説明

石抜き機

【課題】投入した土砂のうち、不要な石の周りから砂や粘土を充分にふるい落とし、不要な石などを分離して抜き去る。
【解決手段】外周方向に張り出る複数の破砕刃6を有する回転打撃体Bを、適宜間隔づつ離して複数個シャフト5に取付けてロータリー分離体3とする。ロータリー分離体3複数個を、各シャフト5が平行となるよう前後して配置する。複数のロータリー分離体3のいずれか一つ、或いは任意の複数のロータリー分離体3を、そのシャフト5の中心O1と、回転打撃体Bの中心O2とをズラし、ロータリー分離体3の回転に対し、回転打撃体Bを偏心回転させる。投入された土砂Gを回転打撃体Bの破砕刃6が砕いて、砂、粘土、小石などを回転打撃体B同士の隙間から下に落し、一定大きさ以上の石などを先へ運んで排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、砂や粘土を含む土砂から、不要な所望大きさ以上の石を取り除くための石抜き機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設排土、産業廃棄物としての汚泥などを使用し、それらから不要な石を取り除き、砂や粘土から脱水ケーキを形成し、その脱水ケーキを焼成することによって、路盤材などとして再資源化する試みがなされている。
このような再資源化の過程において、最初の土砂から不要、或いは焼成に適さない所望大きさ以上の石などを抜く作業は、非常な労力となっている。
【0003】
ゴミ、土砂などを、その嵩や重量によって或る物から或る物を分離する装置として、特開2003−340375号公報に記載されたような分別装置が開発されている。
同公報に記載された分別装置は、多数枚の回転刃をひとつの回転軸に取付けたものを、前後に平行に並べ、回転刃の回転によって投入されたゴミや土砂などを砕き、嵩などに応じて分離するものである。
【0004】
しかしながら、石と、砂や粘土などが混ざった土砂である場合、粘土質が石の周りにその粘着力によってまとわりついていて、容易に石から粘土や砂を分離できない場合もあった。
この石と粘土とを分離するには、投入された土砂に不規則な衝撃や、破砕するような力を与えるのが有効であるが、これまでの分別装置では、そのような工夫はなかった。
【0005】
また、同公報に記載された発明では、回転刃の複数の刃先が、回転方向に対して後方側に傾斜している。
つまりは、回転刃が回転して分別する物に当るとき、回転刃の回転側の縁部がその物を撫でるように当ることになる。
分別する物が木材などであれば、この切るような回転でもよいが、粘土がしっかりとこびりついた砂利などの場合であると、このような回転刃の当り方では、到底粘土をこそげ落すことは出来ない。
【特許文献1】特開2003−340375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようする課題は、投入した土砂の中で、石の周りから不要な砂や粘土を充分にふるい落とすことが出来なかったことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる石抜き機は、外周方向に張り出る複数の破砕刃を有する回転打撃体を、適宜間隔づつ離して複数個回転軸に取付けてロータリー分離体とする。回転打撃体の材質としては、様々なものが使用できるが、弾性を有する材料、特にゴムが好適である。
前記ロータリー分離体は、各シャフトが平行となるよう前後して複数を配置するとともに、ロータリー分離体の回転打撃体が、その前後のロータリー分離体の回転打撃体の間に位置している。
前記複数のロータリー分離体のいずれか一つ、或いは任意の複数のロータリー分離体は、シャフトの中心と、回転打撃体の中心とをズラしてある。従って、シャフトの回転に対し、回転打撃体の回転が偏心回転することになる。
偏心回転させるのは、全てのロータリー分離体でもよいが、前後して配されたロータリー分離体において、一つ置きに偏心回転させるなど、任意である。
回転打撃体の破砕刃は、中心部から外周方向に張り出るものでよいが、回転打撃体の破砕刃の回転方向側縁部が、回転打撃体のシャフトの回転中心を通る直線よりも、回転方向側に傾倒しているようにしてもよい。つまりは、回転打撃体が回転するとき、破砕刃の先端は、より早く破砕する物に接触するよう回転方向に向って傾斜させるものである。
また、破砕刃の厚みが、回転方向に渡って同じであるように形成してもよい。つまりは、破砕刃の厚みによって、破砕する物を砕くように打撃するものである。
以上のような石抜き機おいて、全てのロータリー分離体が回転して、投入された土砂を回転打撃体の破砕刃が砕いて、砂、粘土、小石などを回転打撃体同士の隙間から下に落し、所望大きさ以上の石を、回転選別体の回転によって先へ運んで排出するものである。
ロータリー分離体の回転速度は自在に変えることが出来、土砂の性状に応じて回転速度を調整できる。
石抜き機は、土砂の送り方向始端から、終端にかけて徐々に高さが高くなるよう傾斜しており、その傾斜角度が可変である。つまりは、傾斜させることによって、土砂の塊を砕く、或いはほぐす時間を長くするためであって、傾斜の角度を急にしたり、緩やかにすることで、土質に応じた調整が可能である。
【発明の効果】
【0008】
この発明は以上のような構成より成り、以下の効果を得ることが出来る。
〈a〉いずれかのロータリー分離体を、そのシャフトの中心軸と、回転打撃体の回転軸の中心をズラし、ロータリー分離体の回転に対し、回転打撃体を偏心回転させるため、回転打撃体の破砕刃の先端が、回転位置によって外周方向により出張ったり、引っ込んだりするため、破砕する物に対して一度引っ込んだ刃先が、出っ張って、より叩き落すような衝撃を与え、石から砂や泥や粘土を有効にこそげ落すことになる。
〈b〉回転打撃体の破砕刃の回転方向側縁部が、回転打撃体のシャフトの回転の中心を通る直線よりも、回転方向側に傾倒しているため、最初に破砕する物に当るのは刃先側であり、破砕する物を叩き潰すように、破砕刃が当ることになる。つまりは、破砕する塊を叩き、かき落とすような動きでより有効に破砕することができる。
〈c〉破砕刃の厚みが、回転方向に渡って同じであるため、刃先の太い厚みによって、破砕する塊を砕くように当り、より大きな衝撃で破砕できる。また、厚みが同じであるため、強度的にも優れている。
〈d〉ロータリー分離体の回転速度や、石抜き機の傾斜角度を調整することによって、土質に応じた適切な速度や時間で、土砂を砕き、砂や粘土と石とを分離することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明では、一部若しくは全部のロータリー分離体の回転打撃体を、その回転の軸となるシャフトに対して偏心して回転させるものである。
【実施例1】
【0010】
以下、図に示す実施例に基づき、この発明を詳細に説明する。
図5に示すのは、石抜き機Aを使用して土砂から石を分離して抜き去るためのプラントの側面図である。
ホッパ1の下にベルトコンベア2が配置され、ベルトコンベア2の下に、石抜き機Aが設置されている。
ベルトコンベア2の走行速度は、自在に変えることが出来る。
【0011】
石抜き機Aは、複数のロータリー分離体3を有している。ロータリー分離体3は、角筒形状の固定筒4の中に円柱状のシャフト5が配置され、溶接によって両者が固定されている。
複数のロータリー分離体3のうち、いずれか、実施例では、前後に隣合わせて配置するロータリー分離体3のうち、ひとつ置きを、回転の軸となるシャフト5に対し、偏心して回転させる。図1に示すように、角筒形状の固定筒4の一つの内側面に金属板11を固定し、シャフト5をその隣に通して溶接固定する。このようにすることで、シャフト5の回転軸となる中心O1に対して、固定筒4の中心O2、つまりは後の述べる回転打撃体Bの中心が偏心することになる。
【0012】
回転打撃体Bは、実施例ではゴムによって形成されており、円盤状であって、外周方向に張り出る複数個の破砕刃6を有している。回転打撃体5の中心には正方形の孔7を有している。回転打撃体Bは、その厚みが一定であって、つまりは回転方向に渡って同じ厚みtとなっている。(図2)
各破砕刃6は、図1において回転方向を矢印によって示しているが、その回転打撃体Bの中心O2を通る直線lよりも、回転方向側へ傾倒している。つまりは、刃先の回転方向
側縁部が、より中心に近い部分よりも先行して回転方向へ回転するようになっている。
【0013】
図1において、シャフト5を中心として回転すると、回転打撃体5は、金属板11の厚み分偏心して回転することになる。
つまり、シャフト5の中心O1から、最も外周方向に出っ張っている破砕刃6a先端までの長さがD1であり、最も中心O1に近く破砕刃6b先端までの長さがD2である。
シャフト5が回転すると、最も外周方向に出っ張っている破砕刃6aは、半径D1で回転し、最も中心O1に近い破砕刃6bは半径D2で回転する。
結局、回転打撃体5が偏心回転することで、破砕刃6が外周方向に出っ張り、幾らか引っ込んで回転するという動きをする。
【0014】
以上のような回転打撃体Bが、その孔7の中に固定筒4を通して、シャフト5に取付けられている。回転打撃体Bは複数個が一本のシャフト5に取付けられており、隣合う回転打撃体Bの間には、円柱形状で中心に四角い孔が形成されたスペーサー10が配されて、適宜間隔を空けて取付けられ、ロータリー分離体3が構成される。
【0015】
石抜き機Aでは、以上のようなロータリー分離体3が、それらシャフト5が平行に並べられ、回転方向に前後して隣合わせて配置されている。前後して並べられたロータリー分離体3の各回転打撃体Bは、回転方向に向って平行に配されるが、その破砕刃6が回転する位置が一部重なるように配置されている。つまりは、一つのロータリー分離体3の回転選別体B・Bの間に、それと前後するロータリー分離体3の回転打撃体Bが位置して回転するように配置されている。
【0016】
各シャフト5は、図3に示すようにシャフトの端部にギヤが取付けられ、その隣合うシャフト5・5のギヤにチェーン8が廻し掛けられて連結されている。一番端のシャフト5がモーター9によってシャフト5が回転すると、チェーン8によって全てのシャフト5がつながっているため、連動して、図における逆時計回りに回転する。
シャフト5の回転速度は、モーター9の回転速度を変えることで自在にその速度を変えることが出来る。
【0017】
石抜き機Aは、その土砂を送る方向の始端から終端に向ってその高さが徐々に高くなるように傾斜している。
図において、石抜き機Aの送り方向は、矢印によって示されてある。
土砂がロータリー分離体3の回転によって一挙に運ばれてしまうのではなく、重力によって土砂が送り方向とは反対方向に戻るように傾斜させているのであって、土砂が行き、戻りしている間にかかる時間で、より充分な塊Gの破砕を可能としている。
石抜き機Aは、その送り方向の終端側が、チェーンブロック12によって吊上げられており、その終端側の高さを自在に変えることが出来る。
石抜き機Aのこのような傾斜角度と、前記したベルトコンベア2の走行速度、ロータリー分離体3の回転速度を自在に変えることで、砕く土砂の性状に応じた、適切な破砕やほぐしが可能となる。
また、石抜き機Aの置かれたプラント13の端部には、ローラー14が左右に二個取付けられて、作業場での移動が可能となっている。
【0018】
以上のような構成を有するプラントの石抜き機Aによる石を分離する作用について説明する。
ホッパ1に投入された土砂は、ベルトコンベア2の上に載り、石抜き機Aの上に落される。
モーター9によって回転するロータリー分離体3の各回転打撃体Bは、その破砕刃6の刃先によって、石と砂や粘土の塊Gを打撃し、それらを破砕していく。既に述べたように、回転選別体5の破砕刃6は、その回転側縁部が回転方向に傾倒しており、刃先が塊Gを叩き、内側へかき込むように打撃して、より有効に塊Gを破砕する。
シャフト5に対して偏心して取付けられた回転打撃体Bは、外周方向に出っ張る破砕刃6aと引っ込む破砕刃6bが交互するため、引っ込んだ部分で呼び込んだ塊Gを、出っ張った部分の破砕刃6がより深く打撃して、塊Gを破砕する。(図4)
破砕波の刃先の厚みtも厚く、打撃するように塊Gに当り、より有効に破砕する。
【0019】
以上のような回転打撃体Bの動きによって塊Gは石の周りから砂や粘土分がこそぎ落され、各回転打撃体Bの間の隙間から下に落ちる。
所望以上の大きさの石などは、回転打撃体Bの隙間から落下せず、回転打撃体Bの回転によって先に送られ、排出される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】回転選別体の側面図
【図2】回転選別体の斜視図
【図3】ロータリー分離体の配置を示す側面図
【図4】回転選別体による選別状態の側面図
【図5】プラントの全体図
【図6】石抜き機の平面図
【符号の説明】
【0021】
A:石抜き機
B:回転選別体
G:塊
1:ホッパ
2:ベルトコンベア
3:ロータリー分離体
4:固定筒
5:シャフト
6:破砕刃
7:孔
8:チェーン
9:モーター
10:スペーサー
11:金属板
12:チェーンブロック
13:プラント
14:ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周方向に張り出る複数の破砕刃を有する回転打撃体を、
適宜間隔づつ離して複数個をシャフトに取付けてロータリー分離体とし、
前記ロータリー分離体複数個を、各シャフトが平行となるよう前後して配置するとともに、ロータリー分離体の回転打撃体が、その前後のロータリー分離体の回転打撃体の間に位置するようにし、
全てのロータリー分離体が回転して、投入された土砂を回転打撃体の破砕刃が砕いて、砂、粘土、小石などを回転打撃体同士の隙間から落下させ、
所望大きさ以上の石を、回転打撃体の回転によって先へ運んで排出する石抜き機において、
前記複数のロータリー分離体のいずれか一つ、或いは任意の複数のロータリー分離体を、
そのシャフトの中心と、回転打撃体の中心とをズラし、
ロータリー分離体の回転に対し、回転打撃体の回転を偏心回転させることを特徴とする石抜き機。
【請求項2】
回転打撃体の破砕刃の回転方向側縁部が、回転打撃体の回転軸を通る直線よりも、回転方向側に傾倒していることを特徴とする請求項1記載の石抜き機。
【請求項3】
破砕刃の厚みが、回転方向に渡って同じであることを特徴とする請求項1又は2記載の石抜き機。
【請求項4】
土砂の送り方向始端から、終端にかけて徐々に高さが高くなるよう傾斜しており、その傾斜角度が可変であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の石抜き機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−268985(P2009−268985A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122492(P2008−122492)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(508072556)大道建設株式会社 (1)
【Fターム(参考)】