説明

睡眠状態検出システム及び睡眠状態検出装置

【課題】被検体の動きを的確に把握して被検体の睡眠状態を正確に検出すること。
【解決手段】睡眠状態検出システムは、被検体の動きに伴って生ずる加速度を検出するセンサユニット2と、センサユニット2により検出されたセンシング信号に基づいて被検体の睡眠状態を検出するセンタ装置1とから構成される。センタ装置1は、検出されたセンシング信号を受信する受信部13と、受信したセンシング信号が所定の閾値を横切るか否かを判定する閾値判定部113と、センシング信号が当該所定の閾値を横切る回数に基づいて被検体の睡眠状態を判定する睡眠状態判定部114と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサを用いて被検体の睡眠状態を検出する睡眠状態検出システム及び睡眠状態検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検体の睡眠状態を把握するために、被検体の体表面の所定の箇所にセンサを装着し、このセンサからの出力信号に所定の演算を行なって人体の睡眠状態を判定する装置が従来より知られている。例えば、特開平10−295649号公報は、3軸の加速度センサにより検出された各加速度データを解析し、所定時間以上の転倒状態又は所定値以上の加速度を検知したときにこれを異常信号として無線により送信する携帯型事故監視装置を開示している。また、特開2004−187961号公報は、被検体の額部に装着して眼球運動を計測する第1の計測手段と、該第1の計測手段と一体化されてなり、第1の計測手段への外乱の大きさの情報を計測する加速度センサ等の第2の計測手段とを備え、外乱の大きさの情報が所定の閾値を超えた場合に眼球電位の情報を修正する睡眠状態検出装置を開示している。
【特許文献1】特開平10−295649号公報
【特許文献2】特開2004−187961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した従来の技術は加速度センサを用いて人の転倒状態や睡眠状態を判定することを開示しているが、被検体の動きを的確に把握して睡眠状態を正確に検出することを目的としたものではなかった。
【0004】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成で被検体の睡眠状態を的確に把握することが可能な睡眠状態検出システム及び睡眠状態検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様は、睡眠状態検出システムであって、被検体の体表面の所定の箇所に装着されたセンサユニットと、このセンサユニットと通信可能に接続され、前記センサユニットからのセンシング信号に基づいて前記被検体の睡眠状態を検出するセンタ装置と、を具備し、前記センサユニットは、前記被検体の動きに伴って生ずる加速度を検出する加速度センサと、前記加速度センサにより取得された加速度データをセンシング信号として送信する送信部と、を具備し、前記センタ装置は、前記センサユニットから送信されたセンシング信号を受信する受信部と、前記受信部を介して受信したセンシング信号が所定の閾値を横切るか否かを判定する閾値判定部と、前記センシング信号が当該所定の閾値を横切る回数に基づいて前記被検体の睡眠状態を判定する睡眠状態判定部と、を具備する。
【0006】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記所定の閾値は、加速度値0を中心にして+及び−方向に所定の重力加速度値に設定される。
【0007】
また、本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記睡眠状態判定部は、前記センシング信号が所定の閾値を横切るときの時間と、この直前に前記センシング信号が所定の閾値を横切ったときの時間との時間間隔を求め、この時間間隔が所定の時間間隔よりも短い場合には前記センシング信号が所定の閾値を横切る回数に含めないこととする。
【0008】
また、本発明の第4の態様は、第1の態様において、前記加速度センサは複数であり、前記閾値判定部は、複数の加速度センサにより検出された複数のセンシング信号のうちいずれかが所定の閾値を横切るか否かを判定し、前記睡眠状態判定部は、当該所定の閾値を横切る回数に基づいて前記被検体の睡眠状態を判定する。
【0009】
また、本発明の第5の態様は、第1の態様において、前記加速度センサは複数であり、前記閾値判定部は、複数の加速度センサにより検出された複数のセンシング信号の平均値を求め、当該平均値が所定の閾値を横切るか否かを判定し、前記睡眠状態判定部は、当該所定の閾値を横切る回数に基づいて前記被検体の睡眠状態を判定する。
【0010】
また、本発明の第6の態様は、第1〜第5のいずれか1つの態様において、前記センサユニットは、前記センタ装置からの指令に基づいて制御されるものである。
【0011】
また、本発明の第7の態様は、睡眠状態検出装置であって、被検体の体表面の所定の箇所に装着され、該被検体の動きに伴って生ずる加速度をセンシング信号として検出する加速度センサと、前記加速度センサにより得られたセンシング信号が所定の閾値を横切るか否かを判定する閾値判定部と、前記センシング信号が当該所定の閾値を横切る回数に基づいて前記被検体の睡眠状態を判定する睡眠状態判定部と、を具備する。
【0012】
また、本発明の第8の態様は、第7の態様において、前記所定の閾値は、加速度値0を中心にして+及び−方向に所定の重力加速度値に設定される。
【0013】
また、本発明の第9の態様は、第7または第8の態様において、前記睡眠状態判定部は、前記センシング信号が所定の閾値を横切るときの時間と、この直前に前記センシング信号が所定の閾値を横切ったときの時間との時間間隔を求め、この時間間隔が所定の時間間隔よりも短い場合には前記センシング信号が所定の閾値を横切る回数に含めないこととする。
【0014】
また、本発明の第10の態様は、第7の態様において、前記加速度センサは複数であり、前記閾値判定部は、複数の加速度センサにより検出された複数のセンシング信号のうちいずれかが所定の閾値を横切るか否かを判定し、前記睡眠状態判定部は、当該所定の閾値を横切る回数に基づいて前記被検体の睡眠状態を判定する。
【0015】
また、本発明の第11の態様は、第7の態様において、前記加速度センサは複数であり、前記閾値判定部は、複数の加速度センサにより検出された複数のセンシング信号の平均値を求め、当該平均値が所定の閾値を横切るか否かを判定し、前記睡眠状態判定部は、当該所定の閾値を横切る回数に基づいて前記被検体の睡眠状態を判定する。
【0016】
また、本発明の第12の態様は、睡眠状態検出装置であって、被検体の体表面の所定の箇所に装着され、該被検体の動きに伴って生ずる加速度を検出する加速度センサと、前記加速度センサにより検出されたセンシング信号を蓄積するセンシング信号蓄積部と、を備えたセンサユニットと、前記センサユニットとは別個に設けられたセンタ装置であって、前記センシング信号蓄積部に蓄積されたセンシング信号を取り込んで、当該センシング信号が所定の閾値を横切るか否かを判定する閾値判定部と、前記センシング信号が当該所定の閾値を横切る回数に基づいて前記被検体の睡眠状態を判定する睡眠状態判定部と、を備えたセンタ装置と、を具備する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、センシング信号をモニタすることにより被検体の動きを的確に把握できるので、簡単な構成で被検体の睡眠状態を正確に検出することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかる睡眠状態検出システムの概略構成を示す図である。本実施形態において「睡眠状態」とは、被検体が睡眠をとる意思で横たわっている状態を意味し、実際に睡眠中にある場合のみならず、寝つかれなくて横たわっている場合も含むものとする。
【0020】
センサユニット2はモジュール化されており、監視対象としての被検体4の体表面の所定の箇所(ここでは胸)に装着される。装着の一例としてここではアクリル系の両面接着テープ等により接着貼付される。アクリル系両面接着テープは、被検体4の皮膚にかぶれ等の炎症が起きにくい、センサユニット2を被検体4からはがした時にセンサユニット2や被検体4の表面に接着のりが付着しにくい、接着層を薄くできるなどの利点を有する。
【0021】
センサユニット2は後述する加速度センサを備えており、この加速度センサにより睡眠状態にある被検体4の左右方向の動きに伴って生ずる加速度を検出する。なお、被検体4の左右方向についての具体的な定義については後述する。
【0022】
加速度センサにより取得された加速度データはセンシング信号として無線ネットワーク3を介して、医療施設や介護施設などに設置されるセンタ装置1に送信される。
【0023】
ここで、無線ネットワーク3としては、例えばBT(BlueTooth)(登録商標)等の近距離データ通信システムや、無線LAN(Local Area Network)、PHS(Personal Handyphone System)(登録商標)、携帯電話システム等が使用される。
【0024】
なお、センタ装置1とセンサユニット2との間は必ずしも直接接続する必要はなく、無線中継器を介して接続するようにしてもよい。この場合、センサユニット2と無線中継器との問の無線通信方式としてはBTや無線LAN等の微弱又は小電力型の方式が、一方、無線中継器とセンタ装置1との問の無線通信方式として携帯電話システム等の長距離通信が可能な方式がそれぞれ使用される。
【0025】
センタ装置1は、アンテナ部11と、信号分配部12と、受信部13と、送信部14と、センサデータ収集処理部15と、センサ制御部16とから構成される。アンテナ部11は、センサ制御部16からの制御信号を送信する送信アンテナ機能と、センサユニット2からのセンシング信号を受信する受信アンテナ機能とを有し、この機能の切替はアンテナ部11に接続されたサーキュレータ等の信号分配部12により行われる。
【0026】
受信部13は、センサユニット2から無線ネットワーク3、アンテナ部11を介して送信された無線信号を受信したのち復調し、この復調により得られるセンシング信号をセンサデータ収集処理部15へ出力する。送信部14は、センサ制御部16から出力された制御信号を変調したのち無線信号に変換し、この無線信号をアンテナ部11からセンサユニット2に向けて送信する。
【0027】
センサ制御部16は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)を備えたもので、センサユニット2によるセンシング開始やセンシング周期に関する指令を含む制御信号を出力する。
【0028】
センサデータ収集処理部15は、受信したセンシング信号が所定の閾値を横切るときを寝返りを打ったものとみなして被検体4の睡眠状態を判定する部分であるが、詳細な機能については後述する。
【0029】
図2は、ベッド5に横たわって睡眠状態にある被検体4を示しており、被検体4の右胸にはセンサユニット2が貼付されている。被検体4は睡眠中に寝返りを打つなど身体を動かすことが考えられるが、ここでのセンサユニット2は被検体4の左右方向の動きを検出する加速度センサを備える。ここで左右方向の動きとは、図2に示すように被検体4が横たわっている状態において身体の横幅方向(身体中心線に対して左右の方向)の動きを意味するものとする。
【0030】
図3は、睡眠状態にある被検体4の左右方向の動きにおける各姿勢と、左右方向の動きを検出する加速度センサ251の向きと、センサ計測値との関係を示している。図3の(A)〜(D)は被検体4を矢印P(図2)の方向すなわち頭上から見たときの姿勢を示している。また、図中の*の記号は、加速度センサ251の+方向を示している。
【0031】
図3の(A)は被検体4が仰向け状態から反時計方向に90度回転して真横になるような寝返りを打った状態、(B)は被検体4が仰向けに寝ている状態、(C)は仰向け状態から時計方向に45度回転する寝返りを打った状態、(D)は被検体4が仰向け状態から時計方向に90度回転して真横になるような寝返りを打った状態、を示している。
【0032】
被検体4が図3の(A)に示す姿勢にあるとき、加速度センサ251は垂直方向を向くが(図3の(E))、この場合、重力がそのままかかるのでセンサ計測値はプラス(+)方向に最大の値をとる(図3の(I))。また、被検体4が図3の(B)に示す姿勢にあるとき、加速度センサ251は水平方向を向くが(図3の(F))、この向きは重力と直交しているのでセンサ計測値は0となる(図3の(J))。また、被検体4が図3の(C)に示す姿勢にあるとき、加速度センサ251は45度傾斜した方向を向くが(図3の(G))、この場合のセンサ計測値は、垂直方向の投影成分に対応するセンサ値が得られる(図3の(K))。また、被検体4が図3の(D)に示す姿勢にあるとき、加速度センサ251は垂直方向を向く(図3の(H))。但し、加速度センサ251の+方向は下側になる。したがって、この場合は反対方向の重力がかかるのでセンサ計測値はマイナス(−)方向に最大の値をとる(図3の(L))。
【0033】
図4はセンサユニット2の概略構成を示しており、アンテナ部21と、センシング信号送信部22と、センサ駆動信号受信部23と、センサ駆動制御部24と、センサ本体25と、バッテリ26とを備えている。図5は、図4に示すセンサユニット2のセンサ本体25とセンサ駆動制御部24の構成を示し、図6は、図4に示すセンサユニット2のセンシング信号送信部22とセンサ駆動信号受信部23の構成を示している。
【0034】
図5に示すように、センサ本体25は被検体4の左右方向の動きを検出する加速度センサ251から構成される。また、センサ駆動制御部24は、中央処理装置(CPU)243と、記憶部242と、クロック信号発生部245と、AD変換部241と、サーバ・プログラミング・インターフェース(SPI)244とを備えている。
【0035】
クロック信号発生部245は、CPU243のクロック制御信号に基づいて所定周期のクロック信号を発生する。記憶部242は、CPU243により実行されるプログラムを記憶している。CPU243は、センサ本体25の加速度センサ251を始めとして、図4のセンシング信号送信部22、センサ駆動信号受信部23を駆動制御するもので、上述したセンタ装置1から送られてくるセンシング開始やセンシング周期等の指令の内容を図示せぬメモリに記憶する。そして、以後この保存された指令と記憶部242に記憶された設定データに基づいてクロック制御信号を生成してクロック信号発生部245に出力する。クロック信号発生部245より発生されるクロック信号により、駆動信号として、センシング開始及びセンシング周期に関する信号を生成する。
【0036】
AD変換部241は、CPU243からの制御信号により駆動される加速度センサ211からの検出データをデジタル信号に変換するもので、CPU243よりSPI244を介してセンシング信号として出力する。
【0037】
なお、CPU243から加速度センサ251に供給する駆動信号としてはスタンバイ信号が用いられる。加速度センサ251は、スタンバイ信号が“H”レベルになるとセンシングを行う動作状態となり、”L“レベルになると非動作状態、つまり電力消費量の少ないスタンバイ状態となる。
【0038】
バッテリ26は、例えばボタン型リチウム電池からなるもので、このバッテリ26から発生するDC電圧を、センサ本体25、センサ駆動制御部24、センシング信号送信部22およびセンサ駆動信号受信部23に駆動電源として供給するようになっている。
【0039】
また、図6に示すように、センシング信号送信部22は、SPI221と、デジタル信号制御部222と、信号変調部223と、混合部224と、電力増幅部225と、送受信信号分配部226とを備えている。また、センサ駆動信号受信部23は、水晶発振器232と、位相安定化回路234と、電圧制御形発振器236と、低雑音増幅部238と、混合部237と、信号復調部235と、デジタル信号制御部233と、SPI231とを備えている。
【0040】
センシング信号送信部22は、センサ駆動制御部24からのセンシング信号をSPI221を介してデジタル信号制御部222に取り込み、さらに信号変調部223でデジタル変調、例えばQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調し、混合部224を介して所定のフォーマットに変換してセンシングデータを作成し、この作成されたセンシングデータを電力増幅部225で電力増幅し、送受信信号分配部226よりアンテナ部21を介して、センタ装置1に向け送信させる。
【0041】
一方、センサ駆動信号受信部23は、センタ装置1から送られた無線信号をアンテナ部21で受信すると、送受信信号分配部226、低雑音増幅部238を介して混合部237に取り込む。ここで無線信号を電圧制御形発振器236の出力と混合した所定周波数に変換した後、信号復調部235でデジタル復調し、このデジタル復調により得られた制御信号をデジタル信号制御部233よりSPI231を介してセンサ駆動制御部24に供給する。
【0042】
図7は、センタ装置1において、特にセンサデータ収集処理部15の構成を示す図であり、加速度データ記憶部111と、データ平均化処理部112と、閾値判定部113と、睡眠状態判定部114とから構成される。
【0043】
以下に、センサデータ収集処理部15の動作を図8のフローチャートを参照して説明する。ここでは、被検体4の睡眠状態を検出することが目的なので、センタ装置1は、被検体4が睡眠状態に入ったときから覚醒に至るまでの間、センサユニット2からのセンシング信号を継続して受信するものとする。
【0044】
まず、被検体4の寝返りの回数を表わす変数Nに0を代入する(ステップS1)。次に、受信部13から加速度データとしてのセンシング信号を受信したならば(ステップS2)、この加速度データを加速度データ記憶部111にいったん記憶する(ステップS3)。
【0045】
次に、記憶されている加速度データを適宜読み出し、データ平均化処理部112において移動平均などの手法によりデータの平均化を行う(ステップS4)。なお、ここでの平均化処理は不要な成分を除外するために行われるものであり、睡眠状態の検出に必須の処理ではない。
【0046】
次に、平均化された加速度データの値が所定の閾値を横切るか否かを閾値判定部113で判定する(ステップS5)。ここで、所定の閾値を横切る場合とは、当該閾値よりも小さい値の加速度データが閾値よりも大きくなって所定の閾値を横切るときと、当該閾値よりも大きい値の加速度データが閾値よりも小さくなって所定の閾値を横切るとき、の両方の場合を含むものとする。ステップS5の判断がYESの場合、睡眠状態判定部114は、当該加速度データの値が所定の閾値を横切るときの時間と、この直前に加速度データの値が閾値を横切ったときの時間との時間間隔を求め、この時間間隔が所定の時間間隔よりも短いか否かを判断する(ステップS6)。ここでの判断がNOの場合にはNを1インクリメントして(ステップS7)、ステップS2に戻る。
【0047】
また、ステップS5での判断結果がNOあるいはステップS6における判断結果がYESの場合には直ちにステップS2に戻る。以降、ステップS2からS7までの処理を加速度データの受信を終了するまで繰り返して行い、この間に加速データの値が閾値を横切る回数を睡眠状態判定部114でカウントする。そして、加速データの値が閾値を横切るときを被検体4が寝返りを打ったものとみなして、そのときのカウント値に基づいて被検体4の睡眠状態を判定する。睡眠状態判定部114では、例えば寝返りの回数が多い場合に被験者4の睡眠状態が良くないと判定することができる。
【0048】
また、ステップS6において、加速度データの値が閾値を横切るときの時間間隔が短い場合には寝返りの回数に含めないようにしているが、これは、通常の睡眠状態ならば加速度データの値が短時間に頻繁に閾値を横切ることはほとんどなく、もしこのような事態が起こった場合には検出の正確さを維持するために寝返りとはみなさないようにするためである。なお、上記時間間隔は例えば10秒程度とする。
【0049】
図9は、被検体4が睡眠状態に入ったときから覚醒に至るまでの被検体4の左右方向の動きに伴う加速度データをグラフに表した図である。縦軸は右胸の加速度センサの加速度(cm/s2)、横軸は時間(任意目盛)である。ここで、例えば重力加速度980cm/s2×0.6=588cm/s2を+方向及び−方向の閾値m、−mとすると、加速度データの値は、点E,Fで+方向の閾値mを横切っており、点A,B,C,Dで−方向の閾値−mを横切っていることがわかる。睡眠状態判定部114は、上記の手順で加速度データが閾値m、−mを横切る点A〜Fをカウントすることにより被検体4が寝返りを打った回数を的確に把握することができ、ひいては被検体の睡眠状態を正確に検出することができる。
【0050】
なお、588cm/s2の値は一例であり、被検体により、また計測時間帯などにより変わることもある。
【0051】
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態に係るセンサデータ収集処理部15の動作を説明するためのフローチャートである。第2実施形態では、被検体4の右胸と左胸にそれぞれ左右方向のセンサユニット2を取り付けて計測を行うこととする。ここでは各加速度センサ251から得られる加速データをそれぞれ加速度データA,Bとする。まず、寝返りの回数を示す変数Nに0を代入する(ステップS10)。その後、図8のステップS2〜S4と同様の手順によって、平均化された加速度データAを取得する(ステップS11〜S13)。同様にして、平均化された加速度データBを取得する(ステップS14〜S16)。
【0052】
次に、閾値判定部113は、平均化された加速度データAの値と平均化された加速度データBの値のうち、大きい方の値を選択し(ステップS17)、選択された加速度データの値が所定の閾値を横切るかどうかを判定する(ステップS18)。ここでYESの場合には、睡眠状態判定部114は、選択された加速度データの値が所定の閾値を横切るときの時間と、この直前に選択された加速度データの値が所定の閾値を横切ったときの時間との時間間隔を求め、この時間間隔が所定の時間間隔よりも短いか否かを判断する(ステップS19)。ここでの判断がNOの場合にはNを1インクリメントして(ステップS20)、ステップS11、S14に戻る。また、ステップS18での判断結果がNOあるいはステップS19における判断結果がYESの場合には直ちにステップS11、S14に戻る。以降、ステップS11からS20までの処理を加速度データの受信を終了するまで繰り返して行い、この間に加速度データの値が所定の閾値を横切る回数を睡眠状態判定部114でカウントする。
【0053】
図11は、右胸部の加速度センサの加速度データ(図11(A))と、左胸部の加速度センサの加速度データ(図11(B))とを比較して示す図である。図11(A)では、点A、B,C,D,E,Fにおいて加速度データの値が閾値m、−mを横切っているが、図11(B)では、点C,D,E,Fのみにおいて加速度データの値が閾値m、−mを横切っている。したがって、この場合、左胸部の加速度センサのみの加速度データを使用したとすると点A,Bについては検出できないことになる。そこで本実施形態では左右の胸部の加速度センサの加速度データを使用することにより、検出のもれをなくして検出精度を高めている。
【0054】
上記した第2実施形態によれば、右胸と左胸に関する2種類の加速度データに基づいて加速度データの値が所定の閾値を横切るかどうかを判定するので、仮にいずれか一方の加速データだけでは所定の閾値を横切ることが検出できない場合であっても残りの加速度データにより検出できることになり、被検体の睡眠状態をより的確に検出することが可能になる。
【0055】
(第3実施形態)
図12は、本発明の第3実施形態に係るセンサデータ収集処理部15の動作を説明するためのフローチャートである。第3実施形態では、第2実施形態と同様に、被検体4の右胸と左胸にそれぞれ左右方向のセンサユニット2を取り付けて計測を行うが、平均化された2種類の加速度データを取得した後の処理が異なっている。各加速度センサ251から得られる加速度データをそれぞれ加速度データA,Bとする。まず、寝返りの回数を示す変数Nに0を代入する(ステップS30)。その後、図8のステップS2〜S4と同様の手順によって、平均化された加速度データAを取得する(ステップS31〜S33)。同様にして、平均化された加速度データBを取得する(ステップS34〜S36)。
【0056】
次に、閾値判定部113は、平均化された加速度データAの値と平均化された加速度データBの値の平均値を算出し(ステップS37)、算出された平均値が所定の閾値を横切るかどうかを判断する(ステップS38)。ここでYESの場合、睡眠状態判定部114は、算出された平均値の値が所定の閾値を横切るときの時間と、この直前に算出された平均値の値が所定の閾値を横切ったときの時間との時間間隔を求め、この時間間隔が所定の時間間隔よりも短いか否かを判断する(ステップS39)。ここでの判断がNOの場合にはNを1インクリメントして(ステップS40)、ステップS31、S34に戻る。また、ステップS38での判断結果がNOあるいはステップS39における判断結果がYESの場合には直ちにステップS31、S34に戻る。以降、ステップS31からS40までの処理を加速度データの受信を終了するまで繰り返して行い、この間に当該平均値の値が所定の閾値を横切る回数を睡眠状態判定部114でカウントする。
【0057】
図13は、左胸の加速度センサの加速度データの値(図11(A))と、右胸の加速度センサの加速度データの値(図11(B))の平均値の変化をグラフに表わした図である。図13からわかるように、平均値は点E、Fにおいて+方向の閾値mを横切っており、点A,B,C,Dにおいて−方向の閾値−mを横切っている。したがって睡眠状態判定部114は、点A、B,C,D,E,Fにおいて被検体4が寝返りを打ったものとみなして睡眠状態を判定することができる。
【0058】
上記した第3実施形態によれば、右胸と左胸に関する2種類の加速度データの平均値をとり、この平均値が所定の閾値を横切るかどうかにより寝返りを判定している。したがって、仮にいずれか一方の加速度データの値が小さい場合であっても、残りの加速度データがある程度大きければそれらの平均値は閾値を横切ることになり、被検体4が寝返りを打つタイミングをより正確に検出することができ、ひいては、被検体の睡眠状態をより的確に検出することが可能になる。
【0059】
なお、上記の第1〜第3実施形態では、被検体4の左右の動きを検出する1軸の加速度センサを1個あるいは2個に用いた実施形態を説明したが、これに限定されず、被検体4の左右及び前後方向の動きを検出する2軸の加速度センサや被検体4の上下、左右、前後方向の動きを検出する3軸の加速度センサを用いてもよい。
【0060】
(第4実施形態)
第1〜第3実施形態では、センシング開始のタイミングやセンシング周期はセンタ装置1からの指令により与えられたが、このような方法に限定されることはない。図14は、センシング開始のタイミングやセンシング周期に関する設定機能をセンサユニット2内のセンサ駆動制御部24に設けた場合の実施形態を示している。この場合、センサ本体25内の加速度センサは、センサ駆動制御部24からの指令に従って、センシング動作を開始し、検出された加速度データはセンシング信号としてアンテナ部21を介してセンタ装置1に送信される。このような構成によれば、センサユニット2内部のセンサ駆動信号受信部を省略することができる。さらに、センタ装置1内部の信号分配部12、送信部14、センサ制御部16を省略することができる。
【0061】
図15は、本発明の第4実施形態の変形例の構成である。ここでは、センサ駆動制御部24からの指定に基づいて加速度センサにより検出された加速度データはセンシングデータとしてセンシング信号蓄積部27にいったん蓄積される。その後、センシングデータは記録媒体等に格納されてセンタ装置1に届けられる。このような構成によれば、センサユニット2内部のセンシング信号送信部及びセンサ駆動信号受信部を省略することができる。さらに、センタ装置1内部のアンテナ部11、信号分配部12、受信部13、送信部14、センサ制御部16を省略することができる。
【0062】
なお、上記した第1〜第4実施形態では、加速度センサにより検出されたセンシング信号を通信回線を介してセンタ装置に送信し、該センタ装置において、当該センシング信号に基づいて被検体の睡眠状態を検出するようにしたが、必ずしも通信回線を介した構成に限定されることはない。すなわち、被検体4からセンシング信号を取得する機能と、当該センシング信号に基づいて被検体4の睡眠状態を判定する機能とが睡眠状態検出装置として1つの筐体に収納されていてもよいし、2つの筐体に別々に収納されていてもよいことは勿論である。
【0063】
その他、センタ装置1及びセンサユニット2の構成、センシング対象物の種類等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。要するに本発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0064】
さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示されている複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出できる。例えば、実施の形態に示されている全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題を解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる睡眠状態検出システムの概略構成を示す図である。
【図2】ベッド5に横たわって睡眠状態にある被検体4のようすを示している。
【図3】睡眠状態にある被検体4の左右方向の動きにおける各姿勢と、左右方向の動きを検出する加速度センサ251の向きと、センサ計測値との関係を示す図である。
【図4】センサユニット2の概略構成を示す図である。
【図5】図4に示すセンサユニット2におけるセンタ本体25とセンサ駆動制御部24の概略構成を示す図である。
【図6】図4に示すセンサユニット2におけるセンシング信号送信部22とセンサ駆動信号受信部23の概略構成を示す図である。
【図7】センタ装置1において、特にセンサデータ収集処理部15の構成を示す図である。
【図8】センサデータ収集処理部15の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】被検体4が睡眠状態に入ったときから覚醒に至るまでの被検体4の左右方向の動きに伴う加速度データをグラフに表した図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るセンサデータ収集処理部15の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】右胸部の加速度センサの加速度データ(図11(A))と、左胸部の加速度センサの加速度データ(図11(B))とを比較して示す図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係るセンサデータ収集処理部15の動作を説明するためのフローチャートである。
【図13】左胸の加速度センサの加速度データの値と、右胸の加速度センサの加速度データの値の平均値の変化をグラフに表わした図である。
【図14】本発明の第4実施形態として、センシング開始のタイミングやセンシング周期に関する設定機能をセンサユニット2内のセンサ駆動制御部24に設けた場合の実施形態を示す図である。
【図15】本発明の第4実施形態の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 センタ装置
2 センサユニット
3 無線ネットワーク
4 被検体
5 ベッド
11 アンテナ部
12 信号分配器
13 受信部
14 送信部
15 センサデータ収集処理部
16 センサ制御部
21 アンテナ部
22 センシング信号送信部、
23 センサ駆動信号受信部
24 センサ駆動制御部
25 センサ本体
26 バッテリ
111 加速度データ記憶部
112 データ平均化処理部
113 閾値判定部
114 睡眠状態判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の体表面の所定の箇所に装着されたセンサユニットと、このセンサユニットと通信可能に接続され、前記センサユニットからのセンシング信号に基づいて前記被検体の睡眠状態を検出するセンタ装置と、を具備し、
前記センサユニットは、
前記被検体の動きに伴って生ずる加速度を検出する加速度センサと、
前記加速度センサにより取得された加速度データをセンシング信号として送信する送信部と、を具備し、
前記センタ装置は、
前記センサユニットから送信されたセンシング信号を受信する受信部と、
前記受信部を介して受信したセンシング信号が所定の閾値を横切るか否かを判定する閾値判定部と、
前記センシング信号が当該所定の閾値を横切る回数に基づいて前記被検体の睡眠状態を判定する睡眠状態判定部と、
を具備することを特徴とする睡眠状態検出システム。
【請求項2】
前記所定の閾値は、加速度値0を中心にして+及び−方向に所定の重力加速度値に設定されることを特徴とする請求項1に記載の睡眠状態検出システム。
【請求項3】
前記睡眠状態判定部は、前記センシング信号が所定の閾値を横切るときの時間と、この直前に前記センシング信号が所定の閾値を横切ったときの時間との時間間隔を求め、この時間間隔が所定の時間間隔よりも短い場合には前記センシング信号が所定の閾値を横切る回数に含めないことを特徴とする請求項1または2に記載の睡眠状態検出システム。
【請求項4】
前記加速度センサは複数であり、前記閾値判定部は、複数の加速度センサにより検出された複数のセンシング信号のうちいずれかが所定の閾値を横切るか否かを判定し、前記睡眠状態判定部は、当該所定の閾値を横切る回数に基づいて前記被検体の睡眠状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の睡眠状態検出システム。
【請求項5】
前記加速度センサは複数であり、前記閾値判定部は、複数の加速度センサにより検出された複数のセンシング信号の平均値を求め、当該平均値が所定の閾値を横切るか否かを判定し、前記睡眠状態判定部は、当該所定の閾値を横切る回数に基づいて前記被検体の睡眠状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の睡眠状態検出システム。
【請求項6】
前記センサユニットは、前記センタ装置からの指令に基づいて制御されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の睡眠状態検出システム。
【請求項7】
被検体の体表面の所定の箇所に装着され、該被検体の動きに伴って生ずる加速度をセンシング信号として検出する加速度センサと、
前記加速度センサにより得られたセンシング信号が所定の閾値を横切るか否かを判定する閾値判定部と、
前記センシング信号が当該所定の閾値を横切る回数に基づいて前記被検体の睡眠状態を判定する睡眠状態判定部と、
を具備することを特徴とする睡眠状態検出装置。
【請求項8】
前記所定の閾値は、加速度値0を中心にして+及び−方向に所定の重力加速度値に設定されることを特徴とする請求項7に記載の睡眠状態検出装置。
【請求項9】
前記睡眠状態判定部は、前記センシング信号が所定の閾値を横切るときの時間と、この直前に前記センシング信号が所定の閾値を横切ったときの時間との時間間隔を求め、この時間間隔が所定の時間間隔よりも短い場合には前記センシング信号が所定の閾値を横切る回数に含めないことを特徴とする請求項7または8に記載の睡眠状態検出装置。
【請求項10】
前記加速度センサは複数であり、前記閾値判定部は、複数の加速度センサにより検出された複数のセンシング信号のうちいずれかが所定の閾値を横切るか否かを判定し、前記睡眠状態判定部は、当該所定の閾値を横切る回数に基づいて前記被検体の睡眠状態を判定することを特徴とする請求項7に記載の睡眠状態検出装置。
【請求項11】
前記加速度センサは複数であり、前記閾値判定部は、複数の加速度センサにより検出された複数のセンシング信号の平均値を求め、当該平均値が所定の閾値を横切るか否かを判定し、前記睡眠状態判定部は、当該所定の閾値を横切る回数に基づいて前記被検体の睡眠状態を判定することを特徴とする請求項7に記載の睡眠状態検出装置。
【請求項12】
被検体の体表面の所定の箇所に装着され、該被検体の動きに伴って生ずる加速度を検出する加速度センサと、前記加速度センサにより検出されたセンシング信号を蓄積するセンシング信号蓄積部と、を備えたセンサユニットと、
前記センサユニットとは別個に設けられたセンタ装置であって、前記センシング信号蓄積部に蓄積されたセンシング信号を取り込んで、当該センシング信号が所定の閾値を横切るか否かを判定する閾値判定部と、前記センシング信号が当該所定の閾値を横切る回数に基づいて前記被検体の睡眠状態を判定する睡眠状態判定部と、を備えたセンタ装置と、
を具備することを特徴とする睡眠状態検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−230791(P2006−230791A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51436(P2005−51436)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(505005865)株式会社 医療電子科学研究所 (28)
【Fターム(参考)】