説明

着色熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの製造方法

【課題】 本発明は、着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの製造方法は、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一対の引抜ロール間に通して引抜延伸して延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを製造し、この延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに一軸延伸を施した後、上記延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを着色した上で上記延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに熱固定を施すことを特徴とするので、得られる着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは、引張弾性率及び引張強度などの優れた機械的強度を有し且つ線膨張係数が低く耐熱性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを、この熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度の近傍温度に保持された一対の引抜ロール間に通して引抜いて引抜延伸した後、引抜ロールの温度より高い温度で一軸延伸することにより、引張強度、引張弾性率及び耐熱性の優れた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを製造する方法を提案した(特許文献1)。
【0003】
この延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを着色するには、予め非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを加熱した上で着色しておく必要があり、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの着色時に結晶化が進行してしまい、この状態で熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引抜延伸しようとしても熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが破断してしまって引抜延伸できないか、或いは、引抜延伸できたとしても、シートが白化するか、引抜延伸倍率が小さくなり、得られる延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの機械的強度が低くなるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3804023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた機械的強度を有する着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの製造方法は、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一対の引抜ロール間に通して引抜延伸して延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを製造し、この延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに一軸延伸を施した後、上記延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを着色した上で上記延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに熱固定を施すことを特徴とする。
【0007】
引抜延伸に用いられる原反となる熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリグリコール酸、ポリ(L−乳酸)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート/ヒドロキシバリレート)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート/乳酸、ポリブチレンサクシネート/カーボネート、ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリテトラメチレナジペート/テレフタレート、ポリブチレンサクシネート/アジペート/テレフタレートなどが挙げられ、耐熱性の優れたポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0008】
熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂の極限粘度は、低すぎると、シート作成時にドローダウンを起こしやすく、高すぎると、引抜延伸の延伸倍率を大きくすることが困難となることがあるので、0.6〜1.0が好ましい。なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂の極限粘度は、JIS K7367−1に準拠して測定されたものをいう。
【0009】
原反となる熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚みは特に限定されないが、0.3〜5mmが好ましい。熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚みが0.5mm未満では、延伸後の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚みが薄くなりすぎ、取扱いに際しての強度が十分な大きさとならないことがあり、4mmを超えると引抜延伸が困難となることがあるからである。
【0010】
非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが原反として用いられることが好ましく、その結晶化度は特に限定されるものではないが、示差走査熱量計で測定した結晶化度が10%未満であることが好ましく、5%未満がより好ましい。非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの結晶化度は、密度法により測定されたものをいう。
【0011】
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一対の引抜ロール間に通して引抜延伸して延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを製造する。
【0012】
引抜延伸する際の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの温度は、低温であると、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが白化し、或いは、硬すぎて裂けて引き抜くことができないことがあるので、引抜延伸する前に予め(熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度−20)℃以上に予熱することが好ましい。なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121−1987に準拠して測定されたものをいう。
【0013】
上記引抜延伸する際の一対の引抜ロールの温度は、低温すぎると、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの温度が低下して延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが白化し、高温すぎると、引抜延伸の際に樹脂温度が上昇して分子配向が緩和するので、(熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度−20)℃以上で且つ熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度未満であることが好ましく、(熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度−10)℃以上で且つ熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度未満がより好ましい。
【0014】
又、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引き抜く際に、一対のロールをこれらの対向面が共に引抜方向となるように回転させることで引抜延伸の際の抵抗を低減して延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの波うちの発生を抑えることができ好ましい。
【0015】
次に、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを上記引抜延伸と同一方向に一軸延伸する。引抜延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの熱可塑性ポリエステル系樹脂は、延伸の阻害要因となる熱による等方的な結晶化及び配向が抑えられた状態で分子鎖は高度に配向しているが結晶化度は低いので、加熱されると配向は容易に緩和されて耐熱性が低下してしまうという欠点を有している。
【0016】
そこで、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを、好ましくは、一対の引抜ロールの温度より高い温度で一軸延伸することにより再度配向させると共に延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの結晶化度を上昇させ、加熱されても配向が容易に緩和されない耐熱性の優れた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを得ることができる。
【0017】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一軸延伸する方法としてはロール延伸法が好適に用いられる。なお、ロール延伸法とは、一対のロールを所定間隔を存して配設してなるロール対を二組用意し、この二組のロール対を所定間隔を存して配設し、二組のロール対間に延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを配設すると共に、各ロール対のロール間に延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを挟持させ、一方のロール対の回転速度と、他方のロール対の回転速度とを相違させ、且つ、下流側のロール対の回転速度を上流側のロール対の回転速度より速くすることにより、加熱状態の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに引張力を加えて延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引っ張る方法であり一軸方向のみに強く分子配向させることができる。なお、ロール対間の速度比が延伸倍率となる。
【0018】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一軸延伸する際の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの温度は、低いと、必要な一軸延伸の延伸倍率が得られないことがあり、高いと、引抜延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが溶融して切断されるので、非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂を昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量分析によって測定して得られる示差走査熱量曲線において、熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化ピーク温度の立ち上がり温度以上で且つ融解ピークの立ち上がり温度以下が好ましい。
【0019】
なお、ポリエチレンテレフタレートの結晶化ピークの立ち上がり温度は約120℃であり、融解ピークの立ち上がり温度は約230℃である。従って、延伸ポリエチレンテレフタレートシートを一軸延伸する際は120〜230℃で一軸延伸するのが好ましい。
【0020】
引抜延伸の延伸倍率と、一軸延伸の延伸倍率との合計の延伸倍率は、低いと、得られる着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの耐熱性が低下し、高いと、得られる着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが延伸方向に沿って割れやすくなるので、2.5〜8倍が好ましい。
【0021】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートにおける一軸延伸方向の引抜延伸の延伸倍率は、特に限定されるものではないが、延伸倍率が低いと、得られる着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの引張弾性率などの機械的強度が低下することがあり、高いと、得られる着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが延伸方向に沿って割れやすくなるので、3〜7倍が好ましく、4〜6倍がより好ましい。なお、引抜延伸の延伸倍率は、延伸後のシートの長さを延伸前のシートの長さで除したものをいう。
【0022】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの一軸延伸の延伸倍率は、特に限定されるものではないが、延伸倍率が低いと、得られる着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの引張弾性率などの機械的強度が低下することがあり、高いと、得られる着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが延伸方向に沿って割れやすくなるので、1.01〜1.2倍が好ましく、1.03〜1.1倍がより好ましい。
【0023】
又、一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの結晶化度は、低いと、得られる着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの耐熱性が低下し、高いと、得られる着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが割れやすくなるので、20〜50%が好ましく、30〜45%がより好ましい。なお、一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの結晶化度は、密度法により測定されたものをいう。
【0024】
更に、一軸延伸された着色前の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは、その耐熱性を向上させるために熱固定が施されてもよい。
【0025】
一軸延伸された着色前の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの熱固定温度は、一軸延伸時の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの温度(一軸延伸温度)より低いと、熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化が進まず耐熱性が向上しないので、一軸延伸温度以上が好ましいが、原反となる熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂を昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量分析によって測定して得られる示差走査熱量曲線における融解ピークの立ち上がり温度より高くなると、熱可塑性ポリエステル系樹脂が溶解して延伸(配向)が消滅し、得られる着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの機械的強度が低下するので、一軸延伸温度以上で且つ原反となる熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂を昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量分析によって測定して得られる示差走査熱量曲線における融解ピークの立ち上がり温度以下がより好ましい。
【0026】
又、一軸延伸された着色前の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを熱固定する際に、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに負荷がかかっていると延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが延伸され、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートがフリーの状態では延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに収縮が生じるので、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに負荷はかかっていないが熱により収縮しないように固定した状態で行うことが好ましく、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに圧力もかかっていないことが好ましい。例えば、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの両端をピンチロールなどで負荷がかからないように保持した状態で、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの熱固定を行なうのが好ましい。なお、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの加熱は、熱風、ヒーターなどで行うのが好ましい。
【0027】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを熱固定する時間は、特に限定されず、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚さや熱固定温度により異なるが、10秒〜5分が好ましい。
【0028】
次に、一軸延伸及び必要に応じて熱固定が施された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに着色を施す。延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに着色を施す着色方法としては特に限定されず、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを染料濃度が0.1〜3重量%の水溶液に浸漬した上で好ましくは70〜180℃に加熱して、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに染料を含浸させる方法などが挙げられる。なお、染料としては、特に限定されず、例えば、塩基性染料、酸性染料が挙げられる。塩基性染料(カチオン染料)としては、特に限定されず、例えば、カラーインデックス(Colour Index,以下C.I.と略す)ネームでは、C.I.ベーシツクイエロー2、C.I.ベーシツクイエロー13、C.I.ベーシツクイエロー32、C.I.ベーシツクレツド1、C.I.ベーシツクレツド14、C.I.ベーシツクレツド38、C.I.ベーシツクブルー1、C.I.ベーシツブルー9、C.I.ベーシツクブルー25、C.I.ベーシツクグリーン4;商品名としてはCathilon Blue SG-DP"(保土谷化学工業社製)などが挙げられる。又、酸性染料としては、特に限定されず、例えば、C.I.アシツドイエロー17、C.I.アシツドイエロー19、C.I.アシツドレツド8、C.I.アシツドレツド18、C.I.アシツドブルー43、C.I.アシツドブルー78、C.I.アシツドグリーン9などが挙げられる。
【0029】
このように、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを製造した上で、加熱を必要とする、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの着色工程を行っているので、着色されていない結晶化度の低い熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを原反として十分に引抜延伸することができ、引張弾性率、引張強度などの機械的強度が高い延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを得ることができる。
【0030】
次に、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートはその着色工程によって配向が緩和しているので、得られる着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの耐熱性を向上させるために熱固定が施され、着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが製造される。なお、熱固定の前に、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに二回目の一軸延伸を施してもよい。延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートにおける二回目の一軸延伸は、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートにおける一回目の一軸延伸と同一の要領で行われるのでその説明を省略する。
【0031】
又、着色された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに施す熱固定は、着色前の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの熱固定と同様の要領で行われるのでその説明を省略する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの製造方法は、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引抜延伸して延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを製造し、この延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに一軸延伸を施した後で延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに着色を施しているので、引抜延伸前の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに着色を施す場合と異なり、着色されていない結晶化度の低い状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを原反として白化させることなく引抜延伸を十分に行うことができ、得られる着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは、引張弾性率及び引張強度などの優れた機械的強度を有し且つ線膨張係数が低く耐熱性に優れている。
【0033】
そして、本発明の着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの製造方法で得られた着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは、上述のように、機械的強度及び耐熱性に優れているので様々な用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製 商品名「NEH2070」、極限粘度:0.88)を押出機に供給して溶融混練しTダイから押出すことによって厚さ2mmで且つ幅600mmの非晶状態のポリエチレンテレフタレートシートを得た。なお、ポリエチレンテレフタレートシートの結晶化度は2.5%であった。
【0036】
なお、ポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度は76.7℃、ポリエチレンテレフタレートを昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量分析によって測定して得られた示差走査熱量曲線において、ポリエチレンテレフタレートの結晶化ピークの立ち上がり温度は139.8℃で、融解ピークの立ち上がり温度は234℃であった。
【0037】
一対の直径が500mmの引抜ロールを用意し、この引抜ロールをその対向面間の距離(隙間)が0.7mmとなるように配設した。そして、ポリエチレンテレフタレートシートAに温風を吹き付けて60℃に予熱した後、このポリエチレンテレフタレートシートAを65℃に保持された引抜ロール間に通して6m/分の速度で引き抜いて引抜延伸を行って延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。延伸ポリエチレンテレフタレートシートの延伸倍率は5.5倍であった。なお、引抜ロールは、これら引抜ロールの対向面が共に引抜方向となるように回転速度1.32m/分にて回転していた。
【0038】
続いて、190℃に保持された熱風槽内に、一対のロールを0.5mmの間隔を存して上下に配設してなるロール対を二組用意し、この二組のロール対を10mの間隔を存して配設し、二組のロール対間に延伸ポリエチレンテレフタレートシートを配設すると共に、各ロール対のロール間に延伸ポリエチレンテレフタレートシートを挟持させ、上流(入口)側のロール対の回転速度を6m/分、下流(出口)側のロール対の回転速度を6.3m/分とし、加熱状態の延伸ポリエチレンテレフタレートシートに引張力を加えて延伸ポリエチレンテレフタレートシートを190℃にて上記引抜延伸と同一方向に一軸延伸した。なお、一軸延伸された延伸ポリエチレンテレフタレートシートの結晶化度は、37%であった。
【0039】
次に、一軸延伸された着色前の延伸ポリエチレンテレフタレートの幅方向の両端をピンチロールで負荷がかからないように保持した上で、一軸延伸された延伸ポリエチレンテレフタレートを200℃にて2分間に亘って保持して一回目の熱固定を行った。
【0040】
続いて、カチオン染料 (保土谷化学工業社製 商品名「Cathilon Blue SG-DP」)1.0重量%及び助剤として80重量%の酢酸水溶液0.5cm3/リットルを含有する浴に延伸ポリエチレンテレフタレートシートを105℃にて45分間に亘って浸漬して染色することによって、延伸ポリエチレンテレフタレートシートを全体的に青色に着色した。
【0041】
しかる後、着色された延伸ポリエチレンテレフタレートシートの幅方向の両端をピンチロールで負荷がかからないように保持した上で、着色された延伸ポリエチレンテレフタレートを200℃にて2分間に亘って保持して二回目の熱固定を行って着色延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。
【0042】
(実施例2)
実施例1と同様の要領で着色された延伸ポリエチレンテレフタレートシートを製造した。190℃に保持された熱風槽内に、一対のロールを0.5mmの間隔を存して上下に配設してなるロール対を二組用意し、この二組のロール対を10mの間隔を存して配設し、二組のロール対間に着色された延伸ポリエチレンテレフタレートシートを配設すると共に、各ロール対のロール間に着色された延伸ポリエチレンテレフタレートシートを挟持させ、上流(入口)側のロール対の回転速度を6m/分、下流(出口)側のロール対の回転速度を6.3m/分とし、加熱状態の着色された延伸ポリエチレンテレフタレートシートに引張力を加えて、着色された延伸ポリエチレンテレフタレートシートに引抜延伸と同一方向に二回目の一軸延伸を施した。なお、二回目の一軸延伸された延伸ポリエチレンテレフタレートシートの結晶化度は43%であった。
【0043】
次に、二回目の一軸延伸が施された延伸ポリエチレンテレフタレートシートに実施例1と同様の要領で二回目の熱固定を施して着色延伸ポリエチレンテレフタレートシートを製造した。
【0044】
(比較例1)
実施例1と同様の要領で非晶状態のポリエチレンテレフタレートシートを製造した。次に、ポリエチレンテレフタレートシートを実施例1と同様の要領で全体的に青色に着色した。
【0045】
次に、ポリエチレンテレフタレートシートを実施例1と同様の要領で引抜延伸して延伸ポリエチレンテレフタレートシートを製造しようとしたが、ポリエチレンテレフタレートシートが途中で破断してしまい、着色延伸ポリエチレンテレフタレートシートを製造することができなかった。
【0046】
得られた着色ポリエチレンテレフタレートシートの引張弾性率、引張強度及び耐熱性を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0047】
(引張弾性率及び引張強度)
着色ポリエチレンテレフタレートシートの引張弾性率及び引張強度をJIS K7133の引張試験方法に準拠して測定した。
【0048】
(耐熱性)
着色ポリエチレンテレフタレートシートの表面に引抜延伸方向に10cmの直線を引いた。次に、着色ポリエチレンテレフタレートシートを80℃にて100時間に亘って放置した後、着色ポリエチレンテレフタレートシートの表面に引いた直線の長さL(cm)を測定し、下記式に基づいて耐熱性を算出した。
耐熱性(%)=100×(L−10)/10
【0049】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一対の引抜ロール間に通して引抜延伸して延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを製造し、この延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに一軸延伸を施した後、上記延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを着色した上で上記延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに熱固定を施すことを特徴とする着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
引抜延伸の延伸倍率と一軸延伸の延伸倍率の合計が2.5〜8倍であることを特徴とする請求項1に記載の着色延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを70〜180℃に加熱した上で着色することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の着色熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの製造方法。

【公開番号】特開2011−104970(P2011−104970A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265730(P2009−265730)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】