説明

石油産業で使用される自己締結式のねじ切りを設けた管状接続構造

本発明は、雄端部(1)と雌端部(2)とが夫々に設けられた第1の管状要素および第2の管状要素を備えるねじ付き接続構造であって、雄端部(1)は、その外側周囲面上に、少なくとも1つのねじ領域(3)を有し、この接続構造の軸(10)に対して半径方向に配向された終端面(7)で終端し、雌端部(2)は、その内側周囲面上に、少なくとも1つのねじ領域(4)を有し、この接続構造の軸(10)に対して半径方向に配向された終端面(8)で終端し、雄ねじ領域(3)は第1の部分を有し、この第1の部分では、歯の幅CWTpが、雄端部(1)の終端面(7)から最も近い歯の幅に相当する値CWTpminから、終端面(7)から最も遠い歯の幅に相当する値CWTpmaxに増大し、雌ねじ領域(4)の歯の幅CWTbは、前記ねじ領域(3、4)が自己締結式の構造に従って協働するように、雌端部(2)の終端面(8)から最も遠い歯の幅に相当する値CWTbmaxから、終端面(8)に最も近い歯の幅に相当する値CWTbminに減少し、



かつ



であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方には管状雄端部を設け、他方には管状雌端部を設けた第1の管状要素、および第2の管状要素を備える自己締結式のねじ切り(self-locking threading)を設けたねじ付き接続構造であって、一方が他方に螺入されたとき、ロック位置に至るまで自己締結式の締付けにより協働可能なねじ領域が各端部に設けられた、ねじ付き接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の方法では、複数の管を螺合によって接続するのは普通のことであり、これらの管は、炭化水素井戸の運転と関連したケーシングまたはチューブストリングを構成することを目的としている。一般に、この種の管は、雄ねじ領域を設けた端部と、雌ねじ領域を設けた端部とを備え、各端部は、他の要素の対応する端部との螺合により組み立てられることを目的とし、組立体はその接続構造を画定している。このように構成されたストリングは、井戸の掘削が水平に行われるとき、井戸の底に向かって進ませるために回転してもよい。また、水平に掘削された井戸の場合には水平に回転してもよい。このため、ストリングを井戸の中を進ませるに十分な回転トルクが伝達でき、ストリングが破断しないように高トルクで互いに螺合される必要がある。従来の製品では、一般に、構成要素の夫々に設けた当接面同士を締め付けることによってトルクが達成される。しかしながら、当接面の範囲は管の厚みが薄いので、過大なトルクがかかると、当接面の塑性の臨界閾値に急速に到達してしまう。
【0003】
このため、特に、ねじ切りに関して、当接面が許容できない荷重の少なくとも一部またはすべてを当接面から取り除くことができるようにするため、例えば、出願人によってVAM(登録商標)HTFという商品名で販売されているような接続構造の開発が行われた。この目的は、仏国特許第2855587号に記述されているように、自己締結式のねじ切りを使用して達成された。米国再発行特許第30647号および米国再発行特許第34467号に記述されるように、従来技術の接続構造の自己締結式のねじ切りでは、雄端部のねじ山(歯ともいう)および雌端部のねじ山(歯ともいう)は一定のリードを有するが、ねじ山の幅は可変である。より正確には、ねじ山(または歯)の頂の幅は、雄端部または雌端部のねじ山について、雄端部または雌端部からの距離が増大するにつれて次第に増大する。したがって、螺入時に、雄ねじ山(または歯)と雌ねじ山(または歯)とがロック点に対応する位置で互いにロックすることによって接続が完了する。より正確には、雄ねじ山(または歯)のフランクが対応する雌ねじ山(または歯)のフランクに対してロックしたとき、自己締結式のねじ切りがロックされる。ロック位置に達したとき、互いに螺合された雄ねじ領域および雌ねじ領域は対称面を有し、雄ねじ領域の端部に位置する雄歯と雌歯の中心における共通中間高さの幅が雌ねじ領域の端部に位置する雄歯と雌歯の中心における共通中間高さの幅に相当する。
【0004】
このため、フランク間の接触面のすべて、すなわち従来技術の当接面によって構成される全表面積よりかなり大きい全表面積でトルクを受けることになる。
【0005】
しかしながら、従来の自己締結式のねじ切りを有する接続構造は、引張/圧縮応力が特に高い現在の用途でいくつかの限界に遭遇する。実際、雄ねじ山(または歯)の幅が最も小さい雄ねじ領域の端部では、上記ねじ山は、対照的に大きい幅を有する雌端部のねじ山(または歯)と協働する。交互に起こる引張/圧縮下で接続構造が作動すると、雄ねじ領域の端部のねじ山(または歯)のフランクは非常に高いせん断応力を受け、それによって雄歯が裂けたり、あるいは、交互に起こる引張/圧縮下で接続構造が作動すると、雌ねじ領域の端部のねじ山(または歯)のフランクは非常に高いせん断応力を受け、それによって雌歯が裂けることが観察されている。
【0006】
これらの問題を克服するために、1つの解決法が考えられている。この解決法の特徴は、ねじ領域の全長を変えずに雄ねじ領域の端部のねじ山(または歯)の幅がより大きいねじ切りを製造することにある。しかしながら、この解決法は、ねじ切りのリードの増大を伴う。したがって、この解決法は、ねじ山の数を減らし、その結果、接続構造が大きな曲げ荷重または引張荷重を受けるとき、雄ねじのねじ山と雌ねじのねじ山が外れるリスクを増大させるという欠点がある。さらに、この解決法は、ねじ山の接触面積が減少する結果、ねじ切りの許容トルクを低減させるという欠点がある。
【0007】
ねじ領域の全長を変えずにねじ山の数を増やすという別の解決法も研究されている。この解決法では、雄フランクと雌フランクとの間の全接触面を大きくし、それによって各ねじ山にかかる荷重を低減するという利点がある。しかしながら、この解決法は、ねじ山の幅の変化(クサビ比ともいう)が減少するため、ねじ切りの自己締結特性が弱まる。これは、機械加工の不正確さを考慮して、ねじ切りのロック位置が変動することを意味している。このことは、接続構造の管状要素の雄端部および雌端部に夫々設けられた2つの面が締まりばめで協働しなければならない金属/金属封止領域が設けられる場合に、特に問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】仏国特許第2855587号
【特許文献2】米国再発行特許第30647号
【特許文献3】米国再発行特許第34467号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、ねじ領域の全長かクサビ比の何れかを変更せずに、雄ねじ領域の歯の幅と雌ねじ領域の歯の幅との間の、雄ねじ領域の端部付近での特に著しい不均衡を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
より正確には、本発明は、雄端部と雌端部とが夫々に設けられた第1の管状要素および第2の管状要素を備えるねじ付き接続構造であって、雄端部は、その外側周囲面上に、少なくとも1つのねじ領域を有し、この接続構造の軸に対して半径方向に配向された終端面で終端し、雌端部は、その内側周囲面上に、少なくとも1つのねじ領域を有し、この接続構造の軸に対して半径方向に配向された終端面で終端し、雄ねじ領域は第1の部分を有し、第1の部分では、歯の幅CWTpが、雄端部の終端面から最も近い歯の幅に相当する値CWTpminから、終端面から最も遠い歯の幅に相当する値CWTpmaxに増大し、雌ねじ領域の歯の幅CWTbが、ねじ領域が自己締結式の螺合に従って協働するように、雌端部の終端面から最も遠い歯の幅に相当する値CWTbmaxから、終端面に最も近い歯の幅に相当する値CWTbminに減少し、



かつ



であることを特徴とするねじ付き接続構造を提供する。
【0011】
本発明のオプションの補足的または代替的特徴は下記の通りである。
【0012】
前記雄端部の前記終端面に最も近い歯の幅CWTpminと前記雌端部の前記終端面から最も遠い歯の幅CWTbmaxとの比が、0.3〜0.7の範囲にある。
【0013】
前記雄ねじ領域は、前記終端面の側に位置し、谷底部の幅CWRpが減少する第1の部分と、前記終端面とは反対側に位置し、谷底部の幅CWRpが一定値であり、閾値CWRpthresholdより大きい又は等しい第2の部分と、によって構成される。
【0014】
このオプションによれば、雄スタビングフランク間のリードSFPpは、前記第1の部分において一定値であり、前記第2の部分において、前記第1および第2の部分において一定値である雄ロードフランク間のリードLFPpの値と等しい値を取ることが好ましい。
【0015】
一方、このオプションによれば、雄ロードフランク間のリードLFPpは、前記第1の部分において一定値であり、前記第2の部分において、前記第1および第2の部分において一定値である雄スタビングフランク間のリードSFPpの値と等しい値を取る。
【0016】
雄ねじ領域は、終端面の側に位置し、谷底部の幅CWRpが値CWRpthresholdに減少する第1の部分と、終端面とは反対側に位置し、谷底部の幅CWRpが増大する第2の部分と、によって構成される。
【0017】
このオプションによれば、雄ロードフランク間のリードLFPpは、第1の部分において一定値であり、第2の部分において、第1の部分における雄スタビングフランク間のリードSFPpの値と等しい値LFP’pを取ることが好ましい。加えて、雄スタビングフランク間のリードSFPpが、第1の部分において一定値であり、第2の部分において、第1の部分における雄ロードフランク間のリードLFPpの値に等しい値SFP’pを取る。
【0018】
値CWRpthresholdは、歯の高さの0.7倍以上である。
【0019】
雄および雌ねじ領域は、1度〜5度の範囲で接続構造の軸と角度をなすテーパ母線を有する。
【0020】
雄および雌ねじ領域の歯は、鳩尾型(dovetail)プロファイルを有する。
【0021】
雄および雌ねじ領域の前記歯の頂および谷底は、ねじ付き接続構造の軸と平行である。
【0022】
隙間hが、雄ねじ領域の歯の頂と雌ねじ領域の谷底との間に設けられる。
【0023】
雄端部および雌端部は夫々、ねじ領域が自己締結式の螺合を協働するとき、締付け接触で互いに協働可能な封止面を備える。
【0024】
封止面は、一方のドーム形の面と他方のテーパ形の面とによって構成される。
【0025】
ドーム形の面は、曲率半径が30〜80mmの範囲の母線を有する。
【0026】
封止面の一つのテーパ形の面の半頂角の正接は、0.025〜0.075の範囲にある。
【0027】
封止面同士が締付け接触する協働領域は、雄端部の終端面とねじ領域との間に位置する。
【0028】
本発明の特徴および利点は、添付図面を参照してなされる以下の説明でより詳細に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来技術による自己締結式のねじ切りを備える接続構造の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態の油井またはガス井向けの自己締結式のねじ切りを備える接続構造の概略図である。
【図3】従来技術による接続構造の管状要素の雄端部の詳細図である。
【図4】従来技術による接続構造の管状要素の雌端部の詳細図である。
【図5】本発明による接続構造の管状要素の雄端部の詳細図である。
【図6】本発明による接続構造の管状要素の雌端部の詳細図である。
【図7】自己締結式の締付けで協働する本発明の接続構造の2つ、雄ねじおよび雌ねじ、の領域の詳細図である。
【図8】本発明による一変更形態に沿った雌端部の詳細図である。
【図9】図5による雄端部のねじ山に沿ったロードフランク間のリードおよび図6による雌端部のねじ山に沿ったスタビングフランク間のリードの漸進的変化を自由雄端部の前面7からの距離の関数として示すグラフである。
【図10】図5の変更形態を構成する雄端部に対する図8のそれと類似のグラフである。
【図11】図5の変更形態を構成する雄端部に対する図8のそれと類似のグラフである。
【図12】図5の変更形態を構成する雄端部に対する図8のそれと類似のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に示す従来技術のねじ付き管状接続構造は、雄端部1およびテーパ状ねじ領域3aが設けられた管状要素と、雌端部2およびテーパ状ねじ領域4aが設けられた管状要素と、を備え、これらのねじ領域3a、4aは、上記の2つの管状要素の螺合による相互接続のために互いに協働する。これらのねじ領域3a、4aは、螺入時に漸進的軸方向の締付け(progressive axial tightening)が最終ロック位置に至るまで生じるように、既知の「自己締結式」である(ねじ山の軸方向幅および/またはねじ山の間隔の漸進的変化を有する、と考えられている)。
【0031】
図7は、ねじ領域の「自己締結式」の特徴をより詳細に示している。「自己締結式のねじ領域」という用語は、ねじ領域が以下に詳述する特徴を含むことを意味する。雄ねじ32(または歯)は、螺入時に決定位置で互いにロックして終わるように、ねじ山の幅が夫々の終端面7、8の方向に減少するが、雌ねじ42(または歯)と同様に一定のリードを有する。より正確には、雌ねじ領域4のロードフランク40間のリードLFPbは、雌ねじ領域のスタビングフランク41間のリードSFPbと同様に一定値であるが、ロードフランク40間のリードは、スタビングフランク41間のリードより大きいという特長がある。同様に、雄スタビングフランク31間のリードSFPpは、雄ロードフランク30間のリードLFPpと同様に一定値である。さらに、雄スタビングフランク31と雌スタビングフランク41の間のリードSFPp、SFPbは互いに等しく、互いに等しい雄ロードフランク30と雌ロードフランク40の間のリードLFPp、LFPbより小さい。
【0032】
図3および図4から分かるように、従来技術のねじ領域3aおよび4aは、雄端部の終端面7から距離PDAPの位置に対称面100を有する。この対称面は、面100に隣接する雄歯の幅CWTprefと雌歯の幅CWTbrefは等しい。
【0033】
図1の細部である図3および図4から分かるように、図3には雄端部の縦断面図が、図4には雌端部の縦断面図が示されている。雄端部1の終端面7の最も近くに位置する歯(またはねじ山)の幅CWTpminは、一方では雄ねじ領域の最小値であり、他方では上記終端面7から最も遠くに位置する谷底部の幅CWRpminに相当する。
【0034】
同様に、雌端部の終端面8の最も近くに位置する歯(またはねじ山)の幅CWTbminは、一方では雌ねじ領域の最小値であり、他方では上記終端面8から最も遠くに位置する谷底部の幅CWRbminに相当することが分かる。ねじ領域の径方向の締付けを得るために、雄ねじ領域の最も狭い歯の幅CWTpminが雌ねじ領域の最も狭い谷底部の幅CWRbminに等しいことは明らかである。
【0035】
このため、雄ねじ領域および雌ねじ領域の最も幅の狭い歯が、対応する最も幅の広い歯の間に締結されることが分かる。雄端部および雌端部の終端面付近の狭い幅の歯は、それらの歯を締結する広い幅の歯と同様に、別々にまたは相まって、これらの狭い歯のせん断による劣化のリスクを発生する可能性がある。
【0036】
せん断のリスクは、雄ねじ領域1が最小幅CWTbminの歯を締結する雄歯付近で不完全であるので、雌端部2に位置する最小幅CWTbminの歯よりも雄端部1に位置する最小幅CWTpminの歯にとってはるかに重要であることに留意されたい。実際、最小幅CWTbminの歯の近くでは、非ねじ部への遷移を可能にするために対応する雄歯の高さが低くなっており、それによって対応する雌歯を裂けさせるリスクがずっと小さい。
【0037】
雄端部を担持する長い管状要素と雌端部を担持する短い管状要素(継手と呼ばれる)とを組み立てることによって生じる接続の場合、雄端部では歯が非ねじ部を有する遷移部の近くでより不完全であることに留意されたい。したがって、雄歯が雌端部の最小幅CWTbminの歯を締結するという危険性はさらに小さい。したがって、本発明は特に、雌端部の最小幅の歯と協働する不完全なねじ山または歯を備える接続構造に適用される。
【0038】
この問題を克服するために、図2、図5および図6に描かれた本発明は、雄ねじ領域3に従来技術のものと同じ長さおよびリードを有する雌ねじ領域4と協働させることを提案する。この改良は、雄端部1の終端面7に最も近い歯の幅CWTpminと雌端部2の終端面8から最も遠い歯の幅CWTbmaxとの比の不均衡を抑え、すなわち、釣り合わせる点にある。具体的には、この比は0.2以上となるように選定され、次式が得られる。


【0039】
交互に起こる引張/圧縮応力に対する耐性に関して、絶対値ベースでCWTpminとCWTbmaxとの比が1に近づくとより良いことは明らかである。この構成は、歯の幅が最も狭い雄ねじ領域の部分をなくし、従来技術の接続構造の対称軸40により近接して雄端部の終端面7を描くことで得られる。したがって、終端面7に最も近い歯の幅は、この幅を、従来技術の接続構造の対称軸40に隣接する歯の幅に相当するCWTrefpに近い値にすることによって増大する。このため、面100と終端面7の間の距離に相当する距離PDAPは減少する。
【0040】
さらに、従来技術のねじ領域の全長を一定に保ち、トルクを維持する目的で、終端面7とは反対側の端部のねじ領域も同様に延長される。このため、雌端部2の終端面8の側で、雌端部2の終端面8に最も近い歯の幅CWTbminと雄端部1の終端面7から最も遠い歯の幅CWTpmaxとの比が減少する傾向にある。これが次の不等式となる。


【0041】
雌端部2の終端面8に最も近い歯の幅CWTbminと雄端部1の終端面7から最も遠い歯の幅CWTpmaxとの間の不均衡は若干不利があり、雄端部の歯がこの領域内で所謂「不完全」と呼ばれている。実際、雄端部の歯は一般に、対応する雌端部の歯に対して異常なねじり力で変形又はせん断する危険性を減じるために面取りされている。
【0042】
本発明は従来技術から導かれる全長に基づいているので、雄端部1の終端面7とは反対の場所で、谷底部の幅が従来技術の谷底部の最小幅に相当する値CWRpminをはるかに下回っていることは明らかである。したがって、ねじ領域の所定の長さを一定に保つとともに、ロードフランク間およびスタビングフランク間のリードの値を一定に保つことにより、機械加工において問題が生じる可能性がある。実際、幅CWRpminは非常に小さいので、使用される切削工具はそれが通過する間に破損する。このため、本発明は、雄ねじ領域の谷底部の幅の閾値CWRpthresholdの変更による改良を提案する。この値CWRpthresholdは、歯の高さの0.7倍以上である。
【0043】
図5に示した第1の変更形態では、雄ねじ領域の谷底部の幅が閾値CWRpthresholdに達するとき、雄ねじ領域は、もはや自己締結式ではないが、CWTpmaxおよびCWRpminに夫々等しい一定の歯の幅および谷底部の幅を有するプロファイルを採用する。したがって、距離VPESTから、値CWRpmin=CWRpthresholdである。この遷移は、終端領域7から距離VPESTの位置で発生し、終端面7の側に位置する雄ねじ領域の第1の部分を終端面7とは反対側に位置する雄ねじ領域の第2の部分から切り離す。したがって、谷底部は一定の幅CWRpthresholdで機械加工され、歯は一定の幅LFPp−CWRpthresholdで機械加工される。雄ねじ領域のリードは、雌ねじ領域に適合するようにするためにロードフランク間のリードと対応するリードになり、雌ねじ領域の自己締結式のプロファイルは変化しない(図6参照)。図9のリードのグラフに示すように、雄ねじ切り(male threading)において、スタビングフランク間のリードSFPpは、前面7から距離VPESTの位置から、ねじ切りの全長にわたって一定のままであるロードフランク間のリードLFPpに等しい値にまで急に増大する。雌ねじ山のロードフランクとスタビングフランクの間のリードは、雌ねじ切り(female threading)の全長にわたって一定のままである。したがって、雄ロードフランクと雌ロードルフランクとの接触は維持されるが、雄スタビングフランクと雌スタビングフランクとの接触がなくなることに留意されたい。しかしながら、雄ねじ山(または歯)が不完全な部分であり、機械的強度に関してほとんど害はない。値CWRpthresholdは、その値が機械加工において工具の変更を必要とする場合、フランクの加工工具のための軸方向空間必要値に相当するとしてもよい。
【0044】
第1の変更形態のサブバリエーションとして、図10のグラフに示すように、雄ロードフランク間のリードLFPpは、前面7から距離VPESTの位置から、リードSFPpがねじ切りの全長にわたって一定のままであるスタビングフランク間のリードSFPpに等しい値にまで急に減少する。雌ねじ山のロードフランク間およびスタビングフランク間のリードは、雌ねじ切りの全長にわたって一定のままである。前述のように、雄谷底部の幅は、一定のままであり、かつCWRpminに等しい。この代替形態では、雄スタビングフランクと雌スタビングフランクとの接触が維持されるのに対して、雄ロードフランクと雌ロードフランクとの接触はなくなることに留意されたい。
【0045】
この第1の変更形態の別のサブバリエーションとして、図8に示すように、距離VPESTから、雌ねじ領域もまた、歯の幅および谷底部の幅が一定で、かつ夫々CWTbminおよびCWRbmaxに等しいプロファイルを採用することができる。
【0046】
第2の変更形態では、雄ねじ領域の谷底部の幅が閾値CWRpthresholdに達すると、雄ねじ領域は、谷底部の幅はそれ以上減少せず増大し始めるが、歯の幅は減少する自己締結式のプロファイルを採用する。この遷移は、終端面7から距離VPESTを置いたところで起こる。雄ねじ領域のロードフランク間のリードLFPpは変化しない。対照的に、雄ねじ領域のスタビングフランク間のリードは一段高い値SFP’pを採用する。より正確には、雄ねじ領域の谷底部の幅がCWRpthresholdより大きいときにLFPpはSFPpより大きく、雄ねじ領域の谷底部の幅がCWRpthresholdより小さいときにLFPpはSFP’pより小さい(図11のグラフを参照)。当業者なら、それ自体の自己締結式のプロファイルに関して変化しない、雌ねじ領域に適合する値SFP’pを選定する方法も知っているであろう。
【0047】
図12のグラフに示した第3の変更形態では、雄ねじ領域は、距離VPESTから終端面7まで自己締結式のプロファイルを採用する。このプロファイルでは、歯の谷底部の幅が再び増大し始め、歯の幅が「くさび比」と呼ばれる所定の変化で減少する。この歯の幅は、特に、例えば終端面7から距離VPESTの位置まで谷底部の幅および歯の幅に等しい。次に、雄ロードフランク間のリードLFPpは、距離VPESTのところで急に減少し、雄スタビングフランク間のリードSFPpの初期値(すなわち、距離VPESTに対する値)に等しい値LFP’pを取り、同時に、雄スタビングフランク間のリードSFPpは、急に増大し、ロードフランク間のリードLFPpの初期値(すなわち、距離VPESTに対する値)に等しいSFP’pを取る。この第3の変更形態では、雌ねじ切りは、それの軸方向長さ全体にわたってフランク間のリードが変化しない自己締結式である。この第3の変更形態に関して、雄ロードフランクと雌ロードフランクとの接触ならびに雄スタビングフランクと雌スタビングフランクとの接触は、距離VPESTから喪失されるが、この接触の喪失は極めて短いねじ山上で不完全な雄ねじのレベルにあり、このことによる不利益は限定的である。
【0048】
これは小さな利点につながるが、先に示したフランクの間のリードの変更は、雄ねじ切りから雌ねじ切りに移されてもよい。この場合、雄ねじ切りのリードは、軸方向の全長において変化しない。あるいは、雄ねじ切りと雌ねじ切りの両方で実施されてもよい。
【0049】
雄ねじ領域3の歯が径方向の干渉と適合しない部分を制限するため、距離VPESTを過剰に小さくするべきではないと当業者は考えるであろう。そのため、距離PDAPを過剰に小さくしないよう気を付けるであろう。言い換えると、一定の締付トルク値を保証できる一定の長さの自己締結式のねじ切りの場合、谷底部の幅CWRpが値CWRpthresholdとなる雄ねじ領域3の一部を延長する必要があるので、比CWTpmin/CWTbmaxを過剰に大きくするべきではない。
【0050】
有効な妥協案によれば、比CWTpmin/CWTbmaxは、0.3〜0.7の範囲内でなければならない。
【0051】
したがって、全長117mmのねじ領域の場合、終端面7から50mmの距離にPDAPを置き、CWTpminとCWTbmaxの値を夫々2.7mmと5.3mmとし、すなわち、これらの比を0.51にすると有効である。雄ねじ領域のプロファイルが一定になる距離は、距離VPESTが98mmである。トルクは、26000フィート重量ポンド(35000Nm)に維持される。
【0052】
図7に示すように、雄ねじのねじ山(または歯)と雌ねじのねじ山(または歯)は、それらが螺入後に互いに強固に嵌合するように、鳩尾型プロファイルを有すると有効である。この追加的保証により、接続構造が大きな曲げ応力または引張応力を受けたとき、雄ねじの山と雌ねじの山が外れるリスクを回避することができる。より正確には、鳩尾型プロファイルを有するねじ山の幾何形状は、軸方向の幅がねじ山のベースから頂にかけて減少する「台形」ねじと通常呼ばれるねじ山に比べて、組立体の径方向の剛性を増大させている。
【0053】
図7に示すように、ねじ切り3および4は、螺入時の進行を促進するようにテーパの母線20の方向に配向されると有効である。一般に、このテーパの母線は、1度〜5度の範囲で軸10と角度をなす。この場合のテーパ母線は、ロードフランクの中心を通過するように定義される。
【0054】
図7に示すように、主に雄ロードフランク30と雌ロードフランク40とが接触し、同様に雄スタビングフランク31と雌スタビングフランク41とが接触すると有効である。対照的に、螺入時の進み具合を補助し、かつ、かじりの危険性を防止するために、雄ねじ山の頂と雌ねじ山の谷底部との間に隙間hが設けられてもよく、そして隙間hが雄ねじの谷底部と雌ねじの頂との間に設けられてもよい。
【0055】
図7に示すように、雄および雌ねじ領域の歯の頂点と谷底部は、ねじ付き接続構造の軸10と平行であることが有効である。この構成により、機械加工が容易になる。
【0056】
管状接続構造の内部媒体と外部媒体の両方に対する流体密性が、雄要素の終端面7の近くに位置する2つの封止領域5、6によって提供されることが有効である。
【0057】
封止領域5は、終端面7に向かって直径が減少し、半径方向外側に向かうドーム形の面を有してもよい。このドーム形の面の半径は、30〜100mmの範囲内であることが好ましい。ドーム形の面の半径が大きすぎる(>150mm)と、円錐対円錐の接触の問題と同様の問題が発生し、このドーム形の面の半径が小さすぎる(<30mm)と、接触面が不十分である。
【0058】
雌端部2は、このドーム形の面に対向し、半径方向内側に向いたテーパ形の面を有し、そのテーパ形の面の直径もまた雄要素の終端面7の方向に減少する。テーパ形の面の半頂角の正接は0.025〜0.075の範囲にあり、すなわち、テーパは5%〜15%の範囲にある。テーパ形の面のテーパが小さすぎる(<5%)と、螺入時にかじりのリスクが高く、テーパが大きすぎる(>15%)と、機械加工に非常に精密な許容差が要求される。
【0059】
接触領域の両端の有効接触領域が狭い2つのテーパ形の面の間の接触領域とは対照的に、テーパ形の面とドーム形の面の間の接触領域は、大きい軸方向有効接触幅と、この有効接触領域に沿う接触圧力の実質的に放物線状の分布と、を得ることができることを発明者は見出した。
【0060】
本発明による接触領域の幾何形状は、組立てられた要素の軸方向の位置決めが加工公差によってばらつくにもかかわらず、十分な有効接触幅を維持することができ、有効接触領域はドーム形の面のドーム形部分に沿って旋回し、局所接触圧力のための放物状プロファイルを維持する。
【0061】
ねじ山のロードフランクは、ねじ山の頂と隣接するねじ山の谷底部とに丸み付けで接続することが有効である。したがって、丸み付けはロードフランクの麓での応力集中係数を低減し、それによって接続構造の疲労挙動を改善する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄端部(1)と雌端部(2)とが夫々に設けられた第1の管状要素および第2の管状要素を備えるねじ付き接続構造であって、
前記雄端部(1)は、その外側周囲面上に、少なくとも1つのねじ領域(3)を有し、この接続構造の軸(10)に対して半径方向に配向された終端面(7)で終端し、
前記雌端部(2)は、その内側周囲面上に、少なくとも1つのねじ領域(4)を有し、この接続構造の軸(10)に対して半径方向に配向された終端面(8)で終端し、
前記雄ねじ領域(3)は第1の部分を有し、
前記第1の部分では、歯の幅CWTpが、前記雄端部(1)の前記終端面(7)から最も近い歯の幅に相当する値CWTpminから、前記終端面(7)から最も遠い歯の幅に相当する値CWTpmaxに増大し、
前記雌ねじ領域(4)の歯の幅CWTbは、前記ねじ領域(3、4)が自己締結式の構造に従って協働するように、前記雌端部(2)の前記終端面(8)から最も遠い歯の幅に相当する値CWTbmaxから、前記終端面(8)に最も近い歯の幅に相当する値CWTbminに減少し、



かつ




であることを特徴とするねじ付き接続構造。
【請求項2】
前記雄端部(1)の前記終端面(7)に最も近い歯の幅CWTpminと前記雌端部(2)の前記終端面(8)から最も遠い歯の幅CWTbmaxとの比が、0.3〜0.7の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のねじ付き接続構造。
【請求項3】
前記雄ねじ領域(3)は、
前記終端面(7)の側に位置し、谷底部の幅CWRpが減少する第1の部分と、
前記終端面(7)とは反対側に位置し、谷底部の幅CWRpが一定値であり、閾値CWRpthresholdより大きい又は等しい第2の部分と、によって構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のねじ付き接続構造。
【請求項4】
雄スタビングフランク間のリードSFPpは、前記第1の部分において一定値であり、前記第2の部分において、前記第1および第2の部分において一定値である雄ロードフランク間のリードLFPpの値と等しい値を取ることを特徴とする請求項3に記載のねじ付き接続構造。
【請求項5】
雄ロードフランク間のリードLFPpは、前記第1の部分において一定値であり、前記第2の部分において、前記第1および第2の部分において一定値である雄スタビングフランク間のリードSFPpの値と等しい値を取ることを特徴とする請求項3に記載のねじ付き接続構造。
【請求項6】
前記雄ねじ領域(3)は、
前記終端面(7)の側に位置し、谷底部の幅CWRpが値CWRpthresholdに減少する第1の部分と、
前記終端面(7)とは反対側に位置し、谷底部の幅CWRpが増大する第2の部分と、によって構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のねじ付き接続構造。
【請求項7】
雄ロードフランク間のリードLFPpは、前記第1の部分において一定値であり、前記第2の部分において、前記第1の部分における雄スタビングフランク間のリードSFPpの値と等しい値LFP’pを取り、
雄スタビングフランク間のリードSFPpが、前記第1の部分において一定値であり、前記第2の部分において、前記第1の部分における雄ロードフランク間のリードLFPpの値に等しい値SFP’pを取ることを特徴とする請求項6に記載のねじ付き接続構造。
【請求項8】
前記値CWRpthresholdは、前記歯の高さの0.7倍以上であることを特徴とする請求項3から請求項7までの何れか一項に記載のねじ付き接続構造。
【請求項9】
前記雄および雌ねじ領域(3、4)は、前記接続構造の軸(10)との角度を1度〜5度の範囲で形成するテーパの母線を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のねじ付き接続構造。
【請求項10】
前記雄および雌ねじ領域(3、4)の歯は、鳩尾型プロファイルを有することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のねじ付き接続構造。
【請求項11】
前記雄および雌ねじ領域(3、4)の前記歯の頂および谷底は、前記ねじ付き接続構造の軸(10)と平行であることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のねじ付き接続構造。
【請求項12】
隙間hが、前記雄ねじ領域(3)の前記歯の頂と前記雌ねじ領域(4)の谷底との間に設けられることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のねじ付き接続構造。
【請求項13】
前記雄端部(1)および前記雌端部(2)は、前記ねじ領域(3、4)が自己締結式の螺入に伴って協働し、締付け接触で互いに協働可能な封止面(5、6)を備えることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のねじ付き接続構造。
【請求項14】
前記封止面(5、6)は、一方のドーム形の面と他方のテーパ形の面とによって構成されることを特徴とする請求項13に記載のねじ付き接続構造。
【請求項15】
前記ドーム形の面は、曲率半径が30〜100mmの範囲の母線を有することを特徴とする請求項14に記載のねじ付き接続構造。
【請求項16】
前記テーパ形の面の半頂角の正接は、0.025〜0.075の範囲にあることを特徴とする請求項14または15に記載のねじ付き接続構造。
【請求項17】
前記封止面(5、6)同士が締付け接触する協働領域が、前記雄端部(1)の前記終端面(7)と前記ねじ領域(3、4)との間に位置することを特徴とする請求項13から16のいずれか一項に記載のねじ付き接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−512347(P2012−512347A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541158(P2011−541158)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008711
【国際公開番号】WO2010/069491
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(504255249)ヴァルレック・マンネスマン・オイル・アンド・ガス・フランス (30)
【氏名又は名称原語表記】VALLOUREC MANNESMANN OIL & GAS FRANCE
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】