説明

知能化ヒートパイプ近接センサ

【課題】高温環境内近接センサの価格低減、長寿命化、検出の高機能化と、低温環境内近接センサの無電力加熱による氷結防止と安定動作手段を提供する。
【解決手段】電源供給・PLC無線機能をもつ知能化ヒートパイプ12をもちいて、高温環境内近接センサ部10の筐体27,28内温度を電力を用いないでほぼ通常温環境にし、さらに高温環境内近接センサ部10内では電源回路を省略し、双方向高速無線通信で高機能化した近接センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、−5℃から+50℃の通常温環境範囲を越える高温または零度以下の低温環境下での分離型および一体型近接センサのヒートパイプによる受熱・伝熱・放熱およびヒートパイプと一体構造導線とによる電源供給と高速電源線搬送無線をもちいた高温および低温近接センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、−5℃から+50℃の通常温環境範囲を越える高温または零度以下の低温環境下での洗浄および食品加工・貯蔵、長寿命化、零度以下の低温環境下での近接センサ作動および両温環境での高信頼性化、高機能化、低コスト化が要望されている。宇宙空間の伝熱やノートパソコンの放熱などに用いられている毛細管現象と潜熱を用いたヒートパイプ応用技術は特許文献1、特許文献2に開示されている。
【特許文献1】US 6073888
【特許文献2】特開平08−303970
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高温環境下の近接センサは断熱材での熱抵抗値増により、近接センサの筐体内の温度上昇速度を緩和し、耐高熱部品を用いない近接センサでの検出は筐体内電子電気部品の耐熱温度を超えない制限時間内で可能であるが、制限時間なしに長時間検出が必要な場合は耐熱温度が検出環境温度に耐える高価な電子電気部品をもちいる必要があった。この場合でも高温時動作によって近接センサの寿命は通常温環境近接センサにくらべてはるかに短くなり、コストからも内蔵電子電気部品も必要最低限になり、近接センサの高機能化が困難であった。
【0004】
以上から、従来の高温近接スイッチは、設置される環境温度に適応する耐熱電子・電気部品を用い、通常温環境内近接センサ部と耐熱ケーブルで接続されていた。高温になるほど耐熱部品は高価で種類も少なく、多くの部品を使用できないので、当然高機能化は困難である。
【0005】
また、250℃以上の耐熱部品は少なく、使用寿命が短く、耐熱以上の検出は断熱材で耐熱部品の限界温度になるまでの時間を稼ぎ、この時間内で動作し、すぐに動作を中断して高温環境外に避難するなどの課題があった。
【0006】
本発明はヒートパイプを用いて高温環境下の近接スイッチの筐体内の熱を通常温環境下ヒートシンクに伝熱し、放熱すると同時にヒートパイプと一体化構造の導体線で通常温環境下から高温環境下の近接スイッチへ電源を供給し、この導体線を媒体に高速電源線搬送無線でデータや制御情報を通信し、近接センサの高機能化を可能にすることである。
【0007】
また低温環境下の場合はヒートパイプの受熱と放熱を逆にすれば同様な効果が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明の近接センサは、50℃から300℃の高温環境で検出動作する一体型または分離型近接センサの高温環境下の筐体内の熱を、内部に毛細管構造を有する金属パイプに水またはその他の凝縮性の流体を作動液として封入し、その作動液の潜熱を用いてほぼ音速で通常温環境に伝熱するヒートパイプを用いて、通常温環境内に放熱することを特徴とするものである。
【0009】
上記本発明の近接センサは、高温環境下に設置される励磁・検出コイルおよび温度補償回路とで形成されたセンサヘッドと、発振・検出回路等を実装した外断熱された金属筐体をヒートパイプの受熱部とし、通常温環境内に設置されるヒートシンクを放熱部とし、上記受熱部と放熱部とがヒートパイプでそれぞれ低熱抵抗で接続されていることが好ましい。
【0010】
上記本発明は、低温環境下に設置されたセンサヘッドおよび周辺回路部を放熱部(加熱部)とし、通常温環境内に受熱部を設置したヒートパイプで接続された近接センサも含むことができる。
【0011】
また上記本発明は、誘導型以外の磁気型、静電型、光電型等の近接センサも含むことができる。
【0012】
上記本発明は、請求項2で示すように、上記ヒートパイプ内部に外周面が電気絶縁された導体電線を封入し、上記ヒートパイプ外部を断熱被覆する構造で、上記導体電線とヒートパイプ(金属)とで高温環境下の筐体内回路部に低電圧電源を供給すると共に高速電源線搬送無線で該高温環境下の筐体内の回路部と通常温環境下の近接センサの一部またはコントローラやサーバとの高速通信を可能とすることが好ましい。
【0013】
上記本発明は、請求項3で示すように、上記ヒートパイプ内部に外周面が電気絶縁された導体電線を封入し、上記ヒートパイプ外部を電気絶縁および熱絶縁された導体編組線で覆う構造で、ヒートパイプと導体電線または導体編組線で高温環境下の筐体内の回路部に低電圧電源を供給し、さらに高速電源線搬送無線で上記高温環境下の筐体内の回路部と通常温環境下の近接センサの一部またはコントローラやサーバとの高速通信を可能とすることが好ましい。
【0014】
上記本発明は、請求項3で示すように、上記ヒートパイプ内部に外周面が電気絶縁された導体電線を封入し、上記ヒートパイプ外部を電気絶縁および熱絶縁された導体編組線で覆う構造で、ヒートパイプと導体電線で上記高温環境下の筐体内部と通常温環境下の近接センサの一部またはコントローラやサーバとの高速通信を可能にし、さらにこの導体編組線を金属パイプおよび封入導体電線で構成されるケーブルの電磁シールドとしてもちいることが好ましい。
【0015】
上記本発明は、請求項5で示すように、上記ヒートパイプ外部を断熱被覆すると共に当該ヒートパイプ外部に外周面が電気絶縁および熱絶縁された1本ないし2本の導体電線を密着させた構造で、金属ヒートパイプと導体電線または密着させた2本の導体電線を利用して高温環境下の筐体内の回路部に低電圧電源を供給し、さらに高速電源線搬送無線で高温環境下の筐体内の回路部と通常温環境下の近接センサの一部またはコントローラやサーバとの高速通信を可能とすることが好ましい。
【0016】
上記本発明は、請求項6で示すように、上記ヒートパイプ外部を断熱被覆すると共に当該ヒートパイプ外部に外周面が電気および熱絶縁された4本の導体電線を密着させた構造で、5V直流電源供給機能のあるUSB(Universal Serial Bus)通信で上記高温環境下の筐体内の回路部と通常温環境下の近接センサの一部またはコントローラやサーバとの高速通信を可能とすることが好ましい。
【0017】
上記本発明は、請求項7で示すように、上記導体電線の外周面の電気絶縁に用いる材料として多孔質樹脂を用いると共に、この多孔質樹脂材をヒートパイプの毛細管構造を構成するウイックに兼用することが好ましい。
【0018】
上記本発明は、請求項8で示すように、上記導体電線をヒートパイプの毛細管構造を構成するウイック構造に加工してあると共に、当該導体電線外周面の電気絶縁材が無く、代わりに当該導体電線をヒートパイプ内部に絶縁支持してあることが好ましい。
【0019】
上記本発明は、請求項9で示すように、当該導体外周面の電気絶縁材が無く、代わりに上記導体線を微細な溝を多数形成させてウイック構造に加工してあるか、または加工なしに毛細管構造と等価の多孔構造の導電性多孔質セラミックをヒートパイプ内部に絶縁支持することが好ましい。
【0020】
上記本発明は、請求項10で示すように、上記導体電線による電源供給方式として、3.3Vから100Vの直流または交流電源線にSS(Spread Spectrum)またはOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式の高速電源線搬送無線(PLC:Power Line Communication)を用いて、当該近接センサが分離型の場合ではその制御および検出の高機能化、一体型の場合では当該近接センサとコントローラやサーバとの大容量無線通信の構成を可能とすることが好ましい。
【0021】
上記本発明は、請求項11で示すように、上記導体電線による電源供給方式として、上記封入導体線とヒートパイプで3.3Vから100Vの直流または交流電源を供給し、さらにSSまたはOFDM方式の高速PLC無線とを用いて、複数の一体型近接センサとコントローラやサーバとの大容量無線通信のマルチ近接センサシステム構成を可能とすることが好ましい。
【0022】
上記本発明は、請求項12で示すように、当該近接センサはCPUを内蔵して各種検出補正、検出電子回路制御、動作表示、無線通信制御等の実行ソフトウエアをポーティングしていることが好ましい。
【0023】
上記本発明は、請求項13で示すように、作動液の選定により、上記放熱部が通常温環境下に配置されて受熱部として機能し、上記受熱部が低温環境下に配置されて放熱部(加熱部)として機能することが可能になっていることが好ましい。
【0024】
上記本発明は、請求項14で示すように、当該近接センサを誘導型近接センサとなし、そのセンサヘッドのコイルを高周波パルス発振電流の負荷として検出物を励磁し、検出物表面に渦電流を発生させ、これを高感度かつ高精度検出可能とすることが好ましい。
【0025】
請求項15の本発明は、高温環境内に設置される近接センサ部分である高温環境内近接センサ部と、上記高温以下の通常温環境内に設置される近接センサ部分である通常温環境内近接センサ部と、一端側の受熱部を高温環境内近接センサ部の筐体に接触させ、他端側の放熱部を当該近接センサ外で通常温環境内のヒートシンクに低熱抵抗接触させて放熱させるヒートパイプと、を備え、上記ヒートパイプ内部に断熱被覆ないし塗装した電源線を封入すると共にこの電源線とヒートパイプ(金属)と、を利用して通常温環境内近接センサ部側から高温環境内近接センサ部の内部回路への電源供給と、高温環境内近接センサ部と通常温環境内近接センサ部との高速通信とが可能になっている形態のヒートパイプ(以下知能化ヒートパイプという)近接センサであることを特徴とするものである。
【0026】
請求項16の本発明は、高温環境内に設置される近接センサ部分である高温環境内近接センサ部と、上記高温以下の通常温環境内に設置される近接センサ部分である通常温環境内近接センサ部と、一端側の受熱部を高温環境内近接センサ部の筐体に接触させ、他端側の放熱部を当該近接センサ外で通常温環境内のヒートシンクに低熱抵抗接触させて放熱させるヒートパイプと、を備え、上記ヒートパイプ外部に断熱被覆ないし塗装した電源線を密着固定すると共にこの外部の電源線を利用して通常温環境内近接センサ部側から高温環境内近接センサ部の内部回路への電源供給と、高温環境内近接センサ部と通常温環境内近接センサ部との高速通信とが可能になっている形態の知能化近接センサであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、音速に近い伝熱速度の知能化ヒートパイプによって、筐体内温度は放熱部の通常温環境に近い温度に保たれ、通常温環境対応の電子電気部品を使用できてコスト低減し、長寿命化する。さらに導体電線を封入された知能化ヒートパイプは高温環境内近接センサ回路への電源供給および高速大容量データの双方向無線伝送により通常温環境内近接センサまたはコントローラとで高機能な近接センサ(システム)が構成できる。さらにこの導体電線でウイックも兼用させれば知能化ヒートパイプのコストも低減できる。低温環境の場合は逆に低温環境内近接センサ部筐体内温度を通常温環境の温度に近くに加熱し保たれ、近接センサの動作が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る近接センサを説明する。本発明では近接スイッチを含む。
【0029】
図1は本発明の実施の形態に係る知能化ヒートパイプ式分離型誘導近接センサのブロック構成例を示す。実施の形態の知能化ヒートパイプ式分離型誘導近接センサは、概略的には、50℃から300℃の高温環境下の導電体検出物に渦電流を励起させ、この電流によるインピーダンスの変化や共振状況を検出動作する分離型誘導近接センサであり、高温環境内に設置される近接センサ部分である高温環境内近接センサ部10と、上記高温以下の通常温環境内に設置される近接センサ部分である通常温環境内近接センサ部11と、一端側の受熱部12aを高温環境内近接センサ部10の筐体内部を通常温度近くに保温する筐体に低熱抵抗接触させ、他端側の放熱部12bを当該近接センサ外で通常温環境内のヒートシンク(図示なし)に低温度抵抗接触させて放熱させる本発明の知能化ヒートパイプ12と、を備える。受熱部12aを含む全筐体外部および高温環境内の知能化ヒートパイプ12は充分に断熱被覆されている。そして、本実施の形態では、この知能化ヒートパイプ12を利用して通常温環境内近接センサ部11側から高温環境内近接センサ部10の内部回路への電源供給と、高温環境内近接センサ部10と通常温環境内近接センサ部11との通信に利用できるようにしたことを主たる特徴とする。
【0030】
図1で示すブロックで理解されるように、高温環境内近接センサ部10は、センサヘッド13、発振回路部14、検出回路部15、シリアル信号生成・変復調回路部16、高速電源線搬送無線(PLC)送受信回路部/直流電源受電部17、を備える。そして、この高温環境内近接センサ部10において、センサヘッド13は、発振または負荷・励磁・検出コイル18に接続された抵抗やダイオード等の受動素子による温度補償回路部19で構成されている。センサヘッド13は発振回路部14の発振要素として発振し、検出物に渦電流を励起させ、この渦電流によるインピーダンスの変化や共振状況を検出回路部15で検出する。もう一つの好ましい形態としてセンサヘッド13のコイル18が発振要素としてではなく、発振回路部14で高周波パルス電流を発振し、この電流の負荷コイルとする回路構成がある。
【0031】
検出回路部15での検出信号はシリアル信号生成・変復調回路部16でシリアル信号(デジタルデータ)にして高速PLC送受信回路部/直流電源受電部17に変調波として入力され、知能化ヒートパイプ12経由の無線で通常温環境内近接センサ部11に伝送される。
【0032】
通常温環境内近接センサ部11は、高速PLC送受信回路部/直流電源供給部20、CPUバス21、CPU/ソフトウエア部22、動作表示回路部23、動作表示用発光ダイオード24、電源回路部25、検出・故障診断データ出力部26、を備える。
【0033】
そして、通常温環境内近接センサ部11において、高速PLC送受信・変復調回路部/直流電源供給部20はシリアル信号変・復調回路部27経由で、CPU/ソフトウエア部22の制御情報を、CPUバス21を介して、高温環境内近接センサ部10の高速PLC送受信回路部/直流電源受電部17に伝送し、高温環境内近接センサ部10において発振や検出等の能動回路である発振回路部14や検出回路部15等を制御する。
【0034】
高速PLC送受信・変復調回路部/直流電源供給部20はまた、CPUバス21からの信号と電源回路部25からの低電圧電源とを、それらに重畳した電流の形態にして、知能化ヒートパイプ12を介して高温環境内近接センサ部10の高速PLC送受信回路部/直流電源受電部17に伝送する。高速PLC送受信回路部/直流電源受電部17ではその電源線および重畳電流から信号と電源とを分離し、信号はシリアル信号生成・変復調回路部16に入力され各回路を制御する一方、電源は電源ライン17aを介して高温環境内近接センサ部10内部の回路に供給される。電源回路部25の低電圧電源は電源ライン25aから通常温環境内近接センサ部11内の回路部に供給する。
【0035】
CPU/ソフトウエア部22は、発振・検出制御ソフトウエア、検出精度向上ソフトウエア、故障解析診断ソフトウエア、動作表示ソフトウエアを実装するなどしてソフトウエア制御を担当するものであり、CPUバス21を通じて、動作表示回路部23、検出・故障診断データ出力部26、高速PLC受信回路部/直流電源供給部20および電源回路部25を制御することができる。
【0036】
動作表示は高温環境内近接センサ部10の検出回路部14の検出信号が高速PLC送受信回路部/直流電源受電部17、高速PLC送受信・変復調回路部/直流電源供給部20経由でCPU/ソフトウエア部22に入力され、動作表示ソフトウエアによって表示される。
【0037】
以上の基本構成において、実施の形態では、知能化ヒートパイプ12を、その受熱部12a以外を断熱被覆した構造とし、高温環境内近接センサ部10において回路構成電子部品を収納する筐体内部を通常温度近くに保つ機能に加えて、上記したごとく、通常温環境内近接センサ部11から高温環境内近接センサ部10への電源供給機能と、高温環境内近接センサ部10と通常温環境内近接センサ部11との間の双方向通信、PLC無線通信およびUSB通信の媒体としての機能を有する。
【0038】
なお、実施の形態ではヒートパイプ式分離型誘導近接センサを高温環境内近接センサ部10と通常温環境内近接センサ部11とに分離した分離型で説明したが、本発明はこの分離型に限定されるものではなく、高温環境内近接センサ部10と通常温環境内近接センサ部11とを一体型とした場合も含むものであり、この一体型とした場合には通常温環境内近接センサ部11がなく、同通常温環境下に設置したプログラマブルコントローラ等のコントローラまたはサーバを本実施の形態で以下でも詳述する構成を備えた知能化ヒートパイプ12で接続した近接センサ装置ないしシステムを構成する形態とすることができる。
【0039】
なお実施の形態では高温環境下で動作する近接センサであるが、本発明では低温環境下で動作する近接センサの場合も上記ないし下記構成を備えた本発明の知能化ヒートパイプ12の受熱部12aと放熱部12bとが入れ替わる構成とすることで本発明の形態で実現できる。
【0040】
図2は、図1のブロック構成で示した実施の形態の知能化ヒートパイプ式分離型誘導近接センサの構造例を示している。高温環境内近接センサ部10はセンサヘッド蓋体27と、センサ筐体28と、を有する。
【0041】
センサヘッド蓋体27は耐熱樹脂が充填されている。センサ筐体28は、断熱被覆金属で構成され外部高温環境から断熱されている。センサ筐体28の1つの側面には知能化ヒートパイプ12の受熱部12aが受熱効率を高めるために溶接または圧着等で低熱抵抗になるように密着固定されている。知能化ヒートパイプ12の放熱部12b側は放熱フィン等からなるヒートシンク29構造を持つ。知能化ヒートパイプ12の放熱部12b側には電源線から電源と信号を分離するフィルタ30が接続されている。フィルタ30は、通常温環境内近接センサ部11に内蔵されている。また一体形近接センサではフィルタ30で分離された信号はコントローラ/サーバに接続する。フィルタ30は電源と信号とを分離したり、その逆に電源線に信号を重畳(変調)するものである。通常温環境内近接センサ部11等には動作表示LED24が設けられている。
【0042】
図3は本発明の電源供給機能付きヒートパイプの構造例を2つ代表的に示している。図3(a)は外周面が受熱部12a以外を断熱被覆・塗装12cされた知能化ヒートパイプ12の内部に電気絶縁被覆ないし電気絶縁塗装32aした導線で構成される電源線32を封入した構造例である。5W伝熱レベルの知能化ヒートパイプ12でも現状は内径が6mm程度あり、知能化ヒートパイプ12内部に充分な電気容量を有する電源線32を封入することができる。また、図3(a)では知能化ヒートパイプ12内部に1本の電源線32が封入された例を示すが、知能化ヒートパイプ12内に2本の互いに電気絶縁された導線を電源線として封入する構造形態も含まれる。
【0043】
実施の形態では知能化ヒートパイプ12内部の導線をプラス極の電源線32とし、知能化ヒートパイプ12の金属自体をマイナス極の電源線にすることができる。図3(a)で示す知能化ヒートパイプ12は断面形状が扁平をなしているが円形の形態もある。
【0044】
図3(b)は断熱被覆・塗装12cされた知能化ヒートパイプ12の外周面に沿ってそれぞれが断熱・電気絶縁33a,34aされた2本の導線からなる電源線33,34を配置したもので知能化ヒートパイプ12とこれら電源線33,34とが一体化した他の構造形態例である。この知能化ヒートパイプ12も受熱部12a以外の外周面が断熱被覆・塗装され断面形状が扁平に形成されている。
【0045】
図4は図3(a)で示すように封入した導線でウイック(多孔質材料)を兼用し、知能化ヒートパイプ12の製造コストを低減させた構造例を示している。実施の形態の知能化ヒートパイプ12は、受熱部12aで気化された作動液が音速に近い速度で放熱部12bに到達し、放熱され、再び液体になる。その凝縮した作動液を受熱部12aに毛細管機能のウイックで還流させる。そのため、メッシュ構造や多孔質材からなるウィックを配置するが、そのウイックを封入導線で兼用するものである。ウィックは、放熱部で液化した作動液を毛細管現象によって、重力の方向以外にも受熱部に戻せる。
【0046】
図4(a)は封入導線35の電気絶縁被覆または塗装に多孔質樹脂をもちいてウイック36を兼用した例を示す。知能化ヒートパイプ12は、通常、パイプ内周面にメッシュ内張りや細溝加工でウイックを実現しているが、実施の形態では導線35外周面の電気絶縁被覆に多孔質樹脂などを用い、その多孔質樹脂をウイック36に兼用している。
【0047】
図4(b)は導線外周面に図4(a)のように電気絶縁被覆または塗装を使用しないで、導線35の外周面にウイック加工して知能化ヒートパイプ12との絶縁兼支持37を設けた例を示す。図4(c)は金属の導線を用いないで、焼結温度などの加工条件で導電性にしたRB(Rice Bran)セラミックスなどの導電多孔質セラミック導線38を用いた例を示す。図4(c)では電源線とウイックとを兼用する知能化ヒートパイプ12を構成する。
【0048】
図5は高温環境内近接センサ部10の高速PLC送受信回路部//直流電源受電部17と、通常温環境内近接センサ部11の高速PLC送受信・変復調回路部/電源供給部20とを示す。いずれも双方向の全二重無線であり、復・変調部17a,20aと送受信部17b,20bとから構成されている。復・変調部17a,20aは、高速PLC無線のためデジタル信号の復・変調をSS(スペクトル拡散方式)またはOFDM(直交波周波数分割多重)で行う。
【0049】
デジタル信号に変換された高温環境内近接センサ部10の検出信号や通常温環境内近接センサ部11の制御信号は、SS無線ではフーリエ変換されて広帯域幅に拡散変調され、OFDMでは搬送波軸と直交して周波数変調される。SS無線は50MHz前後の低速通信であるが極小電力で漏洩が少なく高信頼性通信である。地上デジタルTVなどに用いられているOFDM無線は100MHzレベルの高速、大容量通信が特徴である。
【0050】
図6は実施の形態のヒートパイプ式分離型誘導近接センサ38,39,40,…を多数個に配置し検出する形態で、PLC無線ハブ41とPLC無線する例を示す。PLC無線ハブ41は無線コントローラ/無線サーバ42に実装されている。
【0051】
図7はヒートパイプ式分離型誘導近接センサのセンサヘッド13内のコイル43を前段のパルス発振・ドライブ部19aの高周波パルス電流の負荷コイルとして検出物を励磁し、検出感度および精度を向上でき、パルス波形のオン時検出とオフ時検出を比較し、高精度検出する構成例を示している。19bは温度補償・検波回路部を示す。本形態は同一コイル43で発振と検出を兼用させないで、さらに近接センサでの省電力を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係るヒートパイプ式分離型誘導近接センサのブロ ック構成を示す図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態に係るヒートパイプ式分離型誘導近接センサの構造 を示す図である。
【図3】図3はヒートパイプの電源供給構造を示す図である。
【図4】図4はヒートパイプのウイックの構造を示す図である。
【図5】図5は高速PLC送受信・変復調回路部/電源受電部と、高速PLC送受信・ 変復調回路部/電源供給部とを示す図である。
【図6】図6は実施の形態のヒートパイプ式分離型誘導近接センサをマルチに配置し、 PLC無線ハブとPLC無線する例を示す図である。
【図7】図7はパルス電流負荷のセンサヘッドコイル構成を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
10 高温環境内近接センサ部
11 通常温環境内近接センサ部
12 知能化ヒートパイプ
13 センサヘッド
14 発振回路部
15 検出回路部
16 シリアル信号生成・変復調回路部
17 高速電源線搬送無線送受信回路部/電源受電部
18 コイル
19 温度補償回路部
20 高速電源線搬送無線送受信・変復調回路部/電源供給部
21 CPUバス
22 CPU/ソフトウエア部
23 動作表示回路部
25 電源回路部
27 センサヘッド筐体
28 センサ筐体
29 ヒートシンク
30 フィルタ(電源・信号分離部)
32,33,34 電源線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50℃から300℃の高温環境で検出動作する一体型または分離型近接センサの高温環境下の筐体内の熱を、内部に毛細管構造を有するウイック構造を持った真空の金属パイプに水またはその他の凝縮性の流体を作動液として封入し、その作動液の潜熱を媒体にほぼ音速で伝熱するヒートパイプを用いて、
通常温環境下に放熱することが可能になっている、近接センサ。
【請求項2】
上記ヒートパイプ内部に外周面が電気絶縁された導体電線を封入し、上記ヒートパイプ外部を断熱被覆する構造で、上記導体電線を利用して高温環境下の筐体内の回路部に低電圧電源を供給すると共に高速電源線搬送無線で該高温環境下の筐体内の回路部と通常温環境下の近接センサの一部回路部またはコントローラやサーバとの高速通信を可能とした、請求項1に記載の近接センサ。
【請求項3】
上記ヒートパイプ内部に外周面が電気絶縁された導体電線を封入し、上記ヒートパイプ外部を電気絶縁および熱絶縁された導体編組線で覆う構造で、ヒートパイプと導体電線または導体編組線で高温環境下の筐体内の回路部に低電圧電源を供給し、
さらに高速電源線搬送無線で上記高温環境下の筐体内の回路部と通常温環境下の近接センサの一部回路部またはコントローラやサーバとの高速通信を可能とした、請求項1に記載の近接センサ。
【請求項4】
上記ヒートパイプ内部に外周面が電気絶縁された導体電線を封入し、上記ヒートパイプ外部を電気絶縁および熱絶縁された導体編組線で覆う構造で、ヒートパイプと導体電線で上記高温環境下の筐体内部と通常温環境下の近接センサの一部回路部またはコントローラやサーバとの高速通信を可能にし、さらにこの導体編組線を金属パイプおよび封入導体電線の電磁シールドとしてもちいることを特徴とした、請求項1に記載の近接センサ。
【請求項5】
上記ヒートパイプ外部を断熱被覆すると共に当該ヒートパイプ外部に外周面が電気絶縁および熱絶縁された1本ないし2本の導体電線を密着させた構造で、金属ヒートパイプと導体電線または密着させた2本の導体電線を利用して高温環境下の筐体内の回路部に低電圧電源を供給し、
さらに高速電源線搬送無線で高温環境下の筐体内部と通常温環境下の近接センサの一部回路部またはコントローラやサーバとの高速通信を可能とした請求項1に記載の近接センサ。
【請求項6】
上記ヒートパイプ外部を断熱被覆すると共に当該ヒートパイプ外部に外周面が電気絶縁および熱絶縁された4本の導体電線を密着させた構造で、5V直流電源供給機能のあるUSB(Universal Serial Bus)通信で上記高温環境下の筐体内の回路部と通常温環境下の近接センサの一部回路部またはコントローラやサーバとの高速シリアル通信を可能とした、請求項1に記載の近接センサ。
【請求項7】
上記導体電線の外周面の電気絶縁に用いる材料として多孔質樹脂を用いると共にこの多孔質樹脂材をヒートパイプの毛細管構造を構成するウイックに兼用する、請求項2または3または4に記載の近接センサ。
【請求項8】
上記導体電線、ヒートパイプの毛細管構造を構成するウイック構造に加工してあると共に、当該導体電線外周面の電気絶縁材が無く、代わりに当該導体電線をヒートパイプ内部に絶縁支持してある、請求項2または3または4に記載の近接センサ。
【請求項9】
当該導体電線を金属でなく導電性多孔質セラミックで形成し、低圧電源供給とヒートパイプの毛細管構造を構成するウイックに兼用する、請求項2または3または4に記載の近接センサ。
【請求項10】
上記導体電線による電源供給方式として、3.3Vから100Vの直流または交流電源線にSS(Spread Spectrum)または、
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式の高速電源線搬送無線(PLC:Power Line Communication)を用いて、当該近接センサが分離型の場合ではその制御および検出の高機能化、一体型の場合では当該近接センサとコントローラやサーバとの大容量高速無線通信の構成を可能とした、請求項2ないし6のいずれかに記載の近接センサ。
【請求項11】
上記導体電線による電源供給方式として、3.3Vから100Vの直流または交流電源線にSS(Spread Spectrum)または、
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式の高速電源線搬送無線(PLC:Power Line Communication)を用いて、複数の一体型近接センサとコントローラやサーバとの大容量高速無線通信のマルチ近接センサシステム構成を可能とした、請求項2ないし6のいずれかに記載の近接センサ。
【請求項12】
当該近接センサはCPUを内蔵して各種検出補正、検出電子回路制御、動作表示、無線通信制御等の実行ソフトウエアをポーティングしている、請求項2ないし9のいずれかに記載の近接センサ。
【請求項13】
作動液の選定により、上記放熱部が通常温環境下に配置されて受熱部として機能し、上記受熱部が低温環境下に配置されて放熱部(加熱部)として機能することが可能になっている、請求項1に記載の近接センサ。
【請求項14】
当該近接センサを誘導型近接センサとなし、そのセンサヘッドのコイルを高周正弦波発振要素としないで、高周波パルス電流の負荷として検出物を励磁可能としたことで、上記コイルによる検出物に発生する渦電流検出精度および感度を向上させる請求項1、8、9または10に記載の近接センサ。
【請求項15】
高温環境内に設置される近接センサ部分である高温環境内近接センサ部と、上記高温以下の通常温環境内に設置される近接センサ部分である通常温環境内近接センサ部と、一端側の受熱部を高温環境内近接センサ部の熱源である筐体に低熱抵抗接触させ、他端側の放熱部を当該近接センサ外で通常温環境内のヒートシンクに低熱抵抗接触させて放熱させるヒートパイプと、を備え、上記ヒートパイプ内部に断熱被覆ないし塗装した電源線を封入すると共にこの電源線と(金属)ヒートパイプとを利用して通常温環境内近接センサ部側から高温環境内近接センサ部の内部回路への電源供給と、高温環境内近接センサ部と通常温環境内近接センサ部との高速シリアル通信とが可能になっている、近接センサ。
【請求項16】
高温環境内に設置される近接センサ部分である高温環境内近接センサ部と、上記高温以下の通常温環境内に設置される近接センサ部分である通常温環境内近接センサ部と、一端側の受熱部を高温環境内近接センサ部の筐体に低熱抵抗接触させ、他端側の放熱部を当該近接センサ外で通常温環境内のヒートシンクに低熱抵抗接触させて放熱させるヒートパイプと、を備え、上記ヒートパイプ外部に断熱被覆ないし塗装した単一または複数の電源線を密着固定すると共にこの外部の電源線を利用して通常温環境内近接センサ部側から高温環境内近接センサ部の内部回路への電源供給と、高温環境内近接センサ部と通常温環境内近接センサ部との高速シリアル通信とが可能になっている、近接センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−93987(P2009−93987A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265391(P2007−265391)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000167288)光洋電子工業株式会社 (354)
【Fターム(参考)】