小腿前の衣服圧が2.68kPa、小腿後の衣服圧が2.21kPaである。運動時の最大呼吸商が1.11である。運動前安静の時、大腿前後と小腿前後の衣服内絶対湿度が12mmHgである。運動後衣服内絶対湿度が12mmHgより小さい時の心拍数が138で、衣服内絶対湿度が13.2mmHgより大きい時の心拍数が150である;運動時の心拍率変動値LF/(LF+HF)が0.67で、運動後休憩時の心拍率変動値LF/(LF+HF)が0.72である。結果を表1に示す。
[実施例3]
ポリアミド繊維を含む56dtex−17fのポリアミド繊維双糸92%と、22dtexのポリウレタン糸8%とからなる、目付125g/m、タテ密度76ウェル(W)、ヨコ密度54コース(C)のハーフ・トリコット編物を得た。編成は、ドイツマイヤ製32ゲージトリコット機を使用した。次いで、該ハーフ・トリコット編物を通常の条件で精練、プレセットし、90℃下で80g/Lのベンジルアルコールによって20分間処理し、洗浄した後、酸性染料によって通常の条件で染色、洗浄後、セットして弾性編物を得た。この弾性編物を30%〜80%伸長する時、乾燥状態の伸長回復応力が0.8〜11.8Nで、かつ、吸湿状態の伸長回復応力が0.7〜7.6Nで、吸水状態の伸長回復応力が0.6〜3.0Nである。各項目の色堅牢度は4級以上で、家庭洗濯50回後も各性能を保持している。
次に、身体周囲径の80%に、この弾性編物を使用し、男性用Lサイズのコンプレッションパンツを製作した。こうして製作したコンプレッションパンツを、25℃×50%RHの条件下で、177cm、体重74kgの男性被験者が着用し、着用テストを行った。運動条件は、安静後トレッドミルにより7.6km/hrの速度で15分間走った後、椅子に座って休憩し、10分後を回復時とした。運動強度は、7.7Metsである。この過程において、大腿前後と小腿前後の衣服内相対湿度が38%の時、臀部の衣服圧が0.74kPa、大腿前の衣服圧が0.51kPa、大腿後の衣服圧が0.47kPa、小腿前の衣服圧が3.28kPa、大腿後の衣服圧が2.74kPaである。大腿前後と小腿前後の衣服内相対湿度が106%の時、臀部の衣服圧が0.65kPa、大腿前の衣服圧が0.42kPa、大腿後の衣服圧が0.35kPa、小腿前の衣服圧が2.28kPa、小腿後の衣服圧が1.87kPaである。運動時の最大呼吸商が1.04である。運動前安静の時、大腿前後と小腿前後の衣服内絶対湿度が15mmHgである。運動後衣服内絶対湿度が15mmHgより小さい時の心拍数が146で、衣服内絶対湿度が16.5mmHgより大きい時の心拍数が152である。運動時の心拍率変動値LF/(LF+HF)が0.62で、運動後休憩時の心拍変動値LF/(LF+HF)が0.65である。結果を表1に示す。
[比較例1]
ポリアミド繊維を含む110dtex−51fの芯鞘複合変形糸90%と、33dtexのポリウレタン糸10%とからなる、目付196g/m、タテ密度48ウェル(W)、ヨコ密度78コース(C)の天竺編物を得た。編成は、日本福原製28ゲージ丸編機を使用した。次いで、該天竺編物を通常の条件で精練、プレセットし、90℃下で80g/Lのベンジルアルコールによって20分間処理し、洗浄した後、酸性染料によって通常の条件で染色、洗浄後、セットして弾性編物を得た。この弾性編物を30%〜80%伸長する時、乾燥状態の伸長回復応力が1.0〜3.2Nで、かつ、吸湿状態の伸長回復応力が1.0〜3.3Nで、吸水状態の伸長回復応力が1.0〜3.0Nである。各項目の色堅牢度は4級以上で、家庭洗濯50回後も各性能を保持している。
次に、身体周囲径の100%に、この弾性編物を使用し、男性用Lサイズのコンプレッションパンツを製作した。こうして製作したコンプレッションパンツを、25℃×50%RHの条件下で、173cm、体重72kgの男性被験者が着用し、着用テストを行った。運動条件は、安静後トレッドミルにより8.0km/hrの速度で15分間走った後、椅子に座って休憩し、10分後を回復時とした。運動強度は8.0Metsである。この過程において大腿前後と小腿前後の衣服内相対湿度が30%の時、臀部の衣服圧が0.78kPa、大腿前の衣服圧が0.50kPa、大腿後の衣服圧が0.43kPa、小腿前の衣服圧が3.57kPa、大腿後の衣服圧が2.88kPaである。大腿前後と小腿前後の衣服内相対湿度が90%の時、臀部の衣服圧が0.76kPa、大腿前の衣服圧が0.51kPa、大腿後の衣服圧が0.40kPa、小腿前の衣服圧が3.48kPa、小腿後の衣服圧が2.79kPaである。運動時の最大呼吸商が1.31である。運動前安静の時、大腿前後と小腿前後の衣服内絶対湿度が14mmHgである。運動後衣服内絶対湿度が14mmHgより小さい時の心拍数が150で、衣服内絶対湿度が15.4mmHgより大きい時の心拍数が172である。運動時の心拍率変動値LF/(LF+HF)が0.62で、運動後休憩時の心拍率変動値LF/(LF+HF)が0.76である。結果を表1に示す。
【0012】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明の着圧可変コンプレッションパンツは、トレーニングウェアやアンダーウェアなどのスポーツ衣料用途に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服内相対湿度が40%以下の時の衣服圧に対し、衣服内相対湿度が60%〜100%の時の衣服圧が、10%〜80%減少し、衣服内相対湿度が100%を越える時の衣服圧は、衣服内相対湿度が40%以下の時の衣服圧に対して、10%〜100%減少することを特徴とする着圧可変コンプレッションパンツ。
【請求項2】
前記着圧可変コンプレッションパンツの身体周囲の50%以上は一種の弾性織編物で構成され、該弾性織編物は、未着用かつフリー状態下で30%〜80%の伸長範囲において、乾燥時の伸長回復応力が0.3〜12Nであり、かつ、乾燥時に対し、吸湿時の伸長回復応力が10%〜80%減少、および/または、乾燥時に対し、吸水時の伸長回復応力が10%〜100%減少することを特徴とする請求項1に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。
【請求項3】
前記弾性織編物の変化が、可逆に起こることを特徴とする請求項2に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。
【請求項4】
該着圧可変コンプレッションパンツを着用し、運動強度が3〜12Metsの運動を行う時の呼吸商が1.5以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。
【請求項5】
該着圧可変コンプレッションパンツを着用し、運動強度が3〜12Metsの運動を発汗するまで行い、発汗時の衣服内絶対湿度が、運動前の安静状態に対して1.1倍以上になる時、発汗前の心拍数に対して発汗時の心拍数の上昇幅が10%より小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。
【請求項6】
該着圧可変コンプレッションパンツを着用し、運動強度が3〜12Metsの運動を発汗するまで行った後回復した時、運動時の心拍変動値に対して回復時の心拍変動値の上昇幅が20%未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。
【請求項7】
前記弾性織編物が、5〜15重量%のストレッチ繊維と、95〜85重量%の非ストレッチ繊維で構成されており、40〜100℃、5〜30分間の条件下で、濃度が10〜150g/Lのギ酸又はベンジルアルコールで処理した後洗浄したものであることを特徴とする請求項2に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。
【請求項8】
前記ストレッチ繊維がポリウレタン繊維であることを特徴とする請求項7に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。
【請求項9】
前記非ストレッチ繊維は、20重量%以上のポリアミド繊維と、80重量%以下のその他の繊維を含むことを特徴とする請求項7に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。
【請求項10】
前記ポリアミド繊維が、ポリアミドフィラメント100%、または、ポリアミドスパン100%、または、ポリアミドフィラメントを含む混繊糸、または、ポリアミドスパンを含む混紡糸であり、前記その他の繊維が、ポリエステル、綿およびレーヨンの少なくとも1種であり、前記混繊糸、あるいは、前記混紡糸の他成分が、ポリエステル、綿およびレーヨンの少なくとも1種であることを特徴とする請求項9に記載の着圧可変コンプレッションパンツ。

【公開番号】特開2012−117195(P2012−117195A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263245(P2011−263245)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】