説明

短繊維含有ゴムの製造方法

【課題】ベースゴム中に短繊維が均一に分散した短繊維含有ゴム組成物を提供する。
【解決手段】プロセスオイル及び/又は可塑剤と短繊維とを密閉式ミキサーで混練して、プロセスオイル及び/又は可塑剤で表面被覆された短繊維と、ベースゴムとを含む混練材料を密閉式混練機により混練する工程を備える短繊維含有ゴムの製造方法。上記の短繊維には、短繊維100重量部に対してプロセスオイル及び/又は可塑剤が15〜25重量部付着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短繊維含有ゴムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムに繊維を配合した繊維補強ゴムにおいて、ゴム組成物中での短繊維を均一に分散させることを目的として、従来から、短繊維に表面処理を施すことが行われている。
【0003】
特許文献1には、短繊維に、フィブリル化、RFL処理、シランカップリング剤による処理、天然ゴム及び/又は合成ゴムとのマスターバッチ化等の処理を予め施し、それを用いて混練を行うことにより、共役ジエン系ゴムへの短繊維の分散が容易になる、と記載されている。
【0004】
特許文献2には、短繊維の表面にゴムとの相溶性に優れた液状ゴムを付着させ、それをベースゴムと混練することにより、繊維の均一分散性が高まる、と記載されている。
【0005】
特許文献3には、短繊維に1分子内に炭素−炭素二重結合を2以上含む液状の有機化合物で表面処理を施し、それを有機過酸化物を含むゴム組成物と混合混練することにより、短繊維を均一に分散させることができる、と記載されている。
【0006】
特許文献4には、ポリビニルアルコール系短繊維をシランカップリング剤で表面処理し、それをゴム組成物と混練することにより、短繊維が均一に分散した短繊維−ゴム複合体を得ることができる、と記載されている。
【0007】
特許文献5には、アクリル繊維をサイジング剤で表面処理し、それをゴム組成物と混練することにより、繊維のゴム中への分散性を向上させることができる、と記載されている。
【特許文献1】特開2005−263905号公報
【特許文献2】特開平10−195208号公報
【特許文献3】特開平4−20545号公報
【特許文献4】特開平2−292336号公報
【特許文献5】特開平3−37241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、短繊維含有ゴムでは、短繊維の補強効果を十分に発揮させるために、短繊維とベースゴムとの十分な接着性を確保しつつ、短繊維をベースゴム中に均一に分散させることが重要である。
【0009】
しかしながら、短繊維は、相互に絡まり合いやすく、また、相互間の滑りが悪いために、凝集したり、さらには、カーボンブラックと凝集したりするので、ベースゴム中に均一に分散させるのは困難である。
【0010】
本発明の目的は、ベースゴム中での短繊維を均一に分散させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の短繊維含有ゴムの製造方法は、ベースゴムとプロセスオイル及び/又は可塑剤で表面被覆された短繊維とを含む混練材料を密閉式混練機により混練する工程を備える。
【0012】
本発明の短繊維含有ゴムの製造方法は、上記プロセスオイル及び/又は可塑剤と上記短繊維とを上記密閉式混練機よりも容量の小さい密閉式ミキサーに投入して混練することにより上記プロセスオイル及び/又は可塑剤で表面被覆された短繊維に加工する工程をさらに備えてもよい。
【0013】
或いは、本発明の短繊維含有ゴムの製造方法は、
上記短繊維と同一材質の長繊維の表面を上記プロセスオイル及び/又は可塑剤で被覆する処理を施す工程と、
上記表面がプロセスオイル及び/又は可塑剤で被覆された長繊維を所定長にカットすることにより上記プロセスオイル及び/又は可塑剤で表面被覆された短繊維に加工する工程と、
をさらに備えてもよい。
【0014】
本発明の短繊維含有ゴムの製造方法は、上記プロセスオイル及び/又は可塑剤で表面被覆された短繊維は、パラフィン系オイル及び/又はジオクチルセバケートで表面被覆されたものであってもよい。
【0015】
本発明の短繊維含有ゴムの製造方法は、上記短繊維に、上記プロセスオイル及び/又は可塑剤が該短繊維100質量部に対して15〜25質量部付着してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ベースゴムとプロセスオイル及び/又は可塑剤で表面被覆された短繊維とを含む混練材料を密閉式混練機により混練するので、ベースゴム中で短繊維を均一に分散させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
(実施形態1)
図1は、実施形態1にかかる短繊維含有ゴムの製造方法の工程を示す。
【0019】
<予備混練工程>
原料ゴムと配合剤とを密閉式混練機に投入し、それらを密閉式混練機により混練してベースゴムに加工する。
【0020】
原料ゴムとしては、例えば、クロロプレンゴム(CR)、エチレン・プロピレンゴム(EPR)やエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)等のエチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。原料ゴムについては、単一種で構成しても、また、複数種で構成してもいずれでもよい。
【0021】
配合剤としては、例えば、架橋剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、老化防止剤、補強剤、充填剤等が挙げられる。
【0022】
架橋剤としては、例えば、硫黄、有機過酸化物等が挙げられる。架橋剤については、単一種で構成しても、また、複数種で構成してもいずれでもよい。
【0023】
架橋促進剤としては、チアゾール系促進剤やチウラム系促進剤等が挙げられる。架橋促進剤については、単一種で構成しても、また、複数種で構成してもいずれでもよい。
【0024】
架橋促進助剤としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ステアリン酸等が挙げられる。架橋促進助剤については、単一種で構成しても、また、複数種で構成してもいずれでもよい。
【0025】
老化防止剤としては、例えば、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤等が挙げられる。老化防止剤については、単一種で構成しても、また、複数種で構成してもいずれでもよい。
【0026】
補強剤としては、例えば、ファーネスブラックやサーマルブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。補強剤については、単一種で構成しても、また、複数種で構成してもいずれでもよい。
【0027】
充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、タルク、珪藻土等が挙げられる。充填材については、単一種で構成しても、また、複数種で構成してもいずれでもよい。
【0028】
密閉式混練機としては、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー等が挙げられる。密閉式混練機の容量は、例えば10〜620Lである。
【0029】
予備混練の混練時間については、例えば、3〜20分とすることが好ましく、5〜15分とすることがより好ましい。
【0030】
混練槽への原料ゴム及び配合剤の充填率については、例えば、45〜80%とすることが好ましく、50〜60%とすることがより好ましい。
【0031】
以上により原料ゴムと配合剤とを混練したベースゴムが得られる。ベースゴムについては、ペレット化を行わない塊状であっても、ペレット状に加工したものであってもよい。
【0032】
<繊維表面処理工程>
短繊維とプロセスオイル及び/又は可塑剤とを、後述の本混練で用いる密閉式混練機よりも容量の小さい密閉式ミキサーに投入し、それらを密閉式ミキサーにより混合することによりプロセスオイル及び/又は可塑剤で表面被覆された短繊維に加工する。
【0033】
短繊維としては、例えば、綿やパルプ類のセルロース繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等が挙げられる。短繊維は、長繊維を長さ方向に沿って所定長に切断して製造されるが、その長繊維が表面処理が施されていないものであっても、また、例えば、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液(以下、「RFL水溶液」という。)等に浸漬した後に加熱する接着処理が施されたものであってもよい。短繊維は、例えば、長さが0.2〜5.0mm、繊維径が10〜50μmである。
【0034】
プロセスオイル及び/又は可塑剤については、いずれか一方のみを用いてもよく、両者を併用してもよい。
【0035】
プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル等が挙げられる。これらのうち、プロセスオイルとしてパラフィン系オイルを用いることが好ましい。プロセスオイルについては、単一種で構成しても、また、複数種で構成してもいずれでもよい。
【0036】
可塑剤としては、例えば、ジアルキルフタレート、ジアルキルアジペート、ジアルキルセバケート等が挙げられる。これらのうち、可塑剤としてジオクチルセバケートを用いることが好ましい。可塑剤については、単一種で構成しても、また、複数種で構成してもいずれでもよい。
【0037】
短繊維とプロセスオイル及び/又は可塑剤との投入割合は、短繊維100質量部に対してプロセスオイル及び/又は可塑剤を5〜35質量部とすることが好ましく、15〜25質量部とすることがより好ましい。
【0038】
密閉式ミキサーとしては、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー等が挙げられる。密閉式ミキサーの容量は、例えば10〜75Lである。
【0039】
具体的には、図2に示すようなニーダー1を用いる場合、例えば、ローター4の回転速度を、前ローター10〜50rpm及び後ローター10〜50rpm、ローター4先端と混練槽2内壁とのクリアランスを1〜5mm、ローター4先端の平均剪断速度を約50〜600−Sに設定し、混練時間を4〜5分間とする。
【0040】
小型の密閉式ミキサーを用いることにより、プロセスオイル及び/又は可塑剤が少量(例えば、短繊維100質量部に対して50質量部以下)であっても、短繊維表面をプロセスオイル及び/又は可塑剤で均一に被覆することが可能となる。
【0041】
以上により、プロセスオイル及び/又は可塑剤で表面被覆された短繊維が得られる。短繊維には、プロセスオイル及び/又は可塑剤が短繊維100質量部に対して15〜25質量部付着していることが好ましい。
【0042】
なお、この工程は上記予備混練工程と独立しており、予備混練工程の前後のいずれに行っても、また、並行して行ってもいずれでもよい。
【0043】
<本混練工程>
予備混練工程で得たベースゴムと繊維表面処理工程で得たプロセスオイル及び/又は可塑剤で表面被覆された短繊維とを含む混練材料を密閉式混練機により混練する。
【0044】
密閉式混練機としては、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー等が挙げられる。密閉式混練機の容量は、例えば10〜620Lである。なお、密閉式混練機としてニーダーを用いる場合には加圧蓋を、バンバリーミキサーを用いる場合にはフローティングウエイトをそれぞれ混練り中に昇降させ、それによって混練槽内におけるゴムの位置を積極的に移転させることが好ましい。
【0045】
このとき、予備混練工程においてベースゴムを混練して回収し、それを短繊維と共に予備混練工程で用いたのとは異なる密閉式混練機に投入して本混練を行っても、また、予備混練工程においてベースゴムを混練し、それを回収せずにそこに短繊維を投入して予備混練工程で用いたのと同一の密閉式混練機により本混練を行ってもいずれでもよい。
【0046】
混練時間については、例えば、3〜20分とすることが好ましく、5〜15分とすることがより好ましい。
【0047】
混練槽への混練材料の充填率については、45〜80%とすることが好ましく、50〜60%とすることがより好ましい。
【0048】
以上によりベースゴムに短繊維が分散した短繊維含有ゴムが得られる。
【0049】
このような短繊維含有ゴムの製造方法によれば、ベースゴムとプロセスオイル及び/又は可塑剤で表面被覆された短繊維とを含む混練材料を密閉式混練機により混練するので、ベースゴム中で短繊維を均一に分散させることができる。
【0050】
得られた短繊維含有ゴムについては、伝動ベルト等のゴム製品の成形材料とすることができる。具体的には、短繊維含有ゴムを、公知の方法(例えば、押出成型法、カレンダー形成法、射出成型法等)により成形加工し、必要に応じて架橋処理(例えば、熱プレス架橋等)を行うことにより短繊維含有ゴム製品を得ることができる。なお、短繊維含有ゴム製品の形状は特に限定されず、シート状、筒状等、適宜選択することができる。
【0051】
(実施形態2)
図3は、実施形態2にかかる短繊維含有ゴムの製造方法の工程を示す。なお、予備混練工程及び本混練工程は実施形態1と同一であるので、以下では繊維表面処理工程について説明する。
【0052】
<繊維表面処理工程>
長繊維の表面をプロセスオイル及び/又は可塑剤で被覆する処理を施す。
【0053】
長繊維としては、例えば、綿やパルプ類のセルロース繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等が挙げられる。長繊維は、表面処理が施されていないものであっても、また、例えば、RFL水溶液等に浸漬した後に加熱する接着処理が施されたものであってもよい。長繊維は、例えば、撚りのない長繊維束であるトウ状であっても、また、連続した複数の糸を撚り合わせたヤーン状であっても、或いは、その他の種類の形態であってもよい。長繊維は、繊維径は例えば10〜50μmである。
【0054】
プロセスオイルとしては、実施形態1で挙げたものを用いることができる。
【0055】
可塑剤としては、実施形態1で挙げたものを用いることができる。
【0056】
長繊維の表面をプロセスオイル及び/又は可塑剤で被覆する処理としては、長繊維表面にプロセスオイル及び/又は可塑剤を塗布する処理、長繊維をプロセスオイル及び/又は可塑剤に浸漬した後にロールで絞る処理等が挙げられる。長繊維をプロセスオイル及び/又は可塑剤に浸漬する場合、浸漬時間を、例えば1〜25分とすることが好ましい。
【0057】
そして、表面がプロセスオイル及び/又は可塑剤で被覆された長繊維を所定長の短繊維にカットする。
【0058】
繊維カット長については、例えば0.2〜6.0mmとすることが好ましい。
【0059】
カット手段としては、例えば、ECカッター、ギロチンカッター等の公知の手段が挙げられる。
【0060】
なお、長繊維をカットする場合、特に、アラミド繊維等の高強度繊維をカットする場合に、カッター刃が長繊維との間で発生する摩擦熱により破損に至りやすく寿命が短いという問題があるが、このように長繊維表面がプロセスオイル及び/又は可塑剤で被覆されていると、プロセスオイル及び/又は可塑剤による潤滑効果及び繊維表面の冷却効果により長繊維とカッター刃との間で発生する摩擦熱が抑制され、かかる問題の改善が図られる。
【0061】
以上によりプロセスオイル及び/又は可塑剤で表面被覆された短繊維が得られる。短繊維には、プロセスオイル及び/又は可塑剤が短繊維100質量部に対して15〜25質量部付着していることが好ましい。
【実施例】
【0062】
(短繊維含有ゴムの製造)
以下の実施例1〜7及び比較例1の短繊維含有ゴムを製造した。各短繊維含有ゴムの構成を表1にも示す。
【0063】
<実施例1>
原料ゴムであるクロロプレンゴム(CR)(昭和電工(株)製 商品名:ネオプレンGRT)と、その原料ゴム100質量部に対し、カーボンブラックFEF(新日化カーボン(株)製 商品名:HTC#100)50質量部、架橋促進剤DM(大内新興化学(株)製 商品名:ノクセラーDM−P)1.0質量部、酸化マグネシウム(協和化学(株)製 商品名:キョーワマグ150)4.0質量部、酸化亜鉛(白水化学(株)製 商品名:酸化亜鉛3種)5.0質量部及びステアリン酸(花王石鹸(株)製 商品名:ステアリン酸S−90)0.5質量部からなる配合剤と、を密閉式混練機に投入し、それらを密閉式混練機により混練してベースゴムに加工した。
【0064】
一方、メタアラミド短繊維(帝人(株)製 商品名:帝人コーネックス、繊維長3mm)10.0質量部とパラフィン系オイル(出光興産(株)製 商品名:ダイアナプロセスPS90)4.0質量部を小型ニーダーに投入し、5分間混合することによりパラフィン系オイルで表面被覆された短繊維に加工した。
【0065】
ここで、用いた小型ニーダーは、実容量が10.2Lのものである。実容量とは、混練槽に水を入れて加圧蓋を下限まで下げたときの容積である。そして、ローターの回転速度は20rpm(前ローター)/18rpm(後ローター)に設定した。ローター先端と混練槽内壁とのクリアランスを2mmに設定した。ローター先端の平均剪断歪み速度を約100−Sに設定した。
【0066】
上記ベースゴム及び上記パラフィン系オイルで表面処理された短繊維を、容量75Lのニーダーに投入して混練し、得られた短繊維含有ゴムを実施例1とした。なお、ベースゴムの投入量を、ニーダーの充填率が53%となる量とした。
【0067】
ここで、用いたニーダーは、実容量は74.3Lのものである。そして、ローターの回転速度を30rpm(前ローター)/24.2rpm(後ローター)に設定した。ローター先端と混練槽内壁とのクリアランスを3mmに設定した。ローター先端の平均剪断歪み速度を約200−Sに設定した。
【0068】
<実施例2>
実施例1と同様にベースゴムを加工すると共に、原料ゴム100質量部に対して10質量部の撚りのないトウ状のメタアラミド長繊維(帝人(株)製 商品名:帝人コーネックス)を、1.5質量部のパラフィン系オイルに5分間浸漬した後にロールで絞る処理を施した後、パラフィン系オイルで表面被覆されたメタアラミド長繊維を3mmにカットして短繊維(短繊維に対する表面に付着したプロセスオイルの割合が15質量%)に加工した。
【0069】
上記ベースゴム及び上記パラフィン系オイルで表面被覆された短繊維と、原料ゴム100質量部に対して2.5質量部のパラフィン系オイルと、を容量75Lのニーダーに投入して混練し、得られた短繊維含有ゴムを実施例2とした。
【0070】
用いたニーダー及び混練条件については、実施例1の場合と同様である。
【0071】
<実施例3>
実施例1と同様にベースゴムを加工すると共に、原料ゴム100質量部に対して10質量部の撚りのないトウ状のメタアラミド長繊維を、2.0質量部のパラフィン系オイルに5分間浸漬した後にロールで絞る処理を施した後、パラフィン系オイルで表面被覆されたメタアラミド長繊維を3mmにカットして短繊維(短繊維に対する表面に付着したプロセスオイルの割合が20質量%)に加工した。
【0072】
上記ベースゴム及び上記パラフィン系オイルで表面被覆された短繊維と、原料ゴム100質量部に対して2.0質量部のパラフィン系オイルと、を容量75Lのニーダーに投入して混練し、得られた短繊維含有ゴムを実施例3とした。
【0073】
用いたニーダー及び混練条件については、実施例1の場合と同様である。
【0074】
<実施例4>
実施例1と同様にベースゴムを加工すると共に、原料ゴム100質量部に対して10質量部の撚りのないトウ状のメタアラミド長繊維を、2.5質量部のパラフィン系オイルに5分間浸漬した後にロールで絞る処理を施した後、パラフィン系オイルで表面被覆されたメタアラミド長繊維を3mmにカットして短繊維(短繊維に対する表面に付着したプロセスオイルの割合が25質量%)に加工した。
【0075】
上記ベースゴム及び上記パラフィン系オイルで表面被覆された短繊維と、原料ゴム100質量部に対して1.5質量部のパラフィン系オイルと、を容量75Lのニーダーに投入して混練し、得られた短繊維含有ゴムを実施例4とした。
【0076】
用いたニーダー及び混練条件については、実施例1の場合と同様である。
【0077】
<実施例5>
実施例1と同様にベースゴムを加工すると共に、原料ゴム100質量部に対して10質量部の撚りのないトウ状のメタアラミド長繊維を、2.0質量部のジオクチルセバケート(DOS)(大日本インキ(株)製 商品名:モノサイザーW280)に5分間浸漬した後にロールで絞る処理を施した後、DOSで表面被覆されたメタアラミド長繊維を3mmにカットして短繊維(短繊維に対する表面に付着した可塑剤の割合が20質量%)に加工した。
【0078】
上記ベースゴム及び上記DOSで表面被覆された短繊維と、原料ゴム100質量部に対して2.0質量部のDOSと、を容量75Lのニーダーに投入して混練し、得られた短繊維含有ゴムを実施例5とした。
【0079】
用いたニーダー及び混練条件については、実施例1の場合と同様である。
【0080】
<実施例6>
実施例1と同様にベースゴムを加工すると共に、原料ゴム100質量部に対して10質量部の撚りのないトウ状のナイロン66長繊維(旭化成(株)製 商品名:レオナ66)を、2.0質量部のパラフィン系オイルに5分間浸漬した後にロールで絞る処理を施した後、パラフィン系オイルで表面被覆されたナイロン66長繊維を3mmにカットして短繊維(短繊維に対する表面に付着したプロセスオイルの割合が20質量%)に加工した。
【0081】
上記ベースゴム及び上記パラフィン系オイルで表面被覆された短繊維と、原料ゴム100質量部に対して2.0質量部のパラフィン系オイルと、を容量75Lのニーダーに投入して混練し、得られた短繊維含有ゴムを実施例6とした。
【0082】
用いたニーダー及び混練条件については、実施例1の場合と同様である。
【0083】
<実施例7>
原料ゴムであるエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)(JSR(株)製 商品名:EP21)と、その原料ゴム100質量部に対し、カーボンブラックFEF50質量部、硫黄(細井化学(株)製 商品名:オイル硫黄)1.5質量部、架橋促進剤DM1.0質量部、架橋促進剤TS(大内新興化学(株)製 商品名:ノクセラーTS)0.5質量部、酸化亜鉛5.0質量部及びステアリン酸0.5質量部からなる配合剤と、を密閉式混練機に投入し、それらを密閉式混練機により混練してベースゴムに加工した。
【0084】
一方、原料ゴム100質量部に対して10質量部の撚りのないトウ状のメタアラミド長繊維を、2.0質量部のパラフィン系オイルに5分間浸漬した後にロールで絞る処理を施した後、パラフィン系オイルで表面被覆されたメタアラミド長繊維を3mmにカットして短繊維(短繊維に対する表面に付着したプロセスオイルの割合が20質量%)に加工した。
【0085】
上記ベースゴム及び上記パラフィン系オイルで表面被覆された短繊維と、原料ゴム100質量部に対して2.0質量部のパラフィン系オイルと、を容量75Lのニーダーに投入して混練し、得られた短繊維含有ゴムを実施例7とした。
【0086】
用いたニーダー及び混練条件については、実施例1の場合と同様である。
【0087】
<比較例1>
実施例1と同様に加工した塊状のベースゴムを、加工後ペレット化すると共に、原料ゴム100質量部に対して10.0質量部のメタアラミド短繊維と4.0質量部のパラフィン系オイルとを容量75Lのニーダーに投入して10分間混合することにより、パラフィン系オイルで表面被覆された短繊維に加工した。
【0088】
上記ベースゴム及び上記パラフィン系オイルで表面被覆された短繊維を、容量75Lのニーダーに投入して混練し、得られた短繊維含有ゴムを比較例1とした。
【0089】
用いたニーダー及び混練条件については、実施例1の場合と同様である。
【0090】
【表1】

【0091】
(評価方法)
実施例1〜7及び比較例1のそれぞれについて、短繊維の分散状態を目視観察し、短繊維が均一に分散した分散良好なものを○、短繊維の塊が見られる分散不良のものを×と評価した。
【0092】
(評価結果)
評価結果を表1に示す。
【0093】
これによれば、実施例1〜7では短繊維が均一に分散して良好な分散状態が得られたのに対し、比較例1では短繊維の塊が見られ良好な分散状態を得ることができなかったということが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上説明したように、本発明は、短繊維含有ゴムの製造方法について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】実施形態1にかかる短繊維含有ゴムの製造方法の工程図である。
【図2】ニーダーの要部の概略構成断面図である。
【図3】実施形態2にかかる短繊維含有ゴムの製造方法の工程図である。
【符号の説明】
【0096】
1 ニーダー(密閉式ミキサー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースゴムとプロセスオイル及び/又は可塑剤で表面被覆された短繊維とを含む混練材料を密閉式混練機により混練する工程を備えた短繊維含有ゴムの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された短繊維含有ゴムの製造方法において、
上記プロセスオイル及び/又は可塑剤と上記短繊維とを上記密閉式混練機よりも容量の小さい密閉式ミキサーに投入して混練することにより上記プロセスオイル及び/又は可塑剤で表面被覆された短繊維に加工する工程をさらに備えた短繊維含有ゴムの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載された短繊維含有ゴムの製造方法において、
上記短繊維と同一材質の長繊維の表面を上記プロセスオイル及び/又は可塑剤で被覆する処理を施す工程と、
上記表面がプロセスオイル及び/又は可塑剤で被覆された長繊維を所定長にカットすることにより上記プロセスオイル及び/又は可塑剤で表面被覆された短繊維に加工する工程と、
をさらに備えた短繊維含有ゴムの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された短繊維含有ゴムの製造方法において、
上記プロセスオイル及び/又は可塑剤で表面被覆された短繊維は、パラフィン系オイル及び/又はジオクチルセバケートで表面被覆されたものである短繊維含有ゴムの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された短繊維含有ゴムの製造方法において、
上記短繊維には、上記プロセスオイル及び/又は可塑剤が該短繊維100質量部に対して15〜25質量部付着している短繊維含有ゴムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−73878(P2009−73878A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242050(P2007−242050)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】