説明

着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法、カラーフィルタの製造方法および着色層用硬化性樹脂組成物

【課題】本発明は、着色層の厚み方向のレターデーションを制御することが可能な着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法、カラーフィルタの製造方法および着色層用硬化性樹脂組成物を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも着色剤および分散剤を含有する着色層用硬化性樹脂組成物を製造する着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法であって、上記着色層用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成した場合に上記着色層が有する厚み方向のレターデーションを制御するために、上記分散剤のガラス転移温度(Tg)を調整することを特徴とする着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法を提供することにより、上記目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色層の厚み方向のレターデーションを制御することができる着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法、カラーフィルタの製造方法および着色層用硬化性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、その省電力、軽量、薄型等といった特徴を有することから、従来のCRTディスプレイに替わり、近年急速に普及している。一般的な液晶表示装置としては、図8に示すように、液晶セル101と、入射側の偏光板102Aと、出射側の偏光板102Bとを有するものを挙げることができる。偏光板102Aおよび102Bは、所定の振動方向の振動面を有する直線偏光のみを選択的に透過させるように構成されたものであり、それぞれの振動方向が相互に直角の関係になるようにクロスニコル状態で対向して配置されている。また、液晶セル101は画素に対応する多数のセルを含むものであり、偏光板102Aと102Bとの間に配置されている。
【0003】
このような液晶表示装置は、液晶セルに用いられる液晶材料の配列形態により種々の駆動方式を用いたものが知られている。今日普及している液晶表示装置の主たるものは、ねじれネマチック方式(TN)、超ねじれネマチック方式(STN)、複数配向分割型垂直配向方式(MVA)、横型電界駆動方式(IPS)、および、OCB(Optically Compensated Bend)等に分類される。なかでも今日においては、MVAおよびIPSの駆動方式を有するものが広く普及するに至っている。
【0004】
一方、液晶表示装置はその特有の問題点として、液晶セルや偏光板の屈折率異方性に起因する視野角依存性の問題点がある。この視野角依存性の問題は、液晶表示装置を正面から見た場合と斜め方向から見た場合とで視認される画像の色味やコントラストが変化してしまう問題である。このような視野角特性の問題は、近年の液晶表示装置の大画面化に伴って、さらにその問題の重大性を増している。
【0005】
このような視野角依存性の問題を改善するため、現在までに様々な技術が開発されている。その代表的な方法として位相差フィルムを用いる方法がある。この位相差フィルムを用いる方法は、例えば、図9に示すように所定の光学特性を有する位相差フィルム103を、液晶セル101と偏光板102Aおよび102Bとの間に配置することにより、視野角依存性の問題を改善する方法である。このような方法は位相差フィルムを液晶表示装置に組み込むことのみで視野角依存性の問題点を改善できることから、簡便に視野角特性に優れた液晶表示装置を得ることが可能な方法として広く用いられるに至っている。
【0006】
しかしながら、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタは、各色の着色層によって異なる位相差を有するため、上記の位相差フィルムを用いた場合、各色の着色層が有する位相差の差異は補償することができないという問題がある。具体的には、各色の着色層の厚み方向の位相差が異なる場合、斜め方向から見た場合に黒表示時に色付きが観察されるという問題がある。特に、高コントラストの液晶表示装置では、斜め方向から見た場合の黒表示時の色付きが顕著に現れる。このように視野角依存性の問題点を完全に解決することは困難であった。
【0007】
なお、上記の説明は液晶表示装置に関するものであるが、例えば有機EL表示装置等に用いられるカラーフィルタや位相差層を有する表示装置においても、液晶表示装置と同様の問題が生じる。
【0008】
上記問題を解決する方法としては、カラーフィルタの各色の着色層に応じて、それぞれ最適な位相差を有する位相差層を形成する方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、各色の着色層上に位相差層を形成する必要があるため、工程が煩雑で、コストも高くなるという問題があった。
【0009】
そこで、斜め方向から見た場合の黒表示時の色付きを抑制するために、各色の着色層の厚み方向の位相差の大小関係が規定されたカラーフィルタが提案されている(例えば特許文献2参照)。また、少なくとも1色の着色層を、リターデーション調整剤を含有する組成物を用いて形成し、各色の着色層の厚み方向の位相差を制御する方法も提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−279448号公報
【特許文献2】特開2008−152140号公報
【特許文献3】特開2008−185984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、着色層の厚み方向のレターデーションを制御することが可能な着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法、カラーフィルタの製造方法および着色層用硬化性樹脂組成物を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも着色剤および分散剤を含有する着色層用硬化性樹脂組成物を製造する着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法であって、上記着色層用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成した場合に上記着色層が有する厚み方向のレターデーション(以下、「厚み方向のレターデーション」を「Rth」と称する場合がある。)を制御するために、上記分散剤のガラス転移温度(Tg)を調整することを特徴とする着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0013】
本発明においては、分散剤のTgを調整することにより、本発明の着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法により得られる着色層用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成した際には、所望のRthを有する着色層を得ることができる。
【0014】
上記発明においては、上記分散剤のガラス転移温度(Tg)が40℃〜250℃の範囲内であることが好ましい。この場合、上記着色層が有する厚み方向のレターデーションの絶対値(以下「厚み方向のレターデーションの絶対値」を「|Rth|」と称する場合がある。)を大きくするために、上記分散剤のガラス転移温度(Tg)を100℃〜250℃の範囲内とすることが好ましい。分散剤のTgを上記範囲内で比較的大きくすることにより、本発明の着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法により得られる着色層用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成した際には、|Rth|の大きな着色層を得ることができる。
【0015】
また本発明においては、上記分散剤が、ガラス転移温度(Tg)が70℃以下であるモノマーユニットを20質量%〜40質量%の範囲内で含有することが好ましい。分散剤が、Tgが70℃以下のモノマーユニットを含むことで、本発明の着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法により得られる着色層用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成する際に、着色剤近傍の流動性が増加し、着色剤が配向しやすくなるからである。
【0016】
さらに本発明においては、上記分散剤が、側鎖に飽和炭化水素基を有するエステル構造を有するモノマーユニットを含有し、上記飽和炭化水素基の炭素数nが1〜9の範囲内であることが好ましい。本発明の着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法により得られる着色層用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成する際に、分散剤の飽和炭化水素基が着色剤近傍に存在するほうが、着色剤の配向を阻害しないため、着色層の|Rth|を大きくすることができるからである。
【0017】
また本発明は、少なくとも着色剤および分散剤を含有する着色層用硬化性樹脂組成物を用いて、透明基板上に着色層を形成する着色層形成工程を有するカラーフィルタの製造方法であって、上記分散剤のガラス転移温度(Tg)を調整することにより、上記着色層が有するRthを制御することを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0018】
本発明においては、着色層のRthを制御することができるため、高品位なカラーフィルタを製造することができる。
【0019】
上記発明においては、上記分散剤のガラス転移温度(Tg)が40℃〜250℃の範囲内であることが好ましい。この場合、上記着色層が有する|Rth|を大きくするために、上記分散剤のガラス転移温度(Tg)を100℃〜250℃の範囲内とすることが好ましい。分散剤のTgを上記範囲内で比較的大きくすることにより、着色層が有する|Rth|を大きくすることができる。
【0020】
また本発明においては、上記分散剤が、ガラス転移温度(Tg)が70℃以下であるモノマーユニットを20質量%〜40質量%の範囲内で含有することが好ましい。分散剤が、Tgが70℃以下のモノマーユニットを含むことで、着色剤近傍の流動性が増加し、着色剤が配向しやすくなるからである。
【0021】
さらに本発明においては、上記分散剤が、側鎖に飽和炭化水素基を有するエステル構造を有するモノマーユニットを含有し、上記飽和炭化水素基の炭素数nが1〜9の範囲内であることが好ましい。分散剤の飽和炭化水素基が着色剤近傍に存在するほうが、着色剤の配向を阻害しないため、着色層の|Rth|を大きくすることができるからである。
【0022】
また本発明は、少なくとも着色剤および分散剤を含有する着色層用硬化性樹脂組成物であって、上記分散剤のガラス転移温度(Tg)が100℃〜250℃の範囲内であり、上記分散剤が、ガラス転移温度(Tg)が70℃以下であるモノマーユニットを20質量%〜40質量%の範囲内で含有することを特徴とする着色層用硬化性樹脂組成物を提供する。
【0023】
本発明の着色層用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成した際には、|Rth|の大きな着色層を得ることが可能である。
【0024】
上記発明においては、上記分散剤が、側鎖に飽和炭化水素基を有するエステル構造を有するモノマーユニットを含有し、上記飽和炭化水素基の炭素数nが1〜9の範囲内であることが好ましい。本発明の着色層用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成する際に、分散剤の飽和炭化水素基が着色剤近傍に存在するほうが、着色剤の配向を阻害しないため、着色層の|Rth|を大きくすることができるからである。
【発明の効果】
【0025】
本発明においては、分散剤のTgを調整することで着色層が有するRthを制御することができるので、本発明より製造されたカラーフィルタを用いた表示装置では、斜め方向から観察した場合でも黒表示時の色付きが抑制され良好な表示を行うことができる、さらには斜め方向から観察したときのコントラストを向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のカラーフィルタにおける各色の着色層が有するRthの分布の一例を示すグラフである。
【図2】本発明のカラーフィルタにおける各色の着色層が有するRthの分布の他の例を示すグラフである。
【図3】本発明のカラーフィルタにおける各色の着色層が有するRthの分布の他の例を示すグラフである。
【図4】本発明のカラーフィルタにおける各色の着色層が有するRthの分布の他の例を示すグラフである。
【図5】本発明のカラーフィルタにおける各色の着色層が有するRthの分布の他の例を示すグラフである。
【図6】本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明のカラーフィルタの他の例を示す概略断面図である。
【図8】一般的な液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【図9】位相差フィルムを有する液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法、カラーフィルタの製造方法および着色層用硬化性樹脂組成物、さらにはカラーフィルタおよび表示装置について詳細に説明する。
【0028】
A.着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法
まず、本発明の着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法は、少なくとも着色剤および分散剤を含有する着色層用硬化性樹脂組成物を製造する着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法であって、上記着色層用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成した場合に上記着色層が有するRthを制御するために、上記分散剤のガラス転移温度(Tg)を調整することを特徴とするものである。
【0029】
着色層は、例えば、少なくとも着色剤および分散剤を含有する着色層用硬化性樹脂組成物を用いて、透明基板上に着色層用硬化性樹脂組成物からなる膜を形成し、パターン露光し、現像し、焼成することにより形成されるものであり、このような着色層を形成する過程において、温度変化によって膜が膨張したり収縮したりする。このような着色層を形成する過程での温度変化による膜の膨張・収縮の度合いによって、膜の内部応力が変化する。そして、膜の内部応力が変化することで、膜の異方性が変化し、着色層が有するRthも変化する。
【0030】
そこで、本発明者らは、分散剤のTgに着目した。分散剤のTgを変化させた着色層用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成し、着色層のRthを測定したところ、分散剤のTgが高くなるほど、着色層の|Rth|が大きくなることを見出した。すなわち、着色層のRthは、着色層用硬化性樹脂組成物に含まれる分散剤のTgを調整することによって制御することができることを見出したのである。
【0031】
着色層用硬化性樹脂組成物に含まれる分散剤のTgによって着色層のRthが変化する理由については明らかではないが、次のように考えられる。すなわち、着色層の形成過程における高温時には、分散剤のTgが高くなるほど、分散剤の粘度が高くなるので、着色剤に対して応力がかかりやすくなると思料される。その結果、膜の膨張・収縮時の応力によって着色剤が配向または凝集しやすくなるため、膜の異方性が大きくなり、最終的に得られる着色層の|Rth|が大きくなると推量される。特に、着色層が形成される過程において膜の膨張・収縮時の応力によってバインダーポリマーやモノマーが配向する際に着色剤が配向または凝集し、この着色剤の配向状態または凝集状態が膜の異方性に寄与しているのではないかと考えられる。
【0032】
このように本発明においては、着色層用硬化性樹脂組成物に含まれる分散剤のTgを調整することによって着色層のRthを制御することができる。例えば、着色層の|Rth|が所望の値よりも小さい場合には、着色層用硬化性樹脂組成物に含まれる分散剤のTgを高くすることにより、着色層の|Rth|を大きくすることができる。一方、着色層の|Rth|が所望の値よりも大きい場合には、着色層用硬化性樹脂組成物に含まれる分散剤のTgを低くすることにより、着色層の|Rth|を小さくすることができる。
【0033】
したがって、着色層用硬化性樹脂組成物に含まれる分散剤のTgを調整することによって着色層が有するRthを制御することができるので、本発明の着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法により得られる着色層用硬化性樹脂組成物を用いることにより、表示装置に適用した際には斜め方向から観察した場合でも黒表示時の色付きが抑制され良好な表示を行うことが可能なカラーフィルタを得ることができる。さらには、斜め方向から観察したときのコントラストを向上させることも可能なカラーフィルタを得ることができる。
【0034】
なお、本発明において、着色層が有するRthは、着色層の面内における進相軸方向(屈折率が最も小さい方向)の屈折率Nx、および、遅相軸方向(屈折率が最も大きい方向)の屈折率Nyと、厚み方向の屈折率Nzと、着色層の厚みd(nm)とにより、
Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×d
の式で表される値である。
着色層が有するRthは、位相差層測定装置(AXOMETRICS社製AxoscanTM Mueller Matrix Polarimeter)を用いて測定された値とする。赤色、緑色、青色の3色の着色層の場合には、620nm(赤色着色層想定)、550nm(緑色着色層想定)、および450nm(青色着色層想定)の3波長について測定された値を用いるものとする。
【0035】
以下、本発明の着色層硬化性樹脂組成物の製造方法における着色層硬化性樹脂組成物の組成、および着色層硬化性樹脂組成物の調製方法について説明する。
【0036】
1.着色層用硬化性樹脂組成物の組成
本発明に用いられる着色層用硬化性樹脂組成物は、少なくとも着色剤および分散剤を含有し、通常、バインダーポリマーと、モノマーと、溶剤とをさらに含有するものである。
以下、着色層用硬化性樹脂組成物の各成分について説明する。
【0037】
(1)着色剤
着色剤としては、顔料や染料等が用いられる。
赤色着色層用硬化性樹脂組成物に用いられる着色剤としては、例えば、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等が挙げられる。これらの着色剤は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
緑色着色層用硬化性樹脂組成物に用いられる着色剤としては、例えば、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料もしくはハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料等のフタロシアニン系顔料、イソインドリン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。これらの着色剤は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
青色着色層用硬化性樹脂組成物に用いられる着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。これらの着色剤は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
(2)分散剤
分散剤は、着色剤を良好に分散させるために、着色層用硬化性樹脂組成物中に配合されるものであり、着色剤の分散時に用いるものである。
分散剤としては、後述するように、所望のTgを有するものであれば特に限定されるものではなく、着色剤の種類に応じて適宜選択されるものであり、一般的な着色層用硬化性樹脂組成物に用いられる分散剤を使用することができる。分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤などを用いることができる。これらの界面活性剤の中でも、高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
【0039】
高分子界面活性剤としては、具体例には、ノナンアミド、デカンアミド、ドデカンアミド、N−ドデシルヘキサデカンアミド、N−オクタデシルプロピオアミド、N,N−ジメチルドデカンアミドおよびN,N−ジヘキシルアセトアミド等のアミド化合物、ジエチルアミン、ジヘプチルアミン、ジブチルヘキサデシルアミン、N,N,N',N'−テトラメチルメタンアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン及びトリオクチルアミン等のアミン化合物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N,N',N'−(テトラヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N'−トリ(ヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N',N'−テトラ(ヒドロキシエチルポリオキシエチレン)−1、2−ジアミノエタン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンおよび1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のヒドロキシ基を有するアミン等を例示することができ、その他にニペコタミド、イソニペコタミド、ニコチン酸アミド等の化合物を挙げることができる。
【0040】
さらに、高分子界面活性剤としては、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)リン酸塩、(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩類等を挙げることができる。
【0041】
中でも、高分子界面活性剤は、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)リン酸塩、(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩類であることが好ましい。これらの高分子界面活性剤は、非水系(溶剤系)での分散に有効な立体障害および酸塩基吸着を利用できる分散剤だからである。
【0042】
特に、高分子界面活性剤としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルおよび/またはその四級アンモニウム塩から誘導される繰り返し単位を含む重合体を用いることが好ましい。上記重合体としては、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸のγ−ブチロラクトン変性物等の他の(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が好適に用いられ、中でもブロック共重合体が好適に用いられる。
【0043】
また、市販の分散剤として、Disperbyk−101、同−116、同−130、同−140、同−160、同−161、同−162、同−163、同−164、同−166、同−167、同−168、同−170、同−171、同−174、同−182、同−2000、同−2001、同−2050(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、EFKA−4046、同−4047(以上、EFAK CHEMICALS社製)、ソルスパース12000、同13240、同13940、同17000、同20000、同24000GR、同24000SC、同27000、同28000、同32000、同33500、同33500、同35200、同37500(以上、日本ルーブリゾール(株)製)、アジスパーPB711、同821、同822(以上、味の素ファインテクノ(株)製)等を挙げることができる。
【0044】
本発明において、分散剤のTgは、特に限定されるものではなく、目的とする着色層のRthに応じて適宜調整される。例えば、着色層の|Rth|を大きくしたい場合には、分散剤のTgを大きくすればよい。一方、着色層の|Rth|を小さくしたい場合には、分散剤のTgを小さくすればよい。
【0045】
分散剤のTgとしては、40℃〜250℃の範囲内であることが好ましい。具体的に、着色層の|Rth|を大きくしたい場合、分散剤のTgは100℃以上250℃以下範囲内であることが好ましく、より好ましくは150℃〜250℃の範囲内であり、さらに好ましくは170℃〜250℃の範囲内である。一方、着色層の|Rth|を小さくしたい場合、分散剤のTgは40℃以上100℃未満の範囲内であることが好ましく、より好ましくは40℃〜80℃の範囲内であり、さらに好ましくは40℃〜60℃の範囲内である。
【0046】
なお、分散剤のTgは、例えば、分散剤を、示唆走査熱量計(島津製作所製 DSC-60)を用いて、昇温速度10℃/minで、室温から250℃まで昇温することにより測定することができる。
【0047】
また、分散剤は、Tgが70℃以下であるモノマーユニットを有することが好ましい。分散剤が、Tgが70℃以下のモノマーユニットを含むことで、本発明の着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法により得られる着色層用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成する際に、着色剤近傍の流動性が増加し、着色剤が配向しやすくなるからである。
【0048】
上記モノマーユニットのTgは、70℃以下であり、より好ましくは10℃〜50℃の範囲内、さらに好ましくは10℃〜30℃の範囲内である。分散剤のTgが高すぎると、本発明の着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法により得られる着色層用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成する際に、着色剤近傍の流動性が低下するからである。また、分散剤のTgが低すぎると、分散安定性が悪化するからである。
【0049】
このようなモノマーユニットとしては、側鎖に飽和炭化水素基をもつエステル構造を有するものが好ましく用いられる。上記飽和炭化水素基の炭素数nは1〜9の範囲内であることが好ましい。本発明の着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法により得られる着色層用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成する際に、分散剤の飽和炭化水素基が着色剤近傍に存在するほうが、着色剤の配向を阻害しないため、着色層の|Rth|を大きくすることができるからである。
【0050】
分散剤中のモノマーユニットの含有量は、20質量%〜40質量%の範囲内であることが好ましい。
【0051】
また、分散剤は、塩などのイオン性部位を有することが好ましい。イオン性部位を分子中に導入することで、分子間相互作用を大きくすることができ、Tgを大きくすることができると考えられる。この場合、分散剤中に含まれる塩基性部位または酸性部位の一部を中和し、塩を形成させることで、イオン性部位を導入することができる。
【0052】
分散剤の分子量としては、特に限定されるものではなく、分散剤の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、5,000〜50,000程度とすることができる。
なお、上記重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0053】
また、分散剤の構造(主鎖、側鎖、構成単位、構成単位の配列、末端官能基など)を適宜調整することにより、分散剤のTgを調整することもできる。
【0054】
着色層用硬化性樹脂組成物中の分散剤の含有量は、着色層用硬化性樹脂組成物に含まれる着色剤100重量部に対して、5重量部〜80重量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10重量部〜70重量部の範囲内、さらに好ましくは11重量部〜65重量部の範囲内である。
【0055】
(3)バインダーポリマー
バインダーポリマーとしては、一般的な着色層用硬化性樹脂組成物に用いられるものを適用することができる。
バインダーポリマーは、重合可能なものであってもよく、重合可能なものでなくてもよい。バインダーポリマーとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレンビニル共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、エチレンメタクリル酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。また、バインダーポリマーとしては、重合可能なモノマーであるメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、グリシジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートの1種以上と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の2量体(例えば、東亜合成化学(株)製M−5600)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの酸無水物等の1種以上とからなるポリマーまたはコポリマー等が挙げられる。さらに、上記のコポリマーにグリシジル基または水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加させたポリマー等が挙げられる。上記のバインダーポリマーは一例であり、これらに限定されるものではない。
【0056】
上記のバインダーポリマーの中で、併せて使用するモノマーとの相溶性等の観点から、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂とポリメタクリル酸エチル樹脂の共重合体、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、エチルヒドロキシエチルセルロース、セルローストリアセテート等を好ましく使用することができる。特に好ましくは、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル酸とスチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートの2種類以上からなる共重合体、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、および、これらの変性物を使用することができる。
【0057】
(4)モノマー
モノマーとしては、一般的な着色層用硬化性樹脂組成物に用いられるものを適用することができる。
モノマーとしては、重合可能なものであれば特に限定されるものではないが、光重合反応により重合可能なものが好ましく用いられる。このようなモノマーとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、イソデキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオール(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリ(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、フェノール−エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、フェノール−プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、ビスフェノールA−エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタン構造を有するオリゴマーに(メタ)アクリレート基を結合させたウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル構造を有するオリゴマーに(メタ)アクリレート基を結合させたポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ基を有するオリゴマーに(メタ)アクリレート基を結合させたエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレート基を有するポリウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート基を有するポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート基またはメタクリレート基のいずれかであることを意味する。
【0058】
(5)溶剤
着色層用硬化性樹脂組成物は、溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、一般的な着色層用硬化性樹脂組成物に用いられるものを適用することができる。
【0059】
(6)その他の成分
着色層用硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、重合開始剤、増感剤、酸化防止剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等を含有していてもよい。
【0060】
2.着色層用硬化性樹脂組成物の調製方法
本発明においては、着色層用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成した場合に着色層が有するRthを制御するために、分散剤のガラス転移温度(Tg)を調整して、着色層用硬化性樹脂組成物を調製する。
例えば、分散剤の分子量や構造(主鎖、側鎖、構成単位、構成単位の配列、末端官能基など)を適宜選択することにより、分散剤のTgを調整することができる。具体的には、Tgの比較的大きなモノマーユニットを分散剤中に導入したり、塩などのイオン性部位を分散剤中に導入したりすることで、分散剤のTgが大きくなる傾向がある。
【0061】
B.カラーフィルタの製造方法
次に、本発明のカラーフィルタの製造方法について説明する。
本発明のカラーフィルタの製造方法には、少なくとも着色剤および分散剤を含有する着色層用硬化性樹脂組成物を用いて、透明基板上に着色層を形成する着色層形成工程を有するカラーフィルタの製造方法であって、上記分散剤のガラス転移温度(Tg)を調整することにより、上記着色層が有するRthを制御することを特徴とするものである。
【0062】
本発明においては、上述したように、着色層用硬化性樹脂組成物に含まれる分散剤のTgを調整することによって着色層が有するRthを制御することができる。したがって、本発明より製造されたカラーフィルタを用いた表示装置では、斜め方向から観察した場合でも黒表示時の色付きが抑制され良好な表示を行うことが可能である。さらには、斜め方向から観察したときのコントラストを向上させることも可能である。
【0063】
カラーフィルタを表示装置に用いる場合、表示装置がカラーフィルタを有さない状態(以下、「表示装置がカラーフィルタを有さない状態」を「カラーフィルタ未装着表示装置」と称する場合がある。)では、その構成により、カラーフィルタ未装着表示装置が波長依存性を示す場合がある。波長依存性としては、例えば、短波長側のRthが長波長側のRthよりも小さくなる逆分散型の波長依存性や、短波長側のRthが長波長側のRthよりも大きくなる正分散型の波長依存性が挙げられる。また、カラーフィルタ未装着表示装置のRthが波長依存性を有さないフラット型の場合もある。さらに、カラーフィルタ未装着表示装置が、正分散型の波長依存性を示す部材と、逆分散型の波長依存性を示す部材とを備える場合には、カラーフィルタ未装着表示装置全体としての波長依存性が放射線状になる場合もある。
また、使用波長領域全域においてカラーフィルタ未装着表示装置のRthの符号は、すべて正または負である場合だけでなく、正負が混在している場合もある。
【0064】
例えば、カラーフィルタ未装着表示装置が逆分散型の波長依存性を示す場合は、短波長側のRthが長波長側のRthよりも小さくなるので、短波長側の色の着色層のRthが長波長側の色の着色層のRthよりも大きくなるように各色の着色層のRthを制御することにより、カラーフィルタ未装着表示装置のRthを相殺することができる。
図1は、赤色、緑色、青色の3色の着色層のRthの分布の一例を示すグラフであり、各色の着色層のRthと、逆分散型の波長依存性を示すカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺される場合について示している。図1に示す例において、カラーフィルタ未装着表示装置は、赤色光領域で+30nm、緑色光領域で+25nm、青色光領域で+20nmのRthを有している。この場合、カラーフィルタにおいては、赤色着色層(R)のRthが−30nm、緑色着色層(G)のRthが−25nm、青色着色層(B)のRthが−20nmとなるように各色の着色層のRthを制御することにより、カラーフィルタ未装着表示装置のRthを相殺することができる。すなわち、この場合には、赤色着色層(R)のRthが−30nm、緑色着色層(G)のRthが−25nm、青色着色層(B)のRthが−20nmとなるように、着色層用硬化性樹脂組成物に含まれる分散剤のTgを調整する。
【0065】
また例えば、カラーフィルタ未装着表示装置が正分散型の波長依存性を示す場合は、短波長側のRthが長波長側のRthよりも大きくなるので、短波長側の色の着色層のRthが長波長側の色の着色層のRthよりも小さくなるように各色の着色層のRthを制御することにより、カラーフィルタ未装着表示装置のRthを相殺することができる。
図2は、赤色、緑色、青色の3色の着色層のRthの分布の一例を示すグラフであり、各色の着色層のRthと、正分散型の波長依存性を示すカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺される場合について示している。図2に示す例において、カラーフィルタ未装着表示装置は、赤色光領域で+20nm、緑色光領域で+23nm、青色光領域で+30nmのRthを有している。この場合、カラーフィルタにおいては、赤色着色層(R)のRthが−20nm、緑色着色層(G)のRthが−23nm、青色着色層(B)のRthが−30nmとなるように各色の着色層のRthを制御することにより、カラーフィルタ未装着表示装置のRthを相殺することができる。すなわち、この場合には、赤色着色層(R)のRthが−20nm、緑色着色層(G)のRthが−23nm、青色着色層(B)のRthが−30nmとなるように、着色層用硬化性樹脂組成物に含まれる分散剤のTgを調整する。
【0066】
さらに例えば、カラーフィルタ未装着表示装置が波長依存性を有さないフラット型の場合は、Rthは一定となるので、各色の着色層が有するRthが均一になるように制御することにより、カラーフィルタ未装着表示装置のRthを相殺することができる。
図3は、赤色、緑色、青色の3色の着色層のRthの分布の一例を示すグラフであり、各色の着色層のRthと、波長依存性を示さないフラット型のカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺される場合について示している。図3に示す例においては、カラーフィルタ未装着表示装置は波長分散性を示さず、赤色光領域、緑色光領域、および青色光領域で+30nmのRthを有している。この場合、カラーフィルタにおいては、赤色着色層(R)のRth、緑色着色層(G)のRth、および青色着色層(B)のRthがそれぞれ−30nmとなるように各色の着色層のRthを制御することにより、カラーフィルタ未装着表示装置のRthを相殺することができる。すなわち、この場合には、赤色着色層(R)のRth、緑色着色層(G)のRth、および青色着色層(B)のRthがそれぞれ−30nmとなるように、着色層用硬化性樹脂組成物に含まれる分散剤のTgを調整する。
【0067】
このようにカラーフィルタのRthとカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺される場合には、斜め方向から観察したときのコントラストを向上させることができる。カラーフィルタのRthとカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されることにより、カラーフィルタを用いた表示装置全体の|Rth|を小さなものとすることができるため、漏れ光の強度を小さくすることができ、斜め方向から観察したときのコントラストを向上させることができるのである。
【0068】
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法における、着色層が有するRthおよび着色層形成工程について説明する。
【0069】
1.着色層が有するRth
本発明においては、着色層用硬化性樹脂組成物に含まれる分散剤のTgを調整することにより、着色層が有するRthを制御する。
【0070】
本発明において、目的とする着色層のRthは特に限定されるものではなく、例えば、カラーフィルタを表示装置に用いた場合に、カラーフィルタが有するRthと、カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、各色の着色層が有するRthを制御してもよく、また各色の着色層が有するRthが均一となるように、各色の着色層が有するRthを制御してもよい。
【0071】
カラーフィルタのRthとカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺される場合には、上述したように、斜め方向から観察したときのコントラストを向上させることができる。カラーフィルタのRthとカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されることにより、カラーフィルタを用いた表示装置全体の|Rth|を小さなものとすることができるため、漏れ光の強度を小さくすることができ、斜め方向から観察したときのコントラストを向上させることができるのである。
【0072】
なお、「カラーフィルタ未装着表示装置のRth」とは、表示装置にカラーフィルタが装着されていない状態の表示装置自体のRthを指す。このようなRthは、例えば表示装置に用いられるカラーフィルタ以外の構成について、それぞれRthを測定し、シミュレーションにより求めることができる。
表示装置に用いられるカラーフィルタ以外の構成のRthは、位相差層測定装置(AXOMETRICS社製AxoscanTM Mueller Matrix Polarimeter)を用いて、620nm(赤色着色層想定)、550nm(緑色着色層想定)、および450nm(青色着色層想定)の3波長について測定された値を用いるものとする。
【0073】
また、「カラーフィルタが有するRthと、カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺される」とは、カラーフィルタを表示装置に用いた場合に、黒表示時に斜め方向から観察した場合であっても色味を帯びた黒表示とならず、かつ、斜め方向から観察した場合にコントラストを向上させることができる程度に、各色の着色層が有するRthと各色の着色層に対応する波長領域におけるカラーフィルタ未装着表示装置のRthとの差の絶対値がゼロに近い値となることを指す。具体的には、上記Rthの差の絶対値が、5nm以下、好ましくは3nm以下、特に好ましくは1nm以下の場合を示すこととする。
【0074】
一方、各色の着色層が有するRthが均一となる場合には、カラーフィルタを用いた表示装置においては、斜め方向から黒表示を観察した場合でも、特定の波長における漏れ光が生じないため、色付きのない良好な黒表示を行うことができる。
【0075】
なお、「各色の着色層が有するRthが均一となる」とは、カラーフィルタを表示装置に用いた場合に、黒表示時に斜め方向から観察した場合であっても、色味を帯びた黒表示が観察されない程度に、各色の着色層が有するRthが揃うことをいう。具体的には、各色の着色層が有するRthの最大値と最小値の差の絶対値が、5nm以下、好ましくは3nm以下、特に好ましくは1nm以下の場合を示すこととする。
各色の着色層が有するRthの符号は、各色の着色層が有するRthが均一であれば、すべてが正であってもよく負であってもよく、また正負が混在していてもよい。例えば、図4においては、3色(R,G,B)の着色層が有するRthはすべて負の値を示し、各色の着色層が有するRthが均一となっており、図5においては、赤色(R)および緑色(G)の着色層が有するRthは負の値を示し、青色(B)の着色層が有するRthは正の値を示し、各色の着色層が有するRthが均一となっている。
【0076】
本発明においては、着色層のRthを制御するために、着色層用硬化性樹脂組成物に含まれる分散剤のTgを調整する。例えば、分散剤の分子量や構造(主鎖、側鎖、構成単位、構成単位の配列、末端官能基など)を適宜選択することにより、分散剤のTgを調整することができる。すなわち、複数色の着色層を形成する場合には、各色の着色層用硬化性樹脂組成物に含まれる分散剤のTgを調整し、具体的には各色の着色層用硬化性樹脂組成物組成に含まれる分散剤の分子量や構造(主鎖、側鎖、構成単位、構成単位の配列、末端官能基など)を異ならせることにより分散剤のTgを調整し、色に応じて適したRthを有する着色層を得ることができる。
【0077】
なお、着色層用硬化性樹脂組成物については、上記「A.着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0078】
2.着色層形成工程
本発明における着色層形成工程は、少なくとも着色剤および分散剤を含有する着色層用硬化性樹脂組成物を用いて、透明基板上に着色層を形成する工程である。
【0079】
着色層用硬化性樹脂組成物を用いた着色層の形成方法としては、一般的な着色層の形成方法を採用することができ、例えば、透明基板上に着色層用硬化性樹脂組成物からなる膜を形成し、パターン露光し、現像し、焼成する方法や、インクジェット法により透明基板上に着色層用硬化性樹脂組成物からなる膜を形成し、硬化する方法が用いられる。
着色層用硬化性樹脂組成物からなる膜を形成する方法、パターン露光方法、現像方法、および焼成方法については、一般的な着色層の形成と同様とすることができる。
【0080】
着色層用硬化性樹脂組成物としては、通常、赤色、緑色および青色の3色の着色層用硬化性樹脂組成物が用いられる。
【0081】
着色層の膜厚としては、着色層の色に応じて異なるものではあるが、具体的には1μm〜5μmの範囲内で設定することができる。
【0082】
各色の着色層は、画素に対応して規則的に配列される。着色層の配列としては、各色の着色層が巨視的に見て平均的に配列されていれば特に限定されるものではなく、例えばストライプ配列、モザイク配列、デルタ配列等が挙げられる。
【0083】
本発明に用いられる透明基板は、着色層、および必要に応じて遮光部を形成可能であり、可視光に対して透明な基板であれば特に限定されるものではない。
本発明においては、透明基板がRthを有さないものであることがより好ましい。このような透明基板としては、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板と同様のものとすることができる。
【0084】
具体的には、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材等が挙げられる。
【0085】
3.その他の工程
本発明のカラーフィルタの製造方法は、着色層形成工程以外に、他の部材を形成する工程を有することができる。例えば、複数色の着色層上にオーバーコート層を形成するオーバーコート層形成工程や、透明基板上に画素を画定する遮光部を形成する遮光部形成工程などが挙げられる。
【0086】
4.カラーフィルタの用途
本発明のカラーフィルタの製造方法により得られるカラーフィルタは、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイ等に用いられるものである。中でも、液晶表示装置に好適に用いられる。
【0087】
本発明のカラーフィルタの製造方法により得られるカラーフィルタを表示装置に用いた場合、表示装置においては、白表示状態とした際の輝度をTon、黒表示状態とした際の輝度をToffとしたとき、Ton/Toffの比で表わされるコントラストが500以上、中でも800以上、特に1000以上であることが好ましい。コントラストが上記範囲に満たない場合、コントラストが低く、表示品位が損なわれる可能性があるからである。
【0088】
C.着色層用硬化性樹脂組成物
次に、本発明の着色層用硬化性樹脂組成物について説明する。
本発明の着色層用硬化性樹脂組成物は、少なくとも着色剤および分散剤を含有する着色層用硬化性樹脂組成物であって、上記分散剤のガラス転移温度(Tg)が100℃〜250℃の範囲内であり、上記分散剤が、ガラス転移温度(Tg)が70℃以下であるモノマーユニットを20質量%〜40質量%の範囲内で含有することを特徴とするものである。
【0089】
本発明の着色層用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成した際には、|Rth|の大きな着色層を得ることが可能である。
【0090】
なお、着色層用硬化性樹脂組成物のその他の点については、上記「A.着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0091】
D.カラーフィルタ
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。
本発明のカラーフィルタは、透明基板と、上記透明基板上に形成され、少なくとも着色剤および分散剤を含有する複数色の着色層とを有するカラーフィルタであって、このカラーフィルタを表示装置に用いた場合に、このカラーフィルタが有するRthと、カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、各色の上記着色層に含まれる上記分散剤のガラス転移温度(Tg)が調整されたものであることを特徴とするものである。
【0092】
本発明のカラーフィルタについて図面を参照しながら説明する。
図6は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。図6に例示するように、本発明のカラーフィルタ10は、透明基板1と、透明基板1上に形成された複数色の着色層2(図6においては、赤色着色層2R、緑色着色層2G、青色着色層2B)と、透明基板1上の各色の着色層2(赤色着色層2R、緑色着色層2G、青色着色層2B)の間に形成された遮光部3とを有している。
【0093】
図1は、本発明のカラーフィルタのRthの分布の一例を示すグラフであり、本発明のカラーフィルタのRthと、逆分散型の波長依存性を示すカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺される場合であって、赤色、緑色、青色の3色の着色層の場合について示している。図1に示す例において、カラーフィルタ未装着表示装置は、赤色光領域で+30nm、緑色光領域で+25nm、青色光領域で+20nmのRthを有している。この場合、本発明のカラーフィルタにおいては、赤色着色層(R)のRthが−30nm、緑色着色層(G)のRthが−25nm、青色着色層(B)のRthが−20nmとなるように、各色の着色層に含まれる分散剤のTgが調整されたものとなっている。
【0094】
図2は、本発明のカラーフィルタのRthの分布の他の例を示すグラフであり、本発明のカラーフィルタのRthと、正分散型の波長依存性を示すカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺される場合であって、赤色、緑色、青色の3色の着色層の場合について示している。図2に示す例において、カラーフィルタ未装着表示装置は、赤色光領域で+20nm、緑色光領域で+23nm、青色光領域で+30nmのRthを有している。この場合、本発明のカラーフィルタにおいては、赤色着色層(R)のRthが−20nm、緑色着色層(G)のRthが−23nm、青色着色層(B)のRthが−30nmとなるように、各色の着色層に含まれる分散剤のTgが調整されたものとなっている。
【0095】
図3は、本発明のカラーフィルタのRthの分布の他の例を示すグラフであり、本発明のカラーフィルタのRthと、波長依存性を示さないフラット型のカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺される場合であって、赤色、緑色、青色の3色の着色層の場合について示している。図3に示す例においては、カラーフィルタ未装着表示装置は波長分散性を示さず、赤色光領域、緑色光領域、および青色光領域で+30nmのRthを有している。この場合、本発明のカラーフィルタにおいては、赤色着色層(R)のRth、緑色着色層(G)のRth、および青色着色層(B)のRthがそれぞれ−30nmとなるように、各色の着色層に含まれる分散剤のTgが調整されたものとなっている。
【0096】
このようにカラーフィルタのRthとカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺される場合には、斜め方向から観察したときのコントラストを向上させることができる。カラーフィルタのRthとカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されることにより、本発明のカラーフィルタを用いた表示装置全体の|Rth|を小さなものとすることができるため、漏れ光の強度を小さくすることができ、斜め方向から観察したときのコントラストを向上させることができるのである。
【0097】
図4は、本発明のカラーフィルタのRthの分布の他の例を示すグラフであり、赤色、緑色、青色の3色の着色層の場合について示している。図4に示す例においては、赤色着色層(R)、緑色着色層(G)、青色着色層(B)がそれぞれ有するRthが均一となるように、各色の着色層に含まれる分散剤のTgが調整されたものとなっている。
【0098】
通常、各色の着色層のRthは異なることが多く、表示装置に用いられる位相差層は、各色の着色層のRthについて補償するものではないので、カラーフィルタによっては、斜め方向から黒表示を観察した場合、特定の波長において漏れ光が生じることにより、色味を帯びた黒色が観察されるという問題があった。
これに対し、各色の着色層が有するRthが均一である場合には、本発明のカラーフィルタを用いた表示装置において、斜め方向から黒表示を観察した場合でも、特定の波長における漏れ光が生じないため、色付きのない良好な黒表示を行うことができる。
【0099】
なお、透明基板および用途等については、上記「B.カラーフィルタの製造方法」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、本発明のカラーフィルタにおける他の構成について説明する。
【0100】
(1)着色層
本発明に用いられる複数色の着色層は、透明基板上に形成され、少なくとも着色剤および分散剤を含有するものである。また、カラーフィルタを表示装置に用いた場合に、カラーフィルタが有するRthと、カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、各色の着色層に含まれる分散剤のTgが調整されたものである。複数色の着色層としては、通常、赤色、緑色および青色の3色の着色層が用いられる。
【0101】
本発明においては、上述したように、着色層に含まれる分散剤のTgを調整することによって着色層のRthを制御することができるので、各色の着色層に含まれる分散剤のTgを調整することにより、カラーフィルタが有するRthとカラーフィルタ未装着表示装置のRthとを相殺することができる。
【0102】
一般に、同一の分散剤を用いて複数色の着色層を形成した場合、着色剤の種類や分散状態などに応じて各色の着色層が有するRthが異なる。そのため、例えば図1〜図3に示すように各色の着色層が有するRthが所望の値となるように、各色の着色層に含まれる分散剤のTgを調整する場合には、各色の着色層が有するRthが所望の値となるように、各色の着色層に含まれる分散剤のTgを異ならせることになる。すなわち、カラーフィルタが有するRthとカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、各色の着色層に含まれる分散剤のTgが調整されている場合には、カラーフィルタが有するRthとカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、各色の着色層に含まれる分散剤のTgが異なることになる。
なお、カラーフィルタが有するRthとカラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、各色の着色層に含まれる分散剤のTgを異ならせる場合には、複数色の着色層のうち、1色以上の着色層に含まれる分散剤のTgが、他の色の着色層に含まれる分散剤のTgと異なっていればよい。
【0103】
なお、着色層に含まれる着色剤、分散剤、バインダーポリマーおよびモノマーなどについては、上記「A.着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法」の項に記載し、着色層の配列、着色層の形成方法、ならびに着色層の膜厚などについては、上記「B.カラーフィルタの製造方法」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0104】
(2)その他の部材
本発明のカラーフィルタは、上記の着色層および透明基板の他に、必要に応じて他の部材を有していてもよい。例えば、遮光部等が挙げられる。
【0105】
本発明に用いられる遮光部は、上記透明基板上に形成され、画素を画定するものである。このような遮光部としては、一般的な遮光部と同様とすることができるのでここでの説明は省略する。
【0106】
E.表示装置
次に、本発明の表示装置について説明する。
本発明の表示装置は、透明基板と、上記透明基板上に形成され、少なくとも着色剤および分散剤を含有する複数色の着色層とを有するカラーフィルタを備える表示装置であって、上記カラーフィルタが有するRthと、カラーフィルタ未装着表示装置のRthとが相殺されるように、各色の上記着色層に含まれる上記分散剤のガラス転移温度(Tg)が調整されたものであることを特徴とする表示装置を提供する。
【0107】
本発明によれば、カラーフィルタ未装着表示装置のRthが相殺されるようにカラーフィルタが形成されているため、斜め方向から観察したときのコントラストを高めることができる。
【0108】
本発明の表示装置においては、白表示状態とした際の輝度をTon、黒表示状態とした際の輝度をToffとしたとき、Ton/Toffの比で表わされるコントラストが500以上、中でも800以上、特に1000以上であることが好ましい。コントラストが上記範囲に満たない場合、コントラストが低く、表示品位が損なわれる可能性があるからである。
【0109】
なお、本発明に用いられるカラーフィルタについては、「B.カラーフィルタの製造方法」の項に詳しく記載したので、ここでの記載は省略する。
【0110】
本発明の表示装置は、上述したカラーフィルタを少なくとも有するものであれば特に限定されるものではなく、表示装置の種類に応じて適宜他の構成部材を有する。
表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイ等が挙げられる。中でも、液晶表示装置が好ましい。
液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイを構成する部材等については、一般的なこれらの表示装置と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、本発明の表示装置は、大型ディスプレイや携帯情報端末等に用いることができる。
【0111】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0112】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
<顔料分散体の調製>
まず、各色顔料分散体を下記の組成で調製した。各色顔料分散体は、表1に示す組成(重量比)の混合物を均一に撹拌混合した後、1μmのフィルタで濾過することで得た。
【0113】
【表1】

【0114】
なお、表中の赤色顔料はC.I.PR254(チバスペシャリティケミカルズ社製、クロモフタールDPP Red BP)を用い、黄色顔料はC.I.PY139(BASF社製、パリオトールイエローD1819)を用い、緑色顔料はC.I.PG58(大日本インキ化学工業株式会社製)を用い、青色顔料はC.I.PB15:6(BASF社製、ヘリオゲンブルーL6700F)を用い、紫色顔料はC.I.PV23(クラリアント社製、フォスタパームRL−NF)を用いた。
また、分散剤Aは、ブチルメタクリレート:ベンジルメタクリレート:ジメチルアミノエチルメタクリレート=20:40:40(モル比)の共重合体であり、ガラス転移温度(Tg)は60℃、平均分子量は10,000である。分散剤Bは、シクロヘキシルメタクリレート:メチルメタクリレート:ジメチルアミノエチルメタクリレート=20:40:40(モル比)の共重合体100モル%に対して、ベンジルクロライドを10.0モル%添加したものであり、ガラス転移温度(Tg)は100℃、重量平均分子量は11,000である。分散剤Cは、シクロヘキシルメタクリレート:メタクリル酸メチル:メチルアミノエチルメタクリレート=20:40:40(モル比)の共重合体100モル%に対して、ベンジルクロライドを20.0モル%添加したものであり、ガラス転移温度(Tg)は160℃、重量平均分子量は10,000である。
有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いた。
【0115】
<着色層用硬化性樹脂組成物の調製>
続いて、各色着色層用硬化性樹脂組成物を下記の組成で調製した。各色着色層用硬化性樹脂組成物は、表2に示す組成(重量比)の混合物を均一に撹拌混合した後、1μmのフィルタで濾過することで得た。
【0116】
【表2】

【0117】
なお、表中のポリマーは、アクリル酸メチル:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=55.0:30.0:15.0(モル比)の共重合体100モル%に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを15.0モル%付加したものであり、重量平均分子量は22,000である。また、表中のモノマーとしては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートの二塩基酸無水物とジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとからなり、それらを質量比3:7の割合で含む混合物(TO1382 東亞合成(株)製)を用いた。光重合開始剤としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(イルガギュア907 チバスペシャリティケミカルズ社製)を用いた。
【0118】
<着色層のRthの測定>
表2に示した各色着色層用硬化性樹脂組成物をそれぞれスピンコート法によりガラス基板に塗工した後、ホットプレート上で80℃で3分間プリベークした。次いで、この基板を室温に冷却後、超高圧水銀ランプを用い、紫外線を露光した。その後、この基板をアルカリ現像し、乾燥した後、オーブン中で230℃で30分間ポストベークを行い、各色着色層を得た。乾燥後の膜の厚みはいずれも2.0μmであった。得られた着色層について、上述のRthの測定方法によりRthを測定した。結果を表3に示す。
【0119】
【表3】

【0120】
緑色着色層用硬化性樹脂組成物(GR-1〜GR-3)の結果から、分散剤のTgを調整することで、着色層のRthを制御することができることがわかった。
【0121】
[参考例]
前処理により洗浄したガラス基板上面に、遮光部(BM)用フォトレジストをスピンコーター(MIKASA製、形式1H-DX2)により塗布し、90℃、3分間の条件でプリベークし、所定のパターンに形成されたマスクを用いてプロキシミティアライナにより紫外線を75mJ/cmの強度(2kW超高圧水銀ランプUSH-2004TO、405nm照度換算)で照射した。続いて0.05%KOH水溶液を溶剤型感材用現像装置(芝浦工業(株)製、VFJ0004)にて60秒間散布して現像した。現像後、塗膜をクリーンオーブン(忍足研究所(株)製、SCOV-250 Hy-So)により、230℃で30分間ポストベークを行い、線幅6μmの遮光部(BM)を形成した。
【0122】
続いて、赤色着色層用硬化性樹脂組成物(RR-1)を、スピンコーター(MIKASA製、形式1H-DX2)により塗布し、乾燥し、塗膜を形成した。この塗膜をホットプレート上で100℃、3分間プリベークした。所定のパターンを形成できるように設計されたマスクを用いてプロキシミティアライナにより紫外線を75mJ/cmの強度(2kW超高圧水銀ランプUSH-2004TO、405nm照度換算)で照射した。次いで、塗膜が形成された基板上に、0.05%KOH水溶液を溶剤型感材用現像装置(芝浦工業(株)製、VFJ0004)にて60秒間散布して、現像した。現像後、塗膜をクリーンオーブン(忍足研究所(株)製、SCOV-250 Hy-So)により、230℃で30分間ポストベークを行った。このようにして、赤色着色層を形成した。
次に、緑色着色層用硬化性樹脂組成物(GR-1)を使用し、同様に緑色着色層を形成した。さらに、青色着色層用硬化性樹脂組成物(BR-1)を使用し、青色着色層を形成した。これにより、カラーフィルタを得た。各色着色層の膜厚はいずれも2.0μmであった。
【0123】
カラーフィルタの上面に酸化インジウムスズ(ITO)からなる透明共通電極を形成した。
一方、ガラス基板上に所定の複数の箇所に薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、各TFTのドレイン電極に接続するように透明画素電極を酸化インジウムスズ(ITO)により形成して対向電極基板を作製した。
次に、上記透明共通電極面と透明画素電極面それぞれを覆うように垂直配向膜溶液(JALS−20210−R2)をγ−ブチロラクトンで50%に希釈した溶液を塗布し、乾燥して、配向膜(厚み0.07μm)を形成した。次いで、これらの配向膜が向かい合うようにして両基板を対向させ、両基板間をシール部材で封止し、封止された空間に液晶(メルクジャパン社製MLC−6608)を注入し、注入口を封止して、液晶表示装置を作製した。
【0124】
[実施例2]
緑色着色層用硬化性樹脂組成物を(GR-1)から(GR-2)に変更したこと以外は、参考例と同様にして、カラーフィルタおよび液晶表示装置を作製した。
【0125】
[実施例3]
緑色着色層用硬化性樹脂組成物を(GR-1)から(GR-3)に変更したこと以外は、参考例と同様にして、カラーフィルタおよび液晶表示装置を作製した。
【0126】
[評価]
まず、参考例、および実施例2、3で得られた着色層について、上述のRthの測定方法によりRthを測定した。結果を表4に示す。
【0127】
【表4】

【0128】
次に、参考例および実施例2、3の液晶表示装置を黒表示させ、斜め方向のコントラストおよび色つきの評価を行った。その結果を表5に示す。
【0129】
【表5】

【0130】
まず、斜め方向のコントラストについて、液晶パネルの法線方向から45°傾けた方位(斜め)での黒表示時の漏れ光の強度を輝度計(トプコン社製 分光放射計SR-3)を用いて測定し、比較例の漏れ光強度を100として各々を比較評価した。その結果、実施例2,3はそれぞれ参考例の漏れ光(100)に対し95、90となり、コントラストの向上を確認できた。
続いて、斜め方向の色つきについて、黒表示時に液晶パネルの法線方向から45°傾けた方位(斜め)より漏れてくる光を目視観察することで評価した。その結果、参考例では、斜め方向から観察した場合色つきが目視ではっきり確認された。一方、実施例2では、斜め方向から観察した場合色つきを目視でほぼ確認できない程度に改善が見られた。実施例3では、斜め方向から観察した場合でも色つきを目視で確認できず良好な黒表示を確認できた。
【0131】
以上より、実施例3に示すように、各色の着色層用硬化性樹脂組成物中の分散剤のTgを調整することで、着色層のRthを制御することができ、斜め方向の視認性が良好な液晶表示装置を得ることができた。参考例のカラーフィルタでは、分散剤のTgが高すぎるないし低すぎるため、赤色着色層、緑色着色層および青色着色層のRthのバランスが悪くなり、斜方の視認性が不良となった。
【符号の説明】
【0132】
1 … 透明基板
2 … 着色層
2R … 赤色着色層
2G … 緑色着色層
2B … 青色着色層
3 … 遮光部
4 … オーバーコート層
10 … カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色剤および分散剤を含有する着色層用硬化性樹脂組成物を製造する着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
前記着色層用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成した場合に前記着色層が有する厚み方向のレターデーションを制御するために、前記分散剤のガラス転移温度(Tg)を調整することを特徴とする着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記分散剤のガラス転移温度(Tg)が40℃〜250℃の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記着色層が有する厚み方向のレターデーションの絶対値を大きくするために、前記分散剤のガラス転移温度(Tg)を100℃〜250℃の範囲内とすることを特徴とする請求項2に記載の着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記分散剤が、ガラス転移温度(Tg)が70℃以下であるモノマーユニットを20質量%〜40質量%の範囲内で含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記分散剤が、側鎖に飽和炭化水素基を有するエステル構造を有するモノマーユニットを含有し、前記飽和炭化水素基の炭素数nが1〜9の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の着色層用硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
少なくとも着色剤および分散剤を含有する着色層用硬化性樹脂組成物を用いて、透明基板上に着色層を形成する着色層形成工程を有するカラーフィルタの製造方法であって、
前記分散剤のガラス転移温度(Tg)を調整することにより、前記着色層が有する厚み方向のレターデーションを制御することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項7】
前記分散剤のガラス転移温度(Tg)が40℃〜250℃の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項8】
前記着色層が有する厚み方向のレターデーションの絶対値を大きくするために、前記分散剤のガラス転移温度(Tg)を100℃〜250℃の範囲内とすることを特徴とする請求項7に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項9】
前記分散剤が、ガラス転移温度(Tg)が70℃以下であるモノマーユニットを20質量%〜40質量%の範囲内で含有することを特徴とする請求項6から請求項8までのいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項10】
前記分散剤が、側鎖に飽和炭化水素基を有するエステル構造を有するモノマーユニットを含有し、前記飽和炭化水素基の炭素数nが1〜9の範囲内であることを特徴とする請求項6から請求項9までのいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項11】
少なくとも着色剤および分散剤を含有する着色層用硬化性樹脂組成物であって、
前記分散剤のガラス転移温度(Tg)が100℃〜250℃の範囲内であり、
前記分散剤が、ガラス転移温度(Tg)が70℃以下であるモノマーユニットを20質量%〜40質量%の範囲内で含有することを特徴とする着色層用硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
前記分散剤が、側鎖に飽和炭化水素基を有するエステル構造を有するモノマーユニットを含有し、前記飽和炭化水素基の炭素数nが1〜9の範囲内であることを特徴とする請求項11に記載の着色層用硬化性樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−2561(P2011−2561A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144233(P2009−144233)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】