説明

短絡部材の製造方法、及び整流子の製造方法

【課題】歩留まりを向上させることができる短絡部材の製造方法を提供すること。
【解決手段】周方向に複数の外周側端末34と、周方向に複数の内周側端末35と、外周側端末34と内周側端末35とを周方向に所定角度ずらしてそれぞれ連結する複数の連結部36とからなる短絡構成部材群を備え、周方向に並設されるセグメントに接続されることで所定間隔毎のセグメントを接続する短絡部材の製造方法は、外周側端末34、連結部36及び内周側端末35がそれぞれ略一直線状に沿って並設されるとともに、内周側端末35を略一直線状に連結する成形時連結部71が形成されるように、導電性板材Dを打ち抜く「打ち抜き工程」と、その後、外周側端末34、連結部36及び内周側端末35がそれぞれ環状に沿って並設されるように成形時連結部71を曲げる「環状曲げ工程」と、その後、成形時連結部71を除去する「除去工程」とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流子における所定間隔毎のセグメントを短絡するための短絡部材の製造方法、及び整流子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、給電用ブラシを備えるモータとしては、整流子に複数配設されるセグメントの所定間隔毎のセグメント同士を短絡したものがある。このようなモータでは、所定間隔毎のセグメント同士を短絡させることで、給電用ブラシが接触していないセグメントにも電流を流すことができ、給電用ブラシの個数を低減させることができる。
【0003】
そして、上記のように所定間隔毎のセグメント同士を短絡させる構造としては、短絡線を用いたものの他に、導電性板材を打ち抜いて構成される短絡構成部材群を備えた短絡部材を用いたものがある(例えば、特許文献1及び2参照)。この短絡構成部材群は、周方向に複数配置された外周側端末と、外周側端末の内側で周方向に複数配置された内周側端末と、外周側端末と内周側端末とを周方向に所定角度ずらしてそれぞれ連結する複数の連結部とが同一平面状に形成されてなり、セグメントに接続されることで所定間隔毎のセグメントを電気的に接続することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−137193号公報
【特許文献2】特開2007−181275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような短絡部材(短絡構成部材群)の製造方法は、外周側端末、連結部及び内周側端末がそれぞれ環状に沿って並設されるように(全体が周方向に隙間を有する略円形となるように)、導電性板材を打ち抜く方法であるため、外周側端末、連結部及び内周側端末のそれぞれの周方向の間の導電性板材が無駄(廃材)となり、歩留まりが悪いという問題がある。又、入手が容易で安価な四角形の導電性板材から打ち抜く場合、打ち抜いた後の四隅や中央も大きな無駄(廃材)となり、歩留まりが悪くなってしまう。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、歩留まりを向上させることができる短絡部材の製造方法、及び整流子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明では、周方向に複数配置された外周側端末と、前記外周側端末の内側で周方向に複数配置された内周側端末と、前記外周側端末と前記内周側端末とを周方向に所定角度ずらしてそれぞれ連結する複数の連結部とが同一平面状に形成されてなる短絡構成部材群を備え、周方向に並設されるセグメントに接続されることで所定間隔毎の前記セグメントを電気的に接続するための短絡部材の製造方法であって、前記外周側端末、前記連結部及び前記内周側端末がそれぞれ略一直線状に沿って並設されるとともに、前記内周側端末を略一直線状に連結する成形時連結部が形成されるように、導電性板材を打ち抜く打ち抜き工程と、前記打ち抜き工程の後、前記外周側端末、前記連結部及び前記内周側端末がそれぞれ環状に沿って並設されるように前記成形時連結部を曲げる環状曲げ工程と、前記環状曲げ工程の後、前記外周側端末、前記連結部及び前記内周側端末を保持した状態で前記成形時連結部を除去する除去工程とを備えたことを要旨とする。
【0008】
同発明によれば、打ち抜き工程にて、外周側端末、連結部及び内周側端末がそれぞれ略一直線状に沿って並設されるとともに、内周側端末を略一直線状に連結する成形時連結部が形成されるように、導電性板材が打ち抜かれる。そして、環状曲げ工程にて、外周側端末、連結部及び内周側端末がそれぞれ環状に沿って並設されるように成形時連結部が曲げられる。そして、後の除去工程にて、外周側端末、連結部及び内周側端末が保持された状態で成形時連結部が除去され、短絡構成部材群が形成される。このようにすると、打ち抜き工程で、外周側端末、連結部及び内周側端末がそれぞれ略一直線状に沿って並設されることから、それぞれの間に導電性板材の無駄(打ち抜かれた後に廃材となる部分)を略無いようにすることができ、歩留まりを向上することができる。又、従来のように全体を略円形に打ち抜く方法と異なり、入手が容易で安価な四角形の導電性板材から打ち抜いても、その四隅や中央が大きな無駄(廃材)となってしまうことがなく、歩留まりを向上することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の短絡部材の製造方法において、前記環状曲げ工程の後であって前記除去工程の前に、前記短絡部材の一部を構成し前記外周側端末、前記連結部及び前記内周側端末のそれぞれの間隔を保持するための絶縁材を成形する絶縁材成形工程を備えたことを要旨とする。
【0010】
同発明によれば、環状曲げ工程の後であって除去工程の前の絶縁材充填工程にて、短絡部材の一部を構成し外周側端末、連結部及び内周側端末のそれぞれの間隔を保持するための絶縁材が成形されるため、除去工程で特に別の手段で外周側端末、連結部及び内周側端末を保持する必要がなくなる。即ち、除去工程で絶縁材以外の手段で保持する場合(除去工程の後に絶縁材を成形する場合)、保持するための他の特殊な手段が必要となってしまうが、これを必要とせず、容易に短絡部材を製造することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の短絡部材の製造方法において、前記打ち抜き工程では、前記成形時連結部の径方向内側と対応した側に、後の前記環状曲げ工程での前記成形時連結部の曲げを許容するとともにその曲げ角度を規制するための切り込みを形成することを要旨とする。
【0012】
同発明によれば、打ち抜き工程にて、成形時連結部の径方向内側と対応した側に、後の環状曲げ工程での成形時連結部の曲げを許容するとともにその曲げ角度を規制するための切り込みが形成されるため、環状曲げ工程で容易に且つ正確な曲げ角度で成形時連結部を曲げることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の短絡部材の製造方法において、前記打ち抜き工程では、前記成形時連結部に、後の前記環状曲げ工程で前記外周側端末、前記連結部及び前記内周側端末がそれぞれ等角度間隔に整列するようにそれらの前記成形時連結部に対する回動角度を規制するための回動規制部を形成することを要旨とする。
【0014】
同発明によれば、打ち抜き工程にて、成形時連結部に、後の環状曲げ工程で外周側端末、連結部及び内周側端末がそれぞれ等角度間隔に整列するようにそれらの成形時連結部に対する回動角度を規制するための回動規制部が形成される。よって、回動規制部にて環状曲げ工程での成形時連結部に対する外周側端末、連結部及び内周側端末の回動角度を容易に正確なものとすることができ、容易に外周側端末、連結部及び内周側端末をそれぞれ等角度間隔に整列させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の短絡部材の製造方法において、前記外周側端末、前記連結部及び前記内周側端末を軸方向に複数層重ねて通電経路の断面積を大きくし、それぞれによって所定間隔毎の前記セグメントを電気的に接続することを要旨とする。
【0016】
同発明によれば、外周側端末、連結部及び内周側端末が軸方向に複数層重ねられて通電経路の断面積が大きくされ、それぞれによって所定間隔毎のセグメントが電気的に接続されるため、通電経路の断面積を(大きく)確保しながらも打ち抜き工程で打ち抜く導電性板材の板厚を薄くすることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の短絡部材の製造方法において、前記環状曲げ工程では、全体がスパイラル状となって前記外周側端末、前記連結部及び前記内周側端末が軸方向に複数層重なるように前記成形時連結部を曲げることを要旨とする。
【0018】
同発明によれば、環状曲げ工程にて、全体がスパイラル状となって外周側端末、連結部及び内周側端末が軸方向に複数層重なるように成形時連結部が曲げられる。よって、請求項5に記載の発明の効果を得ることができるとともに、例えば、全体が環状とされた外周側端末、連結部及び内周側端末を独立して複数形成しそれらを軸方向に複数層重ねる場合に比べて、途中段階での部品点数が少なくなり、例えば、そのことに基づく組み付けを回避することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明では、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の短絡部材の製造方法において、前記環状曲げ工程の後に、前記外周側端末同士と前記内周側端末同士とがそれぞれ積層方向に接触され、且つ、前記連結部同士が積層方向に非接触とされるように、更に前記連結部同士が逆向きとされるように前記短絡構成部材群を積層する逆積層工程を備えたことを要旨とする。
【0020】
同発明によれば、環状曲げ工程の後の逆積層工程にて、外周側端末同士と内周側端末同士とがそれぞれ積層方向に接触され、且つ、連結部同士が積層方向に非接触とされるように、更に連結部同士が逆向きとされるように短絡構成部材群が積層される。このようにすると、所定間隔毎の外周側端末、又は内周側端末が電気的に接続される。よって、外周側端末、又は内周側端末にそれぞれセグメントを接続するだけで所定間隔毎のセグメントを電気的に接続することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明では、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の短絡部材の製造方法を含む整流子の製造方法であって、前記連結部を介して所定間隔毎に電気的に接続されるように、前記セグメントを前記短絡部材に接続固定するセグメント接続固定工程を備えたことを要旨とする。
【0022】
同発明によれば、整流子の製造方法において、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の発明の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、歩留まりを向上させることができる短絡部材の製造方法、及び整流子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施の形態における直流モータの概略構成図(図2におけるB−B断面図)。
【図2】本実施の形態における直流モータの径方向断面図(図1におけるA−A断面図)。
【図3】本実施の形態における直流モータを平面状に展開した模式図。
【図4】本実施の形態における整流子と対応した位置での直流モータの軸直交方向断面図。
【図5】本実施の形態におけるロータの軸直交方向断面図(図1におけるC−C断面図)。
【図6】本実施の形態における整流子の部分拡大断面図。
【図7】(a)(b)本実施の形態における製造方法を説明するための説明図。
【図8】(a)(b)本実施の形態における製造方法を説明するための説明図。
【図9】(a)(b)本実施の形態における製造方法を説明するための説明図。
【図10】(a)(b)本実施の形態における整流子の斜視図。
【図11】(a)(b)別例における製造方法を説明するための説明図。
【図12】(a)(b)別例における製造方法を説明するための説明図。
【図13】(a)(b)別例における製造方法を説明するための説明図。
【図14】別例における製造方法を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図10に従って説明する。
図1は、本実施形態の直流モータの概略構成図である。図1に示すように、直流モータの外郭であるハウジングケース10は、軸方向に3つに分割された第1〜第3のケース11〜13から構成されている。
【0026】
図1において最も左側に位置する第1のケース11は、円筒状の第1の支持部11aと、該第1の支持部11aの軸方向の一端(図1において左側の端部)を閉塞する閉塞部11bとから構成され、有底円筒状をなしている。また、第2のケース12は、前記第1の支持部11aと同じ外径及び内径を有する第2の支持部12aと、該第2の支持部12aにおける第1のケース11と反対側の軸方向の端部から径方向内側に向かって延設された固定部12bとから構成されている。そして、閉塞部としての第3のケース13は、前記第2のケース12における固定部12b側の軸方向の端部を閉塞する略円板状をなしている。尚、第1〜第3のケース11〜13は、軸方向に貫通する螺子(図示略)にて互いに連結固定されている。また、第1及び第2のケース11,12の互いに対向する開口部には、第1及び第2の支持部11a,12aの内径を拡径してなる第1及び第2の支持段部11c,12cがそれぞれ形成されている。
【0027】
第1のケース11及び第2のケース12は、略円環状の電機子21を軸方向の両側から挟持して支持するとともに、該電機子21は、略円環状の電機子コア22に複数の電機子コイル23を巻装して形成されている。図2に示すように、電機子コア22は、金属磁性材料よりなり、外周側に設けられた円筒状のヨーク部22aと、該ヨーク部22aの内周面から径方向内側に向かって延びる36本のティース22bとから構成されている。この電機子コア22の外径は、前記第1及び第2の支持部11a,12aの内径より大きく、且つ前記第1及び第2の支持部11a,12aの外径より小さい値とされている。そして、複数の電機子コイル23は、周方向に隣り合うティース22b間の空間を通るように電機子コア22に対して巻回されるとともに、電機子コイル23の巻始め及び巻終わりの端部23aは、電機子コア22の軸方向の一端側に引き出されている(図1参照)。尚、図3に、直流モータを平面状に展開した模式図を示す。
【0028】
このような電機子21は、図1に示すように、電機子コア22のヨーク部22aの軸方向の両端部が、前記第1のケース11の第1の支持段部11c及び第2のケース12の第2の支持段部12cにそれぞれ係合した状態で第1及び第2のケース11,12にて支持されている。
【0029】
前記第2のケース12の固定部12bの径方向内側の先端部には、軸方向と直交する平板状をなす整流子31が固定されている。図1に示すように、整流子31は、周方向に並設された36個のセグメント32(図10(b)参照)と、該セグメント32に接続されることで所定間隔(本実施の形態では90°)毎のセグメント32を電気的に接続する短絡部材33とを備えている。
【0030】
各セグメント32は、導電性の金属材料よりなり、軸方向から見た形状(図6参照)が径方向内側の端部から径方向外側に向かうに連れて周方向の幅が広くなる扇形をなす板状のセグメント本体32aと、該セグメント本体32aの径方向外側の端部から軸方向の前記第3のケース13側(図1中、右側)に延びる外周側接続部32bとを備えている。尚、各セグメント32において、セグメント本体32aにおける外周側接続部32bが延びる側と反対側の端面は、平坦な摺接面32cとなっている。
【0031】
短絡部材33は、図8に示すように、周方向に複数配置された外周側端末34と、外周側端末34の内側で周方向に複数配置された内周側端末35と、外周側端末34と内周側端末35とを周方向に所定角度(本実施の形態では45°)ずらしてそれぞれ連結する複数の連結部36とが同一平面状に形成されてなる短絡構成部材群37を備えている。尚、本実施の形態の外周側端末34、内周側端末35、及び連結部36は周方向に36個ずつ配置されている。又、本実施の形態の連結部36は、インボリュート曲線に沿った形状とされている。
【0032】
詳しくは、本実施の形態の短絡部材33では、図9(a)に示すように、外周側端末34同士と内周側端末35同士とがそれぞれ積層方向に接触され、且つ、連結部36同士が積層方向に非接触とされるように、更に連結部36同士が逆向きとされるように(図6参照)2つの短絡構成部材群37が積層されている。尚、本実施の形態では、図7(b)及び図8(b)に示すように、連結部36のみ軸方向の厚さを薄くすることで(連結部36の両端に段差36aを形成することで)連結部36同士のみを積層方向に非接触としている。そして、この構成により、所定間隔毎(90°の間隔毎)の外周側端末34が電気的に接続されることになる。
【0033】
又、短絡部材33は、外周側端末34、内周側端末35、及び連結部36のそれぞれの間隔を保持するための絶縁材38を備えている。詳しくは、絶縁材38は、樹脂材料よりなり、図1、図4、図6、及び図10に示すように、円環状の板状をなす。そして、絶縁材38の内部には、外周側端末34、内周側端末35、及び連結部36が埋設されている。又、絶縁材38の内部には、前記セグメント32の外周側接続部32bの先端部及び摺接面32cが露出するように、セグメント32の一部が埋設されている。又、セグメント32の外周側接続部32bにおける延出方向中間部32d(図6及び図9(b)参照)には、短絡部材33の外周側端末34が接続固定され、該部分は絶縁材38の内部に埋設されている。即ち、本実施の形態の絶縁材38は、外周側端末34と接続されるセグメント32を保持する機能も兼ねている。
【0034】
又、絶縁材38は、その径方向の幅が、セグメント32の径方向の幅よりも広く形成されるとともに、各セグメント32は、絶縁材38から径方向の外側及び内側の何れにも突出していない。そして、絶縁材38の外径、即ち整流子31の外径は、電機子コア22の内径よりも大きく、且つ第2のケース12の第2の支持部12aの内径よりも小さい大きさとなっている。
【0035】
図1に示すように、上記のように構成された整流子31は、前記第2のケース12の固定部12bの径方向内側の先端部に、絶縁材38の外周縁(即ち、絶縁材38においてセグメント32よりも径方向外側に突出した部位)が固定されることにより、第2のケース12に対して固定されている。そして、第2のケース12に固定された整流子31は、第3のケース13と電機子コア22との間で第3のケース13と隣接して配置されている。更に、第2のケース12に固定された整流子31は、該整流子31における絶縁材38側(摺接面32cの反対側であって、図1中、右側)の端部が第3のケース13と軸方向に対向して近接するとともに、同整流子31におけるセグメント32の摺接面32c側が電機子21側を向くように配置されている。また、整流子31における径方向外側の周縁部は、電機子21と軸方向に対向するとともに、同整流子31の内周面は、後述の回転軸42と径方向に隣接する。
【0036】
そして、第2のケース12に固定された整流子31のセグメント32のうち、18個のセグメント32(その外周側接続部32bの先端部)には、電機子コイル23の端部23aが接続されている(図1及び図4参照)。図3に示すように、36個のセグメント32に順にセグメント番号「1」〜「36」を付すと、セグメント番号「4」,「5」の周方向に隣り合うセグメント32にそれぞれ電機子コイル23の端部23aが接続され、セグメント番号「6」,「7」の周方向に隣り合うセグメント32には電機子コイル23の端部23aは直接接続されない。そして、セグメント番号「8」,「9」の周方向に隣り合うセグメント32にそれぞれ電機子コイル23の端部23aが接続され、セグメント番号「10」,「11」の周方向に隣り合うセグメント32には電機子コイル23の端部23aは直接接続されない。同様に、セグメント番号「12」,「13」,「16」,「17」,「20」,「21」,「24」,「25」,「28」,「29」,「32」,「33」,「36」,「1」のセグメント32には電機子コイル23の端部23aが接続され、残りのセグメント番号「14」,「15」,「18」,「19」,「22」,「23」,「26」,「27」,「30」,「31」,「34」,「35」,「2」,「3」のセグメント32には、電機子コイル23の端部23aは直接接続されない。
【0037】
尚、図1に示すように、電機子コイル23の端部23aは、第2のケース12の固定部12bに設けられた貫通孔12dを通って、整流子31の絶縁材38側の端部(詳しくは、セグメント32の外周側接続部32bの先端部)まで引き出され、対応するセグメント32の外周側接続部32bに溶接等により電気的に接続される。
【0038】
回転子41は、図1、図2及び図5に示すように、直流モータの径方向の中央部に配置される回転軸42と、該回転軸42に固定されたロータコア43と、該ロータコア43の外周面に固着された複数のマグネット(界磁)44とを備えている。
【0039】
円柱状の回転軸42は、図1に示すように、前記第1のケース11の径方向の中央部に設けられた軸受45aと、前記第3のケース13の径方向の中央部に設けられ前記軸受45aと対をなす軸受45bとによって、軸方向の両端部が軸支されている。また、回転軸42は、前記整流子31の径方向の中央部を貫通するとともに、該回転軸42の外周面と整流子31の内周面とが近接している。即ち、整流子31の内径は、回転軸42の外径よりも僅かに大きな値に設定されている。そして、回転軸42の軸方向の略中央部に前記ロータコア43が固定されている。
【0040】
図2に示すように、ロータコア43は、軸方向から見た形状が正八角形状をなす略筒状をなしている。そして、ロータコア43の軸中心部には、該ロータコア43を軸方向に貫通する固定孔43aが形成されるとともに、ロータコア43は、該固定孔43a内に前記回転軸42が圧入されることにより同回転軸42に対して固定されている。また、ロータコア43の外周面を構成する8つの平面には、長方形の略板状をなすマグネット44がそれぞれ固着されるとともに、8個のマグネット44は、N極とS極とが周方向に交互となるようにロータコア43に対して配置されている。また、8個のマグネット44は、周方向に等角度間隔(即ち45°間隔)に配置されている。これらのマグネット44は、径方向外側の側面が、電機子コア22の内周面(即ちティース22bの径方向内側の先端面)に対応した円弧状をなすとともに、それぞれ電機子21と径方向に対向している。
【0041】
図1に示すように、ロータコア43における整流子31と反対側の軸方向の端部には、円形状に凹設された配置凹部43bが形成されるとともに、該配置凹部43bには、絶縁性の樹脂材料よりなるスリップリングホルダ46が収容固定されている。スリップリングホルダ46は、平板状をなすとともに、該スリップリングホルダ46における整流子31と反対側の端部に一対のスリップリング47,48を保持している。対をなすスリップリング47,48は、導電性を有する金属材料にて形成されそれぞれ円環状をなすとともに、回転軸42を中心として同心状に配置されている。尚、本実施形態においては、内周側のスリップリング47は陽極側のスリップリングとされ、外周側のスリップリング48は陰極側のスリップリングとされている。
【0042】
図2に示すように、ロータコア43には、周方向に等角度間隔となる8箇所に収容孔43cが形成されている。この収容孔43cは、8個のマグネット44の周方向位置に対応して形成されており、各収容孔43cの周方向の中央を通り径方向に延びる中心線L1は、各マグネット44の周方向の中央を通り径方向に延びる中心線L2と一致する。
【0043】
各収容孔43cは、ロータコア43を軸方向に貫通するとともに(図1参照)、軸方向と直交する方向に沿って切った断面形状(図2参照)が、径方向内側から径方向外側に向かうに連れて周方向の幅が広くなる略扇形状をなしている。そして、収容孔43cの径方向外側の内側面には、図2に示すように、径方向外側に向かって凹設された係合凹部43dが形成されている。係合凹部43dは、軸方向に沿って延びるとともに、軸方向と直交する方向に沿って切った断面形状が矩形状をなしている。
【0044】
図1に示すように、回転軸42には、整流子31の摺接面32cと対向するように整流ブラシホルダ51が固定されている。整流ブラシホルダ51は、絶縁性の樹脂材料よりなり、円環状のブラシ保持部51aと、ブラシ保持部51aから軸方向に沿って整流子31と反対側に延びる8個の挿入部51bとから構成されている。
【0045】
ブラシ保持部51aは、ロータコア43と整流子31との間でロータコア43の整流子31側の軸方向の端面に当接して配置されている。このブラシ保持部51aは、円環状の板状をなすともに、その外径は、ロータコア43の外径より大きく且つマグネット44を含むロータコア43の外径より小さく形成されている。また、ブラシ保持部51aの径方向の中央部を回転軸42が貫通している。そして、ブラシ保持部51aのロータコア43側の軸方向の端面から、軸方向に沿って前記挿入部51bが延びている。
【0046】
図2に示すように、8個の挿入部51bは、ロータコア43に形成された8個の収容孔43cに対応して形成されている。即ち、8個の挿入部51bは、ブラシ保持部51aにおいて周方向に等角度間隔となる8箇所に形成されるとともに、回転軸42からの径方向の距離が収容孔43cの回転軸42からの径方向の距離と等しくなっている。そして、各挿入部51bは、軸方向と直交する方向に沿って切った断面形状が、径方向内側から径方向外側に向かうに連れて周方向の幅が広くなる略扇形状をなしている。更に、各挿入部51bの径方向外側の側面には、収容孔43cの係合凹部43dと係合するべく径方向外側に向かって突出した係合凸部51dが形成されている。係合凸部51dは、軸方向に沿って延びるとともに、軸方向と直交する方向に沿って切った断面形状が矩形状をなしている。また、図1に示すように、各挿入部51bの軸方向の長さは、収容孔43cの軸方向の長さよりも若干短く形成されている。
【0047】
そして、整流ブラシホルダ51は、8個の挿入部51bが、ロータコア43の8個の収容孔43c内にそれぞれ配置された状態でロータコア43に対して配置されており、ロータコア43と共に回転軸42と一体回転される。また、ロータコア43に対して配置された整流ブラシホルダ51の8個の挿入部51bは、図2に示すように、各挿入部51bの周方向の中央を通り径方向に延びる中心線L3が、各マグネット44の中心線L2と一致する。
【0048】
図1及び図5に示すように、整流ブラシホルダ51には、ブラシ保持部51aの整流子31側の端面(即ちロータコア43と反対側の端面)から挿入部51b側に凹設された8個のブラシ保持凹部51eが形成されている。8個のブラシ保持凹部51eは、挿入部51bに対応して周方向に等角度間隔に形成されるとともに、各ブラシ保持凹部51eは、開口部から底部に向かうに連れて回転軸42からの径方向の距離が短くなるように回転軸42に対して傾斜している。このように径方向に沿って傾斜した各ブラシ保持凹部51eは、その凹設方向とロータコア43の周方向とが直交している。また、各ブラシ保持凹部51eは、軸方向と直交する断面形状が径方向に長い長方形状をなすとともに、各ブラシ保持凹部51eの周方向の中央を通り径方向に延びる中心線L4は、各マグネット44の中心線L2と一致する。
【0049】
図1及び図2に示すように、各挿入部51bには、ブラシ保持凹部51eの底部から挿入部51bの先端側に向かって凹設されたばね収容凹部51fが形成されている。ばね収容凹部51fは、その開口部側の部位が、ブラシ保持凹部51eと同様に、開口部から底部に向かうに連れて回転軸42からの径方向の距離が短くなるように回転軸42に対して傾斜するとともに、底部側の部位は軸方向に沿って延びている。また、ばね収容凹部51fの凹設方向と直交する方向の断面形状は、円形状をなしている。
【0050】
そして、各ばね収容凹部51fには、第1の圧縮コイルばね52が収容されるとともに、各ブラシ保持凹部51eには、整流ブラシ53が収容されている。整流ブラシ53は、ブラシ保持凹部51eに対応した四角柱状をなしており、その側面がブラシ保持凹部51eの内周面に当接している。そして、図5に示すように、各整流ブラシ53は、ブラシ保持凹部51eに収容されることにより、整流ブラシ53の周方向の中央を通り径方向に延びる中心線L5が、各マグネット44の中心線L2と一致する。更に、図1に示すように、各整流ブラシ53は、ブラシ保持凹部51eに収容されることにより、その中心軸線L6が回転軸42に対して傾斜されるとともに、前記整流子31の摺接面32cに対して中心軸線L6が傾斜した状態で整流子31側の端部が同摺接面32cに接触する。即ち、各整流ブラシ53は、整流子31側の先端部から第1の圧縮コイルばね52側の後端部に向かうに連れて中心軸線L6が回転軸42に近づくように径方向に沿って傾斜している。また、各整流ブラシ53は、第1の圧縮コイルばね52によって整流子31側に付勢されて整流子31に対して押圧されるとともに、当該第1の圧縮コイルばね52の付勢力によって、ブラシ保持凹部51eの凹設方向に沿って移動可能である。
【0051】
ブラシ保持凹部51eに収容された8個の整流ブラシ53のうち、周方向に一つ置きの4個の整流ブラシ53は、陽極側の整流ブラシとして内周側のスリップリング47に接続される。そして、残りの4個の整流ブラシ53は、陰極側の整流ブラシ53として外周側のスリップリング48に接続される。整流ブラシ53とスリップリング47,48とは、各スリップリング47,48から、各挿入部51bにおける前記ばね収容凹部51fよりも内周側の部位を通ってブラシ保持凹部51e内の整流ブラシ53まで延びるリード線54にて電機的に接続されている。
【0052】
前記第1のケース11の閉塞部11bの内側面には、絶縁性の樹脂材料よりなる給電ブラシホルダ61が固定されている。給電ブラシホルダ61は、回転軸42の外周を囲む円環状をなすとともに、ロータコア43側の端部が、ロータコア43側に向かうに連れて縮径された円錐台形状をなしている。尚、給電ブラシホルダ61の内径は、回転軸42の外径よりも若干大きく形成されており、回転軸42の回転を許容する。
【0053】
また、給電ブラシホルダ61には、ロータコア43側の端面に開口部を有し閉塞部11b側に向かって凹設された複数対の保持凹部61aが形成されている。対をなす保持凹部61a同士は、周方向に(45×n)°の間隔を空けて形成されている。尚、「n」は正の奇数である。尚、図1には、複数対の保持凹部61aのうち、一対の保持凹部61aのみを図示している。また、各保持凹部61aは、開口部から底部に向かうに連れて径方向外側に向かうように傾斜して形成されている。
【0054】
そして、対をなす保持凹部61aのうち、一方の保持凹部61a(図1において下側の保持凹部61a)には、陽極側の給電ブラシ63が挿入されるとともに、該給電ブラシ63は、保持凹部61aの底部側に配置された第2の圧縮コルばね62によって開口部側に付勢され、陽極側のスリップリング47に摺動可能に押圧接触される。そして、他方の保持凹部61a(図1において上側の保持凹部61a)には、陰極側の給電ブラシ63が挿入されるとともに、該給電ブラシ63は、保持凹部61aの底部側に配置された第2の圧縮コルばね62によって開口部側に付勢され、陰極側のスリップリング48に摺動可能に押圧接触される。尚、各給電ブラシ63は、保持凹部61aに挿入されたことにより、スリップリング47,48に対して傾斜して接触する。また、各給電ブラシ63には、給電ブラシホルダ61を通って外部の電源装置(図示略)まで延びる給電線64が接続されている。
【0055】
上記のように構成された直流モータでは、外部の電源装置から給電線64を介して給電ブラシ63に供給された電流は、スリップリング47,48を介して整流ブラシ53に供給され、更に、整流ブラシ53が接触したセグメント32及びそのセグメント32と短絡部材33(外周側端末34、内周側端末35、及び連結部36)にて同電位とされたセグメント32を介して電機子コイル23に供給される。すると、電機子21にて磁界が発生し、該磁界に応じて回転子41が回転する。回転子41の回転に伴って、整流ブラシ53を保持した整流ブラシホルダ51が回転するため、整流子31において、整流ブラシ53が接触されるセグメント32が順次切り替わり、それによって順次電機子コイル23の整流が行われ、回転子41が連続的に回転される。
【0056】
次に、上記した整流子31(短絡部材33)の製造方法について、特に図7〜図10を用いて説明する。
本実施の形態の整流子31の製造方法は、「打ち抜き工程」と、「環状曲げ工程」と、「逆積層工程」と、「セグメント接続固定工程」と、「絶縁材成形工程」と、「除去工程」とを備える。
【0057】
まず「打ち抜き工程」では、図7(a)(b)に示すように、前記外周側端末34、前記連結部36及び前記内周側端末35がそれぞれ略一直線状(図7(a)中、左右方向)に沿って(隙間がほぼ無いように)並設されるとともに、内周側端末35を略一直線状に連結する成形時連結部71が形成されるように、導電性板材Dを打ち抜く。尚、打ち抜く前の導電性板材Dは、図7(a)に2点鎖線で示すように、四角形(詳しくは帯状の長方形)に形成されたものである。
【0058】
又、本実施の形態の「打ち抜き工程」では、成形時連結部71の径方向内側と対応した側(後述する「環状曲げ工程(図8参照)」で径方向内側となる側)に、後の「環状曲げ工程」での成形時連結部71の曲げを許容するとともにその曲げ角度を規制するための切り込み71aを形成する。切り込み71aは、内周側端末35毎に対応して(等間隔で36箇所)形成されるとともに、その形状は奥に向かうほど幅が狭く形成されている。
【0059】
又、本実施の形態の「打ち抜き工程」では、成形時連結部71に、後の「環状曲げ工程(図8参照)」で外周側端末34、連結部36及び内周側端末35がそれぞれ等角度間隔に整列するように(図8(a)参照)それらの成形時連結部71に対する回動角度を規制するための回動規制部71bを形成する。詳しくは、略一直線状に延びる成形時連結部71には、その直交方向に延びてその先端が内周側端末35と繋がる突出連結部71cを形成するとともに、後の「環状曲げ工程(図8参照)」で外周側端末34、連結部36及び内周側端末35がそれぞれ等角度間隔に整列するようにそれらを突出連結部71cの先端を中心として回動させた際に内周側端末35と当接して内周側端末35の回動角度を規制するための回動規制部71bを突出形成する。
【0060】
そして、次の「環状曲げ工程」では、図8(a)(b)に示すように、外周側端末34、連結部36及び内周側端末35が、上記したようにそれぞれ環状に沿って並設されるように成形時連結部71を曲げる。
【0061】
次の「逆積層工程」では、図9(a)に示すように、外周側端末34同士と内周側端末35同士とがそれぞれ積層方向に接触され、且つ、連結部36同士が積層方向に非接触とされるように、更に連結部36同士が逆向きとされるように短絡構成部材群37(成形時連結部71を含む)を積層する。即ち、前記「環状曲げ工程」を終了した2つの短絡構成部材群37(成形時連結部71を含む)を、片方のみ裏返して連結部36のみが非接触となるように(前記段差36a(図7(b)参照)側が対向するように)積層する。尚、本実施の形態では、この際、積層方向に接触した内周側端末35同士を溶接等にて接続固定(接合)する。
【0062】
次の「セグメント接続固定工程」では、図9(b)に示すように、前記セグメント32の外周側接続部32bにおける前記延出方向中間部32dを外周側端末34に、嵌合させた後に溶接する等して接続固定する。
【0063】
次の「絶縁材成形工程」では、前記「セグメント接続固定工程」にて製造したものを図示しない型内に収容し、該型内に溶融した樹脂材(絶縁材38)を充填し硬化させることで、外周側端末34、連結部36及び内周側端末35(更にはセグメント32)のそれぞれの間隔を保持するための前記絶縁材38を成形する。
【0064】
そして、次に、「除去工程」では、図10(a)(b)に示すように、前記成形時連結部71を除去し、これにより整流子31を製造する。
次に、上記実施の形態の特徴的な作用効果を以下に記載する。
【0065】
(1)「打ち抜き工程」で、外周側端末34、連結部36及び内周側端末35がそれぞれ略一直線状に沿って並設される(図7参照)ことから、それぞれの間に導電性板材Dの無駄(打ち抜かれた後に廃材となる部分)を略無いようにすることができ、歩留まりを向上することができる。又、従来のように全体を略円形に打ち抜く方法と異なり、入手が容易で安価な四角形の導電性板材Dから打ち抜いても、その四隅や中央が大きな無駄(廃材)となってしまうことがなく、歩留まりを向上することができる。
【0066】
(2)「環状曲げ工程」の後であって「除去工程」の前の「絶縁材充填工程」にて、短絡部材33の一部を構成し外周側端末34、連結部36及び内周側端末35のそれぞれの間隔を保持するための絶縁材38が成形されるため、「除去工程」で特に別の手段で外周側端末34、連結部36及び内周側端末35を保持する必要がなくなる。即ち、「除去工程」で絶縁材38以外の手段で保持する場合(「除去工程」の後に絶縁材38を成形する場合)、保持するための他の特殊な手段が必要となってしまうが、これを必要とせず、容易に整流子31(短絡部材33)を製造することができる。
【0067】
(3)「打ち抜き工程」にて、成形時連結部71の径方向内側と対応した側に、後の「環状曲げ工程」での成形時連結部71の曲げを許容するとともにその曲げ角度を規制するための切り込み71aが形成されるため、「環状曲げ工程」で容易に且つ正確な曲げ角度で成形時連結部71を(環状に)曲げることができる。
【0068】
(4)「打ち抜き工程」にて、成形時連結部71に、後の「環状曲げ工程」で外周側端末34、連結部36及び内周側端末35がそれぞれ等角度間隔に整列するようにそれらの成形時連結部71に対する回動角度を規制するための回動規制部71bが形成される。よって、回動規制部71bにて「環状曲げ工程」での成形時連結部71に対する外周側端末34、連結部36及び内周側端末35の回動角度を容易に正確なものとすることができ、容易に外周側端末34、連結部36及び内周側端末35をそれぞれ等角度間隔に整列させることができる。
【0069】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、連結部36はインボリュート曲線に沿った形状であるとしたが、外周側端末34と内周側端末35とを周方向に所定角度ずらして連結することができれば、これに限定されず、他の形状に変更してもよい。
【0070】
例えば、図11(a)(b)に示すように、連結部81を、単なる円弧に沿った形状に変更してもよい。尚、図11(a)は、「打ち抜き工程」が終了した直後のものを図示し、図11(b)は、「環状曲げ工程」を終了した直後のものを図示している。
【0071】
又、例えば、図12(a)(b)に示すように、連結部82を、単なる直線に沿った形状に変更してもよい。尚、図12(a)は、「打ち抜き工程」が終了した直後のものを図示し、図12(b)は、「環状曲げ工程」を終了した直後のものを図示している。又、図8(a)、図11(b)、及び図12(b)から分かるように、上記実施の形態のインボリュート曲線に沿った連結部36は、他の連結部81,82に比べて、幅(断面積)を大きくすることができ大電流への対応が可能となるため、インボリュート曲線に沿った連結部36とすることが望ましい。
【0072】
・図13(a)(b)に示すように、外周側端末34z、連結部36z及び内周側端末35zを軸方向に複数層重ねて通電経路の断面積を大きくし、それぞれによって所定間隔毎の前記セグメント32を電気的に接続するようにしてもよい。尚、この例(図13(a)(b))では、上記実施の形態のもの(図7(b)及び図8(b)参照)に比べて外周側端末34z、連結部36z、内周側端末35z及び成形時連結部71z(導電性板材D)の板厚を約1/3としている。又、この例では、単に全体が環状とされた外周側端末34z、連結部36z及び内周側端末35zを独立して複数(3個)形成し、それらを軸方向に重ねている。
【0073】
このようにすると、通電経路の断面積を(大きく)確保して大電流への対応を可能としながらも、「打ち抜き工程」で打ち抜く導電性板材Dの板厚を薄くすることができる。
又、図14に示すように、上記別例(図13(b)参照)と異なり、「環状曲げ工程」で、全体がスパイラル状となって外周側端末34z、連結部36z及び内周側端末35zが軸方向に複数層(本別例では3層)重なるように成形時連結部71zを(複数周回であって本別例では3周)曲げるようにしてもよい。このようにすると、上記別例(図13(b)参照)に比べて、途中段階での部品点数が少なくなり、例えば、そのことに基づく組み付けを回避することができる。
【0074】
・上記実施の形態では、「環状曲げ工程」の後であって「除去工程」の前の「絶縁材充填工程」を行うとしたが、これに限定されず、「除去工程」の後に絶縁材38を成形するようにしてもよい。このようにしても、上記実施の形態の効果(1)と同様の効果を得ることができる。
【0075】
・上記実施の形態では、「打ち抜き工程」にて、切り込み71aを形成するとしたが、これに限定されず、切り込み71aを形成しなくてもよい。
・上記実施の形態では、「打ち抜き工程」にて、回動規制部71bを形成するとしたが、これに限定されず、回動規制部71bを形成しなくてもよい。
【0076】
・上記実施の形態では、短絡部材33を、短絡構成部材群37を2つ備え、所定間隔(90°)毎の外周側端末34を電気的に接続するものとしたが、これに限定されず、少なくとも1つの短絡構成部材群を備え、周方向に並設されるセグメントに接続されることで所定間隔毎のセグメントを電気的に接続できれば、他の構成のものとしてもよい。例えば、1つの短絡構成部材群のみを備え、径方向に直線状に並ぶ外周側端末34と内周側端末35とに、径方向に沿った形状のセグメントの両端が接続される構成の短絡部材としてもよい。
【0077】
・上記実施の形態では、セグメント32の摺接面32cが軸直交方向に沿った整流子31としたが、これに限定されず、例えば、摺接面が外周面に沿った円弧状の、即ち、絶縁材の外周面にセグメントが並設され、回転軸に固定される整流子(その製造方法)に変更してもよい。
【符号の説明】
【0078】
31…整流子、32…セグメント、33…短絡部材、34,34z…外周側端末、35,35z…内周側端末、36,36z,81,82…連結部、37…短絡構成部材群、38…絶縁材、71,71z…成形時連結部、71a…切り込み、71b…回動規制部、D…導電性板材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に複数配置された外周側端末と、前記外周側端末の内側で周方向に複数配置された内周側端末と、前記外周側端末と前記内周側端末とを周方向に所定角度ずらしてそれぞれ連結する複数の連結部とが同一平面状に形成されてなる短絡構成部材群を備え、周方向に並設されるセグメントに接続されることで所定間隔毎の前記セグメントを電気的に接続するための短絡部材の製造方法であって、
前記外周側端末、前記連結部及び前記内周側端末がそれぞれ略一直線状に沿って並設されるとともに、前記内周側端末を略一直線状に連結する成形時連結部が形成されるように、導電性板材を打ち抜く打ち抜き工程と、
前記打ち抜き工程の後、前記外周側端末、前記連結部及び前記内周側端末がそれぞれ環状に沿って並設されるように前記成形時連結部を曲げる環状曲げ工程と、
前記環状曲げ工程の後、前記外周側端末、前記連結部及び前記内周側端末を保持した状態で前記成形時連結部を除去する除去工程と
を備えたことを特徴とする短絡部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の短絡部材の製造方法において、
前記環状曲げ工程の後であって前記除去工程の前に、前記短絡部材の一部を構成し前記外周側端末、前記連結部及び前記内周側端末のそれぞれの間隔を保持するための絶縁材を成形する絶縁材成形工程を備えたことを特徴とする短絡部材の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の短絡部材の製造方法において、
前記打ち抜き工程では、前記成形時連結部の径方向内側と対応した側に、後の前記環状曲げ工程での前記成形時連結部の曲げを許容するとともにその曲げ角度を規制するための切り込みを形成することを特徴とする短絡部材の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の短絡部材の製造方法において、
前記打ち抜き工程では、前記成形時連結部に、後の前記環状曲げ工程で前記外周側端末、前記連結部及び前記内周側端末がそれぞれ等角度間隔に整列するようにそれらの前記成形時連結部に対する回動角度を規制するための回動規制部を形成することを特徴とする短絡部材の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の短絡部材の製造方法において、
前記外周側端末、前記連結部及び前記内周側端末を軸方向に複数層重ねて通電経路の断面積を大きくし、それぞれによって所定間隔毎の前記セグメントを電気的に接続することを特徴とする短絡部材の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の短絡部材の製造方法において、
前記環状曲げ工程では、全体がスパイラル状となって前記外周側端末、前記連結部及び前記内周側端末が軸方向に複数層重なるように前記成形時連結部を曲げることを特徴とする短絡部材の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の短絡部材の製造方法において、
前記環状曲げ工程の後に、前記外周側端末同士と前記内周側端末同士とがそれぞれ積層方向に接触され、且つ、前記連結部同士が積層方向に非接触とされるように、更に前記連結部同士が逆向きとされるように前記短絡構成部材群を積層する逆積層工程を備えたことを特徴とする短絡部材の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の短絡部材の製造方法を含む整流子の製造方法であって、
前記連結部を介して所定間隔毎に電気的に接続されるように、前記セグメントを前記短絡部材に接続固定するセグメント接続固定工程を備えたことを特徴とする整流子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−10460(P2011−10460A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151389(P2009−151389)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】