説明

石炭ガス化システム

【課題】本発明は、石炭ガス化システムに設置された一酸化炭素変換装置を安全に起動し、または停止させて、石炭ガス化システムの安全な運転を可能にした石炭ガス化システムを提供する。
【解決手段】本発明の石炭ガス化システムは、酸素製造装置100で製造された窒素ガス中に含まれる酸素を消費させる燃焼装置1000を設け、該燃焼装置を経由した前記窒素ガスをガス精製設備から一酸化炭素変換装置400に精製ガス6を供給する系統に供給するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は石炭をガス化した生成ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変換する一酸化炭素変換装置を備えた石炭ガス化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の石炭をガス化炉でガス化して生成ガスを製造し、この生成ガスを燃料として燃焼させた燃焼ガスによってタービンと発電機を駆動して発電する石炭ガス化発電システムでは、地球温暖化防止の観点から、特許第2870929号及び特許第3149561号に開示されているように、生成ガスを燃焼する際に生じる二酸化酸素の発生量を抑制するため、生成ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収設備を備えた石炭ガス化システムを構築することが必要となってきている。
【0003】
石炭ガス化システムのガス化炉で石炭をガス化した生成ガスは一酸化炭素を多く含む生成ガスであり、二酸化炭素の回収は特許第2870929号及び特許第3149561号に開示されているように、石炭ガス化システムに備えられた二酸化炭素回収設備によるシフト触媒によって生成ガス中に含まれた一酸化炭素を二酸化炭素へ転換し、吸収液でこの二酸化炭素を吸収して回収し、除去する方法が一般的である。
【0004】
尚、石炭ガス化システムでは、ガス化炉で石炭をガス化して生成ガスを製造するために、酸化剤として使用する酸素を空気から分離して製造する酸素製造装置を備えており、この酸素製造装置による酸素製造の副産物として空気から分離した窒素も製造されるので、石炭をガス化炉に乾式供給する場合は窒素が石炭の搬送に使用されている。
【0005】
ところで、特開平11―116975号公報では、COS変成器の触媒を保護するために該COS変成器の上流側にバイパス系統を配設し、このバイパス系統にガス中の酸素を燃焼させる燃焼器を設置したガス化発電プラントが開示されている。
【0006】
しかしながら特開平11―116975号公報に開示された技術は、軽油等の補助燃料を用いてガス化炉を昇温させる過程で発生した燃焼ガスに含まれる酸素から吸収塔の吸収液を保護する技術であって、後述する本願発明が対象とするガス化システムにおける一酸化炭素変換装置に係る技術とは直接関係しないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2870929号公報
【特許文献2】特許第3149561号公報
【特許文献3】特開平11―116975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
石炭ガス化システムでは、酸素製造装置によって空気から酸素と同時に製造される窒素を、石炭ガス化システムの起動・停止時にパージ用として使用している。酸素製造装置は原料の空気から酸素と窒素を分離して製造するが、製造した窒素中には0.1%から0.5%程度の少量の酸素が含有されている。 ところで、石炭ガス化システムに備えられる一酸化炭素変換装置では、下記(1)式のような反応により、一酸化炭素を二酸化炭素に変換する。
【0009】
CO+HO → CO+H・・・ (1)
一酸化炭素変換装置には、(1)式で示されるシフト反応を促進する酸化鉄や銅を反応媒体とする触媒が用いられている。
【0010】
これらの触媒は、酸素存在下では、下記(1)式及び(2)式のような反応により、触媒活性がない酸化鉄や酸化銅に変化する。
【0011】
4Fe+O → 6Fe+111kcal/mol−O・・・ (2)
2Cu+O → 2CuO+74.2kcal/mol−O・・・ (3)
したがって、石炭ガス化システムの酸素製造装置で空気から分離して製造した窒素を用いて一酸化炭素変換装置の起動や停止操作を実施する際に、製造した窒素中に含まれる少量の酸素によって一酸化炭素変換装置の触媒層で(2)式および(3)式による反応が発生して触媒の活性が低下すると共に、前記反応で発生した熱で触媒層の温度が上昇して触媒が損傷に至る事態も想定される。
【0012】
そうなると、石炭ガス化システムに設置された一酸化炭素変換装置を安全に起動し、または停止することができなくなり、ひいては石炭ガス化システムを安全に運転することが困難になるという課題がある。
【0013】
本発明の目的は、石炭ガス化システムに設置された一酸化炭素変換装置の触媒を保護して前記一酸化炭素変換装置を安全に起動し、または停止させて、石炭ガス化システムの安全な運転を可能にした石炭ガス化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の石炭ガス化システムは、空気から酸素と窒素を製造する酸素製造装置と、石炭をガス化した生成ガスを製造するガス化炉と、このガス化炉でガス化した生成ガスを精製して精製ガスにするガス精製設備と、前記ガス精製設備で精製された精製ガス中に含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変換する一酸化炭素変換装置を備えた石炭ガス化システムにおいて、前記酸素製造装置で製造された窒素ガス中に含まれる酸素を消費させる燃焼装置を設け、該燃焼装置を経由した前記窒素ガスを一酸化炭素変換装置に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、石炭ガス化システムに設置された一酸化炭素変換装置の触媒を保護して前記一酸化炭素変換装置を安全に起動し、または停止させることにより、石炭ガス化システムの安全な運転を可能にした石炭ガス化システムが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施例の石炭ガス化システムの概略構成を示す系統図。
【図2】本発明の第2実施例の石炭ガス化システムの概略構成を示す系統図。
【図3】本発明の第3実施例の石炭ガス化システムの概略構成を示す系統図。
【図4】本発明の第4実施例の石炭ガス化システムの概略構成を示す系統図。
【図5】本発明の第5実施例の石炭ガス化システムの概略構成を示す系統図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例である石炭ガス化システムについて図面を引用して説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の第1実施例である石炭ガス化システムについて図1を用いて説明する。
【0019】
図1において、本発明の第1実施例である石炭ガス化システムでは、空気4は空気圧縮機101で加圧されて酸素製造装置100に供給され、この酸素製造装置100にて空気4から酸素3及び窒素2を分離して酸素3と窒素2を製造する。
【0020】
図示していない燃焼器或いは燃焼炉で燃焼させる燃料の石炭は、予め微粉砕された微粉炭1を、酸素製造装置100で製造された窒素2を搬送媒体としてガス化炉200に供給し、同時に酸素製造装置100で製造された酸素3もガス化炉200に供給し、前記ガス化炉200にて微粉炭1はガス化されて石炭ガスとなる。
【0021】
ガス化炉200でガス化された石炭ガスは高温のガスであるので、ガス化炉200の下流側に設置した熱回収装置210で石炭ガスが保有する熱を回収して蒸気を生成する。
【0022】
熱回収装置210にて熱が回収された石炭ガスは冷却されて生成ガス5となり、ガス精製設備に供給される。ガス精製設備はサイクロン300,フィルタ310,水洗塔320,脱硫装置330により構成されるが、これに限るものではない。熱回収装置210から供給される生成ガス5中には、石炭中の灰分やカーボン分が固体として含まれているので、熱回収装置210の下流側に設置したガス精製設備を構成するサイクロン300及びフィルタ310によって生成ガス5中の灰分やカーボン分を脱塵する。
【0023】
脱塵された石炭ガスは、生成ガス5中に含まれるアンモニア、塩化水素など、後段に配設した脱硫装置330の障害となる物質を除去するために、サイクロン300及びフィルタ310の下流側に設置された水洗塔320を経て、脱硫装置330に供給される。
【0024】
脱硫装置330には、通常、アミン類からなる吸収液が供給されており、この脱硫装置330によって生成ガス5中の硫化水素などの硫黄成分が除去され、精製ガス6となって脱硫装置330からその下流側に設置した熱交換器401,一酸化炭素変換装置400,二酸化炭素吸収装置410へ供給される。
【0025】
ところで、脱硫装置330の下流側に設置され、一酸化炭素変換装置400には蒸気21が供給されており、この一酸化炭素変換装置400は通常は200℃〜450℃の温度条件で運転される。
【0026】
しかしながら、脱硫装置330で生成ガスを精製した精製ガス6の温度は約40℃と低温であるで、熱交換器401によって精製ガス6を加熱し、前記一酸化炭素変換装置400内で蒸気が凝縮しない温度となるように精製ガス6を昇温して供給する。
【0027】
そして、前記一酸化炭素変換装置400に供給された精製ガス6中の一酸化炭素は、この一酸化炭素変換装置400内にて二酸化炭素に変換され、同時に、水蒸気の水素が水素ガスとなったシフトガス7として、一酸化炭素変換装置400の下流側に設置され、二酸化炭素吸収装置410に供給される。
【0028】
二酸化炭素吸収装置410には、通常、アミン系吸収液が供給されており、シフトガス7に含まれる二酸化炭素がアミン系吸収液に吸収され、脱炭酸ガス8として二酸化炭素吸収装置410から下流側のプロセス(図示を省略)に供給して処理する。
【0029】
次に、上記石炭ガス化システムの起動又は停止時における運転方法について説明する。ガス化炉の起動又は停止時に、一酸化炭素変換装置400にパージガスとして酸素製造装置100から供給される窒素2は燃料貯蔵タンク1100から燃料流量調整バルブ1104を介して供給した燃料ガス30と共に燃焼装置1000に供給され、燃焼する。なお、本実施例では燃料ガス30の流量調節装置としてバルブを用いているが、他にオリフィス等を用いても良い。また、図1においては燃料ガス貯蔵装置1100からの燃料ガス30を燃料装置1000に直接導入するものを図示しているが、燃焼装置1000の上流側で酸素製造装置100からの窒素ガス2と合流させるように配管系統を構成しても良い。
【0030】
窒素2中に含まれた酸素は、燃焼装置1000において燃料ガスとの酸化反応により完全に消費される。そして、燃焼装置1000で燃焼して排出される燃焼ガスは、ガス中に酸素が全く存在していない燃焼ガスとして、一酸化炭素変換装置400に供給される。具体的には脱硫装置330から熱交換器401を経由して一酸化炭素変換装置400に至る配管系統であって、熱交換器401より上流側の配管系統に供給される。供給箇所はこれに限定されるものではない。
【0031】
燃焼装置1000には、低濃度の酸素ガスでも燃焼可能な燃焼触媒を用いることが、ガス中に酸素が全く存在していない燃焼ガスを生成するためには有効である。また燃焼装置1000としては、窒素2中に含まれた酸素を完全に消費するものであれば何でも良い。
【0032】
前記燃焼装置1000で燃焼させて生成した燃焼ガス中には、一酸化炭素変換装置400に充填された一酸化炭素転換触媒を酸化する酸素が含まれていないので、この燃焼ガスを用いて一酸化炭素変換装置400を昇温したり、減温しても一酸化炭素転換触媒は還元状態で保持され、一酸化炭素変換装置400を常に正常に運転することができる。
【0033】
本実施例によれば、石炭ガス化システムに設置された一酸化炭素変換装置の触媒を保護して前記一酸化炭素変換装置を安全に起動し、または停止させることにより、石炭ガス化システムの安全な運転を可能にした石炭ガス化システムが実現できる。
【実施例2】
【0034】
次に本発明の第2実施例である石炭ガス化システムについて図2を用いて説明する。
【0035】
図2において、本発明の第2実施例である石炭ガス化システムは、図1に示した第1実施例と基本的な構成が同じなので、両者に共通する構成の説明は省略し、相違する部分についてのみ以下に説明する。
【0036】
本実施例の石炭ガス化システムは、酸素製造装置100で空気から製造した窒素2を一酸化炭素変換装置400に供給する配管に、流量調整装置として窒素ガス供給バルブ1101、1102を設置した構成である。
【0037】
即ち、酸素製造装置100で空気から製造した窒素2を該酸素製造装置100から燃焼装置1000に供給する配管上に第1の窒素ガス供給バルブ1101を設置する。なお、燃料ガス貯蔵装置1100からの燃料ガス30を燃料装置1000に直接導入せず、燃焼装置1000の上流側で酸素製造装置100からの窒素ガス2と合流させるように配管系統を構成した場合は、この合流点より上流側の領域に窒素ガス供給バルブ1101を設置する。
【0038】
更に、燃料ガス貯蔵装置1100から供給した燃焼ガス30を燃焼装置1000で燃焼させて該燃焼装置1000から燃焼ガスを一酸化炭素変換装置400に供給する配管上であって、下記する合流点よりも上流側の領域に第2の窒素ガス供給バルブ1102を設置したものである。なお、本実施例では窒素ガス2の流量調整装置として窒素ガス供給バルブ1101,1102を用いているが、この代わりにオリフィス等を適用することも可能である。
【0039】
前記燃焼ガスを一酸化炭素変換装置400に供給する配管は、脱硫装置330で生成ガス中の硫黄成分を除去して精製した精製ガス6を該脱硫装置330から一酸化炭素変換装置400に供給する配管に設けた昇温のための熱交換器401の上流側へ接続したものである。
【0040】
そして、石炭ガス化システムに設置された一酸化炭素変換装置400を起動する場合には、燃焼装置1000の入口側の窒素ガス供給バルブ1101を開、出口側の窒素ガス供給バルブ1102を開に操作すると共に、燃料流量調整バルブ1104を開に操作することで、酸素製造装置100で製造した窒素2を一酸化炭素変換装置400に供給することを開始してから、一酸化炭素変換装置400を起動する。
【0041】
また、この一酸化炭素変換装置400を停止する場合には、窒素ガス供給バルブ1102,1101及び燃料流量調整バルブ1104を開に操作することで、酸素製造装置100で製造した窒素2が一酸化炭素変換装置400に供給されてから、一酸化炭素変換装置400の運転を停止する。
【0042】
上記したように、窒素ガス供給バルブ1101、1102を開操作して、燃焼装置1000で酸素を消費させた窒素2を一酸化炭素変換装置400に供給することで、一酸化炭素変換装置の触媒を酸素から保護することができる。これにより、酸素製造装置100で製造された窒素2を一酸化炭素変換装置400のパージガス、或いは一酸化炭素変換装置400の昇温媒体や冷却媒体として安全に使用することができる。
【0043】
本実施例によれば、石炭ガス化システムに設置された一酸化炭素変換装置の触媒を保護して前記一酸化炭素変換装置を安全に起動し、または停止させることにより、石炭ガス化システムの安全な運転を可能にした石炭ガス化システムが実現できる。
【実施例3】
【0044】
次に本発明の第3実施例である石炭ガス化システムについて図3を用いて説明する。
【0045】
図3において、本発明の第3実施例である石炭ガス化システムは、図2に示した第2実施例と基本的な構成が同じなので、両者に共通する構成の説明は省略し、相違する部分についてのみ以下に説明する。
【0046】
本実施例の石炭ガス化システムは、ガス精製設備で精製された精製ガスの一部(又は全部)を燃焼装置の燃料ガスとして供給するように構成したものである。具体的には、脱硫装置300で精製した精製ガス6の一部(又は全部)を分岐して燃料ガス貯蔵装置1100に供給する配管31を配設し、該配管31の途中に、精製ガス6の供給を調節する燃料ガス供給バルブ1103を設置した構成である。
【0047】
すなわち、脱硫装置300で精製した精製ガス6を燃焼装置1000の燃料ガスとして用いる場合、石炭ガス化プラントの通常運転時に燃料ガス供給バルブ1103を開に操作することで、脱硫装置300で精製した精製ガス6の一部を、配管31を通じて燃料ガス貯蔵装置1100に供給して貯蔵することができる。なお、燃料ガス貯蔵装置1000に精製ガス6が十分に貯蔵されると燃料ガス供給バルブ1103は閉に操作される。
【0048】
精製ガス6には、酸素製造装置100で空気から製造された窒素2中に含有される少量の酸素を燃焼するのに好適なガスとして、水素並びに一酸化炭素が含まれている。
【0049】
そして、酸素製造装置100で製造された窒素2を一酸化炭素変換装置400のパージガス、或いは一酸化炭素変換装置400の昇温媒体や冷却媒体として使用する際には、窒素供給バルブ1101,1102を共に開に操作して、酸素製造装置100で製造した窒素2を一酸化炭素変換装置400に供給すると共に、燃料流量調整バルブ1104を開に操作して、燃料ガス貯蔵装置1100に貯蔵した精製ガス6を燃焼装置1000に供給して燃焼させることで、酸素製造装置100で製造して一酸化炭素変換装置400に供給される窒素2中の酸素を燃焼装置1000で燃焼するものである。
【0050】
上記した構成によって、精製ガス6の一部を窒素2中の酸素を燃焼させる燃焼用ガスとして使用できるので、別途水素などのガスを外部より購入する必要がなく、石炭ガス化システムで製造する精製ガスを有効に利用することができる。
【0051】
本実施例によれば、石炭ガス化システムに設置された一酸化炭素変換装置の触媒を保護して前記一酸化炭素変換装置を安全に起動し、または停止させることにより、石炭ガス化システムの安全な運転を可能にした石炭ガス化システムが実現できる。
【実施例4】
【0052】
次に本発明の第4実施例である石炭ガス化システムについて図4を用いて説明する。
【0053】
図4において、本発明の第4実施例である石炭ガス化システムは、図2に示した第2実施例と基本的な構成が同じなので、両者に共通する構成の説明は省略し、相違する部分についてのみ以下に説明する。
【0054】
本実施例の石炭ガス化システムは、図3と同様にガス精製設備で精製された精製ガスの一部(又は全部)を燃焼装置の燃料ガスとして供給するように構成した実施例である。具体的には、窒素2中の酸素を燃焼させる燃焼用ガスとして、二酸化炭素回収装置の二酸化炭素吸収装置410から排出した脱炭酸ガス8を利用するものであり、そのために二酸化炭素吸収装置410から排出した脱炭酸ガス8を燃料ガス貯蔵装置1100に供給する配管32を配設し、該配管32の途中に、脱炭酸ガス8の供給を調節する燃料ガス供給バルブ1105を設置した構成である。
【0055】
すなわち、脱硫装置300で精製した精製ガス6を燃焼装置1000の燃料ガスとして用いる場合、石炭ガス化プラントの通常運転時に燃料ガス供給バルブ1105を開に操作することで、二酸化炭素吸収装置410から排出した脱炭酸ガス8を、配管32を通じて燃料ガス貯蔵装置1100に供給して貯蔵することができる。なお、燃料ガス貯蔵装置1000に脱炭酸ガス8が十分に貯蔵されると燃料ガス供給バルブ1105は閉に操作される。
【0056】
脱炭酸ガス8には、酸素製造装置100で空気から製造された窒素2中に含有される少量の酸素を燃焼するのに好適なガスとして、水素が含まれている。
【0057】
そして、酸素製造装置100で製造された窒素2を一酸化炭素変換装置400のパージガス、或いは一酸化炭素変換装置400の昇温媒体や冷却媒体として使用する際には、窒素ガス供給バルブ1101,バルブ1102を共に開に操作して、酸素製造装置100で製造した窒素2を一酸化炭素変換装置400に供給すると共に、燃料流量調整バルブ1104を開に操作して、燃料ガス貯蔵装置1100に貯蔵した脱炭酸ガス8を、燃焼装置1000に供給して燃焼させることで、酸素製造装置100で製造して一酸化炭素変換装置400に供給される窒素2中の酸素を燃焼するものである。
【0058】
上記した構成によって、脱炭酸ガス8を窒素2中の酸素を燃焼させる燃焼用ガスとして使用できるので、別途水素などのガスを外部より購入する必要がなく、石炭ガス化システムで製造する脱炭酸ガスを有効に利用することができる。
【0059】
なお、図4では燃焼装置1000で用いる燃料ガス30の供給元として、二酸化炭素吸収装置410を経由した脱炭酸ガス8を供給するものを図示しているが、一酸化炭素変換装置400で二酸化炭素にシフト変換されたシフトガス7を供給するようにしても良い。
【0060】
本実施例によれば、石炭ガス化システムに設置された一酸化炭素変換装置の触媒を保護して前記一酸化炭素変換装置を安全に起動し、または停止させることにより、石炭ガス化システムの安全な運転を可能にした石炭ガス化システムが実現できる。
【実施例5】
【0061】
次に本発明の第5実施例である石炭ガス化システムについて図5を用いて説明する。
【0062】
図5において、本発明の第5実施例である石炭ガス化システムは、図2に示した第2実施例と基本的な構成が同じなので、両者に共通する構成の説明は省略し、相違する部分についてのみ以下に説明する。
【0063】
本実施例の石炭ガス化システムは、酸素製造装置で製造した窒素中の酸素を消費するための運転制御を行うようにしたものである。
【0064】
酸素製造装置100で空気から製造された窒素2を該酸素製造装置100から燃焼装置1000に供給する配管にこの窒素2に含まれた少量の酸素の濃度を検出する酸素濃度計50を設置して、前記酸素濃度計50で検出した酸素濃度信号70を酸素濃度制御装置2000に入力する。
【0065】
また、燃料ガス貯蔵装置1100に貯蔵された燃料を燃焼装置1000に供給する配管上に燃料ガス流量調整バルブ1104を設置し、更に、前記配管上の燃料貯蔵装置1100から燃料ガス流量調整バルブ1104に至る領域に燃料貯蔵装置1100出口の燃料ガス中の水素濃度と一酸化炭素濃度の両方、又は何れか一方を測定する燃料ガス濃度計51を設置し、前記燃料ガス濃度計51で検出した水素濃度および一酸化炭素濃度信号73を制御装置2000に入力する。なお、燃料ガス濃度計としては、燃料ガスの成分に水素が含まれている場合には水素濃度、一酸化炭素が含まれている場合には一酸化炭素濃度、両者が含まれている場合には水素濃度及び一酸化炭素濃度の測定機器が用いられる。
【0066】
酸素製造装置100から燃焼装置1000に供給する窒素2の流量を調節する窒素ガス供給バルブ1101の開度信号72は、制御装置2000にて酸素濃度計50で検出した酸素濃度信号70に基づいて演算され、窒素ガス供給バルブ1101に出力される。
【0067】
酸素濃度計50で計測された窒素2中の酸素濃度信号70は、例えば、酸素濃度が0.1%であったとすると、0.1%の酸素濃度信号が制御装置2000に入力される。
【0068】
制御装置2000によって制御される窒素2の流量は窒素ガス供給バルブ1101の開度信号として、例えば、200m/hの流量が制御装置2000で演算され、窒素ガス供給バルブ1101の開度信号72として窒素ガス供給バルブ1101に出力される。
【0069】
また、燃料ガス貯蔵装置1100に貯蔵されていた燃料ガス中の燃料ガス成分、例えば、水素や一酸化炭素の濃度は、燃料ガス濃度計51で測定され、該燃料ガス濃度計51で測定された水素濃度および/又は一酸化炭素濃度に関する燃料ガス濃度信号73が酸素濃度制御装置2000に入力される。
【0070】
制御装置2000における制御アルゴリズムは、例えば、燃料ガス貯蔵装置1100に貯蔵されている燃料が水素である場合は、水素による酸素の消費は(4)式の反応で示される。
【0071】
2H+O → 2HO ・・・ (4)
すなわち、酸素1モルに対し、2モルの水素が必要である。窒素2のガス流量は200m/hであるから、窒素2中の酸素流量は、
200m/h×0.1%=0.2m/h=0.2×1000/22.414 =8.923モル/h
となり、この酸素を燃焼するための水素量は、
2×8.923=17.846 モル/h
となる。
【0072】
燃料ガス中の燃料成分である水素濃度が20%であったとすると、必要な燃料ガス流量は、
17.846/0.2=89.23モル/h=2m/h
となるので、燃料ガス流量調節バルブ1104の開度は、2m/hを流すために必要な開度指令73を燃料ガス濃度計51で検出した水素濃度に関する燃料ガス濃度信号73に基づいて制御装置2000によって演算し、燃料ガス流量調整バルブ1104に出力して操作する。
【0073】
次に、燃料ガス貯蔵装置1100に貯蔵された燃料ガスを使用する場合には、燃料貯蔵装置1100出口の燃料ガス中の水素濃度を燃料ガス濃度計51により測定し、前記燃料ガス濃度計51で検出した水素濃度に関する燃料ガス濃度信号73を制御装置2000に入力する。
【0074】
そして、制御装置2000では前記水素濃度に関する燃料ガス濃度信号73に基づいて燃料ガス流量調整バルブ1104の開度指令71を演算し、制御装置2000から開度指令71を燃料ガス流量調整バルブ1104に出力して操作する。
【0075】
なお、上記では燃料ガスの燃料成分が水素である場合について説明したが、一酸化炭素の場合も同様に、測定した燃料ガス中の窒素濃度に基づいて制御することにより、酸素製造装置100からの窒素2中の酸素を消費させることが可能となる。
【0076】
また、図2及び図3に示す実施例のように、脱硫装置330で精製される精製ガス6の一部を燃料ガス貯蔵装置1100に供給するように構成すれば、燃焼装置1000で燃焼させる燃料ガスとして使用することが可能となる。このとき、図3の実施例の場合には水素及び一酸化炭素、図4の実施例の場合には水素が酸素の消費に用いられることとなる。
【0077】
次に、燃料ガス中に一酸化炭素と水素の両方を含む場合の制御方法について説明する。先ず、一酸化炭素の燃焼は次式に示すように、(5)式で示した水素と同様に1モルの酸素を消費するためには2モルの一酸化炭素が必要である。
【0078】
2CO+O → 2CO・・・ (5)
窒素2に含まれる酸素を消費するには、水素および一酸化炭素は等しいモル数であるので、窒素2中に含まれる酸素のモル数、例えば、前記例では8.923モル/hの場合には、水素および一酸化炭素の合計モル数が該酸素モル数の2倍の17.846モル/hの流量が必要である。
【0079】
したがって、燃料ガス中の水素濃度が20モル%で、一酸化炭素濃度が55モル%の場合には、燃料ガス中の燃料の濃度は75モル%であるので、燃料ガス流量は、
17.846/0.75=23.80モル/h=0.534m/h
となり、20モル%の水素で酸素を消費する場合の約25%の燃料ガス流量でよいことになる。
【0080】
その結果、燃料ガス流量調整バルブ1104の開度は、0.534m/hを流すために必要な開度指令71を燃料ガス濃度計51で検出した水素濃度および一酸化炭素濃度に関する燃料ガス濃度信号73に基づいて制御装置2000によって演算し、燃料ガス流量調整バルブ1104に出力して操作する。
【0081】
以上のように制御することにより、窒素2に含まれる酸素を消費するのに必要十分な燃料を供給できるので、酸素製造装置100で製造した窒素により、二酸化炭素回収設備を構成する一酸化炭素変換装置400の昇温、起動あるいは停止などの操作を、一酸化炭素変換装置400内の一酸化炭素変換触媒の活性を低下させずに実施することができる。
【0082】
本実施例によれば、石炭ガス化システムに設置された一酸化炭素変換装置の触媒を保護して前記一酸化炭素変換装置を安全に起動し、または停止させることにより、石炭ガス化システムの安全な運転を可能にした石炭ガス化システムが実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は石炭をガス化した生成ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変換する一酸化炭素変換装置を備えた石炭ガス化システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1:微粉炭、2:窒素、3:酸素、4:空気、5:生成ガス、6:精製ガス、7:シフトガス、8:脱炭酸ガス、21:蒸気、30:燃料ガス、31:精製ガス、50:酸素濃度計、70:酸素濃度信号、71:燃料ガス調整弁開度信号、72:蒸気調整弁開度信号、100:酸素製造装置、101:空気圧縮機、200:ガス化炉、210:熱回収装置、300:サイクロン、310:フィルタ、320:水洗塔、330:脱硫装置、400:一酸化炭素変換装置、401:熱交換器、410:二酸化炭素吸収装置、21:蒸気、1000:燃焼装置、1100:燃料ガス貯蔵装置、1101:窒素ガス供給バルブ、1102:窒素ガス供給バルブ、1103:燃料ガス供給バルブ、1104:燃料流量調整バルブ、1105:燃料ガス供給バルブ、2000:制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気から酸素と窒素を製造する酸素製造装置と、石炭をガス化した生成ガスを製造するガス化炉と、このガス化炉でガス化した生成ガスを精製して精製ガスにするガス精製設備と、前記ガス精製設備で精製された精製ガス中に含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変換する一酸化炭素変換装置を備えた石炭ガス化システムにおいて、
前記酸素製造装置で製造された窒素ガス中に含まれる酸素を消費させる燃焼装置を設け、燃料ガスを前記燃焼装置に供給し、該燃焼装置を経由した前記窒素ガスを一酸化炭素変換装置に供給することを特徴とする石炭ガス化システム。
【請求項2】
請求項1に記載の石炭ガス化システムにおいて、
前記精製ガスを貯蔵し前記燃焼装置に燃料ガスとして供給すること特徴とする石炭ガス化システム
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の石炭ガス化システムにおいて、
前記酸素製造装置から前記燃焼装置に供給される窒素ガスの流量を調節する第1の流量調節装置と、前記燃焼装置から前記一酸化炭素変換装置に供給される窒素ガスの流量を調節する第2の流量調節装置を設置したことを特徴とする石炭ガス化システム。
【請求項4】
請求項3に記載の石炭ガス化システムにおいて、
前記燃焼装置に燃料として供給される燃料ガスの流量を調節する第3の流量調節装置を設置したことを特徴することを特徴とする石炭ガス化システム。
【請求項5】
請求項4に記載の石炭ガス化システムにおいて、
前記酸素製造装置から前記燃焼装置に供給される窒素ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度計と、
前記燃焼装置に供給される燃料ガス中の水素濃度及び/又は一酸化炭素濃度を検出する燃料ガス濃度計と、
前記酸素濃度計で測定された酸素濃度に基づいて前記第1の流量調節装置を通流する窒素ガスの流量を制御すると共に、前記燃料ガス濃度計で測定された水素濃度及び/又は一酸化炭素濃度並びに前記酸素濃度計で測定された酸素濃度に基づいて前記第3の流量調節装置を通流する燃料ガスの流量を制御する制御装置を設置したことを特徴とする石炭ガス化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−157407(P2011−157407A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17513(P2010−17513)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】