説明

着色剤組成物

【課題】 高い隠蔽性を有する着色成形品を与える着色剤組成物を提供する。
【解決手段】 ポリプロピレン樹脂0.01〜99.97%(質量)と、顔料0.01〜60%(質量)と、エラストマー成分0.01〜60%(質量)と、分散剤0.01〜40%(質量)とを含有してなることを特徴とする着色剤組成物。ポリプロピレン樹脂としては、MIが0.1〜30(190℃、2.16Kg)で、またエラストマー成分としては超低密度ポリエチレンが好適に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン樹脂を成形加工と同時に着色し得る着色剤組成物であって、特にエラストマー成分を含有し、隠蔽性に優れた着色成形品を与える着色剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、ユリア樹脂などの熱硬化性樹脂などの各種合成樹脂は、工業材料および日常の家庭生活において便利で有用な材料として各種製品に広く利用されている。
【0003】
これら樹脂の着色に際しては、従来、樹脂と顔料とを押出機などで溶融混練して着色樹脂ペレットとし、これを成形して着色する方法、あるいは未着色ペレットと顔料とを成形時に混練し、成形加工と同時に着色する方法などが用いられている。
【0004】
しかし、これらの着色方法では顔料が樹脂中に均一に分散されず、着色が不均一になるばかりか、成形品の表面も不均一となって滑らかに成形されないという欠点を有している。
【0005】
そこで、最近では、成形すべき樹脂と同一の樹脂に顔料を混練して得られる着色剤組成物、すなわち、ドライカラー、マスターバッチなどが工業的に多く利用されている。これらドライカラーやマスターバッチは、この中に使用された樹脂と同種の樹脂に混練され、成形加工と同時に着色を行うものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの顔料および着色剤組成物を使用して着色した場合、樹脂に分散させる顔料粒子の粒径とその隠蔽性は相反する関係にあるため、粒径の小さな顔料においては隠蔽性が落ち、隠蔽性を高めるためには顔料添加量を高くすることが必要である。顔料のコストは、上記の各種合成樹脂と比べ高いため、コストアップの要因となっている。
【0007】
ポリプロピレン樹脂などの結晶質樹脂にエラストマー成分などの非晶質物質を混合した際、海島構造と呼ばれるミクロ相分離状態になることが報告されている。
【0008】
カーボンブラックなどの顔料を、これらの混合物に分散させた場合、顔料はその非晶質物質のみに存在し、着色相を形成する。この際、そのミクロ相分離状態にある非晶質物質の存在粒径にあった着色粒径が得られる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、これらの性質を利用し、高い隠蔽性を有する着色成形品を与える着色剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的は以下の本発明によって達成される。
1.ポリプロピレン樹脂0.01〜99.97%(質量)と、顔料0.01〜60%(質量)と、エラストマー成分0.01〜60%(質量)と、分散剤0.01〜40%(質量)とを含有してなることを特徴とする着色剤組成物。尚、上記の「%(質量)」は着色剤組成物を「100%(質量)」とした時の各成分の割合を示す。
2.前記ポリプロピレン樹脂のMIが、0.1〜30(190℃、2.16Kg)である前記1に記載の着色剤組成物。
3.前記顔料が、無機顔料の群から選択される一種または複数種である前記1に記載の着色剤組成物。
【0011】
4.前記顔料が、カーボンブラックである前記1に記載の着色剤組成物。
5.前記エラストマー成分のMIが、0.1〜50(190℃、2.16Kg)である前記1に記載の着色剤組成物。
6.前記エラストマー成分が、超低密度ポリエチレンである前記1に記載の着色剤組成物。
【0012】
7.前記分散剤が、脂肪酸エステル系分散剤ワックスである前記1に記載の着色剤組成物。
8.前記脂肪酸エステル系分散剤ワックスが、アマイド系ワックスである前記7に記載の着色剤組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる着色剤組成物は、ポリプロピレン樹脂と顔料とエラストマー成分と分散剤とを所定の比率で配合することにより得られ、該着色剤組成物によれば、隠蔽性が良好な着色成形品を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明に用いられるポリプロピレン樹脂としては、従来から用いられている通常のポリプロピレン樹脂であり、例えば、ホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーのポリプロピレン樹脂が挙げられる。本発明ではこれらのポリプロピレン樹脂を単独であるいは複数種を組み合わせて使用される。
【0015】
上記ポリプロピレン樹脂のうちでは、特にメルトインデックス(MI)が、0.1〜30(190℃、2.16Kg)のホモポリマーが好適である。より好ましいMIは10〜20である。上記MIが0.1より小さい場合は、着色剤組成物と被着色材料との混練による混合が難しく、充分なミクロ相分離状態が得られないので好ましくない。一方、MIが30を超えると、着色剤組成物を押出機でペレット化する時の加工性が低下するので好ましくない。
【0016】
さらに、本発明に用いられる顔料としては、例えば、酸化チタン、べんがら、鉛丹、カーボンブラックなどの無機顔料が挙げられる。本発明ではこれら無機顔料を単独で、あるいは複数種を組み合わせて使用される。特にカーボンブラックが好ましい。
【0017】
さらに、本発明に用いられるエラストマー成分としては、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・ブテンゴムおよび超低密度ポリエチレン(VLDPE)などが挙げられる。特にMIが0.1〜50(190℃、2.16Kg)の超低密度ポリエチレンが好適である。より好ましいMIは20〜40である。上記MIが0.1より小さい場合は、着色剤組成物と被着色材料と混練による混合が難しく、着色成形品において充分なミクロ相分離状態が得られないので好ましくない。一方、MIが50を超えると、着色剤組成物のバンバリーミキサーなどでの混練時の加工性が低下するので好ましくない。
【0018】
さらに、本発明に用いられる分散剤としては脂肪酸エステル系分散剤ワックスであるアマイド系ワックスなどが挙げられる。
【0019】
本発明の着色剤組成物は上記成分を必須成分とする。ポリプロピレン樹脂は着色剤組成物中において0.01〜99.97%(質量)を占める割合であり、好ましくは40〜60%(質量)を占める割合である。ポリプロピレン樹脂が0.01%(質量)未満では、着色剤組成物のポリプロピレン樹脂への混合性が劣り加工性の点で好ましくない。一方、ポリプロピレン樹脂が99.97%(質量)を超えると、着色成形品においてミクロ相分離状態をとることが難しくなるので好ましくない。
【0020】
顔料は着色剤組成物中において0.01〜60%(質量)を占める割合であり、好ましくは20〜40%(質量)を占める割合である。顔料が0.01%(質量)未満では、着色剤組成物の着色力が低く、着色剤としても機能がなくなるので好ましくない。一方、顔料が60%(質量)を超えると、着色剤組成物と被着色材料であるポリプロピレン樹脂との混合性が悪くなるので好ましくない。
【0021】
また、エラストマー成分は着色剤組成物中において0.01〜60%(質量)を占める割合であり、好ましくは20〜40%(質量)を占める割合である。エラストマー成分が0.01%(質量)未満では、着色成形品においてミクロ相分離状態をとることが難しくなるので好ましくない。一方、エラストマー成分が60.0%(質量)を超えると、着色剤組成物と被着色材料であるポリプロピレン樹脂との混合性が悪くなるので好ましくない。
【0022】
また、分散剤は、着色剤組成物中において0.01〜40%(質量)を占める割合であり、好ましくは0.1〜3%(質量)を占める割合である。分散剤が0.01%(質量)未満では、分散剤の効果が不充分で顔料が分散不良となるので好ましくない。一方、分散剤が40.0%(質量)を超えると、バンバリーミキサーでの着色剤組成物の加工時の加工性が悪くなるので好ましくない。
【0023】
なお、本発明の着色剤組成物は上記成分以外に他の任意の成分、例えば、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を必要に応じて添加してもよい。
【0024】
上述の組成からなる本発明の着色剤組成物は、実用的には、まず、前記した組成比で顔料とエラストマー成分と分散剤とをバンバリーミキサーなどの混練機を用いて混練して混練物を得る。この際の混練温度は100〜200℃が好ましい。次いで、得られた混練物を前記した組成比でポリプロピレン樹脂とともに押出機などの適当な混練機で溶融混練することで得られる。この際の混練温度は150〜250℃が好ましい。このような着色剤組成物は着色剤マスターバッチとして使用され、特にポリプロピレン樹脂の着色成形に有用であり、高い隠蔽性と優れた表面平滑性を有する着色成形品が得られる。
【0025】
上述の着色剤マスターバッチによる未着色ポリプロピレン樹脂の着色成形は、該着色剤マスターバッチを最終成形品に要求される着色濃度に従って、未着色ポリプロピレン樹脂と混合し、各種の押出機、射出成形機などにより150℃〜300℃の温度で行なうことができ、例えば、板状、フィルム状などの成形品が得られる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の実施例を挙げ、比較例と比較しながら本発明を詳述する。なお、実施例および比較例中、「部」は質量部であり、「%」は質量%である。
【0027】
実施例1
カーボンブラック35.0部、エラストマー成分(VLDPE MI:20)34.0部、アマイド系分散剤ワックス0.8部および酸化防止剤0.2部をバンバリーミキサーを用いて混練する。
【0028】
得られた混練物70部と、ポリプロピレン樹脂(ホモポリマー MI:18)30部とをヘンシェルミキサーで充分に混合後、押出機を用い、150℃〜250℃の温度で押出し混練造粒し、3×3mmの大きさの円柱状着色剤マスターバッチを得る。
【0029】
この着色剤マスターバッチ5部を上記ポリプロピレン樹脂100部と混合し、型締め圧力50トンの射出成形機を用いて、180℃〜220℃の温度で成形加工と同時に着色し、50×60×2mmの成形板を得る。この成形板について目視で隠蔽性を観察し、結果を表1に示した。
【0030】
また、この成形板をカミソリなどを用いて切断し、その切断面を電子顕微鏡を用いて観察し、顔料−エラストマー成分のミクロ相分離状態を確認した。その結果を表1に示す。なお、表1中、1〜5はそれぞれ隠蔽性およびポリプロピレン樹脂中の顔料−エラストマー成分のミクロ相分離状態の程度を表し、数値が大きいほど良好であることを意味する。
【0031】
表1から明らかなように、実施例1にかかる成形板は隠蔽性が良好である。また、実施例1のポリプロピレン樹脂中の顔料−エラストマー成分のミクロ相分離状態も良好である。
【0032】
実施例2
べんがら35.0部、エラストマー成分(VLDPE MI:20)34.0部、アマイド系分散剤0.8部および酸化防止剤0.2部をバンバリーミキサーを用いて混練する。
【0033】
得られた混練物70部と、ポリプロピレン樹脂(ホモポリマー MI:18)30部とをヘンシェルミキサーで充分に混合の後、押出機を用い、150℃〜250℃の温度で押出し混練造粒し、3×3mmの大きさの円柱状着色剤マスターバッチを得る。
【0034】
この着色剤マスターバッチ5部を上記ポリプロピレン樹脂100部と混合し、型締め圧力50トンの射出成形機を用いて、180℃〜220℃の温度で成形加工と同時に着色し、50×60×2mmの成形板を得る。この成形板について目視で隠蔽性を観察し、結果を表1に示した。
【0035】
また、この成形板をカミソリなどを用いて切断し、その切断面を電子顕微鏡を用いて観察し、顔料−エラストマー成分のミクロ相分離状態を確認した。その結果を表1に示す。
【0036】
表1から明らかなように、実施例2にかかる成形板は隠蔽性が良好である。また、実施例2のポリプロピレン樹脂中の顔料−エラストマー成分のミクロ相分離状態も良好である。
【0037】
比較例1
実施例1と同じカーボンブラック35.0部、ポリプロピレン樹脂(ホモポリマー MI:18)64部、アマイド系分散剤ワックス0.8部および酸化防止剤0.2部をバンバリーミキサーを用いて混練する。
【0038】
得られた混練物を押出機を用い、150℃〜250℃の温度で押出し混練造粒し、3×3mmの大きさの円柱状着色剤マスターバッチを得る。
【0039】
この着色剤マスターバッチ5部を上記ポリプロピレン樹脂100部と混合し、型締め圧力50トンの射出成形機を用いて、180℃〜220℃の温度で成形加工と同時に着色し、50×60×2mmの成形板を得る。この成形板について目視で着色濃度(隠蔽性)を観察し、結果を表2に示した。
【0040】
表2から明らかなように、エラストマー成分を含まない比較例1の配合では充分な隠蔽性がない。
【0041】
比較例2
実施例1と同じカーボンブラック35.0部、エラストマー成分(VLDPE MI:20)64部、アマイド系分散剤ワックス0.8部および酸化防止剤0.2部をバンバリーミキサーを用いて混練する。
【0042】
得られた混練物を押出機を用い、150℃〜250℃の温度で押出し混練造粒し、3×3mmの大きさの円柱状着色剤マスターバッチを得る。
【0043】
この着色剤マスターバッチ5部を前記ポリプロピレン樹脂100部と混合し、型締め圧力50トンの射出成形機を用いて、180℃〜220℃の温度で成形加工と同時に着色し、50×60×2mmの成形板を得る。この成形板について目視で隠蔽性を観察し、結果を表2に示した。
【0044】
また、この成形板をカミソリなどを用いて切断し、その切断面を電子顕微鏡を用いて観察し、顔料−エラストマー成分のミクロ相分離状態を確認した。その結果を表2に示す。
【0045】
表2から明らかなように、ポリプロピレン樹脂を含まない比較例2の配合では隠蔽性が充分でない。また、ポリプロピレン樹脂中の顔料−エラストマー成分のミクロ相分離状態が不充分である。
【0046】

【0047】

【産業上の利用可能性】
【0048】
以上の通り、本発明にかかる着色剤組成物は、ポリプロピレン樹脂と顔料とエラストマー成分と分散剤とを所定の比率で配合することにより得られ、該着色剤組成物によれば、隠蔽性が良好な着色成形品を与えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂0.01〜99.97%(質量)と、顔料0.01〜60%(質量)と、エラストマー成分0.01〜60%(質量)と、分散剤0.01〜40%(質量)とを含有してなることを特徴とする着色剤組成物。
【請求項2】
前記ポリプロピレン樹脂のMIが、0.1〜30(190℃、2.16Kg)である請求項1に記載の着色剤組成物。
【請求項3】
前記顔料が、無機顔料の群から選択される一種または複数種である請求項1に記載の着色剤組成物。
【請求項4】
前記顔料が、カーボンブラックである請求項1に記載の着色剤組成物。
【請求項5】
前記エラストマー成分のMIが、0.1〜50(190℃、2.16Kg)である請求項1に記載の着色剤組成物。
【請求項6】
前記エラストマー成分が、超低密度ポリエチレンである請求項1に記載の着色剤組成物。
【請求項7】
前記分散剤が、脂肪酸エステル系分散剤ワックスである請求項1に記載の着色剤組成物。
【請求項8】
前記脂肪酸エステル系分散剤ワックスが、アマイド系ワックスである請求項7に記載の着色剤組成物。

【公開番号】特開2006−28226(P2006−28226A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204978(P2004−204978)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】