説明

石材パネルの取り付け構造

【課題】石材パネルの取り付け構造において、地震時のように大きな外力が瞬間的に作用するような場合であっても、石材パネルの崩落を防止することができる石材パネルの取り付け構造を提供する。
【解決手段】複数の石材パネル107の各々の上面を上レール102Aで、下面を下レール102Bでそれぞれ支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外壁面上に複数の石材パネルを取り付けるための石材パネルの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の石材パネルの取り付け構造の一例として特開2002−54286号公報に記載されたものがある。
【0003】
図7は同公報に記載された石材パネルの取り付け構造の斜視図、図8は図7に記載された石材パネルの取り付け構造の縦断面図である。
【0004】
図7及び図8に示すように、建築物の外壁1には水平方向に延びる複数のレール2が上下方向において等間隔に取り付けられている。
【0005】
図8に示すように、各レール2は、アンカーボルト6を介して外壁1に固定される固定フランジ3と、固定フランジ3と平行に上下方向に延びる外側フランジ4と、水平方向に延び、固定フランジ3と外側フランジ4とを連結しているウェブ5と、から構成されている。
【0006】
石材パネル7は大理石や花崗岩からなる矩形状のパネルである。石材パネル7の上面及び下面には石材パネル7の全長にわたって溝8が形成されている。外側フランジ4の先端は溝8にスライド可能に挿入される。
【0007】
ウェブ5には複数の通気孔10が形成されており、この通気孔10により、外壁1と各石材パネル7との間の空間における通気性が確保されている。
【0008】
図8に示すように、最上位置にある石材パネル7Aには、前面側の上縁に延長部21が形成されており、この延長部21により外側フランジ4が隠れるようになっている。同様に、最下位置にある石材パネル7Bには、前面側の下縁に延長部22が形成されており、この延長部22により外側フランジ4が隠れるようになっている。
【0009】
各石材パネル7は以下のようにして取り付けられる。
【0010】
各石材パネル7には予め溝8が形成されている。
【0011】
まず、石材パネル7の上下方向の長さに対応して、外壁1に上下方向に等間隔にレール2を取り付ける。
【0012】
次いで、レール2の一方の端部から、外側フランジ4の先端を上方のレール2の下面の溝8及び下方のレールの上面の溝8に合わせて石材パネル7を上下一対のレール2の間に嵌め込む。
【0013】
その後、石材パネル7を所定の位置までスライドさせる。
【0014】
以下、同様にして、複数の石材パネル7を上下一対のレール2の間に嵌め込み、所定の位置までスライドさせる。
【0015】
上下一対のレール2の間に所定枚数の石材パネル7を嵌め込んだ後、同様にして、その直下(または直上)の上下一対のレール2の間に複数の石材パネル7を嵌め込む。この際、上下方向において各石材パネル7が整列するように各石材パネル7を配列する。
【特許文献1】特開2002−54286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
図7に示すように、従来の石材パネルの取り付け構造においては、各レール2の水平方向の全長にわたって複数の石材パネル7が支持されている。
【0017】
例えば、上下方向に配列された一列の石材パネル7に着目すると、図8に示すように、石材パネル7の水平方向における単位長さにおいて、N個の石材パネル7は(N+1)個のレール2により支持されている。例えば、3個の石材パネル7は4個のレール2により支持される。
【0018】
すなわち、各石材パネル7は(N+1)/N個のレール2により支持されることになるため(Nは石材パネル7の個数)、Nが大きくなると、各石材パネル7はほぼ1個のレール2により支持される状態に近くなる。
【0019】
各レール2は自重及び石材パネル7の総重量を考慮して強度が計算されているが、地震時のように、大きな外力が瞬間的に作用した場合には、各レール2に加わる力が各レール2の強度を上回ってしまうおそれがある。
【0020】
これは、上述のように、Nが大きくなると、各石材パネル7はほぼ1個のレール2により支持されることになるため、石材パネル7を支持するレール2の全体の強度が不足するためである。
【0021】
本発明はこのような従来の石材パネルの取り付け構造における問題点に鑑みてなされたものであり、石材パネルの取り付け構造において、地震時のように大きな外力が瞬間的に作用するような場合に備えて、石材パネルの耐震性を向上させることができる石材パネルの取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
以下に、「発明の実施の形態」において使用される参照符号を用いて、上述の課題を解決するための手段を説明する。これらの参照符号は、「特許請求の範囲」の記載と「発明の実施の形態」の記載との間の対応関係を明らかにするためにのみ付加されたものであり、「特許請求の範囲」に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いるべきものではない。
【0023】
上記の目的を達成するため、本発明は、建築物の外壁(101)面上に上下方向において相互に間隔を開けて配置されたレールと、前記レールの先端をスライド可能に挿入する溝(108)を上面及び下面に形成され、上下方向に配列された複数の石材パネル(107)と、からなる石材パネルの取り付け構造であって、前記レールは上レール(102A)と下レール(102B)との一対のレールからなり、前記上レール(102A)は前記複数の石材パネル(107)のうちの一の石材パネルの上面に形成された前記溝(108)にのみスライド可能に挿入され、前記下レール(102B)は前記一の石材パネルの下面に形成された前記溝(108)にのみスライド可能に挿入される。
【0024】
前記複数の石材パネルは水平方向にも配列される場合には、本発明に係る石材パネルの取り付け構造はスライド部材(113)をさらに備えることが好ましい。この場合、前記石材パネル(107)の左右側面には上下方向に延びる溝(109)がそれぞれ形成されており、前記スライド部材(113)は上下方向に配列された複数の前記石材パネル(107)にわたって前記左右側面の前記溝(109)に挿入される。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る石材パネルの取り付け構造によれば、各石材パネルは上下一対のレールにより支持される。従来の石材パネルの取り付け構造によれば、各石材パネルは(N+1)/N個のレールにより支持されていたため(Nは石材パネルの個数)、Nが大きくなると、各石材パネルはほぼ1個のレールにより支持される状態になっていた。これに対して、本発明に係る石材パネルの取り付け構造によれば、各石材パネルは常に上下一対のレール、すなわち、2個のレールにより支持されることになる。このため、地震時のように、大きな外力が瞬間的に作用する場合であっても、各レールに加わる力が各レールの強度を上回ることはなく、石材パネルの耐震性を向上させることが可能である。
【0026】
さらに、スライド部材を設けることにより、水平方向において左右に隣接する石材パネルの間に形成される隙間を隠すことができる。あるいは、スライド部材上において、その隙間にシール性能を有する充填材を埋め込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第一の実施形態)
図1は本発明の第一の実施形態に係る石材パネルの取り付け構造の斜視図、図2は図1に示した石材パネルの取り付け構造において上下方向に配列された石材パネルの縦断面図である。
【0028】
図1及び図2に示すように、建築物の外壁101には水平方向に延びる複数のレールが上下方向において等間隔に取り付けられている。
【0029】
複数のレールの各々は上レール102Aと下レール102Bとから構成されている。上レール102A及び下レール102Bはともに後述する石材パネル107の幅(図1の左右方向における長さ、あるいは、図2の紙面と垂直な方向における長さ)と同一の長さ、または、石材パネル107の幅よりもやや大きい長さを有している。
【0030】
上レール102AはL字型の板部材201とU字型の板部材202とからなる。
【0031】
L字型の板部材201は、アンカーボルト106を介して外壁101に固定される固定フランジ203と、固定フランジ203の一端から固定フランジ203と直角に延びる延長部204と、からなる。
【0032】
U字型の板部材202は、アンカーボルト106を介して外壁101に固定される固定フランジ205と、固定フランジ205の一端から固定フランジ205と直角に延びる延長部206と、延長部206の先端から固定フランジ205と同方向に、すなわち、下方に延びる先端部207と、からなる。
【0033】
板部材201の延長部204と板部材202の延長部206とは相互に溶接されており、これにより、板部材201と板部材202とが一体となって上レール102Aを形成している。
【0034】
下レール102Bも上レール102Aと同様の構造を有している。
【0035】
すなわち、下レール102BはL字型の板部材211とU字型の板部材212とからなる。
【0036】
L字型の板部材211は、アンカーボルト106を介して外壁101に固定される固定フランジ213と、固定フランジ213の一端から固定フランジ213と直角に延びる延長部214と、からなる。
【0037】
U字型の板部材212は、アンカーボルト106を介して外壁101に固定される固定フランジ215と、固定フランジ215の一端から固定フランジ215と直角に延びる延長部216と、延長部216の先端から固定フランジ215と同方向に、すなわち、上方に延びる先端部217と、からなる。
【0038】
板部材211の延長部214と板部材212の延長部216とは相互に溶接されており、これにより、板部材211と板部材212とが一体となって下レール102Bを形成している。
【0039】
石材パネル107は大理石や花崗岩からなる矩形状のパネルである。石材パネル107の上面及び下面には石材パネル107の全長(図2の紙面と直交する方向における全長、すなわち、図1の左右方向における全長)にわたって溝108が形成されている。
【0040】
上レール102Aを構成する板部材202の先端部207は石材パネル107の上面に形成された溝108にスライド可能に挿入され、下レール102Bを構成する板部材212の先端部217は石材パネル107の下面に形成された溝108にスライド可能に挿入される。
【0041】
板部材211の延長部214と板部材212の延長部216には等間隔にそれらを貫通する通気孔110が形成されている。
【0042】
図2に示すように、最上位置にある石材パネル107には、前面側の上縁に延長部121が形成されており、この延長部121により延長部204、206が隠れるようになっている。同様に、最下位置にある石材パネル(図示せず)には、前面側の下縁に延長部が形成されており、この延長部により延長部204、206が隠れるようになっている。
【0043】
本実施形態に係る石材パネルの取り付け構造における各石材パネル107は以下のようにして取り付けられる。
【0044】
まず、石材パネル107の上下方向の長さに対応して、外壁101に上下方向に複数組の上レール102A及び下レール102Bを取り付ける。
【0045】
次いで、上レール102A及び下レール102Bの一方の端部から、上レール102Aの先端部207を石材パネル107の上面の溝108に、下レール102Bの先端部217を石材パネル107の下面の溝108にそれぞれ合わせて石材パネル107を上レール102Aと下レール102Bとの間に嵌め込む。
【0046】
以下、同様にして、複数の石材パネル107の各々を上レール102Aと下レール102Bとの間に嵌め込む。
【0047】
これにより、本実施形態に係る石材パネルの取り付け構造が形成される。
【0048】
本実施形態に係る石材パネルの取り付け構造によれば、各石材パネル107は上レール102A及び下レール102Bにより支持される。
【0049】
従来の石材パネルの取り付け構造においては、各石材パネルは(N+1)/N個のレールにより支持されていたため(Nは石材パネルの個数)、Nが大きくなると、各石材パネルはほぼ1個のレールにより支持される状態になっていた。
【0050】
これに対して、本実施形態に係る石材パネルの取り付け構造によれば、各石材パネル107は常に上レール102A及び下レール102B、すなわち、2個のレールにより支持されることになる。このため、地震時のように、大きな外力が瞬間的に作用する場合であっても、各レール102A、102Bに加わる力が各レール102A、102Bの強度を上回ることはなく、各レール102A、102Bが外壁101から外れて石材パネル107とともに崩壊する危険性をなくすことが可能である。すなわち、石材パネル107の耐震性を向上させることができる。
【0051】
本実施形態に係る石材パネルの取り付け構造は上述の構造に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0052】
例えば、上レール102A及び下レール102Bの構造を変更することが可能である。以下に、第一変形例及び第二変形例として、上レール102A及び下レール102Bの構造を変更した変形例を説明する。
【0053】
(第一変形例)
図3は第一変形例に係る石材パネルの取り付け構造の縦断面図である。
【0054】
第一変形例においては、上レール102A及び下レール102B(最上位置にある石材パネル107に対応する上レール102A及び最下位置にある石材パネル107に対応する下レール102Bを除く)の構造が変更されている。
【0055】
すなわち、第一変形例においては、上下方向に隣接する2つの石材パネル107のうち、上方に位置する石材パネル107の下レール102Bにおける板部材211と、下方に位置する石材パネル107の上レール102Aにおける板部材201とが一体化された一つの板部材220として形成されている。
【0056】
板部材220は、固定フランジ205、215の端部を結合した形状であるU字型形状をなしており、上述の第一の実施形態における下レール102Bにおける板部材211と上レール102Aにおける板部材201との双方の機能を有している。
【0057】
第一変形例に係る石材パネルの取り付け構造によれば、上下方向において隣接する二つの石材パネル107の間の隙間を小さくすることができる。
【0058】
(第二変形例)
図4は第二変形例に係る石材パネルの取り付け構造の縦断面図である。
【0059】
第二変形例においては、上レール102A及び下レール102B(最上位置にある石材パネル107に対応する上レール102A及び最下位置にある石材パネル107に対応する下レール102Bを除く)の構造が変更されている。
【0060】
すなわち、第二変形例においては、上レール102Aは板部材202のみからなり、同様に、下レール102Bも板部材212のみからなっている。ただし、第二変形例における各板部材202、212の固定フランジ205、215は第一の実施形態における固定フランジ205、215よりも長く形成されている。このため、第二変形例における固定フランジ205、215は複数個のアンカーボルト106を介して外壁101に固定されている。
【0061】
第二変形例に係る石材パネルの取り付け構造によれば、板部材201、211を省略することができるため、二つの板部材201、211の固定フランジ203、213に対応する長さの分だけ、上下方向において隣接する二つの石材パネル107の間の隙間を小さくすることができる。
【0062】
(第二の実施形態)
図5は本発明の第二の実施形態に係る石材パネルの取り付け構造の斜視図、図6は図1に示した石材パネルの取り付け構造における一石材パネルの縦断面図である。
【0063】
図5に示すように、本実施形態における石材パネル107の左右側面には上下方向に延びる溝109が石材パネル107の全高にわたって形成されている。
【0064】
本実施形態に係る石材パネルの取り付け構造はスライド部材113をさらに備えている。
【0065】
石材パネル107の左右側面に溝109が形成されている点及びスライド部材113をさらに備える点を除いて、本実施形態に係る石材パネルの取り付け構造は第一の実施形態に係る石材パネルの取り付け構造と同一の構造を有している。
【0066】
スライド部材113は、ストリップ状の細長い板部材からなり、スライド部材113の厚さは石材パネル107の左右側面に形成されている溝109の幅よりも僅かに小さい。すなわち、スライド部材113は溝109にスライド可能に挿入できるようになっている。
【0067】
本実施形態に係る石材パネルの取り付け構造においては、上レール102A及び下レール102Bの長さは、スライド部材113が溝109に挿入される分だけ、第一の実施形態における上レール102A及び下レール102Bの長さと比較して、短く形成されている。
【0068】
図5及び図6に示すように、スライド部材113は、水平方向において左右に隣接した二つの石材パネル107の各溝109にスライド可能に挿入される。
【0069】
本実施形態に係る石材パネルの取り付け構造によれば、スライド部材113により、水平方向において左右に隣接する石材パネル107の間に形成される隙間を隠すことができる。
【0070】
さらに、スライド部材113上において、その隙間にシール性能を有する充填材を埋め込むことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る石材パネルの取り付け構造の斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る石材パネルの取り付け構造において上下方向に配列された石材パネルの縦断面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態の第一変形例に係る石材パネルの取り付け構造の縦断面図である。
【図4】本発明の第一の実施形態の第二変形例に係る石材パネルの取り付け構造の縦断面図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る石材パネルの取り付け構造の斜視図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る石材パネルの取り付け構造における一石材パネルの縦断面図である。
【図7】従来の石材パネルの取り付け構造の斜視図である。
【図8】図7に記載された従来の石材パネルの取り付け構造の縦断面図である。
【符号の説明】
【0072】
101 建築物の外壁
102A 上レール
102B 下レール
106 アンカーボルト
107 石材パネル
108、109 溝
110 通気孔
113 スライド部材
201、202 板部材
203、213 固定フランジ
204、214 延長部
205、215 固定フランジ
206、216 延長部
207、217 先端部
220 板部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の外壁面上に上下方向において相互に間隔を開けて配置されたレールと、
前記レールの先端をスライド可能に挿入する溝を上面及び下面に形成され、上下方向に配列された複数の石材パネルと、からなる石材パネルの取り付け構造であって、
前記レールは上レールと下レールとの一対のレールからなり、
前記上レールは前記複数の石材パネルのうちの一の石材パネルの上面に形成された前記溝にのみスライド可能に挿入され、前記下レールは前記一の石材パネルの下面に形成された前記溝にのみスライド可能に挿入されていることを特徴とする石材パネルの取り付け構造。
【請求項2】
前記複数の石材パネルは水平方向にも配列されており、
前記石材パネルの取り付け構造はスライド部材をさらに備え、
前記石材パネルの左右側面には上下方向に延びる溝がそれぞれ形成されており、
前記スライド部材は上下方向に配列された複数の前記石材パネルにわたって前記左右側面の前記溝に挿入されることも特徴とする請求項1に記載の石材パネルの取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−321407(P2007−321407A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151737(P2006−151737)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(598163695)株式会社キタック (2)
【Fターム(参考)】