説明

石炭ガス化複合発電プラント

【課題】高い水分を含有する低品位炭を利用して、プラント効率の改善が可能とされた石炭ガス化複合発電プラントを提供することを目的とする。
【解決手段】石炭をガス化して生成ガスとするガス化炉6と、生成ガスが導かれて発電する高温側発電装置30と、高温側発電装置30から導出された高温側排ガスと蒸気とが熱交換する熱交換器13と、を備え、熱交換器13にて高温側排ガスと熱交換した蒸気は、ガス化炉6へと供給されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭ガス化複合発電プラントに関し、特に、水分を多く含有する低品位炭を用いた石炭ガス化複合発電プラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
褐炭などの高水分炭である低品位炭を用いた石炭ガス化複合発電プラントにおいて、低品位炭をガス化した生成ガスを、液体燃料に転換することや、複合発電に利用することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−161076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、ガス化炉においてガス化された生成ガスの一部を液体燃料に転換し、残りの生成ガスによって従来と同様にガスタービンと蒸気タービンとによる複合発電を行っているため、石炭ガス化複合発電プラントのプラント効率の大きな改善が見込めないという問題があった。
また、水分を多く含む低品位炭を使用するため、ガス化工程中に大量の熱を水分蒸発のために消費することとなりエネルギー効率が低下して石炭ガス化複合発電プラントの発電効率が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、低品位炭を用いてプラント効率の改善が可能とされた石炭ガス化複合発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の石炭ガス化複合発電プラントは、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る石炭ガス化複合発電プラントによれば、石炭をガス化して生成ガスとするガス化炉と、生成ガスが導かれて発電する高温側発電装置と、該高温側発電装置から導出された高温側排ガスと蒸気とが熱交換する熱交換器と、を備え、該熱交換器にて前記高温側排ガスと熱交換した蒸気は、前記ガス化炉へ供給されることを特徴とする。
【0007】
ガス化炉において石炭は、水蒸気と水蒸気ガス化反応させることによって一酸化炭素と水素を主成分とする生成ガスにガス化される。この水蒸気ガス化反応は、吸熱反応である。
そこで、本発明では、高温側発電装置から排出された高温側排ガスと蒸気とを熱交換させて、過熱された過熱蒸気をガス化炉へと導くこととした。これにより、水蒸気ガス化反応に必要な蒸気をガス化炉に供給することができる。このガス化炉に供給される過熱蒸気は、ガス化炉内に存在する空気などを燃焼した際に発生する燃焼熱に加えて、吸熱反応に必要な熱の一部として過熱蒸気中の熱を利用することができる。これにより、ガス化炉に供給される石炭の熱量に対するガス化された生成ガスの割合を示す冷ガス効率を改善することができる。したがって、石炭ガス化複合発電プラントのプラント効率を改善することができる。
【0008】
さらに、本発明に係る石炭ガス化複合発電プラントによれば、前記ガス化炉は、循環流動床方式であることを特徴とする。
【0009】
循環流動床方式のガス化炉を用いることにより、石炭をガス化炉内に滞留させる時間を長く維持してガス化することができる。したがって、空気中の窒素を含まない一酸化炭素および水素を主成分とする生成ガスを生成することができる。
【0010】
さらに、本発明に係る石炭ガス化複合発電プラントによれば、前記高温側排ガスと熱交換した蒸気は、石炭のガス化に必要な熱の一部として前記ガス化炉へ供給されることを特徴とする。
【0011】
前記ガス化炉には、前記高温側排ガスと熱交換した蒸気を供給することとした。そのため、石炭のガス化に必要な熱の一部をこの蒸気によって供給することができる。
【0012】
さらに、本発明に係る石炭ガス化複合発電プラントによれば、前記ガス化炉と前記高温側発電装置との間には、生成ガスの一部から液体燃料を製造する液体燃料製造装置が設けられることを特徴とする。
【0013】
液体燃料製造装置をガス化炉と高温側発電装置との間に設けることにより、一酸化炭素と水素とを主成分とする生成ガスを液体燃料製造装置に導いてメタノールやジメチルエーテル(DME)等の液体燃料を製造することができる。したがって、発電を行うと共に、液体燃料を併産することができる。
【0014】
また、石炭ガス化複合発電プラントの発電量を減少させる場合には、高温側発電装置に導く生成ガスの量を減らし、液体燃料製造装置に導く生成ガスの量を増やすことにより液体燃料を製造することができる。また、石炭ガス化複合発電プラントの発電量を増加させる場合には、液体燃料製造装置に導く生成ガスの量を減らし、高温側発電装置に導く生成ガスの量を増やすことができる。したがって、電力需要に合わせて、生成ガスを有効に活用することができる。
【0015】
また、固体燃料である石炭を液体燃料へと転換することができる。そのため、燃料の輸送が容易となる。したがって、燃料の輸送効率を向上させることができる。
【0016】
さらに、本発明に係る石炭ガス化複合発電プラントによれば、前記熱交換器にて熱交換した後の前記高温側排ガスが導かれて発電する低温側発電装置と、該低温側発電装置から導出された低温側排ガスと熱交換して蒸気を発生する蒸気発生装置と、を備え、該蒸気発生装置にて発生した蒸気は、前記熱交換器へと導かれることを特徴とする。
【0017】
低温側発電装置から導出された低温側排ガスによって蒸気を発生する蒸気発生装置を設け、発生した蒸気を熱交換器へと導くこととした。そのため、低温側発電装置から導出される低温側排ガス中の熱エネルギーを有効に利用することができる。したがって、石炭ガス化複合発電プラントのプラント効率の低下を抑制することができる。
【0018】
さらに、本発明に係る石炭ガス化複合発電プラントによれば、前記低温側発電装置から導出される前記低温側排ガスの一部前記ガス化炉に供給される石炭へと導かれることを特徴とする。
【0019】
水分を多く含む低品位炭(例えば、褐炭)を石炭ガス化複合発電プラントに用いた場合、発電効率が低下してしまう。
そこで、低温側排ガスをガス化炉に供給される石炭へと供給することとした。そのため、低温側排ガス中の熱によってガス化炉に供給される石炭を乾燥することができる。したがって、石炭ガス化複合発電プラントの発電効率を改善することができる。また、低品位炭を使用した場合であっても石炭ガス化複合発電プラントのプラント効率を維持することができる。
【0020】
さらに、本発明に係る石炭ガス化複合発電プラントによれば、前記高温側発電装置は、固体酸化物燃料電池であり、前記低温側発電装置は、前記熱交換器から導かれる前記高温側排ガスが燃焼される低温側燃焼器と、該低温側燃焼器から排出される前記低温側排ガスが導かれる低温側タービンと、該低温側タービンと同軸上に設けられる低温側圧縮機と、前記軸端に接続される低温側発電機とを備える低温側ガスタービンであり、前記低温側圧縮機によって圧縮された空気は、前記固体酸化物燃料電池へと導かれることを特徴とする。
【0021】
高温側発電装置には、固体酸化物燃料電池を、低温側発電装置には、燃焼器を有する低温側ガスタービンを用いることとした。また、低温側圧縮機が圧縮する空気を固体酸化物燃料電池に導くこととした。これにより、固体酸化物燃料電池には、密度の高い空気を供給することができる。そのため、固体酸化物燃料電池の発電効率を増加させることができる。石炭ガス化複合発電プラントの発電効率を高めることができる。
【0022】
さらに、本発明に係る石炭ガス化複合発電プラントによれば、前記高温側発電装置は、生成ガスが燃焼される高温側燃焼器と、該高温側燃焼器から排出される前記高温側排ガスが導かれる高温側タービンと、該高温側タービンと同軸上に設けられる高温側圧縮機と、前記軸端に接続される高温側発電機とを備える高温側ガスタービンであり、前記低温側発電装置は、前記高温側タービンの排ガスが導かれる低温側タービンと、該低温側タービンが設けられる軸端に接続される低温側発電機とを備える低温側ガスタービンであることを特徴とする。
【0023】
高温側発電装置には、高温側燃焼器と高温側発電機とを有する高温側ガスタービンを、低温側発電装置には、低温側発電機を有する低温側ガスタービンを用いることとした。そのため、高温側発電機と低温側発電機とによって発電することができる。したがって、石炭ガス化複合発電プラントのプラント効率を改善することができる。
【発明の効果】
【0024】
高温側発電装置から排出された高温側排ガスと蒸気とを熱交換させて、過熱された過熱蒸気をガス化炉へと導くこととした。これにより、水蒸気ガス化反応に必要な蒸気をガス化炉に供給することができる。また、過熱蒸気中の熱を吸熱反応に必要な熱の一部として利用することができる。これにより、ガス化炉に供給される石炭の熱量に対するガス化された生成ガスの割合を示す冷ガス効率を改善することができる。したがって、石炭ガス化複合発電プラントのプラント効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る石炭ガス化複合発電プラントの概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る石炭ガス化複合発電プラントの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
図1には、本発明の第1実施形態に係る石炭ガス化複合発電プラントの概略構成図が示されている。
図1に示されているように、低品位炭を燃料とする石炭ガス化複合発電プラント(IGCC;Integrated Coal Gasification Combined Cycle)1は、主として、石炭供給設備2と、石炭供給設備2から供給された石炭をガス化する石炭ガス化炉(ガス化炉)6と、石炭ガス化炉6によってガス化された生成ガスの一部を液体燃料に製造する液体燃料製造装置11と、石炭ガス化炉6によってガス化された生成ガスが導かれて発電する固体酸化物燃料電池(高温側発電装置30)12と、固体酸化物燃料電池12から導出された生成ガス(高温側排ガス)と蒸気とが熱交換する蒸気過熱器(熱交換器31)13と、固体酸化物燃料電池12から導出された生成ガスが導かれて発電する低温側ガスタービン(低温側発電装置32)14と、低温側ガスタービン14から導出される排ガス(低温側排ガス)と熱交換して蒸気を発生する排熱回収ボイラ(蒸気発生装置)20とを備えている。
【0027】
石炭供給設備2は、石炭ガス化炉6の上流側に設けられており、石炭ガス化炉6へと微粉炭を供給する。
石炭供給設備2は、原料炭である褐炭等の低品位炭が備蓄されている褐炭ホッパ3と、褐炭を乾燥する乾燥器4と、乾燥させた褐炭を微粉砕する微粉炭機5とを備えている。
【0028】
褐炭ホッパ3から乾燥器4へと導かれた褐炭には、後述する排熱回収ボイラ20を通過した乾燥した排ガスが供給される。高い水分を含有する褐炭には、乾燥した排ガスが供給されるので褐炭中の水分を除去することができる。
【0029】
乾燥器4によって乾燥された褐炭は、微粉炭機5に導かれる。微粉炭機5に導かれた褐炭は、数μm〜数百μmの微粉炭に粉砕される。微粉炭機5が粉砕した微粉炭は、排熱回収ボイラ20を通過した乾燥した排ガスによって一定流量ずつ石炭ガス化炉6へと搬送される。ここで、排熱回収ボイラ20を通過した乾燥した排ガスは、微粉炭を石炭ガス化炉6へと搬送する微粉炭搬送ガスとして用いられる。
【0030】
石炭ガス化炉6は、循環流動床方式である。循環流動床方式の石炭ガス化炉6は、流動層部7と、サイクロン部8と、流動床熱交換器部9とを備えている。循環流動床方式の石炭ガス化炉6は、炉内に微粉炭を滞留させる時間を長く維持することができるため、微粉炭を水蒸気ガス化することが可能となっている。そのため、生成ガスを、空気中の窒素が含まれないものとすることができる。
【0031】
流動層部7は、作動温度が約1000℃とされている。流動層部7内には、流動材である加熱砂が浮遊している。この加熱砂は、直径が約1mmから5mmである。流動層部7には、その底部から過熱水蒸気が導入される。この過熱水蒸気には、石炭ガス化炉6内におけるガス化反応速度を促進させるための反応促進剤である酸素が約5体積%付加されて供給される。
【0032】
流動層部7の側部からは、微粉炭と、後述する流動床熱交換器部9において加熱された加熱砂が導入される。また、流動層部7の他の側部からは、後述するサイクロン部8から導かれたチャーが供給される。
流動層部7に供給された微粉炭およびチャーは、加熱砂を熱媒体として蒸気過熱器13において発生させた過熱水蒸気によってガス化されて生成ガスとなる。なお、微粉炭の石炭ガス化反応は、微粉炭及びチャー中の炭素が水分と反応して一酸化炭素や水素を生成する吸熱反応である。ここでは、流動層部7内に存在する空気などを燃焼した際に発生する燃焼熱に加えて、この吸熱反応に必要な熱の一部に、過熱水蒸気の熱が用いられる。
【0033】
サイクロン部8には、加熱砂を含む生成ガスが導かれる。サイクロン部8は、作動温度が約500℃から約800℃とされている。サイクロン部8に導かれた加熱砂を含む生成ガスは、回転流とされる。回転流とされることによって、加熱砂およびチャーが生成ガスから分離される。加熱砂およびチャーが分離された生成ガスは、サイクロン部8の上部から石炭ガス化炉6外へと導出される。一方、生成ガスから分離された加熱砂とチャーとは、サイクロン部8の下部に集積する。
【0034】
サイクロン部8の下部には、3方向弁である加熱砂取出調節弁(図示せず)が設けられている。加熱砂取出調節弁は、サイクロン部8の下部に集積した加熱砂を、流動層部7内の作動温度によって流動層部7と流動床熱交換器部9とに供給する制御を行っている。すなわち、流動層部7の内部温度が作動温度以上の場合には、サイクロン部8の下部に集積した加熱砂とチャーとを流動層部7に戻す。また、流動層部7の内部温度が作動温度以下の場合には、サイクロン部8の下部に集積した加熱砂を流動床熱交換器部9に供給する。
【0035】
流動床熱交換器部9には、後述する固体酸化物燃料電池12から排出された排ガス(高温側排ガス)が蒸気過熱器13から一部抽気されて導かれる。この流動床熱交換器部9に導かれた排ガスの温度は、約750℃から約1150℃とされる。
流動床熱交換器部9に導かれた排ガスは、流動床熱交換器部9内の加熱砂と熱交換する。排ガスと熱交換した加熱砂は、温度が上昇する。温度が上昇した加熱砂は、流動床熱交換器部9から流動層部7の内部へと導かれる。
【0036】
サイクロン部8の上部から石炭ガス化炉6外へと導出された生成ガスには、一酸化炭素や水素、硫化水素の他に硫化カルボニルといった硫黄化合物が含まれている。そのため、これら硫黄化合物を除去するために、生成ガスをガス精製装置10へと導く。ガス精製装置10は、硫化カルボニル変換器(図示せず)と、硫化水素吸収塔(図示せず)と、硫化水素燃焼炉(図示せず)とを備えている。
【0037】
硫化カルボニル変換器は、導かれた生成ガス中の硫化カルボニルを触媒反応によって硫化水素へと変換する。硫化カルボニル変換器によって変換された硫化水素を含む生成ガスは、硫化水素吸収塔へと導かれる。硫化水素吸収塔に導かれた生成ガス中の硫化水素は、ジアチルエタノールアミン(MEDA)系の吸収液によって硫黄分が吸収される。ジアチルエタノールアミン系の吸収液に吸収されて硫黄分が除去された生成ガスは、生成ガスとなって硫化水素吸収塔から導出される。
一方、ジアチルエタノールアミン系の吸収液に吸収された硫黄分は、硫化水素燃焼炉に導かれて燃焼されて石膏として回収される。
【0038】
硫化水素吸収塔から導出された生成ガスの一部は、液体燃料製造装置11へと導かれる。生成ガスは、主成分が一酸化炭素や水素である。そのため、液体燃料製造装置11において液体燃料であるメタノールを製造することができる。
【0039】
硫化水素吸収塔から導出された生成ガスの残りは、ガス精製装置10から固体酸化物燃料電池12へと導かれる。固体酸化物燃料電池12に導かれた生成ガスは、固体酸化物燃料電池12において、低温側ガスタービン14の低温側圧縮機17によって圧縮された空気と化学反応する。この化学反応によって、固体酸化物燃料電池12は発電する。固体酸化物燃料電池12において化学反応に使用されなかった生成ガス(高温側排ガス)は、固体酸化物燃料電池12から導出される。
【0040】
固体酸化物燃料電池12から導出された生成ガスは、固体酸化物燃料電池12における化学反応によって熱を有している。熱を有している生成ガスは、蒸気過熱器13へと導かれる。蒸気過熱器13に導かれた生成ガスは、後述する排熱回収ボイラ20において発生した蒸気に熱を与える。蒸気過熱器13において過熱された蒸気は、過熱蒸気となって石炭ガス化炉6の流動層部7へと導かれて微粉炭のガス化反応に用いられる。
【0041】
一方、蒸気過熱器13において蒸気を過熱した後の生成ガスは、低温側ガスタービン14へと導かれる。
低温側ガスタービン14は、低温側燃焼器(図示せず)と、低温側タービン16と、低温側回転軸19と、低温側圧縮機17と、低温側発電機18とを備えている。
【0042】
低温側燃焼器では、蒸気過熱器13から導かれた生成ガスと、低温側圧縮機17によって圧縮された空気とが燃焼されて排ガス(低温側排ガス)が排出される。低温側燃焼器17から排出された排ガスは、低温側タービン16へと導かれる。低温側タービン16に導かれた排ガスは、低温側タービン16を回転駆動する。低温側タービン16が排ガスによって回転駆動されることによって、低温側タービン16に接続されている低温側回転軸19が回転される。
【0043】
低温側回転軸19が回転されることによって、低温側回転軸19上に設けられている低温側圧縮機17が回転駆動して空気を圧縮する。低温側圧縮機17によって圧縮された空気は、低温側燃焼器と固体酸化物燃料電池12とに導かれる。また、低温側回転軸19端には、低温側発電機18が接続されている。そのため、低温側回転軸19が回転駆動することによって、低温側発電機18が駆動されて電気を発生する。
【0044】
低温側タービン16を回転駆動させた排ガス(低温側排ガス)は、高温で乾燥している。この高温で乾燥している排ガスは、排熱回収ボイラ20へと導かれる。排熱回収ボイラ20は、低温側タービン16から導かれた排ガスの熱によって蒸気を発生するものである。排熱回収ボイラ20において熱を与えた排ガスは、図示しない煙突から石炭ガス化複合発電プラント1の外へと排出される。
【0045】
排熱回収ボイラ20において、低温側タービン16から導かれた排ガスと熱交換して発生した蒸気は、前述した蒸気過熱器13へと供給される。
また、排熱回収ボイラ20から導出された排ガスの一部は、前述した乾燥器4と微粉炭機5へと導かれる。
一方、低温側タービン14から導かれた排ガスの温度が約300℃〜400℃と低い場合には、排ガスは、排熱回収ボイラ20へ導かれず、直接、乾燥器4と微粉炭機5とへ導かれる。
【0046】
以上の通り、本実施形態に係る石炭ガス化複合発電プラントによれば、以下の作用効果を奏する。
固体酸化物燃料電池(高温側発電装置30)12から排出された生成ガス(高温側排ガス)と蒸気とを熱交換させて、過熱された過熱蒸気を石炭ガス化炉(ガス化炉)6へと導くこととした。これにより、水蒸気ガス化反応に必要な蒸気を石炭ガス化炉6に供給することができる。また、過熱蒸気中の熱を吸熱反応に利用することができる。これにより、石炭ガス化炉6に供給される渇炭(石炭)の熱量に対するガス化された生成ガスの割合を示す冷ガス効率を改善することができる。したがって、石炭ガス化複合発電プラント1のプラント効率を改善することができる。
【0047】
循環流動床方式の石炭ガス化炉6を用いることとした。そのため、褐炭を石炭ガス化炉6内に滞留させる時間を長く維持してガス化することができる。したがって、空気中の窒素を含まない一酸化炭素および水素を主成分とする生成ガスを生成することができる。
【0048】
石炭ガス化炉6には、生成ガスと熱交換した蒸気を供給することとした。そのため、渇炭のガス化に必要な熱の一部をこの蒸気によって供給することができる。
【0049】
液体燃料製造装置11を石炭ガス化炉6と、固体酸化物燃料電池12との間に設けることとした。そのため、一酸化炭素と水素とを主成分とする生成ガスを液体燃料製造装置11に導いてメタノールやジメチルエーテル(DME)等の液体燃料を製造することができる。したがって、発電を行うと共に、液体燃料を併産することができる。
【0050】
また、石炭ガス化複合発電プラント1の発電量を減少させる場合には、固体酸化物燃料電池12に導く生成ガスの量を減らし、液体燃料製造装置11に導く生成ガスの量を増やすことにより液体燃料を製造することができる。また、石炭ガス化複合発電プラント1の発電量を増加させる場合には、液体燃料製造装置11に導く生成ガスの量を減らし、固体酸化物燃料電池12に導く生成ガスの量を増やすことができる。したがって、電力需要に合わせて、生成ガスを有効に活用することができる。
【0051】
また、固体燃料である褐炭を液体燃料へと転換することができる。そのため、燃料の輸送が容易となる。したがって、燃料の輸送効率を向上させることができる。
【0052】
低温側ガスタービン(低温側発電装置32)14から導出された排ガス(低温側排ガス)によって蒸気を発生する排熱回収ボイラ(蒸気発生装置)20を設け、発生した蒸気を蒸気過熱器(熱交換器31)13へと導くこととした。そのため、低温側ガスタービン14から導出される排ガス中の熱エネルギーを有効に利用することができる。したがって、石炭ガス化複合発電プラント1のプラント効率の低下を抑制することができる。
【0053】
石炭ガス化炉6に導かれる褐炭には、低温側ガスタービン14から導出される排ガスを供給することとした。そのため、排ガス中の熱によって石炭ガス化炉6に供給される褐炭を乾燥することができる。したがって、石炭ガス化複合発電プラント1の発電効率を改善することができる。また、褐炭等の低品位炭を使用した場合であっても石炭ガス化複合発電プラント1のプラント効率を維持することができる。
【0054】
高温側発電装置30には、固体酸化物燃料電池12を、低温側発電装置32には、低温側燃焼器を有する低温側ガスタービン14を用いることとした。また、低温側圧縮機17が圧縮する空気を固体酸化物燃料電池12に導くこととした。これにより、固体酸化物燃料電池12には、密度の高い空気を供給することができる。そのため、固体酸化物燃料電池12の発電効率を増加させることができる。石炭ガス化複合発電プラント1の発電効率を高めることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、低温側ガスタービン14の下流側には排熱回収ボイラ20のみを設けるとして説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、排熱回収ボイラ20において発生した蒸気の一部によって駆動される蒸気タービン(図示せず)を低温側回転軸19上に設けたいわゆる一軸式のコンバインドシステムとしても良い。なお、一軸式のコンバインドシステムに限らず、別軸式のコンバインドシステムであっても構わない。
【0056】
また、本実施形態では、低品位炭として水分を約60%含んだ褐炭を用いて説明したが、石炭など炭素含有燃料であれば良い。
【0057】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の石炭ガス化複合発電プラントは、固体酸化物燃料電池の代わりに高温側ガスタービンを設け、蒸気過熱器の代わりに熱交換器を設ける点で第1実施形態と相違し、その他は同様である。したがって、同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図2には、本発明の第2実施形態に係る石炭ガス化複合発電プラントの概略構成図が示されている。
ガス精製装置10と低温側ガスタービン(低温側発電装置32)21との間には、高温側ガスタービン(高温側発電装置30)22および熱交換器23が設けられている。高温側ガスタービン22と低温側ガスタービン21との間には、熱交換器23が設けられている。
【0059】
高温側ガスタービン22は、高温側燃焼器(図示せず)と、高温側タービン24と、高温側回転軸27と、高温側圧縮機25と、高温側発電機26とを備えている。
【0060】
高温側燃焼器では、ガス精製装置10から導かれた生成ガスと、空気とが燃焼されて排ガス(高温側排ガス)が排出される。高温側燃焼器から排出された排ガスは、高温側タービン24を回転駆動する。高温側タービン24が排ガスによって駆動されることによって、高温側タービン24に接続されている高温側回転軸27が回転される。
【0061】
高温側回転軸27が回転されることによって、高温側回転軸27上に設けられている高温側圧縮機25が回転駆動して空気を圧縮する。高温側回転軸27端には、高温側発電機26が接続されている。そのため、高温側回転軸27が回転駆動することによって、高温側発電機26が駆動されて発電する。高温側タービン24を回転駆動させた排ガスは、熱交換器23へと導かれる。
また、高温側タービン24を回転駆動させた排ガスの一部は、高温側タービン24と熱交換器23との間から分岐して流動床熱交換器部9へと導かれる。この流動床熱交換器部9に導かれた排ガスの温度は、約750℃から約1150℃とされる。
【0062】
熱交換器23へと導かれた排ガスは、熱を有している。そのため、熱交換器23に導かれた排ガスは、排熱回収ボイラ20において発生された蒸気に熱を与える。熱交換器23において過熱された蒸気は、過熱蒸気となって石炭ガス化炉6の流動層部7へと導かれて微粉炭のガス化反応に用いられる。一方、熱交換器23において蒸気を過熱した排ガスは、低温側ガスタービン21へと導かれる。
【0063】
低温ガスタービン21は、低温側タービン16と、低温側回転軸19と、低温側発電機18とを備えている。
熱交換器23から導かれた排ガスは、低温側タービン16へと導かれる。低温側タービン16に導かれた排ガスは、低温側タービン16を回転駆動する。低温側タービン16が排ガスによって駆動されることによって、低温側タービン16に接続されている低温側回転軸19が回転される。
【0064】
低温側回転軸19が回転されることによって、低温側回転軸19端に接続されている低温側発電機18が駆動されて発電する。低温側タービン16を回転駆動させた排ガス(低温側排ガス)は、排熱回収ボイラ20へと導かれる。
【0065】
以上の通り、本実施形態に係る石炭ガス化複合発電プラントによれば、以下の作用効果を奏する。
高温側発電装置30には、高温側燃焼器(図示せず)と高温側発電機26とを有する高温側ガスタービン22を、低温側発電装置32には、低温側発電機18を有する低温側ガスタービン21を用いることとした。そのため、高温側発電機26と低温側発電機18とによって発電することができる。したがって、石炭ガス化複合発電プラント1のプラント効率を改善することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 石炭ガス化複合発電プラント
2 石炭供給設備
3 褐炭ホッパ
4 乾燥器
5 微粉炭機
6 ガス化炉(石炭ガス化炉)
7 流動床部
8 サイクロン部
9 流動床熱交換器部
10 ガス精製装置
11 液体燃料製造装置
12 固体酸化物燃料電池(高温側発電装置)
13、23、31 蒸気加熱器(熱交換器)
14、21、32 低温側ガスタービン(低温側発電装置)
16 低温側タービン
17 低温側圧縮機
18 低温側発電機
19 低温側回転軸
20 排熱回収ボイラ(蒸気発生装置)
22、30 高温側ガスタービン(高温側発電装置)
24 高温側タービン
25 高温側圧縮機
26 高温側発電機
27 高温側回転軸



【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭をガス化して生成ガスとするガス化炉と、
生成ガスが導かれて発電する高温側発電装置と、
該高温側発電装置から導出された高温側排ガスと蒸気とが熱交換する熱交換器と、を備え、
該熱交換器にて前記高温側排ガスと熱交換した蒸気は、前記ガス化炉へ供給される石炭ガス化複合発電プラント。
【請求項2】
前記ガス化炉は、循環流動床方式である請求項1に記載の石炭ガス化複合発電プラント。
【請求項3】
前記高温側排ガスと熱交換した蒸気は、石炭ガス化に必要な熱の一部として前記ガス化炉へ供給される請求項1または請求項2に記載の石炭ガス化複合発電プラント。
【請求項4】
前記ガス化炉と前記高温側発電装置との間には、生成ガスの一部から液体燃料を製造する液体燃料製造装置が設けられる請求項1から請求項3のいずれかに記載の石炭ガス化複合発電プラント。
【請求項5】
前記熱交換器にて熱交換した後の前記高温側排ガスが導かれて発電する低温側発電装置と、
該低温側発電装置から導出された低温側排ガスと熱交換して蒸気を発生する蒸気発生装置と、を備え、
該蒸気発生装置にて発生した蒸気は、前記熱交換器へと導かれる請求項1から請求項4のいずれかに記載の石炭ガス化複合発電プラント。
【請求項6】
前記低温側発電装置から導出される前記低温側排ガスの一部が前記ガス化炉に供給される石炭へと導かれる請求項5に記載の石炭ガス化複合発電プラント。
【請求項7】
前記高温側発電装置は、固体酸化物燃料電池であり、
前記低温側発電装置は、前記熱交換器から導かれる前記高温側排ガスが燃焼される低温側燃焼器と、該低温側燃焼器から排出される前記低温側排ガスが導かれる低温側タービンと、該低温側タービンと同軸上に設けられる低温側圧縮機と、前記軸端に接続される低温側発電機とを備える低温側ガスタービンであり、
前記低温側圧縮機によって圧縮された空気は、前記固体酸化物燃料電池へと導かれる請求項1から請求項6のいずれかに記載の石炭ガス化複合発電プラント。
【請求項8】
前記高温側発電装置は、生成ガスが燃焼される高温側燃焼器と、該高温側燃焼器から排出される前記高温側排ガスが導かれる高温側タービンと、該高温側タービンと同軸上に設けられる高温側圧縮機と、前記軸端に接続される高温側発電機とを備える高温側ガスタービンであり、
前記低温側発電装置は、前記高温側タービンの排ガスが導かれる低温側タービンと、該低温側タービンが設けられる軸端に接続される低温側発電機とを備える低温側ガスタービンである請求項1から請求項6のいずれかに記載の石炭ガス化複合発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−202520(P2011−202520A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68038(P2010−68038)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】