説明

石油化学プロセス装置における水素の管理

石油化学プロセス装置と関連する水素含有ストリーム中の水素の管理に関し、ここでは、水素含有ストリーム中の水素濃度を高めるために、水素含有ストリームが、高速サイクルの圧力スイング吸着にかけられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油化学プロセス装置と関連する水素含有ストリーム中の水素の管理に関し、ここでは、水素含有ストリーム中の水素濃度を高めるために、水素含有ストリームが、高速サイクルの圧力スイング吸着にかけられる。
【背景技術】
【0002】
水素は、現代の多くの製油所および石油化学プロセス装置(製油所での水素化処理装置および石油化学プラントのための異性化装置を含む)の運転に不可欠である。水素は、様々なプロセス装置の中で重要でかつ貴重な必需品であるので、水素含有ストリームの少なくとも一部の他の成分を除去することにより、上記のプロセス装置と関連する水素含有ストリーム中の水素濃度を高めることができるならば、有益となりうる。
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,977,420号明細書
【特許文献2】米国特許第6,607,584号明細書
【特許文献3】米国特許第6,406,523号明細書
【特許文献4】米国特許第6,451,095号明細書
【特許文献5】米国特許第6,488,747号明細書
【特許文献6】米国特許第6,533,846号明細書
【特許文献7】米国特許第6,565,635号明細書
【非特許文献1】D.M.ルースブン(Ruthven)、S.ファルーク(Farouq)およびK.S.クナエベル(Knaebel)によって、表題「圧力スイング吸着(Pressure Swing Adsorption)」(VCH出版(Publishers)、1994年)
【非特許文献2】D.M.ルースブン(Ruthven)およびC.タエロン(Thaeron)の「平行流路吸着接触器の性能(Performance of a Parallel Passage Absorbent Contactor)、分離と精製技術(Separation and Purification Technology)12(1997年)43−60」
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
好適な一実施形態において、石油プロセス装置と関連する水素含有ストリーム中の水素濃度を高める方法を提供し、該方法は、複数の吸着床を含有し、かつ約30秒未満の全サイクル時間と、床長1フィート当り水約5インチよりも大きい各吸着床内の圧力降下とを有する高速サイクルの圧力スイング吸着装置に水素含有の水蒸気を供する工程を含む。
【0005】
別の好適な一実施形態において、高速サイクルの圧力スイング吸着の全サイクル時間は、約15秒未満である。
【0006】
更に別の好適な一実施形態において、全サイクル時間は、約10秒未満であり、各吸着床の圧力降下は、床長1フィート当り水約10インチよりも大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
精製したパラおよびオルトキシレンの異性体は、多種の誘導体のための中間生成物として、大規模に使用され、それらのうち一部には、主要石油化学製品が含まれる。精製メタキシレンに対する需要は、100〜1000ktaであると思われており、該容量レベルが、商品と特殊化学製品とを分けている。パラ−キシレンとオルト−キシレンに対する2005年の工業用需要は、およそ32,000ktaである(およそ7:1に分けられる)。パラ−キシレンの需要は、非常に多いので、産業界は、他の芳香族分子からパラ−キシレンを製造する先進の方法を有する。
【0008】
パラ−キシレンの製造用の一般的な原料を分離および転化する経路として、平衡過程およびパラ−選択経路が挙げられる。現在の工業用途を享受している主要経路として、キシレン異性化、またはC芳香族炭化水素の混合物からキシレンの異性化、キシレンとベンゼンが同割合の混合物を生成するためのトルエンの不均化反応、Cアルキル芳香族炭化水素とトルエンおよび/またはベンゼンとのトランスアルキル化反応、並びにパラ−キシレンとベンゼンへの選択的トルエン不均化反応が挙げられる。
【0009】
キシレン異性化プロセスの3タイプは、エチルベンゼンが転化される方法が異なり、それらは商品化されており、ベンゼンとエタンへのエチルベンゼンの水添脱エチル反応、追加のキシレンを生成するためのエチルベンゼンの水添異性化、またはエチルベンゼンのトランスアルキル化反応が挙げられ、反応後、形成された重量の大きいもの(heavies)を蒸留除去する。
【0010】
上記の全ての化学反応において、キシレン異性化ループを用いる。CおよびC原料が、Cスプリッター中のC芳香族炭化水素を除去することにより、最初に分留され、C中間留分を生じる。場合により、オルト−キシレンを所望するならば、オルト塔を用いる。パラ−キシレンが、収着プロセスにおいて、C中間留分から回収される。収着プロセスは、原料中の95%を超えるp−キシレンを回収するので、ラフィネートは、約1%の低いp−キシレンの含有量を有する。収着からのp−キシレン欠乏のラフィネート(p−xylene depleted raffinate)は、キシレン異性化反応器内で処理され、該反応器内で、エチルベンゼンは、水添脱アルキル化され、キシレンは、平衡まで異性化され、共沸パラフィンは、軽量ガスに水素化分解される。次に、その異性体は、連続塔内で蒸留される。安定剤は、軽量ガスを除去する。一方、ベンゼンとトルエンは、スプリッター内のオーバーヘッドとして除去され、続いて蒸留されて、ベンゼンとトルエンを生じる。次に、C異性体は、新鮮な原料と化合して、更なる処理のためにCスプリッターに戻して再循環される。パラ−キシレンの平衡濃度は、約24%であるので、パラ−キシレンだけが回収されるならば、Cストリームは、およそ3回再循環される。
【0011】
高度な再循環のために、キシレン異性化反応器内の望ましくない反応を回避することは、不可欠である。望ましくない反応として、C芳香族炭化水素を生じるキシレンのメチルおよびエチル芳香族トランスアルキル化反応、シクロヘキサンとジメチルシクロヘキサンを生じる芳香族炭化水素(ベンゼンとキシレンの両方を含む)の飽和、軽量ガスを生じる芳香族炭化水素の水素化分解が挙げられる。4つの全ての反応は、パラ−キシレンの最終収率を低下させ、キシレン損失(反応であるが)と言われ、それらは、結果として、芳香族炭化水素の最終収率の損失となるので、有用な生成物の収率を低下させる。芳香族の飽和は、有毒であり、ベンゼン生成物の純度も低下させるので、蒸留されたベンゼンが、化学用として販売されるならば、飽和は、回避されなければならない。代表的なプロセス条件は、400〜470℃、14〜21バール、炭化水素に対して水素1〜5モル、および1〜20WHSV C芳香族原料である(例えば特許文献1を参照のこと)。
【0012】
トルエンの不均化反応、または選択性トルエンの不均化反応は、パラキシレン生成のために、同様に工業的に利用されている。プロセス条件は、400〜470℃、200〜500psig、炭化水素に対して水素0.5〜5モル、および2〜5WHSV C8芳香族原料である。原料トルエンは、再循環されて無くなり、生成物は、ベンゼン、p−キシレンおよびエチルベンゼンリッチのC芳香族炭化水素、軽量パラフィン、並びにC芳香族炭化水素である。1回通過(Per−pass)のトルエン転化率は、パラ−キシレンの高収率を所望するならば約32%、或いは、生成物としての平衡キシレンの配分に対して45%に限定されている。
【0013】
メチル芳香族炭化水素のトランスアルキル化反応処理のための工業用プロセスは、用いる原料に応じて、おおよそ2つのタイプに分けられうる。トルエンとC/C10芳香族炭化水素とのトランスアルキル化反応と、より重い原料(例、添加されるトルエンもしくはベンゼンを除くC/C10芳香族炭化水素等)の転化。両方のプロセスタイプも、上記のメチル芳香族炭化水素と芳香族の脱エチル化/脱プロピル化の化学反応を用いる。これらのプロセスは、400〜470℃、200〜400psig、炭化水素に対して水素1〜5モル、および芳香族原料を基準として0.5−5WHSVで運転する。
【0014】
トルエンは、水添脱アルキル(HDA)処理において、ベンゼンとメタンに水素化分解されうる。HDAは、現在、石油化学用のベンゼン生産のおよそ15%の割合を占め、触媒的または熱的のいずれかで実施できる。触媒プロセスは、酸性の、担持された第VIII族金属またはアルミナ上に担持された金属酸化物を利用し、金属焼結を最小限に抑えるために、500℃未満の温度で実施される。熱処理は、高温(通常、650℃より高い)と高濃度の水素(トルエンに対するHは、通常2〜6)を用いる。熱プロセスのHDAは、高収率のベンゼンを生じ、かつ周期的に置き換える必要がある触媒の使用を回避するので、現在のところ、HDAを用いる最新のプロセス装置にとって有力なルートである。ベンゼンのほぼ定量のモル収率が、回収されうる(99%)が、メタンの生成は、正味の芳香族炭化水素の収量の損失であるので、正味の最終収率は、約84%に限定されている。ベンゼンとトルエンの相対的な価格は、石油化学サイクルのコースで変わるので、経済に影響する。しかし、経験則で言えば、ベンゼンの現物価格が、トルエンの現物価格の1.25倍を超える場合、HDAが好ましい。
【0015】
上の情報からわかるが、水素は、石油化学分野において、不可欠である。水素は、数種の方法(例、キシレン異性化方法、キシレンとベンゼンを混合するトルエン不均化反応、主にパラ−キシレン、およびベンゼン、並びにトルエン、ベンゼンへの選択性トルエン不均化反応、および更に混合されたキシレンを生じる重トランスアルキル化反応、更に、ベンゼンを生じるトルエンの水添脱アルキル)で使用される。水素は、上記の方法の全てにおいて、不可欠であり、形成されたオレフィンを飽和させ、触媒プロセスの化学反応に関与し、触媒老化を低減する。
【0016】
明らかに、汚染物質(例、低分子の炭化水素等)、または水素原料中の不純物(例、硫化水素、アンモニア、一酸化炭素、および二酸化炭素等)の除去により、水素の純度を高める方法は、石油化学運転に有益な効果をもたらしうる。
【0017】
従来の圧力スイング吸着(「従来型PSA」)において、ガス状混合物が、固体収着剤の第一床上を、ある期間、圧力下で、伝達され、該固体収着剤は、1種もしくは複数の成分に対して選択性または比較的選択性であり、該成分は、通常、ガスストリームから除去されるべき汚染物質と通常みなされる。2種以上の汚染物質を同時に除去することは可能であるが、便宜上、除去されるべき1種の成分もしくは複数の成分は、単一とみなされ、汚染物質とみなされうる。ガス状混合物は、第一槽内の第一吸着床上を通過して、床に収着された状態で残存する汚染物質を欠く床から現れる。所定の時間後、或いは、汚染物質の漏出が観察された際に、ガス状混合物の流動が、第二槽内の第二吸着床に切り替えられ、精製が続く。第二床が、吸着供給(service)されている間、収着された汚染物質は、通常、汚染物質を脱着させるガスの逆流を伴って、圧力の低下により第一吸着床から除去される。槽内の圧力が、低減されるにつれて、床にあらかじめ吸着されていた汚染物質は、下流系まで圧力変動を最小限に抑えるように設計された制御システムと共に、典型的に大きなテールガスドラムを含んでなるテールガス系の中に次第に、脱着される。汚染物質は、任意の適切な方法で、テールガス系から回収され、更に処理され、または適切に処分されうる。脱着が完了した際に、収着床を、不活性ガスストリーム(例、窒素もしくはプロセスガスの精製ストリーム)でパージしてもよい。高温のパージガスストリームを使用することにより、パージを促進してもよい。
【0018】
例えば、第二床中へ漏出後、および第一床が吸着供給のために再び調製されるように、第一床が再生された後、ガス状混合物の流動は、第二床から第一床に切り替わり、第二床が再生される。全サイクル時間は、ガス状混合物が第一サイクルの第一床に最初に伝達された時から、ガス状混合物が次のサイクルの第一床に最初に伝達される時まで、つまり、第一床が1回再生した後までの時間の長さである。第二槽に加えて、第三、第四、第五等の槽の使用は、吸着時間が短いが脱着時間が長い場合に、必要であるが、サイクル時間を増やすように働きうる。
【0019】
従って、一構成において、圧力スイングサイクルに、原料供給工程、少なくとも1つの減圧工程、パージ工程、および最終的に、原料供給工程の再導入のための吸着剤材料を調製する再加圧工程が含まれる。汚染物質の収着は、収着剤上に、物理的収着により、一般的に関与し、該収着剤は、汚染物質に対して親和力を有し、通常、多孔性固体(例、活性化炭素、アルミナ、シリカまたはシリカ−アルミナ)である。ゼオライトは、それらの制御された予測可能な細孔サイズのために、ある種の汚染物質に対して有意な選択性を認められうるので、多くの用途に使用されることが多い。通例、収着剤に化学結合する種が脱着を実現することの難しさが増すことを考えると、収着剤との化学反応は、推奨されないが、収着した材料が、例えば、減圧と共に高温を用いることにより、サイクルの脱着部分の間、効果的に脱着されうるならば、化学吸着が、必ずしも考慮されないことはない。圧力スイング吸着プロセスは、非特許文献1に更に十分に記載されている。
【0020】
従来型PSAは、様々な理由で、かなり大きな固有の不利益を有する。例えば、従来型PSA装置は、建設および運転に費用がかかり、RCPSAと比べて、水素含有ガスストリームから回収される必要がある水素の同じ量に対して、サイズがかなり大きい。また、従来型PSA(装置構成およびバルビングを含む)に利用されるより大きな床を通って成分が拡散するのに必要とされる時間制限のため、従来型の圧力スイング吸着装置は、一般的に1分超、典型的には2〜4分を超えるサイクル時間を有する。対照的に、1分未満の全サイクル時間を有する、高速サイクルの圧力スイング吸着が、利用される。RCPSAの全サイクル時間は、30秒未満、好ましくは15秒未満、更に好ましくは10秒未満、なお更に好ましくは5秒未満、そしてなお更に好ましくは2秒未満でありうる。更に、使用される高速サイクルの圧力スイング吸着装置は、実質的に様々な収着剤(例として、モノリスなどの構造材料が挙げられるがこれに限定されない)を使用することができる。
【0021】
吸着プロセス(従来型PSAもしくはRCPSAのいずれにせよ)の全体の吸着率は、ガス相(τ)中の物質移動速度定数と固体相(τ)中の物質移動速度定数により特徴付けられる。ある材料の材料物質移動速度は、その吸着性、吸着された化合物、その圧力および温度によって、決まる。ガス相中の物質移動速度定数は、以下のように表される。
a.τ=D/R(cm/秒)
(1)
式中、Dは、ガス相中の拡散係数であり、Rは、ガス媒体の代表長さである。本明細書においてガス相中のガス拡散Dは、当技術分野では公知であり(つまり、従来型の値を使用可能)、ガス媒体の代表長さRは、構造化吸着剤材料の2つの層の間のチャネルと定義される。
【0022】
材料の固体相中の物質移動速度定数は、以下のように定義される。
a.τ=D/R(cm/秒)
(2)
式中、Dは、固体相中の拡散係数であり、Rは、固体媒体の代表長さである。本明細書において固体相中のガス拡散Dは、当技術分野では公知であり(つまり、従来型の値を使用可能)、固体媒体の代表長さRは、吸着層の幅と定義される。
【0023】
非特許文献2は、参照されて本明細書に組み込まれており、モノリスまたは構造吸着剤を通る流動に対して、チャネル幅が、ガス媒体にとって良好な代表長さRであることを明らかにする。モロー(Moreau)らの特許文献2は、参照されて本明細書に組み込まれており、同様に、これらの移動速度と、所与の吸着剤および従来型PSAに使用した試験標準組成物に対する関連係数とを算出するための説明を記載する。これらの物質移動速度定数の算出は、当業者には公知であり、当業者によって、標準試験データから、得られることができるだろう。
【0024】
従来型PSAは、微粒子吸着剤の吸着床の使用に依存する。更に、構造制約により、従来型PSAは、2つ以上の分離床を備え、該分離床は、一般的に、少なくとも1つもしくは複数の床が、処理されるプロセス流動において、中断(disruption)またはサージを制限するために、どの時点においても、サイクルの供給部分の全体にまたは少なくとも一部であるように循環する。しかしながら、従来型PSA装置のサイズが比較的に大きいため、吸着剤材料の粒径は、一般的に、約1mm以上の粒径に限定される。さもなければ、過度の圧力降下、サイクル時間の増加、脱着の限界、および供給材料のチャネリングが、結果として起こりうる。
【0025】
一実施形態において、RCPSAは、回転弁システム(rotary valving system)を使用し、沢山の分離吸着床区画または「チューブ」を含有する回転ソーバーモジュールを通ってガス流動を伝達し、該区画またはチューブの各々は、回転モジュールが運転サイクルを完了する際に、収着および脱着工程を介して連続的に循環する。回転ソーバーモジュールは、通例、回転ソーバーモジュールのいずれか一方の端の2つのシールプレートの間に支えられた複数のチューブからなり、シールプレートは、別々のマニホールドからなるステータと接触し、入口ガスが、RCPSAチューブに伝達され、処理精製された生成物ガスおよびRCPSAチューブを出るテールガスが、回転ソーバーモジュールから離れて、伝達される。シールプレートとマニホールドの適切な配置により、多くの個々の区画またはチューブが、どの時点においても完全なサイクルの独特の工程を通過しうる。従来型PSAと対照的に、RCPSAの収着/脱着サイクルに必要な流動および圧力の変動は、ほぼ秒/サイクルで、多くの別々の増分において変わり、それが、コンプレッションおよび弁可動部により遭遇される圧力および流量の脈動を取り除く。この形式において、RCPSAモジュールには、回転する収着モジュールによって取られる円形路の周りに角度間隔をおいて弁体が含まれ、その結果、各区画は、連続的に、適切な方向および圧力で、ガス流動路まで通過して、完全なRCPSAサイクルにおける、増分圧力/流動方向工程の1工程を実現する。RCPSA技術のひとつの重要な利益は、吸着剤材料の非常に有効な利用である。RCPSA技術で必要な吸着剤の量は、同じ分離量および品質を実現するのに従来型PSA技術に必要とされる量のほんの一部でありうる。結果として、RCPSAに必要とされる活性吸着剤の、フットプリント、投資、および量は、同じ量のガスを処理する従来型PSA装置に必要であるものよりも、かなり少ない。
【0026】
一実施形態において、RCPSA床長装置の圧力降下は、吸着活性、および機械的制約(RCPSAの回転床の遠心加速のため)を必要とし、多くの従来型PSA吸着床材料、特に、粗くペレットにした形状、微粒形状、ビーズ形状、または押出形状である吸着剤の使用を妨げる。好適な一実施形態において、吸着剤材料は、RCPSA回転装置に使用される構造材料の下で、担体に固定される。例えば、回転RCPSA装置の一実施形態は、構造強化材料に結合した吸着剤材料を含んでなる吸着剤シートの形でありうる。吸着剤材料が強化材料に結合するように、適切な結合剤を使用してもよい。強化材料の非限定の例として、モノリス、鉱物繊維母材(例、ガラス繊維母材等)、金属ワイヤーの母材(例、金網スクリーン等)、または金属ホイル(例、アルミホイル等)が挙げられ、それらは、陽極処理されうる。ガラス繊維母材の例として、織および不織ガラス繊維スクリムが挙げられる。吸着剤シートは、適切な吸着剤成分(例、ゼオライト結晶等)のスラリーを、結合剤成分と一緒に、強化材料、不織繊維ガラススクリム、金属織布、および展伸したアルミホイル上に、コーティングすることにより、作製されうる。特定の実施形態において、吸着剤シートまたは材料は、セラミック担体上にコーティングされる。
【0027】
RCPSA装置の吸着器は、典型的に、1種もしくは複数種の吸着剤材料から形成された吸着剤固体相と透過性ガス相とを含んでなり、該ガス相を通って、分離されるべきガスが、吸着剤の固体相上に吸着しているストリームから除去されるのを所望される大部分の成分と一緒に、吸着器の入口から出口へ流動する。このガス相は、「循環ガス相」、更に簡単に「ガス相」と呼ばれることもある。固体相には、網状の細孔が含まれ、その平均サイズは、通常およそ0.02μm〜20μmである。更に小さい細孔の網状構造が存在することもあり、「微細孔」と呼ばれ、これは、例えば、微孔性炭素吸着剤またはゼオライトにおいて、遭遇する。固体相は、非吸着性担体上に堆積することもあり、その主な働きは、活性吸着剤材料に対して機械的強度を提供することおよび/または熱伝導機能を提供すること、或いは熱を蓄えることである。吸着の現象は、2つの主工程、即ち、循環ガス相から固体相の表面上へ吸着物が通過する工程、その後、その表面から、吸着部位内の固体相の体積を通過する工程を備える。
【0028】
一実施形態において、RCPSAは、RSPCA装置に利用されるチューブに組み込まれた構造吸着剤を用いる。従来型PSAに利用される従来の充填された固定床配置と比較すると、物質移動にかなり改善を与える、吸着剤の構造シートによって形成されたチャネルを通って、ガスが流動するので、これらの構造吸着剤は、予想以上に速い物質移動速度を有する。本発明において、ガス相の移動速度(τ)と固体相の物質移動速度(τ)の比は、10より大きく、好ましくは25より大きく、更に好ましくは50より大きい。これらの予想以上に大きい物質移動速度の比により、RCPSAは、従来型PSAと同じ装置サイズ、吸着剤、量、およびコストの機能だけで、高回収率で、高純度の水素ストリームが生じることが可能である。
【0029】
構造吸着剤の実施形態は、更に、微粒子床技術に関連した有害作用を伴わないで、従来型PSAよりもかなり大きな、吸着剤を介して実現される圧力降下が生じる結果となる。吸着床は、1フィート当り水5インチより大きい、更に好ましくは10インチHO/フィートより大きい、尚更に好ましくは20インチHO/フィートより大きい、吸着床装置の長さ当りの圧力降下で設計されうる。これは、吸着床装置長の圧力降下が、一般的に、使用される吸着剤に応じて、約5インチHO/フィートより小さく限定されている従来型PSA装置と対照的である。ほとんどの従来型PSA装置では、従来型PSA装置の、大きな床、長いサイクル時間、および微粒子吸着剤に関して検討されてきた問題を最小限に抑えるために、約1インチHO/フィート以下の圧力降下に設計されている。従来型PSAの吸着床は、床を流動化するリスクのせいで、より大きな圧力降下に対応することが不可能である。それは、装置の問題を伴うことによる過度の低下および早期の装置の運転停止および/または損失した吸着剤材料を添加するもしくは置き換える必要性が生じる結果となる。これらの吸着床装置長の著しく大きな圧力降下によって、RCPSA吸着床を、従来型PSAに使用された吸着床よりも、かなりコンパクトで、短く、効率的にさせることができる。
【0030】
一実施形態において、装置の長さ当りの大きな圧力降下によって、高速の蒸気速度が、構造吸着床を越えて実現できる。これにより、プロセス流動と吸着剤材料間に、従来型PSAによって実現されうるよりも時間単位で大きな質量接触率を生じる結果となる。これにより、床長がより短くなり、ガス相の移動速度(τ)がより速くなり、水素回収が向上する結果となる。上記の非常に短い床長で、本発明のRSCPA装置の合計の圧力降下は、通常5フィート未満の長さ、好ましくは2フィート未満の長さおよびせいぜい1フィート未満の長さまで、活性床の長さを抑えて、約0.5〜50psig、好ましくは30psig未満の原料供給サイクル間の合計の床圧の差で維持されうる。
【0031】
RCPSAプロセス中に用いられる絶対圧力レベルは、決定的ではない。実施において、吸着工程と脱着工程間の圧力差が、吸着剤上に載置されている吸着物の留分が変化するのに十分であり、それによって、RCPSA装置で処理されるストリーム成分を分離するのに効果的なデルタローディング(delta loading)を提供することを条件とする。典型的な絶対運転圧力レベルは、約50〜2500psiaの範囲である。しかしながら、原料供給、減圧、パージ、および再加圧段階中に用いられる実圧力は、多くの要素(例として、実運転圧力および分離される全ストリームの温度、ストリーム組成、所望の回収パーセンテージおよびRCPSA生成物のストリームの純度が挙げられるが、これらに限定されない)に非常に依存していることを明記すべきである。RCPSAプロセスは、任意の絶対圧力に特に限定されてなく、そのコンパクトなサイズのため、従来型PSAプロセスよりも、高い運転圧力で、かなり経済的となる。特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7(それらの全ては、参照されて本明細書に組み込まれている)は、RCPSA技術の様々な態様を開示する。
【0032】
一実施形態および一実施例において、高速サイクルの圧力スイング吸着システムは、生成ガス(この場合、水素リッチストリーム)中の原料ガスとテール(排気)ガスを分離するための全サイクル時間、tTOTを有する。その方法として、一般的に、水素純度F%(Fは、弱い吸着性(水素)成分である原料ガスのパーセントである)を有する原料ガスを、選択的にテールガスを吸着して床からの水素生成ガスを通過させる吸着床に、時間t間伝達する工程が挙げられ、その工程において、水素生成ガスは、P%の純度と、R%の回収率とを有する。回収率R%は、原料中の利用できる水素の量に対する生成物中に保有する水素の量の比である。その後、床は、同時に、時間tCO間減圧された後、時間tCN間、該床を逆流に減圧し、脱着物(テールガスもしくは排気ガス)が、1psig以上の圧力で、上記床から放出される。床は、通常、水素生成ガスの一部で、時間、t間パージされる。続いて、床は、通常、水素生成ガスもしくは原料ガスの一部で、時間、tRP間減圧され、サイクル時間tTOTは、全サイクル時間を含んでなる個々のサイクル時間の総計に等しい。つまり、
a.tTOT=t+tCO+tCN+t+tRP
(3)
【0033】
本実施形態は、生成物純度/原料純度の比(P%/F%>1.1)に対する回収率(R%>80%)、および/または生成物純度/原料純度の比(0<P%/F%<1.1)に対する回収率(R%>90%)のいずれかのRCPSAプロセスを包含するが、それらに限定されない。これらの高い回収率および純度範囲を裏付ける結果が、本明細書の実施例4〜10に見出される。他の実施形態には、水素回収率が、80%よりもかなり低いプロセスのRCPSAの適用が含まれうる。RCPSAの実施形態は、任意の具体的な回収率または純度の閾値を超えることに限定されないし、所望どおりの低いまたは特定の用途に対して経済的に妥当な回収率および/または純度で、適用されうる。
【0034】
上の式(3)の工程tCO、tCN、またはtは、一緒にまたは任意に個々に組み合わせて、省略できることは、本発明の範囲内であることも、明記されるべきである。しかしながら、上の式(3)の全工程が、実施されることが好ましく、或いは、工程tCOまたはtCNの1工程のみが、全サイクルから省略されるのが好ましい。しかしながら、水素純度および回収率の増大を促進するために、追加工程が、RCPSAサイクル内に加えられうる。必要とされる吸着剤が少量で、また従来型PSA用途に利用される非常に多くの固定バルブが排除されるので、このような強化が、RCPSAにおいて、実質的に実現されうる。
【0035】
一実施形態において、テールガスが、テールガスに加圧することなく、テールガスを別の装置に供給しうるように十分に高い圧力で放出されるのが好ましい。テールガスの圧力は、60psig以上であるのが、更に好ましい。最も好適な一実施形態において、テールガスの圧力は、80psig以上である。更に高い圧力で、テールガスは、燃料ヘッダに伝達されうる。
【0036】
本発明の実施は、以下の利益を有しうる。
(a)補給ガスとして利用できる水素含有ストリームの純度を高めること。即ち、そのストリームは、それらが補給ガスとして適切である前に、より高い純度まで高められる必要がある。
(b)水素含有再循環ガスストリームの純度を高めることは、反応器における水素処理ガスの全体的純度を高める結果となり、より高度な水素化処理の厳密性または追加の生成物処理を可能にする。
(c)かなりの濃度のHSが存在している(ガス洗浄前)か、或いはガス洗浄後(通常、100vppmより低いHS)のいずれかで、水素処理パージガスからのH回収のための使用。
【0037】
水素化処理において、高められたH純度は、水素化処理反応器内で更に高いH分圧に変わる。この両方が、反応速度を増大させ、触媒劣化速度を低減させる。より高いH分圧の利益を、以下のような多様の方法において、利用できる。
低い反応器温度での運転(それはエネルギーコストを減らし、触媒の劣化を低減し、そして触媒寿命を延ばす)、装置の供給量の増加、よりサワーな(より高濃度の硫黄)原料の処理、更に高濃度の分解原料を処理、特に運転の終わり近くに生成物の色の改善、既存のコンプレッサーおよび/または処理ガス回路の隘路打開(一定の総流量でのscfHの増加、または低い総流量での同じscfH)、および当業者に明白な他の手段。
【0038】
増大したH回収率は、更に、かなり可能性のある利益を提供する。それらのうちいくつかを、以下に記載する。
(i)製油所内でのHの購入、製造、または他の供給源に対する需要の減少
(ii)水素回収率が増大した結果として、一定の(既存の)補給ガス需要での水素化処理の供給量の増加
(iii)ヘテロ原子を除去する効率を増大させるための、水素化処理における水素純度の改善
(iv)いくつかの炉バーナーにとって燃焼能力限界および困難さ示す水素の低BTU値のせいで燃料ガスに有害である製油所の燃料ガスからHの一部を除去
(v)当業者に明らかな他の利益。
【0039】
以下の実施例は、例証する目的のみのためであって、いかなる方法においても、制限されるべきでない。
【実施例】
【0040】
実施例1
本実施例は、本発明の利益がない製油所プロセス装置の従来型の運転を記載する。35bargで運転する第一プロセス蒸留物処理器に、様々な上流処理装置(真空パイプスチールまたは選択性触媒処理装置)からの留出燃料の混合物を、通常160m/時の速度で供給する。
【0041】
20bargで運転する第二プロセス蒸留物(例えば、ガスオイル)処理器に、様々な上流処理装置(大気圧パイプスチールまたは流動触媒分解装置)からのオイルの混合物を、通常200m/時の速度で供給する。第二装置は、従来の様々なモードで第一装置と関連して運転でき、各モードは、硫黄仕様に適う蒸留生成物を生成するように設計されている。例えば第一処理器は、50ppmの硫黄で生成物を生成し、一方、第二処理器は、2000ppmの硫黄で任意の生成物を生成しうる。従来型装置の運転は、前者のモードによって、実施され、第二装置の水素消費量は、処理ガス速度14Nm/時で、2400Nm/時であり、生成硫黄は、1250ppmである。第一装置に対応する値は、水素消費量3500Nm/時、処理ガス速度27Nm/時、および生成硫黄44ppmである。これらの値は、上記プロセスの構成において、RCPSAを使用する利益がない例を表す。
【0042】
実施例2
本実施例は、本明細書の図2に示される本発明の第一実施形態を例証し、図2において、第二酸スクラバーの出口に、RCPSA装置を配置する。本発明のこの運転モードにおいて、第二製油装置における水素消費量は、処理ガス速度14Nm/時、生成硫黄1100ppmで、3500Nm/時である。第一装置に対応する値は、この運転モード下で、水素消費量3900Nm/時、処理ガス速度27Nm/時、および生成硫黄27ppm(実施例1における44ppmに対して)である。図2に記載される運転モードは、上の実施例1に記載される従来型運転と比較すると、第一処理器と第二処理器の両方において、水素消費量のかなりの増加を可能にし、更に、処理器からの両方の生成物の硫黄濃度を低下させることが、本実施例からわかる。従って、更に多くの原料の処理が可能になり、更に低い硫黄濃度の蒸留生成物を有することができる。
【0043】
実施例3
本実施例は、本発明の第二実施形態を例証し、第二実施形態において、本明細書の図1に示すように、実施例1の装置の配列内に、高速サイクルPSA装置を配置する。上記のように実施する際に、処理ガス純度は、第二処理器で上がり、その結果として、第二処理器の水素消費量が、1500Nm/時〜3900Nm/時まで増大する。更に、本発明の上記モードにおける第二装置で、処理ガス速度は、9Nm/時であり、生成硫黄1250ppmである。本発明のこの実施形態での第一装置に対応する値は、水素消費量3500Nm/時、処理ガス速度27Nm/時、および生成硫黄35ppmである。図1に記載される運転モードは、水素消費量をほぼ50%まで増加させ、硫黄含有量を減少させる(35ppm対44ppm)ことが、実施例2からわかる。芳香族炭化水素の一部は飽和されており、それらは、深度脱硫のために追加の水素を残さないので、実施例2ほど硫黄還元が多くないことを本実施例が例証することは、予期しなかったことである。
【0044】
実施例4
本実施例において、製油所ストリームは、480psigにおいてであり、テールガスは、65psigにおいてであり、それによって、圧力スイングは、6.18である。原料組成および圧力は、製油所処理装置(例、水素化処理または水素化処理用途で見いだされるような装置)の典型である。本実施例において、典型的な炭化水素をそれらの炭素数で記載する(つまり、C=メタン、C=エタン等)。RCPSAは、99%を超える純度で、かつ流量の範囲を超えて81%を上回る回収率で、水素を生成することが可能である。表1aおよび1bは、RCPSAのコンピュータシミュレーションの結果と、本実施例の種々の成分のインプットおよびアウトプットパーセントを示す。表1aおよび1bは、更に、480psigでの6MMSCFDストリームと65psigでのテールガスに関して、回収率が、89.7%から91.7%に上がる際に、どのくらい水素純度が下がるかを示す。
【0045】
表1aおよび1b
精製におけるRCPSA(67ft)からのインプットおよびアウトプットの組成(モル%)。原料は、480psig、122°Fにおいてであり、テールガスは、65psigにおいてである。供給量は、約6MMSCFDである。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
本発明に記載されるRCPSAは、種々の工程からなるサイクルを運転する。工程1は、生成物を生じる間の原料供給であり、工程2は、並流減圧であり、工程3は、向流減圧であり、工程4は、パージ(通常、向流)であり、工程5は、生成物での再加圧である。各時点での本明細書に記載されるRCPSAにおいて、床の総数の半分は、原料供給工程にある。本実施例において、tTOT=2秒における供給時間tは、全サイクルの2分の1である。
【0049】
実施例5
本実施例において、条件は、実施例4と同一である。表2aは、水素純度99%超を実現する並流工程と向流工程との両方を用いる条件を示す。表2bは、向流減圧工程を省略しても、それでもなお99%の水素純度を維持できることを示す。事実、これは、パージサイクルの時間(t)の増加、向流減圧工程時間(tCN)から省かれた所要時間により、水素回収率は、88%のレベルまで上がりうることを示す。
【0050】
表2aおよび2b
RCPSA(67ft)からのH純度および回収率での工程所要時間の効果。表1と同一条件。原料は、480psig、122°Fにおいてであり、テールガスは、65psigにおいてである。供給量は、約6MMSCFDである。
【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
実施例6
本実施例は、10MMSCFD製油所ストリームを示し、表3の原料の列に示される通り、典型的な成分を再び含有する(例えば、原料の組成物は、74%のHを含有する)。ストリームは、480psigにおいてであり、RCPSAテールガスは、65psigにおいてであり、それによって、絶対圧力スイングは、6.18である。再び、本発明のRCPSAは、99%を超える純度で、これらの原料組成物から85%を超える回収率で、水素を生成することが可能である。表3aおよび3bは、本実施例の結果を示す。
【0054】
表3aおよび3b
精製におけるRCPSA(53ft)からのインプットおよびアウトプットの組成(モル%)。供給原料は、480psig、101°Fにおいてであり、テールガスは、65psigにおいてである。供給量は、約10MMSCFDである。
【0055】
【表5】

【0056】
【表6】

【0057】
上の表3aおよび3bに示される両方の場合において、テールガス圧力は、65psigで高いが、本発明は、パージ工程時間tが、十分に増えるならば、高純度(99%)が得られうることを示す。
【0058】
表2a、2bおよび3aは、6MMSCFDと10MMSCFDの両方の流量条件に対して、ほぼ99%の非常に高い水素純度と85%を超える回収率が、RCPSAで実現できることを示す。両方の場合において、テールガスは、65psigにおいてである。高圧力で生じる全ての排気を有するRCPSAを用いて実現される上記の生成ガスの高純度および回収率は、以前は見出されてなく、本発明の重要な特徴である。
【0059】
表3cは、表3aおよび3bで考察したのと同一の製油所ストリームに対する高回収率で、高純度(>99%)Hを生み出すRCPSA(体積=49立方フィート)に関する結果を示す。表3aと比較して、表3cは、類似した純度および回収率が、原料供給サイクルの所要時間tとパージサイクルの所要時間tの同時の増加により、実現されうることを示す。
【0060】
【表7】

【0061】
実施例7
本実施例において、表4は、更に、本明細書に記載される本発明に基づいて運転されるRCPSAの性能を例証する。本実施例において、原料は、典型的な製油所ストリームであり、300psigの圧力においてである。本発明のRCPSAは、全てのテールガスが、40psigで排気される場合、83.6%の回収率で、99%の純粋な水素生成物を生じることができる。この場合において、テールガスは、更なる加圧を必要とせずに、フラッシュドラムまたは他のセパレータもしくは他の下流製油装置に送られうる。本発明の別の重要な態様は、RCPSAが、更に、2vppm未満までCOを除去する。それは、生成水素リッチのストリームを使用する製油装置とって、非常に望ましい。低濃度のCOにより、下流装置内の触媒が、延長された期間にわたって活量が劣化することなく、運転することが確実となる。従来型PSAは、このCO仕様に適わず、同時にまた、典型的な燃料ヘッダ圧力または上記のRCPSA排気を処理する他の装置の高い圧力のような高圧で全てのテールガスを排気する条件に適わない。全てのテールガスは、40psig以上で利用できるので、製油装置でRCPSAを組み込むために、いかなる追加の加圧も必要でない。
【0062】
【表8】

【0063】
実施例8
表5aおよび5bは、本明細書に記載される本発明に基づいて運転されるRCPSAの性能を比較する。精製しているストリームは、原料中に低濃度のH(51%モル)を有し、典型的な製油所/石油化学ストリームである。両方の場合(表5aおよび5bに対応する)において、並流工程後に、向流減圧工程を適用する。本発明に基づいて、表5aは、全てのテールガスが、65psig以上で放出される場合でさえも、高いH回収率(81%)が、可能であることを示す。対照的に、一部のテールガスが、5psigくらい低く利用できるRCPSAは、向流減圧で水素を失い、その結果、H回収は、56%まで落ちる。更に、表5aのストリームの圧力が高いほど、テールガスへの加圧を必要としない。
【0064】
表5aおよび5b
テールガスの圧力の回収率への効果
濃度(51.3モル%)を有する原料へ適用したRCPSAの実施例H精製におけるRCPSA(31ft)からのインプットおよびアウトプットの組成(モル%)。
原料は、273psig、122°Fにおいてであり、供給量は、約5.1MMSCFDである。
【0065】
【表9】

【0066】
【表10】

【0067】
実施例9
本実施例において、表6aおよび6bは、本明細書に記載される本発明に基づいて運転されるRCPSAの性能を比較する。これらの場合において、供給圧力は、800psigであり、テールガスは、65psigもしくは100psigのいずれかで排気される。組成物は、HSのような典型的な不純物をもたらし、その不純物は、このような製油所アプリケーション(applications)の中に存在しうる。表からわかるように、99%を超える高純度を有する両方の場合に、高回収率(>80%)が、観察される。上記の両方の場合において、並流減圧のみを用い、この工程中の排水をサイクルの他の床に送る。テールガスのみが、向流パージ工程中に流出する。表6cは、テールガスの一部が、更に、並流減圧後の向流減圧工程に、排気される状態で運転されるRCPSAの場合を示す。並流減圧の排水は、本発明の一部であるRCPSA槽構成における他の床のひとつにそれを戻すのに十分な純度および圧力である。テールガス、つまり排気ガスは、向流減圧および向流パージ工程中に流出する。
【0068】
全ての場合において、全量のテールガスが、高圧で、利用でき、それは、他の高圧製油所プロセスへの組み込みを見込んでいる。これは、高回収率で高純度ガスを生じる一方、任意の形態で必須である加圧の必要性を取り除く。本発明の広範囲の特許請求の範囲に基づいて、これらの場合は、例証の実施例としてのみ考慮されるべきであり、その製油所、石油化学または処理する場所を限定せず、分離される特定の分子の性質さえも限定しない。
【0069】
表6a、6b、および6c
高圧供給に適用されるRCPSAの例
精製におけるRCPSA(18ft)からのインプットおよびアウトプットの組成(モル%)。供給原料は、800psig、122°Fにおいてであり、供給量は、約10.1MMSCFDである。
【0070】
【表11】

【0071】
【表12】

【0072】
【表13】

【0073】
実施例10
表7a、7b、および7cは、本明細書に記載される本発明に基づいて運転されるRCPSAの性能を比較する。精製しているストリームは、原料中に高濃度のH(85%モル)を有し、典型的な製油所/石油化学ストリームである。これらの実施例において、生成物における純度の増加は、10%未満(つまり、P/F<1.1)である。この制約下で、本発明の方法は、テールガスを加圧する必要なく、90%を超える回収率で水素を生じることが可能である。
【0074】
表7a、7b、および7c
濃度(85モル%)で供給原料に適用されたRCPSAの例。RCPSA(6.1ft)からのインプットおよびアウトプットの組成(モル%)。原料は、480psig、135°Fにおいてであり、供給量は、約6MMSCFDである。
【0075】
【表14】

【0076】
【表15】

【0077】
【表16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油化学プロセスに関連する水素含有ストリーム中の水素純度を高める方法であって、
水素含有水蒸気を、複数の吸着床を含有し、30秒未満の全サイクル時間と、床長1フィート当り水5インチより大きい、各吸着床内の圧力降下を有する高速サイクルの圧力スイング吸着装置に付す工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記石油化学プロセスは、キシレン異性化、エチルベンゼンのキシレンへの水添異性化、トルエン不均化反応、選択性トルエン不均化反応並びにトルエン、ベンゼンおよびCトランスアルキル化反応からなる群から選択されるプロセスであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高速サイクルの圧力スイング吸着の全サイクル時間は、15秒未満であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記全サイクル時間は10秒未満であり、前記各吸着床の圧力降下は、床長1フィート当り水10インチより大きいことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記全サイクル時間は、5秒未満であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記圧力降下は、床長1フィート当り水20インチより大きいことを特徴とする請求項5に記載の方法。

【公表番号】特表2008−528419(P2008−528419A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552344(P2007−552344)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/002295
【国際公開番号】WO2006/079027
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】