説明

着色オルガノポリシロキサン

本発明は、式(I)
(RO)SiO(4−a−b−c−d)/2 (I)
(式中、R、R、R、A、a、b、c、及びdは、請求項1に記載のように定義される)
の単位を含む着色オルガノポリシロキサンに、それらの製造プロセスに、及びそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発色団分子が共有結合している官能化シリコーン化合物、それらの製造プロセス、及びこれらの着色シリコーン化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ素化合物及び染料の同時使用は、大部分の染料のケイ素化合物中での非混和性又は不溶性のために問題がある。2クラスの物質間の適合性の欠如はそれ故、不均一に着色した製品に及び/又は製品成分の1つの遅い浸出(移行)に、そして従って全体として負である製品特性にしばしばつながる。例えば特許文献1に記載されているような、染料と特定のシラン及び/又はシロキサンとの規定された物理的ブレンドの使用は、ある程度これらの悪影響に対抗するかもしれないが、個々の成分の分離の永続的な予防のために使用することができない。
【0003】
対照的に、この問題は、染料分子が有機ケイ素化合物に化学結合する場合には解決することができる。
【0004】
ゆえに、染料含有量のあるシランが何十年間も知られてきたことがその事例である。それらは、多数の研究論文及び特許の主題である(この件については、例えば、非特許文献1を参照されたい)。
【0005】
染料を有するシランは、特許文献2によって初めて記載されている。当該場合にアゾカップリングによるアゾ染料の通常の合成は、カップリング成分としてアニリン変性シランを用いることによって修正されている。特許文献3によれば、フェニル含有シランもまたこの目的のために好適である。このようにして得られる染料含有シランは、その後重合されて相当するポリシロキサンが生成される。
【0006】
特許文献4は、合成繊維及び紙用の蛍光増白剤としての役割を果たす、トリアジン含有基を有するオルガノポリシロキサンを開示している。この場合には、結合は、蛍光増白剤のスルホン酸基とアミノ官能性シラン又はシロキサンとの反応によって形成されてスルホンアミドが生成される。
【0007】
ニトロ芳香族染料基を有するシリコーン化合物は、特許文献5に従って、エポキシ官能性シロキサンをアミン−又はスルホンアミド−含有ニトロ染料と塩基性条件下に反応させることによって得ることができる。この代案として、特許文献6は、環−ハロゲン化芳香族ニトロ染料を、芳香環上での求核的置換を用いてアミノ官能性シロキサンに結合させることを提案している。
【0008】
特許文献7は、眼内レンズを製造するための黄色染料を有するシロキサン・プレポリマーを記載している。発色団の共有結合はこの場合には、カルビノール基を有するシロキサンの及び同様にカルビノール基を有する反応性染料のジイソシアネート・カップリングによるか、SiH変性した反応性染料と末端ジビニルポリシロキサンとの間の白金触媒ヒドロシリル化反応によるかのどちらかで行われる。両プロセスともかなりの容量の溶媒なしでは成し遂げられず、第1バージョンは、毒物学的観点から取り扱うのが困難であるジイソシアネートを用いるが、第2バージョンは、高価である白金触媒を用いる。白金又はロジウムを含む高価な遷移金属触媒は同様に、特許文献8によって用いられている。
【0009】
上述の製造プロセスの全てに共通した特徴は、それらが例えば、アニリン−含有アゾ化合物、アミン−、スルホン酸−若しくはスルホンアミド−含有発色団、及び非ハロゲン化若しくはハロゲン化ニトロ芳香族化合物などの、選択された染料若しくは染料前駆体にのみか、専ら特定のシリコーンオイルにかのどちらかに限定されることである。さらに、高度に特異的な、そして特定の場合には高度に苛酷な又は面倒な反応条件を必要とする製造プロセスが用いられるために、引用された特許文献に開示されているシロキサンはまた、いかなるさらなる官能基も含有しない。さらに、追加の欠点は、アニリン又はニトロ芳香族化合物をベースとする毒物学的に好ましくない発色団の使用、しばしば非常に低い反応収率、及び2つ以上の反応段階にわたる比較的複雑な合成である。
【0010】
特許文献9は、求核性ポリシロキサンとスルホン酸基及び/又はスルホネート基を含有する水溶性の反応性染料との反応による染料基を含むオルガノポリシロキサンの製造を既に記載している。しかしながら、この合成プロセスの欠点は、極性で水溶性の、それ故高度に疎油性である反応性染料の使用であり、その結果、定量的収率がやっとのことでようやく達成できる、不均一反応系か、製造後に、コストをかけて及び不都合にも、再び除去しなければならない、比較的大容量の相溶性溶媒の使用かのどちらかを必要とする。さらに、シロキサン鎖中への極性染料基の導入は、全体ポリマーの疎水性の低下につながる。ある種の用途ではこれは有利であるかもしれないが、それにもかかわらず、皮革の疎水化、シリコーンエラストマーの着色、及び類似の用途でのように、それは大部分の場合に望ましくない。
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,281,240号明細書
【特許文献2】米国特許第2,925,313号明細書
【特許文献3】英国特許第2018804号明細書
【特許文献4】EP 0336709 A2
【特許文献5】米国特許第4,403,099号明細書
【特許文献6】米国特許第4,405,801号明細書
【特許文献7】米国特許第6,918,931号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/0,100,945号明細書
【特許文献9】国際公開第98/40429 A1号パンフレット
【非特許文献1】J.Soc.Dyers and Col.1969,85(9)、401−404ページ
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、式(I)
(RO)SiO(4−a−b−c−d)/2 (I)
[式中、
Rは同一であるか又は異なることができ、そして水素又は一価の、非置換若しくは置換炭化水素基であり、
は同一であるか又は異なることができ、そして水素又は一価の、SiC−結合した、非置換若しくは置換炭化水素基であり、
は同一であるか又は異なることができ、そして置換された一価の炭化水素基であり、
Aは同一であるか又は異なることができ、そしてスルホン酸基及びスルホネート基を含まない有機染料基であり、
aは0、1、2又は3であり、
bは0、1、2又は3であり、
dは0、1、2又は3であり、そして
cは0、1又は2であり、
ただし、a+b+c+dの合計は3以下であり、オルガノポリシロキサンが分子当たり、そして式(I)(式中、cは0以外であり、dが0である)の単位中に少なくとも1つの基Aを有する〕
の単位を含む着色オルガノポリシロキサンを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明との関連で、用語「オルガノポリシロキサン」は、ポリマーののみならず、オリゴマー及びダイマーのシロキサンをも包含する。
【0014】
Rは好ましくは水素又は、置換されていても及び/又は1個以上の酸素原子で介在されていてもよい、1〜18個、特に1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基である。
【0015】
Rの例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第二級ブチル、イソブチル、第三級ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、第三級ペンチル基、ヘキシル、特にn−ヘキシル、ヘプチル、特にn−ヘプチル、オクチル、特にn−オクチル及び2,2,4−トリメチルペンチルなどのイソオクチル、ノニル、特にn−ノニル、デシル基、特にn−デシル、ドデシル、特にn−ドデシル、及びオクタデシル、特にn−オクタデシルなどの、(C〜C18)アルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びメチルシクロヘキシルなどの、(C〜C10)シクロアルキル基;ビニル、アリル(2−プロペニル)及びイソアリル(1−プロペニル)などの、(C〜C)アルケニル基;フェニル、ナフチル,アントリル、及びフェナントリルなどの、アリール基;o−、m−、及びp−トリル、キシリル、及びエチルフェニルなどの、(C〜C)アルキルアリール基;並びにベンジル及びα−及びβ−フェニルエチル基などの、アリール−(C〜C)アルキル基である。
【0016】
より好ましくはRは水素、メチル、エチル又はプロピルである。
【0017】
は好ましくは水素又は、置換されていても及び/又は1個以上の酸素原子で介在されていてもよい、1〜18個、特に1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基である。
【0018】
の例は、Rについて明記された基、並びにさらに、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル、ヘプタフルオロイソプロピルなどの、ハロアルキル基、及びまた、例えば、o−、m−、及びp−クロロフェニルなどの、ハロアリール基である。
【0019】
より好ましくはRはメチル、ビニル又はアリルである。
【0020】
は好ましくは、酸素、硫黄又は窒素などの、1つ以上のヘテロ原子で介在されていてもよい、1〜200個の炭素原子を有する置換炭化水素基である。
【0021】
はより好ましくは、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、エポキシ又はカルボン酸置換基若しくはそれらの誘導体を有する、そして、さらに、1つ以上の窒素、酸素又は硫黄原子で介在されていてもよい炭化水素基である。
【0022】
特に好ましくはRは、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、エポキシ又はカルボン酸置換基若しくはそれらの誘導体で置換されている1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基である。
【0023】
の例は、
a)例えば、アミノメチル、フェニルアミノメチル、アミノプロピル、アミノエチルアミノプロピル、シクロヘキシルアミノプロピル及びアシル化アミノプロピルなどの、アミノ基又はそれらの誘導体で置換された炭化水素基、
b)3−ヒドロキシプロピル及び4−ヒドロキシブチルなどの、第一級、第二級若しくは第三級アルコール基などのヒドロキシル基で置換された炭化水素基、又は、例えば、フェノール若しくはオイゲノール基などの、芳香族ヒドロキシル基を有する炭化水素基、
c)例えば、3−メルカプトプロピルなどの、メルカプト基で置換された炭化水素基、
d)例えば、
【0024】
【化1】

からなる群からのものなどの、エポキシ基で置換された炭化水素基、
e)アセチル、3−カルボキシプロピル、4−カルボキシブチル、10−カルボキシデシル、及び3−(エタン−1,2−ジカルボキシル)プロピル基などの、例えば、アルカン酸基、3−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラニル)プロピル基などの、酸無水物基、及び、ウンデセンシリルエスエル基などの、エステル基などの、カルボン酸基又はそれらの誘導体で置換された炭化水素基、
f)例えば、プロピオンアルデヒド基などの、ケトン官能基及びアルデヒド官能基などの、カルボニル基で置換された炭化水素基、
g)例えば、3−アクリロイルオキシプロピル及び3−メタクリロイルオキシプロピルなどの、アクリレート又はメタクリレート基で置換された炭化水素基、
h)例えば、プロピルポリグリコール基などの、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ−(1,4−ブタンジオール)及びそれらの共重合体から誘導されたものなどの、ポリエーテル基で置換されたSiC−又はSiOC−結合炭化水素基、
i)Xが好適なアニオンである、例えば、−(CH−N(CH及び−(CH−NH−CH−CH(OH)−CH−N(CH1225などの、第四級窒素原子で置換された炭化水素基、
j)例えば、ホスホナトアルキル基などの、ホスホナト基で置換された炭化水素基、
k)シララクトン基で置換された炭化水素基、
l)例えば、1〜10の単糖類単位からなってもよい、グリコシド基がアルキレン又はオキシアルキレンスペーサーを経由して結合しているものなどの、グリコシド基で置換された炭化水素基
である。
【0025】
はより好ましくはアミノプロピル、アミノエチルアミノプロピル、ヒドロキシプロピル又はメルカプトプロピルである。
【0026】
Aで表される染料基は好ましくは、アゾ、アントラキノン、オキシキノフタロン、クマリン、ナフタルイミド、ベンゾキノン、ナフトキノン、フラボン、アントラピリドン、キナクリドン、キサンテン、チオキサンテン、ベンゾキサンテン、ベンゾチオキサンテン、ペリレン、ペリノン、アクリドン、フタロシアニン、メチン、ジケトピロロピロール、トリフェンジオキサジン、フェノキサジン、若しくはフェノチアジン染料の又はそれらの金属錯体化合物の基である。
【0027】
染料基Aは、結合によって、すなわち、一価の基として、又は多価基として式(I)の単位に結合していてもよい。後者の場合には、それ故、染料Aは2つ以上のシル(オキサン)イル(sil(oxan)yl)基と互いに結合している。
【0028】
染料基Aの例は特に下の基A1〜A38である。
【0029】
【化2】

【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

【0034】
【化7】

式中、
Yは−O−、−S−又は−NR−であり、Rは水素又は(C〜C)アルキルであり、
そしてBは二価橋架けである。
【0035】
Bは染料発色団をシリコーンのケイ素原子に結び付け、そして好ましくは、非置換であっても若しくは置換されていても及び/又は酸素、窒素、及び硫黄などの、1つ以上のヘテロ原子で介在されていてもよい炭化水素基である。
【0036】
Bは好ましくは、非置換の若しくは置換された及び/又は酸素、窒素、及び硫黄などの、1つ以上のヘテロ原子で介在された二価の線状(C〜C30)炭化水素基である。例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、4−アザヘキシレン、1−ヒドロキシエチレン、4−オキサ−6−ヒドロキシヘプチレンなどの、非置換若しくは置換(C〜C10)アルキレン基、及びまた最大4つの糖基で置換されたアルキレン基が特に好ましい。
【0037】
式(I)の単位で、cが1である場合にdが0で、cは好ましくは0又は1であり、dは同様に0又は1である。
【0038】
本発明の好ましいオルガノポリシロキサンは、式(I)の単位の全ての少なくとも50%で、より好ましくは少なくとも80%で、非常に好ましくは少なくとも90%でa+b+c+dの合計が2であるものである。
【0039】
本発明の特に好ましいオルガノポリシロキサンは式(II)
3−m−nSiO−(ASiO)−(R2−fSiO)−(R2−hSiO)−(RAR1−jSiO)−SiA3−m−n (II)
(式中、
、R及びAは上に明記されたように定義され、
fは0又は1、好ましくは1であり、
hは0、1又は2、好ましくは0であり、
jは0又は1、好ましくは1であり、
mは0又は1であり、
nは0又は1であり、
eは0又は1〜100の整数であり、
gは0又は1〜100の整数であり、
iは0又は1〜100の整数であり、
kは1〜100の整数であり、
式(II)中のサブユニットが分子中にランダムに分配されることが可能である)
のものである。
【0040】
本発明のオルガノポリシロキサンの粘度は、好ましくは1mm/秒からそれらが室温で固体又はワックス様である稠度までの範囲である。10mm/秒〜10,000,000mm/秒の粘度範囲が特に好ましい。100mm/秒〜500,000mm/秒の粘度範囲、及びまた室温で固体又はワックス様稠度の範囲が特に好ましい。
【0041】
本発明のオルガノポリシロキサンの染料含有率は好ましくは、いずれの場合も本発明のオルガノポリシロキサンの総重量を基準として、0.1重量%〜90重量%、より好ましくは0.5重量%〜50重量%、特に5重量%〜25重量%である。
【0042】
本発明のオルガノポリシロキサンの例は、式(IIa)〜(IId)の下記の化合物である。
【0043】
【化8】

(式中、Meはメチルであり、mは1であり、nは55であり、そしてpは2〜3である)
【0044】
【化9】

(式中、Meはメチルである)
【0045】
【化10】

(式中、Meはメチルであり、mは2であり、nは100であり、そしてpは1〜2である)
【0046】
【化11】

(式中、Meはメチルであり、mは3であり、そしてnは150である)
【0047】
本発明のオルガノポリシロキサンは、共有結合した染料基は別としてそれらがまた、例えば、持続性、親水性又は疎水性、化学反応性などのさらなる特性を、色に加えて化合物に与えるかもしれない、さらなる官能基を有してもよいという利点を有する。さらに、本発明のオルガノポリシロキサンの所望の特性は、染料基、及びまた官能基の性質及び数及び/又はそれらのそれぞれの割合を変えることによって広い範囲内で修正する又は誂えることができる。
【0048】
本発明のオルガノポリシロキサンは、さらに、それらが安定であるという、言い換えればそれらが室温で、及び雰囲気の圧力で少なくとも1年間実質的な変化を全く受けないという、そしてそれらが容易に入手できるという利点を有する。
【0049】
本発明のオルガノポリシロキサンは、スルホン酸基及びスルホネート基を含まず、そして共有結合した反応性基を有する有機染料を、その染料の反応性基と共有結合を形成することができる官能基を有するオルガノポリシロキサンと反応させることによって製造することができる。
【0050】
シリコーンに可溶性である、スルホン酸基及びサルフェート基を含まない、有機染料を使用することが特に好ましい。シリコーン可溶性の反応性染料が用いられる場合、溶媒は必要ではない。
【0051】
染料に共有結合する反応基は、特に、式−SO(ここで、Xはハロゲン、好ましくはフルオロ又はクロロである)の基;
式−SO−(CH−V(ここで、Vはアルカリへの暴露によって脱離可能である部分であり、特にハロゲン、好ましくはクロロ、スルファト又はチオスルファトである)の基;
式−SO−CH=CHの基;
式−SO−NH−CH−CH−L(ここで、Lは脱離基、例えばフルオロ又はクロロなどの、ハロゲンである)の基;
−NH−CO−CH−X(ここで、Xは、フルオロ又はクロロなどの、ハロゲンである)の基;
式−NH−CO−C(X)=CH及びNH−CO−CH(X)−CH(ここで、X及びXは互いに独立して、クロロ又はブロモなどの、ハロゲンである)の基;
式−NH−CO−CH−CH(ここで、Rはハロゲン、サルファト又はスルフィナトである)の基;
式(III)
【0052】
【化12】

[式中、
及びQは互いに独立して、クロロ、フルオロ、シアナミド、ヒドロキシル、(C〜C)アルコキシ、フェノキシ、スルホフェノキシ、メルカプト、(C〜C)アルキルメルカプト、ピリジノ、カルボキシピリジノ、カルバモイルピリジノ、又は式(IV)、(V)若しくは(VI)
【0053】
【化13】

(式中、
は水素、(C〜C)アルキル、スルホ−(C〜C)アルキル又は、非置換若しくは(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、スルホ、ハロゲン、カルボキシル、アセトアミド又はウレイドで置換されているフェニルであり;
及びRは互いに独立してRの定義の1つを有するか又は式−(CH−(ここで、qは4若しくは5である)の、又は式−(CH−E−(CH−(ここで、Eは酸素、硫黄、スルホニル若しくは−NRであり、そしてRは(C〜C)アルキルである)の環システムを形成し;
Wは、非置換若しくは、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、カルボキシル、スルホ、クロロ、ブロモ、又は酸素、硫黄、スルホニル、アミノ、カロボニル、カルボキサミドで介在されていてもよい(C〜C)アルキレン−アリーレン若しくは(C〜C)アルキレンなどの、1つ若しくは2つの置換基で置換されているフェニレンであるか、又は非置換若しくは(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、ヒドロキシル、スルホ、カルボキシル、アミド、ウレイド又はハロゲンで置換されているフェニレン−CONH−フェニレンであるか、又は非置換若しくは1つ若しくは2つのスルホ基で置換されているナフチレンであり、そして
Zは−CH=CH又は−SO−(CH−V(ここで、Vは上に示されたように定義される)である)
の基である]
のトリアジン基;
例えば式(VII)〜(X)
【0054】
【化14】

(式中、
及びUは互いに独立して水素、フルオロ又はクロロであり、そして
はフルオロ又はクロロである)
のピリミジン基;
例えば式(XI)
【0055】
【化15】

のキノキサリン基;
例えば式(XII)
【0056】
【化16】

のキナゾリン基;
例えば式(XIII)
【0057】
【化17】

のフタラジン基;
例えば式(XIV)
【0058】
【化18】

のキノリン基;
例えば式(XV)
【0059】
【化19】


のイソキノリン基;
又は例えば式(XVI)
【0060】
【化20】

ベンゾチアゾール基
である。
【0061】
好ましい染料は、反応基として式−SO、−SO−(CH−Vの基、及び式(III)のトリアジン基を有するものである。
【0062】
染料は、いずれの場合も用いられるオルガノポリシロキサンの総重量を基準として、好ましくは0.1重量%〜900重量%、より好ましくは1重量%〜100重量%、特に5重量%〜35重量%の量で使用される。これに関連して染料のモル量を、用いられるオルガノポリシロキサン中に存在する官能基の最大99.9モル%に制限することが賢明である。
【0063】
本発明のプロセスに使用される染料は、商業的に入手することができるか、有機化学において一般的であり、そして当業者に公知である方法によって製造することができるかのどちらかである公知の染料である。
【0064】
染料の反応基と反応することができるオルガノポリシロキサンの官能基は、特に、アミノ、メルカプト、ヒドロキシル、カルボキシル、アクリレート、メタクリレート、カルボニル、ポリエーテル、及びホスホナトであるか、又はグリコシド、無水物、エポキシ若しくはシララクトン基を有するか又は第四級窒素を有する基である。かかる官能基を有し、そして本発明のプロセスに使用されるオルガノポリシロキサンは同様に、商業的に入手可能であるか、又はケイ素化学において一般的であり、そして当業者に公知である方法によって製造できる公知の製品である。
【0065】
例として、式(I’)
(RO)bR’c`SiO(4−a−b−c−d)/2 (I’)
(式中、R、R、R、a、b、及びdは上に示されたように定義され、R’は同一であるか又は異なることができ、そしてアミノ、メルカプト、ヒドロキシル、カルボキシル、無水物、アクリレート、メタクリレート、エポキシ、第四級窒素を含有する、グリコシド−、カルボニル−、ポリエーテル−、ホスホナト−及び/又はシララクトン−官能性炭化水素基であり、そしてc’はcについて定義された通りであり、ただし、a+b+c’+dの合計は3であり、オルガノポリシロキサンは、分子当たり、及びc’が0以外であり、dが0である(I’)の単位中に少なくとも1つの基R’を有する)
の単位を含むオルガノシロキサンについて言及されてもよい。
【0066】
R’の例はRについて上に与えられた例であり、例えば、アミノメチル、フェニルアミノメチル、アミノプロピル、アミノエチルアミノプロピル、及びシクロヘキシルアミノプロピル基などの、アミノ基及びそれらの誘導体で置換された炭化水素基、3−ヒドロキシルプロピル及び4−ヒドロキシブチル基などの、例えば第一級、第二級又は第三級アルコール基などのヒドロキシル基で置換された炭化水素基、例えば、フェノール又はオイゲノール基などの、芳香族ヒドロキシル基を有する炭化水素基、例えば、3−メルカプトプロピル基などの、メルカプト基で置換された炭化水素基、アセチル、3−カルボキシプロピル、4−カルボキシブチル、10−カルボキシデシル、及び3−(エタン−1,2−ジカルボキシル)プロピル基などの、例えば、アルカン酸基、3−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラニル)プロピル基などの、酸無水物基、並びにウンデセンシリルエステル基などの、エステル基などの、カルボン酸基又はそれらの誘導体で置換された炭化水素基が好ましく、例えば、アミノメチル、アミノプロピル、アミノエチルアミノプロピル及びシクロヘキシルアミノプロピル基などの、アミノ基及びそれらの誘導体で置換された炭化水素基、3−ヒドロキシプロピル及び4−ヒドロキシブチル基などの、例えば、第一級、第二級又は第三級アルコール基などのヒドロキシル基で置換された炭化水素基、例えば、フェノール又はオイゲノール基などの、芳香族ヒドロキシル基を有する炭化水素基、並びに例えば、3−メルカプトプロピル基などの、メルカプト基で置換された炭化水素基が特に好ましい。
【0067】
本発明に従って用いられるオルガノポリシロキサンの好ましい及び特に好ましい化学種は勿論、本発明のオルガノポリシロキサンと関連して上に既に記載されたものに類似の構造物である。
【0068】
本発明に従って使用されるオルガノポリシロキサンの粘度は、いずれの場合も25℃で、好ましくは1mm/秒〜5,000,000mm/秒、より好ましくは10mm/秒〜100,000mm/秒の範囲である。
【0069】
本発明に従って特に好ましく使用されるオルガノポリシロキサンは特に、0.01〜10.0のアミン価を有するものであり、アミン価は、1gの物質を中和するために必要とされる1MのHClのmL数である。
【0070】
本発明のプロセスは好ましくは、概して無水で、すなわち、いずれの場合も反応混合物の総重量を基準として、50,000ppm未満の水、好ましくは10,000ppm未満、特に5000ppm未満の水の存在下に実施される。
【0071】
本発明のプロセスは触媒の存在下に又は不存在下に実施することができる。触媒が使用される場合、それらは酸性又は塩基性触媒であってもよい。これらの触媒は、固体として、またはそれらの溶液の形態で使用されてもよい。
【0072】
酸性触媒の例は、例えば、リン酸、硫酸、塩酸、氷酢酸、及びギ酸などの、ブレンステッド(Brφnsted)酸、又は、例えば、過塩素酸リチウム、亜鉛テトラフルオロボレート、塩化鉄(II)、塩化スズ(IV)、及びルイス酸性イオン液体などの、ルイス(Lewis)酸である。
【0073】
塩基性触媒の例は、第一級、第二級若しくは第三級アミン、塩基性ピリジン、ピリミジン、キノリン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、インドール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピロール、オキサゾール、チアゾール及び/又は他のN−含有複素環誘導体、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム及び水酸化テトラメチルアンモニウムなどの、塩基性アンモニウム塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属アミド、及びルイス塩基性イオン液体である。
【0074】
触媒が本発明の反応に使用される場合、含まれる量は、反応体の総重量を基準として、好ましくは0.1重量%〜1重量%である。
【0075】
本発明のプロセスは、分散系(例えば、マイクロエマルジョン若しくはマクロエマルジョンなどの、固体−液体又は液体−液体)で、単相又は多相反応として溶媒あり又はなしで実施することができ、それは、1〜10μmの非常に小さい染料粒度の発生を目的として、水性分散系をはじめとする、分散系で実施されることが好ましく、それ故それが均一な単相反応として実施されることが特に好ましい。
【0076】
溶媒が本発明のプロセスのために使用される場合、問題の溶媒は好ましくは、反応の過程への影響なしの不活性溶媒である。本発明のプロセスのために個々に又は互いの混合物で用いることができる、好適な溶媒の例は、ペンタン、石油エーテル、n−ヘキサン、ヘキサンイソ混合物、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、洗浄ベンジン、デカリン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、メチル第三級ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジグリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、n−ヘキサノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、グリセロール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−、第二級−、及び第三級−ブチル、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、CO、アセトニトリル、アセトアミド、テトラヒドロ−1,3−ジメチル−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソプロピルケトン、イオン液体、線状及び環状シロキサン、並びに前記溶媒の混合物である。
【0077】
しかしながら、本発明のプロセスが好ましくない2相反応(液体−液体)として実施される場合、例えば、500μm未満の平均粒度を発生させることによるように、互いに非混和性の相の最大均質化及び大きな内部反応表面積の生成を確実にすることが必要である。反応相の強烈な共混合は、超音波プローブ若しくは超音波浴、電場、磁場若しくは電磁場などを用いて、又は−例えば連続反応体制の場合におけるように−固定若しくは移動混合要素若しくは混合ノズルで、及びまた乱流によって、又はそれらの任意の所望の組み合わせによって、ブランド名イカ・ウルトラ−ツルラックス(IKA Ultra−Turrax)(登録商標)で入手可能なもの若しくは類似の溶解機システムなどの、例えば、全ての種類の撹拌機、高速撹拌機及び高性能分散機などの、公知の先行技術混合システムのいずれかによって、原則として成し遂げられてもよい。
【0078】
本発明のプロセスが分散系で実施される場合、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性又は両性乳化剤などの、分散助剤(例えば、乳化剤)又は界面活性剤若しくは表面活性剤が存在することが従って可能であり、分散系の調製は当業者に公知の任意の所望の方法で行われることが可能である。
【0079】
本発明のプロセスに使用される反応体は、いずれの場合も1種類のかかる成分であっても、或いは少なくとも2種類のそれぞれの成分の混合物であってもよい。
【0080】
本発明のプロセスでは、使用される反応体は、それ自体知られている任意の所望の方法で互いに混合し、反応に供給する及び/又は反応させることができる。
【0081】
本発明のプロセスは、例えば、バッチ反応器、バッチ反応器カスケード、ループ反応器、流管、管型反応器、マイクロリアクター、循環ポンプ、及びそれらの任意の所望の組み合わせなどの、本目的のために好適な反応器システムで、回分式で、半回分式で又は連続的に実施することができる。
【0082】
本発明の反応が終わると、反応生成物は、それ自体公知である任意の所望のプロセス段階によって、用いられたいかなる反応助剤からも分離し、単離することができる。例は、濾過、遠心分離、及び抽出である。必要ならば、使用された揮発性成分及びいかなる溶媒もまた、反応後に、蒸留によって除去することができる。
【0083】
本発明のプロセスにはさらに任意の所望のさらなる操作段階が続いてもよく、それによって本発明のオルガノポリシロキサンの所望の特性を誂えることが可能である。このことは、例えば、所望の分子量、分子中の染料基の特有の分布、及び、必要ならば、さらなる官能性の導入を正確にセットすることが可能であることを意味する。この操作段階の実施は、この場合には当該技術の現状に基づいて基本的に調整され、当業者に公知である方法で行われる。
【0084】
かかるその後の反応の例は、具体的には、例えば、オルガノポリシロキサンとの平衡反応、例えば、シラノール、アルコキシ−若しくはクロロ−官能性シラン、及びシラノール−、アルコキシ−若しくはクロロ−官能性ポリシロキサン又はシリコーン樹脂、シリカ若しくは高分散ケイ酸(例えば、ワッカーHDK(WACKER HDK)(登録商標))などの、縮合反応が可能な他の有機ケイ素化合物との縮合、並びにまた有機ケイ素化合物のさらなる有機官能上の変性などである。
【0085】
本発明のプロセスは、先行技術を超えて様々な利点を有する。それは、製造上簡単であり、特別な装置なしに実現することができる。親油性であり、そして高度にシリコーン相溶性である、スルホン酸基及びスルホネート基を含まない反応性染料の使用によって、本発明の反応は、例えば、スルホン酸基及び/又はスルホネート基を含有する、国際公開第98/40429 A1号パンフレットに述べられている水溶性の反応性染料の場合に均一反応系のために必要とされるような、かなりの量の相溶化溶媒を添加することなく均一な単相反応として構成することができ、かかる溶媒は反応後に再び除去されなければならず、それはコストがかかり、不利である。単相反応は、短い反応時間で抜群の反応収率を可能にするのみならず、本発明のプロセスを費用効果的にし、資源の使用を控えさせ、そして、さらに、実質的に環境に適合したものにする。
【0086】
本発明のプロセスは、連続系にと等しく非連続系にも好適であり、費用、柔軟性、及び時空間収率の点でさらなる利点を伴う。
【0087】
本発明のオルガノポリシロキサンは着色剤として使用することができる。この場合に着色するための基材は、下により詳細に記載される、多様な材料を包含する。
【0088】
本発明のオルガノポリシロキサンは、目に見える又は潜在的な着色と共に、撥水性、撥汚れ性、保護、ソフトな手触り、光沢などの、シリコーンに典型的な特性の組み合わせに価値が置かれる場合に特に有利に使用することができる。
【0089】
化粧品用途分野では、好適な用途には、具体的に装飾美容術、スキンケア、及びヘアケアでのものが含まれる。典型的なヘアケア用途は、例えばパーマネント、セミパーマネント又は着色成分として本発明のオルガノポリシロキサンを含む化粧品調合物によるケラチン繊維の一時的な着色である。着色又は色直しに加えて、得られるかもしれないさらなる便益には、例えば、髪の光沢の、その容積の、及びそのカール保持の高揚、手触りへの改善されたソフトさ、梳き抵抗性の低下によるドライ又はウェット梳毛性の向上、帯電防止の低下、並びに分裂、乾き、及び構造的に有害な環境影響からのケラチン繊維の一般保護が含まれる。
【0090】
スキンケア部門でも同様に、本発明のオルガノポリシロキサンを−例えば、メーキャップ、リップスティック、リップグロス、マスカラ、アイライナー、マニキュア液、マッサージオイル若しくはマッサージゲルで、スキンクリームで又はサンケア製品で親油性調合原料として使用することが可能である。シリコーンに典型的な便益には、これに関連して、例えば、心地良い皮膚感覚、化粧品調合物の粘性の一般的な低下、存在する任意の顔料若しくはフィラーが凝集を受ける傾向の減少、及びまた、例えば、化粧品の役割での改善された耐水性につながる、皮膚表面上での疎水性だが通気性のバリアの進歩が含まれる。
【0091】
加えて、活性成分への特別な注意を引くために又は−例えば、販売理由のために−製品の光学的品質向上(製品の魅力の増大)を実施するために本発明のオルガノポリシロキサンで化粧品又は家庭用品を着色することが可能である。
【0092】
本発明のオルガノポリシロキサンはまた、さらに、紙、ティッシュ、皮革、及び織物用途向けに抜群に好適である。これらの基材の処理は一方では、例えば着色織物の色が製品の再着色によって回復される若しくは再強調されるときのように、純粋に装飾的若しくはファッション理由のためにのみ実施されてもよいし、又は基材ケア目的に役立ってもよい。他方では、色を与えるだけでなく、さもなければ多段処理法を用いてのみ達成することができる一連の正の便益を得ることも可能である。一例として、紙タオル、織物、糸、織布、天然若しくは合成繊維は一操作で着色し、そして同時に所望の手触り特性(ソフトな、優美な、ビロードのような、滑らかななど)を提供することができる。同様に、着色操作はまた、基材親水性化と又は、特に、基材疎水性化と組み合わせることができる。ティッシュ及び織物部門での親水性仕上げとは対照的に、一例として、湿式最終プロセスで、例えば、撥水性と併せてフル及び一様なディープ−ダウン着色を得るために着色した有機ケイ素化合物を使用することができる、皮革の処理についてここでは言及されてもよい。反対に、布ケア部門では、織物の親水性化及びソフト化は、洗浄操作の過程での色のディーピング、色の再生又は蛍光増白と組み合わせて望まれる。
【0093】
本発明のオルガノポリシロキサンはまた、さらに、不粘着性の、リプログラフィの、及び印刷用途にも使用することができる。例えば、両側を異なってケイ素処理されたか又は片側をケイ素処理された剥離紙の場合に、着色マーキングによって目視でサイドを区別できることは有用である。本発明のオルガノポリシロキサンは、通常の有機染料と違ってそれらが剥離紙の不粘着性に影響を及ぼさないので、この目的に特に好適である。さらに、本発明のオルガノポリシロキサンは、トナーの原料として又はカラー印刷用の調合物に使用することができる。織物顔料印刷でカラーアシスト添加剤として用いられるとき、本発明のオルガノポリシロキサンは、例えば、色のディープニング、色のより大きな輝度、光沢の提供、又は摩擦堅牢性の向上などの、一連の所望の便益につながる。
【0094】
従来建築保存及び織物構築物は、本発明のオルガノポリシロキサンのための用途の2つのさらなる分野である。建築保存(建てられた構造物の維持、建物の長期安定性の確保、及び建材への撥水性の付与)で及び織物構築物での両方で、ケイ素−ベースの製品は重要な役割を果たす。かかる製品の色変更との関連で、要件は、その大部分ケイ素−ベースである、構成要素間の100%適合性に関してのみならず、撥水性、水蒸気透過性、及び環境影響に対するコーティングの長期抵抗の点での支援に関してもである。これらの要件の全ては本発明のオルガノポリシロキサンによって満たされ、それらはそれ故、建築保存コーティング、壁ペイント又はワニスの着色調合原料としての使用に、大部分疎水性化された又は表面疎水性化された鉱物性建材の着色に、及びまた、例えば、窓パネル、コンベヤベルト、安全衣又は防護衣用に使用される種類の、織物コーティング及びケイ素処理織物織布、編物又はループ形態製品の色の変更にも抜群に好適である。
【0095】
本発明のオルガノポリシロキサンは、さらに、基材の性質及び塗布層の厚さに依存して非常に異なる効果が得られて、研磨用途にも好適である。例えば、本発明のオルガノポリシロキサンは、典型的なターゲット効果が色強化、色再生、色直し、及び不規則性又は引っ掻き傷のマスキングを含む、ペイントケアに(例えば、自動車部門で)、皮革、家具又はラッカー塗装品の磨きに、及びまたハードワックスケア製品にも使用することができる。靴クリーム部門で本発明のオルガノポリシロキサンは、外側皮革の疎水性化、色のディーピング、及び輝きの向上に貢献する。
【0096】
さらに、本発明のオルガノポリシロキサンは、ポリマー、ポリマーブレンド、ポリマー配合物、又はそれらから製造することができる非常な多種多様なプラスチックのいずれかを着色するのに極めて好適である。具体的にはそれらは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポルスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などの、熱可塑性樹脂を着色するのに好適である。
【0097】
本発明のオルガノポリシロキサンは、さらに、例えば、シリコーン及びシリコーンエラストマー、樹脂、並びにワックスなどの、全ての種類のケイ素ポリマーの着色に特に好適であり、本発明のオルガノポリシロキサンは、分子着色成分としてポリマー中に均一に分配され、そしてそのようなものとしてもはやポリマーから抽出できない。これに関連して、着色基のみならず、さらなる官能基をシリコーンバックボーン上に有することにおける本発明の着色オルガノポリシロキサンの利点は、全ての種類のケイ素ポリマーで加硫が達成され、最高の透明性及び適合性をもたらし、及びまた着色成分の移行を防ぐように、これらのさらなる官能基を選択することができるので明らかになる。加えて、本発明のオルガノポリシロキサンの高い透明性は、広いスペクトル範囲にわたる高い透光性と併せてポリマーの非常にきれいな透明な着色を得ることを可能にさせる。
【0098】
今までに述べられた用途に加えて、本発明のオルガノポリシロキサンはまた、例えば、浸透深さの、塗布層厚さ、重量、及び均一性の測定との関連、製品若しくは化合物の流れの監視、並びに仕上げ操作(例えば、シリコーン製品での天然若しくは合成繊維の仕上げなどの)の根底にあるプロセスの研究におけるように、移行、浸透、沈降若しくはコーティングのプロセスの研究用のマーカー物質としても好適である。本発明のオルガノポリシロキサンの染料基がUV活性で、蛍光性で、リン光性で、又は酵素的に、化学的に若しくは物理的に刺激を受け得る発色団である場合、本発明のオルガノポリシロキサンはまた、製品又は調合物の目立たないマーキングのための隠されたカンパニーシールとして使用することもできる。
【0099】
一般に本発明のオルガノポリシロキサンはまた、製品若しくは製品配合の均一性又はその正しい用途の目に見える指標を得るためにも好適である。後者は、例えば、不粘着性紙コーティングの、日焼け止め剤若しくは類似のサンケア製品の、医薬品の、及び医療品(例えば、広範囲に及ぶ局所塗布の場合における)の場合におけるように、1つ以上の製品ができる限り一様にある区域に塗布されるか又はある区域上に分配されることが必要である分野で特に非常に重要である。
【0100】
本発明のオルガノポリシロキサンはまた、最終的に、食品、農業、及び医薬部門での親油性基材に色合いを付けるのにも好適である。
【実施例】
【0101】
以下の実施例は本発明を例示する。百分率で与えられる全ての部は、特に明記しない限り重量を意味する。さらに、全ての粘度数字は25℃の温度に関する。特に明記しない限り、以下の実施例は、周囲の大気の圧力下に、言い換えればおおよそ1000hPaで、及び室温で、言い換えれば約20℃で、又は反応体が追加の加熱若しくは冷却なしに室温で組み合わせられるときに生じる温度で実施される。
【0102】
実施例1
次の構造
【0103】
【化21】

を有する440mg(991μモル)の染料を、110gのアミノアルキル保持ポリジメチルシロキサン(アミン価:グラム当たり90μモルのアミノ基;粘度:601mm/秒)へ計量供給し、高性能分散機(例えば、イカ・ウルトラ−ツルラックス(登録商標))を用いて10分間該シロキサン中に均一に分配させた。混合物を次に撹拌しながら100℃で4時間加熱した。室温に冷却した後、生成物を、デプスフィルタを通して濾過した。これは100g(91%)の黄着色シリコーンオイルを生成した。
【0104】
実施例2
440mg(991μモル)の実施例1に記載した染料を、110gのアミノアルキル保持ポリジメチルシロキサン(アミン価:グラム当たり90μモルのアミノ基;粘度:601mm/秒)へ計量供給し、高性能分散機(例えば、イカ・ウルトラ−ツルラックス(登録商標))を用いて10分間該シロキサン中に均一に分配させた。次に撹拌しながら700mLのトルエンを加え、混合物を撹拌しながら還流温度で4時間加熱した。室温に冷却した後、生成物を、デプスフィルタを通して濾過した。これは99g(90%)の黄着色シリコーンオイルを生成した。
【0105】
実施例3
実施例1に記載した染料(991μモル)の水分散系3.52g(12.5重量%;ビーズミルでの着色剤の細砕によって調製した)を、110gのアミノアルキル保持ポリジメチルシロキサン(アミン価:グラム当たり90μモルのアミノ基;粘度:601mm/秒)へ計量供給した。混合物を次に撹拌しながら100℃で4時間加熱した。それを室温に冷却した後、揮発性成分の全てを真空で除去し、得られた残留物を、未反応成分を除去するためにデプスフィルタを通して濾過した。これは99g(90%)の黄着色シリコーンオイルを生成した。
【0106】
実施例4
次の構造
【0107】
【化22】

を有する540mg(984μモル)の染料を、110gのアミノアルキル保持ポリジメチルシロキサン(アミン価:グラム当たり90μモルのアミノ基;粘度:601mm/秒)へ計量供給し、高性能分散機(例えば、イカ・ウルトラ−ツルラックス(登録商標))を用いて10分間該シロキサン中に均一に分配させた。混合物を次に撹拌しながら100℃で4時間加熱した。室温に冷却した後、生成物を、デプスフィルタを通して濾過した。これは100g(91%)の青着色シリコーンオイルを生成した。
【0108】
実施例5
次の構造
【0109】
【化23】

を有する560mg(991μモル)の染料を、110gのアミノアルキル保持ポリジメチルシロキサン(アミン価:グラム当たり90μモルのアミノ基;粘度:601mm/秒)へ計量供給し、高性能分散機(例えば、イカ・ウルトラ−ツルラックス(登録商標))を用いて10分間該シロキサン中に均一に分配させた。混合物を次に撹拌しながら100℃で4時間加熱した。室温に冷却した後、生成物を、デプスフィルタを通して濾過した。これは98g(89%)のオレンジ着色シリコーンオイルを生成した。
【0110】
実施例6
次の構造
【0111】
【化24】

を有する560mg(995μモル)の染料を、110gのアミノアルキル保持ポリジメチルシロキサン(アミン価:グラム当たり90μモルのアミノ基;粘度:601mm/秒)へ計量供給し、高性能分散機(例えば、イカ・ウルトラ−ツルラックス(登録商標))を用いて10分間該シロキサン中に均一に分配させた。混合物を次に撹拌しながら100℃で4時間加熱した。室温に冷却した後、生成物を、デプスフィルタを通して濾過した。これは99g(90%)のルビー着色シリコーンオイルを生成した。
【0112】
実施例7
次の構造
【0113】
【化25】

を有する490mg(996μモル)の染料を、110gのアミノアルキル保持ポリジメチルシロキサン(アミン価:グラム当たり90μモルのアミノ基;粘度:601mm/秒)へ計量供給し、高性能分散機(例えば、イカ・ウルトラ−ツルラックス(登録商標))を用いて10分間該シロキサン中に均一に分配させた。混合物を次に撹拌しながら100℃で4時間加熱した。室温に冷却した後、生成物を、デプスフィルタを通して濾過した。これは97g(88%)の黄着色シリコーンオイルを生成した。
【0114】
実施例8
実施例7に記載した染料(996μモル)の水分散系7.3g(6.7重量%;ビーズミルでの着色剤の細砕によって調製した)を、110gのアミノアルキル保持ポリジメチルシロキサン(アミン価:グラム当たり90μモルのアミノ基;粘度:601mm/秒)へ計量供給した。混合物を次に撹拌しながら100℃で4時間加熱した。それを室温に冷却した後、揮発性成分の全てを真空で除去し、得られた残留物を、未反応成分を除去するためにデプスフィルタを通して濾過した。これは100g(91%)の黄着色シリコーンオイルを生成した。
【0115】
実施例9
次の構造
【0116】
【化26】

を有する530mg(993μモル)の染料を、110gのアミノアルキル保持ポリジメチルシロキサン(アミン価:グラム当たり90μモルのアミノ基;粘度:601mm/秒)へ計量供給し、高性能分散機(例えば、イカ・ウルトラ−ツルラックス(登録商標))を用いて10分間該シロキサン中に均一に分配させた。混合物を次に撹拌しながら100℃で4時間加熱した。室温に冷却した後、生成物を、デプスフィルタを通して濾過した。これは98g(89%)の赤着色シリコーンオイルを生成した。
【0117】
上記の実施例におけると同じ方法で、染料基(A19)〜(A38)を有する発明シリコーンオイルを得ることもまた可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
(RO)SiO(4−a−b−c−d)/2 (I)
[式中、
Rは同一であるか又は異なることができ、そして水素又は一価の、非置換若しくは置換炭化水素基であり、
は同一であるか又は異なることができ、そして水素又は一価の、SiC−結合した、非置換若しくは置換炭化水素基であり、
は同一であるか又は異なることができ、そして置換された一価の炭化水素基であり、
Aは同一であるか又は異なることができ、そしてスルホン酸基及びスルホネート基を含まない有機染料基であり、
aは0、1、2又は3であり、
bは0、1、2又は3であり、
dは0、1、2又は3であり、そして
cは0、1又は2であり、
ただし、a+b+c+dの合計は3以下であり、オルガノポリシロキサンが分子当たり、そして式(I)(cは0以外であり、dが0である)の単位中に少なくとも1つの基Aを有する〕
の単位を含む着色オルガノポリシロキサン。
【請求項2】
Rが水素、メチル、エチル又はプロピルである、請求項1に記載の着色オルガノポリシロキサン。
【請求項3】
がメチル、ビニル又はアリルである、請求項1又は2に記載の着色オルガノポリシロキサン。
【請求項4】
がアミノプロピル、アミノエチルアミノプロピル、ヒドロキシプロピル又はメルカプトプロピルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の着色オルガノポリシロキサン。
【請求項5】
式(II)
3−m−nSiO−(ASiO)−(R2−fSiO)−(R2−hSiO)−(RAR1−jSiO)−SiA3−m−n (II)
(式中、
、R及びAは請求項1に記載のように定義され、
fは0又は1、
hは0、1又は2、
jは0又は1、
mは0又は1であり、
nは0又は1であり、
eは0又は1〜100の整数であり、
gは0又は1〜100の整数であり、
iは0又は1〜100の整数であり、
kは1〜100の整数であり、
式(II)中のサブユニットが分子中にランダムに分配されることが可能である)
のものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の着色オルガノポリシロキサン。
【請求項6】
染料含有率が、いずれの場合も着色オルガノポリシロキサンの総重量を基準として、0.1重量%〜90重量%、より好ましくは0.5重量%〜50重量%、特に5重量%〜25重量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の着色オルガノポリシロキサン。
【請求項7】
スルホン酸基及びスルホネート基を含まず、そして共有結合する反応基を有する有機染料を、該染料の反応基と共有結合を形成することができる官能基を有するオルガノポリシロキサンと反応させる工程を含む、請求項1に記載の着色オルガノポリシロキサンの製造プロセス。
【請求項8】
スルホン酸基及びスルホネート基を含まない、使用される有機染料がシリコーンに可溶性である、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
請求項1に記載の着色オルガノポリシロキサンの着色剤としての使用。

【公表番号】特表2009−540078(P2009−540078A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514756(P2009−514756)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055589
【国際公開番号】WO2007/144302
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(503412791)ダイスター・テクスティルファルベン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・ドイッチュラント・コマンデイトゲゼルシャフト (40)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】