説明

短鎖干渉RNAの細胞トランスフェクティング処方物、関連する組成物および作製方法ならびに使用

【課題】短鎖干渉リボ核酸(siRNA)および脂質結合体化ポリアミド化合物を含む組成物、それらの作製方法、ならびに細胞へのsiRNAの送達におけるそれらの使用方法を提供すること。
【解決手段】短鎖干渉リボ核酸(siRNA)ならびにsiRNAおよび他のポリヌクレオチドを細胞へ送達するのに特に有用な特定の脂質結合体化ポリアミド化合物ベースの送達ビヒクルを含む組成物。また、これらの組成物を作製および使用する方法。本発明は、短鎖干渉リボ核酸(siRNA)および細胞へのポリヌクレオチド(siRNAを含む)の送達に特に有用な特定の脂質結合体化ポリアミド化合物ベースの送達ビヒクルを含む組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、短鎖干渉リボ核酸(siRNA)および脂質結合体化ポリアミド化合物を含む組成物、それらの作製方法、ならびに細胞へのsiRNAの送達におけるそれらの使用方法に関する。本発明はまた、細胞へのポリヌクレオチド(siRNAを含む)の送達における使用に適した新規クラスの脂質結合体化ポリアミド化合物に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮出願番号60/530,953号(2003年12月19日出願)(その全体が本明細書中に援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
RNA干渉とは、細胞中の二本鎖RNAの存在が、他の無関係な遺伝子の発現には影響を及ぼさないが、同じ配列を有する遺伝子の発現を排除する現象をいう。「転写後遺伝子サイレンシング」または「RNAサイレンシング」としても公知であるこの現象は、植物においてここしばらくの間注目されてきているが、動物においてはごく最近になってようやく認識されてきている。Fireら、Nature,391,806(1998)(非特許文献1)。この機能性の発見は、この機構によって特定のタンパク質の産生を停止させ、遺伝子特異的治療を行うための強力な研究手段の可能性を示唆している。
【0004】
RNA干渉(RNAi)機構の詳細は、最近解明された。細胞における長鎖dsRNAの存在は、ダイサーとして公知のリボヌクレアーゼIII酵素の活性を刺激する。ダイサーは、dsRNAを短鎖干渉RNA(siRNA)として公知のdsRNAの小片にプロセシングする工程に関与する(Bersteinら、Nature,409,363(2001)(非特許文献2))。ダイサーの活性によって得られる短鎖干渉RNAは、代表的には約21〜23ヌクレオチド長である。RNAi応答はまた、RNA誘導性のサイレンシング複合体(RISC)と通常呼ばれる、siRNAを含むエンドヌクレアーゼ複合体を特色とする。RISC複合体は、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な配列を有する一本鎖RNAの切断を媒介する。標的RNAの切断は、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な領域の中央で起こる。Elbashirら、Genes Dev.,15,188(2001)(非特許文献3)。
【0005】
哺乳動物細胞におけるRNAi現象の利用にとっての1つの潜在的な障害は、これらの細胞における長鎖dsRNAの存在が、リボヌクレアーゼによるmRNAの非特異的切断をもたらすインターフェロン応答をも刺激するということである。しかしながら、化学的に合成された21量体の短鎖干渉RNA(siRNAs)が、いくつかのヒト細胞株においてインターフェロン応答を誘発することなく有効に遺伝子発現を抑制することが示された。Elbashirら、Nature,411,494(2001)(非特許文献4)。特に、合成のsiRNAは、2つのTTヌクレオチド3’−オーバーハングを含む21個のヌクレオチドの二重鎖を含む場合、最も活性であることが見出された。Elbashirら、EMBO J.,20,6877(2001)(非特許文献5)。
siRNAの特性である高い特異性、リボヌクレアーゼに対する耐性、非免疫原性および効力は、研究用途および治療用途のための細胞トランスフェクション薬剤としての非常に大きな可能性を示唆する。細胞への核酸組成物の送達についての種々のストラテジーが存在する。しかしながら、細胞へsiRNAをトランスフェクトする際に、技術的困難に直面してきた。ウイルスベクターは、比較的効率的な送達をもたらすが、ある場合には、被験体の免疫学的混乱または望ましくない増殖の危険性により、安全性の問題を示す。アデノウイルスベクターは、細胞のゲノム中に組み込まれず、休止細胞に形質導入することができるという点で、特定の利点を示してきた。しかしながら、これらのベクターはすべて、時間のかかる組換えDNA技術によって調製されなければならない。オリゴヌクレオチドはまた、化学トランスフェクション薬剤(これらは、多くの最近の研究の対象であった)によって、細胞に送達され得る。これらの薬剤は、ポリカチオン性分子(例えば、ポリリシン)およびカチオン性脂質を含む。カチオン性脂質DOTMA(N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)および中性リン脂質DOPE(ジオレイルホスファチジルエタノールアミン)を含むリポソーム組成物であるLipofectin(登録商標)(Felgnerら、PNAS 84:7413,1987)が、広く用いられる。リン酸カルシウム媒介性のトランスフェクションのような他の方法は、報告された手順に従って、細胞にオリゴヌクレオチドを送達するために用いられ得る。しかしながら、使いやすく、多くの細胞型に適用可能な、有効で無毒のsiRNAトランスフェクション薬剤の必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Fireら、Nature,(1998)391,806
【非特許文献2】Bersteinら、Nature,(2001)409,363
【非特許文献3】Elbashirら、Genes Dev.,(2001)15,188
【非特許文献4】Elbashirら、Nature,(2001)411,494
【非特許文献5】Elbashirら、EMBO J.,(2001)20,6877
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
上記を達成するために、本発明は、短鎖干渉リボ核酸(siRNA)および細胞へのポリヌクレオチド(siRNAを含む)の送達に特に有用な特定の脂質結合体化ポリアミド化合物ベースの送達ビヒクルを含む組成物を提供する。
【0008】
1つの局面において、本発明は、短鎖干渉リボ核酸(siRNA)および以下の一般式を有する脂質結合体化ポリアミド化合物を含む組成物を提供する:
(I)Ra−[(NR−W−CO)n]m−Rc
式中、nは1〜約48から選択される整数であり、そしてmは約2〜約48から選択される整数であり、
式中、各単量体単位「−(NR−W−CO)−」についてのRおよびRは、水素原子;ヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシル基;スルホニル基;−SH;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に1〜8個の炭素原子を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の脂肪族基であって、ここで、該脂肪族基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、脂肪族基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリール基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリールアルキル基であって、ここで、該アリールアルキルのアルキル基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、アリールアルキル基;ならびに必要に応じてリンカー部分に結合される脂質部分、からなる群より独立して選択され、
式中、Rは、少なくとも1つの単量体単位について水素原子ではなく、
式中、Rは、水素原子;ヒドロキシ基;アミノ基;ヒドラジン基;スルホニル基;−SH;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に1〜8個の炭素原子を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の脂肪族基であって、ここで、該脂肪族基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、脂肪族基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリール基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリールアルキル基であって、ここで、該アリールアルキルのアルキル基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、アリールアルキル基;ならびに必要に応じてリンカー部分に結合される脂質部分、から選択され、
式中、R、RまたはRが骨格構造中に5個未満の炭素原子を有するアリール基またはアリールアルキル基である場合、該骨格構造は、1つ以上の酸素原子および/または窒素原子をさらに含み、
式中、各単量体単位についてのWは、1〜約50個の原子を有し、そして、炭素を含みかつ必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格中に、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の2価部分から独立して選択され、ここで、該任意のWの置換は、必要に応じてリンカー部分に結合される脂質部分であり得、
ここで、該脂質部分は、以下:
(i)必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に約14〜約50個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリールまたはアリールアルキル部分であって、該アリールアルキルのアルキル基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、アリールまたはアリールアルキル部分;ならびに
(ii)必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に約10〜約50個の炭素原子を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の脂肪族部分であって、該脂肪族部分は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を含む、脂肪族部分からなる群より選択される、疎水性または両親媒性部分であり、そして
式中、単一の単量体単位についての少なくとも1つのR、R、Wおよび単一の単量体単位についてのRは、脂質部分を含む。
【0009】
特定の実施形態において、本発明は、薬学的に許容可能なビヒクル中にsiRNAを含む組成物を提供する。この組成物は、目的の遺伝子の発現を阻害するために、インビトロまたはインビボで細胞にsiRNAを送達するのに有用であり得る。ビヒクルは、1つ以上の下記式の脂質カチオン性ペプトイド結合体:
【0010】
【化4】

および位置異性体を含み、
式中、
Lは、約8炭素原子長と24炭素原子長との間の少なくとも1つの脂肪族アルキル鎖またはアルケニル鎖を含む非ステロール脂質部分およびステロール部分から選択され;
各基Rは、アルキル、アミノアルキルおよびアラルキルから独立して選択され、そして
Xは、直接結合、オリゴペプチド、2〜約30結合長の実質的に直鎖状のアルキル鎖、ならびにアルキル結合と、エステル、アミド、カーボネート、カルバメート、ジスルフィド、ペプチドおよびエーテルからなる群より選択される1つ以上の結合とからなる、2〜約30結合長の実質的に直鎖からなる群より選択される。
【0011】
Lが非ステロール脂質部分(すなわち、ステロール基ではないかまたはステロール基を含まない脂質部分、例えば、リン脂質基(すなわち、ROOCCHCH(COOR)CHOP(O)O−))である場合、脂質カチオン性ポリアミド結合体は、本明細書において「リピトイド(lipitoid)」と呼ばれる。Lがステロール部分(すなわち、ステロール基であるかまたはステロール基を含む脂質部分、例えば、コレステロール基)である場合、脂質カチオン性ポリアミド結合体は、本明細書において「コレステロイド(cholesteroid)」と呼ばれる。本発明の組成物中の脂質カチオン性ペプトイド結合体は、リピトイド、コレステロイドであり得るか、または、1つの重要な実施形態において、これらの組み合わせであり得る。
【0012】
特定の実施形態において、Rはイソプロピルまたは4−メトキシフェニルである。単一のリピトイドまたはコレステロイドは、この分子内に異なる基Rを含み得るか、または基Rはこの分子内で同一であり得る。
【0013】
本発明の組成物は、標的遺伝子のmRNAをノックアウトするのに有効な、生物学的に活性なsiRNAの哺乳動物細胞への効率的な送達をもたらす。
【0014】
別の局面において、被験体における標的遺伝子の発現を阻害する方法であって、この方法は、上記のような組成物を被験体に投与する工程を包含し、この組成物中のsiRNA二重鎖の1つの鎖は、標的遺伝子に由来するmRNA中に含まれるヌクレオチド配列を有する方法が提供される。特定の実施形態において、siRNA二重鎖の1つの鎖は、本明細書中に開示される配列番号1で表される配列を含み、標的遺伝子/mRNAはAkt1である。
【0015】
別の局面において、本発明は、少なくとも1つのリピトイドおよび1つのコレステロイドの混合物で構成されるポリヌクレオチド送達ビヒクルを提供する。組み合わせリピトイド/コレステロイド送達ビヒクルは、このようなポリヌクレオチドおよび組み合わせリピトイド/コレステロイド送達ビヒクルを含む組成物において、プラスミドDNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびsiRNAのような多様なポリヌクレオチドを細胞へ送達するのに適している。
【0016】
本明細書中に記載の化合物および組成物の製造方法、ならびに本発明の方法で用いる医薬を製造するための方法におけるこの組成物の使用が提供され、かつ本発明の範囲内にあることが企図される。
本発明のこれらの目的および特徴ならびに他の目的および特徴は、以下の本発明の詳細な説明が添付の図面と共に読まれる場合、より完全に明らかになる。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
組成物であって、以下:
薬学的に許容可能な送達ビヒクル中の短鎖干渉リボ核酸(siRNA)
を含み、該ビヒクルは、以下の式の少なくとも1つの化合物:
Ra−[(NR−W−CO)n]m−Rc
式中、nは1〜約48から選択される整数であり、そしてmは約2〜約48から選択される整数であり、
式中、各単量体単位「−(NR−W−CO)−」についてのRおよびRは、水素原子;ヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシル基;スルホニル基;−SH;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に1〜8個の炭素原子を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の脂肪族基であって、ここで、該脂肪族基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、脂肪族基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリール基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリールアルキル基であって、ここで、該アリールアルキルのアルキル基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、アリールアルキル基;ならびに必要に応じてリンカー部分に結合される脂質部分、からなる群より独立して選択され、
式中、Rは、少なくとも1つの単量体単位について水素原子ではなく、
式中、Rは、水素原子;ヒドロキシ基;アミノ基;ヒドラジン基;スルホニル基;−SH;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に1〜8個の炭素原子を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の脂肪族基であって、ここで、該脂肪族基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、脂肪族基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリール基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリールアルキル基であって、ここで、該アリールアルキルのアルキル基は、1つ以上の二重結合または三重結合を有する、アリールアルキル基;ならびに必要に応じてリンカー部分に結合される脂質部分、から選択され、
式中、R、RまたはRが骨格構造中に5個未満の炭素原子を有するアリール基またはアリールアルキル基である場合、該骨格構造は、1つ以上の酸素原子および/または窒素原子をさらに含み、
式中、各単量体単位についてのWは、1〜約50個の原子を有し、そして、炭素を含みかつ必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格中に、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の2価部分から独立して選択され、ここで、該任意のWの置換は、必要に応じてリンカー部分に結合される脂質部分であり得、
ここで、該脂質部分は、以下:
(i)必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に約14〜約50個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリールまたはアリールアルキル部分であって、該アリールアルキルのアルキル基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、アリールまたはアリールアルキル部分;ならびに
(ii)必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に約10〜約50個の炭素原子を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の脂肪族部分であって、該脂肪族部分は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、脂肪族部分
からなる群より選択される、疎水性部分または両親媒性部分であり、そして
式中、単一の単量体単位についての少なくとも1つのR、R、Wおよび単一の単量体単位についてのRは、脂質部分を含む、化合物を含むビヒクルである、組成物。
(項目2)
前記送達ビヒクルが、以下の式の脂質カチオン性ペプトイド結合体:
【化1】


および位置異性体を含み、
式中、
Lは、約8炭素原子長と24炭素原子長との間の少なくとも1つの脂肪族アルキル鎖またはアルケニル鎖を含む非ステロール脂質部分およびステロール部分から選択され;
各基Rは、アルキル、アミノアルキルおよびアラルキルから独立して選択され、そして
Xは、直接結合、オリゴペプチド、2〜約30結合長の実質的に直鎖状のアルキル鎖、ならびにアルキル結合と、エステル、アミド、カーボネート、カルバメート、ジスルフィド、ペプチドおよびエーテルからなる群より選択される1つ以上の結合とからなる、2〜約30結合長の実質的に直鎖からなる群より選択される、送達ビヒクルである、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記脂肪族アルキル鎖またはアルケニル鎖が、約14炭素原子長と24炭素原子長との間である、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記Lが、約8炭素原子長と24炭素原子長との間の2つの脂肪族アルキル鎖またはアルケニル鎖を有するリン脂質基である、項目1に記載の組成物。
(項目5)
前記Lが、コレステリル基である、項目1に記載の組成物。
(項目6)
前記Rが、イソプロピルまたは4−メトキシフェニルである、項目1に記載の組成物。
(項目7)
前記送達ビヒクルが、以下の式の脂質カチオン性ペプトイド結合体:
【化2】


を含み、式中、
Lは、(i)約8炭素原子長と24炭素原子長との間の脂肪族アルキル鎖またはアルケニル鎖を有するホスファチジルエタノールアミノ基および(ii)隣接する−(CH−セグメントに、エステル結合、アミド結合またはカルバメート結合によって連結されたコレステリル基から選択され;
nは1〜5であり;そして
Rは、イソプロピルおよび4−メトキシフェニルから選択される、項目1に記載の組成物。
(項目8)
前記脂質カチオン性ペプトイド結合体が、以下:
リピトイド1またはL1 DMPE(NaeNmpeNmpe)
リピトイド2またはL2 DMPE(NaeNiaNia)
リピトイド3またはL3 NtdNhd(NaeNmpeNmpe)
リピトイド4またはL4 NddNol(NaeNmpeNmpe)
コレステロイド1またはC1 Chol−β−ala−(NaeNmpeNmpe)
コレステロイド3またはC3 Chol−β−ala−(NaeNiaNia)
およびこれらの組み合わせ
として本明細書中に示される化合物からなる群より選択される、項目2に記載の組成物。
(項目9)
前記脂質カチオン性ペプトイド結合体が、リピトイドおよびコレステロイドの組み合わせである、項目8に記載の組成物。
(項目10)
前記リピトイド:コレステロイドの比が、約5:1〜1:5である、項目9に記載の組成物。
(項目11)
前記リピトイド:コレステロイドの比が、約1:1〜1:3である、項目10に記載の組成物。
(項目12)
前記リピトイドがL1であり、かつ前記コレステロイドがC1である、項目11に記載の組成物。
(項目13)
前記リピトイド:コレステロイドの比が、約1:3である、項目11に記載の組成物。
(項目14)
前記ビヒクル:siRNAのモル比が、約3.75nmol:l00pmolである、項目1に記載の組成物。
(項目15)
前記siRNAが、2つのヌクレオチド3’オーバーハングおよびホスホジエステル結合を全体にわたって有する21〜23量体のRNA二重鎖を含む、項目1に記載の組成物。
(項目16)
前記siRNAが、2つのヌクレオチド3’オーバーハングおよびホスホジエステル結合を全体にわたって有する、配列番号1で示される配列を含む、項目15に記載の組成物。
(項目17)
被験体における標的遺伝子の発現を阻害する方法であって、該方法は、項目1に記載の組成物を該被験体に投与する工程を包含し、ここで、前記siRNA二重鎖の1つの鎖が、該標的遺伝子に由来するmRNA中に含まれるヌクレオチド配列を有する、方法。
(項目18)
前記送達ビヒクルが、項目2に記載のような脂質カチオン性ペプトイド結合体を含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記送達ビヒクルが、リピトイドおよびコレステロイドの組み合わせである、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記リピトイド:コレステロイドの比が、約5:1〜1:5である、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記リピトイド:コレステロイドの比が、約1:1〜1:3である、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記リピトイドがL1であり、かつ前記コレステロイドがC1である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記siRNAが、2つのヌクレオチド3’オーバーハングおよびホスホジエステル結合を全体にわたって有する、配列番号1で示される配列を含む、項目17に記載の方法。
(項目24)
前記被験体が、哺乳動物の細胞または細胞株である、項目17に記載の方法。
(項目25)
前記被験体が、哺乳動物である、項目17に記載の方法。
(項目26)
前記被験体が、ヒトである、項目25に記載の方法。
(項目27)
組成物であって、以下:
少なくとも2つの脂質カチオン性ペプトイド結合体の混合物
を含み、該少なくとも2つの脂質カチオン性ペプトイド結合体の各々が、以下の式:
【化3】


および位置異性体であって、
式中、第1化合物において、Lは約8炭素原子長と24炭素原子長との間の少なくとも1つの脂肪族アルキル鎖またはアルケニル鎖を含む非ステロール脂質部分であり、かつ、第2化合物において、Lはステロール部分であり;
各基Rは、アルキル、アミノアルキルおよびアラルキルから独立して選択され、そして
Xは、直接結合、オリゴペプチド、2〜約30結合長の実質的に直鎖状のアルキル鎖、ならびにアルキル結合と、エステル、アミド、カーボネート、カルバメート、ジスルフィド、ペプチドおよびエーテルからなる群より選択される1つ以上の結合とからなる、2〜約30結合長の実質的に直鎖からなる群より選択される、組成物。
(項目28)
前記組成物中の第1化合物 対 第2化合物の比が、約5:1〜1:5である、項目27に記載の組成物。
(項目29)
前記組成物中の第1化合物 対 第2化合物の比が、約1:1〜1:3である、項目28に記載の組成物。
(項目30)
前記組成物中の第1化合物 対 第2化合物の比が、約1:1である、項目2に記載の組成物。
(項目31)
前記組成物中の第1化合物 対 第2化合物の比が、約1:3である、項目2に記載の組成物。
(項目32)
前記脂質カチオン性ペプトイド結合体が、以下:
リピトイド1またはL1 DMPE(NaeNmpeNmpe)
リピトイド2またはL2 DMPE(NaeNiaNia)
リピトイド3またはL3 NtdNhd(NaeNmpeNmpe)
リピトイド4またはL4 NddNol(NaeNmpeNmpe)
コレステロイド1またはC1 Chol−β−ala−(NaeNmpeNmpe)
コレステロイド3またはC3 Chol−β−ala−(NaeNiaNia)
およびこれらの組み合わせ
として本明細書中に示される化合物からなる群より独立して選択される、項目27に記載の組成物。
(項目33)
前記組成物が、L1およびC1からなる、項目32に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の組成物および方法におけるsiRNAキャリアとして有用な脂質カチオン性ペプトイド結合体(「リピトイド」および「コレステロイド」)の選択を示す。
【図2】図2は、Akt1 mRNAに対して指向されるsiRNAが、本発明によるトランスフェクション組成物を用いてMDA435乳癌細胞中にトランスフェクトされる場合に、Akt1発現の減少を示すプロットである。
【図3】図3は、本発明に従ってホタルルシフェラーゼに対するsiRNAおよびいくつかの異なる送達ビヒクルを用いて調製したトランスフェクション混合物で処理した細胞における、ルシフェラーゼ活性を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(本発明の特定の実施形態の説明)
本発明の材料および関連技術および装置は、ここで、いくつかの実施形態に関して記載される。記載される実施形態の重要な特性および特徴は、本文中の構造において示される。本発明は、これらの実施形態と共に記載されるが、本発明はこれらの実施形態に限定されることを意図するものではないことが理解されるべきである。逆に、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内に含まれ得るような、代替、改変および等価物を包含することが意図される。以下の記載において、多数の具体的な詳細が、本発明の完全な理解を提供するために示される。本発明は、いくつかまたは全てのこれらの具体的な詳細を用いることなく実施され得る。他の場合において、周知のプロセス操作は、本発明を不必要に不明瞭にすることのないように、詳細には記載されていない。
【0019】
(導入)
本発明は、短鎖干渉リボ核酸(siRNA)および細胞へのsiRNAの送達に特に有用な脂質結合体化ポリアミドベースの送達ビヒクルを含む組成物を提供する。別の局面において、本発明は、少なくとも1つのリピトイドおよび1つのコレステロイドの混合物で構成されるポリヌクレオチド送達ビヒクルを提供する。この送達ビヒクルは、多様なポリヌクレオチド(例えば、プラスミドDNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびsiRNA)の細胞への送達に適している。
【0020】
1つの局面において、本発明は、短鎖干渉リボ核酸(siRNA)および以下の一般式を有する脂質結合体化ポリアミド化合物を含む組成物を提供する:
(I)Ra−[(NR−W−CO)n]m−Rc
式中、nは1〜約48から選択される整数であり、そしてmは約2〜約48から選択される整数であり、
式中、各単量体単位「−(NR−W−CO)−」についてのRおよびRは、水素原子;ヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシル基;スルホニル基;−SH;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に1〜8個の炭素原子を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の脂肪族基であって、ここで、該脂肪族基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、脂肪族基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリール基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリールアルキル基であって、ここで、該アリールアルキルのアルキル基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、アリールアルキル基;ならびに必要に応じてリンカー部分に結合される脂質部分、からなる群より独立して選択され、
式中、Rは、少なくとも1つの単量体単位について水素原子ではなく、
式中、Rは、水素原子;ヒドロキシ基;アミノ基;ヒドラジン基;スルホニル基;−SH;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に1〜8個の炭素原子を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の脂肪族基であって、ここで、該脂肪族基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、脂肪族基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリール基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリールアルキル基であって、ここで、該アリールアルキルのアルキル基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、アリールアルキル基;ならびに必要に応じてリンカー部分に結合される脂質部分、から選択され、
式中、R、RまたはRが骨格構造中に5個未満の炭素原子を有するアリール基またはアリールアルキル基である場合、該骨格構造は、1つ以上の酸素原子および/または窒素原子をさらに含み、
式中、各単量体単位についてのWは、1〜約50個の原子を有し、そして、炭素を含みかつ必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格中に、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の2価部分から独立して選択され、ここで、該任意のWの置換は、必要に応じてリンカー部分に結合される脂質部分であり得、
ここで、該脂質部分は、以下:
(i)必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に約14〜約50個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリールまたはアリールアルキル部分であって、該アリールアルキルのアルキル基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、アリールまたはアリールアルキル部分;ならびに
(ii)必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に約10〜約50個の炭素原子を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の脂肪族部分であって、該脂肪族部分は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を含む、脂肪族部分からなる群より選択される、疎水性または両親媒性部分であり、そして
式中、単一の単量体単位についての少なくとも1つのR、R、Wおよび単一の単量体単位についてのRは、脂質部分を含む。
【0021】
特定の実施形態において、本発明は、薬学的に許容可能なビヒクル中にsiRNAを含む組成物を提供する。この組成物は、目的の遺伝子の発現を阻害するために、インビトロまたはインビボで細胞にsiRNAを送達するのに有用であり得る。ビヒクルは、以下の式の1つ以上の脂質カチオン性ペプトイド結合体:
【0022】
【化5】

および位置異性体を含み、
式中、
Lは、約8炭素原子長と24炭素原子長との間の少なくとも1つの脂肪族アルキル鎖またはアルケニル鎖を含む非ステロール脂質部分およびステロール部分から選択され;
各基Rは、アルキル、アミノアルキルおよびアラルキルから独立して選択され、そして
Xは、直接結合、オリゴペプチド、2〜約30結合長の実質的に直鎖状のアルキル鎖、ならびにアルキル結合と、エステル、アミド、カーボネート、カルバメート、ジスルフィド、ペプチドおよびエーテルからなる群より選択される1つ以上の結合とからなる、2〜約30結合長の実質的に直鎖からなる群より選択される。
【0023】
Lが非ステロール脂質部分(すなわち、ステロール基ではないかまたはステロール基を含まない脂質部分、例えば、リン脂質基(すなわち、ROOCCHCH(COOR)CHOP(O)O−))である場合、脂質カチオン性ポリアミド結合体は、本明細書において「リピトイド」と呼ばれる。Lがステロール部分(すなわち、ステロール基であるかまたはステロール基を含む脂質部分、例えば、コレステロール基)である場合、脂質カチオン性ポリアミド結合体は、本明細書において「コレステロイド」と呼ばれる。本発明の組成物中の脂質カチオン性ペプトイド結合体は、リピトイド、コレステロイドであり得るか、または、1つの重要な実施形態において、これらの組み合わせであり得る。
【0024】
特定の実施形態において、Rはイソプロピルまたは4−メトキシフェニルである。単一のリピトイドまたはコレステロイドは、この分子内に異なる基Rを含み得るか、または同一であり得る。
【0025】
本発明の組成物は、標的遺伝子のmRNAをノックアウトするのに有効な、siRNAの哺乳動物細胞への効率的な送達をもたらす。
【0026】
別の局面において、被験体における標的遺伝子の発現を阻害する方法であって、この方法は、上記のような組成物を被験体に投与する工程を包含し、この組成物中のsiRNA二重鎖の1つの鎖は、標的遺伝子に由来するmRNA中に含まれるヌクレオチド配列を有する方法が提供される。別の実施形態において、被験体において標的遺伝子の発現を阻害するのに用いる、上記のような組成物の製造方法が提供される。特定の実施形態において、siRNA二重鎖の1つの鎖は、2つのヌクレオチド3’オーバーハングおよびホスホジエステル結合を全体にわたって含む、本明細書中に開示される配列番号1で表される配列を含むものが用いられ得、そして標的遺伝子/mRNAはAkt1である。
【0027】
別の局面において、本発明は、少なくとも1つのリピトイドおよび1つのコレステロイドの混合物で構成されるポリヌクレオチド送達ビヒクルを提供する。組み合わせリピトイド/コレステロイド送達ビヒクルは、このようなポリヌクレオチドおよび組み合わせリピトイド/コレステロイド送達ビヒクルを含む組成物において、プラスミドDNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびsiRNAのような多様なポリヌクレオチドを細胞へ送達するのに適している。
【0028】
本発明に従う組成物および送達ビヒクルは、インビトロで(例えば、創薬、開発および活性試験を含む研究に関連して)、または哺乳動物(例えば、ヒト)被験体を含む動物における治療用途(例えば、疾患を処置するための薬物成分の薬物として)のためにインビボで、使用され得る。このようなインビボ用途のために、本発明に従う薬学的に許容可能なビヒクルが使用される。
【0029】
(定義)
他に断らない限り、本明細書中で用いられる技術用語は、当業者によって理解されるようなその通常の意味が与えられるべきである。本発明についての理解を促進するために、多くの定義された用語が、本発明の特定の要素を指定するために本明細書中で使用される。そのように使用される場合、以下の意味が意図される:
用語「脂質結合体化ポリアミド」は、オリゴマーのアミド部分および1つ以上の脂質部分の両方を有する化合物をいうために本明細書中で使用される。脂質結合体化ポリアミド化合物のポリアミド成分は、例えば、ペプトイドであり得、この場合、脂質結合体化ポリアミドは「脂質結合体化ペプトイド」と呼ばれ得、特にカチオン性ペプトイドである場合、脂質結合体化ポリアミドは「脂質カチオン性ペプトイド結合体」と呼ばれ得る。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「脂質」とは、疎水性または両親媒性部分をいう。脂質部分は、オリゴマーアミド部分に直接的に、または必要に応じて、リンカー部分を介してオリゴマーアミド部分に間接的に結合体化され得る。脂質結合体化ポリアミドの脂質成分は、非ステロール部分またはステロール部分であり得るか、あるいは非ステロール部分またはステロール部分を含み得る。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「リピトイド」とは、以下の式:
【0032】
【化6】

の脂質結合体化ペプトイドをいい、式中、脂質部分(L)は非ステロール脂質部分である。本明細書および特許請求の範囲において用いられたとしても、本式は、位置異性体またはそのペプトイド部分(本式のペプトイド部分の任意の繰り返し3倍モチーフである位置異性体)を包含することを意図する。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「コレステロイド」とは、以下の式:
【0034】
【化7】

の脂質結合体化ペプトイドをいい、式中、脂質部分(L)はステロール脂質部分である。本明細書および特許請求の範囲において用いられたとしても、本式は、位置異性体またはそのペプトイド部分(本式のペプトイド部分の任意の繰り返し3倍モチーフである位置異性体)を包含することを意図する。
【0035】
用語「オリゴマーの」および「オリゴマーアミド」は、本明細書中で交換可能に使用されて、アミド結合によって結合される2つ以上のモノマー単位、すなわち、
−[−(NR−W−CO)n]m−
をいう。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語「モノマー」または「モノマー」単位とは、以下の式
−(NR−W−CO)−
によって定義される単位をいう。
【0037】
用語「オリゴマーの反応物」、「オリゴマー反応物」、「オリゴマーアミド反応物」および「脂質反応物」とは、本明細書中において、本発明の脂質結合体化ポリアミド化合物が合成される反応種をいう。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「送達ビヒクル」とは、ポリヌクレオチドと複合体を形成し、細胞膜を介して標的部位へのポリヌクレオチドの送達を促進する、本明細書でさらに記載されるような脂質結合体化ポリアミド化合物をいう。本発明に従う送達ビヒクルは、「薬学的に受容可能」であり、「薬学的に受容可能」とは、本明細書中で使用される場合、例えば、インビボまたはインビトロのいずれかで、生細胞のような生体物質と接触する、薬学的処方物および他の用途に用いるための生体物質と送達ビヒクルとの適合性をいう。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「複合体」とは、2つ以上の化合物または構造物の間の相互作用によって形成される構造物をいう。このような相互作用は、化学的相互作用、例えば、共有結合、イオン結合または二次結合(例えば、水素結合)などを介し得るか、あるいは物理的相互作用、例えば、カプセル化、封入などを介し得る。
【0040】
本発明の1つの局面に従って、脂質結合体化ポリアミド化合物は、内因性のタンパク質分解酵素による分解に感受性のアミノ酸の中間に配置された配列による共有結合を介して、siRNAと複合体化され得る。従って、例えば、分解系酵素への複合体の曝露により、複合体からのsiRNAの切断および引き続く遊離を生じる。本発明の脂質結合体化ポリアミド化合物はまた、イオン結合または二次結合を介して、あるいはカプセル化または封入を介して、siRNAと複合体化され得る。
【0041】
用語「ポリヌクレオチド」および「ポリ核酸」は、本明細書中で交換可能に使用されて、DNA、RNAおよびそれらのアナログ、ペプチド−核酸、ならびに、リン酸を含まないヌクレオチドを有するDNAまたはRNAをいう。siRNAは、本発明に従って特に用いられる。本発明のいくつかの局面の実施に用いられる他のポリヌクレオチドは、一本鎖分子、二本鎖分子またはキメラ一本鎖もしくは二本鎖分子であり得る。特定の例としては、プラスミドDNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「置換される」とは、有機官能基上の1つ以上のペンダント水素の置換が、好ましくは、ハロゲン化物、低級アルキルまたは低級アルコキシ基、ハロメチル、あるいはハロエチルから選択される置換基で置換されることを意味する。
【0043】
本明細書において言及されるすべての刊行物は、本発明の特徴(これに関連して刊行物が引用される)を開示および記載する目的で、参考として本明細書中に援用される。
【0044】
(組成物)
1つの局面において、本発明は、短鎖干渉リボ核酸(siRNA)および脂質結合体化ポリアミドベースの送達ビヒクルを含む組成物を提供する。これらの組成物は、細胞へのsiRNAの送達に特に有用である。
【0045】
(1.siRNA)
本発明の組成物は、正常な細胞機能(例えば、インターフェロン応答)に有害な任意の他の活性を誘発することなく、目的の遺伝子の発現を特異的に抑制するのに有効なsiRNAを含む。有効なsiRNAは、一般に(しかし、必ずしもそうであるとは限らないが)、化学的に合成される。特定の実施形態において、2つのヌクレオチド3’オーバーハングおよびホスホジエステル結合を全体にわたって含む、配列CAUAGUGAGGUUGCAUCUGGUG(配列番号1)を有するAkt1メッセンジャーRNAに対して指向されるsiRNAが用いられ得る。ある場合において、2つのヌクレオチド3’側オーバーハングは、TT(DNA)ヌクレオチドである。別の場合において、2つのヌクレオチド3’側オーバーハングは、2’O−メチルUU(RNA)ヌクレオチドである。
【0046】
以下の実施例1および3に記載のように、細胞中にトランスフェクトされた場合、これらのsiRNAは、内因性Akt1 mRNAの非常に有効な分解を示し、対応するAkt1遺伝子の活性の減少を生じた。本明細書中に記載されるAkt1 siRNA配列が、本発明に従う組成物中の脂質結合体化ポリアミド化合物送達ビヒクルと組み合わされ得る無数の他の可能なsiRNA配列の単なる代表であることは、理解されるべきである。本明細書中に提供される開示について、他のsiRNA配列は、対応するmRNAおよび遺伝子に同じ影響を達成する、同じかまたは類似の容易に確認可能な様式で用いられ得ることが、当業者に理解される。
【0047】
(2.脂質結合体化ポリアミド化合物)
本発明は、脂質結合体化ポリアミド化合物ベースの送達ビヒクルを含む組成物を提供する。これらの送達ビヒクル中での使用またはこれらの送達ビヒクルとしての使用に適した脂質結合体化ポリアミド結合体は、米国シリアル番号60/023,867、同60/054,743および同09/132,808に基づく、共に権利を有するPCT公開WO98/06437およびWO99/08711(Zuckermannら);ならびに米国シリアル番号60/151,246に基づく、共に権利を有するPCT公開WO01/16306および米国シリアル番号09/648,254(Innisら)(その全体が、すべての目的のために、本明細書中に参考として援用される)に記載される。これらの脂質結合体化ポリアミド結合体は、以下の一般式を有する:
(I)Ra−[(NR−W−CO)n]m−Rc
式中、nは1〜約48から選択される整数であり、そしてmは約2〜約48から選択される整数であり、
式中、各単量体単位「−(NR−W−CO)−」についてのRおよびRは、水素原子;ヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシル基;スルホニル基;−SH;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に1〜8個の炭素原子を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の脂肪族基であって、ここで、該脂肪族基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、脂肪族基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリール基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリールアルキル基であって、ここで、該アリールアルキルのアルキル基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、アリールアルキル基;ならびに必要に応じてリンカー部分に結合される脂質部分、からなる群より独立して選択され、
式中、Rは、少なくとも1つの単量体単位について水素原子ではなく、
式中、Rは、水素原子;ヒドロキシ基;アミノ基;ヒドラジン基;スルホニル基;−SH;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に1〜8個の炭素原子を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の脂肪族基であって、ここで、該脂肪族基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、脂肪族基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリール基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリールアルキル基であって、ここで、該アリールアルキルのアルキル基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、アリールアルキル基;ならびに必要に応じてリンカー部分に結合される脂質部分、から選択され、
式中、R、RまたはRが骨格構造中に5個未満の炭素原子を有するアリール基またはアリールアルキル基である場合、該骨格構造は、1つ以上の酸素原子および/または窒素原子をさらに含み、
式中、各単量体単位についてのWは、1〜約50個の原子を有し、そして、炭素を含みかつ必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格中に、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の2価部分から独立して選択され、ここで、該任意のWの置換は、必要に応じてリンカー部分に結合される脂質部分であり得、
ここで、該脂質部分は、以下:
(i)必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に約14〜約50個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリールまたはアリールアルキル部分であって、該アリールアルキルのアルキル基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、アリールまたはアリールアルキル部分;ならびに
(ii)必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に約10〜約50個の炭素原子を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の脂肪族部分であって、該脂肪族部分は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、脂肪族部分
からなる群より選択される、疎水性または両親媒性部分であり、そして
式中、単一の単量体単位についての少なくとも1つのR、R、Wおよび単一の単量体単位についてのRは、脂質部分を含む。
【0048】
本発明の脂質結合体化ポリアミドは、RおよびWの各々がモノマーからモノマーへとランダムに変化する(すなわち、式中nは1であり、mは約2〜約48の整数である)、ランダムポリマーであり得る。あるいは、脂質結合体化ポリアミドは、繰り返しである(すなわち、各n量体は同じである)か、ランダムに可変である(すなわち、各n量体のモノマー組成はランダムである)かのいずれかである、m個のn量体(すなわち、nは1よりも大きく、mは約2〜約48の整数である)を有するポリマーであり得る。
【0049】
代表的には、整数nは、約40以下であり、より代表的には約20以下であり、そしてさらにより代表的には約6以下である。好ましくは、nは約3である。整数mは、代表的には約40以下であり、より代表的には約25以下である。通常、整数mは、約15以下であり、代表的には約12以下であり、そしてさらにより代表的には約8以下である。
【0050】
、RおよびRが脂肪族である場合、代表的には骨格構造中に少なくとも2個の炭素原子を含み、そしてより代表的には骨格構造中に少なくとも約3個の炭素原子を含む。アリールおよびアリールアルキルR基、R基およびR基は、直鎖状または環状であり得る。骨格構造中に5個未満の炭素原子を有するアリールおよびアリールアルキルR、RおよびRはまた、骨格構造中に1個以上のヘテロ原子(例えば、窒素および/または酸素)を有する。代表的には、アリールおよびアリールアルキルR、RおよびRは、骨格構造中に少なくとも約5個の炭素原子を有する。
【0051】
は、代表的には−OH、−H、−SH、−COOH、スルホニルまたは必要に応じてリンカー部分に結合体化される脂質部分であり、Rは、代表的には−OH、−H、−SH、−NH、スルホニル、ヒドラジンまたは必要に応じてリンカー部分に結合体化される脂質部分である。好ましくは、RまたはRのいずれかは、必要に応じてリンカー部分に結合体化される脂質部分である。
【0052】
は、生理学的に適切なpHでカチオン性、アニオン性または中性の側鎖であり得る。代表的には、生理学的pHは、少なくとも約5.5であり、そして代表的には少なくとも約6.0である。より代表的には、生理学的pHは、少なくとも約6.5である。通常、生理学的pHは約8.5未満であり、そして代表的には約8.0未満である。より代表的には、生理学的pHは、約7.5未満である。
【0053】
適切なカチオン性側鎖としては、例えば、アミノアルキル(例えば、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチル、アミノペンチルなど)およびそれらの誘導体;(S)−α−メチルエチレンジアミノおよびその誘導体;トリメチルアミノエチルおよびその誘導体;グアニジノアルキル(例えば、グアニジノエチル、グアニジノプロピル、グアニジノブチル、グアニジノペンチルなど)およびそれらの誘導体;アミノベンジルおよびその誘導体;ピリジニウムおよびその誘導体;ならびに当業者に公知の他のカチオン性部分などが挙げられる。
【0054】
適切な中性側鎖としては、例えば、(S)または(R)−α−メチルベンジルおよびその誘導体;ベンジルおよびその誘導体;フェネチルおよびその誘導体;ナフチルメチルおよびその誘導体;(S)または(R)−α−メチルナフチルおよびその誘導体;N−プロピルピロリジノンおよびその誘導体;シクロヘキシルメチルおよびその誘導体;フルフリルおよびその誘導体;3,4,5−トリメトキシベンジルおよびその誘導体;メトキシエチルおよびその誘導体;p−メトキシフェネチルおよびその誘導体;イソアミル(「IsoA」)およびその誘導体;ならびに当業者に公知の他の中性部分などが挙げられる。
【0055】
適切なアニオン性側鎖としては、例えば、カルボキシメチル、カルボキシエチルなど、およびそれらの誘導体;安息香酸およびその誘導体;リン酸塩およびその誘導体;硫酸塩およびその誘導体;ならびに当業者に公知の他のアニオン性部分などが挙げられる。
【0056】
必要に応じて、Rは、天然に存在するかまたは天然に存在しないアミノ酸上に見出される部分であり得るか、あるいはRは、リンカー部分に必要に応じて結合される脂質部分であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「天然に存在するアミノ酸」とは、Ala、Cys、Asp、Glu、Phe、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、TrpおよびTyrをいう。用語「天然に存在しないアミノ酸」とは、例えば、天然に存在するアミノ酸のD異性体を含む、典型的には天然に見出されないアミノ酸をいう。
【0057】
n×mが3以上である場合、代表的には、Rは、少なくとも2つの単量体単位について水素ではなく、さらに代表的には、Rは、少なくとも3つの単量体単位について水素ではない。代表的には、モノマー単位の約75%未満は、水素であるRを有する。より代表的には、モノマー単位の約50%未満は、水素であるRを有する。さらにより代表的には、モノマー単位の約25%未満は、水素であるRを有する。さらにより代表的には、Rは、任意の単量体単位について水素ではない。
【0058】
Wは、代表的には、−CHCH−、CH−C−C(=O)O−(すなわち、トルイル酸)、−CHCH−O−、CH−CH=CH−、あるいは
(II)−CRCR−、
であり、
式中、各単量体単位についてのRおよびRは、水素原子;ヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシル基;スルホニル基;−SH;必要に応じて窒素、酸素、硫黄、リンなどを含む骨格構造中に1〜8個の炭素原子を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の脂肪族基であって、ここで、該脂肪族基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、脂肪族基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄、リンなどを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリール基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄、リンなどを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリールアルキル基であって、ここで、該アリールアルキルのアルキル基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、アリールアルキル基;ならびに必要に応じてリンカー部分に結合される脂質部分、からなる群より独立して選択され、
式中、RおよびRのいずれかは、骨格構造中に5個未満の炭素原子を有するアリール基またはアリールアルキル基であって、該骨格構造は、1つ以上の酸素原子および/または窒素原子をさらに含む。
【0059】
およびRが脂肪族である場合、これらは、代表的には骨格構造中に少なくとも2個の炭素原子を含み、さらに代表的には骨格構造中に少なくとも約3個の炭素原子を含む。アリールおよびアリールアルキルR基およびR基は、直鎖状または環状であり得る。骨格構造中に5個未満の炭素原子を有するアリールおよびアリールアルキルRおよびRはまた、骨格構造中に1個以上のヘテロ原子(例えば、窒素および/または酸素)を有する。代表的には、アリールおよびアリールアルキルRおよびRは、骨格構造中に少なくとも約5個の炭素原子を有する。
【0060】
およびRは、代表的には、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸上に見出される部分である。通常、RおよびRの少なくとも1つは、水素原子である。最も代表的には、RおよびRの両方は、すべての単量体単位について水素であり、その結果、化合物(I)は、脂質に結合体化され、N置換されたポリグリシン化合物である。
【0061】
脂質部分は、1つ以上のモノマーについてR、R、Rに配置され得るか、または1つ以上のモノマーについてW中の置換位置に配置され得る。脂質部分は、単量体単位に直接的に結合され得るか、またはリンカー部分を介して単量体単位に間接的に結合され得る。
【0062】
本明細書中で使用される用語「リンカー」とは、脂質部分およびオリゴマーアミド部分が互いに直接連結された場合よりも、これらの2つの部分の間の分子の距離がより大きいような様式で、オリゴマーアミド部分および脂質部分をともに連結するために機能する部分をいう。リンカー部分は、骨格中に1〜約20個の原子を有する、比較的小さな部分であっても、あるいはポリマーの部分であってもよい。小さなリンカー部分は、置換されていてもよく、代表的には骨格中に1〜約20個の原子(例えば、炭素、窒素、酸素、硫黄、リンなど)を有する。代表的には、小さなリンカー部分は、骨格中に約18個未満の原子を有し、そしてより代表的には、骨格中に約15個未満の原子を有する。通常、小さなリンカー部分は、骨格中に約10個未満の原子を有し、そして必要に応じて、骨格中に約5個未満の原子を有する。
【0063】
リンカー部分は、オリゴマー反応物および脂質反応物の両方と反応し得る二官能分子(例えば、6−アミノヘキサン酸、2−(2−(2−アミノエトキシ)エトキシ)エトキシ)酢酸など)から誘導され得る。リンカー部分はまた、例えば、アシル基および置換アシル基、スルホニル基および置換スルホニル基、ならびに化学合成の間に使用されてオリゴマー部分への脂質部分の結合体化を促進する他の反応性部分などのような基から誘導され得る。
【0064】
ポリマーのリンカー部分は、必要に応じて置換され(例えば、ヒドロキシ−、カルボキシ−、ホスホ−、アミノ−、など)、炭素を含みかつ必要に応じて窒素、酸素、硫黄、リンなどを含む骨格を有する実質的に直鎖状のポリマーである。ポリマーのリンカー部分は、約300ダルトンと約15,000ダルトン、代表的には約10,000ダルトン未満、より代表的には約5,000ダルトン未満、そしてさらにより代表的には約3000ダルトン未満、そして必要に応じて約1000ダルトン未満との間の平均分子量を有する。適切なポリマーのリンカー部分としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0065】
脂質部分は、中性である(すなわち、電荷を有さないかまたはゼロの正味電荷を有する)かまたは荷電しているかのいずれかであり、かつ天然に誘導されるかまたは合成的に誘導されるかのいずれかである、疎水性部分または両親媒性部分である。代表的には、本発明の脂質結合体化ポリアミド化合物中の脂質部分は、両親媒性である。
【0066】
適切な脂質部分は、以下を含む:(1)必要に応じて、窒素、酸素、硫黄、リンなどを必要に応じて含む骨格構造中に約14〜約50個の炭素原子を有するアリールまたはアリールアルキル部分であって、該アリールアルキル部分は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、アリールアルキル部分;(2)必要に応じて、窒素、酸素、硫黄、リンなどを必要に応じて含み、かつ1つ以上の二重結合または三重結合を必要に応じて有する、骨格構造中に約10〜約50個の炭素原子を有する分岐鎖または直鎖の脂肪族部分。
【0067】
代表的には、アリールおよびアリールアルキル脂質部分は、少なくとも約16個の炭素原子を有し、代表的には少なくとも約20個の炭素原子を有し、そしてさらにより代表的には少なくとも約30個の炭素原子を有する。
【0068】
本発明の化合物に使用される脂肪族脂質部分は、代表的には、少なくとも約12個の炭素原子を有し、そしてより代表的には、少なくとも約14個の炭素原子を有する。通常、脂肪族脂質部分は、少なくとも約18の炭素原子、より通常少なくとも約24個の炭素原子、そしてさらにより通常少なくとも約30個の炭素原子を有する。
【0069】
本発明の脂質結合体化ポリアミド化合物中の脂質部分の数は、所望の疎水性の程度によって変動し得、かつオリゴマーの長さ(すなわち、n×m)および脂質部分の大きさによっても変動する。例えば、脂質部分が約30個以下の炭素原子を有する場合、本発明の脂質結合体化ポリアミド化合物には、代表的に、モノマー基の総数(すなわち、n×m)の90%として算出される数よりも少ない(すなわち、nが3であり、かつmが3である場合、脂質結合体化ポリアミド化合物に結合体化される脂質部分の数は、代表的には約8個未満である)いくつかの脂質部分が結合体化している。より代表的には、脂質部分が約30個以下の炭素原子を有する場合、本発明の脂質結合体化ポリアミド化合物には、モノマー基の総数の約80%未満、より代表的にはモノマー基の総数の約75%未満、そしてさらにより代表的にはモノマー基の総数の約60%未満である、いくつかの脂質部分が結合体化している。
【0070】
脂質部分が約30個よりも多い炭素原子を有する場合、代表的には、本発明の脂質結合体化ポリアミド化合物には、モノマー基の総数の50%未満として算出される数よりも少ない、いくつかの脂質部分が結合体化している。
【0071】
適切な脂質部分としては、さらに窒素、酸素、硫黄、リンなどを必要に応じて含む骨格中に約8〜約30個の炭素原子をそれぞれ独立して有する、置換されていてもよい脂肪族直鎖部分である、1つ以上の疎水性テールを有するものが挙げられる。代表的には、疎水性テールは、骨格中に少なくとも約10個の炭素原子を有し、そしてより代表的には、骨格中に少なくとも約12個の炭素原子を有する。本発明の脂質結合体化ポリアミド化合物において用いられる疎水性テールは、代表的には、骨格中に約26個よりも多い炭素原子を有さず、そしてより代表的には、骨格中に約24個よりも多い炭素原子を有さない。
【0072】
本発明の実施において使用される天然の脂質部分は、例えば、ホスホグリセリド(アシルホスホグリセリド(例えば、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルイノシトールリン酸、ホスファチジルイノシトール二リン酸、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロールなど)およびエーテルホスホグリセリドの両方を含む);グリセロ糖脂質(例えば、モノガラクトシルジアシルグリセロール、ジガラクトシルジアシルグリセロール、スルホキノボシルジアシルグリセロール、ジマンノシルジアシルグリセロール、ガラクトフラノシルジアシルグリセロール、ガラクトシルグルコシルジアシルグリセロール、ガラクトシルグルコシルジアシルグリセロール、グルコシルガラクトシルグルコシルジアシルグリセロールなど);スフィンゴリピド(例えば、スフィンゴシン、グリコシルセラミド、ガングリオシドなど);ならびに飽和および不飽和ステロール(例えば、コレステロール、エルゴステロール、スチグマステロール、シトステロールなど);ならびに他の天然の脂質などを含む、例えばリン脂質から誘導され得る。
【0073】
適切な合成脂質部分は、例えば、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)(Genzyme Corp.,Cambridge)、DMRIE−C(商標)(GibcoBRL,Gaithersburg,MD)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミン−カルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)(lipofectamine(商標)、GibcoBRL,Gaithersburg,MD)、3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール、Tfx−50(Promega Corp.,Madison,WI)、N,N1,N2,N3−テトラメチル−N,N1,N2,N3−テトラパルミチルスペルミン(TM−TPS)(Cellfectin、GibcoBRL,Gaithersburg,MD)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミノスペルミンなどから誘導され得る。
【0074】
適切な脂質部分はまた、骨格中に約8〜約24個の炭素原子を有する脂肪酸および脂肪アルコールから誘導されるものを含む。代表的には、脂肪酸および脂肪アルコールは、骨格中に少なくとも約10個の炭素原子を有し、そしてより代表的には、骨格中に少なくとも約12個の炭素原子を有する。通常、脂質部分が誘導される脂肪酸およびアルコールは、骨格中に約20個未満の炭素原子を有する。
【0075】
代表的には、Rは、脂質部分またはリンカー部分と結合体化した脂質部分である。特に有用な脂質部分含有R基は、以下の式:
【0076】
【化8】

を有するホスファチジルアルキルアミノ置換アシル部分であり、
式中、pは、2または3から選択される整数であり、そしてRは、それぞれ独立して、骨格中に約6個と約25個との間の炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル部分から選択される。代表的にはRは、骨格中に約22個までの炭素原子、より代表的には約20個までの炭素原子、さらにより代表的には約18個までの原子を有する。代表的には、Rは、骨格中に少なくとも約8個の炭素原子、より代表的には少なくとも約10個の炭素原子、そしてさらにより代表的には少なくとも約12個の炭素原子を骨格中に有する。例示的なR部分としては、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルなどが挙げられる。好ましくは、pは2である。
【0077】
本発明の脂質結合体化ポリアミド化合物は、例えば、標的化能力、構造上の特徴および生物活性を付与する薬剤または分解部位を導入する薬剤などと、必要に応じてさらに結合体化または複合体化され得る。適切な薬剤としては、例えば、単糖、二糖および多糖、ポリエチレングリコール、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質(例えば、リポタンパク質、糖タンパク質、抗体などを含む)、架橋剤、マーカー剤(例えば、フルオレセイン、ビオチン、32Pなどのような)などが挙げられる。
【0078】
、R、R、Wおよび使用される特定の脂質部分が、特定の型のポリヌクレオチドの送達のために、脂質結合体化ポリアミド化合物の物理化学的性質を最適化するために容易に変更され得ることが、当業者に理解される。例えば、細胞へのsiRNAの送達に用いるのに適した本発明のオリゴマー部分は、正味の正電荷を有し、ポリ核酸を縮合し得、その結果、これらのオリゴマー部分のサイズはより小型であり、従って、細胞への送達を促進する。
【0079】
細胞へのsiRNAの送達に用いるのに適した式(I)の化合物としては、繰り返しn量体単位(すなわち、nが1以上である)を有する脂質結合体化ポリアミド化合物が挙げられる。例えば、nが3である場合、式(I)の脂質結合体化ポリアミド化合物は、繰り返し三量体単位、すなわち、
【0080】
【化9】

を有し、式中、R、R、m、各Wおよび各Rは、式(I)およびその位置異性体と同様に定義される。細胞へのsiRNAの送達に用いるのに適した式(IV)を有する化合物としては、Rがカチオン性側鎖であり、RおよびRの両方が中性側鎖であり、各WがCHであり、RがNHであり、そしてRが式(III)によって定義される化合物が挙げられる。
【0081】
本発明の脂質結合体化ポリアミド化合物は、代表的には、溶液中において、濃度依存的な、2次元または3次元規則構造を形成する。このような構造としては、二次元配列(例えば、単荷電層または脂質二重層表面)および三次元構造(例えば、ミセル、小胞およびリポソーム)が挙げられる。代表的には、本発明の脂質結合体化ポリアミド化合物のみで形成された規則構造は、代表的には、十分に小さいので光を散乱させない。ポリヌクレオチドと複合体を形成した脂質結合体化化合物から調製されるミセル、小胞およびリポソームは、代表的には約1μm未満、より代表的には約500nm未満、そしてさらにより代表的には約200nm未満の平均粒径を有する。
【0082】
特定の実施形態において、本発明の脂質結合体化ポリアミド化合物ベースの送達ビヒクルは、1つ以上の下記式の脂質カチオン性ペプトイド結合体:
【0083】
【化10】

および位置異性体を含み得、
式中、
Lは、約8炭素原子長と24炭素原子長との間の少なくとも1つの脂肪族アルキル鎖またはアルケニル鎖を含む非ステロール脂質部分およびステロール部分から選択され;
各基Rは、アルキル、アミノアルキルおよびアラルキルから独立して選択され、そして Xは、直接結合、オリゴペプチド、2〜約30結合長の実質的に直鎖状のアルキル鎖、ならびにアルキル結合と、エステル、アミド、カーボネート、カルバメート、ジスルフィド、ペプチドおよびエーテルからなる群より選択される1つ以上の結合とからなる、2〜約30結合長の実質的に直鎖からなる群より選択される。
【0084】
Lが非ステロール脂質部分(すなわち、ステロール基を含まない脂質部分、例えば、リン脂質基(すなわち、ROOCCHCH(COOR)CHOP(O)O−))である場合、脂質カチオン性ポリアミド結合体は、本明細書において「リピトイド」と呼ばれる。Lがステロール部分(すなわち、ステロール基を含む脂質部分、例えば、コレステロール基)である場合、脂質カチオン性ポリアミド結合体は、本明細書において「コレステロイド」と呼ばれる。本発明の組成物中の脂質カチオン性ポリアミド結合体は、リピトイド、コレステロイドであり得るか、または、1つの重要な実施形態において、これらの組み合わせであり得る。
【0085】
特定の実施形態において、Rはイソプロピルまたは4−メトキシフェニルである。単一のリピトイドまたはコレステロイドは、この分子内に異なる基Rを含み得るか、または同一であり得る。
【0086】
これらのビヒクルは、前述のZuckermannらに記載されるような、かつ以下にさらに詳述されるような、従来の溶液相または固相合成法によって調製され得る。1つのこのような手順において、樹脂に結合されたペプトイドのN末端は、Fmoc−アミノヘキサン酸またはFmoc−β−アラニンのようなスペーサーでアシル化される。Fmoc基の除去後、1級アミノ基は、例えば、図1のコレステロイド1および3に示されるように、脂質部分(例えば、コレステロールクロロホルメート)と反応してカルバメート結合を形成する。次いで、生成物はトリフルオロ酢酸を用いて樹脂から切断され、逆相HPLCによって精製される。脂肪酸誘導性の脂質部分(例えば、リン脂質)は、ステロイド部分の代わりに用いられて、本明細書中に記載されかつ図1にも示されるようなリピトイドを形成し得る。
【0087】
脂質部分はまた、任意の有効長の他の結合(当業者にとって容易に利用可能)によって、ポリアミド(例えば、ペプトイド)部分に連結され得る。リンカーは、約30結合長以下、そしてより好ましくは約15結合長以下の鎖であるが、任意の有効長が使用され得る。鎖は、代表的には直鎖状または実質的に直鎖状であるが、分枝鎖(オリゴペプチドを含む)および介在性の環式基を含むリンカーも使用され得る。リンカーは、一般に、アルキル(C−C)結合および1つ以上の官能基(例えば、エステル結合、アミド結合、カーボネート結合、カルバメート結合、ジスルフィド結合、ペプチド結合またはエーテル結合)を含む。リンカーは、コハク酸エステルまたはポリエーテルにおけるように複数の官能基を含み得るか、またはオリゴペプチド(好ましくは2〜10量体、そしてより好ましくは2〜5量体)であり得る。ステロイドまたは脂質部分およびペプトイドセグメントもまた、直接結合によって連結され得る。
【0088】
特定の実施形態において、リンカーは、インビボの適切な条件下で切断に感受性である、1つ以上の結合(例えば、加水分解可能なエステル結合、カーボネート結合、カルバメート結合またはペプチド結合;十分に還元性の環境を有する細胞区画中で切断可能である、ジスルフィド結合;および内因性ペプチダーゼによって切断可能なペプチド結合)を含む。後者に関して、10個以下のペプチド結合を有するポリペプチドリンカー、またはさらなる実施形態において、5個以下のペプチド結合を有するポリペプチドリンカーが企図されるが、より長いリンカーも用いられ得る。
【0089】
図1に示される、このクラスの代表的な構造は、本明細書中で以下の命名を受ける:
【0090】
【化11】

ここで、「Ntd」は、N−テトラデシルグリシンであり;「Nhd」は、N−ヘキサデシルグリシンであり;「Ndd」は、N−ドデシルグリシンであり;「Nol」は、N−オレイルグリシンである。
【0091】
前述の構造に示されるペプトイドモノマーは、以下である:
【0092】
【化12】

1つの局面において、本発明は、少なくとも1つのリピトイドおよび1つのコレステロイドの混合物で構成される、生物学的因子送達ビヒクルを提供する。送達ビヒクルは、多様なポリヌクレオチド(例えば、プラスミドDNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびsiRNA)の細胞への送達に適しており、ここで、送達ビヒクルは、本発明に従って組成物中でポリヌクレオチド(単数または複数)と組み合わされる。
【0093】
本発明に従う組成物は、哺乳動物細胞へのsiRNAの有効な送達、標的遺伝子mRNAの有効なノックアウトを生じる。本発明に従う組成物および送達ビヒクルは、インビトロで(例えば、創薬、開発および活性試験を含む研究に関連して)、または哺乳動物(例えば、ヒト)被験体を含む動物における治療用途(例えば、疾患を処置するための薬物成分の薬物として)のためにインビボで、使用され得る。このようなインビボ用途のために、本発明に従う薬学的に許容可能なビヒクルが使用される。
【0094】
(脂質結合体化ポリアミド化合物の合成)
本発明の組成物における使用に適した脂質結合体化ポリアミド化合物は、固相法および溶液相法によって合成され得る。本発明はまた、脂質結合体化ポリアミド化合物を合成する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:
a)(1)脂質反応物と(2)オリゴマー反応物を接触させる工程であって、ここで、該オリゴマー反応物は、以下の一般式:
(V)Ta−[(NR−W−CO)n]m−Tc
を有し、
式中、nは1〜約48から選択される整数であり、そしてmは約2〜約48の整数であり、
式中、TおよびTは各々、末端基および前記脂質反応物とさらに反応し得る反応性部分から独立して選択され、
式中、前記オリゴマー反応物中の各単量体単位「−(NR−W−CO)−」についてのRは、水素原子;ヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシル基;スルホニル基;−SH;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に1〜8個の炭素原子を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖の脂肪族基であって、ここで、該脂肪族基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、脂肪族基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリール基;必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格構造中に3〜12個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアリールアルキル基であって、ここで、該アリールアルキルのアルキル基は、必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、アリールアルキル基;ならびに前記脂質反応物とさらに反応し得る反応性部分、からなる群より選択され、
式中、R、RまたはRが、骨格構造中に5個未満の炭素原子を有するアリール基またはアリールアルキル基である場合、該骨格構造は、1つ以上の酸素原子および/または窒素原子をさらに含み、
ここで、Rは、少なくとも1つの単量体単位について水素原子ではなく、
式中、各単量体単位についてのWは、炭素を含みかつ必要に応じて窒素、酸素、硫黄およびリンを含む骨格中に1〜約50個の原子を有し、そして必要に応じて1つ以上の二重結合または三重結合を有する、置換されていてもよい、分岐鎖または直鎖2価部分から選択され、ここで、該任意のWの置換は、前記脂質反応物とさらに反応し得る反応性部分であり得、
式中、単一の単量体単位についての少なくとも1つのT、T、Wまたは単一の単量体単位についてのRは、前記脂質反応物とさらに反応し得る反応性部分を含む、工程;次いで、
b)前記脂質反応物を前記オリゴマー反応物と反応させて、該脂質反応物を該オリゴマー反応物に結合体化させる工程。
【0095】
本明細書中で使用される用語「脂質反応物」とは、化学反応(例えば、求核置換、縮合など)に関与し得る脂質部分を有する反応種をいう。官能基(例えば、−NH、−COOH、−SH、−OH、−SOClおよび−CHO)を有する脂質反応物は、本発明の脂質結合体化化合物を合成するのに特に有用である。本発明の実施における使用に適した脂質反応物としては、オリゴマーの反応物またはリンカーと反応し得るか、またはオリゴマーの反応物またはリンカーと反応するように改変され得る、本明細書中に記載の脂質部分のいずれか1つを有する脂質反応物が挙げられる。代表的には、脂質反応物は、1級アミン、2級アミンまたは3級アミンである。本明細書における使用に適した具体的な脂質反応物は、ホスファチジルエタノールアミンである。
【0096】
本明細書中で使用される場合、用語「オリゴマー反応物」とは、化学反応(例えば、求核置換、縮合など)に関与し得るオリゴマーアミドをいう。オリゴマー反応物は代表的に、アミンのような、求核試薬による求核置換に感受性の脱離基でアシル化される。本発明の実施における使用に適したオリゴマー反応物は、本明細書において式(I)(すなわち、−[(NR−W−CO)−)に記載されるすべてのオリゴマーアミド置換基を含む。
【0097】
本明細書中で使用される場合、用語「反応性部分」とは、脂質反応物との反応に関与し得る部分をいう。代表的な反応性部分としては、例えば、−NH、−OH、−H、−SH、−COOH、アシル(例えば、アセチル)、ベンゾイル、スルホニル(例えば、ダンシル)、アミド、ヒドラジン(代表的に、Tc基)およびそれらの誘導体(アルキル置換誘導体を含む)などが挙げられる。代表的には、反応性部分は、アミンのような、求核試薬による求核置換に感受性の脱離基によって置換されるアシル部分である。
【0098】
例示的な末端基は、生物活性剤、標的化剤(例えば、細胞レセプターリガンド、抗体、など)、マーカー剤、例えば内因性のタンパク質分解酵素に対する分解部位として機能するアミノ酸残基、などである部分を含む。これらの末端基は代表的に、脂質反応物とさらに反応性ではない。
【0099】
オリゴマー反応物および脂質反応物は、リンカー部分(必要に応じて反応性部分から誘導され得る)を介して、必要に応じて互いに結合され得る。あるいは、リンカー部分(これは、オリゴマー反応物および脂質反応物の両方と反応し得る分子から誘導される)は、必要に応じて、脂質反応物とオリゴマー反応物との間の反応の前に、脂質反応物またはオリゴマー反応物のいずれかに結合体化され得る。従って、脂質反応物は、直接的に、またはリンカー部分を介して間接的にのいずれかで、オリゴマー反応物に結合体化され得る。
【0100】
本明細書中で使用される用語「反応すること」とは、直接的に、またはリンカー部分を介して間接的にのいずれかで、脂質反応物とオリゴマー反応物との間の化学結合の形成を生じる、1つ以上の化学反応をいう。適切な反応としては、例えば、縮合(例えば、アシル化など)および求核置換が挙げられる。
【0101】
一般式(IV)を有するオリゴマー反応物は、例えば、Zuckermannら、PCT WO94/06451(1994年3月31日公開)(本明細書中に参考として援用される)によって記載される、固相法による一連の求核置換反応によって調製され得る。この方法は、目的のオリゴマー反応物の迅速な合成を可能にするために、自動ペプチド合成計測器を利用して実施され得る。これらの機器は、例えば、Applied Biosystemsから市販されている。
【0102】
具体的には、オリゴマー反応物中へのモノマーアセンブリは、増幅する鎖に対する「サブモノマー」単位の経時的な付加によって達成される。モノマーアセンブリの1つの方法において、モノマー付加の各サイクルは、以下の2つの工程からなる:
(1)脱離基(すなわち、アミンのような、求核試薬による求核置換に対して感受性の基)およびカルボニル基(例えば、カルボキシル基)を有するアシル化剤で固体支持体に結合された2級アミンのアシル化(すなわち、「アシル化工程」);続いて
(2)側鎖を導入するのに十分な量のサブモノマー(1級アミノ基、2級アミノ基または3級アミノ基を有する)による脱離基の求核置換(すなわち、「求核置換工程」)。
【0103】
例示的なアシル化剤は、ハロ酢酸、ハロメチル安息香酸などを含む。脱離基の置換の効率は、使用されるアシル化剤の型によって調節される。例えば、ハロ酢酸が使用される場合、ヨウ素は、塩素と比較して、脱離基の置換においてより効率的であることが観察された。適切なサブモノマーとしては、アルキルアミン、アルケニルアミン、芳香族アミン、アルコキシアミン、セミカルバジド、アシルヒドロジド(acyl hydrozide)およびそれらの誘導体などが挙げられる。
【0104】
サブモノマーアプローチを使用するオリゴマー合成は、カルボキシからアミノ方向に生じる。オリゴマーは、所望の長さまで合成され、次いで、例えば、ブロモアセトアミド基で終結される。本発明のオリゴマー反応物を構築するために固相サブモノマーアセンブリを使用することの1つの利点は、反応性側鎖官能性のみを保護する必要があるので、N−α−保護モノマーの必要性が排除されることである。
【0105】
代表的には、オリゴマーの反応物は、一連の繰り返し2量体、3量体または4量体単位として合成される。例示的な3量体ベースのカチオン性オリゴマーは、カルボキシ末端(T)方向にアミノ末端(T)中に以下のモノマー配列を有する:
(1)正に荷電したモノマー
(2)中性モノマー、および
(3)中性モノマー。
【0106】
本明細書中で使用される用語「中性モノマー」および「正に荷電したモノマー」とは、単量体単位の正味電荷をいう。上記のように、本発明に従う他の例において、他の位置異性体モチーフが使用され得る(例えば、中性−陽性−中性;または中性−中性−陽性)。
【0107】
さらに、オリゴマー反応物と脂質反応物とのさらなる反応は、アシル化および/または求核置換によって生じ得る。例えば、ハロアシル化されるオリゴマー反応物(例えば、Tがブロモアセチル基である場合)は、1級、2級または3級アミンである脂質反応物と反応させ得る。従って、臭素の求核置換によって結合が生じて、脂質結合体化ポリアミド化合物が形成される。
【0108】
より具体的な詳細は、本発明の特定の実施形態に従って、リピトイドおよびコレステロイドを含む脂質カチオン性ペプトイド結合体のための以下の固相サブモノマー合成プロトコルに提供される:
(一般的実験)試薬用溶媒は、さらなる精製を行わずに用いられる。ブロモ酢酸はAldrichより入手され得(99%等級)、そしてDICはCheminplex Internationalより入手され得る。反応および洗浄はすべて、特に断りのない限り35℃で行なわれる。樹脂の洗浄とは、樹脂に洗浄溶媒(通常、DMFまたはDMSO)を添加し、均一なスラリーが得られるように樹脂を撹拌し(代表的には、約20秒間)、続いて樹脂から溶媒を完全に排液させることをいう。溶媒は、樹脂が乾燥しているように見えるまで(代表的には、約10秒)、反応槽のフリット底を通して減圧濾過を行うことによって、最も良く除去される。樹脂スラリーは、フリット容器の底を通してアルゴンをバブリングさせることによって撹拌する。試薬を溶解するために用いられる溶媒は、ハウスバキューム下で5分間の超音波処理によって、使用前に脱気されるべきである。洗浄溶媒については、調整可能な容量(1〜5mL)で利用可能なDMF、DMSOおよび塩化メチレンを含むディスペンサーを所有していると非常に便利である。
【0109】
合成が停止され、樹脂がある期間(一晩)保存される場合、樹脂は、保存の前にジクロロメタンで十分にリンスされことが推奨される。保存される樹脂は、高真空下でさらに乾燥され得る。合成を二量体の段階で止めないことが望ましい。なぜなら、二量体は、長期にわたる保存の際に環化してジケトピペラジンを形成し得るからである。
【0110】
(最初の樹脂膨潤およびFmoc脱保護)フリット反応容器を100mgのFmoc−Rinkアミド樹脂で満たす(0.50mmol/g樹脂)。この樹脂に2mLのDMFを添加し、この溶液を5分間攪拌して樹脂を膨潤させる。必要であれば、ガラス棒を用いて樹脂の塊を粉砕し得る。次いで、DMFを排液させる。次いで、2mLのDMF中の20%ピペリジンを樹脂に添加することによって、Fmoc基を除去する。これを1分間撹拌し、次いで、排液させる。さらに2mLのDMF中の20%ピペリジンを樹脂に添加し、20分間撹拌し、次いで、排液させる。次いで、樹脂をDMF(5×2mL)で洗浄する。
【0111】
(サブモノマー合成サイクル)ブロックされていないアミンを、樹脂に850μLのDMF中の1.2M ブロモ酢酸を添加し、続いて175μLの純粋なN、N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を添加することによって、アシル化する。この溶液を、35℃で20分間撹拌し、次いで、排液させる。次いで、樹脂を、DMF(3×2mL)およびDMSO(1×2mL)で洗浄する。
【0112】
次いで、アシル化工程(工程1)の後に、一級アミンを用いる求核置換(工程2)が続く。洗浄した樹脂に、0.85mLのDMSO中のアミンの2M溶液を添加する。この溶液を35℃で30分間攪拌し、次いで、排液させる。次いで、樹脂を、DMSO(3×2mL)およびDMF(1×2mL)で洗浄する。これにより、1つの反応サイクルが完了する。
【0113】
アシル化/置換サイクルは、所望のオリゴマーが得られるまで繰り返される。サブモノマー合成反応スキームを、以下に示す:
【0114】
【化13】

(切断(50μmolの樹脂について))合成反応および樹脂洗浄の後、樹脂をジクロロメタン(2×2mL)で洗浄し、減圧下で2時間乾燥させる。トリフルオロ酢酸の溶液(95%、水溶液)を調製する。乾燥した樹脂を、テフロン(登録商標)ミクロ攪拌棒を含むガラスシンチレーションバイアル中に入れ、約5mLの95%TFA水溶液を添加する。シンチレーションバイアルを、ヒュームフード中の攪拌プレート上に置く。1枚の攪拌プレートは、一度に4つまたは5つのバイアルを収容することができる。この溶液を20分間撹拌する。切断混合物は、20μmポリエチレンフリットを取り付けた8mLの固相抽出(SPE)カラムを通して、50mLのポリプロピレン円錐遠心分離管中に、各サンプルについて濾過する。切断時間は、どの保護基が特定のライブラリーに存在するかによって、延長される必要があり得る。次いで、樹脂を1mLの95%TFAで洗浄し、その濾液を合わせる。次いで、この濾液を、遠心分離管中で等容量の水で希釈する。
【0115】
次いで、この溶液を凍結し、そして凍結乾燥して乾燥させる。バイアルのキャップの小さな穴を刺すことによって、ポリプロピレンチューブから直接の凍結乾燥が行われ得る。次いで、乾燥した生成物を10mLの氷酢酸中に取り込み、再び凍結乾燥して乾燥させる。次いで、この2回乾燥した生成物を3mLのアセトニトリル/水(1:1)中に取り込み、風袋を計った5mLクライオバイアル(好ましくは、シリコーンOリング付き)に移し、次いで、凍結乾燥して乾燥させて、一般に白色のふわふわした粉末を生成する。次いで、質量回収率(mass recovery)を算出し得、この生成物を冷蔵のためにクライオバイアル中に残したままでよい。収率を算出する目的のために、生成物がトリフルオロアセテート塩であると仮定し得る。最後の凍結乾燥前に、HPLCサンプルおよび質量分析サンプルを調製するべきである。
【0116】
材料が生物学的アッセイで試験するために使用される予定である場合、DMSOを添加して、濃縮ストック溶液を作製する。化合物当たり100μM以上の濃度の溶液が好ましい。この100×DMSOストックは、緩衝液中に1:100に希釈され得、1%DMSOおよび化合物当たり1μMの濃度(代表的なスクリーニング濃度)のサンプル分子を含むアッセイ溶液が得られる。DMSOは、このための優れた選択である。なぜなら、DMSOはペプトイドを極めて良く溶解し、かつ、希釈された場合(濃度≦1%)にほとんどの生物学的アッセイに適合性であるからである。
【0117】
(オリゴマー特徴づけ)個々のペプトイドオリゴマーを、C−18カラム(Vydac、5μm、300Å、4.5×250mm)上の逆相HPLCによって分析する。40分で0〜80%のBの直線濃度勾配を、1mL/分の流速で用いる(溶媒A=水中の0.1%TFA、溶媒B=アセトニトリル中の0.1%TFA)。主要なピークを収集し、エレクトロスプレーMS分析に供して、分子量を決定する。
【0118】
(リピトイド合成(50μmolスケール))リピトイド1および2(L1およびL2)は、最終(N末端)残基がホスファチジルエタノールアミン(1級アミン)である、標準ペプトイドである。L1およびL2は、N末端の脂質部分としてジミリスチルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)を用いる。この基を組み込むために、N末端を、標準サブモノマー条件(上記)を用いて、ブロモアセチル化し、洗浄する。次いで、樹脂を15%メタノール/クロロベンゼン(2×2mL)で洗浄する。
【0119】
次いで、DMPEの0.2M溶液を以下のように調製する。DMPE(Genzyme)を15%メタノール/クロロベンゼン中に溶解して0.2Mの濃度にする。この化合物は双性イオンの形態であるので、アミン遊離塩基を得るために、この化合物を中和しなければならない。これは、迅速に攪拌しながら0.92当量の50%KOH水溶液を添加することによって達成される。塩基付加により、少量の水が分離相として残り得るので、サンプルを遠心分離して(卓上遠心機、最大rpmで1分間)、いかなる水相をも除去すべきである。この段階で、DMPE溶液の純度を、TLC(TLC溶媒:80/20/0.5のCHCl/CHOH/NHOH、ニンヒドリンで染色)によってチェックするべきである。生成物は約0.6のRを有するべきである。
【0120】
次いで、DMPE(2mL)溶液を樹脂に添加する。この溶液の強力な泡立ちにより、反応物は非常に穏やかに混合される(通常、断続的なアルゴンバブリングによるかまたは回転振盪によって)。この反応物を、35℃で一晩インキュベートする。次いで、この反応混合物を排液させ、15%メタノール/クロロベンゼン(6×3mL)、DCE(2×3mL)およびDCM(1×3mL)で洗浄する。切断を、標準ペプトイド条件下で行う(上記参照)。リピトイドの親油性の増加に起因して、HPLC分析はC4カラム上で行うべきである。
【0121】
リピトイド3および4(L3およびL4)は、最後の2つのN末端残基が疎水性アミンで作製される標準ペプトイドである。これらのアミンを、1Mの濃度で15%メタノール/クロロベンゼン中に溶解する。置換反応を、1mLの溶液を用いて50℃で2時間行い、続いて15%メタノール/クロロベンゼン(3×2mL)およびDMF(3×2mL)で洗浄する。
【0122】
(コレステロイド合成(50μmolスケール))β‐アラニンリンカーをまず所望のペプトイド(C1について(NaeNmpeNmpe)およびC3について(NaeNiaNia))のN末端に付加し、続いてコレステロールクロロホルメートに結合させる2段階手順によって、コレステロール部分を付加する。Fmoc−β−アラニン(NovaBiochem)を、2.0mLのDMF中のFmoc−β−アラニン(0.4M)およびHOBt(0.4M)の溶液の添加、続いて1.1当量の純粋なDICの添加によって、N末端に連結する。反応混合物を1時間撹拌し、その後、この反応混合物を排液させ、樹脂をDMF(2×3mL)で洗浄する。次いで、β−アラニン連結を繰り返し、その後に樹脂をDMF(3×3mL)およびDCE(1×3mL)で洗浄する。Fmoc除去の後、上記のように、次いで2.0mLのDCE中のコレステロールクロロホルメート(Aldrich)の0.4M溶液を添加し、続いて1当量の純粋なジイソプロピルエチルアミン(DIEA)の添加によって、コレステロール部分を付加する。反応混合物を、35℃で穏やかに一晩混合する。次いで、樹脂をDCE(5×3mL)およびDCM(2×3mL)で洗浄する。
【0123】
形成されるカルバメートはわずかに酸不安定であるので、化合物の切断および取り扱いに注意するべきである。切断は、TFA/DCE 1:1(5mL)の10分間の添加によって行なわれる。濾液を収集し、そして樹脂を、さらなる2mLの切断カクテルで洗浄する。次いで、合わせた濾液を減圧下で急速に乾燥させ、そして油状物をアセトニトリル/水(1:1)中に再懸濁する。これを直ちに凍結し(−80℃)、凍結乾燥する。次いで、サンプルをもう一度、アセトニトリル/水(1:1)から凍結乾燥させるべきである。
【0124】
(リピトイドおよびコレステロイド精製)リピトイドおよびコレステロイドを、使用前に逆相HPLCで精製する。C4カラムが用いられ得る。1つの例において、化合物を、少量の25%アセトニトリル/水の中に溶解し、内径50×20mmのID DuraGel HS C4カラム(Peeke Scientific)上で精製する。40分で35〜85%のBの直線濃度勾配を、30mL/分の流速で用いる(溶媒A=水中の0.1%TFA、溶媒B=アセトニトリル中の0.1%TFA)。合わせた生成物画分を合わせ、凍結乾燥して白色粉末を得る。
【0125】
(脂質結合体化ポリアミド組成物の作製方法)
トランスフェクトする組成物を調製するために、脂質結合体化ポリアミド化合物ビヒクル(例えば、リピトイドまたはコレステロイドあるいは混合物)の水溶液を、実施例1に記載されるように、siRNAとともに処方する。これらの成分は、好ましくは、siRNA負電荷ごとに少なくとも1.5、そして好ましくは2〜4の正のビヒクル電荷が存在するような相対量で使用される。ビヒクルに対するsiRNAの正確な比率は、好ましくは、各細胞型について経験的に決定されるが、一般に、1.5〜2nmolビヒクル/μgアンチセンスオリゴヌクレオチドの範囲である。細胞は、実施例1に記載されるように、本発明に従う組成物でトランスフェクトされ得る。本発明に従う組成物の使用に関するさらなる詳細は、以下に提供される。
【0126】
(脂質結合体化ポリアミド組成物の使用)
別の局面において、細胞における標的遺伝子の発現を阻害する方法であって、この方法は、上記のような組成物を細胞に投与する工程を包含し、この組成物中のsiRNA二重鎖の1つの鎖は、標的遺伝子に由来するmRNA中に含まれるヌクレオチド配列を有する方法が提供される。細胞は、本明細書で定義されるような「被験体」に包含され得る。
【0127】
脂質結合体化ポリアミド化合物(単数または複数)を含む本発明の組成物は、有効量のポリヌクレオチド(例えば、siRNA)を細胞に送達し得る。本明細書中で使用される場合、用語「有効量」とは、例えば、シグナル伝達、転写、翻訳、リンパ球活性化(例えば、抗体産生などを含む)のような、生物学的応答を検出可能に誘導するのに十分であるか、または生物学的応答に関与するのに十分なポリヌクレオチドの量をいう。
【0128】
ポリ核酸(例えば、siRNA)に対する脂質結合体化ポリアミド化合物の相対量は、代表的には、組成物中のポリヌクレオチドに対する脂質結合体化ポリアミド化合物の+/−電荷比が、約1.5以上でありかつ約10未満であるように選択される。+/−電荷比は、より代表的には約8未満であり、さらにより代表的には約4未満である。電荷比は、以下の式:
電荷比=(n×M)/(3.03×MsiRNA)、
に従って算出され、
式中、nは、脂質結合体化ポリアミド化合物のモル数であり、Mは、脂質結合体化ポリアミド1モル当たりの正味の電荷数であり、ここで、MsiRNAは、siRNAのマイクログラムである。
【0129】
本発明の組成物は、液体または固体形態であり得、かつ、必要に応じて薬学的に許容可能な賦形剤を含み得る。このような賦形剤は、充填剤、加工助剤、送達促進剤および重合調整剤などとして用いられ得る。適切な賦形剤としては、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石、単糖、二糖、多糖、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、デキストロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジノン、低融点ワックス、イオン交換樹脂などおよびこれらの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。薬学的に許容可能な賦形剤の徹底的な議論は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Pub.Co.,NJ 1991)において入手可能である。
【0130】
さらなる薬剤、例えば、マーカー剤、栄養素などが、本組成物中に含まれ得る。例えば、生物学的に活性な薬剤がポリヌクレオチドである場合、所望の核酸のエンドサイトーシスを促進するかまたは細胞表面の核酸の結合を補助する薬剤、あるいはその両方の薬剤が、本発明の組成物中に含まれ得る。
【0131】
本発明の液体組成物は、液体キャリアとの溶液、懸濁液またはエマルジョンの形態であり得る。適切な液体キャリアとしては、例えば、水、生理食塩水、薬学的に許容可能な有機溶媒、薬学的に許容可能な油または脂肪、それらの混合物などが挙げられる。液体キャリアは、可溶化剤、乳化剤、栄養素、緩衝液、防腐剤、懸濁剤、増粘剤、粘性調節剤、安定剤などのような、他の適切な薬学的に許容可能な添加物を含み得る。適切な有機溶媒としては、例えば、一価アルコール(例えば、エタノール)および多価アルコール(例えば、グリコール)が挙げられる。適切な油としては、例えば、大豆油、ココナッツ油、オリーブ油、ベニバナ油、綿実油などが挙げられる。非経口投与について、キャリアはまた、オレイン酸エチル、イソプロピルミリステートなどのような油性エステルであり得る。
【0132】
本発明の実施における使用に適した細胞としては、例えば、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な哺乳動物細胞株、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞細胞(COS)、ヒト肝臓癌細胞(例えば、Hep G2)、ヒト胚性腎臓細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、マウスセルトリ細胞、イヌ腎臓細胞、バッファローラット肝細胞、ヒト肺細胞、ヒト肝細胞、マウス乳腺癌細胞、他の哺乳動物(ヒトを含む)細胞(例えば、幹細胞、特に造血細胞、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞、腫瘍細胞など)などが挙げられる。
【0133】
本発明におけるサンプルとしての使用に適した組織としては、例えば、筋肉、皮膚、脳、肺、肝臓、脾臓、血液、骨髄、胸腺、心臓、リンパ、硬骨、軟骨、膵臓、腎臓、胆嚢、胃、腸、精巣、卵巣、子宮、直腸、神経系、目、腺、結合組織などのような、哺乳動物に由来する組織が挙げられる。
【0134】
サンプルへの投与様式としては、例えば、被験体に由来するサンプルへのエキソビボ投与およびサンプルへのインビトロ投与が挙げられる。これらの投与様式を実行する方法は、当業者に周知である。例えば、被験体への形質転換細胞のエキソビボ送達および再移植は、例えば、国際公開番号WO93/14778(1993年8月5日公開)に記載されるように達成され得る。
【0135】
本明細書中で使用される場合、用語「被験体」とは、細胞、細胞株(哺乳動物細胞および細胞株を含む)、無脊椎動物および鳥類および哺乳動物を含む脊椎動物(例えば、げっ歯類およびヒトなど)をいう。被験体への直接投与は、代表的には、注射(皮下に、腹腔内に、静脈内にまたは筋肉内にのいずれか)によって達成され得るか、あるいは組織の間隙に送達され得る。組成物はまた、腫瘍または病変へも投与され得る。他の投与様式としては、経口および経肺投与、坐剤および経皮適用、針および遺伝子銃またはハイポスプレーが挙げられる。
【0136】
細胞へのsiRNA(または他のポリヌクレオチド)の送達に加えて、本発明の脂質結合体化ポリアミド化合物はまた、例えば、生物活性についてのペプチド様化合物のスクリーニング、オリゴマーの部分が標的リガンドに結合する能力を有するようにするためのバイオセンサー中への取り込みなどの用途に用いられ得る。薬物スクリーニング用途について、例えば、種々のR基を有する脂質結合体化ポリアミド化合物のライブラリーが合成され得、続いて、PCT公開WO91/19735(1991年12月26日公開)(本明細書中に参考として援用される)に記載される改変ペプチドライブラリーを合成およびスクリーニングする方法に従って、生物活性についてスクリーニングされ得る。
【実施例】
【0137】
以下の実施例は、本発明を例示はするが、いかなる様式においても限定することを意図しない。
【0138】
(実施例1。標的mRNAのsiRNA阻害)
A.トランスフェクション混合物の調製
各トランスフェクション混合物(これらは、本発明に従う組成物の例である)については、リピトイドまたはリピトイド/コレステロイドの組み合わせ送達ビヒクルを、水中の0.5mMの作業濃度に調製し、混合して均一溶液を得た。siRNAは、siRNAとともに提供される緩衝液中に20μMの作業濃度に調製した。本実施例において、siRNAは、Akt1のmRNAに対して指向されるものであり、2つの2’O−メチルUU(RNA)ヌクレオチド3’−オーバーハングおよびホスホジエステル結合を全体にわたって含む配列CAUAGUGAGGUUGCAUCUGGUG(配列番号1)を有した(Integrated DNA Technologiesから入手可能)。siRNAを、マイクロチューブ中のOptiMEM(商標)(Gibco/BRL)中で1μMに希釈したか、または1mlのOptiMEM(商標)当たり約15μgのオリゴに希釈した。別個のマイクロチューブ中に、ビヒクル(代表的には、100pmolのsiRNA当たり約3.75nmolのビヒクルの量で)を、siRNAを希釈するのに用いられた容量と同じ容量のOptiMEM(商標)中に希釈した。本実施例において、用いられたsiRNAおよびビヒクルの開始濃度は、結果として、用いられたsiRNA 1μl当たり約1.5μlのビヒクルになる。ビヒクルに対するsiRNAの正確な比率は、各細胞型について経験的に決定されなければならないが、一般に、およそこの量であることに留意されたい。希釈したsiRNAを、希釈したビヒクルに直ちに添加し、上下にピペッティングすることによって混合した。この混合物を室温で10分間インキュベートさせた。
【0139】
B.トランスフェクション
細胞を、血清を含む増殖培地中で、トランスフェクションの1日前に組織培養皿上にプレートして、トランスフェクション時に60〜90%の密集度を得た。siRNA/ビヒクル混合物を、標準の増殖培地容量の半分におけるsiRNAの最終濃度が50〜100nMになるように、混合およびインキュベーションの直後に細胞に添加した。細胞は、37℃、5%COで4〜24時間、トランスフェクション混合物とともにインキュベートした。インキュベーションの後、トランスフェクション混合物を、血清を含む標準の増殖培地で2倍に希釈した。
【0140】
図2は、Akt1 mRNAに対して指向されるsiRNAが、上記のように調製したトランスフェクション組成物を用いてMDA435乳癌細胞へトランスフェクトされる場合の、Akt1発現の減少を示す。3つの異なるリピトイド(L2、L3)またはリピトイド/コレステロイドの組み合わせ(L1/C1)ビヒクルと、一連の市販の送達ビヒクル(X=リポフェクトアミン2000、Invitrogenから入手可能;Y=siPORTアミン、Ambionから入手可能;およびZ=siPORTリピド、Ambionから入手可能)との有効性(すべて、トランスフェクションの間の血清の存在下または非存在下で)を比較する。コントロールは、同じビヒクルおよび条件を用いて、100nM濃度で細胞にトランスフェクトしたeg5 siRNAであった。eg5 siRNAは、さらなる2つのTTヌクレオチド3’−オーバーハングおよびホスホジエステル結合を全体にわたって含む、2本鎖のすべてのRNAであって、DNA配列AGAAACTAAATTACAACTTGTTAに対応する配列を有した。全RNAは、Roche高純度RNA単離キット(Roche High Pure RNA Isolation Kit)を用いて、製造業者のプロトコルに従って抽出した。
【0141】
これらの結果(正規化;HPRTおよびGUSBの平均;Akt1についてのメッセージレベルをハウスキーピング遺伝子(HPRTおよびGUSB)のレベルの平均に対して正規化して、サンプル間の全RNAレベルにおける小さな変動を補正した)は、トランスフェクション薬剤および本発明の組成物が、血清の有無によって実質的に影響を受けず、標的遺伝子/mRNAの発現の減少に非常に有効であることを示す。
【0142】
(実施例2。siRNAトランスフェクション後のルシフェラーゼ活性の減少)
トランスフェクション混合物を、ホタルルシフェラーゼ(CGUACGCGGAAUACUUCGA(配列番号2);Elbashirら、Nature,411,494(2001)より)に対するsiRNAおよび本明細書中に記載されるような本発明に従ういくつかの異なる送達ビヒクル(L1、L2、L1/C1、L4 1L1/3C1)を用いて、実質的に実施例1に記載されるように調製した。ルシフェラーゼ活性を、パッケージの指示に従ってPromega二重ルシフェラーゼレポーターアッセイシステム(Promega Dual−Luciferase Reporter Assay System)を用いて定量した。図3に示すように、安定にルシフェラーゼを発現するMDA231におけるルシフェラーゼ活性は、ルシフェラーゼに対するsiRNAのトランスフェクションの後に、実質的に減少した。コントロールは、トランスフェクトされていない細胞株であった。この結果は、細胞へのsiRNAの有効な送達のための本発明に従う組成物の能力の指標をさらに提供する。
【0143】
(実施例3:siRNAでトランスフェクトされた細胞におけるAkt1メッセージのノックアウト)
表1は、本発明に従う組み合わせリピトイド/コレステロイド送達ビヒクルを含む組成物によって、かつ市販のトランスフェクション薬剤(Fugene6、Rocheから入手可能)を用いることによって、siRNAsでトランスフェクトされた細胞におけるAkt1メッセージのノックアウトの有効性を比較するために行った実験についてのデータを示す。HT1080細胞を、実施例1に記載のトランスフェクション混合物の調製およびトランスフェクション手順に実質的に従う組み合わせリピトイド/コレステロイド送達ビヒクル(1L1/3C3)を含む組成物を用いて、100nMの2つの異なるsiRNA(2つのTTヌクレオチド3’−オーバーハングおよびホスホジエステル結合を全体にわたって含むかまたは2つの2’O−メチルUU(RNA)ヌクレオチド3’−オーバーハングおよびホスホジエステル結合を全体にわたって含む、配列CAUAGUGAGGUUGCAUCUGGUG(配列番号1)を有するAkt1メッセンジャーRNAに対して指向されるsiRNA)でトランスフェクトした。mRNAレベルの約69〜83%の減少が、本発明に従う組成物について観察された。これらの結果は、本発明に従う組成物が、市販のFugene6薬剤よりもAkt1 mRNAのノックアウトにはるかに有効であることを示す。
表1
【0144】
【表1】

前述の発明は、理解を明瞭にする目的のためにかなり詳細に記載されているが、特定の変更および改変が、添付の特許請求の範囲の範囲内でなされ得ることは明白である。本発明のプロセスおよび組成物の両方を実施する多くの代替的方法が存在することに留意するべきである。従って、本実施形態は限定ではなく例示とみなされるべきであり、本発明は、本明細書中に記載される詳細に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲および等価物内で改変され得る。
【0145】
上に引用された特許、特許出願およびジャーナル論文の各々の内容は、あたかもその全体が完全に示されるように、参考として、かつすべての目的のために、本明細書中に援用される。
【0146】
【表2】

(配列表)

SEQUENCE LISTING

<110> NOVARTIS VACCINES AND DIAGNOSTICS, INC.

<120> Cell Transfecting Formulations of Small
Interfering RNA, Related Compositions and Methods of Making
and Use

<130> F111811CB7


<150> US 60/530,953
<151> 2003-12-19

<160> 2

<170> FastSEQ for Windows Version 4.0

<210> 1
<211> 22
<212> RNA
<213> Artificial Sequence

<220>
<223> synthetic


<400> 1
cauagugagg uugcaucugg ug 22

<210> 2
<211> 19
<212> RNA
<213> Artificial Sequence

<220>
<223> synthetic

<400> 2
cguacgcgga auacuucga 19

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−87142(P2012−87142A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−818(P2012−818)
【出願日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【分割の表示】特願2006−545575(P2006−545575)の分割
【原出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(591076811)ノバルティス バクシンズ アンド ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (265)
【Fターム(参考)】