説明

着色凝集剤

【課題】 水処理に使われる凝集剤の多くは白色をしているが、凝集剤は種類が多く、視覚で種類を区別することは困難である。また、製造においても、複数の原材料を混合して製造する場合、原材料が均一に混合されているかどうかを目視で判断することは困難である。凝集沈澱処理によって形成される凝集フロックは、再利用される場合や産業廃棄物として埋め立て処分される場合があるが、第三者が凝集フロックを見て、安全なものであるかどうかを目視で判断することはできない。また、白色の粉末状の食品は数多くあり、凝集剤の保管方法や取扱い方法によっては、それらの食品と凝集剤を区別出来ず、誤飲・誤食の危険性がある。
【解決手段】水や油に対し不溶性である顔料を凝集剤に混合することで、凝集剤を着色する。複数の材料を混合して凝集剤を製造する場合は、顔料を原材料に加えることで、製造と着色を同時に行うことができる。混合する顔料は凝集剤に対し1%以下であっても、着色を目視で確認することができる。顔料は水や油に対し不溶性であるため、汚水に溶け出すことはなく、凝集剤によって凝集沈澱されるため、汚水の凝集沈澱の阻害になるとは考えられない。また、凝集沈澱処理により形成された凝集フロックも顔料によって着色される。このことにより、複数の凝集剤ならびに形成される凝集フロックを目視で区別することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理の凝集剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理の凝集剤は、汚水中の懸濁物質や重金属などの有害物質を取り除くことが目的であり、除去したい成分によって凝集剤の材料や配合が異なる。また、除去したい成分が同じであっても、pHなどの汚水の性状に応じて材料の種類や配合が異なるため、凝集剤の種類は多数存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
見た目で識別しにくいものを着色して識別しやすくする技術は多数あるが(特許公開平11−210727公報)、凝集剤を着色して識別しやすくすることはこれまでなかった。これは、凝集剤を使用し凝集沈澱を行った結果、汚水が透明になるほど凝集剤の性能が高いと感覚的に判断されるため、これまでに凝集剤を着色するという発想がなかったためである。また、粉末を着色する技術も多数あるが(特許公開2000−281978公報)、本発明では市販の顔料を用いて、凝集剤の製造過程の中で着色することが特色である。
【特許文献1】特許公開平11−210727公報
【特許文献2】特許公開2000−281978公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粉末状の凝集剤の多くは白色や灰色である。これは、凝集剤の原材料の多くが白色や灰色をしているためである。そのため、凝集剤の種類は複数あるにも係わらず、見た目で識別することは困難である。このことから複数の凝集剤を使用または保管する事業所などでは、凝集剤の見分けがつかなくなり、適正に水処理が行えなくなると危険がある。
【0005】
凝集沈澱処理によって形成される凝集フロックは、凝集剤の材料や除去成分によって、再利用される場合や産業廃棄物として埋め立て処分される場合がある。しかし、人体や環境にとって有害なものであるかどうかは、凝集沈澱処理を行った当事者しか知ることができず、第三者が見た目では判断することができない。そのため、有害な物質を凝集沈澱して形成された凝集フロックといった有害な凝集フロックを、第三者が誤って暴露したり、誤って処理をする危険がある。
【0006】
粉末の凝集剤の多くは白色〜灰色をしており、小麦粉のような粉末の食品とよく似た性状をしている。そのため、誤飲・誤食の危険性がある。特に、児童向けの学習機材として凝集剤を使用する場合、誤飲・誤食を防ぐ対策が必要となる。
【0007】
凝集剤の性能をよくするため、複数の原料を混合して粉末の凝集剤を作製する場合、原料を均一に混ぜることは製品の品質を管理する上で非常に重要である。しかし、原料の多くは粉末であり、白色、灰色、淡黄色といったよく似た色をしていることが多い。そのため、均一に混ざっているかどうかを目視で判断することは困難であり、熟練した作業者の触感や測定機器による分析、原材料を撹拌する時間の長さから均一に混ざっているかどうかを判断することとなる。このため、判断できる作業者が限られることや、製品の一部を抜き出して判断するため製品全体を判断することができない、といった問題点があり、短時間で簡易に品質を管理することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
凝集剤の種類に応じて種類別の着色を行う。着色の材料は粒子径が細かく、水や油に不溶性である顔料や蛍光塗料を用いる。
【発明の効果】
【0009】
凝集剤の種類に応じて種類別の着色をすることで、次のような発明の効果がある。
(1)凝集剤の種類を見た目で区別することができるので、凝集剤を使用するときや保管 ・運搬するときに、他の用途の凝集剤と間違えにくくなる。
(2)着色された凝集剤によって凝集沈澱処理されるため、形成された凝集フロックにも 色が付く。凝集フロックの色を見ることで、用いた凝集剤の種類ならびに凝集の目 的成分が分かり、凝集フロックの安全性や処分方法が第三者でも判断できるように なる。
(3)色や色の濃さを変えることで、粉末の食品とはあきらかに異なる色の凝集剤を作成 することができ、誤飲・誤食の危険性を減らすことができる。
(4)複数の原材料を混合して凝集剤を製造する場合、着色剤を加えて混合を行う。凝集 剤が均一に着色されていれば、材料が均一に混ざっている目安となるため、品質管 理の工程の一部に、目視で判断することを取り入れることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
水や油に溶けるものは染料であり、溶けないものは顔料や蛍光塗料とよばれている。各色のメーカーより製造されており、国内で容易に入手することができる。本発明では、これらの顔料や蛍光塗料を凝集剤に混合し、凝集剤の着色を行う。
【0012】
ミキサーなど用いて複数の材料を混合して凝集剤を作製する場合は、顔料を材料に追加することで、材料の混合と着色を同時に行うことが出来る。
【0013】
顔料の多くは凝集剤の原材料よりも粒子径が小さいため、少量添加するだけで凝集剤を着色することができる。例えば弊社が使用している緑色の顔料は粒子径が約0.5μmであり、凝集材の粒子径は500〜1μmである。凝集剤100重量に対し、市販の顔料を1重量以下の混合であっても、着色を目視で確認することができる。顔料の添加がわずかであるため、凝集剤の着色による性能の劣化はほとんど考えられない。
【0014】
顔料自体は水や油に対し不溶性であるため、汚水に対し溶けることはない。そのため、顔料も凝集剤によって凝集され、凝集沈澱処理によって凝集フロックに形成される。このことから、凝集剤の着色による水質の悪化は考えられない。
【0015】
凝集フロックに顔料が加わるため、凝集フロックが着色される。凝集フロックの再利用方法や処分方法に応じて適切な色が異なるため、凝集フロックの用途に合わせて製造段階で適切な着色方法をあらかじめ選択する必要がある。
【実施例】
【0016】
凝集剤は、無機凝集剤、有機凝集剤に大別される。無機凝集剤としては、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化鉄化合物などが一般によく使われている。有機凝集剤には、ポリマーとしてポリアクリルアミドの加水分解物が一般的によく使用されている。重量部100に対し、市販の顔料0.1重量部を添加し、均一になるまで混合することで鮮やかな色彩の凝集剤を作製することができる。
【0017】
黄色絵の具が溶解した汚水に、緑色顔料を混ぜて作製した緑色の凝集剤を加え、凝集沈澱処理によって汚水を透明にすることができた。形成された凝集フロックは、顔料を混ぜていない凝集剤では絵の具由来の黄色をしていたが、緑色顔料を加えた緑色凝集剤では黄緑色の凝集フロックが形成され固液分離が色の変化で識別できる。
【0018】
工場や建設で発生する汚水・濁水を処理するために、凝集剤を用いた凝集沈澱処理が一般によく行われている。 砒素等の重金属を含む濁水に、青色顔料を混ぜて作製した青色の凝集剤を加え、凝集沈澱処理によって汚水を透明にすることができた。排水中の砒素濃度を測定する事は、砒素が水に溶解するため分析を行う必要がある。しかし、着色凝集剤で形成された凝集フロックは砒素の分離を色で識別する事が可能となる。
【0019】
児童向けの学習教材用の凝集剤を開発した。泥水や絵の具、墨汁といった、身近にある排水を凝集沈澱して処理を行うことで、化学や環境の興味を高めることが狙いである。泥水、絵の具の排水、墨汁の排水、アルカリ性の排水、酸性の排水、油性の排水といった排水の種類に対して、対応する凝集剤に緑色、赤色、青色、黄色、灰色、桃色といった色を着色した。着色することによって、対象とする排水に対しどの凝集剤を使うか分かりやすくなること、鮮やかな発色の凝集剤を目にすることで凝集剤に親しみや興味をもってもらうこと、似たような形状の物質と区別できることから誤食・誤飲・誤使用を防ぐこと、着色した沈澱が形成されることから凝集沈澱の効果をより視覚的に実感してもらうことができるようになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、蛍光塗料を添加し、凝集剤の種類、用途、異物、重金属を色で判断できるようにした凝集剤。
【請求項2】
顔料、蛍光塗料を添加し、形成される凝集フロックを色で判断できるようにした凝集剤。

【公開番号】特開2011−235276(P2011−235276A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128303(P2010−128303)
【出願日】平成22年5月2日(2010.5.2)
【出願人】(599140574)
【Fターム(参考)】